JP2004092855A - ボールねじ装置 - Google Patents

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JP2004092855A
JP2004092855A JP2002257733A JP2002257733A JP2004092855A JP 2004092855 A JP2004092855 A JP 2004092855A JP 2002257733 A JP2002257733 A JP 2002257733A JP 2002257733 A JP2002257733 A JP 2002257733A JP 2004092855 A JP2004092855 A JP 2004092855A
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Norio Usuki
臼杵 功雄
Masahiro Inoue
井上 昌弘
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Koyo Seiko Co Ltd
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Abstract

【課題】ボールを転動循環させるタイプのボールねじ装置において、負荷容量と動作円滑性をバランスよく両立させる。
【解決手段】ねじ軸3に互いに独立した2つの約1巻きのねじ溝31a,31bを設け、この2つのねじ溝31a,31bをボール循環溝33,34で個別に閉ループにしてボール4群を転動循環させる構造であって、ボール循環溝33,34の周方向での占有角度θを可及的に小さくしたうえで、ねじ溝31a,31bとボール循環溝33,34との連接部分を、径方向外側から見たときに、可及的に緩やかに湾曲させた形状にしている。
【選択図】   図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボール群を循環させる循環タイプのボールねじ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ボールねじ装置では、ねじ軸とナット部材との伸縮動作に関係なく、それらの各ねじ溝内に介装されるボール群の抜け出しを防止するために、ねじ軸のねじ溝とナット部材のねじ溝とで形成するボール通路の両端を連通連結して閉ループとし、ボール群を前記閉ループ内で転動循環させることが考えられている。
【0003】
このようなボール循環には、一般的に、リターンチューブを用いるもの(特許文献1参照)や、循環こまを用いるもの(特許文献2参照)などがあるが、本願出願人は、特願2001−288630号に示されるように、ねじ軸にボール循環溝を設けるようにしたものを提案している。
【0004】
上記提案技術では、ねじ軸に例えば約1巻きのねじ溝を軸心方向隣り合わせに2つ設けるとともに、この2つのねじ溝の個々をそれぞれ独立した閉ループとするボール循環溝を設けており、この2つの独立した閉ループ内でボール群を転動循環させる構造にしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−253146号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2000−18360号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本願出願人は、上記提案技術についてさらなる研究を進めている過程において、新たな課題を見出した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願出願人が提案した上記出願の構造では、ボール循環溝をボールが通過するときボールが径方向内側に沈み込むようになっていて、当該ボール循環溝を転動するボールがラジアル荷重やスラスト荷重を受けられない。そのため、ボール循環溝の存在する領域は無負荷領域であると言えるので、ボール循環溝の周方向での長さ、つまり占有角度を小さくするほうが、負荷容量を高めるうえで有利となる。
【0009】
しかし、ボール循環溝の占有角度を小さくすると、ねじ軸の回転軸線に対してボール循環溝のボール転動方向中間領域を転動するボールの中心の軌跡の傾き角が小さくなるとともに、ボールがボール循環溝に入るときと出るときの方向転換角度が小さくなるので、ボール循環溝の直線部分を転動する過程と、前記方向転換過程とにおいてボールに対して作用する転がり抵抗が大きくなり、動作円滑性が低下する傾向となる。これとは逆に、ボール循環溝の占有角度を大きくすると、ボール循環溝の傾き角が大きくなるとともに、ボールがボール循環溝に入るときと出るときの方向転換角度が大きくなるので、ボール循環溝の直線部分を転動する過程と、前記方向転換過程とにおいてボールに対して作用する転がり抵抗が小さくなり、動作円滑性が向上する傾向となる。要するに、ボール循環溝の占有角度を小さくすれば負荷容量が向上する反面、動作円滑性が低下することになる。一方、ボール循環溝の占有角度を大きくすれば動作円滑性が向上する反面、負荷容量が低下することになる。このようなことから、本願出願人は、前記負荷容量と動作円滑性との関係をバランスよく両立させることを課題とし、本発明を提案するに至った。
【0010】
本発明のボールねじ装置は、ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されて、前記ナット部材とねじ軸との間でトルクを推力に、また、推力をトルクに変換させるもので、前記ねじ軸に、約1巻きのねじ溝が少なくとも1つ設けられているとともに、この約1巻きのねじ溝の下流と上流とを連通連結して閉ループとするためのボール循環溝が設けられている。前記ボール循環溝は、そのボール転動方向中間領域で径方向内側に沈み込むように湾曲し、また、ボール転動方向両端側領域で径方向外側に膨らむように湾曲した形状に形成されている。前記ボール循環溝を径方向外側から見たとき、前記ねじ軸の回転軸線に対して前記ボール循環溝のボール転動方向中間領域を転動するボールの中心の軌跡の傾き角が、45〜60度に設定されているとともに、前記ボール循環溝と前記ねじ溝との連接部分を転動するボールの中心の軌跡が、ボール直径に対して1.8倍以上の曲率半径に設定された曲線とされている。
【0011】
この場合、まず、ボール循環溝の傾き角を可及的に小さくする方向で所定範囲に規定しているから、ボール循環溝の占有角度が可及的に小さくなる。これに加えて、ボール循環溝を径方向で緩やかに波打つ形状にしているから、ねじ軸のねじ溝とボール循環溝との間をボールが出入りする過程においてボールの径方向での変位量が小さくなる。しかも、上記ねじ溝とボール循環溝との連接部分を、径方向外側から見たときに、可及的に緩やかに湾曲させた形状にしているから、ボール循環溝の直線部分の長さが可及的に短くなるとともに、ボールがボール循環溝に入るときとボール循環溝から出るときの方向転換角度が可及的に小さくなって、ボールに対して付与される転がり抵抗が軽減される。これらのことから、負荷容量が高められたうえで、ボール循環溝でのボールの転がりが滑らかになる。
【0012】
ところで、上記ナット部材とねじ軸とを最大に引き離した最大伸張状態で軸心方向所定長さの重合領域を確保して、前記ねじ軸の前記重合領域の外周面に約1巻きのねじ溝を2つまたはそれ以上設けるとともに、当該ねじ溝個々の下流と上流とを個別に連通連結して閉ループとするためのボール循環溝を前記ねじ溝と同数設けることができる。
【0013】
この場合、上記請求項1と同様の作用に加えて、ボールが必ずナット部材とねじ軸との重合領域に存在することになり、ボール抜け出しを確実に阻止できるようになる。
【0014】
なお、上記構成において、「約1巻き」の「約」とは、後の実施形態の説明に引用する図面に示すように、1巻きに満たないということを表している。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1から図9に本発明の実施形態1を示している。図例のボールねじ装置1では、ナット部材2と、ねじ軸3と、複数のボール4とを備えており、ナット部材2とねじ軸3との対向面間でボール4群を循環させるようになっている。
【0016】
ナット部材2には、その一方軸端から他方軸端まで連続する1本のねじ溝21が形成されている。また、ねじ軸3には、軸心方向途中領域に互いに独立した2つのねじ溝31a,31bが軸方向隣り合わせに形成されている。このねじ溝31a,31bは、それぞれ1巻きに満たない長さになっている。これらナット部材2のねじ溝21とねじ軸3のねじ溝31a,31bとは、互いに同じリード角に設定されている。これら両ねじ溝21,31a,31bの断面形状は、ゴシックアーク形状とされているが、半円形状とすることもできる。
【0017】
そして、ねじ軸3の軸心方向で隣り合う2つのねじ溝31a,31bの間に存在するねじ山(ランド部)32には、2つのねじ溝31a,31bを個別に閉ループとするボール循環溝33,34が設けられている。この2つのボール循環溝33,34は、それぞれ、2つのねじ溝31a,31bの上流側と下流側とを個別に連通連結するものであり、2つのねじ溝31a,31bの下流のボール4群を内径側へ沈みこませてナット部材2のねじ山(ランド部)22を乗り越えさせて上流へ戻すように蛇行した形状になっている。つまり、前記閉ループにした2つのねじ溝31a,31b内に配置されるボール4群がそれぞれ独立して転動循環されるようになっている。この2つのボール循環溝33,34の断面形状は、ゴシックアーク形状とされているが、半円形状とすることもできる。
【0018】
また、ねじ溝3の軸方向両端側の外周面には、それぞれ周溝が設けられており、この2つの周溝に対して止め輪7がそれぞれ係合されている。この止め輪7の外径寸法は、ナット部材2の内径寸法よりも大きく設定されており、この止め輪7でもってナット部材2の軸方向移動ストロークを制限するようになっている。
【0019】
なお、上記ナット部材2は、例えば回転自在に支持され、上記ねじ軸3は、非回転かつ軸心方向不動に取り付けられている。そして、上記ナット部材2を回転させると、このナット部材2が、図1の二点鎖線で示すように2つの止め輪7の間でねじ軸3上を軸方向にスライドすることになる。
【0020】
この実施形態1では、ボール循環溝33,34の傾きや、ねじ軸3のねじ溝31a,31bとボール循環溝33,34との連接部分の形状を工夫することにより、負荷容量と動作円滑性との関係をバランスよく両立させるようにしているので、以下で詳細に説明する。
【0021】
具体的に、上記ボール循環溝33,34の形状について、そこを転動するボール4の中心の軌跡Cで説明する。
【0022】
(a)まず、図5に示す角度αを45〜60度に設定する。この角度αとは、ねじ軸3の回転軸線Oに対して、ボール循環溝33,34のボール転動方向中間領域を転動するボール4の中心の軌跡Cの傾き角のことである。
【0023】
この傾き角αは、大きく(60度を越える値)すればする程、ボール循環溝33,34の周方向での長さが長くなり、これに対応して図4に示す占有角度θが大きくなるので、ボール4に作用する転がり抵抗が小さくなってボール4の動作円滑性が向上する反面、スラスト荷重やラジアル荷重などを負担する容量、つまり負荷容量が低下してしまう。これとは逆に、傾き角αを小さく(45度未満の値)すればする程、ボール循環溝33,34の占有角度θが小さくなるので、負荷容量が向上する反面、ボール4に作用する転がり抵抗が大きくなってボール4の動作円滑性が低下してしまう。
【0024】
上記ボール4に作用する転がり抵抗とは、ボール4が、ボール循環溝33,34の壁面に対して当接することにより前記壁面から受ける力F1により生じる。
【0025】
上記力F1のベクトル(力の向きと大きさ)を図6に示して説明する。なお、ボール循環溝33、34は共に同じなので一方のボール循環溝33で説明する。
【0026】
図6において、Fは、ボール4がその循環時にボール循環溝33の壁面を周方向に押す力(ボール力)である。Fa1,Fa2は傾き角αを本実施形態で規定した範囲内の傾き角αaに設定した場合(太実線参照)でのボール力Fの分力である。ボール力の分力Fa1は、このボール循環溝33方向に向けて、また、分力Fa2は壁面に垂直に向けてそのベクトル状態が示されている。Fb1,Fb2は、傾き角αを本実施形態で規定した範囲よりも大きな傾き角αbに設定した場合(太実線参照)でのボール力Fの分力であり、分力Fb1,Fb2は、それぞれ、分力Fa1,Fa2にそれぞれ対応している。ここで、分力Fa2,Fb2の反力が上記F1となる。ここで、上記ボール力Fを一定とすると、図6から明らかであるように分力Fa2>分力Fb2となる。
【0027】
このように傾き角αを大きくすれば、ボール4がボール循環溝33を循環するときにその壁面から受ける反力が小さくつまりボール4の循環時での転がり抵抗が軽減されることがわかる。しかし、ボール循環溝33,34の占有角度θが大きくなって負荷容量が低減することを考慮して、上述したように傾き角αを可及的に小さくする方向で上記範囲内に規定することによって、ボール循環溝33,34の占有角度θを可及的に小さくして、負荷容量を高めるようにしている。
【0028】
(b)次に、ねじ軸3のねじ溝31a,31bとボール循環溝33,34とを可及的に緩やかに連接する。つまり、図5に示すように、ねじ軸3のねじ溝31a,31bとボール循環溝33,34との連接部分を転動するボール4の中心の軌跡Cを、ボール4の直径rに対して1.8倍以上の曲率半径Rに設定された曲線にする。
【0029】
ここで、上記曲率半径Rをボール4の直径rの1.8倍よりも小さくすると、図7に示すように、ボール4Aの進行方向成分Vが、ボール4Bの中心から大きくずれて、ねじ軸3のねじ溝31a,31bとボール循環溝33,34との連接部分の外側コーナー壁面へ向かうので、ボール4Aが前記外側コーナー壁面とボール4Bとの間に食い込むくさび作用が発生して、ボール4の循環性が低下する。しかし、上記曲率半径Rをボール4の直径rの1.8倍以上に大きくすると、図8に示すように、ボール4Aの進行方向成分Vが、ボール4Bの中心にごく近い部分へ向かうようになるので、上述したようなくさび作用が発生しなくなってボール4の循環性が向上する。
【0030】
このようにすれば、ボール4がボール循環溝33,34に入るときや、ボール循環溝33,34から出るときの方向転換過程において、ボール4に作用する転がり抵抗を可及的に小さくすることができる。そのため、ボール4が軸心方向で蛇行して転がる動作を滑らかにできるようになって、耐摩耗性の向上にも貢献できる。
【0031】
(c)図9に示すように、ボール循環溝33,34は、そのボール4の転動方向の中間領域で径方向内側に沈み込むように湾曲した形状(凹曲形状)に、また、ボール転動方向の両端側領域で径方向外側に膨らむように湾曲した形状(凸曲形状)になっているが、このボール循環溝33,34のボール転動方向両端側領域を転動するボール4の中心の軌跡Cと、ねじ軸3のねじ溝31a,31bを転動するボール4の中心の軌跡Cとが、所定の角度βをもって交差されている。
【0032】
つまり、上記角度βは、図9に示すように、0度よりも大きく、30度以下、好ましくは20度以下に設定する。この角度βは、第1接線Yと第2接線Zとの交差角度のことである。第1接線Yは、ねじ溝31a,31bを転動するボール4の中心の軌跡Cで作る大円弧R1に関して、ボール循環溝33,34の両端側領域を転動するボール4の中心の軌跡Cで作る小円弧R2との交点Kで得ている。また、第2接線Zは、上記小円弧R2に関して上記交点Kで得ている。
【0033】
なお、上記大円弧R1の曲率中心P1から交点Kを通る直線G上に、上記小円弧R2の曲率中心P2を配置すれば、上記交差角度βが0度になる。
【0034】
このように、上記交差角度βを所定角度範囲に設定していれば、ねじ軸3のねじ溝31a,31bとボール循環溝33,34との間をボール4が出入りする過程においてボール4の径方向での変位量を小さくすることができるので、ボール4の出入りが円滑になる。
【0035】
以上、(a)〜(c)で説明したように、ボール循環溝33,34の占有角度θ、つまり荷重を負担できない領域を可及的に小さくすることにより、負荷容量を可及的に高めるようにしたうえで、ボール循環溝33,34を通過するボール4に作用する転がり抵抗を可及的に小さくすることにより、ボール4の転がりを可及的に滑らかにさせるようにしている。これにより、ボールねじ装置において、負荷容量と動作円滑性をバランスよく両立させることができる。
【0036】
図10から図17に本発明の実施形態2を示している。図例のボールねじ装置1では、ナット部材2と、ねじ軸3と、複数のボール4と、保持器リング5とを備えており、ナット部材2とねじ軸3との対向面間でボール4群を循環させるようになっている。
【0037】
ナット部材2には、その一方軸端から他方軸端まで連続する1本のねじ溝21が形成されている。また、ねじ軸3には、軸心方向途中領域に互いに独立した2つのねじ溝31a,31bが軸方向隣り合わせに形成されている。このねじ溝31a,31bは、それぞれ1巻きよりも短い長さ、つまり約1巻きの長さになっている。これらナット部材2のねじ溝21とねじ軸3のねじ溝31a,31bとは、互いに同じリード角に設定されており、これら両ねじ溝21,31a,31bの断面形状は、ゴシックアーク形状とされているが、半円形状とすることもできる。
【0038】
この実施形態2では、ナット部材2とねじ軸3とを最大に引き離した最大伸張状態で軸心方向所定長さの重合領域を確保して、ねじ軸3における前記重合領域の外周面にそれぞれ約1巻きのねじ溝31a,31bを軸方向隣り合わせに2つ設けており、このねじ溝31a,31b個々の下流と上流とをボール循環溝33,34で個別に連通連結して閉ループとして、この閉ループにした2つのねじ溝31a,31b内に配置されるボール4群をそれぞれ独立して転動循環させるようにしている。
【0039】
具体的に、ねじ軸3の軸心方向で隣り合う2つのねじ溝31a,31bの間に存在するねじ山(ランド部)32には、2つのねじ溝31a,31bを個別に閉ループとするボール循環溝33,34が設けられている。この2つのボール循環溝33,34は、それぞれ、2つのねじ溝31a,31bの上流側と下流側とを個別に連通連結するものであり、2つのねじ溝31a,31bの下流のボール4群を内径側へ沈みこませてナット部材2のねじ山(ランド部)22を乗り越えさせて上流へ戻すように蛇行した形状になっている。この2つのボール循環溝33,34の断面形状は、ゴシックアーク形状とされているが、半円形状とすることもできる。
【0040】
保持器リング5は、複数のボール4それぞれを円周等間隔に離隔配置して回転可能に保持するものである。この保持器リング5は、薄肉の円筒部材からなり、その円周数ヶ所には、軸心方向に沿う長孔形状のボールポケット51が設けられており、このボールポケット51に対してそれぞれ2つずつボール4が収納される。しかも、ボールポケット51の径方向内外での開口寸法は、ボール4の直径よりも大に設定されており、ボール4が径方向内外に余裕をもって通るようになっている。但し、保持器リング5のボールポケット51には、それを埋め尽くす状態にグリースを塗布してから、必要数のボール4を収納することにより、グリースの粘性でもってボール4を保持させるようにしている。
【0041】
また、上記保持器リング5は、ねじ軸3の外径側に対して軸心方向でほぼ不動に位置決めされた状態で、かつ相対回転可能な状態で取り付けられている。そのために、ねじ軸3の自由端側に縮径部35を、また、保持器リング5の一端に径方向内向きのフランジ52をそれぞれ設け、ねじ軸3の縮径部35に対して保持器リング5のフランジ52をはめ込み、さらにねじ軸3の縮径部35に設けてある周溝に対して止め輪7を係合させている。但し、止め輪7は、ねじ軸3の縮径部35とねじ溝21の形成部分との境にできる段壁面36から離れた位置に取り付けられていて、これら止め輪7と段壁面36との間に対して保持器リング5のフランジ52が軸心方向に若干の遊びを持つ状態で配置されている。これにより、保持器リング5が、ねじ軸3に対して軸心方向ほぼ不動で、相対回転が許容される状態になる。
【0042】
なお、上記保持器リング5は、ねじ軸3で回転案内されるようになっている。そのために、図10に示すように、保持器リング5とねじ軸3との間の内径隙間X1を、保持器リング5とナット部材2との間の外径隙間X2よりも小さく設定している。
【0043】
また、上記ナット部材2は、ブラケット8に対して一体的に結合されている。このブラケット8は、図示しないモータなどの回転動力源が減速歯車を介して噛合されるとともに、図示しない転がり軸受を介して前記ねじ軸3の中心孔に挿通される図示しない支軸に対して回転自在に支持される。また、上記ねじ軸3は、図示しないケースなどの固定部分に対して非回転かつ軸心方向不動に取り付けられ、このねじ軸3に対して上記ナット部材2が回転可能かつ軸心方向移動可能に配置される。
【0044】
上記ブラケット8は、上半分の断面がほぼ逆向きコ字形の金属材で形成されている。つまり、このブラケット8は、径方向内外に同心状に設けられる内筒部81および外筒部82の軸心方向一端側を連接した形状である。内筒部81は、ねじ軸3の中心孔内に非接触状態で配置されて上記支軸に対して転がり軸受を介して支持される。また、外筒部82は、ナット部材2の軸心方向一端側の領域外周に一体的に嵌合されており、図12に示すように、外筒部82の付け根側の内周面に設けられるセレーション83とナット部材2の嵌入方向奥側の外周面に設けられるセレーション23とを嵌合することにより、ブラケット8とナット部材2とを周方向で一体的に結合するようになっている。この外筒部82の外周面には、樹脂製のギヤ9が一体に成形されている。
【0045】
次に、上記ボールねじ装置1の動作を説明する。このボールねじ装置1は、ナット部材2またはねじ軸3の一方を回転させることで他方を軸心方向に移動させる使用形態、あるいはナット部材2またはねじ軸3の一方を軸心方向に移動させることで他方を回転させる使用形態にすることができる。前者の使用形態については、トルクを推力に変換する正効率と言い、後者の使用形態については、推力をトルクに変換する逆効率と言う。
【0046】
一例としては、図示しないモータを駆動することによりブラケット8およびナット部材2を回転させる場合、このナット部材2自身が回転しながらねじ軸3に沿って軸心方向一方へ向けて直線的に移動させられることによって、例えば図10に示す状態から図11に示す状態になる。一方、上記モータを前記と逆回転方向に駆動すると、ナット部材2が前述と逆向きに回転しながら軸心方向他方へ向けて移動させられることによって、例えば図11に示す状態から図10に示す状態になる。
【0047】
このように、ナット部材2を軸心方向に往復移動させることにより、ナット部材2とねじ軸3とが軸心方向で重合する範囲が大小変化するが、ねじ軸3においてボール循環溝33,34により個別に閉ループとした2つのねじ溝31a,31b内でそれぞれボール群4が保持器リング5にガイドされながら転動循環することにより、ナット部材2の螺旋運動が円滑にガイドされるとともに、ナット部材2が所定の移動ストローク範囲を往復移動する過程において、ボール4が抜け出す現象を確実に防止できるようになる。
【0048】
また、保持器リング5を、高精度に加工されたねじ軸3の外周面でもって回転案内させる形態にしているから、ナット部材2を軸心方向に往復移動させる過程において、保持器リング5そのものの回転振れを抑制することができるとともに、保持器リング5がボール4に対して干渉することを軽減できるようになっている。
【0049】
この実施形態2でも、ボール循環溝33,34の形状や、ねじ軸3のねじ溝31a,31bとボール循環溝33,34との連接部分の形状を、上記実施形態1と同様に、ボール循環溝33,34の占有角度θ、つまり荷重を負担できない領域を可及的に小さくすることにより、負荷容量を可及的に高めるようにしたうえで、ボール循環溝33,34を転動するボール4に作用する転がり抵抗を可及的に小さくすることにより、ボール4の転がりを可及的に滑らかにさせるようにしている。これにより、ボールねじ装置1において、負荷容量と動作円滑性をバランスよく両立させることができる。
【0050】
但し、この実施形態2の場合、保持器リング5を用いた構成にしているので、ボール循環溝33,34を転動するボール4に作用する転がり抵抗は、上述したようにボール4がボール循環溝33,34の壁面に対して当接することにより前記壁面から受ける力F1の他に、保持器リング5に対して干渉することにより受ける力F2によっても発生することになる。
【0051】
上記力F1については上記実施形態1で説明しているので、ここでの説明を省略し、上記力F2のベクトル(力の向きと大きさ)を図17に示して説明する。なお、ボール循環溝33、34は共に同じなので一方のボール循環溝33で説明する。
【0052】
図17において、Fxは、傾き角αを本実施形態で規定した範囲内の傾き角αaに設定した場合(太実線参照)において、ねじ軸3の回転により周方向に移動するボール循環溝33の壁面がボール4に対して垂直に作用する力(壁面力)であり、Fx1,Fx2は、前記壁面力Fxの分力である。壁面力Fxの分力Fx1は、軸線方向に向けて、また、壁面力Fxの分力Fx2は周方向に向けて、それぞれそのベクトル状態が示されている。Fyは、傾き角αを本実施形態で規定した範囲よりも大きな傾き角αbに設定した場合(太実線参照)でのボール循環溝33の壁面がボール4に作用する力であり、Fy1,Fy2は、前記Fyの分力である。分力Fy1,Fy2はそれぞれ、分力Fx1,Fx2にそれぞれ対応している。
【0053】
そして、前記壁面力の周方向の分力Fx2,Fy2が前記ボール循環溝33の壁面がボール4を介して保持器リング5に対して作用する力F2となる。ここで、壁面力Fxは、図6に示すボール力の分力Fa2の反力であって互いに等しく、壁面力Fyは、図6に示すボール力の分力Fb2の反力であって互いに等しい。したがって、Fa2>Fb2により、Fx2>Fy2の関係が成立する。
【0054】
【発明の効果】
本発明に係るボールねじ装置は、負荷容量と動作円滑性をバランスよく両立させることができて、信頼性の高い構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るボールねじ装置の縦断面図
【図2】図1のボールねじ装置の分解斜視図
【図3】図1のボール循環経路を模式的に示す側面図
【図4】図3のボール循環経路の正面図
【図5】ねじ軸のボール循環溝を展開して示す平面図
【図6】図5のボール循環溝でボールに作用する転がり抵抗を説明する図
【図7】図5のねじ軸のねじ溝とボール循環溝との連接部分の曲率半径をボール直径の1.8倍よりも小さくした場合の図
【図8】図5のねじ軸のねじ溝とボール循環溝との連接部分の曲率半径をボール直径の1.8倍よりも大きくした場合の図
【図9】図5のボール循環溝の断面図
【図10】本発明の実施形態2に係るボールねじ装置の縦断面図
【図11】図10の状態からナット部材を軸心方向一方へ移動させた状態を示す縦断面図
【図12】図10のボールねじ装置の分解斜視図
【図13】図10のボールねじ装置において一部を断面にした平面図
【図14】図13の(14)−(14)線断面の矢視図
【図15】図10のボール循環経路を模式的に示す側面図
【図16】図10のボール循環経路の正面図
【図17】図15のボール循環溝でボールに作用する転がり抵抗を説明する図
【符号の説明】
1   ボールねじ装置
2   ナット部材
21   ナット部材のねじ溝
3   ねじ軸
31a,31b  ねじ軸のねじ溝
33,34   ねじ軸のボール循環溝
4   ボール
5   保持器リング
51   ボールポケット

Claims (2)

  1. ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されて、前記ナット部材とねじ軸との間でトルクを推力に、または推力をトルクに変換させるボールねじ装置であって、
    前記ねじ軸に、約1巻きのねじ溝が少なくとも1つ設けられているとともに、この約1巻きのねじ溝の下流と上流とを連通連結して閉ループとするためのボール循環溝が設けられており、
    前記ボール循環溝は、そのボール転動方向中間領域で径方向内側に沈み込むように湾曲し、また、ボール転動方向両端側領域で径方向外側に膨らむように湾曲した形状に形成されており、
    前記ボール循環溝を径方向外側から見たとき、前記ねじ軸の回転軸線に対して前記ボール循環溝のボール転動方向中間領域を転動するボールの中心の軌跡の傾き角が、45〜60度に設定されているとともに、前記ボール循環溝と前記ねじ溝との連接部分を転動するボールの中心の軌跡が、ボール直径に対して1.8倍以上の曲率半径に設定された曲線とされている、ボールねじ装置。
  2. 前記ナット部材とねじ軸とを最大に引き離した最大伸張状態で軸心方向所定長さの重合領域が確保されていて、前記ねじ軸の前記重合領域の外周面に約1巻きのねじ溝が2つまたはそれ以上設けられているとともに、当該ねじ溝個々の下流と上流とを個別に連通連結して閉ループとするためのボール循環溝が前記ねじ溝と同数設けられている、請求項1のボールねじ装置。
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