JP2004095163A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 非磁性基板S上に非磁性下地膜31、磁性膜32、カーボン保護膜33、潤滑膜34が形成され、カーボン保護膜33が、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層からなるもの、あるいは、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層上に、スパッタリング法によって形成されたスパッタカーボン層を有するものであり、このカーボン保護膜33が、潤滑膜34に接して設けられている。
【選択図】 図2
Description
俗にウインテェスター様式と呼ばれる、磁気ヘッド/磁気記録媒体間の接触摺動−ヘッド浮上−接触摺動を基本動作とするCSS(接触起動停止)方式がハードディスクドライブの主流となって以来、媒体上でのヘッドの摺動は、避けることのできないものとなり、ヘッド/媒体間のトライボロジーに関する問題は宿命的な技術課題となって現在に至っている。このため、磁気記録媒体表面の耐摩耗性、耐摺動性は信頼性の大きな柱となり、磁性膜上に積層される保護膜、潤滑膜などの開発、改善の努力が営々と続けられている。
カーボン膜は、通常、スパッタリング法により形成されており、成膜の際の条件は、カーボン膜の耐コロージョン性、あるいはCSS特性に如実に反映されるため非常に重要である。
また、記録密度の向上を図るためには、ヘッドの飛行高さ(フライングハイト)の低減、媒体回転数の増加等を行うことが好ましいため、磁気記録媒体にはより高い摺動耐久性が要求されてきている。その一方、スペーシングロスを低減し記録密度を高めるため、保護膜の厚さを薄く、例えば100Å以下にすることが要求されてきており、平滑性は無論のこと、薄くかつ強靭な保護膜が強く求められている。
このため、スパッタリング法に比べて高強度のカーボン保護膜を形成することができる方法として、プラズマCVD法の採用が検討されている。プラズマCVD法は、例えば特公平7−21858号公報、特開平7−73454号公報等に開示されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは以下の通りである。
(1)信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を提供する。
(2)効率よく製造することができる磁気記録媒体を提供する。
(2) カーボン保護膜を、高周波放電下でディスク両面に同時に形成するに際し、ディスクの両側に配置された電極に供給する電力の位相を互いにずらせることを特徴とする(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(3) ディスクに印加するパルス直流バイアスを、周波数が10kHz〜1GHz、パルス幅が10ns〜50μsであるものとすることを特徴とする(1)または(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4) ディスクに印加するパルス直流バイアスを、その平均電圧が−400〜−10Vであるものとすることを特徴とする(1)〜(3)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5) カーボン保護膜を形成するに際して用いる反応ガスとして、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるように混合した混合ガスを用いることを特徴とする(1)〜(4)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(6) 炭化水素として、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いることを特徴とする(5)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(7) 炭化水素として、トルエンを用いることを特徴とする(5)または(6)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(8) 反応ガスとして、トルエンと水素を体積比が1:15〜1:20となるように混合した混合ガスを用いることを特徴とする(7)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(9) カーボン保護膜を形成するに際して用いる反応ガスとして、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるように混合した混合ガスに、混合ガスに対して0.1〜100vol%の窒素ガスを添加、混合したものを用いることを特徴とする(1)〜(4)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(10) 炭化水素として、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いることを特徴とする(9)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(11) 炭化水素として、トルエンを用いることを特徴とする(10)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(12) 反応ガスとして、トルエンと水素を体積比が1:15〜1:20となるように混合した混合ガスを用いることを特徴とする(11)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(13) カーボン保護膜を形成するに際して用いる反応ガスとして、ブタジエンガス、またはブタジエンと水素の混合ガスを用い、この反応ガスのブタジエン:水素の体積比を100:0〜1:100とすることを特徴とする(1)〜(4)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(14) 反応ガスとして、ブタジエン:水素の体積比を100:0〜1:25としたものを用いることを特徴とする(13)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(15) 反応ガスの圧力を0.1〜10Paとすることを特徴とする(1)〜(14)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(16) 反応ガスの圧力を2〜6Paとすることを特徴とする(1)〜(14)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(17) カーボン保護膜の形成に際し、予めディスクの温度を100〜250℃とすることを特徴とする(1)〜(16)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(18) カーボン保護膜の厚さを30〜100Åとすることを特徴とする(1)〜(17)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(19) 非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成したディスク上に、炭素原子を含む反応ガスを原料としてプラズマCVD法によりプラズマCVDカーボン層を形成し、その上に、スパッタガスを用いてスパッタリング法によりスパッタカーボン層を形成する磁気記録媒体の製造方法であって、プラズマCVDカーボン層は(1)〜(18)のうちいずれか1つに記載の方法により形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(20) スパッタリング法によりスパッタカーボン層を形成するに際して用いるスパッタガスとして、アルゴンに、窒素、水素、およびメタンのうち1種以上を、アルゴンに対する添加率が0.1〜100vol%となるように含有させたものを用いることを特徴とする(19)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(21) スパッタカーボン層の厚さが、5〜100Åであることを特徴とする(19)または(20)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(22) 非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、その上に、カーボン保護膜を、炭素原子を含む反応ガスを原料としてプラズマCVD法により形成し、次いでカーボン保護膜上に潤滑膜を形成する磁気記録媒体の製造方法であって、カーボン保護膜は(1)〜(18)のうちいずれか1つに記載の方法により形成し、潤滑膜の形成に先立ち、カーボン保護膜表面を水洗することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(23) カーボン保護膜を水洗する際に、洗浄水として超純水を用いることを特徴とする(22)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(24) 非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、その上に、カーボン保護膜を、炭素原子を含む反応ガスを原料としてプラズマCVD法によりプラズマCVDカーボン層を形成し、その上に、スパッタガスを用いてスパッタリング法によりスパッタカーボン層を形成し、次いでスパッタカーボン層上に潤滑膜を形成する磁気記録媒体の製造方法であって、スパッタカーボン層は(19)〜(21)のうちいずれか1つに記載の方法により形成し、潤滑膜の形成に先立ち、カーボン保護膜表面を水洗することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(25) スパッタカーボン層を水洗する際に、洗浄水として超純水を用いることを特徴とする(24)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(26) テクスチャ加工を施した非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成したディスク上に、カーボン保護膜を、炭素原子を含む反応ガスを原料としてプラズマCVD法により形成する磁気記録媒体の製造方法において、カーボン保護膜は(1)〜(18)のうちいずれか1つに記載の方法により形成し、かつ非磁性基板表面にテクスチャ加工を施すことによりこの非磁性基板の表面平均粗さRaを1〜20Åとすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(27) 非磁性基板表面にテクスチャ加工を施すに際し、その表面平均粗さRaを3〜10Åとすることを特徴とする(26)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(28) テクスチャ加工方法として、砥粒を用いたメカニカルテクスチャ加工法を採用し、この砥粒として、平均粒径が0.1〜0.5μmであるものを用いることを特徴とする(26)または(27)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(29) メカニカルテクスチャ加工法として、非磁性基板を回転させると同時に、研磨テープを非磁性基板表面に接触させつつ基板上を走行させるとともに、研磨テープと非磁性基板の間に砥粒を供給することによって非磁性基板表面にテクスチャ加工を施す方法を採用し、この際、研磨テープを走行方向に対し交差する方向に0.1〜5Hzの周波数で揺動させることを特徴とする(26)〜(28)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(30) テクスチャ加工を行う際の非磁性基板の回転数を、300〜2000rpmとすることを特徴とする(26)〜(29)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(31) テクスチャ加工を施した非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成したディスク上に、炭素原子を含む反応ガスを原料としてプラズマCVD法によりプラズマCVDカーボン層を形成し、その上に、スパッタガスを用いてスパッタリング法によりスパッタカーボン層を形成する磁気記録媒体の製造方法において、プラズマCVDカーボン層は(1)〜(18)のうちいずれか1つに記載の方法により形成し、スパッタカーボン層は(20)または(21)に記載の方法により形成し、非磁性基板の表面平均粗さRaを1〜20Åとすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(32) 非磁性基板表面にテクスチャ加工を施すに際し、その表面平均粗さRaを3〜10Åとすることを特徴とする(31)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(33) テクスチャ加工方法として、砥粒を用いたメカニカルテクスチャ加工法を採用し、この砥粒として、平均粒径が0.1〜0.5μmであるものを用いることを特徴とする(31)または(32)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(34) メカニカルテクスチャ加工法として、非磁性基板を回転させると同時に、研磨テープを非磁性基板表面に接触させつつ基板上を走行させるとともに、研磨テープと非磁性基板の間に砥粒を供給することによって非磁性基板表面にテクスチャ加工を施す方法を採用し、この際、研磨テープを走行方向に対し交差する方向に0.1〜5Hzの周波数で揺動させることを特徴とする(31)〜(33)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(35) テクスチャ加工を行う際の非磁性基板の回転数を、300〜2000rpmとすることを特徴とする(31)〜(34)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(36) 非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜、カーボン保護膜、潤滑膜が形成された磁気記録媒体において、カーボン保護膜が、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層からなるもの、あるいは、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層上に、スパッタリング法によって形成されたスパッタカーボン層を有するものであり、このカーボン保護膜が、潤滑膜に接して設けられていることを特徴とする磁気記録媒体。
(37) 非磁性基板の表面平均粗さRaが1〜20Åであることを特徴とする(36)に記載の磁気記録媒体。
(38) プラズマCVDカーボン層の厚さが、30〜100Åであることを特徴とする(36)または(37)に記載の磁気記録媒体。
(39) スパッタカーボン層の厚さが、5〜100Åであることを特徴とする(36)〜(38)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
(40) 潤滑膜が、下記式(1)ないし式(5)で示されるもののうち1種または2種以上であり、かつ数平均分子量が500〜6000である化合物を主成分とするものであることを特徴とする(36)〜(39)のうちいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。また、成膜レートを高め、効率よい製造が可能となる。
本発明の磁気記録媒体は、磁気ディスク装置などに用いられる磁気ディスク等の磁気記録媒体として用いることができる。
チャンバ10には、供給源14から供給された反応ガスをチャンバ10内に導入する導入管15、15と、チャンバ10内のガスを系外に排出する排気管16が接続されている。排気管16には排気量調節バルブ17が設けられており、排気量を調節することによって、チャンバ10の内圧を任意の値に設定することができるようになっている。
高周波電源12としては、カーボン保護膜形成時に電極11に50〜2000Wの電力を供給することができるものを用いるのが好ましい。
また、バイアス電源13としては、高周波電源またはパルス直流電源を用いることができる。高周波電源としては、10〜300Wの高周波電力をディスクに印加できるものが好ましい。また、パルス直流電源としては、−400〜−10Vの電圧(平均電圧)をディスクに印加することが可能なものを用いるのが好ましい。
まず、スパッタリング法等の方法を用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能であり、NiPメッキ膜が形成されたアルミニウム合金基板に加え、ガラス、シリコンなどからなるものを用いることができる。非磁性基板は、その表面にメカニカルテクスチャ処理などのテクスチャ処理を施したものとするのが好ましく、特に、表面平均粗さRaを1〜20Åとしたものを用いるのが好ましい。
非磁性下地膜の材料としては、Cr、またはCr/Ti系、Cr/W系、Cr/V系、Cr/Si系の合金を用いるのが好適である。
磁性膜の材料としては、Co合金、例えばCo/Cr系、Co/Cr/Ta系、Co/Cr/Pt系、Co/Cr/Pt/Ta系等の合金を用いるのが好適である。
これら非磁性下地膜、磁性膜の厚さは、それぞれ50〜1000Å、50〜800Åとするのが好ましい。
この反応ガスとしては、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるよう混合した混合ガスが用いられる。
低級飽和炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、オクタン等を用いることができる。また低級不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン等を用いることができる。また低級環式炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン等を用いることができる。
上記炭化水素のなかでも特に、トルエンを用いるのが好ましく、トルエンと水素の混合比率は、体積比で1:15〜1:20とするのが好ましい。
なお、ここでいう低級とは、炭素数が1〜10であることを指す。また、環式炭化水素とは、ベンゼン環などの環状構造をもつ炭化水素をいう。
炭化水素と水素の混合比率を上記範囲内とするのが好ましいとしたのは、炭化水素の水素に対する割合が上記範囲下限値未満であると、成膜レートが低くなり実用的な工業生産に適さなくなり、上記範囲上限値を越えると、カーボン保護膜内に残留する応力が高くなり、得られるカーボン保護膜の密着性、耐CSS性が低下するためである。
また炭化水素として低級炭化水素を用いるのが好ましいとしたのは、炭化水素の炭素数が上記範囲上限値を越えると、ガスとして供給するのが困難となることに加え、放電時の炭化水素の分解が進行しにくくなり、カーボン保護膜が、強度に劣る高分子成分を多く含むものとなるためである。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
バイアスをディスクDに印加する際には、ディスクDに直接印加してもよいし、図示せぬディスクキャリアを介してバイアス印加を行ってもよい。
また、保護膜上には、ディッピング法などによってフォンブリン系潤滑剤、パーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を塗布し潤滑膜を設けることも可能である。
(試験例1〜12)
アルミナスラリーを用いて表面粗さRaが20Åとなるようにテクスチャリングを施したNiPメッキアルミニウム基板を、DCマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を到達真空度2×10−6Torrまで排気した後、基板両面に、Crからなる厚さ400Åの下地膜、およびCo82Cr15Ta3(at%)合金からなる磁性膜を順次形成しディスクDを得た。
次いで、ディスクDを、上記プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入し、表1に示す炭化水素ガスと水素を表中に示す混合比率で混合したガスを反応ガスとしてチャンバ内に供給した。チャンバ10の内圧は2Paとした。
同時に、表1に示す条件の高周波バイアス(50W)をディスクDに印加しつつ300Wの高周波電力(周波数13.56MHz)を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に厚さ50Åのカーボン保護膜を形成した。成膜時のディスクDの温度は130℃とした。(ただし、試験例9については、電極11への供給電力を600W、成膜時のディスク温度を136℃とした。また試験例3で用いたバイアスはDCバイアス(−200V)とした)。なお、ディスクDと電極11の距離は30mmとした。また表中、RF位相差とは、2つの電極11、11に供給する電力の位相差をいう。
次に、カーボン保護膜上にフォンブリン系潤滑剤を15Å塗布し、磁気記録媒体を得た。
なお、試験例3〜5についてはスティクション値をモニターするとともに、40℃、湿度80%の環境下において同じサイクルでCSSを5000回行う試験も実施した。結果を表2に示す。CSS試験(常温、常圧)の結果、クラッシュが発生したものについては、クラッシュ発生時のCSS回数を表中に示した。
表2にラマン分光法(アルゴンイオンレーザー励起)によるgバンドピーク値(νG−line)と、dバンドピーク値との比(Id/Ig)を参考までに併記する。一般にカーボン膜をラマン分光法で測定した場合には、1530cm−1付近にgバンド、1400cm−1付近にdバンドの2つのピークを持つプロファイルが得られ、Id/Igが小さいほど、また、gバンドピークが高波数側にシフトするほどカーボン膜のダイヤモンド性が大きい。
なお、本明細書において、CrashとはCSS試験中にヘッドクラッシュが起きたことを意味し、No Crashとはヘッドクラッシュが起こらなかったことを意味するものとする。
これに対し、トルエンのH2との混合比率が本発明で規定した範囲を外れる試験例7、バイアス印加を行わない試験例12では、ある程度の成膜レートが得られるものの、磁気記録媒体が耐久性に劣るものとなったことがわかる。
また、メタン、エタン、アセトンを用いた試験例8〜11により得られた磁気記録媒体についても耐久性の点で劣る結果が得られた。
また、コロージョン試験の結果より、いずれの磁気記録媒体についてもCo抽出量は1枚当たり1〜2ng程度であり、実用上問題とならないことが確認された。
また、CSS試験の結果より、ディスク両側の電極に供給する電力の位相を互いにずらせることにより、得られる磁気記録媒体の耐久性を向上させることができたことがわかる。
このように、試験例1〜6の製造方法では、工業生産に耐えうる成膜レートでカーボン保護膜を形成することができ、磁気記録媒体の耐CSS特性、耐コロージョン特性が優れたものとなることが明らかになった。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を効率よく得ることができる。
まず、スパッタリング法などを用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、上述したとおり、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能である。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるように混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
このパルス直流バイアスの周波数が1kHz未満である場合、または100GHzを越える場合には、形成されるカーボン保護膜が耐久性に劣るものとなり易い。特に、周波数が1kHz未満である場合には、成膜レートが低下しやすく生産効率の低下を招くため好ましくない。
上記パルス直流バイアスの周波数およびパルス幅は、それぞれ10kHz〜1GHz、10ns〜50μsとするのがさらに好ましい。
またディスクDに印加するパルス直流バイアスは、その平均電圧が−400〜−10Vであるものとするのが好ましい。
これは、この平均電圧が−400V未満であると、成膜時にスパークが起こりやすくカーボン保護膜表面に異常成長部ができやすくなり、−10Vを越えると、カーボン保護膜が、強度に劣る高分子成分を多く含むものとなるためである。また保護膜上には、上述の潤滑剤を塗布し潤滑膜を設けることも可能である。
上記製造方法によって製造された磁気記録媒体の例としては、例えば図2に示す構造のものを挙げることができる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を効率よく得ることができる。
(試験例13〜26)
まず、NiPメッキを施したアルミニウム合金基板(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Cr合金からなる非磁性下地膜(厚さ600Å)、およびCo合金からなる磁性膜を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。
この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:12となるよう混合したものを用いた。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、バイアス電源13を用いて表3に示す条件でパルス直流バイアスをディスクに印加しつつ、300または500Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜を形成した。
また、成膜時のディスクDの温度は130℃とした。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。またディスクDと電極11の距離は30mmとした。
次いで、カーボン保護膜上に、ディッピング法によってフォンブリン系潤滑剤(Fomblin Zdol2000)を塗布し、厚さ20Åの潤滑膜を形成し、磁気記録媒体を得た。
なお、表中、プラズマRF電力とはカーボン保護膜成膜時に電極11に供給した電力を示すものである。
以上説明したように、本発明によれば、耐久性に優れたカーボン保護膜を効率よく形成することができる。このため、カーボン保護膜の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、スペーシングロスを低減することができる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を効率よく得ることができる。
スパッタ装置1は、非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜等を形成するためのもので、磁気記録媒体製造に用いられる汎用のものが使用可能である。
温度調節装置2は、プラズマCVD装置3に送られるディスクの温度を所定の値とするためのもので、ディスクを収容するチャンバ4と、チャンバ4内のディスクの温度を調節する温度調節ガスの供給源5を備えたものとされ、チャンバ4には、供給源5から供給された温度調節ガスをチャンバ4内に導入する導入管7と、チャンバ4内のガスを系外に排出する排気管8が接続されている。
チャンバ4は気密構造とされ、スパッタ装置1を経たディスクをチャンバ4内に搬入する搬入口4aと、チャンバ4内のディスクをプラズマCVD装置3に向けて搬出する搬出口4bを有するものとされている。
プラズマCVD装置3としては、図1に示すものと同様の構造のものを用いることができる。
まず、スパッタ装置1を用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、上述したとおり、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能である。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
これら非磁性下地膜、磁性膜を形成する際には、通常、非磁性基板の温度は、250〜350℃程度とされる。
この温度調節ガスとしては、ディスクDに影響を与えないものであれば特に限定されないが、水素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等を用いることができる。
温度調節ガスの温度は、目的とするディスクDの温度や温度調節ガスの流量等の条件に応じて適宜設定されるが、0〜250℃とするのが好ましい。
この操作を行う際には、温度調節ガスの流量を50〜1500sccmとするのが好ましい。また、チャンバ4内ガスの排出量を適宜調節することによって、チャンバ4内圧を所定の値、例えば1〜30Paとするのが好ましい。
このように、ディスクDを温度調節ガスに曝すことによって、温度調節ガスとディスクDの間で熱交換が行われる。この操作は、ディスクDの温度が100〜250℃(好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは150〜200℃)となるまで行う。
ディスクDの温度が100℃未満であると、後述する操作によってディスクD上に形成されるカーボン保護膜が低密度となり耐久性が低下する。
またこの温度が250℃を越えると、後述の操作によってカーボン保護膜を形成する際に、反応ガス分子の運動エネルギーが高くなりすぎ、この分子がディスクD上に吸着しにくくなり、成膜レートが低下する。またこれに加えて、カーボン保護膜が、強度に劣る高分子成分を多く含むものとなりその耐久性が低下する。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるように混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。また、排気量調節バルブ17を用いてチャンバ10内ガスの排出量を適宜調節することによって、チャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
また、保護膜上には、ディッピング法などによってフォンブリン系潤滑剤、パーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を塗布し潤滑膜を設けることも可能である。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
また、反応ガスに由来するカーボン保護膜構成材料のディスクDへの吸着を促し、成膜レートを高くし、生産効率を高めることが可能となる。
すなわち、この温度が上記範囲下限値未満であると、カーボン保護膜を形成する際に、カーボン保護膜の構成材料分子のもつ運動エネルギーが低いものとなり、カーボン保護膜中におけるこの分子の配列が不規則なものとなり緻密化が十分になされず、これによってカーボン保護膜が低密度となり、その結果、カーボン保護膜の耐久性が低下すると考えられる。
またこの温度が上記範囲上限値を越えると、重合、縮合等の高分子化反応が起こりやすくなり、供給された反応ガスに由来する炭素化合物がディスクDの表面で高分子化しやすくなり、これによってカーボン保護膜中に、強度に劣る高分子成分が増加し、その結果、カーボン保護膜の耐久性が低下すると考えられる。
(試験例27〜32)
図1および図3に示す装置を用いて次のようにして磁気記録媒体を作製した。
まず、NiPメッキを施したアルミニウム合金基板(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを23Åとした後、この基板両面に、スパッタ装置1(アネルバ社製3010)を用いて、Cr合金からなる非磁性下地膜(厚さ600Å)、およびCo合金からなる磁性膜を順次形成し、ディスクDを得た。上記非磁性下地膜および磁性膜を形成する操作の際には、基板の温度を250℃とした。
次いで、ディスクDを、温度調節装置2のチャンバ4内に搬入するとともに、チャンバ4に、その温度を予め20℃とした温度調節用の水素ガスを表4に示すとおりの流量となるように供給し、ディスクDをこの水素ガスに曝す操作を表4に示す時間行うことによって、ディスクDの温度を表4に示す値とした。なお、ディスクDの温度の測定は、チャンバ4に取り付けた放射温度計によって行った。またチャンバ4の内圧は10Paとした。
次いで、ディスクDを直ちにプラズマCVD装置3のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:10となるよう混合した混合ガスを用いた。またチャンバ10の内圧は、6Paとした。
同時に、500Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、上記温度調節装置2によって温度を表4に示す値としたディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜を形成した。この際、バイアス電源13を用いて、50Wの高周波電力をディスクDに印加した。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。
次いで、フォンブリン系潤滑剤をカーボン保護膜上に塗布し、厚さ15Åの潤滑膜を形成し、磁気記録媒体を得た。
温度調節装置2に導入する際のディスクDの温度や、温度調節装置2を用いた温度調節操作における温度調節ガスの流量または温度を変化させることによって、カーボン保護膜を形成する際のディスクDの温度を変えること以外は上記試験例と同様にして磁気記録媒体を作製した。試験結果を表4に併せて示す。
以上説明したように、本発明の磁気記録媒体の製造方法にあっては、高密度で耐久性に優れたカーボン保護膜を形成することができる。このため、カーボン保護膜の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、記録再生時のスペーシングロスを低減することが可能な磁気記録媒体を得ることができる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。また、生産効率を高めることが可能となる。
まず、スパッタリング法等の方法を用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、上述したとおり、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能である。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
次いで、このディスクDを、プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるよう混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。
この圧力を上記範囲内の値とするのは、この圧力を0.1Pa未満とすると成膜レートが低下し、10Paを越える値とするとカーボン保護膜の耐久性が低下するためである。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
また保護膜上には、上述の潤滑剤を塗布し潤滑膜を設けることも可能である。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
また、成膜レートを高くすることができ、効率のよい製造が可能となる。
すなわち、反応ガスの圧力を上記範囲に設定すると、反応ガス中の炭化水素の一部がプラズマにより励起活性種となり、その一部が分解した後、ディスクD上で再構築され、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCという)となり、形成されるカーボン保護膜が強度的に優れたものとなる。
また、チャンバ10内に供給される反応ガスの量が十分なものとなり、成膜レートが高まる。
これに対し、反応ガスの圧力が上記範囲下限値未満であると、チャンバ10内に存在する反応ガス中炭化水素の分子数が不足し、成膜レートが不十分となる。 また、圧力を上記範囲上限値を越えた値とすると、チャンバ10内に存在する反応ガス中炭化水素の分子数が多くなりすぎ、プラズマの存在下においてもこの炭化水素が分解しにくくなる。このため、反応ガス中炭化水素の一部が分解されることなくディスクDに吸着し、得られるカーボン保護膜中のDLC含有量が低下し、カーボン保護膜が強度に劣るものとなる。
(試験例37〜43)
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを23Åとした後、この基板両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Cr合金からなる非磁性下地膜(厚さ600Å)、およびCo合金からなる磁性膜を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:10となるよう混合した混合ガスを用いた。
この際、排気量調節バルブ17を調節することによって、チャンバ10の内圧を表5に示す値とした。
同時に、500Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜を形成した。この際、バイアス電源13を用いて、50Wの高周波電力をディスクDに印加した。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。
次いで、フォンブリン系潤滑剤をカーボン保護膜上に塗布し、厚さ15Åの潤滑膜を形成し、磁気記録媒体を得た。
また、上記磁気記録媒体には、ラマン分光分析装置(JEOL社製)を用いて、ラマン分光法(アルゴンイオンレーザー励起)による分析を試みた。結果を表5に併せて示す。
なお、一般に、カーボン膜をラマン分光法で分析した場合、1530cm−1付近にGバンド、1400cm−1付近にDバンドの2つのピークを持つプロファイルが得られる。このプロファイルにおいて、Id/Igが小さいほど、また、Gバンドピーク(G−line)が高波数側にシフトするほど、カーボン膜はダイヤモンド性が大きくDLC化されているということができる。
排気量調節バルブ17を調節することによってチャンバ10内の反応ガスの圧力を変えること以外は上記試験例と同様にして磁気記録媒体を作製した。試験結果を表5に併せて示す。
また、これら磁気記録媒体については、ラマン分光分析を試みた。結果を表5に併せて示す。
なかでも特に、反応ガスの圧力を2〜6Paとする方法によって作製されたものは、より耐久性に優れたものとなったことがわかる。
また、反応ガス圧力を上記範囲内に設定する方法により作製された磁気記録媒体のカーボン保護膜は、上記範囲外に設定する方法により作製されたものに比べ、Gバンドピークが高周波側に現れており、しかもId/Igが低く、DLC化されていることがわかる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
また、成膜レートを高くすることができ、効率のよい製造が可能となる。
まず、スパッタリング法などを用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、上述したとおり、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能である。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
次いで、上記操作により非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成したディスクDを、プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
この炭化水素としては、上述したとおり、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
上記混合ガスに対する窒素ガスの添加量を、混合ガスに対して0.1〜100vol%とするのは、窒素ガスの混合ガスに対する割合が0.1vol%未満の場合、または100vol%を越える場合には、カーボン保護膜の硬度が低下し、その耐久性が不十分となるためである。
また、上記混合ガスの炭化水素と水素の混合比率を上記範囲内とするのが好ましいとしたのは、混合ガス中の炭化水素の水素に対する割合が上記範囲下限値未満であると、成膜レートが低くなり実用的な工業生産に適さなくなり、上記範囲上限値を越えると、カーボン保護膜内に残留する応力が高くなり、得られるカーボン保護膜の密着性、耐CSS性が低下するためである。
また炭化水素として低級炭化水素を用いるのが好ましいとしたのは、炭化水素の炭素数が上記範囲上限値を越えると、ガスとして供給するのが困難となることに加え、放電時の炭化水素の分解が進行しにくくなり、カーボン保護膜が、強度に劣る高分子成分を多く含むものとなるためである。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
また保護膜上には、上述の潤滑剤を塗布し潤滑膜を設けることも可能である。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
すなわち、反応ガスとして窒素ガスを含むものを用いることによって、カーボン保護膜中に存在するダングリングボンドに窒素が結合し、カーボン保護膜が化学的に安定化され、機械的強度が高まったと考えられる。
また、特にカーボン保護膜上に潤滑膜を設ける場合には、窒素ガスを含む反応ガスを用いることによって、窒素極性基の導入によりカーボン保護膜表面のぬれ性が向上し、これによりカーボン保護膜の潤滑膜に対する親和性が高まり、磁気記録媒体の耐久性が向上すると考えられる。
窒素ガスの混合ガスに対する混合比率を上記の値とするのは、この混合比率を上記範囲下限値未満とすると、上記のような効果が不十分となり、上記範囲上限値を越える値とすると、カーボン保護膜中の窒素含有率が大きくなりすぎ、カーボン保護膜の強度が低下し、その耐久性が低下するためである。
(試験例46、47)
まず、NiPメッキを施したアルミニウム合金基板(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Cr合金からなる非磁性下地膜(厚さ600Å)、およびCo合金からなる磁性膜を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。
この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:10となるよう混合した混合ガスに、窒素ガスを混合ガスに対して表6に示す比率で混合させたものを用いた。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、500Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜を形成した。この際、バイアス電源13を用いて、50Wの高周波電力をディスクDに印加した。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。
次いで、フォンブリン系潤滑剤をカーボン保護膜上に塗布し、厚さ15Åの潤滑膜を形成し、磁気記録媒体を得た。
CSS試験は、MRヘッドを用い、40℃、湿度80%の環境下で、回転数7200rpmの条件で上記磁気記録媒体に対し20000回のCSS操作を行い、磁気記録媒体を1時間静置した後、ダイナミックスティクション値をモニターするものとした。
コロージョン試験は、磁気記録媒体を、高温高湿(温度60℃、湿度80%)条件下に96時間放置した後、50ccの超純水中に25℃の条件下で30分間浸漬し、この超純水中に抽出されたCo量(基板面積当たり)を測定するものとした。また同様に、磁気記録媒体を常温常湿(温度25℃、湿度50%)条件下に96時間放置した後、同様にしてCo抽出量を測定した。試験結果を表6に示す。
反応ガスとして、窒素ガスを混合ガスに対し表6に示す比率で混合したものを用いて磁気記録媒体を作製し、これら磁気記録媒体を、CSS試験およびコロージョン試験に供した。試験結果を表6に併せて示す。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
非磁性基板Sとしては、上述したとおり、NiPメッキ膜を有するアルミニウム合金基板に加え、ガラス、シリコンなどからなるものを用いることができる。
また、基板Sは、その表面にメカニカルテクスチャ処理などのテクスチャ処理を施したものとするのが好ましく、特に、表面平均粗さRaを1〜20Åとしたものを用いるのが好ましい。
非磁性下地膜41、磁性膜42の材料としては、上述したものを採用することができる。
非磁性下地膜41、磁性膜42の厚さは、50〜1000Å、50〜800Åとするのが好ましい。
プラズマCVDカーボン層43aの厚さは、30〜100Åとするのが好ましい。
これは、この厚さが30Å未満であると、保護膜全体の強度が不足し、100Åを越えると、得られる磁気記録媒体が、記録再生時においてスペーシングロスが大きく、高記録密度化した際に出力特性が低下しやすいものとなるためである。
スパッタカーボン層43bは、カーボン保護膜43の表面側に位置するものとされ、その厚さは、5〜100Å、好ましくは30〜100Åとするのが望ましい。
これは、この厚さが5Å未満であると、スパッタカーボン層43bと潤滑膜44の間の接合力が低下し磁気記録媒体の摺動耐久性が低下しやすく、100Åを越えると、高記録密度化した際に出力特性が低下しやすいものとなるためである。
潤滑膜44の材料としては、パーフルオロポリエーテル、フォンブリン系潤滑剤などを用いるのが好ましい。潤滑膜44の厚さは、5〜40Åとするのが好ましい。
図5は、上記磁気記録媒体を製造するために用いられるスパッタ装置を示すもので、ここに示すスパッタ装置は、チャンバ50と、チャンバ50の両側壁内面に設けられたターゲット51と、ターゲット51に電力を供給する電源52と、チャンバ50内にスパッタガスを供給するスパッタガス供給源53を備えて構成されている。
チャンバ50には、供給源53から供給されたスパッタガスをチャンバ50内に導入する導入管54と、チャンバ7内のガスを系外に排出する排気管55が接続されている。
ターゲット51としては、炭素を主成分とするものを用いることができる。
電源52としては、直流電源または高周波電源を用いることができる。
次いで、このディスクDを、プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるよう混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。バイアス電源13として高周波電源を用いる場合には、10〜300Wの高周波電力をディスクDに印加するのが好ましい。また、バイアス電源13としてパルス直流電源を用いる場合には、−400〜−10Vの電圧をディスクDに印加するのが好ましい。また、パルス幅は10〜50000ns、周波数は10kHz〜1GHzとするのが好ましい。
形成されたプラズマCVDカーボン層43aは、従来公知のスパッタリング法によって形成されたカーボン膜に比べ、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含み、強度的に優れたものとなる。
このスパッタガスとしては、通常、スパッタリング法で用いられるアルゴンを用いることができる。特にアルゴンに、窒素、水素、およびメタンのうち1種以上を、アルゴンに対する添加率が0.1〜100vol%となるように含有させたものを用いるのが好ましい。
同時に、電源52を用いてターゲット51に電力供給し、スパッタリングによりターゲット51の材料をプラズマCVDカーボン層43a上に供給し、スパッタカーボン層43bをディスクDの両面に形成する。
この操作を行う際には、スパッタガスの流量を20〜300sccmとするのが好ましい。
次いで、スパッタカーボン層43b上に、ディッピング法などの方法を用いてパーフルオロポリエーテル、フォンブリン系潤滑剤等の潤滑剤を塗布し潤滑膜44を形成する。
このようにして、基板S上に、非磁性下地膜41、磁性膜42、プラズマCVDカーボン層43aとスパッタカーボン層43bからなるカーボン保護膜43、および潤滑膜44を順次形成した磁気記録媒体を得る。
またこれに加えて、カーボン保護膜43が、強度的に優れたプラズマCVDカーボン層43aを有するものであるため、カーボン保護膜43の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、スペーシングロスを低減することが可能となる。また、CSS時にスピンオフなどの問題が生じるのを防ぐことができる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となるという効果を得ることができる。
なお、上記実施形態では、カーボン保護膜43を、プラズマCVDカーボン層43aとスパッタカーボン層43bからなる2層構造を有するものとしたが、本発明の磁気記録媒体はこれに限らず、3層以上の構造を有するものであってもよい。
(試験例50〜52)
図1および図5に示すプラズマCVD装置およびスパッタ装置を用いて次のようにして磁気記録媒体を製造した。
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板S(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板S両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Crからなる非磁性下地膜41(厚さ600Å)、およびCo合金(Co82Cr15Ta3)からなる磁性膜42を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。
この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:10となるよう混合したものを用いた。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、500Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ40ÅのプラズマCVDカーボン層43aを形成した。この際、バイアス電源13を用いて−120Vのパルス直流バイアス(周波数200kHz、パルス幅500ns)をディスクDに印加した。また、成膜時のディスクDの温度は150℃とした。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。またディスクDと電極11の距離は30mmとした。
同時に、電源52を用いて、ターゲット51に電力供給し、スパッタリングによりスパッタカーボン層43bをディスクDの両面に形成した。
次いで、スパッタカーボン層43b上に、ディッピング法によってフォンブリン系潤滑剤(Fomblin Zdol2000)を塗布し、厚さ20Åの潤滑膜44を形成し、磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体を、次に示すBonded Ratio試験、スピンオ フ試験、およびCSS試験に供した。
上記磁気記録媒体を溶剤(旭硝子社製AK225)中に15分間浸漬した後に取り出す操作を行い、この操作前の潤滑膜44の膜厚に対する操作後の潤滑膜44の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑膜44の膜厚は、半径20mmの位置においてESCAを用いて測定した。
上記磁気記録媒体を、100℃の温度条件下で、回転速度10000rpmで168時間にわたって回転させる操作を行い、この操作前の潤滑膜44の膜厚に対する操作後の潤滑膜44の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑膜44の膜厚は、磁気記録媒体の半径20mmの位置(内周)、および半径42mmの位置(外周)においてFT−IRを用いて測定した。
CSS試験は、MRヘッドを用い、40℃、湿度80%の環境下で、回転数7200rpmの条件で上記磁気記録媒体に対し80000回のCSS操作を行うものとした。
試験結果を表7に示す。
カーボン保護膜を、試験例50〜52の方法に準じてプラズマCVD法のみによって形成し、単層構造のカーボン保護膜を有するものとした磁気記録媒体を作製した(試験例53)。
また、カーボン保護膜を、従来公知のスパッタリング法により形成し、単層構造のカーボン保護膜を有するものとした磁気記録媒体も作製した(試験例54)。
これら磁気記録媒体を、上記3種の試験に供した。試験結果を表8に示す。
なお、表中には、プラズマCVDカーボン層をpCVD層、スパッタカーボン層をスパッタ層と表記した。
また、Bonded Ratio試験およびスピンオフ試験の結果より、カーボン保護膜43を2層構造とした磁気記録媒体は、カーボン保護膜をプラズマCVD法のみによって形成したものに比べ、潤滑膜厚の減少率が低いものとなったことがわかる。
従って、カーボン保護膜43を2層構造とした磁気記録媒体は、カーボン保護膜をプラズマCVD法のみ、またはスパッタリング法のみによって形成した単層構造のものと比べ、耐久性に優れたものとなったことがわかる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
まず、既知のスパッタリング法などを用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、上述したとおり、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能である。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
本実施形態の磁気記録媒体の製造方法では、続いて、次に示す2工程からなるカーボン保護膜成膜工程を行う。
まず第1の工程として、次の操作を行う。
上記非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成したディスクDを、プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるように混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、上述したとおり、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
同時に、高周波電源12を用いて、好ましくは50〜2000Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、上記反応ガスを原料とするプラズマ化学気相成長により好ましくは30〜45Åの第1カーボン層をディスクDの両面に形成する。
バイアスとして高周波バイアスを用いる場合には、バイアス電源13として高周波電源を用い、10〜300Wの高周波電力をディスクDに印加するのが好ましい。
これは、成膜時にディスクDに印加するバイアスが10W未満であると、第1カーボン層が、強度に劣る高分子成分を多く含むものとなりその耐久性が低下し、300Wを越えると、成膜時にスパークが起こりやすく第1カーボン層表面に異常成長部ができやすくなるためである。
また、バイアスとしてパルス直流バイアスを用いる場合には、バイアス電源13としてパルス直流電源を用いる場合には、−400〜−10Vの電圧をディスクDに印加するのが好ましい。
これは、成膜時にディスクDに印加するバイアスが−400V未満であると、成膜時にスパークが起こりやすく第1カーボン層表面に異常成長部ができやすくなり、−10Vを越えると、第1カーボン層が、強度に劣る高分子成分を多く含むものとなるためである。
また、パルス幅は10〜50000ns、周波数は10kHz〜1GHzとするのが好ましい。
形成された第1カーボン層は、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含むものとなる。
第1カーボン層の厚さを30〜45Åとするのが好ましいとしたのは、この厚さが30Å未満であるとカーボン保護膜の強度が低下し磁気記録媒体の耐久性が低下し、45Åを越えると、得られる磁気記録媒体が、記録再生時にスペーシングロスが大きくなり高記録密度化した際に出力特性が低下しやすいものとなるためである。
第2の工程では、バイアス電源13によるディスクDへのバイアスの印加を停止し、バイアスの印加を行わないこと以外は上記第1の工程と同様の操作によって好ましくは5〜20Åの第2カーボン層を第1カーボン層上に形成する。
第2カーボン層の厚さを5〜20Åとするのが好ましいとしたのは、この厚さが5Å未満であると、第2カーボン層と潤滑膜の間の接合力が低下し磁気記録媒体の摺動耐久性が低下しやすく、20Åを越えると、得られる磁気記録媒体が、記録再生時にスペーシングロスが大きくなり高記録密度化した際に出力特性が低下しやすいものとなるためである。
なお、上記第1および第2の工程において電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
上記第1および第2の工程により、第1および第2カーボン層からなるカーボン保護膜がディスクD上に形成される。
次いで、第2カーボン層上に、ディッピング法などの方法を用いてパーフルオロポリエーテル、フォンブリン系潤滑剤等の潤滑剤を塗布し好ましくは厚さ5〜40Åの潤滑膜を形成する。
このようにして、基板上に、非磁性下地膜、磁性膜、第1および第2カーボン層からなるカーボン保護膜、および潤滑膜を順次形成した磁気記録媒体を得る。
上記製造方法によって製造された磁気記録媒体の例としては、例えば図4に示すものと同様の構造のものを挙げることができる。
この例の磁気記録媒体において、図中符号Sは非磁性基板、符号41は非磁性下地膜、符号42は磁性膜、符号43はカーボン保護膜、符号43aは第1カーボン層、符号43bは第2カーボン層、符号44は潤滑膜を示す。
またこれに加えて、バイアスをディスクDに印加しつつ形成した第1カーボン層43aは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)をより多く含み、強度的に優れたものとなる。
このため、カーボン保護膜43が強度が高く、しかも潤滑膜44に対し強固に接合したものとなり、カーボン保護膜43の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、スペーシングロスを低減することが可能となる。また、CSS時にスピンオフなどの問題が生じることがない。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
なお、上記実施形態では、カーボン保護膜43を、第1カーボン層43aと第2カーボン層43bからなる2層構造を有するものとしたが、本発明の磁気記録媒体はこれに限らず、3層以上の構造を有するものであってもよい。
(試験例55〜59)
図1に示すプラズマCVD装置を用いて次のようにして磁気記録媒体を製造した。
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板S(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板S両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Crからなる非磁性下地膜41(厚さ600Å)、およびCo合金(Co82Cr15Ta3) からなる磁性膜42を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。
この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:12となるよう混合したものを用いた。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、バイアス電源13を用いて−120Vのパルス直流バイアス(周波数200kHz、パルス幅500ns)をディスクDに印加しつつ450Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、表9に示す厚さの第1カーボン層43aを形成した。また、成膜時のディスクDの温度、成膜レートは、それぞれ130℃、450Å/minとした。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。またディスクDと電極11の距離は30mmとした。
続いて、上記操作によって表面に第1カーボン層43aを形成したディスクD上に、バイアスをディスクDに印加しないこと以外は第1カーボン層43a形成操作と同様にして表9に示す厚さの第2カーボン層43bを形成した。
次いで、第2カーボン層43b上に、ディッピング法によってフォンブリン系潤滑剤(Fomblin Zdol2000)を塗布し、厚さ20Åの潤滑膜44を形成し、磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体を、次に示すBonded Ratio試験、スピンオ フ試験、およびCSS試験に供した。
上記磁気記録媒体を溶剤(旭硝子社製AK225)中に15分間浸漬した後に取り出す操作を行い、この操作前の潤滑膜44の膜厚に対する操作後の潤滑膜44の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑膜44の膜厚は、半径20mmの位置においてESCAを用いて測定した。
上記磁気記録媒体を、100℃の温度条件下で、回転速度10000rpmで168時間にわたって回転させる操作を行い、この操作前の潤滑膜44の膜厚に対する操作後の潤滑膜44の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑膜44の膜厚は、磁気記録媒体の半径20mmの位置(内周)、および半径42mmの位置(外周)においてFT−IRを用いて測定した。
CSS試験は、MRヘッドを用い、40℃、湿度80%の環境下で、回転数7200rpmの条件で上記磁気記録媒体に対し40000回のCSS操作を行うものとした。試験結果を表9に示す。
第2カーボン層43bを形成しないこと以外は上記試験例と同様にして磁気記録媒体を作製した。
この磁気記録媒体を、上記3種の試験に供した。試験結果を表9に示す。
カーボン保護膜を、従来方法と同様のスパッタリング法によって形成した磁気記録媒体を作製した。
この磁気記録媒体を、上記3種の試験に供した。試験結果を表9に示す。
特に、第2カーボン層43bの厚さを5〜20Åとした磁気記録媒体はCSS操作に対して十分な耐久性を示したことがわかる。
また、Bonded Ratio試験およびスピンオフ試験の結果より、カーボン保護膜43を2層構造とした磁気記録媒体は、カーボン保護膜を単層構造としたものに比べ、潤滑膜厚の減少率が低いものとなったことがわかる。
従って、カーボン保護膜を2層構造とした磁気記録媒体は、耐久性に優れたものとなったことがわかる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
本実施形態の磁気記録媒体は、図4に示すものと同様の構造とすることができる。本実施形態の磁気記録媒体において、図中符号Sは非磁性基板、符号41は非磁性下地膜、符号42は磁性膜、符号43は保護膜、符号44は潤滑膜を示す。
非磁性基板Sとしては、NiPメッキ膜を有するアルミニウム合金基板に加え、ガラス、シリコンなどからなるものを用いることができる。
また、基板Sは、その表面にメカニカルテクスチャ処理などのテクスチャ処理を施したものとするのが好ましく、特に、表面平均粗さRaを1〜20Åとしたものを用いるのが好ましい。非磁性下地膜41、磁性膜42の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
タンタル窒素層43aは、タンタルおよび窒素からなり、窒素含有量が1〜30at%である材料を主成分とするものとされる。
この材料の窒素含有量が1at%未満であると、保護膜43の強度が低下し、得られる磁気記録媒体の耐久性が低下する。また窒素含有量が30at%を越えると、保護膜43の強度が低下し、得られる磁気記録媒体の耐久性が低下する。
タンタル窒素層43a中のタンタルおよび窒素は、TaN、Ta2N、Ta3N5 、単体、これらの混合物などの形態で存在する。
タンタル窒素層43aの厚さは、1〜95Åとするのが好ましい。
これは、この厚さが1Å未満であると、保護膜43の強度が不足し、95Åを越えると、得られる磁気記録媒体が、記録再生時においてスペーシングロスが大きくなり、高記録密度化した際に出力特性が低下しやすいものとなるためである。 カーボン層43bは、プラズマCVD法によって形成されたものとされる。
カーボン層43bの厚さは、5〜100Åとするのが好ましい。
これは、この厚さが5Å未満であると、カーボン層43bと潤滑膜44の間の接合力が低下し磁気記録媒体の摺動耐久性が低下しやすく、100Åを越えると、保護膜43の強度が低下するためである。
潤滑膜44は、パーフルオロポリエーテル、フォンブリン系潤滑剤などからなるものとするのが好ましい。潤滑膜44の厚さは、5〜40Åとするのが好適である。
本実施形態の製造方法では、ターゲット51として、タンタル、またはタンタルと窒素の混合物を主成分とする材料からなるものが用いられること以外は図5に示すものと同様の構造のスパッタ装置が用いられる。
電源52としては、直流電源または高周波電源を用いることができる。直流電源としては、50〜6000Wの電力をターゲット51に供給することが可能なものを用いるのが好ましい。
上記スパッタ装置、および図1に示すプラズマCVD装置を用いて上記磁気記録媒体を製造するには、まず、NiPメッキ膜が形成されたアルミニウム合金などからなる基板Sの両面に、スパッタリング法等の方法を用いて、Cr合金などからなる非磁性下地膜41、およびCo合金などからなる磁性膜42を順次形成し、ディスクDを得る。
続いて、このディスクDを、スパッタ装置のチャンバ50内に搬入するとともに、供給源53から供給されたスパッタガスを導入管54を通してチャンバ50内に導入しつつチャンバ50内のガスを排気管55を通して排出し、上記ディスクDの表面をこのスパッタガスに曝す。
このスパッタガスとしては、次に示すものを用いることができる。
ターゲット51として、タンタルを主成分とするものを用いる場合には、通常、スパッタリング法で用いられるArなどのガスに、このガスに対し例えば0.1〜100vol%の窒素ガスを添加したものを用いることができる。
また、ターゲット51として、タンタルおよび窒素の混合物を主成分とするものを用いる場合には、Arなどのガス、またはこのガスに窒素を適当量含有させたものを用いることができる。
同時に、電源52を用いて、ターゲット51に電力供給しスパッタリングによりターゲット51の材料をディスクD上に供給し、タンタルおよび窒素からなる材料を主成分とするタンタル窒素層43aをディスクDの両面に形成する。
この操作を行う際には、スパッタガスの流量を10〜200sccmとするのが好ましい。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるよう混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
同時に、高周波電源12を用いて、好ましくは50〜2000Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、上記反応ガスを原料とするプラズマ化学気相成長により好ましくは5〜100Åのカーボン層43bをディスクDの両面に形成する。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
形成されたカーボン層43bは、従来公知のスパッタリング法によって形成されたカーボン膜に比べ、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含み、強度的に優れたものとなる。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
上記磁気記録媒体が耐久性に優れたものとなるのは、保護膜43が、硬度の高いタンタル窒素層43a上に、十分な強度を有ししかも潤滑膜44に対する接合力が比較的高いカーボン層43bを形成したものであるためであると考えられる。
このため、保護膜43の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、スペーシングロスを低減することが可能となる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
なお、上記実施形態では、保護膜43を、タンタル窒素層43aとカーボン層43bからなる2層構造を有するものとしたが、本発明の磁気記録媒体はこれに限らず、3層以上の構造を有するものであってもよい。
(試験例62〜64)
上記プラズマCVD装置、およびスパッタ装置を用いて次のようにして磁気記録媒体を製造した。スパッタ装置としては、ターゲット51がタンタルからなるものを用いた。
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板S(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板S両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Crからなる非磁性下地膜41(厚さ600Å)、およびCo合金(Co82Cr15Ta3) からなる磁性膜42を順次形成し、ディスクDを得た。
続いて、上記ディスクDを、スパッタ装置のチャンバ50内に搬入するとともに、供給源53から供給されたスパッタガスを導入管54を通してチャンバ50内に導入した。
このスパッタガスとしては、窒素を表10に示す割合でArに含有させたものを用いた。チャンバ50の内圧は0.7Paとした。
同時に、電源52を用いて、ターゲット51に600Wの直流電力を供給し、スパッタリングにより窒素およびタンタルからなるタンタル窒素層43aをディスクDの両面に形成した。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスをチャンバ10内に供給した。
この反応ガスとしては、トルエンと水素を表10に示す割合で混合したものを用いた。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、バイアス電源13を用いて50Wの高周波電力(周波数13.56MHz)をディスクDに印加しつつ300Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、カーボン層43bを形成した。
また、カーボン層43b形成時のディスクDの温度は130℃とした。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。またディスクDと電極11の距離は30mmとした。
次いで、カーボン層43b上に、ディッピング法によってフォンブリン系潤滑剤(Fomblin Zdol2000)を塗布し、厚さ20Åの潤滑膜44を形成し、磁気記録媒体を得た。
タンタル窒素層を形成せず、保護膜をカーボン層のみからなる単層構造として磁気記録媒体を作製した。
カーボン層を形成せず、保護膜をタンタル窒素層のみからなる単層構造として磁気記録媒体を作製した。
保護膜をタンタル窒素層とカーボン層からなる2層構造とし、タンタル窒素層を形成する際に用いるスパッタガスとして、表10に示す割合の窒素を含むものを用いる方法によって磁気記録媒体を作製した。
この磁気記録媒体を上記CSS試験に供した。試験結果を表10に示す。
上記試験例62、63、64、66の磁気記録媒体のタンタル窒素層中の窒素含有率はいずれも5at%となり、試験例67の磁気記録媒体のタンタル窒素層中の窒素含有率は40at%となった。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
紫外線光照射装置は、カーボン保護膜表面に紫外線光を照射するためのもので、カーボン保護膜を形成したディスクを収容するチャンバ74と、チャンバ74内に収容されたディスクの表面に紫外線光を照射する紫外線光源75を備えたものとされる。この紫外線光源75としては、波長100〜400nmの紫外線光を発することができるものを用いるのが好ましい。
紫外線光源75の好適な具体例としては、エキシマ発光ランプを挙げることができる。
洗浄装置は、紫外線光照射装置を経たディスクのカーボン保護膜表面を水洗するためのもので、ディスクを収容するチャンバ86と、チャンバ86内に収容されたディスクを洗浄する洗浄水の供給源87と、供給源87から供給された洗浄水を上記ディスクに向けて噴射するノズル88を備えたものとされる。
まず、スパッタリング法などを用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、上述したとおり、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能である。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
次いで、上記非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成したディスクDを、プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるように混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
形成されたカーボン保護膜は、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含むものとなる。
この紫外線光として、波長が100nm未満であるものを用いると、エネルギーロスが大きくなり、400nmを越えるものを用いると、カーボン保護膜23の改質効果が不十分となるため好ましくない。
紫外線照射条件は、照度5〜50mW/cm2、照射時間2〜600秒間とするのが好ましい。
次いで、紫外線光照射装置を経たディスクDを、洗浄装置内に搬入するとともに、ノズル88を用いて、供給源87から供給された洗浄水を上記ディスクDに向けて噴射し、カーボン保護膜表面を洗浄する。ここで用いる洗浄水としては、不純物含有量の少ない超純水を用いると、カーボン保護膜表面をより清浄化できるため好ましい。
次いで、洗浄装置を経たディスクD表面のカーボン保護膜上に、ディッピング法などの方法を用いてパーフルオロポリエーテル、フォンブリン系潤滑剤等の潤滑剤を塗布し潤滑膜を形成する。このようにして、基板上に、非磁性下地膜、磁性膜、カーボン保護膜、および潤滑膜を順次形成した磁気記録媒体を得る。
この例の磁気記録媒体において、図中符号Sは非磁性基板、符号31は非磁性下地膜、符号32は磁性膜、符号33はカーボン保護膜、符号34は潤滑膜を示す。
このため、カーボン保護膜33の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、スペーシングロスを低減することが可能となる。また、CSS時にスピンオフなどの問題が生じるのを防ぐことができる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
また、カーボン保護膜33の表面を水洗することによって、カーボン保護膜33の表面に不純物が付着している場合でもこの不純物を除去し、これを清浄化することができる。
このため、カーボン保護膜33と潤滑膜34との間の不純物を原因としてこれらの間の接合力が低下し、磁気記録媒体の耐久性が低下するのを防ぐことができる。
また紫外線光照射を行わずに、カーボン保護膜表面の水洗を行うものであってもよい。また水洗を行わず、紫外線光照射のみを行うものであってもよい。
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法では、カーボン保護膜形成後、カーボン保護膜表面微小突起を削り取るテープバニッシュ工程を行ってもよい。
(試験例68)
図1、図6および図7に示すプラズマCVD装置、紫外線光照射装置、および洗浄装置を用いて次のようにして磁気記録媒体を製造した。
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板S(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板S両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Crからなる非磁性下地膜31(厚さ600Å)、およびCo合金(Co82Cr15Ta3 )からなる磁性膜32を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。
この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:12となるよう混合したものを用いた。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、バイアス電源13を用いて−120Vのパルス直流バイアス(周波数200kHz、パルス幅500ns)をディスクDに印加しつつ450Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜33を形成した。また、成膜時のディスクDの温度、成膜レートは、それぞれ130℃、450Å/minとした。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。またディスクDと電極11の距離は30mmとした。
続いて、上記操作によってカーボン保護膜33を形成したディスクDを、洗浄装置内に搬入し、超純水を用いてその表面を洗浄した。
続いて、ディスクDを紫外線光照射装置のチャンバ74内に搬入し、紫外線光源75を用いて紫外線光をこのディスクDに照射した。
この際、紫外線光源75としては、波長172nm(半値幅14nm)の紫外線光を照射できるエキシマランプ(ウシオ電機製)を用い、窒素ガス雰囲気下で照度10mW/cm2、照射時間30秒の条件で紫外線光照射を行った。
続いて、ディスクDを再び洗浄装置を用いて水洗し、次いで、洗浄後のカーボン保護膜33上に、ディッピング法によってフォンブリン系潤滑剤(Fomblin Zdol2000)を塗布し、厚さ20Åの潤滑膜34を形成し、磁気記録媒体を得た。
紫外線光源75として、波長222nmの紫外線光(半値幅2nm)を照射できるエキシマランプ(ウシオ電機製)を用い、窒素ガス雰囲気下で照度7mW/cm2、照射時間30秒の条件でディスクDに紫外線光照射を行うこと以外は試験例68と同様にして磁気記録媒体を作製した。
ディスクDへの紫外線光照射を空気中で行うこと以外は試験例68と同様にして磁気記録媒体を作製した。
紫外線光源75として、試験例68で用いたものと同様のものを用い、上記水洗工程を行わないこと以外は試験例68と同様にして磁気記録媒体を作製した。
紫外線光照射を行わないこと以外は試験例68と同様にして磁気記録媒体を作製した。
上記各試験例によって得られた磁気記録媒体を、次に示すBonded Ra tio試験、スピンオフ試験、およびCSS試験に供した。
上記磁気記録媒体を溶剤(旭硝子社製AK225)中に15分間浸漬した後に取り出す操作を行い、この操作前の潤滑膜34の膜厚に対する操作後の潤滑膜34の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑膜34の膜厚は、半径20mmの位置においてESCAを用いて測定した。
上記磁気記録媒体を、100℃の温度条件下で、回転速度10000rpmで168時間にわたって回転させる操作を行い、この操作前の潤滑膜34の膜厚に対する操作後の潤滑膜34の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑膜34の膜厚は、磁気記録媒体の半径20mmの位置(内周)、および半径42mmの位置(外周)においてFT−IRを用いて測定した。
CSS試験は、MRヘッドを用い、低温低湿環境(5℃、15%)下で、回転数7200rpmの条件で上記磁気記録媒体に対し5000回のCSS操作を行うものとした。
このCSS試験としては、上記磁気記録媒体を、上記CSS操作を行うに先だって180℃の温度環境下で3時間ベーク処理するベーク処理試験と、ベーク処理を行わない試験の2種の試験を実施した。試験結果を表11に示す。
紫外線光照射、および水洗を行わないこと以外は試験例68と同様にして磁気記録媒体を作製した。
カーボン保護膜(厚さ100Å)を、従来方法と同様のスパッタリング法によって形成すること以外は試験例68と同様にして磁気記録媒体を作製した。
水洗を行わないこと以外は試験例74と同様にして磁気記録媒体を作製した。
紫外線光照射を行わないこと以外は試験例74と同様にして磁気記録媒体を作製した。
紫外線光照射および水洗を行わないこと以外は試験例74と同様にして磁気記録媒体を作製した。
これら磁気記録媒体を、上記3種の試験に供した。試験結果を表11に示す。
なお、表中、プラズマCVD法はpCVD法と表記した。また紫外線光照射はUV照射と表記した。
また、Bonded Ratio試験およびスピンオフ試験の結果より、紫外 線照射を行う方法によって作製された磁気記録媒体は、紫外線照射を行わない方法により作製されたものに比べ、潤滑膜厚の減少率が低いものとなったことがわかる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
本実施形態の磁気記録媒体は、図2に示すものと同様の構造とすることができる。本実施形態の磁気記録媒体において、図中符号Sは非磁性基板、符号31は非磁性下地膜、符号32は磁性膜、符号33はカーボン保護膜、符号34は潤滑膜を示す。
非磁性基板Sとしては、NiPメッキ膜を有するアルミニウム合金基板に加え、ガラス、シリコンなどからなるものを用いることができる。
また、基板Sは、その表面にメカニカルテクスチャ処理などのテクスチャ処理を施したものとするのが好ましく、特に、表面平均粗さRaを1〜20Åとしたものを用いるのが好ましい。
非磁性下地膜31、磁性膜32の材料としては、上述したものを採用することができる。非磁性下地膜31、磁性膜32の厚さは、50〜1000Å、50〜800Åとするのが好ましい。
カーボン保護膜33は、プラズマCVD法によって形成されたものとされる。
カーボン保護膜33の厚さは、30〜100Åとするのが好ましい。
なお本明細書において主成分とは当該成分を70wt%を越えて含むことを指す。
上記化合物の中でも特に、潤滑膜34を、式(1)または式(5)で示され、かつ数平均分子量が500〜6000である化合物を主成分とするものとすると、スピンオフ性、CSS特性をより高めることができるため好ましい。
また、潤滑膜34は、上記式(1)ないし式(5)で示されるもののうち1種または2種以上であり、かつ数平均分子量が500〜6000である化合物に、下記式(6)で示される化合物を含有率が0.1〜20wt%となるよう混合した混合物を主成分とするものとすることも可能である。
式(6)で示される化合物を用いる場合には、この化合物の含有率が0.1wt%未満であると、得られる磁気記録媒体の表面潤滑性が低下しCSS特性が低くなり、20wt%を越えると、ヘッドにこの化合物由来のスメアが付着しやすくなるため好ましくない。
上記磁気記録媒体を製造するには、まず、スパッタリング法などを用いて、非磁性基板Sの両面に非磁性下地膜31、磁性膜32を形成し、ディスクDを得る。
次いで、上記ディスクDを、図1に示すプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるように混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
同時に、高周波電源12を用いて、好ましくは50〜2000Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、上記反応ガスを原料とするプラズマ化学気相成長により好ましくは30〜100Åのカーボン保護膜33をディスクDの両面に形成する。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
形成されたカーボン保護膜33は、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含むものとなる。
上記磁気記録媒体にあっては、潤滑膜34を、式(1)ないし式(5)のうち1種または2種以上で示される化合物を主成分とするもの、または該化合物に、式(6)で示される化合物を含有率が0.1〜20wt%となるよう混合した混合物を主成分とするものとしたので、潤滑膜34が、カーボン保護膜33に対して密着性が高く、耐久性に優れたものとなる。
このため、カーボン保護膜33の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、スペーシングロスを低減することが可能となる。また、CSS時にスピンオフなどの問題が生じることがない。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
(試験例78〜84)
図2に示すものと同様の磁気記録媒体を次のようにして作製した。
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板S(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板S両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Crからなる非磁性下地膜31(厚さ600Å)、およびCo合金(Co82Cr15Ta3) からなる磁性膜32を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。
この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:12となるよう混合したものを用いた。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、バイアス電源13を用いて−120Vのパルス直流バイアス(周波数200kHz、パルス幅500ns)をディスクDに印加しつつ450Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜33を形成した。また、成膜時のディスクDの温度、成膜レートは、それぞれ130℃、450Å/minとした。また、電極11、11にそれぞれ供給する高周波電力の位相差は180゜とした。またディスクDと電極11の距離は30mmとした。
続いて、カーボン保護膜33上に、ディッピング法によって表12に示す材料からなる厚さ20Åの潤滑膜34を形成し、磁気記録媒体を得た。
表中、カッコ内の数字は、上記式の番号に対応するものである。すなわち、例えば試験例78で用いたFomblin ZTETRAOL2000(1)は、上記式(1)に示す化合物を示す。
また、試験例83の磁気記録媒体では、潤滑膜34を、Fomblin ZTETRAOL2000(1)と、Fomblin Zdol2000(4)との混合物(混合比率は重量比で1:1)からなるものとした。
また、試験例84の磁気記録媒体では、潤滑膜34を、Demnum SP(2) に、X1P(6)を3wt%となるよう添加し混合した材料からなるものとした。
得られた磁気記録媒体を、次に示すBonded Ratio試験、およびCSS試験に供した。
上記磁気記録媒体を溶剤(旭硝子社製AK225)中に15分間浸漬した後に取り出す操作を行い、この操作前の潤滑膜34の膜厚に対する操作後の潤滑膜34の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑膜34の膜厚は、半径20mmの位置においてESCAを用いて測定した。
また、上記Bonded Ratio試験終了後の磁気記録媒体を、120℃ の温度環境下に3時間おいた後、同様にしてBonded Ratio試験に供 した。試験結果を表12に示す。
なお、表12には、120℃の加熱処理を行った後の試験結果をベーク有の欄に記載し、加熱処理前の試験結果をベーク無の欄に記載した。
上記磁気記録媒体を120℃の温度環境下で3時間ベーク処理した後、MRヘッドを用い、低温低湿環境(5℃、15%)下で、回転数7200rpmの条件で上記磁気記録媒体に対し10000回のCSS操作を行った後、この磁気記録媒体表面の動摩擦係数を測定した。さらに、上記磁気記録媒体を6時間静置した後、静摩擦係数を測定した。
カーボン保護膜をスパッタリング法により形成し、潤滑膜を表12に示す材料からなるものとして磁気記録媒体を作製した。
これら磁気記録媒体を、上記2種の試験に供した。試験結果を表12に示す。
なお、表中、プラズマCVD法はpCVD法と表記した。
従って、上記磁気記録媒体は、耐久性に優れたものとなったことがわかる。
また、カーボン保護膜をスパッタリング法によって形成した磁気記録媒体では、高温下でのベーク処理によってヘッドクラッシュまたは静摩擦係数の増加が起きたのに対し、カーボン保護膜をプラズマCVD法により形成し、かつ潤滑膜を上記化合物を主成分とするものとした磁気記録媒体は、高温処理によっても摩擦係数が低く保たれたことがわかる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
非磁性基板Sとしては、NiPメッキ膜を有するアルミニウム合金基板に加え、ガラス、シリコンなどからなるものを用いることができる。
また、基板Sは、その表面にメカニカルテクスチャ処理などのテクスチャ処理を施したものとするのが好ましく、特に、表面平均粗さRaを1〜20Åとしたものを用いるのが好ましい。
非磁性下地膜61、磁性膜62の材料としては、上述したものを採用することができる。
非磁性下地膜61、磁性膜62の厚さは、それぞれ50〜1000Å、50〜800Åとするのが好ましい。
ここでいうCo抽出量とは、50at%以上のCoを含む磁性膜上に保護膜を形成した磁気記録媒体を、温度60℃、湿度80%の条件下に96時間置いた後、25℃の条件下で水中に30分間浸漬した際に、この水中に浸出したCo量を指すものである。
このCo抽出量が3ng/cm2を越えると、磁気記録媒体の耐久性が低下す るため好ましくない。
カーボン保護膜63の厚さは、30〜100Åとするのが好ましい。
これは、この厚さが30Å未満であると、カーボン保護膜63の強度が不足し、100Åを越えると、得られる磁気記録媒体が、記録再生時においてスペーシングロスが大きくなり、高記録密度化した際に出力特性が低下しやすいものとなるためである。
また、カーボン保護膜63上には、パーフルオロポリエーテル、フォンブリン系潤滑剤などからなる厚さ5〜40Åの潤滑膜を設けることも可能である。
上記磁気記録媒体を製造するには、図1に示すプラズマCVD装置を用いることができる。
この装置を用いて上記磁気記録媒体を製造するには、まず、NiPメッキ膜が形成されたアルミニウム合金などからなる基板Sの両面に、スパッタリング法等の方法を用いて、Cr合金などからなる非磁性下地膜61、およびCo合金などからなる磁性膜62を順次形成し、ディスクDを得る。
次いで、このディスクDを、プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるよう混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。またチャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、上述したとおり、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
形成されたカーボン保護膜63は、従来公知のスパッタリング法によって形成されたカーボン膜に比べ、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含み、密度、強度が高く、Co抽出量が基板面積に対して3ng/cm2以下であるものとなる。
次いで、カーボン保護膜63上に、ディッピング法などの方法を用いてパーフルオロポリエーテル、フォンブリン系潤滑剤等の潤滑剤を塗布し潤滑膜を形成するのが好ましい。
このため、カーボン保護膜63の耐久性を十分なものとしつつ薄膜化することができ、スペーシングロスを低減することが可能となる。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
(試験例89〜92)
図8に示す磁気記録媒体を次のようにして作製した。
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板S(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板S両面に、スパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Crからなる非磁性下地膜61(厚さ600Å)、およびCo合金(Co82Cr15Ta3) からなる磁性膜62を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、チャンバ10内に供給した。この反応ガスとしては、トルエンと水素を混合したものを用いた。それぞれの流量は表13に示すとおりとした。また、チャンバ10の内圧は6Paとした。
同時に、表13に示す条件の高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜63を形成し磁気記録媒体を得た。
この際、バイアス電源13を用いて表13に示す条件のパルス直流バイアス(DC)または高周波バイアス(RF)をディスクDに印加した。また、成膜時のディスクDの温度は、130℃とした。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。またディスクDと電極11の距離は30mmとした。なお、表中、プラズマRF電力とは電極11に供給する高周波電力を示す。
コロージョン試験は、上記磁気記録媒体を、高温高湿(温度60℃、湿度80%)条件下に96時間放置した後、50ccの超純水中に30分間浸漬し、この超純水中に抽出されたCo量を測定するものとした。また同様に、この磁気記録媒体を常温常湿(温度25℃、湿度50%)条件下に96時間置いた後、同様にCo抽出量を測定する試験も行った。試験結果を表14に示す。
この磁気記録媒体に、ラマン分光分析装置(JEOL社製)を用いて、ラマン分光法(アルゴンイオンレーザー励起)による分析を試みた結果を表14に併せて示す。
また、上記磁気記録媒体のカーボン保護膜63の硬度を、ピコインデンタ(Hysitron社製)を用いて測定した。結果を表14に併せて示す。
カーボン保護膜を、カーボンからなるターゲットを用いて従来公知のスパッタリング法により形成し、保護膜をカーボンからなるものとした磁気記録媒体を作製した。
この際、スパッタガスとしてはArを用い、その流量は90sccmとした。
カーボン保護膜を、カーボンからなるターゲットを用いて従来公知のスパッタリング法により形成した。この際、スパッタガスとしてはArと窒素の混合ガスを用い、その流量はそれぞれ100sccm、50sccmとし、保護膜を、窒素およびカーボンからなるものとした。
これら磁気記録媒体を、上記コロージョン試験、ラマン分光分析、硬度測定に供した。結果を表14に併せて示す。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
ここに示すテクスチャ加工装置は、テクスチャ加工を施すべき非磁性基板Sを回転可能に支持する基板支持部24と、非磁性基板Sを機械的に研磨する研磨テープAを走行させる研磨テープ供給部25、25と、研磨テープAを基板S表面の一領域に押し当てるコンタクトローラ26、26と、研磨テープAと基板Sの接触部分に砥粒を供給する砥粒供給ノズル27、27を有するものである。
研磨テープ供給部25は、研磨テープAを送り出す送出ロール25aと、研磨テープAを引き取る引取ロール25bを備えたもので、送出ロール25aに巻き付けられた研磨テープAを、引取ロール25bによって、研磨テープAが接触する部分の基板Sの半径方向に対して垂直な方向に任意の速度で引き取ることができるように構成されている。研磨テープ供給部25は、基板Sの両面側に各々設けられている。
また、研磨テープ供給部25は、図示せぬ揺動機構によって、研磨テープAを、テープ走行方向に対しほぼ垂直な方向に揺動させることができるように構成するのが好ましい。
また、基板支持部24をテープ走行方向に対しほぼ垂直な方向に揺動させることができるように構成し、基板Sを研磨テープAに対し揺動させることができるようにすることも可能である。
コンタクトローラ26の外径は、20〜100mmとするのが好ましく、軸方向長さは、テクスチャ加工時に、基板Sの研磨処理を施すべき面の最内周側から最外周側に至る長さに設定するのが好ましい。
コンタクトローラ26は、基板S方向に付勢され、上記研磨テープAを所定の押付圧力、例えば0.3〜4kg/cm2で基板Sに押し当てることができるよう に構成するのが好ましい。
まず、非磁性基板Sをテクスチャ加工装置の基板支持部24に保持させる。
この非磁性基板Sとしては、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能であり、NiPメッキ膜が形成されたアルミニウム合金基板に加え、ガラス、シリコンなどからなるものを用いることができる。
この基板Sを所定の速度で図中矢印方向に回転させる。
基板Sの回転数は、300〜2000rpmとするのが好ましい。これは、この回転数が300rpm未満であるとテクスチャ加工効率が低下し、2000rpmを越えると、基板加工表面形状が不均一となり易いためである。
この際、研磨テープ供給部25にセットされた研磨テープAを、引取ロール25bにより引き取る。この際、研磨テープAの引き取り速度は、0.1〜2cm/secとするのが好ましい。
研磨テープAは、コンタクトローラ26と基板Sの間を通過する際に、基板Sの両面に接触しつつ基板S上を走行する。
同時に、砥粒供給ノズル27を通して、図示せぬ砥粒スラリー貯留槽内の砥粒スラリーを研磨テープA上に流下する。
上記砥粒スラリーとしては、水中に砥粒を懸濁させたものが用いられる。
この砥粒としては、既知のテクスチャ加工法に用いられる汎用のものを用いることができ、例えば、ダイヤモンド系、アルミナ系、炭化珪素系のもの等が使用可能である。中でも特に、ダイヤモンド系のものを用いるのが好ましい。砥粒は、平均粒径が0.1〜0.5μmであるものを用いるのが好適である。
この平均粒径は0.1μm未満であると研磨が不十分となりやすく、0.5μmを越えると基板表面の粗さが大きくなりすぎるおそれがある。
この砥粒スラリーは、水に対し上記砥粒を5〜30%添加したものとするのが好ましい。また砥粒スラリーを流下する際の流量は、10〜100ml/分とするのが好ましい。
砥粒供給ノズル27から流下した砥粒スラリーは、研磨テープAと基板Sの接触部分に達し、砥粒スラリー中の砥粒は、基板Sの半径方向に対し垂直な方向に走行する研磨テープAによって基板Sに擦り付けられ、基板Sの表面を削り取る。回転する基板Sの表面を砥粒が削り取ることにより基板S表面に形成される溝状の研磨痕は、研磨テープAの走行方向に沿うもの、すなわちほぼ基板Sの円周方向に沿うものとなる。
また、このテクスチャ加工操作を行う際には、上記揺動機構によって、研磨テープAをテープ走行方向に対し垂直な方向に揺動させ、基板Sの加工面形状を基板半径方向に均一化するのが好ましい。この際、揺動周波数は、0.1〜5Hzとするのが好ましい。
また、揺動の際の研磨テープAの振幅は0.1〜30mmとするのが好ましい。
なお、研磨テープAの揺動方向は、テープ走行方向に対し垂直な方向に限らず、テープ走行方向に対し交差する方向であればよい。
次いで、汎用のスパッタ装置等を用いて、テクスチャ加工済みの基板S上に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
なお、上記非磁性下地膜、磁性膜は、スパッタリングに限らず、真空蒸着、イオンプレーティング、メッキなどの手法により形成することも可能である。
この反応ガスとしては、上述したとおり、炭化水素と水素を体積比が2:1〜1:100となるよう混合した混合ガスを用いるのが好ましく、この炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、および低級環式炭化水素のうち1種または2種以上を用いるのが好ましい。
この操作を行う際には、反応ガスの流量を50〜500sccmとするのが好ましい。また、チャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
同時に、高周波電源12を用いて、好ましくは50〜2000Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、上記反応ガスを原料とするプラズマ化学気相成長によりカーボン保護膜をディスクDの両面に形成する。カーボン保護膜の厚さは、30〜100Åとするのが好ましい。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
この際、バイアス電源13を用いて、バイアス、例えば高周波バイアスまたはパルス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うのが好ましい。
バイアスの電圧等の条件は、上述したとおりとするのが好ましい。
形成されたカーボン保護膜は、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含むものとなる。
また保護膜上には、上述の潤滑剤を塗布し潤滑膜を設けることも可能である。
この例の磁気記録媒体において、図中符号Sは非磁性基板、符号31は非磁性下地膜、符号32は磁性膜、符号33はカーボン保護膜、符号34は潤滑膜を示す。
従って、得られる磁気記録媒体の表面形状を、表面平均粗さRaが1〜20Åである基板Sの形状がそのまま反映されたものとし、均一かつ十分な高低差を有するものとすることができる。
よって、CSS特性およびグライドアバランチ特性がいずれも優れ、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
これに対し、カーボン保護膜を、従来より用いられているスパッタリング等によって形成する場合には、摺動耐久性の点からカーボン保護膜をある程度厚く形成せざるを得ず、このため基板Sの表面凹凸形状が均一であったとしても磁気記録媒体の表面微小凹凸形状が不均一となりやすく、グライドアバランチ特性を高めるために基板Sの表面平均粗さRaを低く、例えば1〜20Åとすると、磁気記録媒体表面の局部的な平坦化を原因としてCSS時の磁気ヘッド吸着が起こりやすくなりCSS特性が悪化しやすい。
(試験例95)
図1および図3に示すプラズマCVD装置およびテクスチャ加工装置を用いて次のようにして磁気記録媒体を製造した。このテクスチャ加工装置(日立製作所社製)は、外径が42mm、軸方向長さが42mmであるゴム製のコンタクトローラ26を備えたものとした。また、研磨テープAとしては、千代田社製2501−2(厚さ0.2mm、幅38mm)を用いた。
表面NiPメッキ膜を有するアルミニウム合金基板S(直径95mm、厚さ0.8mm)をテクスチャ加工装置の基板支持部24に保持させ、回転数380rpmで定速回転させるとともに、研磨テープAを2kg/cm2の押付圧力で基板Sに押し当てつつ基板S上を走行させるとともに、砥粒供給ノズル27より砥粒スラリーを流下し、研磨テープAと基板Sの間に砥粒を供給した。
この際、研磨テープAの引き取り速度は、0.2cm/secとした。また砥粒スラリーとしては、粒度0.3μmのダイヤモンド系砥粒の20%懸濁液を用いた。また、このテクスチャ加工を行うにあたり、図示せぬ揺動機構によって、研磨テープAをテープ走行方向に対し垂直な方向に周波数2Hz、振幅20mmの条件で揺動させた。
このテクスチャ加工操作によって、基板Sの表面平均粗さRaを表15に示す値とした。
得られた基板S上に、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Cr合金からなる非磁性下地膜(厚さ600Å)、およびCo合金からなる磁性膜を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを、流量が130sccmとなるようチャンバ10内に供給した。この反応ガスとしては、トルエンと水素を体積比が1:10となるよう混合した混合ガスを用いた。またチャンバ10の内圧は、6Paとした。
同時に、500Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に厚さ50Åのカーボン保護膜を形成した。この際、バイアス電源13を用いて、50Wの高周波電力をディスクDに印加した。また、電極11、11のそれぞれに供給する高周波電力の位相差は180゜とした。
次いで、フォンブリン系潤滑剤をカーボン保護膜上に塗布し、厚さ15Åの潤滑膜を形成し、磁気記録媒体を得た。
この磁気記録媒体を、次に示すグライドアバランチ試験、およびCSS試験に供した。
グライドアバランチ試験は、グライドテスタ(ソニーテクトロニクス社製DS4200)を用いて磁気記録媒体のグライドアバランチを測定するものとした。 また、CSS試験は、MRヘッドを用い、40℃、湿度80%の環境下で、回転数7200rpmの条件で上記磁気記録媒体に対し20000回のCSS操作を行い、磁気記録媒体を1時間静置した後、ダイナミックスティクション値をモニターするものとした。これら試験の結果を表15に示す。
テクスチャ加工操作を行う時間などを調節することによって、基板Sの表面平均粗さRaを変えて磁気記録媒体を作製した。
これら磁気記録媒体をグライドアバランチ試験、およびCSS試験に供した。結果を表15に併せて示す。
テクスチャ加工時に用いる砥粒の粒度を変え、基板Sの表面平均粗さRaを変化させて磁気記録媒体を作製した。
これら磁気記録媒体をグライドアバランチ試験、およびCSS試験に供した。結果を表15に併せて示す。
カーボン保護膜をスパッタリングによって形成すること以外は試験例96と同様にして磁気記録媒体を作製した。
この磁気記録媒体をグライドアバランチ試験、およびCSS試験に供した。結果を表15に併せて示す。
以上説明したように、本発明によれば、CSS特性およびグライドアバランチ特性がいずれも優れ、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
まず、スパッタリング法などを用いて、非磁性基板の両面に非磁性下地膜、磁性膜を形成し、ディスクDを得る。
この非磁性基板としては、上述したとおり、磁気記録媒体用基板として一般に用いられるものが使用可能である。
非磁性基板は、その表面にメカニカルテクスチャ処理などのテクスチャ処理を施したものとするのが好ましく、特に、表面平均粗さRaを1〜20Åとしたものを用いるのが好ましい。このRaが20Åを越えると、得られる磁気記録媒体のグライドハイト特性が低下するため好ましくない。非磁性下地膜、磁性膜の材料、厚さは、上述したとおりとすることができる。
次いで、上記操作により非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜を形成したディスクDを、プラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスを導入管15を通してチャンバ10内に導入しつつチャンバ10内のガスを排気管16を通して排出し、チャンバ10内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガスに曝す。
上記ガス中のブタジエン体積比が上記範囲下限値より低い場合には、成膜レートが低くなり実用的な工業生産に適さなくなるため好ましくない。
また、反応ガスとして、上記ブタジエンと水素の混合ガスを用いる場合には、この反応ガスのブタジエン:水素の体積比を100:60〜1:100、好ましくは100:60〜1:25とするのが望ましい。
カーボン保護膜形成の際には、チャンバ10の内圧を所定の値、例えば0.1〜10Paとするのが好ましい。
同時に、高周波電源12を用いて、好ましくは50〜2000Wの高周波電力を電極11に供給しプラズマを発生させ、上記反応ガスを原料とするプラズマ化学気相成長によりカーボン保護膜をディスクDの両面に形成する。この際、上記ブタジエンガスは、カーボン保護膜の炭素源となる。
電極11、11に電力供給する際には、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これは、これら電極11、11に供給する電力の位相を互いにずらせることによって、成膜レートの向上、保護膜の耐久性の向上を図ることができるためである。両電極に供給する電力の位相差は90〜270゜とするのが好ましく、特に、逆相(180゜)とするのが好ましい。
カーボン保護膜の厚さは、30〜100Å、好ましくは30〜75Åとするのが望ましい。この厚さが上記範囲下限値未満であると、得られるカーボン保護膜の耐コロージョン性が低下し、上記範囲上限値を越えると、得られる磁気記録媒体が、記録再生時におけるスペーシングロスが大きいものとなるため好ましくない。
バイアスとして高周波バイアスを用いる場合には、バイアス電源13として高周波電源を用い、10〜300W、好ましくは10〜150Wの高周波電力をディスクDに印加する。
この電力が上記範囲下限値未満であると、得られるカーボン保護膜の耐摺動特性が低下し、上記範囲上限値を越えると、成膜時にチャンバ10で異常放電が起こりやすくなり、カーボン保護膜に異常成長部分ができやすくなるため好ましくない。
バイアスとしてパルス直流バイアスを用いる場合には、バイアス電源13としてパルス直流電源を用い、−400〜−10V、好ましくは−300〜−50Vの電圧をディスクDに印加する。
この電圧が上記範囲下限値未満であると、得られるカーボン保護膜の耐摺動特性が低下し、上記範囲上限値を越えると、成膜時にチャンバ10で異常放電が起こりやすくなり、カーボン保護膜に異常成長部分ができやすくなるため好ましくない。
また、上記パルス直流バイアスのパルス幅は10〜50000ns、周波数は10kHz〜1GHzとするのが好ましい。
上記バイアスの印加によって、カーボン保護膜は、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)を多く含み、強度に優れたものとなる。
また保護膜上には、上述の潤滑剤を塗布し潤滑膜を設けることも可能である。
従って、信頼性が高く、しかも出力特性を低下させることなく十分な高記録密度化が可能となる磁気記録媒体を得ることができる。
また、カーボン保護膜の形成に際し、ディスクDにバイアスを印加することによって、カーボン保護膜を、DLCを多く含み強度に優れたものとするとともに、成膜レートを高め、効率よい製造を可能とすることができる。
なお、反応ガスとしては、上記ブタジエンガス、またはブタジエンと水素の混合ガスに、他のガス成分、例えば、窒素、アルゴン、酸素、フッ素などを、上記ブタジエンガス、またはブタジエンと水素の混合ガスに対し例えば1〜100vol%に相当する量添加したものを使用することもできる。
また上記ブタジエンガスに代えて、ブタジエンガスに、他の炭素源ガス、例えばメタン、エタン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタン、ベンゼン、トルエン等を、ブタジエンガスに対し例えば1〜100vol%に相当する量添加したものを使用することも可能である。
また、上記実施形態の製造方法ではカーボン保護膜をプラズマCVD法のみにより形成したが、本発明の磁気記録媒体の製造方法はこれに限らず、保護膜を、プラズマCVD法により形成したプラズマカーボン層と、他の方法により形成した層、例えばスパッタリングにより形成されたスパッタカーボン層や窒化タンタル層を有する多層構造となるように形成してもよい。
(試験例103〜117)
NiPメッキを施したアルミニウム合金基板(直径95mm、厚さ0.8mm)に、メカニカルテクスチャ加工を施し表面平均粗さRaを20Åとした後、この基板両面に、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製3010)を用いて、Cr合金からなる非磁性下地膜(厚さ600Å)、およびCo合金からなる磁性膜を順次形成し、ディスクDを得た。
次いで、ディスクDをプラズマCVD装置のチャンバ10内に搬入するとともに、供給源14から供給された反応ガスをチャンバ10内に供給した。
同時に、700Wの高周波電力(周波数13.56MHz)を電極11に供給しプラズマを発生させ、ディスクD両面に、厚さ50Åのカーボン保護膜を形成した。
カーボン保護膜形成時のディスクDの温度は160℃とした。また電極11、11とディスクDの間の距離は30mmとした。また、チャンバ10の内圧は2Paとした。
カーボン保護膜形成時における反応ガスの種類、流量、バイアス電源13によりディスクDに加えるバイアスの種類、パワー、電極11、11に加えた高周波電力の位相差、形成したカーボン保護膜の厚さ、および成膜レートを表16に示す。
次いで、フォンブリン系潤滑剤をカーボン保護膜上に塗布し、厚さ20Åの潤滑膜を形成し、磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体を、次に示すCSS試験、コロージョン試験、およびラマン分光分析試験に供した。
コロージョン試験は、磁気記録媒体を、高温高湿(温度60℃、湿度80%)条件下に96時間放置した後、50ccの超純水中に25℃の条件下で30分間浸漬し、この超純水中に抽出されたCo量(基板面積当たり)を測定するものとした。また同様に、磁気記録媒体を常温常湿(温度25℃、湿度50%)条件下に96時間放置した後、同様にしてCo抽出量を測定した。
ラマン分光分析試験は、ラマン分光分析装置(JEOL社製)を用いて、ラマン分光法(アルゴンイオンレーザー励起)による分析を行うものとした。結果を表17に示す。
なお、表中、RFは高周波を意味するものである。またRF位相差とは、2つの電極11、11に供給する電力の位相差をいう。
また、コロージョン試験の結果より、上記磁気記録媒体は、コロージョン量が非常に少なく、実用上問題のないレベルの耐食性を備えたものとなったことがわかる。
またラマン分光分析の結果より、上記磁気記録媒体は、Gバンドピークが比較的高周波側に現れており、しかもId/Igが低く、DLC化されたものとなったことがわかる。
また、電極11、11に加える高周波電力の位相差を180゜とする方法で作製された磁気記録媒体は、位相差なしとしたものに比べ、成膜レートを高めることができたことがわかる。
Claims (9)
- 非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜、カーボン保護膜、潤滑膜が形成された磁気記録媒体において、カーボン保護膜が、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層からなるもの、あるいは、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層上に、スパッタリング法によって形成されたスパッタカーボン層を有するものであり、このカーボン保護膜が、潤滑膜に接して設けられていることを特徴とする磁気記録媒体。
- 非磁性基板の表面平均粗さRaが1〜20Åであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- プラズマCVDカーボン層の厚さが、30〜100Åであることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- スパッタカーボン層の厚さが、5〜100Åであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 非磁性基板上に非磁性下地膜、磁性膜、カーボン保護膜、潤滑膜が形成された磁気記録媒体において、カーボン保護膜が、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層からなるもの、あるいは、プラズマCVD法により形成されたプラズマCVDカーボン層上に、スパッタリング法によって形成されたスパッタカーボン層を有するものであり、このカーボン保護膜が、潤滑膜に接して設けられており、かつCo抽出量が基板面積に対して3ng/cm2以下であることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項記載の磁気記録媒体。
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