JP2004060866A - ダイレクトドライブモータ用軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のダイレクトドライブモータの機能を損なうことなく高速化と位置決め精度の両方に対応し得るものとすることである。
【解決手段】回転子の内側と外側のいずれか一方若しくは両方に固定子を配置し、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータ構造に内蔵される軸受であって、該軸受は、一個で回転および負荷を支持し、軸受内には潤滑剤を封入すると共に、潤滑剤の洩れを防止するための接触型の密封シール7を備え、この接触型の密封シール7におけるシール接触部7cで発生する摩擦トルクは、シールを除いた軸受自身の摩擦トルクよりも大きいものとする。
【選択図】 図1
【解決手段】回転子の内側と外側のいずれか一方若しくは両方に固定子を配置し、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータ構造に内蔵される軸受であって、該軸受は、一個で回転および負荷を支持し、軸受内には潤滑剤を封入すると共に、潤滑剤の洩れを防止するための接触型の密封シール7を備え、この接触型の密封シール7におけるシール接触部7cで発生する摩擦トルクは、シールを除いた軸受自身の摩擦トルクよりも大きいものとする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のダイレクトドライブモータに内蔵される軸受は、主に図20に示すクロスローラ軸受が採用されている。現在までクロスローラ軸受が採用されてきた理由としては、一個の軸受でアキシアル荷重やモーメント荷重を支持でき、モータ本体がコンパクトにできるというメリットが挙げられる。
しかしながら、前記クロスローラ軸受は高負荷容量・高剛性といったメリットを持つ反面、▲1▼転動体300が円筒ころであるため、軌道輪100,200との接触状態が線接触である、▲2▼転動体300の回転軸が軸受の回転軸とある角度を持っているため、構成上転動体300と軌道輪100,200との間にすべりが発生しやすい、といった理由から、軸受の回転トルクが大きく発熱が大きいといったデメリットがあった。
そこで本発明者らは、ダイレクトドライブモータ用軸受として、特願2002−005034や特願2002−109375に示す軸受によって軸受トルクの低減を図り、ダイレクトドライブモータの高速化に成功している(図21参照:図中実線aは特願2002−005034や特願2002−109375に示す軸受、図中破線bは従来のクロスローラ軸受を示す)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のダイレクトドライブモータの用途としては、連続運転で使用されるものばかりでなく、半導体製造の搬送等に代表される用途では、高速化と位置決め精度の両方が要求される。
このような位置決め精度が要求される用途では、作動中のモータを停止させる際、瞬時に停止しなければ確実な位置決めは不可能であり、位置決め制御を可能にするためには、軸受にある程度のトルクが必要となってくる。
ここで前記特願2002−005034や特願2002−109375に示す軸受について見ると、これら新規発明にあっては低トルクで高速運転を可能にしたものの、位置決め制御に必要なトルクは得られていないため、確実な位置決め精度を要求される用途においては十分な要求を満足し得ない。
本発明は、上述した従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来のダイレクトドライブモータの機能を損なうことなく高速化と位置決め精度の両方に対応し得るものとすることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明がなした技術的手段は、回転子の内側と外側のいずれか一方若しくは両方に固定子を配置し、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータ構造に内蔵される軸受であって、該軸受は、一個で回転および負荷を支持し、軸受内には潤滑剤を封入すると共に、潤滑剤の洩れを防止するための接触型の密封シールを備え、密封シールは、該シールを除いた軸受自身の摩擦トルクとの関係において、ダイレクトドライブモータの位置決め制御に必要な摩擦トルクを発生させることとした。この接触型の密封シールにおけるシール接触部で発生する摩擦トルクは、シールを除いた軸受自身の摩擦トルクよりも大きいものとするのが好ましい。
接触型の密封シールは、シール接触部が内輪外径若しくは外輪内径と径方向に接触する径方向接触型である。
軸受は、例えば次のいずれかの構成を使用するのが好ましい。
▲1▼一対の軌道輪間に複数の転動体が組み込まれ、各軌道輪は転動体の半径より大径状の軌道面からなる軌道溝を有し、その中に少なくとも一つの軌道輪は二つの軌道面からなり、各転動体は転がり接触面となる外径が軸方向にも曲率を持ち、円周上に交差状に配されると共に、各転動体の外径が常に相対する一方の軌道輪の軌道面と他方の軌道輪の軌道面にて夫々一点ずつ合計二点で接触している軸受、▲2▼3点接触玉軸受若しくは4点接触玉軸受のいずれかである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明ダイレクトドライブモータ用軸受の一実施形態を図に基いて説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎずなんらこれに限定して解釈されるものではない。
【0006】
本発明のダイレクトドライブモータ用軸受Aは、回転子の内側と外側のいずれか一方若しくは両方に固定子を配置し、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータ構造に内蔵される軸受で、該軸受は、一個で回転および負荷を支持し得る構造である。
ダイレクトドライブモータ用軸受Aは、例えば図1に開示しているように、軸受軌道輪(軸受外輪)1の内径と、軸受軌道輪(軸受内輪)2の外径間に形成される軌道溝3に複数の転動体5,5…が組み込まれ、外輪1と内輪2の間に径方向接触型の密封シール7を備えて構成されている。
軸受構造は、上述の通り、一個の軸受で回転および負荷を支持し得る構造であれば特に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で任意に選択し得、具体的には後述する種々の構造が代表例として挙げられる。
密封シール7は、例えば全体円環状に形成され、その外径側7aが外輪1側に固定され、内径側7bのシール接触部7cが内輪2の外径面と所望な接触圧力をもって接触しているもので、軸受内に封入された潤滑剤の洩れを防止すると同時に、ダイレクトドライブモータの位置決め制御に必要なトルクを与える役割を担っている。
すなわち、接触型の密封シール7のシール接触部7cで摩擦トルクを発生させることとし、好ましくはこの密封シール7におけるシール接触部7cで発生する摩擦トルクが、シールを除いた軸受自身の摩擦トルクよりも大きいものとすることで上記役割を担っている。密封シール7は、上記役割を達成し得るものであれば特にその形状・構造などに限定されない。また、芯金の有無は問わない。
尚、使用態様によってはシール接触部で発生する摩擦トルクを軸受自身の摩擦トルクと同等か又は若干小さくしてもよい。
密封シール7の接触圧力の調整方法としては、例えばシール接触部7cの寸法調整・形状変更やシール材質の変更、あるいはシール接触部7cと接する軸受の接触面(内輪外径面)にニッケルクロームメッキ等の表面処理を施し、処理層の厚さによりシールの接触圧力を調整するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、密封シール7は、内輪2側に固定され、外輪1の内径面と所望な接触圧力をもって接触するものであっても本発明の範囲内である。
さらに、本実施形態の密封シール7は、径方向接触型であるが軸方向接触型でも同様の効果があることは言うまでもない。
【0007】
図1に示す軸受Aは、一方の軌道輪(外輪)1の内径および他方の軌道輪(内輪)2の外径に形成される夫々の軌道面によって所望形状の軌道溝3が形成されており、本実施形態では、軌道輪(外輪)1が幅方向の中央で軸方向に二分割されており、軌道輪(内輪)2は一体のものとした。
なお、軌道輪1,2のいずれか一方あるいは両方共が幅方向の中央で軸方向に二分割されているタイプや、いずれの軌道輪1,2も分割されていないタイプを用いることも本発明の範囲内で可能である。また、二分割タイプは、ボルト・リベット等で一体に組み立てられるものもある。
軌道溝3は、転動体5の半径よりも大きな半径の軌道面1a・1b,2a・2bにより形成されている。また、少なくともいずれか一方の軌道輪の軌道溝が、二つの軌道面から構成されているものであればよく本発明の範囲内で適宜選択される。
各軌道面1a・1b,2a・2bの形状は、転動体5の転がりに適切な形状を有しているものであれば、断面アーチ状あるいはV字状等任意で、また曲線状あるいは直線状等のいずれであってもよく特に限定されるものではないが、例えば本実施形態ではゴシックアーチが適用される。
【0008】
転動体5は、転がり接触面となる外径5aが軸方向に曲率を持ち、かつ軌道面1a・1b,2a・2bの夫々の半径よりも小径の半径を有する任意形状で、該転動体5は、隣接する転動体5が夫々交互に交差状に配されると共に、各転動体5の外径5aが、常に一方の軌道輪1の軌道面1a・1bと他方の軌道輪2の軌道面2b,2aにて二点接触している。例えば本実施形態では図2に開示しているように、一組の相対面5b,5bを有する上下切断状玉(玉の上下部分を切断して相対面5b,5bを形成した構造のものをいう。以下同じ。)で、該相対面5b,5bに垂直する自転中心軸5cが夫々交差状となるように夫々の転動体5,5…が組込まれると共に、各転動体5の外径5aが、常に一方の軌道輪1の軌道面1a,1bと他方の軌道輪2の軌道面2b,2aにて二点接触している。
転動体5は、その上下の切断幅は特に限定されず、また上下の切断割合は、均等あるいは均等でないものであってもよく、本発明の範囲内で任意に選択可能である。すなわち、本実施形態では、相対面5b,5bは対称としたが、転動体5の相対面5b,5bは、対称であっても非対称であってもよくいずれも本発明の範囲内である。転動体5の全体形状、相対面5b,5bの有無や、外径5aにおける軸方向の曲率の大小等は、上記具体的形状に何等限定されるものではなく、本発明の範囲内において任意に変更可能である。すなわち、例えば、相対面5b,5bに代えて、非平行状の両面を備え、該両面に垂直する自転中心軸5cを有するものとしてもよく、また、玉の片側をカット(切断)して一平面(カット面)を設けた片側カット状玉としたものであってもよい。
【0009】
転動体5,5…の組込みは、例えば隣り合う転動体5,5における各相対面5b・5b,5b・5bに垂直する自転中心軸5c,5cが交互に交差状となるようにするが、その交差状態は直交状・非直交状のいずれでも構わない。
転動体5の交差状に配される方式は、両方のなりで数が同じなら、特に限定されず、すなわち、転動体5が1ヶ毎に交差してもよく、1ヶ毎に交差しなくとも両方のなりで数が同じなら、2ヶずつ交差あるいは2ヶ1ヶ1ヶ2ヶ等のように交差していてもよくいずれも本発明の範囲内である。
【0010】
各転動体5,5の運動は、保持器6で案内される。保持器6は、例えば図3に示すようなもみ抜き保持器(円環状保持器)で、隣り合う各転動体5,5を相対面5b・5b,5b・5bに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように交互に組み込み可能な保持部(ポケット)13…を、円環体の円周上で転動体5…数量と同一数量をもって等間隔で、かつ交互に交差状に配して構成されている。
各ポケット13…の軸方向の両側面13a,13bは、交互に平行しかつ軸受の回転軸と垂直でも平行でもなく、転動体5の接触角と同等レベルの一定の角度(傾斜状)となっている。
各ポケット13…の軸方向の両側面13a,13b間の距離は、転動体5の幅よりやや大きく構成されている。
上記ポケット13の形状は、傾斜状の平行な両側面13a,13bを有すると共に、両側面13a,13b間の距離を転動体5の幅よりもやや大きく形成されているものであれば、そのポケット全体形状は特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で変更可能である。
なお、本実施形態では、円周上で転動体5…数量と同一数量のポケット13…が等間隔で、かつ交互に交差状に配されているが、特に限定されず、両方のなりで数が同じなら、2ヶずつ交差あるいは2ヶ1ヶ1ヶ2ヶ等のように交差していても良く本発明の範囲内である。
保持器6は、転動体5を保持案内するポケット13…を有する形状であれば、特に限定されるものではなく本発明の範囲内で任意に選択変更可能である。
保持器6の案内方式は特に限定されるものではなく、内輪案内でも、外輪案内でも、転動体案内でもよい。また、保持器6の構成は特に限定されるものではなく、一体型でも、幾つかの部分から形成したものでも良い。なお、保持器6のポケット形状は上述した各転動体の形状に合わせて適宜設計変更されるものである。保持器6の代わりとして、図4に拡大して示したようなセパレータ(スぺーサ)8で転動体5,5を案内することももちろん可能である。このような構造により、軸受はもっとコンパクト化できるようになる。
セパレータ8は、転動体5の直径よりも小径状で、隣接して保持する各転動体5,5を上述の通り相対面5b・5b,5b・5bに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように保持する凹状円弧溝9,9を、相対面10,10に交差状に形成している。
この円弧溝9の曲率は、転動体外径5aの曲率と略同一、あるいは大きいものとしてもよく任意である。
【0011】
転動体と軌道面との間における予圧の付与される状態は特に限定されず、すなわち、製造段階で予圧が付与されても付与されなくてもよくいずれも本発明の範囲内である。
【0012】
これら軸受の軌動輪1,2と転動体5の材質としては、通常軸受鋼が用いられるが、使用環境に応じて耐食性や、耐熱性を向上させる場合にはステンレス鋼やセラミック等が適宜選択される。
また保持器6の材料としては、もみ抜き保持器、プレス保持器、樹脂保持器等が適宜選択されるので、例えば黄銅や鉄等の金属や、例えばポリアミド66(ナイロン66)・ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂が本発明の範囲内で選ばれる。
【0013】
本実施形態によれば、転動体5の外径5aが相対する外輪1の軌道面1aと内輪2の軌道面2bに夫々点接触(接触点を11,11で示す。)し、隣接する転動体5が外輪1の軌道面1bと内輪2の軌道面2aに夫々点接触(接触点を12,12で示す。)する。転動体5,5の接触角交互に交差するので、一つの軸受でラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重、モーメント荷重を受けることができる。
【0014】
ダイレクトドライブモータの位置決め精度評価の一例を図5に示す。
この評価は、ダイレクトドライブモータをある速度にて90゜旋回させて停止するまでの時間が規定時間内に収まっているかを評価したものである。
図中(1)は制動時のトルクが十分にある場合での結果、図中(2)は制動時のトルクが不足している場合での結果である。
図5より明らかなように、制動時のトルクが不足していると瞬時に停止できずに規定時間を超えてしまう。このような場合、位置決め精度が悪いということになる。
シールの接触圧力による制動特性を図6に示す。
図6に示すようにシールの接触圧力は大きくなるほど、制動時間が短くなっている。
本発明では、軸受自身の摩擦トルクよりもシール接触部7cで発生する摩擦トルクの方を大きくしている(図7参照)ため、密封シール7の接触圧力を調整することでダイレクトドライブモータの位置決め精度に最適なトルクを得ることができる。図中、実線cはシールを除いた軸受自身、一点鎖線dはシール接触部7c、破線eはシールを備えない従来のクロスローラ軸受を示す。
【0015】
図8は、図9に示すような非対称の相対面5b,5dを有する転動体(上下切断状玉)5を使用した実施の形態で、本実施形態では、外輪1と内輪2共に一体のものを使用し、軸受自身の摩擦トルクよりもシール接触部7cで発生する摩擦トルクの方を大きくしている。その他の構成、作用効果は上述した図1に示す実施形態と同様である。
また、図示例のように大端側の相対面5dが軸受の内輪2に向くように配することで、転動体5の回転がより安定になり、より低トルクを実現することができる。本実施形態は、高速回転の場合に用いられる。また、本実施形態では、外輪1と内輪2共に一体のものを使用するがこれに限定されず、いずれか一方若しくは両方を二分割するものとすることもできる。
なお、本実施形態では、転動体5の案内をセパレータ8で行っているが、保持器を使用することも勿論可能である。
【0016】
図10は、図11に示すような片側カット状玉を転動体として使用した実施の形態で、本実施形態では、外輪1が二分割、内輪2が一体のものを使用し、軸受自身の摩擦トルクよりもシール接触部7cで発生する摩擦トルクの方を大きくしている。その他の構成、作用効果は上述した図1に示す実施形態と同様である。転動体5は、例えばカット面5eに垂直する自転中心軸5cが夫々交差状となるように夫々の転動体5,5…が組込まれると共に、各転動体5の外径5aが、常に一方の軌道輪1の軌道面1a(1b)と他方の軌道輪2の軌道面2aにて二点接触している。本実施形態では、外輪1が二分割、内輪2が一体のものを使用するがこれに限定されず、いずれか一方若しくは両方を二分割するものとすることも、いずれも一体のものを使用することもできる。
転動体5は、その片側のカット面5eのカット(切断)幅は特に限定されず、またカット面5e形状も特にフラット面に限定されるものでなく、本発明の範囲内で任意に選択可能である。
本実施形態では、転動体5のカット面5eが外輪1側に向くようにして配されているが、カット面5eが内輪2側に向くように配することも可能で本発明の範囲内である。
保持器6は、図12に示すように、隣り合う各転動体5,5を上述の通りカット面5e,5eに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように交互に組み込み可能な保持部(ポケット)13,13…を、周方向に交互に形成している。ポケット13は、転動体よりも僅かに大径状の円弧面13cと、該円弧面13cの端部間を結ぶフラット面(傾斜面)13dとで平面視ドーム状に構成されており、外径6a側の一辺13eと内径6b側の一辺13eとは、外径6a側から内径6b側に向けてフラット面13dで連絡し、外径6a側の開口幅w1よりも内径6b側の開口幅w2を大径に構成している(図12・図13)。そして、周方向に隣り合う各ポケット13の円弧面13cの中心は、同一の円周上に配されて、平面視幅方向に外径6a側の一辺13eの位置をずらして配されている。すなわち、周方向に隣り合う各ポケット13は、その傾斜面13dが各ポケット13毎に交互左右に配される(図12参照)。
従って、本実施形態に示す保持器6を使用すると、各ポケット13に配される転動体5は、隣り合う夫々の転動体5,5の自転中心軸5c,5cが交互に交差状となるように、夫々のカット面5e,5eが外径6a側、すなわち外輪1側に向くように保持される。
また、図14に示すように、フラット面13dの延長線上に同傾斜状に外径6aに立上げ形成される片側倒れ防止片13fを設ける構造を採用することも可能である。該片側倒れ防止片13fは特に図示形状に限定されるものではなく、転動体5の回転に影響のない程度の構成であれば本発明の範囲内である。
また図15・図16に示す保持器6構造を採用することも可能である。
本図示形態では、ポケット13が平面視矩形状に構成され、周方向に延びる外径6a側の一辺13eと、その下方内径6b側に存する一辺13eとは外径6a側から内径6b側に向けてフラット面13dで連絡し、外径6a側の開口幅w1よりも内径6b側の開口幅w2を大径に構成している。
そして、周方向に配される各ポケット13は、平面視幅方向に交互に位置をずらして配される。すなわち、周方向に隣り合う各ポケット13は、そのフラット面13dが各ポケット13毎に交互左右に配される(図15)。本実施形態の保持器6とすれば、図12の保持器6よりもグリース保持空間が大きく取れる。その他の作用効果は図12に示す保持器形態と同様である。
【0017】
また、図17に示すような凹面15を有するセパレータ(スペーサ)8を配するものであっても本発明の範囲内である。
セパレータ8は、転動体5の直径よりも小径状で、隣接して保持する各転動体5,5を上述の通りカット面5e,5eに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように保持する凹面15,15を、相対面16,16に交差状に形成している。すなわち、凹面15の段部15aに転動体のカット面5eを対向せしめて保持する。なお、本実施形態に示すセパレータ形状は一実施形態にすぎず、何等限定されることなく任意に設計変更可能である。
【0018】
図18は、両端5f(大端)・5g(小端)の径を大小異にする円すい状ころを転動体5として使用した実施の形態で、本実施形態では、外輪1が一体、内輪2が二分割のものを使用する。その他の構成、作用効果は上述した図1に示す実施形態と同様である。円すい状ころは、交互に交差状に配すると共に、ころのテーパー状の周面5hが常に相対する外輪1の軌道面1a(1b)と内輪2の軌道面2b(2a)に線接触する。円すい状ころのテーパー状周面5hのテーパー形状は特に限定解釈されない。この円すい状ころを交互に交差状に配する場合、大端5f側が外輪軌道面1a(1b)に向くように配されるのが好ましい。図19は、セパレータ8を使用した実施の形態である。
【0019】
また、特に図示しないが、従来周知の3点接触玉軸受や4点接触玉軸受を使用することも本発明の範囲内であり、これらを使用した場合であっても同様の作用効果を奏する。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、上記構成により、軸受単体での低トルク化によるダイレクトドライブモータの高速化を可能としつつ、接触型密封シールの摩擦抵抗を利用することで制動時間の短縮が図れ、ダイレクトドライブモータの位置決め制御に必要なトルクをシールの接触力により調整することが可能となり、ダイレクトドライブモータの高速化と位置決め精度の向上を同時に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ダイレクトドライブモータ用軸受の一実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図2】本発明軸受に組み込まれる転動体の一実施形態を示す斜視図。
【図3】保持器の一実施形態を示す斜視図。
【図4】セパレータの一実施形態を示す斜視図。
【図5】ダイレクトドライブモータの位置決め精度評価結果の一例を示す図。
【図6】シールの接触圧力による制動特性を示す図。
【図7】軸受自身の摩擦トルクとシールの摩擦トルクを比較した図。
【図8】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図9】図8の実施形態に組み込まれる転動体の斜視図。
【図10】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図11】図10の実施形態に組み込まれる転動体の斜視図。
【図12】図10の実施形態に使用される保持器の一実施形態を一部省略して示す拡大平面図。
【図13】図12のI−I線断面図。
【図14】保持器の他の実施形態を示す断面図。
【図15】保持器の他の実施形態を一部省略して示す拡大平面図。
【図16】図15のII−II線断面図。
【図17】セパレータの他の実施形態を示す斜視図。
【図18】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図19】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図20】従来のクロスローラ軸受と本発明で使用した軸受の摩擦トルクの比較図。
【図21】従来のクロスローラ軸受を一部省略して示す概略断面図。
【符号の説明】
A:転がり軸受
1:外輪
2:内輪
3:軌道溝
5:転動体
7:接触型の密封シール
7c:シール接触部
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のダイレクトドライブモータに内蔵される軸受は、主に図20に示すクロスローラ軸受が採用されている。現在までクロスローラ軸受が採用されてきた理由としては、一個の軸受でアキシアル荷重やモーメント荷重を支持でき、モータ本体がコンパクトにできるというメリットが挙げられる。
しかしながら、前記クロスローラ軸受は高負荷容量・高剛性といったメリットを持つ反面、▲1▼転動体300が円筒ころであるため、軌道輪100,200との接触状態が線接触である、▲2▼転動体300の回転軸が軸受の回転軸とある角度を持っているため、構成上転動体300と軌道輪100,200との間にすべりが発生しやすい、といった理由から、軸受の回転トルクが大きく発熱が大きいといったデメリットがあった。
そこで本発明者らは、ダイレクトドライブモータ用軸受として、特願2002−005034や特願2002−109375に示す軸受によって軸受トルクの低減を図り、ダイレクトドライブモータの高速化に成功している(図21参照:図中実線aは特願2002−005034や特願2002−109375に示す軸受、図中破線bは従来のクロスローラ軸受を示す)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のダイレクトドライブモータの用途としては、連続運転で使用されるものばかりでなく、半導体製造の搬送等に代表される用途では、高速化と位置決め精度の両方が要求される。
このような位置決め精度が要求される用途では、作動中のモータを停止させる際、瞬時に停止しなければ確実な位置決めは不可能であり、位置決め制御を可能にするためには、軸受にある程度のトルクが必要となってくる。
ここで前記特願2002−005034や特願2002−109375に示す軸受について見ると、これら新規発明にあっては低トルクで高速運転を可能にしたものの、位置決め制御に必要なトルクは得られていないため、確実な位置決め精度を要求される用途においては十分な要求を満足し得ない。
本発明は、上述した従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来のダイレクトドライブモータの機能を損なうことなく高速化と位置決め精度の両方に対応し得るものとすることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明がなした技術的手段は、回転子の内側と外側のいずれか一方若しくは両方に固定子を配置し、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータ構造に内蔵される軸受であって、該軸受は、一個で回転および負荷を支持し、軸受内には潤滑剤を封入すると共に、潤滑剤の洩れを防止するための接触型の密封シールを備え、密封シールは、該シールを除いた軸受自身の摩擦トルクとの関係において、ダイレクトドライブモータの位置決め制御に必要な摩擦トルクを発生させることとした。この接触型の密封シールにおけるシール接触部で発生する摩擦トルクは、シールを除いた軸受自身の摩擦トルクよりも大きいものとするのが好ましい。
接触型の密封シールは、シール接触部が内輪外径若しくは外輪内径と径方向に接触する径方向接触型である。
軸受は、例えば次のいずれかの構成を使用するのが好ましい。
▲1▼一対の軌道輪間に複数の転動体が組み込まれ、各軌道輪は転動体の半径より大径状の軌道面からなる軌道溝を有し、その中に少なくとも一つの軌道輪は二つの軌道面からなり、各転動体は転がり接触面となる外径が軸方向にも曲率を持ち、円周上に交差状に配されると共に、各転動体の外径が常に相対する一方の軌道輪の軌道面と他方の軌道輪の軌道面にて夫々一点ずつ合計二点で接触している軸受、▲2▼3点接触玉軸受若しくは4点接触玉軸受のいずれかである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明ダイレクトドライブモータ用軸受の一実施形態を図に基いて説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎずなんらこれに限定して解釈されるものではない。
【0006】
本発明のダイレクトドライブモータ用軸受Aは、回転子の内側と外側のいずれか一方若しくは両方に固定子を配置し、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータ構造に内蔵される軸受で、該軸受は、一個で回転および負荷を支持し得る構造である。
ダイレクトドライブモータ用軸受Aは、例えば図1に開示しているように、軸受軌道輪(軸受外輪)1の内径と、軸受軌道輪(軸受内輪)2の外径間に形成される軌道溝3に複数の転動体5,5…が組み込まれ、外輪1と内輪2の間に径方向接触型の密封シール7を備えて構成されている。
軸受構造は、上述の通り、一個の軸受で回転および負荷を支持し得る構造であれば特に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で任意に選択し得、具体的には後述する種々の構造が代表例として挙げられる。
密封シール7は、例えば全体円環状に形成され、その外径側7aが外輪1側に固定され、内径側7bのシール接触部7cが内輪2の外径面と所望な接触圧力をもって接触しているもので、軸受内に封入された潤滑剤の洩れを防止すると同時に、ダイレクトドライブモータの位置決め制御に必要なトルクを与える役割を担っている。
すなわち、接触型の密封シール7のシール接触部7cで摩擦トルクを発生させることとし、好ましくはこの密封シール7におけるシール接触部7cで発生する摩擦トルクが、シールを除いた軸受自身の摩擦トルクよりも大きいものとすることで上記役割を担っている。密封シール7は、上記役割を達成し得るものであれば特にその形状・構造などに限定されない。また、芯金の有無は問わない。
尚、使用態様によってはシール接触部で発生する摩擦トルクを軸受自身の摩擦トルクと同等か又は若干小さくしてもよい。
密封シール7の接触圧力の調整方法としては、例えばシール接触部7cの寸法調整・形状変更やシール材質の変更、あるいはシール接触部7cと接する軸受の接触面(内輪外径面)にニッケルクロームメッキ等の表面処理を施し、処理層の厚さによりシールの接触圧力を調整するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、密封シール7は、内輪2側に固定され、外輪1の内径面と所望な接触圧力をもって接触するものであっても本発明の範囲内である。
さらに、本実施形態の密封シール7は、径方向接触型であるが軸方向接触型でも同様の効果があることは言うまでもない。
【0007】
図1に示す軸受Aは、一方の軌道輪(外輪)1の内径および他方の軌道輪(内輪)2の外径に形成される夫々の軌道面によって所望形状の軌道溝3が形成されており、本実施形態では、軌道輪(外輪)1が幅方向の中央で軸方向に二分割されており、軌道輪(内輪)2は一体のものとした。
なお、軌道輪1,2のいずれか一方あるいは両方共が幅方向の中央で軸方向に二分割されているタイプや、いずれの軌道輪1,2も分割されていないタイプを用いることも本発明の範囲内で可能である。また、二分割タイプは、ボルト・リベット等で一体に組み立てられるものもある。
軌道溝3は、転動体5の半径よりも大きな半径の軌道面1a・1b,2a・2bにより形成されている。また、少なくともいずれか一方の軌道輪の軌道溝が、二つの軌道面から構成されているものであればよく本発明の範囲内で適宜選択される。
各軌道面1a・1b,2a・2bの形状は、転動体5の転がりに適切な形状を有しているものであれば、断面アーチ状あるいはV字状等任意で、また曲線状あるいは直線状等のいずれであってもよく特に限定されるものではないが、例えば本実施形態ではゴシックアーチが適用される。
【0008】
転動体5は、転がり接触面となる外径5aが軸方向に曲率を持ち、かつ軌道面1a・1b,2a・2bの夫々の半径よりも小径の半径を有する任意形状で、該転動体5は、隣接する転動体5が夫々交互に交差状に配されると共に、各転動体5の外径5aが、常に一方の軌道輪1の軌道面1a・1bと他方の軌道輪2の軌道面2b,2aにて二点接触している。例えば本実施形態では図2に開示しているように、一組の相対面5b,5bを有する上下切断状玉(玉の上下部分を切断して相対面5b,5bを形成した構造のものをいう。以下同じ。)で、該相対面5b,5bに垂直する自転中心軸5cが夫々交差状となるように夫々の転動体5,5…が組込まれると共に、各転動体5の外径5aが、常に一方の軌道輪1の軌道面1a,1bと他方の軌道輪2の軌道面2b,2aにて二点接触している。
転動体5は、その上下の切断幅は特に限定されず、また上下の切断割合は、均等あるいは均等でないものであってもよく、本発明の範囲内で任意に選択可能である。すなわち、本実施形態では、相対面5b,5bは対称としたが、転動体5の相対面5b,5bは、対称であっても非対称であってもよくいずれも本発明の範囲内である。転動体5の全体形状、相対面5b,5bの有無や、外径5aにおける軸方向の曲率の大小等は、上記具体的形状に何等限定されるものではなく、本発明の範囲内において任意に変更可能である。すなわち、例えば、相対面5b,5bに代えて、非平行状の両面を備え、該両面に垂直する自転中心軸5cを有するものとしてもよく、また、玉の片側をカット(切断)して一平面(カット面)を設けた片側カット状玉としたものであってもよい。
【0009】
転動体5,5…の組込みは、例えば隣り合う転動体5,5における各相対面5b・5b,5b・5bに垂直する自転中心軸5c,5cが交互に交差状となるようにするが、その交差状態は直交状・非直交状のいずれでも構わない。
転動体5の交差状に配される方式は、両方のなりで数が同じなら、特に限定されず、すなわち、転動体5が1ヶ毎に交差してもよく、1ヶ毎に交差しなくとも両方のなりで数が同じなら、2ヶずつ交差あるいは2ヶ1ヶ1ヶ2ヶ等のように交差していてもよくいずれも本発明の範囲内である。
【0010】
各転動体5,5の運動は、保持器6で案内される。保持器6は、例えば図3に示すようなもみ抜き保持器(円環状保持器)で、隣り合う各転動体5,5を相対面5b・5b,5b・5bに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように交互に組み込み可能な保持部(ポケット)13…を、円環体の円周上で転動体5…数量と同一数量をもって等間隔で、かつ交互に交差状に配して構成されている。
各ポケット13…の軸方向の両側面13a,13bは、交互に平行しかつ軸受の回転軸と垂直でも平行でもなく、転動体5の接触角と同等レベルの一定の角度(傾斜状)となっている。
各ポケット13…の軸方向の両側面13a,13b間の距離は、転動体5の幅よりやや大きく構成されている。
上記ポケット13の形状は、傾斜状の平行な両側面13a,13bを有すると共に、両側面13a,13b間の距離を転動体5の幅よりもやや大きく形成されているものであれば、そのポケット全体形状は特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で変更可能である。
なお、本実施形態では、円周上で転動体5…数量と同一数量のポケット13…が等間隔で、かつ交互に交差状に配されているが、特に限定されず、両方のなりで数が同じなら、2ヶずつ交差あるいは2ヶ1ヶ1ヶ2ヶ等のように交差していても良く本発明の範囲内である。
保持器6は、転動体5を保持案内するポケット13…を有する形状であれば、特に限定されるものではなく本発明の範囲内で任意に選択変更可能である。
保持器6の案内方式は特に限定されるものではなく、内輪案内でも、外輪案内でも、転動体案内でもよい。また、保持器6の構成は特に限定されるものではなく、一体型でも、幾つかの部分から形成したものでも良い。なお、保持器6のポケット形状は上述した各転動体の形状に合わせて適宜設計変更されるものである。保持器6の代わりとして、図4に拡大して示したようなセパレータ(スぺーサ)8で転動体5,5を案内することももちろん可能である。このような構造により、軸受はもっとコンパクト化できるようになる。
セパレータ8は、転動体5の直径よりも小径状で、隣接して保持する各転動体5,5を上述の通り相対面5b・5b,5b・5bに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように保持する凹状円弧溝9,9を、相対面10,10に交差状に形成している。
この円弧溝9の曲率は、転動体外径5aの曲率と略同一、あるいは大きいものとしてもよく任意である。
【0011】
転動体と軌道面との間における予圧の付与される状態は特に限定されず、すなわち、製造段階で予圧が付与されても付与されなくてもよくいずれも本発明の範囲内である。
【0012】
これら軸受の軌動輪1,2と転動体5の材質としては、通常軸受鋼が用いられるが、使用環境に応じて耐食性や、耐熱性を向上させる場合にはステンレス鋼やセラミック等が適宜選択される。
また保持器6の材料としては、もみ抜き保持器、プレス保持器、樹脂保持器等が適宜選択されるので、例えば黄銅や鉄等の金属や、例えばポリアミド66(ナイロン66)・ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂が本発明の範囲内で選ばれる。
【0013】
本実施形態によれば、転動体5の外径5aが相対する外輪1の軌道面1aと内輪2の軌道面2bに夫々点接触(接触点を11,11で示す。)し、隣接する転動体5が外輪1の軌道面1bと内輪2の軌道面2aに夫々点接触(接触点を12,12で示す。)する。転動体5,5の接触角交互に交差するので、一つの軸受でラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重、モーメント荷重を受けることができる。
【0014】
ダイレクトドライブモータの位置決め精度評価の一例を図5に示す。
この評価は、ダイレクトドライブモータをある速度にて90゜旋回させて停止するまでの時間が規定時間内に収まっているかを評価したものである。
図中(1)は制動時のトルクが十分にある場合での結果、図中(2)は制動時のトルクが不足している場合での結果である。
図5より明らかなように、制動時のトルクが不足していると瞬時に停止できずに規定時間を超えてしまう。このような場合、位置決め精度が悪いということになる。
シールの接触圧力による制動特性を図6に示す。
図6に示すようにシールの接触圧力は大きくなるほど、制動時間が短くなっている。
本発明では、軸受自身の摩擦トルクよりもシール接触部7cで発生する摩擦トルクの方を大きくしている(図7参照)ため、密封シール7の接触圧力を調整することでダイレクトドライブモータの位置決め精度に最適なトルクを得ることができる。図中、実線cはシールを除いた軸受自身、一点鎖線dはシール接触部7c、破線eはシールを備えない従来のクロスローラ軸受を示す。
【0015】
図8は、図9に示すような非対称の相対面5b,5dを有する転動体(上下切断状玉)5を使用した実施の形態で、本実施形態では、外輪1と内輪2共に一体のものを使用し、軸受自身の摩擦トルクよりもシール接触部7cで発生する摩擦トルクの方を大きくしている。その他の構成、作用効果は上述した図1に示す実施形態と同様である。
また、図示例のように大端側の相対面5dが軸受の内輪2に向くように配することで、転動体5の回転がより安定になり、より低トルクを実現することができる。本実施形態は、高速回転の場合に用いられる。また、本実施形態では、外輪1と内輪2共に一体のものを使用するがこれに限定されず、いずれか一方若しくは両方を二分割するものとすることもできる。
なお、本実施形態では、転動体5の案内をセパレータ8で行っているが、保持器を使用することも勿論可能である。
【0016】
図10は、図11に示すような片側カット状玉を転動体として使用した実施の形態で、本実施形態では、外輪1が二分割、内輪2が一体のものを使用し、軸受自身の摩擦トルクよりもシール接触部7cで発生する摩擦トルクの方を大きくしている。その他の構成、作用効果は上述した図1に示す実施形態と同様である。転動体5は、例えばカット面5eに垂直する自転中心軸5cが夫々交差状となるように夫々の転動体5,5…が組込まれると共に、各転動体5の外径5aが、常に一方の軌道輪1の軌道面1a(1b)と他方の軌道輪2の軌道面2aにて二点接触している。本実施形態では、外輪1が二分割、内輪2が一体のものを使用するがこれに限定されず、いずれか一方若しくは両方を二分割するものとすることも、いずれも一体のものを使用することもできる。
転動体5は、その片側のカット面5eのカット(切断)幅は特に限定されず、またカット面5e形状も特にフラット面に限定されるものでなく、本発明の範囲内で任意に選択可能である。
本実施形態では、転動体5のカット面5eが外輪1側に向くようにして配されているが、カット面5eが内輪2側に向くように配することも可能で本発明の範囲内である。
保持器6は、図12に示すように、隣り合う各転動体5,5を上述の通りカット面5e,5eに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように交互に組み込み可能な保持部(ポケット)13,13…を、周方向に交互に形成している。ポケット13は、転動体よりも僅かに大径状の円弧面13cと、該円弧面13cの端部間を結ぶフラット面(傾斜面)13dとで平面視ドーム状に構成されており、外径6a側の一辺13eと内径6b側の一辺13eとは、外径6a側から内径6b側に向けてフラット面13dで連絡し、外径6a側の開口幅w1よりも内径6b側の開口幅w2を大径に構成している(図12・図13)。そして、周方向に隣り合う各ポケット13の円弧面13cの中心は、同一の円周上に配されて、平面視幅方向に外径6a側の一辺13eの位置をずらして配されている。すなわち、周方向に隣り合う各ポケット13は、その傾斜面13dが各ポケット13毎に交互左右に配される(図12参照)。
従って、本実施形態に示す保持器6を使用すると、各ポケット13に配される転動体5は、隣り合う夫々の転動体5,5の自転中心軸5c,5cが交互に交差状となるように、夫々のカット面5e,5eが外径6a側、すなわち外輪1側に向くように保持される。
また、図14に示すように、フラット面13dの延長線上に同傾斜状に外径6aに立上げ形成される片側倒れ防止片13fを設ける構造を採用することも可能である。該片側倒れ防止片13fは特に図示形状に限定されるものではなく、転動体5の回転に影響のない程度の構成であれば本発明の範囲内である。
また図15・図16に示す保持器6構造を採用することも可能である。
本図示形態では、ポケット13が平面視矩形状に構成され、周方向に延びる外径6a側の一辺13eと、その下方内径6b側に存する一辺13eとは外径6a側から内径6b側に向けてフラット面13dで連絡し、外径6a側の開口幅w1よりも内径6b側の開口幅w2を大径に構成している。
そして、周方向に配される各ポケット13は、平面視幅方向に交互に位置をずらして配される。すなわち、周方向に隣り合う各ポケット13は、そのフラット面13dが各ポケット13毎に交互左右に配される(図15)。本実施形態の保持器6とすれば、図12の保持器6よりもグリース保持空間が大きく取れる。その他の作用効果は図12に示す保持器形態と同様である。
【0017】
また、図17に示すような凹面15を有するセパレータ(スペーサ)8を配するものであっても本発明の範囲内である。
セパレータ8は、転動体5の直径よりも小径状で、隣接して保持する各転動体5,5を上述の通りカット面5e,5eに垂直する自転中心軸5c,5cが夫々交差状になるように保持する凹面15,15を、相対面16,16に交差状に形成している。すなわち、凹面15の段部15aに転動体のカット面5eを対向せしめて保持する。なお、本実施形態に示すセパレータ形状は一実施形態にすぎず、何等限定されることなく任意に設計変更可能である。
【0018】
図18は、両端5f(大端)・5g(小端)の径を大小異にする円すい状ころを転動体5として使用した実施の形態で、本実施形態では、外輪1が一体、内輪2が二分割のものを使用する。その他の構成、作用効果は上述した図1に示す実施形態と同様である。円すい状ころは、交互に交差状に配すると共に、ころのテーパー状の周面5hが常に相対する外輪1の軌道面1a(1b)と内輪2の軌道面2b(2a)に線接触する。円すい状ころのテーパー状周面5hのテーパー形状は特に限定解釈されない。この円すい状ころを交互に交差状に配する場合、大端5f側が外輪軌道面1a(1b)に向くように配されるのが好ましい。図19は、セパレータ8を使用した実施の形態である。
【0019】
また、特に図示しないが、従来周知の3点接触玉軸受や4点接触玉軸受を使用することも本発明の範囲内であり、これらを使用した場合であっても同様の作用効果を奏する。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、上記構成により、軸受単体での低トルク化によるダイレクトドライブモータの高速化を可能としつつ、接触型密封シールの摩擦抵抗を利用することで制動時間の短縮が図れ、ダイレクトドライブモータの位置決め制御に必要なトルクをシールの接触力により調整することが可能となり、ダイレクトドライブモータの高速化と位置決め精度の向上を同時に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ダイレクトドライブモータ用軸受の一実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図2】本発明軸受に組み込まれる転動体の一実施形態を示す斜視図。
【図3】保持器の一実施形態を示す斜視図。
【図4】セパレータの一実施形態を示す斜視図。
【図5】ダイレクトドライブモータの位置決め精度評価結果の一例を示す図。
【図6】シールの接触圧力による制動特性を示す図。
【図7】軸受自身の摩擦トルクとシールの摩擦トルクを比較した図。
【図8】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図9】図8の実施形態に組み込まれる転動体の斜視図。
【図10】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図11】図10の実施形態に組み込まれる転動体の斜視図。
【図12】図10の実施形態に使用される保持器の一実施形態を一部省略して示す拡大平面図。
【図13】図12のI−I線断面図。
【図14】保持器の他の実施形態を示す断面図。
【図15】保持器の他の実施形態を一部省略して示す拡大平面図。
【図16】図15のII−II線断面図。
【図17】セパレータの他の実施形態を示す斜視図。
【図18】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図19】他の実施形態を一部省略して示す概略断面図。
【図20】従来のクロスローラ軸受と本発明で使用した軸受の摩擦トルクの比較図。
【図21】従来のクロスローラ軸受を一部省略して示す概略断面図。
【符号の説明】
A:転がり軸受
1:外輪
2:内輪
3:軌道溝
5:転動体
7:接触型の密封シール
7c:シール接触部
Claims (5)
- 回転子の内側と外側のいずれか一方若しくは両方に固定子を配置し、減速機を使わずに負荷をモータに直結して駆動できるダイレクトドライブモータ構造に内蔵される軸受であって、該軸受は、一個で回転および負荷を支持し、軸受内には潤滑剤を封入すると共に、潤滑剤の洩れを防止するための接触型の密封シールを備え、密封シールは、該シールを除いた軸受自身の摩擦トルクとの関係において、ダイレクトドライブモータの位置決め制御に必要な摩擦トルクを発生させることを特徴とするダイレクトドライブモータ用軸受。
- シール接触部で発生する摩擦トルクの方を、シールを除いた軸受自身の摩擦トルクよりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトドライブモータ用軸受。
- シール接触部が内輪外径若しくは外輪内径と径方向に接触する径方向接触型であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のダイレクトドライブモータ用軸受。
- 軸受は、一対の軌道輪間に複数の転動体が組み込まれ、各軌道輪は転動体の半径より大径状の軌道面からなる軌道溝を有し、その中に少なくとも一つの軌道輪は二つの軌道面からなり、各転動体は転がり接触面となる外径が軸方向にも曲率を持ち、円周上に交差状に配されると共に、各転動体の外径が常に相対する一方の軌道輪の軌道面と他方の軌道輪の軌道面にて夫々一点ずつ合計二点で接触していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダイレクトドライブモータ用軸受。
- 軸受は、3点接触玉軸受若しくは4点接触玉軸受のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダイレクトドライブモータ用軸受。
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