JP2004092887A - 複写機、ファクシミリ、プリンタなどにおける紙送りローラなどの被伝達部材への駆動力伝達用クラッチ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内側スリーブ体4と入力側回転体2とには、コイルバネ7の付勢により噛み合うと共に、この付勢に抗する向きへの内側スリーブ体4の移動により噛み合いを解くメイン接続部21、40が設けられている。内側スリーブ体4と外側スリーブ体5とには、入力側回転体2のメイン接続部21にメイン接続部40を噛み合わせた内側スリーブ体4の回転により外側スリーブ体5を連れ回りさせるサブ接続部41、50が設けられている。内側スリーブ体4のサブ接続部41及び外側スリーブ体5のサブ接続部50の双方が、制動手段6によって外側スリーブ体5の連れ回りを停止させることにより、内側スリーブ体4を付勢に抗する向きに移動させるカム面42、51を備えている。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタなどに用いられている紙送りローラなどの駆動モータの駆動力の伝達を受けて駆動される被伝達部材に対し、必要なときにのみこの駆動力を伝達させるように、この被伝達部材側のギアなどと駆動モータ側のギアなどとの間に介在させて用いられるクラッチ装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機などに用いられる紙送りローラなどに駆動力を伝達させる用途に用いられるクラッチ装置として、特許文献1記載のものが知られている。
【0003】
かかるクラッチ装置は、入力側となるクラッチハブと、出力側となる従動プーリーと、コイルスプリングと、ラチェット部材とを備えている。コイルスプリングはクラッチハブの一部と従動プーリーの一部とを締め付けるように組み込まれている。また、コイルスプリングの一端は従動プーリーに止め付けられ、その他端はラチェット部材に止め付けられている。
【0004】
ラチェット部材の回転をフリーにした状態においては、コイルスプリングの締め付けによってクラッチハブ側の回転に伴って従動プーリーも回転される。これにより、入力側からの駆動力が出力側に伝達される。
【0005】
一方、ラチェット部材の回転をロックにした状態においては、コイルスプリングが拡径する。このようにコイリスプリングが拡径されるとクラッチハブ側は空転し、従動プーリーは回転されない。
【0006】
すなわち、かかるクラッチ装置によれば、必要なときにのみ、出力側に入力側の駆動力を伝達できる。紙送りローラを例にとれば、紙送りの必要がある場合にのみ、紙送りローラを回転させることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−66328号公報(第3図、第4図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、かかる従来のクラッチ装置は、駆動力の伝達をコイルバネの締め付け力、つまり、摩擦力によらしめているため、この駆動力をロスなく伝達させ難い。すなわち、駆動力伝達時にコイルバネとこのコイルバネによって締め付けらるクラッチハブの一部と従動プーリーの一部との間には滑りが生じ易く、こうした滑りが生じると伝達される駆動力にロスが生じる。このため、こうした滑りを生じさせないように、アッセンブリーなどに当たって相当の労力を払うことを余儀なくされていた。また、入力側の回転トルクが大きくなればなるほど、こうした滑りが生じやすくなることから、大トルクの伝達には不向きのものであった。
【0009】
また、駆動力非伝達時においても、コイルバネの内方に一部を位置させた状態でクラッチハブは空転されることから、この駆動力非伝達時においてもコイルバネとクラッチハブとの間である程度の摩擦力が生じ易い。こうした摩擦力は、クラッチハブを常時駆動させる駆動モータ側に無用な負荷を与えることとなる。複写機などにおいては、消費電力の低減が強く求められるところであり、こうしたことからまた、単一の駆動モータによって複写機などの各部を駆動させる傾向が強いことから、こうした無用な駆動モータの負荷は可能な限り減少させることがまた強く求められるところである。
【0010】
そこでこの発明は、この種のクラッチ装置において、駆動力伝達時には入力側からの駆動力をロスなく出力側に伝達し、また、駆動力非伝達時にはクラッチ装置を構成する入力側回転体の空転にできる限り抵抗を生じさせないようにすることを主たる目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1記載の発明にあっては、複写機、ファクシミリ、プリンタなどにおける紙送りローラなどの被伝達部材への駆動力伝達用クラッチ装置が、以下の(1)〜(11)の構成を備えたものとした。
(1)主軸と、
(2)この主軸を中心として回転される入力側回転体と、
(3)紙送りローラなどの被伝達部材側に駆動力を伝達するように主軸を中心として回転される出力側回転体と、
(4)入力側回転体の入力端部と出力側回転体の出力端部との間に配されると共に、主軸の軸線方向にのみ移動可能な状態で出力側回転体に組み合わされた内側スリーブ体と、
(5)内側スリーブ体を内側に納めた状態で、入力側回転体の入力端部と出力側回転体の出力端部との間に配される外側スリーブ体と、
(6)外側スリーブ体の制動手段と、
(7)内側スリーブ体を常時入力側回転体の入力端部側に押し付ける向きに付勢するようにバネ一端を内側スリーブ体に止め付け、かつ、バネ他端を外側スリーブ体に止め付けたコイルバネとを備えており、
(8)内側スリーブ体と入力側回転体とには、それぞれ、前記付勢により噛み合うと共に、この付勢に抗する向きへの内側スリーブ体の移動により噛み合いを解くメイン接続部が設けられており、
(9)内側スリーブ体と外側スリーブ体とには、それぞれ、前記入力側回転体のメイン接続部にメイン接続部を噛み合わせた内側スリーブ体の回転により外側スリーブ体を連れ回りさせるサブ接続部が設けられており、
(10)内側スリーブ体のサブ接続部及び外側スリーブ体のサブ接続部の双方又はいずれか一方が、制動手段によって外側スリーブ体の連れ回りを停止させることにより、内側スリーブ体を前記付勢に抗する向きに、前記コイルバネを縮径させ、かつ、このコイルバネの軸線方向において圧縮又は伸長させながら、移動させるカム面を備えていると共に、
(11)内側スリーブ体のサブ接続部に形成された入力側回転体の入力端部に向けられた係当面が、内側スリーブ体が前記付勢に抗して移動され切った位置での慣性によって、外側スリーブ体のサブ接続部に形成された出力側回転体の出力端部に向けられた係当面に接触するようにしてある。
【0012】
かかる構成によれば、
(1)先ず、制動手段によって外側スリーブ体の連れ回りを停止させていない状態においては、クラッチ装置がIN状態(駆動力を伝達する状態)となる。
すなわち、コイルバネの付勢により内側スリーブ体はそのメイン接続部を入力側回転体のメイン接続部に噛み合わせ、また、この内側スリーブ体は出力側回転体に主軸の軸線方向にのみ移動可能な状態で組み合わされていることから、入力側回転体の回転力は内側スリーブ体を介して出力側回転体に伝達され出力側回転体が回転される。
このIN状態においてはまた、内側スリーブ体のサブ接続部と外側スリーブ体のサブ接続部との接触により、外側スリーブ体も、内側スリーブ体および出力側回転体と同じ向きに主軸を中心として連れ回りされる。
(2)次いで、制動手段によって外側スリーブ体の連れ回りを停止させた状態においては、クラッチ装置がOFF状態(駆動力を伝達しない状態)となる。
すなわち、前記IN状態において連れ回りされている外側スリーブ体の回転を制動手段によって停止させると、内側スリーブ体のサブ接続部及び外側スリーブ体のサブ接続部の双方又はいずれか一方に備えられているカム面によって、それまで回転されていた内側スリーブ体は前記付勢に抗する向き、つまり、内側スリーブ体のメイン接続部と入力側回転体のメイン接続部との噛み合わせを解く向きに移動される。このように噛み合わせが解かれると、入力側回転体の回転力は出力側回転体に伝達されないこととなる。
このように噛み合わせを解く向きに押し込み切られた内側スリーブ体は、慣性によりやや回転し、そのサブ接続部の係当面を外側スリーブ体のサブ接続部の係当面に押し当てさせることから、外側スリーブ体の連れ回りを停止させた状態を解かない限り、内側スリーブ体はそのメイン接続部を入力側回転体のメイン接続部に噛み合わせる位置に戻ることがなく、このOFF状態においては入力側回転体は主軸を中心に負荷なく空転する。
前記コイルバネを圧縮コイルバネとした場合には、前記OFF状態においてコイルバネは圧縮されることとなる。
一方、前記コイルバネを引っ張りコイルバネとした場合には、前記OFF状態においてコイルバネは伸長されることとなる。
(3)そして、前記OFF状態から、制動手段による外側スリーブ体の連れ回りの停止を解除させると、クラッチ装置が再びIN状態となる。
すなわち、前記OFF状態から制動手段による外側スリーブ体の連れ回りの停止を解除させると、このOFF状態において縮径されたコイルバネの復元力により外側スリーブ体は前記IN状態における回転方向と同じ向きにやや回転し、この向きの回転により内側スリーブ体のサブ接続部の係当面と外側スリーブ体のサブ接続部の係当面とが接触し合わない状態に戻る。このように両係当面が接触し合わない状態への復帰がなされると、次いで、コイルバネの復元力により内側スリーブ体は入力側回転体の入力端部に押し付けられる向きに移動され、内側スリーブ体のメイン接続部と入力側回転体のメイン接続部とが再び噛み合わされる。これにより、出力側回転体が再び内側スリーブ体を介して入力側回転体の回転駆動によって回転される。
すなわち、かかるクラッチ装置によれば、被伝達部材に駆動力を伝達させる必要がない場合においては、入力側回転体を負荷なく回転させることができ、OFF状態においてクラッチ装置がこの入力側回転体を駆動させる駆動モータに負荷を与えることがない。また、OFF状態においては、出力側回転体に対する動力の伝達が全く生じないようにすることができる。
また、被伝達部材に駆動力を伝達させる際には、内側スリーブ体のメイン接続部と入力側回転体のメイン接続部とを噛み合わせることにより、動力損失を生じさせることなく、出力側回転体に回転力を伝達させることができる。
【0013】
また、請求項2記載の発明にあっては、請求項1記載の複写機、ファクシミリ、プリンタなどにおける紙送りローラなどの被伝達部材への駆動力伝達用クラッチ装置における制動手段が、
外側スリーブ体の外周部への掛合爪部と、支持部材への支点部と、この支点部を中心に常時掛合爪部の形成側を外側スリーブ体の外周部にこの掛合爪部を押し当てる位置に位置づけさせる付勢手段の接続部とを備えた制動部材と、
制動部材の支点部と掛合爪部の形成位置との間において、この制動部材と支持部材とを引き延ばされた状態で連接させると共に、通電により引き延ばし前の状態に復帰する形状記憶合金製の連接部材とを備えて構成されていることを特徴としている。
【0014】
かかる構成によれば、被伝達部材の駆動信号の入力を契機として連接部材に通電させることにより、この連接部材を引き延ばし前の状態に復帰させて、制動部材の掛合爪部の形成側を後退させることができ、これにより掛合爪部による外側スリーブ体の掛合を解いて外側スリーブ体の前記連れ回りの停止状態を解くことができる。すなわち、これにより前記OFF状態からIN状態に移行させることができる。
【0015】
また、被伝達部材に駆動力を伝達させる必要なくなった場合には、前記連接部材への通電を止めることによりこの連接部材を再び引き延ばさせることができ、これにより前記付勢手段の付勢により再び前記制動部材をその掛合爪部を外側スリーブ体の外周部に押し当てさせる位置に移動させて外側スリーブ体の前記連れ回りを再び停止させることができる。すなわち、これにより前記IN状態からOFF状態に移行させることができる。
【0016】
このように制動手段を構成することにより、制動手段、ひいてはクラッチ装置を、できる限りコンパクトかつ軽量に構成することができる。また、クラッチ装置の用いられる複写機などの消費電力を低減させることに資する特長を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図23に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について説明する。
【0018】
なお、ここで図1、図2および図4は、実施の形態にかかるクラッチ装置Cの全体構成をそれぞれ示しており、また、図3は、クラッチ装置Cを構成する制動手段6の構成の概要を示している。
【0019】
また、図5は、後述するOFF状態にあるクラッチ本体Caを、また、図6は、後述するIN状態にあるクラッチ本体Caを、クラッチ本体Caの要部を破断させて示しており、IN状態においてクラッチ本体Caは主軸1を中心に全体として図6の矢印方向に回転するようになっている。
【0020】
また、図7は、クラッチ本体Caを構成する出力側回転体3と内側スリーブ体4との組み合わせ状態を理解し易いように、両者の噛み合い部分を示している。
【0021】
また、図8および図9は、クラッチ本体Caを構成する各部材を分離して示しており、また、図10ないし図12は、入力側回転体2を、図13ないし図16は、出力側回転体3を、図17ないし図20は、内側スリーブ体4を、さらに、図21ないし図23は、外側スリーブ体5を、それぞれ示している。
【0022】
この実施の形態にかかるクラッチ装置Cは、複写機、ファクシミリ、プリンタなどに用いられている紙送りローラなどの駆動モータの駆動力の伝達を受けて駆動される被伝達部材Rに対し、必要なときにのみこの駆動力を伝達させるように、この被伝達部材R側のギアRaなどと駆動モータ側のギアMなどとの間に介在させて用いられるものである。
【0023】
典型的には、紙送りローラを例にとれば、かかる紙送りローラは、複写機などの給紙トレイや、給紙トレイから送り込まれるコピー用紙などの搬送路中に設けられることから、かかるクラッチ装置Cもこのように設置される紙送りローラに対応して複写機などの各所に備えられるものである。
【0024】
そして、かかるクラッチ装置Cは、常時回転駆動される駆動モータ側のギアMの回転力を、被伝達部材Rに対して駆動力の伝達が必要になった際にのみ、被伝達部材R側のギアRaに伝達させるように動作されるものである。(以下、クラッチ装置Cにおける回転力を伝達させている状態をIN状態と、回転力を伝達させていない状態をOFF状態と称する。)
【0025】
かかるクラッチ装置Cは、
(1)主軸1と、
(2)入力側回転体2と、
(3)出力側回転体3と、
(4)内側スリーブ体4と、
(5)外側スリーブ体5と、
(6)制動手段6と、
(7)コイルバネ7とを備え、
これらを組み合わせることにより構成されている。
【0026】
入力側回転体2は、駆動モータ側のギアMに噛み合うギア部20(入力端部)を備えている。そして、この入力側回転体2は、主軸1を中心として回転されるようになっている。
【0027】
出力側回転体3は、紙送りローラなどの被伝達部材R側のギアRaに噛み合うギア部30(出力端部)を備えている。そして、この出力側回転体3は、主軸1を中心として回転されるようになっている。
【0028】
内側スリーブ体4は、入力側回転体2のギア部20と出力側回転体3のギア部30との間に配されている。そして、この内側スリーブ体4は、主軸1の軸線方向にのみ移動可能な状態で出力側回転体3に組み合わされている。すなわち、内側スリーブ体4は、その内方に主軸1を位置させるようにして、主軸1を中心として回転可能となっている入力側回転体2に前記のように組み合わされている。
【0029】
外側スリーブ体5は、内側スリーブ体4を内側に納めた状態で、入力側回転体2のギア部20と出力側回転体3のギア部30との間に配されている。すなわち、外側スリーブ体5の内方において内側スリーブ体4が前記のように移動されるようになっている。
【0030】
コイルバネ7は、内側スリーブ体4と外側スリーブ体5との間にこの内側スリーブ体4に巻き付けられるようにして配されている。また、かかるコイルバネ7は、内側スリーブ体4を常時入力側回転体2のギア部20側に押し付ける向きに付勢するように備えられていると共に、バネ一端70を内側スリーブ体4に止め付け、かつ、バネ他端71を外側スリーブ体5に止め付けられている。すなわち、コイルバネ7は、内側スリーブ体4と外側スリーブ体5との間に、この内側スリーブ体4の外側に巻き付けられるようにして配されている。
【0031】
また、内側スリーブ体4と入力側回転体2とには、それぞれ、前記付勢により噛み合うと共に、この付勢に抗する向きへの内側スリーブ体4の移動により噛み合いを解くメイン接続部21、40が設けられている。
【0032】
また、内側スリーブ体4と外側スリーブ体5とには、それぞれ、前記入力側回転体2のメイン接続部21に内側スリーブ体4のメイン接続部40を噛み合わせた状態での入力側回転体2の回転に伴う内側スリーブ体4の回転により外側スリーブ体5を連れ回りさせるサブ接続部41、50が設けられている。
【0033】
また、内側スリーブ体4のサブ接続部41及び外側スリーブ体5のサブ接続部50の双方又はいずれか一方が、制動手段6によって外側スリーブ体5の前記連れ回りを停止させることにより、内側スリーブ体4を前記付勢に抗する向きに、前記コイルバネ7を縮径させ、かつ、このコイルバネ7の軸線方向において圧縮又は伸長させながら、移動させるカム面42、51を備えている。
【0034】
また、内側スリーブ体4のサブ接続部41に形成された入力側回転体2のギア部20に向けられた係当面43が、内側スリーブ体4が前記付勢に抗して移動され切った位置での慣性によって、外側スリーブ体5のサブ接続部50に形成された出力側回転体3のギア部30に向けられた係当面52に接触するようにしてある。すなわち、前記カム面42、51により、前記付勢に抗して移動され切った内側スリーブ体4が、この移動によって入力側回転体2との接続を解かれた後の慣性により、その係当面43を外側スリーブ体5の係当面52に接しさせるようにやや回転され、コイルバネ7の付勢により、その係当面43を外側スリーブ体5の係当面52に押し付けさせるようになっている。
【0035】
この結果、この実施の形態にかかるクラッチ装置Cによれば、
(1)先ず、制動手段6によって外側スリーブ体5の連れ回りを停止させていない状態においては、クラッチ装置CがIN状態となる。(図7)
すなわち、コイルバネ7の付勢により内側スリーブ体4はそのメイン接続部40を入力側回転体2のメイン接続部21に噛み合わせ、また、この内側スリーブ体4は出力側回転体3に主軸1の軸線方向にのみ移動可能な状態で組み合わされていることから、駆動モータ側のギアMにギア部20を噛み合わせて回転駆動される入力側回転体2の回転力は内側スリーブ体4を介して出力側回転体3に伝達され出力側回転体3が回転される。そして、この出力側回転体3のギア部30に噛み合わされている被伝達部材R側のギアRaを介して被伝達部材Rに駆動力を伝達することができる。例えば、被伝達部材Rが紙送りローラであれば、この紙送りローラが回転駆動され、紙を送ることができることとなる。
このIN状態においてはまた、内側スリーブ体4のサブ接続部41と外側スリーブ体5のサブ接続部50との接触により、外側スリーブ体5も、内側スリーブ体4および出力側回転体3と同じ向きに主軸1を中心として連れ回りされる。
(2)次いで、制動手段6によって外側スリーブ体5の連れ回りを停止させた状態においては、クラッチ装置CがOFF状態となる。(図5)
すなわち、前記IN状態において連れ回りされている外側スリーブ体5の回転を制動手段6によって停止させると、内側スリーブ体4のサブ接続部41及び外側スリーブ体5のサブ接続部50の双方又はいずれか一方に備えられているカム面42、51によって、それまで回転されていた内側スリーブ体4は前記付勢に抗する向き、つまり、内側スリーブ体4のメイン接続部40と入力側回転体2のメイン接続部21との噛み合わせを解く向きに移動される。このように噛み合わせが解かれると、入力側回転体2の回転力は出力側回転体3に伝達されないこととなる。例えば、被伝達部材Rが紙送りローラであれば、紙送りローラの回転が停止されることとなる。
このように噛み合わせを解く向きに押し込み切られた内側スリーブ体4は、慣性によりやや回転し、そのサブ接続部41の係当面43を外側スリーブ体5のサブ接続部50の係当面52に押し当てさせることから、外側スリーブ体5の連れ回りを停止させた状態を解かない限り、内側スリーブ体4はそのメイン接続部40を入力側回転体2のメイン接続部21に噛み合わせる位置に戻ることがなく、このOFF状態においては入力側回転体2は主軸1を中心に負荷なく空転する。
(3)そして、前記OFF状態から、制動手段6による外側スリーブ体5の連れ回りの停止を解除させると、クラッチ装置Cが再びIN状態となる。
すなわち、前記OFF状態から制動手段6による外側スリーブ体5の連れ回りの停止を解除させると、このOFF状態において縮径されたコイルバネ7の復元力により外側スリーブ体5は前記IN状態における回転方向と同じ向きにやや回転し、この向きの回転により内側スリーブ体4のサブ接続部41の係当面43と外側スリーブ体5のサブ接続部50の係当面52とが接触し合わない状態に戻る。このように両係当面43、52が接触し合わない状態への復帰がなされると、次いで、コイルバネ7の復元力により内側スリーブ体4は入力側回転体2のギア部20に押し付けられる向きに移動され、内側スリーブ体4のメイン接続部40と入力側回転体2のメイン接続部21とが再び噛み合わされる。(図6)これにより、出力側回転体3が再び内側スリーブ体4を介して入力側回転体2の回転駆動によって回転され、この出力側回転体3のギア部30に噛み合わされている被伝達部材R側のギアRaを介して被伝達部材Rに再び駆動力を伝達させることができる。被伝達部材Rが紙送りローラであれば、この紙送りローラが回転駆動され、再び紙を送ることができるIN状態となる。
これにより、この実施の形態にかかるクラッチ装置Cによれば、被伝達部材Rに駆動力を伝達させる必要がない場合においては、入力側回転体2を負荷なく回転させることができ、OFF状態においてクラッチ装置Cが駆動モータに負荷を与えることがない。また、OFF状態においては、出力側回転体3に対する動力の伝達が全く生じないようにすることができる。
また、被伝達部材Rに駆動力を伝達させる際には、内側スリーブ体4のメイン接続部40と入力側回転体2のメイン接続部21とを噛み合わせることにより、動力損失を生じさせることなく、出力側回転体3に回転力を伝達させることができる。
【0036】
前記制動手段6は、外側スリーブ体5の前記連れ回りを、被伝達部材Rに駆動力を伝達させる必要がない場合において、例えば被伝達部材Rが紙送りローラであれば紙を送る必要がない状態において、停止させる構成を備えたものであればいかなる構成のものでも構わない。
【0037】
典型的には、かかる制動手段6としては、常時は外側スリーブ体5に掛合し、あるいは、外側スリーブ体5を挟み付けて、この外側スリーブ体5の連れ回りを阻止していると共に、複写機などにおいて紙送りがなされる際に入力されてくる信号に基づき励磁される電磁石によってこの掛合などを解くように掛合アームなどを動作させる構成のものを用いることができる。
【0038】
もっとも、この実施の形態にあっては、かかる制動手段6を、
外側スリーブ体5の外周部への掛合爪部60aと、支持部材62への支点部60bと、この支点部60bを中心に常時掛合爪部60aの形成側を外側スリーブ体5の外周部にこの掛合爪部60aを押し当てる向きに位置づけさせる付勢手段63の接続部60cとを備えた制動部材60と、
制動部材60の支点部60bと掛合爪部60aの形成位置との間において、この制動部材60と支持部材62とを引き延ばされた状態で連接させると共に、通電により引き延ばし前の状態に復帰する形状記憶合金製の連接部材61とを備えて構成されているものとしている。
【0039】
かかる制動手段6によれば、被伝達部材Rの駆動信号の入力を契機として連接部材61に通電させることにより、この連接部材61を引き延ばし前の状態に復帰させて、制動部材60の掛合爪部60aの形成側を後退させることができ、これにより掛合爪部60aによる外側スリーブ体5の掛合を解いて外側スリーブ体5の前記連れ回りの停止状態を解くことができる。(図1における実線の位置)すなわち、これにより前記OFF状態からIN状態に移行させることができる。
【0040】
また、被伝達部材Rに駆動力を伝達させる必要なくなった場合には、前記連接部材61への通電を止めることによりこの連接部材61を再び引き延ばさせることができ、これにより前記付勢手段63の付勢により再び前記制動部材60をその掛合爪部60aを外側スリーブ体5の外周部に押し当てさせる位置に移動させて外側スリーブ体5の前記連れ回りを再び停止させることができる。(図1における二点鎖線の位置)すなわち、これにより前記IN状態からOFF状態に移行させることができる。
【0041】
このように制動手段6を構成した場合、制動手段6、ひいてはクラッチ装置Cを、できる限りコンパクトかつ軽量に構成することができる。また、クラッチ装置Cの用いられる複写機などの消費電力を低減させることに資する特長を有する。
【0042】
図示の例にあっては、前記主軸1、入力側回転体2、出力側回転体3、内側スリーブ体4、外側スリーブ体5、コイルバネ7、制動手段6はそれぞれ、以下の具体的構成を備えたものとしてある。
【0043】
(主軸1)
図示の例にあっては、主軸1は、一端を複写機などの本体側に固定されるフレームFに固定させた丸棒状体として構成されている。
【0044】
図示の例では、この主軸1の他端側から、出力側回転体3の側を先にして、この出力側回転体3と内側スリーブ体4と外側スリーブ体5と入力側回転体2とコイルバネ7とを組み合わせてなるクラッチ本体Caが、その内側に主軸1を挿し通した状態でこの主軸1に装着されるようになっている。
【0045】
すなわち、かかるクラッチ本体Caは、主軸1を回転中心として全体として回転されるように主軸1に組み合わされるようになっている。
【0046】
図示の例では、この主軸1の上方に、駆動モータ側のギアMが配されており、このギアが入力側回転体2のギア部20に噛み合って、この入力側回転体2を前記OFF状態においても回転させるようになっている。
【0047】
前記IN状態においては、この駆動モータ側のギアMと噛み合って回転される入力側回転体2にメイン接続部40を噛み合わせている内側スリーブ体4を介して出力側回転体3が回転され、この出力側回転体3のギア部30に噛み合わされた被伝達部材R側のギアRaを通じてこの被伝達部材Rに駆動力が伝達される。
【0048】
また、図示の例では、この主軸1の側方に、この主軸1の軸線方向に直交する側から掛合爪部60aをこの主軸1に軸支されたクラッチ本体Caの外側スリーブ体5に押し付けさせる制動部材60を備えた制動手段6が配されている。
【0049】
(入力側回転体2)
入力側回転体2は、
筒両端を開放させた筒状部22と、
この筒状部22の一方の筒端側に形成された外縁を円形状としたフランジ部23と、
このフランジ部23における筒状部22の一方の筒端側に向けられた面側にギア一方端面を一体に接合させた状態で、この筒状部22の一方の筒端を取り巻くように形成された円環状をなすギア部20を有している。ギア部20の歯部は、筒状部22の筒軸線に沿った向きの溝によって隣り合う歯部と区分されている。
【0050】
筒状部22は、その内側に、この筒状部22の他方の筒端側から後述する出力側回転体3の筒状部31を入れ込ませることができる内径を持つように構成されている。そして、入力側回転体2は、出力側回転体3の筒状部31に軸支されるような状態で、前記主軸1を中心として回転されるようになっている。
【0051】
また、筒状部22は、内側スリーブ体4の内側に入れ込ませることができる外径を持つように構成されている。
【0052】
また、フランジ部23におけるギア部20との接合側と反対の側には、入力側回転体2のメイン接続部21が形成されている。
【0053】
図示の例では、入力側回転体2のメイン接続部21は、筒状部22の筒軸線を中心とした放射方向に延びる複数のリブ状体21a、21a…によって構成されている。それぞれのリブ状体21aは、一端を筒状部22とフランジ部23との接合箇所に一体に接合させた状態で、フランジ部23の外縁に向けて延び、かつ、他端をフランジ部23と同心のフランジ部23よりも直径を小さくする仮想の円の円弧上に位置させるように形成されている。また、隣り合うリブ状体21a、21a間にはほぼ等しい間隔が形成されている。
【0054】
(出力側回転体3)
出力側回転体3は、外周部に、主軸1の軸線方向に沿った溝によって区分された歯部を備えたギア部30と、筒両端を開放させた筒状部31とを一体に接合させて構成されている。
【0055】
ギア部30は、回転中心に貫通穴32を有している。また、ギア一方端面に、この貫通穴32との間に間隔を開けて、この貫通穴32を巡る周回壁部33を有している。
【0056】
図示の例では、筒状部31の一方の筒端を、この周回壁部33の内方に入れ込ませるようにした状態で、かつ、ギア部30の貫通穴32と筒状部31の内部とを連通させるようにして、このギア部30のギア一方端面に一体に接合させることにより、出力側回転体3が形成されている。
【0057】
このように接合された筒状部の一方の筒端側には、周回壁部33の内方において、主軸1の軸線方向に沿って延びる複数のリブ状部34、34…が形成されている。
【0058】
また、出力側回転体3の貫通穴32および筒状部31は、主軸1を受け入れることができる内径を持つように構成してある。図示の例では、出力側回転体3の前記貫通穴32よりこの出力側回転体3の筒状部31内に主軸1を挿し通すことにより、この主軸1にクラッチ本体Caをこの主軸1を中心として回転可能に組み合わせるようにしている。
【0059】
後述する内側スリーブ体4のメイン接続部40の形成側と反対のスリーブ端側であって、この内側スリーブ体4の内面部には、この内側スリーブ体4の内方に入力側回転体2の筒状部22を挿し通した状態で、この入力側回転体2の筒状部22内に出力側回転体3の筒状部31を入れ込ませるように組み合わせることに伴って、前記リブ状部34と噛み合う主軸1の軸線方向に沿ったリブ状部44が形成されており、両リブ状部34、44の噛み合いによって、内側スリーブ体4は、出力側回転体3の筒状部31の筒軸線方向、すなわち、主軸1の軸線方向にのみ移動可能な状態で、この出力側回転体3に組み合わされるようになっている。(図7)
【0060】
また、出力側回転体3の筒状部31におけるギア部30との連接側と反対の側には、内向きに弾性変形可能な掛合部35が形成されており、前記のように入力側回転体2の筒状部22を内側スリーブ体4に通し、かつ、このように入力側回転体2の筒状部22の外側に組み合わされた内側スリーブ体4の外側にコイルバネ7を巻回させるようにしてこの内側スリーブ体4を後述する外側スリーブ体5内に入れ込ませた状態で、この出力側回転体3の筒状部31内に入力側回転体2の筒状部22を入れ込み切らせることにより、この掛合部35を入力側回転体2のギア部20の内方においてこの入力側回転体2の筒状部22とギア部20との内径の差によって形成された掛合段差面24に掛合させて、クラッチ本体Caのアッセンブリーをなすようにしてある。
【0061】
(内側スリーブ体4)
内側スリーブ体4は、両端を開放させた筒状をなすように構成されている。
【0062】
この内側スリーブ体4の一方のスリーブ端の内面部には、前記リブ状部44が形成されている。
【0063】
また、この内側スリーブ体4の他方のスリーブ端側に、メイン接続部40と、サブ接続部41とが形成されている。
【0064】
図示の例では、内側スリーブ体4のメイン接続部40は、この内側スリーブ体4の他方のスリーブ端に設けられた複数の突起40a、40a…により構成されている。各突起40a、40a…はそれぞれ隣り合う突起40aとの間にほぼ等しい間隔を開けた状態で、内側スリーブ体4の筒軸線に沿った向きで外方に突き出すように形成されている。そして、図示の例では、前記IN状態において、コイルバネ7が内側スリーブ体4に作用させる付勢力により、入力側回転体2のメイン接続部21を構成する前記複数のリブ状体21a、21a…における隣り合うリブ状体21aとの間に形成される凹所にこの突起40aがそれぞれ入り込んで、内側スリーブ体4と入力側回転体2とが接続されるようになっている。内側スリーブ体4は前記リブ状部44を出力側回転体3のリブ状部34に噛み合わせて主軸1の軸線方向にのみ移動可能な状態でこの出力側回転体3に組み合わされていることから、このIN状態においては、内側スリーブ体4を介して入力側回転体2の回転に伴って出力側回転体3が回転されることとなる。
【0065】
また、図示の例では、内側スリーブ体4のサブ接続部41は、内側スリーブ体4の他方のスリーブ端との間にやや間隔を開けて、この内側スリーブ体4の他方のスリーブ端側に形成された外鍔状部41aにおける、この他方のスリーブ端側に向けられた面部に形成されている。
【0066】
かかるサブ接続部41は、この外鍔状部41aの面部から内側スリーブ体4の他方のスリーブ端側に向けて突き出す複数の突部41b、41b…によって構成されている。
【0067】
各突部41b、41b…はいずれも、隣り合う突部41bとの間にほぼ等しい間隔を開けるようにして設けられている。
【0068】
また、各突部41b、41b…はそれぞれ、クラッチ本体Caの回転先側に向けられた側面を、突部41bの頂部に向かうに連れて次第にクラッチ本体Caの回転後側に後退するように傾斜したカム面42としている。
【0069】
また、各突部41b、41b…はそれぞれ、その頂部を主軸1の軸線にほぼ直交する向きの面によって形成させており、この頂部の面が、前記OFF状態を維持させる係当面43として機能するようにしてある。
【0070】
具体的には、図示の例では、各突部41b、41b…の頂部、すなわち、係当面43は、内側スリーブ体4のメイン接続部40を構成する突起40aの基部よりも下方に位置されるようになっている。
【0071】
(外側スリーブ体5)
外側スリーブ体5は、両端を開放させた筒状をなすように構成されている。
【0072】
外側スリーブ体5は、一方のスリーブ端側からその内側に、コイルバネ7を外側に巻き付けさせるように配した内側スリーブ体4を、この内側スリーブ体4側の外側スリーブ体5内での回転方向への移動と、このコイルバネ7の縮径及びコイルバネ7の圧縮を許容させた状態で、納めさせる内径を持つように構成してある。
【0073】
また、外側スリーブ体5の他方のスリーブ端側に、サブ接続部50が形成されている。図示の例では、外側スリーブ体5のサブ接続部50は、外側スリーブ体5の内面部に形成された内鍔状部50aにおける外側スリーブ体5の一方のスリーブ端側に向けられた面部に形成されている。
【0074】
具体的には、図示の例にあっては、外側スリーブ体5のサブ接続部50は、この内鍔状部50aの面部に複数の凹部50b、50b…を形成させることにより構成されている。
【0075】
各凹部50b、50b…はいずれも、隣り合う凹部50bとの間にほぼ等しい間隔を開けるようにして設けられている。
【0076】
また、各凹部50b、50b…はそれぞれ、クラッチ本体Caの回転後側に向けられた凹部50b内面を、凹部50bの入り口に向かうに連れて次第にクラッチ本体Caの回転先側に近づけるように傾斜させたカム面51としている。
【0077】
また、各凹部50b、50b…間にある内鍔状部50aの面部は、主軸1の軸線に直交する向きの面となっており、隣り合う凹部50b、50b間にある面が、前記OFF状態を維持させる係当面52として機能するようにしてある。
【0078】
そして、外側スリーブ体5内に前記のように収められた内側スリーブ体4は、前記IN状態においては、その外鍔状部41aに形成された突部41bをそれぞれ、外側スリーブ体5の内鍔状部50aに形成された対応する凹部50bに対し、出力側回転体3のギア部30側からコイルバネ7の付勢力によって入れ込ませた状態で、外側スリーブ体5に組み合わされるようになっている。
【0079】
具体的には、このIN状態においては、内側スリーブ体4のサブ接続部41を構成する突部のカム面42と外側スリーブ体5のサブ接続部50を構成する凹部50bのカム面51とを接し合わせた状態で、この凹部50b内に突部41bが入り込み切るようになっている。(図6)
【0080】
また、かかる外側スリーブ体5の外面部には、クラッチ本体Caの回転軸線、つまり、主軸1の軸線に沿った向きに延びる複数の被掛合用リブ53、53…が形成されている。図示の例では、各被掛合用リブ53、53…は隣り合う被掛合用リブ53との間に主軸1の回転方向においてそれぞれほぼ等しい間隔を開けるようにして設けられている。そして、制動手段6を構成する制動部材60の掛合爪部60aが前記OFF状態においてこの被掛合用リブ53のいずれかに掛合して外側スリーブ体5の連れ回りが阻止されるようになっている。
【0081】
前記IN状態においては、内側スリーブ体4は、コイルバネ7の付勢力により入力側回転体2のギア部20側に常時押し付けられる向きに付勢され、そのメイン接続部40を入力側回転体2のメイン接続部21に前記のように接続させる。よって、前記IN状態においては、入力側回転体2の回転に伴って内側スリーブ体4も同じ向きに回転され、さらに、この内側スリーブ体4に対しこの内側スリーブ体4を主軸1の軸線方向にのみ移動可能な状態で組み合わされている出力側回転体3も同じ向きに回転される。また、このIN状態において、外側スリーブ体5と内側スリーブ体4は、前記凹部50bに突部41bを入れ込ませて組み合わされていることから、このIN状態においては外側スリーブ体5も内側スリーブ体4と同じ向きに回転される。すなわち、IN状態においてはクラッチ本体Caは全体として主軸1を中心に回転される。(図6)
【0082】
このIN状態から、制動手段6によって、外側スリーブ体5の連れ回りが停止されると、停止された外側スリーブ体5のサブ接続部50を構成する凹部50bのカム面51に内側スリーブ体4のサブ接続部41を構成するカム面42が強く押し付けられ、このように押し付けられ合うカム面42、51の傾斜によって、内側スリーブ体4はコイルバネ7を圧縮させると共に、カム面42、51の傾斜に沿った回転分コイルバネ7を縮径させながら、コイルバネ7の付勢に抗しながら出力側回転体3の側に移動される。このように内側スリーブ体4が移動されると、内側スリーブ体4のメイン接続部40を構成する各突起40a、40a…が入力側回転体2のメイン接続部21を構成する各リブ状体21a、21a…の間から抜け出し、両者の接続が解かれる。
【0083】
また、内側スリーブ体4は、前記凹部50bから突部41bを抜け出させた後、その慣性によってコイルバネ7をさらに縮径させながらさらにやや回転し、内側スリーブ体4の係当面43を外側スリーブ体5の係当面52に出力側回転体3のギア部30側から押し当てる位置まで移動される。これにより、OFF状態が維持される。(図5)
【0084】
このOFF状態から制動手段6による外側スリーブ体5の連れ回りの阻止を解くと、つまり、制動部材60の掛合爪部60aと外側スリーブ体5の被掛合用リブ53との掛合を解くようにこの制動部材60の掛合爪部60aの形成側を後退させると、前記のように縮径されたコイルバネ7の弾性復帰力によって外側スリーブ体5はIN状態におけるクラッチ本体Caの回転方向と同じ向きにやや回転される。このように外側スリーブ体5がこの向きに回転されると、再び前記凹部50bに突部41bが入り込めるようになり、前記OFF状態において圧縮もされているコイルバネ7の弾性復帰力によって内側スリーブ体4はこの凹部50bに突部41bを入れ込み切る位置まで入力側回転体2のギア部20側に移動され、再び両者のメイン接続部21、40が噛み合わされる。これにより、前記IN状態への復帰がなされる。
【0085】
(コイルバネ7)
図示の例では、コイルバネ7として、圧縮コイルバネを用いている。また、コイルバネ7は、前記のような縮径を許容された状態で、内側スリーブ体4と外側スリーブ体5との間にこの内側スリーブ体4に巻き付けられるようにして配されている。すなわち、コイルバネ7の巻回部内に内側スリーブ体4が入れ込まれ、このようにコイルバネ7の巻回部内に入れ込まれた内側スリーブ体4が外側スリーブ体5の内側に入れ込まれるようになっている。
【0086】
図示の例では、このコイルバネ7のバネ一端70を、内側スリーブ体4の外鍔状部41aに形成された小孔45に出力側回転体3のギア部30側から入れ込ませて、このバネ一端70をこの内側スリーブ体4に入れ込み状に止め付けると共に、このコイルバネ7のバネ他端71を、外側スリーブ体5の内鍔状部50aの形成側と反対のスリーブ端において外方に開放された割溝54に出力側回転体3のギア部30側から入れ込ませて、このバネ他端71をこの外側スリーブ体5に引っ掛け状に止め付けて、このコイルバネ7の組み込みをなしている。また、コイルバネ7は、そのバネ他端71側を出力側回転体3の周回壁部33の突き出し端に押し当てさせて圧縮されており、これにより常時、内側スリーブ体4を入力側回転体2の入力端部側に押し付ける向きに付勢するようになっている。
【0087】
このコイルバネ7は、外側スリーブ体5の連れ回りを制動手段6によって阻止させた状態からの内側スリーブ体4のカム面42、51による回転とこれに続く慣性による回転によって縮径されるように構成されている。
【0088】
(制動手段6)
制動手段6は、図示の例にあっては、制動部材60と連接部材61とを備えて構成されている。
【0089】
図示の例にあっては、制動部材60は、複写機などの本体側に固定されるフレームFであって、主軸1が備え付けられたフレームFにおけるこの主軸1の側方に形成された支持部62aに背面を支持されたプレート体60dとして構成してある。この支持部62aが形成されたフレームFが支持部材62となり、プレート体60dにおける支持部62aに支持された箇所が支点部60bとなる。
【0090】
図示の例にあっては、このプレート体60dの下端に主軸1側に突き出す掛合爪部60aが形成されている。
【0091】
また、このプレート体60dの支点部60bの上方には、支点部60bを中心に常時掛合爪部60aの形成側を主軸1に回転可能に支持されたクラッチ本体Caの外側スリーブ体5の外周部にこの掛合爪部60aを押し当てる位置に位置づけさせる付勢手段63の接続部60cが形成されている。
【0092】
図示の例にあっては、引っ張りコイルバネ63aによって付勢手段63を構成させている。この引っ張りコイルバネ63aのバネ一端を支持部62aの後方に形成された引っかけ部62bに引っかけると共に、バネ他端をプレート体60dの上部に形成させた接続部60cに引っかけるようにして、プレート体60dが支点部60bを中心として掛合爪部60aの形成側をこの掛合爪部60aを常時外側スリーブ体5の外周部に押し当てさせるように位置づけられるようになっている。(図1において二点鎖線で示した位置/以下、この位置をプレート体60dの前進位置という。)
【0093】
連接部材61は、この前進位置にあるプレート体60dと支持部材62、つまり、フレームFとを、かかるプレート体60d、つまり、制動部材60の支点部60bと掛合爪部60aの形成位置との間において、引き延ばされた状態で連接させている。
【0094】
また、かかる連接部材61は、通電により引き延ばし前の状態に復帰する導電性を備えた形状記憶合金より構成されている。
【0095】
連接部材61に通電をさせない状態においては、プレート体60dは前進位置において掛合爪部60aを外側スリーブ体5の外周部に押し当て、外側スリーブ体5の連れ回りを阻止する。具体的には、外側スリーブ体5に形成された被掛合用リブ53に掛合爪部60aを引っかけて外側スリーブ体5の連れ回りを阻止する。これにより、前記OFF状態が維持される。
【0096】
連接部材61に通電をさせると、連接部材61は引き延ばし前の状態に復帰し、つまり、収縮することから、前記付勢手段63の付勢に抗して前記支点部60bを中心としてプレート体60dは掛合爪部60aの形成側を後退させ、これにより、外側スリーブ体5に形成された被掛合用リブ53と掛合爪部60aとの引っかかりが解かれて外側スリーブ体5の連れ回りの阻止状態が解除される。これにより、前記IN状態に移行される。
【0097】
このIN状態から再び連接部材61への通電を止めると、連接部材61は付勢手段63の付勢により再び引き延ばされ、プレート体60dは前進位置に復帰し、再び前記OFF状態に移行される。
【0098】
図示の例では、こうした機能を備えた形状記憶合金よりなる一本の線材61aを、プレート体60dの後方に形成された支持板部62cに形成された四カ所の小孔62d、62d…とプレート体60dに形成させた四カ所の小孔60e、60e…とに順次に通して、この線材61aを支持板部62cとプレート体60dとの間に張り込むようにすることによって、連接部材61を形成させている。線材61aの両端には、それぞれ、支持板部62cの背面側において端子61bがカシメ付けられており、このように設けられた端子61bによって前記線材61aの張り込み状態が維持されるようになっている。
【0099】
こうした機能を備えた形状記憶合金としては、チタンとニッケルとを含む形状記憶合金を用いることができる。
【0100】
【発明の効果】
この発明にかかるクラッチ装置によれば、駆動力伝達時には、入力側回転体のメイン接続部と内側スリーブ体のメイン接続部との接続により、入力側回転体からの駆動力をロスなく出力側回転体に伝達させることができる。
【0101】
また、駆動力非伝達時には、入力側回転体のメイン接続部と内側スリーブ体のメイン接続部との接続を解くように内側スリーブ体を移動させることにより、入力側回転体を抵抗なく空転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クラッチ装置Cの側面構成図
【図2】図1におけるA矢視方向から見たクラッチ装置Cの側面構成図
【図3】制動手段6の斜視構成図
【図4】クラッチ装置Cの利用状態を示す側面構成図(図1における右側から見た図)
【図5】クラッチ本体Caの要部破断斜視構成図(OFF状態)
【図6】クラッチ本体Caの要部破断斜視構成図(IN状態)
【図7】出力側回転体3と内側スリーブ体4との噛み合い部分の断面図(内側スリーブ体4のみを断面)
【図8】クラッチ本体Caの分離斜視構成図
【図9】クラッチ本体Caの分離斜視構成図
【図10】入力側回転体2の正面図
【図11】同左側面図
【図12】同右側面図
【図13】出力側回転体3の要部破断平面図
【図14】同要部破断正面図
【図15】同左側面図
【図16】同右側面図
【図17】内側スリーブ体4の正面図
【図18】同断面図
【図19】同左側面図
【図20】同右側面図
【図21】外側スリーブ体5の要部破断正面図
【図22】同左側面図
【図23】同右側面図
【符号の説明】
1 主軸
2 入力側回転体
21 メイン接続部
3 出力側回転体
4 内側スリーブ体
40 メイン接続部
41 サブ接続部
42 カム面
43 係当面
5 外側スリーブ体
50 サブ接続部
51 カム面
52 係当面
6 制動手段
7 コイルバネ
70 バネ一端
71 バネ他端
C クラッチ装置
R 被伝達部材
Claims (2)
- 主軸と、
この主軸を中心として回転される入力側回転体と、
紙送りローラなどの被伝達部材側に駆動力を伝達するように主軸を中心として回転される出力側回転体と、
入力側回転体の入力端部と出力側回転体の出力端部との間に配されると共に、主軸の軸線方向にのみ移動可能な状態で出力側回転体に組み合わされた内側スリーブ体と、
内側スリーブ体を内側に納めた状態で、入力側回転体の入力端部と出力側回転体の出力端部との間に配される外側スリーブ体と、
外側スリーブ体の制動手段と、
内側スリーブ体を常時入力側回転体の入力端部側に押し付ける向きに付勢するようにバネ一端を内側スリーブ体に止め付け、かつ、バネ他端を外側スリーブ体に止め付けたコイルバネとを備えており、
内側スリーブ体と入力側回転体とには、それぞれ、前記付勢により噛み合うと共に、この付勢に抗する向きへの内側スリーブ体の移動により噛み合いを解くメイン接続部が設けられており、
内側スリーブ体と外側スリーブ体とには、それぞれ、前記入力側回転体のメイン接続部にメイン接続部を噛み合わせた内側スリーブ体の回転により外側スリーブ体を連れ回りさせるサブ接続部が設けられており、
内側スリーブ体のサブ接続部及び外側スリーブ体のサブ接続部の双方又はいずれか一方が、制動手段によって外側スリーブ体の連れ回りを停止させることにより、内側スリーブ体を前記付勢に抗する向きに、前記コイルバネを縮径させ、かつ、このコイルバネの軸線方向において圧縮又は伸長させながら、移動させるカム面を備えていると共に、
内側スリーブ体のサブ接続部に形成された入力側回転体の入力端部に向けられた係当面が、内側スリーブ体が前記付勢に抗して移動され切った位置での慣性によって、外側スリーブ体のサブ接続部に形成された出力側回転体の出力端部に向けられた係当面に接触するようにしてあることを特徴とする複写機、ファクシミリ、プリンタなどにおける紙送りローラなどの被伝達部材への駆動力伝達用クラッチ装置。 - 制動手段が、
外側スリーブ体の外周部への掛合爪部と、支持部材への支点部と、この支点部を中心に常時掛合爪部の形成側を外側スリーブ体の外周部にこの掛合爪部を押し当てる位置に位置づけさせる付勢手段の接続部とを備えた制動部材と、
制動部材の支点部と掛合爪部の形成位置との間において、この制動部材と支持部材とを引き延ばされた状態で連接させると共に、通電により引き延ばし前の状態に復帰する形状記憶合金製の連接部材とを備えて構成されていることを特徴とする請求項1記載の複写機、ファクシミリ、プリンタなどにおける紙送りローラなどの被伝達部材への駆動力伝達用クラッチ装置。
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