JP2004092052A - ブレースダンパー - Google Patents
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Abstract
【課題】座屈強度に優れたブレースとしての機能と、減衰性能に優れたダンパーとしての機能を併せ持つ有効な構造部材を実現する。
【解決手段】両端が建物に対して固定される帯板状の平鋼板からなるブレース本体1に、その座屈を防止する拘束部材2を装着する。ブレース本体は、その一端側が帯板状の基部1aとされ、他端側には基部よりも幅寸法が小さくされることで所定軸力を受けた際に降伏する降伏部1bが形成されている。拘束部材は、ブレース本体の降伏部の軸方向変形を許容する状態でブレース本体を両面側から挟み込み、かつブレース本体の基部に対して相対変形不能な状態で一体に締結固定されている。ブレース本体は少なくとも降伏部が低降伏点鋼からなり、その許容応力度が建物の主要構造部材として使用される鋼材の許容応力度以下に設定されている。
【選択図】 図2
【解決手段】両端が建物に対して固定される帯板状の平鋼板からなるブレース本体1に、その座屈を防止する拘束部材2を装着する。ブレース本体は、その一端側が帯板状の基部1aとされ、他端側には基部よりも幅寸法が小さくされることで所定軸力を受けた際に降伏する降伏部1bが形成されている。拘束部材は、ブレース本体の降伏部の軸方向変形を許容する状態でブレース本体を両面側から挟み込み、かつブレース本体の基部に対して相対変形不能な状態で一体に締結固定されている。ブレース本体は少なくとも降伏部が低降伏点鋼からなり、その許容応力度が建物の主要構造部材として使用される鋼材の許容応力度以下に設定されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物にブレースとして設置されるとともに建物の振動エネルギーを吸収するダンパーとしても機能するブレースダンパーに関する。
【0002】
【従来の技術】
地震や強風等に対する建物の応答性を低減する方法として、建物の要所にダンパーを設置する方法が一般によく知られている。ダンパーとしては、摩擦ダンパー、鋼材ダンパー、粘弾性体ダンパー、粘性ダンパー等がよく用いられる。
【0003】
一方、近年の建物の地震被害では、ブレースの座屈による被害が多く見られ、それが建物全体の被害を大きくすることから、ブレースの座屈を防止するための補強を行うことが検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来では、上述した建物の応答性低減のためのダンパーの設置と、ブレースの設置およびその座屈防止のための補強は、それぞれの目的を達成するためだけに別々に行われている。そのため、ブレースとダンパーとを併設するために十分な設置スペースが必要であるし、それらを設置するために架構の開口が狭められる等の不都合が生じていた。
【0005】
上記問題点を解決するため、本発明は、座屈強度に優れたブレースとしての機能と減衰性能に優れたダンパーとしての機能を併せ持つ有効な構造部材であるブレースダンパーを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、建物にブレースとして設置されるとともに建物の振動エネルギーを吸収するダンパーとしても機能するブレースダンパーであって、両端が建物に対して固定される帯板状の平鋼板からなるブレース本体と、ブレース本体に装着されてその座屈を防止する拘束部材からなり、ブレース本体は、その一端側が帯板状の基部とされているとともに、他端側には基部よりも幅寸法が小さくされることで所定軸力を受けた際に降伏する降伏部が形成されており、拘束部材は、ブレース本体の降伏部の軸方向変形を許容する状態でブレース本体を両面側から挟み込み、かつブレース本体の基部に対して相対変形不能な状態で一体に締結固定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明のブレースダンパーであって、ブレース本体は少なくとも降伏部が低降伏点鋼からなり、その許容応力度が、建物の主要構造部材として使用される鋼材の許容応力度以下に設定されていることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1〜図2は本発明の一実施形態であるブレースダンパーを示すもので、図1は全体の外観を示す側面図および断面図、図2は組立状態を示す分解斜視図である。
【0009】
本実施形態のブレースダンパーは、ブレース本体1と、その周囲に装着されてブレース本体1の座屈を防止する拘束部材2からなる。
【0010】
ブレース本体1は、帯板状の平鋼板(フラットバー)からなり、その両端部が建物に対して固定されることでこれ自体が通常のブレースとして機能するものであり、その端部両面には建物に固定するためのリブプレート3が溶接されていて、ブレース本体1の両端部における横断面形状は十字形をなすものとされている。また、本実施形態におけるブレース本体1はその全体が低降伏点鋼(極軟鋼)からなり、その一端側(図において左端側)は単なる帯板状の基部1aとされているが、他端側(同、右端側)には基部1aよりも幅寸法が小さくされた降伏部1bが形成されている。降伏部1bは、ブレース本体1の素材である帯板状の平鋼板の両側縁部を切除することでそこでの幅寸法が基部1aより小さくされることで形成されていて、ブレース本体1が所定軸力を受けた際にはこの降伏部1bが降伏することでダンパーとして機能するようにされている。
【0011】
拘束部材2は、図1(b),(c)に示されるように、対の溝形鋼4と帯鋼板からなる対のカバープレート5からなり、溝形鋼4のウェブ部4aによりブレース本体1をほぼ全長にわたって両側から挟み込んだ状態で、フランジ部4bにカバープレート5をボルト6により締結することで全体としてH型断面となるように組み立てられ、ブレース本体1の基部1aに対して溝形鋼4のウェブ部4aが多数の綴りボルト7により一体に締結固定されている。
【0012】
そのように組み立てられてブレース本体1に装着された拘束部材2は、ブレース本体1の面外方向および面内方向への変形を拘束してその座屈を防止するものであるが、ブレース本体1の降伏部1bをダンパーとして機能させるためには降伏部1bの軸方向の変形は拘束しないものとする必要があり、そのため、上記のように溝形鋼4を基部1aに対してのみ(つまり降伏部1bを避けた位置で)ブレース本体1に対して一体に締結固定するに留めて降伏部1bに対しては締結せずにおき、かつ溝形鋼4のウェブ部4aとブレース本体1の降伏部1bとの間にはそれらをアンボンド(非付着)状態に維持してそれらの相対変形を許容せしめるための緩衝材8が介装されている。緩衝材8としてはたとえば厚さ1mm程度のクロロプレンゴム等の高分子系材料からなるシート材が好適に採用可能であり、予め溝形鋼4のウェブ部4aの内面に接着しておくと良い。なお、ブレース本体1の基部1aと溝形鋼4のウェブ部4aとの間には、緩衝材8と同等ないしそれよりも若干厚い(たとえば1.2mm程度)平鋼をフィラープレート9として介装して、上記の綴りボルト7により溝形鋼4とブレース本体1との間に挟み込めば良い。
【0013】
また、溝形鋼4には、ブレース本体1の降伏部1bに対する面外方向の拘束力を十分に確保するべく、この溝形鋼4自体が面外方向に変形することを防止するための補剛材10が降伏部1bを挟み込む位置に設けられている。図示例の補剛材10は4枚の縦リブ10aと3枚の横リブ10bからなり、いずれも溝形鋼4の外面に対して直接的に溶接されている。なお、溝形鋼4の両端部、フィラープレート9および緩衝材8の端部には、ブレース本体1の両端部に設けられている上記のリブプレート3との干渉を避けるためのスリット11a、11bがそれぞれ形成されており、降伏部1b側の端部のスリット11bは、降伏部1bが拘束部材2に対して縮むように変形した際にもリブプレート3に干渉しないように、基部1a側のスリット11aよりも深く切り込まれている。
【0014】
以上の構成のもとに、本実施形態のブレースダンパーは、ブレースとしての機能とダンパーとしての機能を併せ持つものであり、したがってこれを建物に設置することで建物に対する優れた補剛効果と振動エネルギー吸収効果とを同時に得ることができるものである。
【0015】
すなわち、このブレースダンパーは、通常のブレースと同様にしてブレース本体1の両端部を建物に対して固定して設置することで、地震時に建物が層間変形を生じた際にはブレース本体1が通常のブレースと同様に機能して軸力を負担するのみならず、基部1aにおいてブレース本体1に装着されて一体に締結固定されている拘束部材2が軸力の一部を負担するとともにブレース本体1の面外座屈および面内座屈を有効に防止するので、優れた座屈強度を有するものである。また、このブレースダンパーは、ブレース本体1として低降伏点鋼を採用するとともに、その一端側に断面積を絞ることで降伏部1bを設定していることから、所定軸力を受けた際には降伏部1bに塑性歪が集中してそこが降伏し、鋼材ダンパーとして優れた減衰効果が得られるものとなっている。
【0016】
そして、上記のブレースダンパーは、帯板状のブレース本体1に溝形鋼4とカバープレート5からなる拘束部材2を装着することで実質的にH形断面の鋼材と同様の外観を呈する(ブレース本体1の両端部のみは十字形断面を呈する)ものであるから、通常のブレースと同様に取り扱うことができるし、通常のブレースと同様の形態で建物に設置することができるものである。さらに、帯板状のブレース本体1に対して拘束部材2をボルト6および綴りボルト7により締結して組み立てるだけの極めて簡単な構成のものであるから、特別な技量や機械を必要とせずに容易にかつ充分に安価に製作することができるものである。
【0017】
なお、このブレースダンパーは機能的には方向性がないので建物に対する設置の向きは任意であるが、降伏部1b側を天井側とし、基部1a側を床側とすることが現実的である。また、ブレース本体1の両端部は建物に対して直接的に固定すれば良いが、あるいは適宜の部材を介して間接的に固定することでも良く、特にブレース本体1の基部1a側の端部は、ブレース本体1に一体に締結固定されている拘束部材2の端部を建物に固定することでその拘束部材2を介して間接的に固定することでも良い。
【0018】
しかも、このブレースダンパーは、ブレース本体1の材質やその形状および寸法(全長、幅、厚み)、降伏部1bの位置や断面積や長さ、拘束部材2によるブレース本体1に対する拘束力、その他を適宜設定することで、ブレースおよび鋼材ダンパーとしての性能、すなわち降伏耐力や降伏変位、疲労特性等を自由にかつ幅広く調整できるものである。但し、いずれにしても、ダンパーとして有効に機能するためには、ブレース本体1の降伏部1bにおける許容応力度は建物の主要構造部材である柱や梁として使用される鋼材の許容応力度以下に設定することが望ましい。
【0019】
また、上記のブレースダンパーは、拘束部材2がブレース本体1の基部1aに対して一体に締結固定されていることにより、ブレース本体1は降伏部1bのみが確実に降伏するものとなって、基部1aは拘束部材2による補剛効果により降伏することがないばかりか弾性変形も小さくなる。したがって基部1aの変形が殆どないため、鋼材ダンパーとしての性能は主として降伏部1bのみで決定されるのでその設計が容易となるし、降伏変位が小さくなることから特に微小変形に対しても有効に機能し得るダンパーとすることができる。
【0020】
すなわち、拘束部材2は本来的にはブレース本体1の座屈を防止するためのものであるので、ブレース本体1に対して必ずしも締結固定することなく単にその外側に装着しておくことでも良いのであるが、そのようにした場合には、ブレース本体1の軸方向変形が拘束されることなく全長にわたって許容されるのでブレース本体1が降伏部1bのみならずその全長にわたって弾性変形する余地があり、したがって降伏部1bが降伏して制震効果を発揮し始める降伏変位が大きくなってしまい、それまでは制震効果を発揮できないことになる。それに対し、上記のようにブレース本体1の降伏部1b以外の部分、つまり基部1aに対して拘束部材2を締結固定してそれらを実質的に一体化させれば、ブレース本体1全体の軸剛性が高められて弾性変形が小さくなり、したがってダンパーとしての等価剛性が充分に高められて降伏変位(降伏耐力/等価剛性)が充分に小さくなり、その結果、微小変形の段階から降伏部1bが早期に降伏してダンパーとして有効に機能するものとできる。
【0021】
したがってこのブレースダンパーは、特にRC造のように層間変形が比較的小さい構造の建物に適用するダンパーとして好適であるし、ブレース本体1と拘束部材2とを一体化させる範囲を調整することで、つまりブレース本体1における基部1aと降伏部1bとの割合を調節することで、降伏耐力や降伏変位等の性能を微調整することもできるものである。
【0022】
以上で本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって本発明はこれに限定されるものではなく適宜の設計的変更が可能である。たとえば、上記実施形態では拘束部材2を溝形鋼4とカバープレート5とによりH形状に組み立てるものとしたが、拘束部材2はブレース本体1の座屈を防止できる強度を有するものであれば良く、たとえば溝形鋼4に代えてカットティー鋼や山形鋼等の形鋼、あるいは溶接あるいは折り曲げ加工により形成した適宜の部材も採用可能であるし、それ自体で充分な補剛効果が得られる場合には上記実施形態における補剛材10やカバープレート5を省略することも可能である。また、降伏部1bの面内座屈が懸念される場合には、降伏部1bの両側にその幅方向の変形を拘束して面内座屈を防止するための適宜の部材を設けることも考えられる。
【0023】
さらに、ブレース本体1の素材は必ずしも低降伏点鋼に限るものではなく、所望の降伏強度や降伏変位が設定できれば普通鋼その他の素材も採用可能であるし、あるいは図3に示すように降伏部1bのみを低降伏点鋼とし基部1aは充分な剛性を有する他の素材を採用してそれらを接合することも考えられる。
【0024】
【発明の効果】
請求項1の発明は、降伏部を形成したブレース本体にその座屈を防止する拘束部材を装着した構成であるので、座屈強度に優れたブレースとしての機能と減衰性能に優れたダンパーとしての機能を併せ持つものであり、特にブレース本体の基部に対して拘束部材を一体に締結固定したので、ダンパーとしての等価剛性を充分に高めることが可能であって降伏変位を充分に小さくでき、したがって微小変形の段階から降伏部が早期に降伏してダンパーとして有効に機能するものとなり、層間変形が比較的小さい構造の建物に適用して最適である。
【0025】
請求項2の発明は、ブレース本体の少なくとも降伏部を低降伏点鋼により形成し、その許容応力度を建物の主要構造部材として使用される鋼材の許容応力度以下に設定したので、降伏部をダンパーとして確実に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるブレース本体を示すもので、(a)は側面図、(b)は(a)におけるb−b線視図、(c)は同じくc−c線視図である。
【図2】同、組立状態を示す分解斜視図である。
【図3】同、ブレース本体の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 ブレース本体
1a 基部
1b 降伏部
2 拘束部材
4 溝形鋼
5 カバープレート
8 緩衝材
9 フィラープレート
10 補剛材
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物にブレースとして設置されるとともに建物の振動エネルギーを吸収するダンパーとしても機能するブレースダンパーに関する。
【0002】
【従来の技術】
地震や強風等に対する建物の応答性を低減する方法として、建物の要所にダンパーを設置する方法が一般によく知られている。ダンパーとしては、摩擦ダンパー、鋼材ダンパー、粘弾性体ダンパー、粘性ダンパー等がよく用いられる。
【0003】
一方、近年の建物の地震被害では、ブレースの座屈による被害が多く見られ、それが建物全体の被害を大きくすることから、ブレースの座屈を防止するための補強を行うことが検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来では、上述した建物の応答性低減のためのダンパーの設置と、ブレースの設置およびその座屈防止のための補強は、それぞれの目的を達成するためだけに別々に行われている。そのため、ブレースとダンパーとを併設するために十分な設置スペースが必要であるし、それらを設置するために架構の開口が狭められる等の不都合が生じていた。
【0005】
上記問題点を解決するため、本発明は、座屈強度に優れたブレースとしての機能と減衰性能に優れたダンパーとしての機能を併せ持つ有効な構造部材であるブレースダンパーを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、建物にブレースとして設置されるとともに建物の振動エネルギーを吸収するダンパーとしても機能するブレースダンパーであって、両端が建物に対して固定される帯板状の平鋼板からなるブレース本体と、ブレース本体に装着されてその座屈を防止する拘束部材からなり、ブレース本体は、その一端側が帯板状の基部とされているとともに、他端側には基部よりも幅寸法が小さくされることで所定軸力を受けた際に降伏する降伏部が形成されており、拘束部材は、ブレース本体の降伏部の軸方向変形を許容する状態でブレース本体を両面側から挟み込み、かつブレース本体の基部に対して相対変形不能な状態で一体に締結固定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明のブレースダンパーであって、ブレース本体は少なくとも降伏部が低降伏点鋼からなり、その許容応力度が、建物の主要構造部材として使用される鋼材の許容応力度以下に設定されていることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1〜図2は本発明の一実施形態であるブレースダンパーを示すもので、図1は全体の外観を示す側面図および断面図、図2は組立状態を示す分解斜視図である。
【0009】
本実施形態のブレースダンパーは、ブレース本体1と、その周囲に装着されてブレース本体1の座屈を防止する拘束部材2からなる。
【0010】
ブレース本体1は、帯板状の平鋼板(フラットバー)からなり、その両端部が建物に対して固定されることでこれ自体が通常のブレースとして機能するものであり、その端部両面には建物に固定するためのリブプレート3が溶接されていて、ブレース本体1の両端部における横断面形状は十字形をなすものとされている。また、本実施形態におけるブレース本体1はその全体が低降伏点鋼(極軟鋼)からなり、その一端側(図において左端側)は単なる帯板状の基部1aとされているが、他端側(同、右端側)には基部1aよりも幅寸法が小さくされた降伏部1bが形成されている。降伏部1bは、ブレース本体1の素材である帯板状の平鋼板の両側縁部を切除することでそこでの幅寸法が基部1aより小さくされることで形成されていて、ブレース本体1が所定軸力を受けた際にはこの降伏部1bが降伏することでダンパーとして機能するようにされている。
【0011】
拘束部材2は、図1(b),(c)に示されるように、対の溝形鋼4と帯鋼板からなる対のカバープレート5からなり、溝形鋼4のウェブ部4aによりブレース本体1をほぼ全長にわたって両側から挟み込んだ状態で、フランジ部4bにカバープレート5をボルト6により締結することで全体としてH型断面となるように組み立てられ、ブレース本体1の基部1aに対して溝形鋼4のウェブ部4aが多数の綴りボルト7により一体に締結固定されている。
【0012】
そのように組み立てられてブレース本体1に装着された拘束部材2は、ブレース本体1の面外方向および面内方向への変形を拘束してその座屈を防止するものであるが、ブレース本体1の降伏部1bをダンパーとして機能させるためには降伏部1bの軸方向の変形は拘束しないものとする必要があり、そのため、上記のように溝形鋼4を基部1aに対してのみ(つまり降伏部1bを避けた位置で)ブレース本体1に対して一体に締結固定するに留めて降伏部1bに対しては締結せずにおき、かつ溝形鋼4のウェブ部4aとブレース本体1の降伏部1bとの間にはそれらをアンボンド(非付着)状態に維持してそれらの相対変形を許容せしめるための緩衝材8が介装されている。緩衝材8としてはたとえば厚さ1mm程度のクロロプレンゴム等の高分子系材料からなるシート材が好適に採用可能であり、予め溝形鋼4のウェブ部4aの内面に接着しておくと良い。なお、ブレース本体1の基部1aと溝形鋼4のウェブ部4aとの間には、緩衝材8と同等ないしそれよりも若干厚い(たとえば1.2mm程度)平鋼をフィラープレート9として介装して、上記の綴りボルト7により溝形鋼4とブレース本体1との間に挟み込めば良い。
【0013】
また、溝形鋼4には、ブレース本体1の降伏部1bに対する面外方向の拘束力を十分に確保するべく、この溝形鋼4自体が面外方向に変形することを防止するための補剛材10が降伏部1bを挟み込む位置に設けられている。図示例の補剛材10は4枚の縦リブ10aと3枚の横リブ10bからなり、いずれも溝形鋼4の外面に対して直接的に溶接されている。なお、溝形鋼4の両端部、フィラープレート9および緩衝材8の端部には、ブレース本体1の両端部に設けられている上記のリブプレート3との干渉を避けるためのスリット11a、11bがそれぞれ形成されており、降伏部1b側の端部のスリット11bは、降伏部1bが拘束部材2に対して縮むように変形した際にもリブプレート3に干渉しないように、基部1a側のスリット11aよりも深く切り込まれている。
【0014】
以上の構成のもとに、本実施形態のブレースダンパーは、ブレースとしての機能とダンパーとしての機能を併せ持つものであり、したがってこれを建物に設置することで建物に対する優れた補剛効果と振動エネルギー吸収効果とを同時に得ることができるものである。
【0015】
すなわち、このブレースダンパーは、通常のブレースと同様にしてブレース本体1の両端部を建物に対して固定して設置することで、地震時に建物が層間変形を生じた際にはブレース本体1が通常のブレースと同様に機能して軸力を負担するのみならず、基部1aにおいてブレース本体1に装着されて一体に締結固定されている拘束部材2が軸力の一部を負担するとともにブレース本体1の面外座屈および面内座屈を有効に防止するので、優れた座屈強度を有するものである。また、このブレースダンパーは、ブレース本体1として低降伏点鋼を採用するとともに、その一端側に断面積を絞ることで降伏部1bを設定していることから、所定軸力を受けた際には降伏部1bに塑性歪が集中してそこが降伏し、鋼材ダンパーとして優れた減衰効果が得られるものとなっている。
【0016】
そして、上記のブレースダンパーは、帯板状のブレース本体1に溝形鋼4とカバープレート5からなる拘束部材2を装着することで実質的にH形断面の鋼材と同様の外観を呈する(ブレース本体1の両端部のみは十字形断面を呈する)ものであるから、通常のブレースと同様に取り扱うことができるし、通常のブレースと同様の形態で建物に設置することができるものである。さらに、帯板状のブレース本体1に対して拘束部材2をボルト6および綴りボルト7により締結して組み立てるだけの極めて簡単な構成のものであるから、特別な技量や機械を必要とせずに容易にかつ充分に安価に製作することができるものである。
【0017】
なお、このブレースダンパーは機能的には方向性がないので建物に対する設置の向きは任意であるが、降伏部1b側を天井側とし、基部1a側を床側とすることが現実的である。また、ブレース本体1の両端部は建物に対して直接的に固定すれば良いが、あるいは適宜の部材を介して間接的に固定することでも良く、特にブレース本体1の基部1a側の端部は、ブレース本体1に一体に締結固定されている拘束部材2の端部を建物に固定することでその拘束部材2を介して間接的に固定することでも良い。
【0018】
しかも、このブレースダンパーは、ブレース本体1の材質やその形状および寸法(全長、幅、厚み)、降伏部1bの位置や断面積や長さ、拘束部材2によるブレース本体1に対する拘束力、その他を適宜設定することで、ブレースおよび鋼材ダンパーとしての性能、すなわち降伏耐力や降伏変位、疲労特性等を自由にかつ幅広く調整できるものである。但し、いずれにしても、ダンパーとして有効に機能するためには、ブレース本体1の降伏部1bにおける許容応力度は建物の主要構造部材である柱や梁として使用される鋼材の許容応力度以下に設定することが望ましい。
【0019】
また、上記のブレースダンパーは、拘束部材2がブレース本体1の基部1aに対して一体に締結固定されていることにより、ブレース本体1は降伏部1bのみが確実に降伏するものとなって、基部1aは拘束部材2による補剛効果により降伏することがないばかりか弾性変形も小さくなる。したがって基部1aの変形が殆どないため、鋼材ダンパーとしての性能は主として降伏部1bのみで決定されるのでその設計が容易となるし、降伏変位が小さくなることから特に微小変形に対しても有効に機能し得るダンパーとすることができる。
【0020】
すなわち、拘束部材2は本来的にはブレース本体1の座屈を防止するためのものであるので、ブレース本体1に対して必ずしも締結固定することなく単にその外側に装着しておくことでも良いのであるが、そのようにした場合には、ブレース本体1の軸方向変形が拘束されることなく全長にわたって許容されるのでブレース本体1が降伏部1bのみならずその全長にわたって弾性変形する余地があり、したがって降伏部1bが降伏して制震効果を発揮し始める降伏変位が大きくなってしまい、それまでは制震効果を発揮できないことになる。それに対し、上記のようにブレース本体1の降伏部1b以外の部分、つまり基部1aに対して拘束部材2を締結固定してそれらを実質的に一体化させれば、ブレース本体1全体の軸剛性が高められて弾性変形が小さくなり、したがってダンパーとしての等価剛性が充分に高められて降伏変位(降伏耐力/等価剛性)が充分に小さくなり、その結果、微小変形の段階から降伏部1bが早期に降伏してダンパーとして有効に機能するものとできる。
【0021】
したがってこのブレースダンパーは、特にRC造のように層間変形が比較的小さい構造の建物に適用するダンパーとして好適であるし、ブレース本体1と拘束部材2とを一体化させる範囲を調整することで、つまりブレース本体1における基部1aと降伏部1bとの割合を調節することで、降伏耐力や降伏変位等の性能を微調整することもできるものである。
【0022】
以上で本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって本発明はこれに限定されるものではなく適宜の設計的変更が可能である。たとえば、上記実施形態では拘束部材2を溝形鋼4とカバープレート5とによりH形状に組み立てるものとしたが、拘束部材2はブレース本体1の座屈を防止できる強度を有するものであれば良く、たとえば溝形鋼4に代えてカットティー鋼や山形鋼等の形鋼、あるいは溶接あるいは折り曲げ加工により形成した適宜の部材も採用可能であるし、それ自体で充分な補剛効果が得られる場合には上記実施形態における補剛材10やカバープレート5を省略することも可能である。また、降伏部1bの面内座屈が懸念される場合には、降伏部1bの両側にその幅方向の変形を拘束して面内座屈を防止するための適宜の部材を設けることも考えられる。
【0023】
さらに、ブレース本体1の素材は必ずしも低降伏点鋼に限るものではなく、所望の降伏強度や降伏変位が設定できれば普通鋼その他の素材も採用可能であるし、あるいは図3に示すように降伏部1bのみを低降伏点鋼とし基部1aは充分な剛性を有する他の素材を採用してそれらを接合することも考えられる。
【0024】
【発明の効果】
請求項1の発明は、降伏部を形成したブレース本体にその座屈を防止する拘束部材を装着した構成であるので、座屈強度に優れたブレースとしての機能と減衰性能に優れたダンパーとしての機能を併せ持つものであり、特にブレース本体の基部に対して拘束部材を一体に締結固定したので、ダンパーとしての等価剛性を充分に高めることが可能であって降伏変位を充分に小さくでき、したがって微小変形の段階から降伏部が早期に降伏してダンパーとして有効に機能するものとなり、層間変形が比較的小さい構造の建物に適用して最適である。
【0025】
請求項2の発明は、ブレース本体の少なくとも降伏部を低降伏点鋼により形成し、その許容応力度を建物の主要構造部材として使用される鋼材の許容応力度以下に設定したので、降伏部をダンパーとして確実に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるブレース本体を示すもので、(a)は側面図、(b)は(a)におけるb−b線視図、(c)は同じくc−c線視図である。
【図2】同、組立状態を示す分解斜視図である。
【図3】同、ブレース本体の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 ブレース本体
1a 基部
1b 降伏部
2 拘束部材
4 溝形鋼
5 カバープレート
8 緩衝材
9 フィラープレート
10 補剛材
Claims (2)
- 建物にブレースとして設置されるとともに建物の振動エネルギーを吸収するダンパーとしても機能するブレースダンパーであって、
両端が建物に対して固定される帯板状の平鋼板からなるブレース本体と、ブレース本体に装着されてその座屈を防止する拘束部材からなり、
ブレース本体は、その一端側が帯板状の基部とされているとともに、他端側には基部よりも幅寸法が小さくされることで所定軸力を受けた際に降伏する降伏部が形成されており、
拘束部材は、ブレース本体の降伏部の軸方向変形を許容する状態でブレース本体を両面側から挟み込み、かつブレース本体の基部に対して相対変形不能な状態で一体に締結固定されていることを特徴とするブレースダンパー。 - 請求項1記載のブレースダンパーであって、
ブレース本体は少なくとも降伏部が低降伏点鋼からなり、その許容応力度が、建物の主要構造部材として使用される鋼材の許容応力度以下に設定されていることを特徴とするブレースダンパー。
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CN108625653A (zh) * | 2018-05-23 | 2018-10-09 | 北京工业大学 | 一种可更换内核的整体约束分段式防屈曲支撑 |
CN108625652A (zh) * | 2018-05-23 | 2018-10-09 | 北京工业大学 | 一种可直接更换一字型内核的全装配式防屈曲支撑 |
CN108678483A (zh) * | 2018-05-23 | 2018-10-19 | 北京工业大学 | 一种可更换内核的整体约束型防屈曲支撑 |
CN108678482A (zh) * | 2018-05-23 | 2018-10-19 | 北京工业大学 | 一种可直接更换一字型内核的全装配分段式防屈曲支撑 |
-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002251360A patent/JP2004092052A/ja active Pending
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