JP2004094131A - 撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学的ローパスフィルタの特性を撮影者の撮影意図や撮影条件に対応して最適な作用を持ったものに変更可能とするとともに、光学的ローパスフィルタそのものを低価格で実現するものであって、特に大面積の光学的ローパスフィルタを必要とする大型の撮像素子を用いたレンズ交換式の撮像装置に好適となる光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現する。
【解決手段】交換可能な撮影光学系と、その撮像面近傍に開閉可能に配置され露光時間を機械的に制御するシャッタとを有する撮像装置であって、撮像光学系よりも撮像面側の光路中に配置され、全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、シャッタを開放状態とする露光時間中にフィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを有する構成としている。
【選択図】図1
【解決手段】交換可能な撮影光学系と、その撮像面近傍に開閉可能に配置され露光時間を機械的に制御するシャッタとを有する撮像装置であって、撮像光学系よりも撮像面側の光路中に配置され、全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、シャッタを開放状態とする露光時間中にフィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを有する構成としている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は撮像素子を使用して画像を形成するときに用いる光学的ローパスフィルタを具備した撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、CCDやCMOS等の固体撮像素子を用いた撮像装置において、高い周波数成分を持った被写体を撮像したときに、撮像素子のサンプリング周波数に依存して発生する偽信号を低減させることを目的とした光学的ローパスフィルタに関する提案は種々開示されている(例えば、特許文献1から3を参照)。
【0003】
最も一般的な光学的ローパスフィルタは、水晶等の一軸性単結晶の複屈折作用を利用して、被写体光を常光線と異常光線に分離させ、この分離幅に相当する空間周波数成分に対するレスポンスを低下させるというものであって、現在でもこの性質を種々応用したものが広く用いられている。
【0004】
また、これ以外では、例えば光学的ローパスフィルタを微細な回折格子より形成して、その回折作用を用いて被写体像を複数に分割して同様の作用を得るものや、撮影光学系の射出瞳の近傍に光線を互いに異なる方向に屈折させる不連続面を形成してやはり被写体像を複数に分割するものも提案されている。
【0005】
また特に光学的ローパスフィルタの作用を可変とするものとしては、上記の一軸性単結晶の複屈折板を複数枚組み合わせて形成しており、各々の複屈折板の相対関係を変更することによってその複屈折作用を加算したり打ち消しあったりするように構成したものも提案されている。
【0006】
一方、撮像装置としては、光学的ローパスフィルタの作用を変更するものとして、撮影者が取り外すことによってその作用の有無を変更するものはあったが、撮影状況に応じてその作用を最適化するものに関しての開示は多くはなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−261545号公報
【特許文献2】
特開平10−32761号公報
【特許文献3】
特開昭56−162590号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の最も一般的な光学的ローパスフィルタでは、水晶等の一軸性単結晶の複屈折板を用いるものでも、微細な回折素子を用いるものでも、光学的ローパスフィルタの空間周波数特性そのものが固定のものでは、撮影者の意図に応じた撮影や装着された撮影光学系の特性などの撮影条件に好適な画像処理を行うことが実質的にできないという問題があった。
【0009】
また、水晶等の一軸性単結晶の複屈折板を用いる方式では、一軸性単結晶そのものが結晶成長という工程を経て製造されるものであるため、大型の基板を製作することが困難であって光学的ローパスフィルタが高価なものになってしまうという問題があった。
【0010】
また、微細な回折素子を用いるものでは、素子の性質上、撮像素子の近傍に配置することが必要となっていたが、撮像素子の近傍に配置するために撮影レンズの絞りを絞った撮影では、その微細構造が映りこんでしまうという問題があった。
撮影レンズの射出瞳近傍に面積分割的に異なる偏向作用を持った光学素子を配置するような構成では、撮影光学系を交換可能なカメラシステムを構築する際には、すべての交換レンズにこのような素子を具備することが必要となり、異なる撮像素子を持ったカメラには不適切となるなど問題が多く明らかに不向きである。
【0011】
上記従来例として掲げた中に光学的ローパスフィルタの作用を可変とするものや、信号処理におけるローパスフィルタを応用したものを例示したが、本発明において目的とする光学的ローパスフィルタの作用は類似のものとなっている。
上記従来例の複屈折板を組み合わせて光学的ローパスフィルタの作用を可変とするものでは、フィルタそのものが高価であることの他にもその作用を連続的にかつ自在に変更することが困難となるという問題があった。
【0012】
本発明は、CCDやCMOS等の固体撮像素子を用いた撮像装置において、高い周波数成分を持った被写体によって発生する偽信号を低減させることを目的とした光学的ローパスフィルタを撮影者の撮影意図や撮影条件に対応して最適な作用を持つものに変更可能とするとともに、光学的ローパスフィルタそのものを低価格で実現するものであって、特に大面積の光学的ローパスフィルタを必要とする大型の撮像素子を用いたレンズ交換式の撮像装置に好適となる光学的ローパスフィルタを用いた撮像装置を実現することを目的とするものである。
【0013】
換言すれば、このような従来の問題を解決して、光学的ローパスフィルタの特性を撮影者の撮影意図や撮影条件に対応して最適な作用を持ったものに変更可能とするとともに、光学的ローパスフィルタそのものを低価格で実現するものであって、特に大面積の光学的ローパスフィルタを必要とする大型の撮像素子を用いたレンズ交換式の撮像装置に好適となる光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本願発明では、交換可能な撮影光学系と、その撮像面近傍に開閉可能に配置され露光時間を機械的に制御するシャッタとを有する撮像装置であって、撮像光学系よりも撮像面側の光路中に配置され、全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、シャッタを開放状態とする露光時間中にフィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを有する構成としている。
【0015】
この際、光路中に配置する略平行平板状のフィルタは一般に用いられる板ガラスや光学ガラス等を用いることができ、必ずしも水晶等の単結晶を特殊に加工する必要はない。その代わりに光学的ローパスフィルタとして作用させるためには上記のように露光中に光軸を変位させるべく駆動機構を具備する必要があるが、逆にこのような機構を設けることによって、新たに光学的ローパスフィルタとしての特性を可変にするという高価を比較的容易に実現することが可能となっている。
【0016】
また、フィルタは、平行平板であって、露光中に該平行平板の全体を所定方向に所定量だけ傾斜させることによって撮影光学系の光軸を変位させることが好ましく、これによって特に簡易な構成の光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することができる。
【0017】
光学的ローパスフィルタとして必要とされる高周波数成分の低減特性は、撮像素子の画素ピッチによって決定される周波数と同程度かあるいはこれより高い周波数成分を対象とするのが一般的であって、これを光軸の変位で実現するとき、必要とされる変位量は画素ピッチと同程度かこれより少ない量となる。即ち、例えば画素ピッチ10μmの撮像素子を使用する場合には数μmの光軸の変位を実現すれば良い。厚さ1mmで屈折率が1.5のガラスの平行平板を傾けて光軸の変位を実現することを想定すると、10μmの光軸の変位を実現するためには平行平板を約1.72°傾ければ良く、実質的には少ない駆動量で実現することができる。
【0018】
なお、上述のフィルタは、少なくとも2枚の楔形状の基板を全体として略平行平板よなるように組み合わせて形成されており、露光中に楔形状の基板のうちの少なくとも1枚を所定方向に所定量だけ移動させて2枚の楔形状の基板の間隔を変化させることによって撮影光学系の光軸を変位させることが望ましい。これにより、簡易な構成の光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することができる。
【0019】
光軸の変位を簡易な構成で実現する手段は平行平板を傾ける他にも光軸に対して直交していないプリズム面を持った楔形状の基板を組み合わせて配置し、その間隔を変化させるべく少なくとも一方の基板を光軸方向、あるいは光軸と直交する所定の方向などに駆動させるといった構成も考えられる。
【0020】
フィルタは撮影光学系の光軸を複数の異なる方向に同時に変位させるべく複数組の略平行平板状の部材を組み合わせて構成されていることが好ましい。
【0021】
一般的な撮像素子は2次元状に規則的に構成されていて2次元状に離散的なサンプリングを行うために偽信号を発生する。光学的ローパスフィルタは、このような撮像素子の離散的なサンプリングによって発生する偽信号を低減させるのが目的であるので、2次元状のローパス特性を持つように構成することが望ましい。本発明のように光軸の変位を2次元状に実現すれば構成はやや複雑なものとはなるものの所望の2次元状の特性を実現することが可能となる。
【0022】
撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系と撮像素子の間の光路中に全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、シャッタを開放状態とする露光時間中にフィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを配置するとともに、撮影光学系の光軸の変位量を設定する変位量設定手段と、所望の変位量を実現するべく、フィルタを駆動する駆動手段とを有する構成としている。
【0023】
このような構成とすることで、所望の高い周波数成分の信号の低減を実現することはもちろん可能であり、光軸の変位量を適宜変更することによって低減させる周波数を任意に変更することも可能となる。また、もちろん露光中に光軸の変位を行わないようにすることによって偽信号の低減を行わない撮影をも可能とすることができる。
【0024】
撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間であって、カメラの撮影光学系の装着部の後方に撮影光学系の光路を略密閉するべく光学的ローパスフィルタを配置してもよい。
【0025】
また、撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、撮影モードに応じて変位量を変更するように構成している。
【0026】
なお、撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、所定の光軸の変位を実現できない場合には光軸の変位を禁止するようにしてもよい。
【0027】
また、撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、撮影者の指示に応じて変位量を変更することが望ましい。
【0028】
撮影光学系をカメラから着脱可能に構成し、種々の交換レンズを装着可能にした一眼レフレックスタイプの撮像装置ではレンズ交換に際して、カメラの内部に外部からの塵芥の侵入が懸念されている。このような塵芥の進入防止のためにもカメラの撮影光学系の装着部の後方に密閉部材を配置することが望まれているが、本発明の光学的ローパスフィルタをこの位置に配置すると塵芥の進入防止効果をも期待することができる。
【0029】
この他、本発明のさらなる特徴は以下の実施形態において記載される。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に本発明の第1実施形態である撮像装置(一眼レフレックスカメラ)の断面図を示す。同図において、1は交換可能な撮影レンズ、2は本発明の光学的ローパスフィルタ、3は本発明の光学的ローパスフィルタの駆動手段、4は光学的ローパスフィルタの変位量設定手段、5は撮影時に回動して撮影光学系の光路から退避する反射鏡、6は回動ミラー5の駆動手段、7は露光時間を機械的に制限するフォーカルプレーンシャッタ、8は撮影レンズ1の予定焦点面に配置される撮像素子、9は撮像装置のCPU、10はファインダー光学系である。
【0031】
撮像素子8に被写体像を結像させる撮影レンズ1は、反射鏡2がその光路内に配置されているときにはファインダー光学系10よりファインダー像を観察しており、不図示のレリーズスイッチによって撮影動作が開始されると、撮像装置のCPU9より、本発明の光学的ローパスフィルタ2の変位量設定手段4、及び駆動手段3、回動ミラー5の駆動手段6、フォーカルプレーンシャッタ7、及び撮像素子8に信号が伝達されて、各々の駆動を開始する。集光レンズ4の近傍に被写体像を形成し、集光レンズ4によって集光され、複数の反射鏡5によって偏向された後に再結像光学系6によって撮像素子7上に縮小して再結像される。
【0032】
まず、本発明の光学的ローパスフィルタ2はその変位量設定手段3によって変位量を設定され、駆動手段4によって微小量の駆動を行い、連続的に撮影光学系1の光軸の変位を開始する。次に回動ミラー5はその駆動手段6によって撮影光学系の光路中より退避して撮影光束を遮らないようにすると同時にファインダー光学系10の光線の入射面を遮蔽する。そして、フォーカルプレーンシャッタ7はその開口を開放状態にして撮像素子8の撮像面へ被写体光を到達させ、所定時間の露光終了後、その開口を遮蔽状態にして露光を終了させる。
【0033】
その後、回動ミラー2を初期の位置に復帰せしめ、光学的ローパスフィルタ2の駆動を停止して一連の撮影動作を終了する。一方、撮像素子8から出力される撮像信号は撮像装置のCPU9を介して不図示のメモリーに格納される。
【0034】
図2に本発明第1実施形態の光学的ローパスフィルタ2の実施形態の説明図を示す。図2(A)は水平方向の断面図であり、図2(B)は垂直方向に断面図である。図2において21は撮影光学系の光軸に垂直な入射面と光軸に対して水平方向に傾斜した射出面を有する第1のプリズム、22は第1のプリズムの射出面と平行な入射面と光軸に対して垂直方向に傾斜した射出面を有する第2のプリズム、23は第2のプリズムの射出面と平行な入射面と光軸に垂直な射出面を有する第3のプリズムであってプリズム21、22、23の3つの楔形状のプリズムを組み合わせて全体として略平行平板を形成している。
【0035】
また本実施形態では、プリズム21、22、23のうち、プリズム21は撮像装置に対して固定されており、撮影光学系1の着脱に際して撮像装置の内部にゴミが侵入するのを防止する防塵蓋の作用を兼ねている。プリズム22は駆動手段4によって第1の特定の周波数で水平方向に振動することによって撮影光学系の光軸を水平方向に変位させる作用をする。プリズム23は駆動手段4によって第2の特定の周波数で垂直方向に振動することによって撮影光学系の光軸を垂直方向に変位させる作用をする。本実施形態では、露光時間中にプリズム22とプリズム23を互いに異なる周波数で振動させることによって撮影光学系の光軸を水平、及び垂直方向の所定範囲内に平均的に移動させる構成としている。
【0036】
このとき、撮影光学系の光軸の移動量はこれらのプリズム22、及び23の振動の振幅によって決定され、このときの光軸の移動量によって決定される所定の空間周波数より高い周波数の解像力は著しく低下する。本実施形態では、このようにプリズム22、23を同時に異なる周波数で振動させることによって2次元状の撮影光軸の変位を実現させて光学的ローパスフィルタとしての作用を実現している。
【0037】
本発明の光学的ローパスフィルタは上記のように構成されているため、撮影者の意図、あるいは、撮影モード等によって、その光学的ローパスフィルタとしての作用を変更することが可能となる。
【0038】
もっとも簡単な実施形態としては、光学的ローパスフィルタの作用の有無を切り替え可能に構成するものが考えられる。
即ち例えば、撮影者がモアレ等の偽信号の発生を許容する場合、あるいは不規則的な被写体の撮影であることが予め判っていてモアレの発生が少ないことが予想される場合であって、より高解像度の撮影を好む場合には、本実施形態の変位量設定手段3によってプリズム22、及び23の変位量を0に設定してやれば光学的ローパスフィルタとしての作用はなくなり所望の撮影が可能となる。
【0039】
また例えば、予めモアレ等の偽信号の発生の許容量とこれと相反する解像力の向上とのバランスを複数段階選択可能に構成しておき、撮影者の嗜好に応じて適切なバランスを設定できるように構成することも可能である。本実施形態では変位量設定手段3によってプリズム22、及び23の変位量を段階的に可変とするように構成しておけば光学的ローパスフィルタとしての作用を可変とすることができ、このとき同時に所定の周波数のコントラスト信号を高く出力するエッジ強調や特定の周波数で発生する偽色信号のコントラストを低く出力する信号処理をそれぞれ適切に変更するように構成するとより効果的となる。
【0040】
また、装着した交換レンズやその使用状態に応じて光学的ローパスフィルタとしての作用を変更することも考えられる。
即ち例えば、装着した撮影レンズの解像力が高周波数まで十分に高い場合には、特に高い周波数によって発生する偽信号の強度が強くなるため、光学的ローパスフィルタを十分に作用させ、逆に撮影レンズの解像力があまり高くない場合には光学的ローパスフィルタとしての作用を少なくすることが考えられる。具体的には交換レンズ内の記憶装置にこのような所定の解像力情報を格納しておき、カメラに装着した際にこれらの情報をカメラのCPUにて読み取り、撮像素子、あるいは画像処理等との組合せから適切な光学的ローパスフィルタの作用を選択して使用するべく、カメラ、及び交換レンズシステムを構成するということが考えられる。
【0041】
また、より簡単な実施形態として、撮影に際して決定された交換レンズの絞り値情報に応じて光学的ローパスフィルタとしての作用を変更するという構成が考えられる。
【0042】
撮影光学系の解像力の空間周波数特性は、光線収差が十分に少なく補正されている場合には、ほぼ撮影の際のFnoによって決定される。具体的には、Fnoの小さい(絞りが開放側に設定されている)ときには回折の影響が少なくなって比較的高い周波数まで高い解像力を示し、Fnoの大きい(絞りが小絞り側に設定されている)ときには回折の影響が大きくなって比較的低い周波数で解像力が低下するため、光学的ローパスフィルタの作用を撮影の際のFnoに変更するように構成することが好ましい。なお、この場合にもエッジ強調や偽色信号処理といった画像処理パラメータの変更と組み合わせて実施するとより効果的となる。
【0043】
一方、本発明実施形態の光学的ローパスフィルタは露光時間内に駆動する構成のものとしているため、撮影の際のシャッタ速度が特に高速度に設定されている場合には駆動手段3の駆動周波数の問題から撮影光学系の光軸を2次元状に平均的に移動させることができない場合も考えられる。このような場合には光学的ローパスフィルタとして所望の効果を実現できないことが予想させるため、プリズムの駆動を禁止することが望ましい。
【0044】
以上、説明したように本発明実施形態の光学的ローパスフィルタ、及びこれを具備した撮像装置においては、撮影光学系の光軸を2次元状に変位させることによって光学的ローパスフィルタとしての作用を実現するとともに、撮影者の意図や撮影モード等に応じて光学的ローパスフィルタとしての作用を可変とすることが可能となっている。
【0045】
(第2実施形態)
以上説明した、本発明第1実施形態では、光学的ローパスフィルタを構成する略平行平板状の光学部材(フィルタ)を楔形状の3つのプリズム21、22,23より構成し、プリズム22、23を光軸と直交する水平方向、及び垂直方向に振動させるものとしたが、このような撮影光学系の光軸の変位は同様の構成の楔形状のプリズムを光軸方向に振動させる構成としても実現できる。また、同様の構成であっても露光中に駆動部材をプリズム22のみとして高軸と直交する水平、及び垂直の両方向に連続的に移動させる構成とすることも考えられる。
【0046】
また、撮影光学系の光軸を水平、及び垂直の両方向に2次元状に平均的に移動させる手段としては、図3に示すように、上記本発明第1実施形態のプリズム22、23の代わりに2枚の平行平板31、32をそれぞれ水平、及び垂直方向の回転軸を持つように保持し、垂直方向、及び水平方向の回転駆動によって実現することも考えられる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本願各発明によれば、光学的ローパスフィルタの特性を撮影者の撮影意図や撮影条件に対応して最適な作用を持ったものに変更可能とするとともに、光学的ローパスフィルタそのものを低価格で実現するものであって、特に大面積の光学的ローパスフィルタを必要とする大型の撮像素子を用いたレンズ交換式の撮像装置に好適となる光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である撮像装置を説明するための図。
【図2】同実施形態における光学的ローパスフィルタの説明図。
【図3】本発明の第2実施形態である撮像装置を説明するための図。
【符号の説明】
1 撮影レンズ
2 光学的ローパスフィルタを構成する光学部材
3 光学的ローパスフィルタの変位量設定手段
4 光学的ローパスフィルタの駆動手段
5 QRミラー
6 QRミラーの駆動手段
7 フォーカルプレーンシャッタ
8 撮像素子
9 CPU
10 ファインダー光学系
21 光学的ローパスフィルタを構成するプリズム
22 光学的ローパスフィルタを構成するプリズム
23 光学的ローパスフィルタを構成するプリズム
【発明の属する技術分野】
本発明は撮像素子を使用して画像を形成するときに用いる光学的ローパスフィルタを具備した撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、CCDやCMOS等の固体撮像素子を用いた撮像装置において、高い周波数成分を持った被写体を撮像したときに、撮像素子のサンプリング周波数に依存して発生する偽信号を低減させることを目的とした光学的ローパスフィルタに関する提案は種々開示されている(例えば、特許文献1から3を参照)。
【0003】
最も一般的な光学的ローパスフィルタは、水晶等の一軸性単結晶の複屈折作用を利用して、被写体光を常光線と異常光線に分離させ、この分離幅に相当する空間周波数成分に対するレスポンスを低下させるというものであって、現在でもこの性質を種々応用したものが広く用いられている。
【0004】
また、これ以外では、例えば光学的ローパスフィルタを微細な回折格子より形成して、その回折作用を用いて被写体像を複数に分割して同様の作用を得るものや、撮影光学系の射出瞳の近傍に光線を互いに異なる方向に屈折させる不連続面を形成してやはり被写体像を複数に分割するものも提案されている。
【0005】
また特に光学的ローパスフィルタの作用を可変とするものとしては、上記の一軸性単結晶の複屈折板を複数枚組み合わせて形成しており、各々の複屈折板の相対関係を変更することによってその複屈折作用を加算したり打ち消しあったりするように構成したものも提案されている。
【0006】
一方、撮像装置としては、光学的ローパスフィルタの作用を変更するものとして、撮影者が取り外すことによってその作用の有無を変更するものはあったが、撮影状況に応じてその作用を最適化するものに関しての開示は多くはなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−261545号公報
【特許文献2】
特開平10−32761号公報
【特許文献3】
特開昭56−162590号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の最も一般的な光学的ローパスフィルタでは、水晶等の一軸性単結晶の複屈折板を用いるものでも、微細な回折素子を用いるものでも、光学的ローパスフィルタの空間周波数特性そのものが固定のものでは、撮影者の意図に応じた撮影や装着された撮影光学系の特性などの撮影条件に好適な画像処理を行うことが実質的にできないという問題があった。
【0009】
また、水晶等の一軸性単結晶の複屈折板を用いる方式では、一軸性単結晶そのものが結晶成長という工程を経て製造されるものであるため、大型の基板を製作することが困難であって光学的ローパスフィルタが高価なものになってしまうという問題があった。
【0010】
また、微細な回折素子を用いるものでは、素子の性質上、撮像素子の近傍に配置することが必要となっていたが、撮像素子の近傍に配置するために撮影レンズの絞りを絞った撮影では、その微細構造が映りこんでしまうという問題があった。
撮影レンズの射出瞳近傍に面積分割的に異なる偏向作用を持った光学素子を配置するような構成では、撮影光学系を交換可能なカメラシステムを構築する際には、すべての交換レンズにこのような素子を具備することが必要となり、異なる撮像素子を持ったカメラには不適切となるなど問題が多く明らかに不向きである。
【0011】
上記従来例として掲げた中に光学的ローパスフィルタの作用を可変とするものや、信号処理におけるローパスフィルタを応用したものを例示したが、本発明において目的とする光学的ローパスフィルタの作用は類似のものとなっている。
上記従来例の複屈折板を組み合わせて光学的ローパスフィルタの作用を可変とするものでは、フィルタそのものが高価であることの他にもその作用を連続的にかつ自在に変更することが困難となるという問題があった。
【0012】
本発明は、CCDやCMOS等の固体撮像素子を用いた撮像装置において、高い周波数成分を持った被写体によって発生する偽信号を低減させることを目的とした光学的ローパスフィルタを撮影者の撮影意図や撮影条件に対応して最適な作用を持つものに変更可能とするとともに、光学的ローパスフィルタそのものを低価格で実現するものであって、特に大面積の光学的ローパスフィルタを必要とする大型の撮像素子を用いたレンズ交換式の撮像装置に好適となる光学的ローパスフィルタを用いた撮像装置を実現することを目的とするものである。
【0013】
換言すれば、このような従来の問題を解決して、光学的ローパスフィルタの特性を撮影者の撮影意図や撮影条件に対応して最適な作用を持ったものに変更可能とするとともに、光学的ローパスフィルタそのものを低価格で実現するものであって、特に大面積の光学的ローパスフィルタを必要とする大型の撮像素子を用いたレンズ交換式の撮像装置に好適となる光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本願発明では、交換可能な撮影光学系と、その撮像面近傍に開閉可能に配置され露光時間を機械的に制御するシャッタとを有する撮像装置であって、撮像光学系よりも撮像面側の光路中に配置され、全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、シャッタを開放状態とする露光時間中にフィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを有する構成としている。
【0015】
この際、光路中に配置する略平行平板状のフィルタは一般に用いられる板ガラスや光学ガラス等を用いることができ、必ずしも水晶等の単結晶を特殊に加工する必要はない。その代わりに光学的ローパスフィルタとして作用させるためには上記のように露光中に光軸を変位させるべく駆動機構を具備する必要があるが、逆にこのような機構を設けることによって、新たに光学的ローパスフィルタとしての特性を可変にするという高価を比較的容易に実現することが可能となっている。
【0016】
また、フィルタは、平行平板であって、露光中に該平行平板の全体を所定方向に所定量だけ傾斜させることによって撮影光学系の光軸を変位させることが好ましく、これによって特に簡易な構成の光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することができる。
【0017】
光学的ローパスフィルタとして必要とされる高周波数成分の低減特性は、撮像素子の画素ピッチによって決定される周波数と同程度かあるいはこれより高い周波数成分を対象とするのが一般的であって、これを光軸の変位で実現するとき、必要とされる変位量は画素ピッチと同程度かこれより少ない量となる。即ち、例えば画素ピッチ10μmの撮像素子を使用する場合には数μmの光軸の変位を実現すれば良い。厚さ1mmで屈折率が1.5のガラスの平行平板を傾けて光軸の変位を実現することを想定すると、10μmの光軸の変位を実現するためには平行平板を約1.72°傾ければ良く、実質的には少ない駆動量で実現することができる。
【0018】
なお、上述のフィルタは、少なくとも2枚の楔形状の基板を全体として略平行平板よなるように組み合わせて形成されており、露光中に楔形状の基板のうちの少なくとも1枚を所定方向に所定量だけ移動させて2枚の楔形状の基板の間隔を変化させることによって撮影光学系の光軸を変位させることが望ましい。これにより、簡易な構成の光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することができる。
【0019】
光軸の変位を簡易な構成で実現する手段は平行平板を傾ける他にも光軸に対して直交していないプリズム面を持った楔形状の基板を組み合わせて配置し、その間隔を変化させるべく少なくとも一方の基板を光軸方向、あるいは光軸と直交する所定の方向などに駆動させるといった構成も考えられる。
【0020】
フィルタは撮影光学系の光軸を複数の異なる方向に同時に変位させるべく複数組の略平行平板状の部材を組み合わせて構成されていることが好ましい。
【0021】
一般的な撮像素子は2次元状に規則的に構成されていて2次元状に離散的なサンプリングを行うために偽信号を発生する。光学的ローパスフィルタは、このような撮像素子の離散的なサンプリングによって発生する偽信号を低減させるのが目的であるので、2次元状のローパス特性を持つように構成することが望ましい。本発明のように光軸の変位を2次元状に実現すれば構成はやや複雑なものとはなるものの所望の2次元状の特性を実現することが可能となる。
【0022】
撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系と撮像素子の間の光路中に全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、シャッタを開放状態とする露光時間中にフィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを配置するとともに、撮影光学系の光軸の変位量を設定する変位量設定手段と、所望の変位量を実現するべく、フィルタを駆動する駆動手段とを有する構成としている。
【0023】
このような構成とすることで、所望の高い周波数成分の信号の低減を実現することはもちろん可能であり、光軸の変位量を適宜変更することによって低減させる周波数を任意に変更することも可能となる。また、もちろん露光中に光軸の変位を行わないようにすることによって偽信号の低減を行わない撮影をも可能とすることができる。
【0024】
撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間であって、カメラの撮影光学系の装着部の後方に撮影光学系の光路を略密閉するべく光学的ローパスフィルタを配置してもよい。
【0025】
また、撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、撮影モードに応じて変位量を変更するように構成している。
【0026】
なお、撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、所定の光軸の変位を実現できない場合には光軸の変位を禁止するようにしてもよい。
【0027】
また、撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、撮影者の指示に応じて変位量を変更することが望ましい。
【0028】
撮影光学系をカメラから着脱可能に構成し、種々の交換レンズを装着可能にした一眼レフレックスタイプの撮像装置ではレンズ交換に際して、カメラの内部に外部からの塵芥の侵入が懸念されている。このような塵芥の進入防止のためにもカメラの撮影光学系の装着部の後方に密閉部材を配置することが望まれているが、本発明の光学的ローパスフィルタをこの位置に配置すると塵芥の進入防止効果をも期待することができる。
【0029】
この他、本発明のさらなる特徴は以下の実施形態において記載される。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に本発明の第1実施形態である撮像装置(一眼レフレックスカメラ)の断面図を示す。同図において、1は交換可能な撮影レンズ、2は本発明の光学的ローパスフィルタ、3は本発明の光学的ローパスフィルタの駆動手段、4は光学的ローパスフィルタの変位量設定手段、5は撮影時に回動して撮影光学系の光路から退避する反射鏡、6は回動ミラー5の駆動手段、7は露光時間を機械的に制限するフォーカルプレーンシャッタ、8は撮影レンズ1の予定焦点面に配置される撮像素子、9は撮像装置のCPU、10はファインダー光学系である。
【0031】
撮像素子8に被写体像を結像させる撮影レンズ1は、反射鏡2がその光路内に配置されているときにはファインダー光学系10よりファインダー像を観察しており、不図示のレリーズスイッチによって撮影動作が開始されると、撮像装置のCPU9より、本発明の光学的ローパスフィルタ2の変位量設定手段4、及び駆動手段3、回動ミラー5の駆動手段6、フォーカルプレーンシャッタ7、及び撮像素子8に信号が伝達されて、各々の駆動を開始する。集光レンズ4の近傍に被写体像を形成し、集光レンズ4によって集光され、複数の反射鏡5によって偏向された後に再結像光学系6によって撮像素子7上に縮小して再結像される。
【0032】
まず、本発明の光学的ローパスフィルタ2はその変位量設定手段3によって変位量を設定され、駆動手段4によって微小量の駆動を行い、連続的に撮影光学系1の光軸の変位を開始する。次に回動ミラー5はその駆動手段6によって撮影光学系の光路中より退避して撮影光束を遮らないようにすると同時にファインダー光学系10の光線の入射面を遮蔽する。そして、フォーカルプレーンシャッタ7はその開口を開放状態にして撮像素子8の撮像面へ被写体光を到達させ、所定時間の露光終了後、その開口を遮蔽状態にして露光を終了させる。
【0033】
その後、回動ミラー2を初期の位置に復帰せしめ、光学的ローパスフィルタ2の駆動を停止して一連の撮影動作を終了する。一方、撮像素子8から出力される撮像信号は撮像装置のCPU9を介して不図示のメモリーに格納される。
【0034】
図2に本発明第1実施形態の光学的ローパスフィルタ2の実施形態の説明図を示す。図2(A)は水平方向の断面図であり、図2(B)は垂直方向に断面図である。図2において21は撮影光学系の光軸に垂直な入射面と光軸に対して水平方向に傾斜した射出面を有する第1のプリズム、22は第1のプリズムの射出面と平行な入射面と光軸に対して垂直方向に傾斜した射出面を有する第2のプリズム、23は第2のプリズムの射出面と平行な入射面と光軸に垂直な射出面を有する第3のプリズムであってプリズム21、22、23の3つの楔形状のプリズムを組み合わせて全体として略平行平板を形成している。
【0035】
また本実施形態では、プリズム21、22、23のうち、プリズム21は撮像装置に対して固定されており、撮影光学系1の着脱に際して撮像装置の内部にゴミが侵入するのを防止する防塵蓋の作用を兼ねている。プリズム22は駆動手段4によって第1の特定の周波数で水平方向に振動することによって撮影光学系の光軸を水平方向に変位させる作用をする。プリズム23は駆動手段4によって第2の特定の周波数で垂直方向に振動することによって撮影光学系の光軸を垂直方向に変位させる作用をする。本実施形態では、露光時間中にプリズム22とプリズム23を互いに異なる周波数で振動させることによって撮影光学系の光軸を水平、及び垂直方向の所定範囲内に平均的に移動させる構成としている。
【0036】
このとき、撮影光学系の光軸の移動量はこれらのプリズム22、及び23の振動の振幅によって決定され、このときの光軸の移動量によって決定される所定の空間周波数より高い周波数の解像力は著しく低下する。本実施形態では、このようにプリズム22、23を同時に異なる周波数で振動させることによって2次元状の撮影光軸の変位を実現させて光学的ローパスフィルタとしての作用を実現している。
【0037】
本発明の光学的ローパスフィルタは上記のように構成されているため、撮影者の意図、あるいは、撮影モード等によって、その光学的ローパスフィルタとしての作用を変更することが可能となる。
【0038】
もっとも簡単な実施形態としては、光学的ローパスフィルタの作用の有無を切り替え可能に構成するものが考えられる。
即ち例えば、撮影者がモアレ等の偽信号の発生を許容する場合、あるいは不規則的な被写体の撮影であることが予め判っていてモアレの発生が少ないことが予想される場合であって、より高解像度の撮影を好む場合には、本実施形態の変位量設定手段3によってプリズム22、及び23の変位量を0に設定してやれば光学的ローパスフィルタとしての作用はなくなり所望の撮影が可能となる。
【0039】
また例えば、予めモアレ等の偽信号の発生の許容量とこれと相反する解像力の向上とのバランスを複数段階選択可能に構成しておき、撮影者の嗜好に応じて適切なバランスを設定できるように構成することも可能である。本実施形態では変位量設定手段3によってプリズム22、及び23の変位量を段階的に可変とするように構成しておけば光学的ローパスフィルタとしての作用を可変とすることができ、このとき同時に所定の周波数のコントラスト信号を高く出力するエッジ強調や特定の周波数で発生する偽色信号のコントラストを低く出力する信号処理をそれぞれ適切に変更するように構成するとより効果的となる。
【0040】
また、装着した交換レンズやその使用状態に応じて光学的ローパスフィルタとしての作用を変更することも考えられる。
即ち例えば、装着した撮影レンズの解像力が高周波数まで十分に高い場合には、特に高い周波数によって発生する偽信号の強度が強くなるため、光学的ローパスフィルタを十分に作用させ、逆に撮影レンズの解像力があまり高くない場合には光学的ローパスフィルタとしての作用を少なくすることが考えられる。具体的には交換レンズ内の記憶装置にこのような所定の解像力情報を格納しておき、カメラに装着した際にこれらの情報をカメラのCPUにて読み取り、撮像素子、あるいは画像処理等との組合せから適切な光学的ローパスフィルタの作用を選択して使用するべく、カメラ、及び交換レンズシステムを構成するということが考えられる。
【0041】
また、より簡単な実施形態として、撮影に際して決定された交換レンズの絞り値情報に応じて光学的ローパスフィルタとしての作用を変更するという構成が考えられる。
【0042】
撮影光学系の解像力の空間周波数特性は、光線収差が十分に少なく補正されている場合には、ほぼ撮影の際のFnoによって決定される。具体的には、Fnoの小さい(絞りが開放側に設定されている)ときには回折の影響が少なくなって比較的高い周波数まで高い解像力を示し、Fnoの大きい(絞りが小絞り側に設定されている)ときには回折の影響が大きくなって比較的低い周波数で解像力が低下するため、光学的ローパスフィルタの作用を撮影の際のFnoに変更するように構成することが好ましい。なお、この場合にもエッジ強調や偽色信号処理といった画像処理パラメータの変更と組み合わせて実施するとより効果的となる。
【0043】
一方、本発明実施形態の光学的ローパスフィルタは露光時間内に駆動する構成のものとしているため、撮影の際のシャッタ速度が特に高速度に設定されている場合には駆動手段3の駆動周波数の問題から撮影光学系の光軸を2次元状に平均的に移動させることができない場合も考えられる。このような場合には光学的ローパスフィルタとして所望の効果を実現できないことが予想させるため、プリズムの駆動を禁止することが望ましい。
【0044】
以上、説明したように本発明実施形態の光学的ローパスフィルタ、及びこれを具備した撮像装置においては、撮影光学系の光軸を2次元状に変位させることによって光学的ローパスフィルタとしての作用を実現するとともに、撮影者の意図や撮影モード等に応じて光学的ローパスフィルタとしての作用を可変とすることが可能となっている。
【0045】
(第2実施形態)
以上説明した、本発明第1実施形態では、光学的ローパスフィルタを構成する略平行平板状の光学部材(フィルタ)を楔形状の3つのプリズム21、22,23より構成し、プリズム22、23を光軸と直交する水平方向、及び垂直方向に振動させるものとしたが、このような撮影光学系の光軸の変位は同様の構成の楔形状のプリズムを光軸方向に振動させる構成としても実現できる。また、同様の構成であっても露光中に駆動部材をプリズム22のみとして高軸と直交する水平、及び垂直の両方向に連続的に移動させる構成とすることも考えられる。
【0046】
また、撮影光学系の光軸を水平、及び垂直の両方向に2次元状に平均的に移動させる手段としては、図3に示すように、上記本発明第1実施形態のプリズム22、23の代わりに2枚の平行平板31、32をそれぞれ水平、及び垂直方向の回転軸を持つように保持し、垂直方向、及び水平方向の回転駆動によって実現することも考えられる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本願各発明によれば、光学的ローパスフィルタの特性を撮影者の撮影意図や撮影条件に対応して最適な作用を持ったものに変更可能とするとともに、光学的ローパスフィルタそのものを低価格で実現するものであって、特に大面積の光学的ローパスフィルタを必要とする大型の撮像素子を用いたレンズ交換式の撮像装置に好適となる光学的ローパスフィルタを備えた撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である撮像装置を説明するための図。
【図2】同実施形態における光学的ローパスフィルタの説明図。
【図3】本発明の第2実施形態である撮像装置を説明するための図。
【符号の説明】
1 撮影レンズ
2 光学的ローパスフィルタを構成する光学部材
3 光学的ローパスフィルタの変位量設定手段
4 光学的ローパスフィルタの駆動手段
5 QRミラー
6 QRミラーの駆動手段
7 フォーカルプレーンシャッタ
8 撮像素子
9 CPU
10 ファインダー光学系
21 光学的ローパスフィルタを構成するプリズム
22 光学的ローパスフィルタを構成するプリズム
23 光学的ローパスフィルタを構成するプリズム
Claims (9)
- 交換可能な撮影光学系と、その撮像面近傍に開閉可能に配置され露光時間を機械的に制御するシャッタとを有する撮像装置であって、
前記撮像光学系よりも撮像面側の光路中に配置され、全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、前記シャッタを開放状態とする露光時間中に前記フィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて前記撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを有することを特徴とする撮像装置。 - 前記フィルタは、平行平板であって、露光中に該平行平板の全体を所定方向に所定量だけ傾斜させることによって前記撮影光学系の光軸を変位させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
- 前記フィルタは、少なくとも2枚の楔形状の基板を全体として略平行平板よなるように組み合わせて形成されており、露光中に前記楔形状の基板のうちの少なくとも1枚を所定方向に所定量だけ移動させて2枚の楔形状の基板の間隔を変化させることによって前記撮影光学系の光軸を変位させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
- 前記フィルタは撮影光学系の光軸を複数の異なる方向に同時に変位させるべく複数組の略平行平板状の部材を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の撮像装置。
- 撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、撮影光学系と撮像素子の間の光路中に全体として略平行平板状に構成されたフィルタであって、前記シャッタを開放状態とする露光時間中に前記フィルタの全部または一部を微少量だけ駆動させて前記撮影光学系の光軸を変位させる光学的ローパスフィルタを配置するとともに、前記撮影光学系の光軸の変位量を設定する変位量設定手段と、所望の変位量を実現するべく、前記フィルタを駆動する駆動手段とを有することを特徴とする撮像装置。
- 撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、前記撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間であって、カメラの撮影光学系の装着部の後方に撮影光学系の光路を略密閉するべく前記光学的ローパスフィルタを配置したことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
- 撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、前記撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に前記撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、撮影モードに応じて前記変位量を変更することを特徴とする撮像装置。
- 撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、前記撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に前記撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、所定の光軸の変位を実現できない場合には光軸の変位を禁止することを特徴とする撮像装置。
- 撮影光学系によって撮像素子上に被写体像を形成して撮像信号を形成する撮像装置において、前記撮影光学系はカメラから着脱可能に構成されており、該撮影光学系と撮像素子の間に、少なくとも2次元状に前記撮影光学系の光軸を変位させる手段と、該変位量を設定する手段を有し、撮影者の指示に応じて前記変位量を変更することを特徴とする撮像装置。
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JP (1) | JP2004094131A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014021349A (ja) * | 2012-07-20 | 2014-02-03 | Nikon Corp | 画像取得方法及び撮像装置 |
JP2017200028A (ja) * | 2016-04-27 | 2017-11-02 | リコーイメージング株式会社 | 画像劣化検出装置 |
JP2018032948A (ja) * | 2016-08-23 | 2018-03-01 | キヤノン株式会社 | 撮像ユニット及び撮像装置 |
-
2002
- 2002-09-03 JP JP2002258149A patent/JP2004094131A/ja active Pending
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