JP2004091595A - ポリアミドの連続製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1) 原料調合工程1と、(2) 原料を管状反応装置21に導入し通過させアミド化を行い反応混合物を得るアミド化工程2と、(3) 反応混合物を水の分離除去の可能な反応装置に導入し、ポリアミドの融点以上の温度で水を分離除去しつつ重合度を高め、プレポリマーを得る初期重合工程3と、(4) プレポリマーを水の分離除去の可能な連続式反応装置41に導入し、ポリアミドの融点以上の温度でさらに重合度を高め、所望の相対粘度[RV]とされたポリアミドを得る後期重合工程4とを含む。アミド化工程の前に、アルカリ金属化合物及びリン化合物をアルカリ金属/リンのモル比が1.2以上3.5以下となるように添加する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、品質の良好なポリアミドの連続製造方法に関する。本発明の連続製造方法は、脂肪族ポリアミド、芳香族含有ポリアミドのいずれにも適用できるが、製造条件のより難しい芳香族含有ポリアミドに好ましく適用できる。
【0002】
芳香環を有するポリアミドは、機械的強度及び寸法安定性に優れ、フィルム、シート、包装袋、ボトル、エンジニアリングプラスチック、繊維などに好ましく使用することができる。とりわけ、メタキシリレンジアミンをジアミン成分とするポリアミドは優れた酸素バリヤー性を有するフィルム、シート、包装袋、ボトルなどに使用することができる。また、該ポリアミドは、例えばポリエチレンテレフタレートなどの酸素バリヤー性の小さい他のポリマーにブレンドすることにより、他のポリマーの酸素バリヤー性の改良にも使用できる。
【0003】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は物理的、機械的性質に優れていることから、フィルム、シート、包装袋、エンジニアリングプラスチック、繊維などの用途に広く使用されている。
【0004】
従来は、これらの用途にナイロン6やナイロン66などの脂肪族ポリアミドが主として使用されてきた。ところが、脂肪族ポリアミドは、概して、吸水・吸湿時と乾燥時との間の寸法変化が大きく、また、脂肪族ゆえに弾性率が小さく軟らかすぎるといった欠点があり、更に高性能のポリアミド樹脂が求められている。かかる背景のもとに、従来の脂肪族ポリアミドにTPA(テレフタル酸)やIPA(イソフタル酸)などの芳香族ジカルボン酸を共重合することにより、ポリアミド樹脂の高性能化が達成されている。例えば、特開昭59−155426号公報や特開昭62−156130号公報では、TPAあるいはIPAを共重合したポリアミド樹脂が開示されている。
【0005】
ところが、一般的に、芳香環のポリアミド骨格への導入は高融点化、高溶融粘度化をもたらしポリアミド製造時の温度条件等がより過酷なものとなることから、熱分解反応による劣化やゲル化物の生成や熱劣化が一層促進されることになる。その結果、ゲル化物が重合反応器内に堆積しクリーニング頻度が多くなったり、また、ゲル化物が樹脂中に混入したり、熱劣化による物性低下をきたし高品質のポリアミド樹脂を得ることができない。
【0006】
この主たる原因は、ポリアミド樹脂が高温度条件下で長時間滞留することにあり、これを回避すべく種々の製造方法が提案されている。例えば、特開昭60−206828号公報、特開平2−187427号公報、特開平8−170895号公報に開示されている製造方法によれば、高温下での長時間滞留を避ける目的で、一旦初期縮合物をプレポリマーとして取り出し、それをポリマーの融点以下の温度で固相重合することによって熱分解・劣化を抑制している。しかしながら、これらはいずれもバッチ式製造法であり、製造効率上好ましくなく、また、バッチ間での品質の差も生じやすい。
【0007】
特開2001−200052号公報には、キシリレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とから成るスラリーをベントのない二軸押出機に連続的に供給し、加熱してアミド化反応を進める工程と、続いて、ベントのある1軸押出機中で、アミド化反応で生成する縮合水を分離除去しつつ、ポリアミドの重合度を高める工程とを含む、ポリアミドの連続式製造法が開示されている。しかしながら、実施例によると、得られるポリアミドの分子量は3000〜5000程度と小さい。
【0008】
特表2002−516366号公報には、ナイロン66の連続式製造法が開示されている。同号公報によれば、融解したジカルボン酸と融解したジアミンとを等モル量混合し融解した反応混合物を生成させ、反応混合物を通気しない反応装置(静的インライン混合機)に流しポリアミド及び縮合水を含む第1の生成物流を形成し、第1の生成物流を通気されたタンク型反応容器に供給し、縮合水を除去しポリアミドを含む第2の生成物流を形成することが記載されている。しかしながら、同号公報の製造法によって得られるポリアミドは比較的低分子量であり、また、通気された反応器として従来よりポリアミド製造で用いられている反応槽を用いる場合、製造可能な粘度の対応範囲が狭い。
【0009】
一方、近年の環境衛生に対する関心の高まりから、食品、飲料品、医薬品、化粧品などの用途において、酸素による食味や風味、効能の変化を抑制して長期の保存安定性を得ることを目的とした酸素バリヤー性素材が開発されている。酸素バリヤー性素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0010】
ところが、これらの素材は、優れた酸素バリヤー性を有するにもかかわらず、食品衛生上の問題、燃焼時の有害ガスの問題、あるいは、他の素材、例えばポリエチレンテレフタレート等に対する相性の問題などのために、その用途が限定されるという欠点を有する。
【0011】
このような背景のもと、メタキシリレンジアミン(MXD)をジアミン成分とするポリアミド、例えば、アジピン酸(ADA)とのポリアミドであるポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)は優れた酸素バリヤー性を有する素材として注目されている。
【0012】
しかしながら、メタキシリレンジアミンを原料とするポリアミドは、熱劣化や着色の起こりやすいポリマーであることが知られている。その理由としては、メタキシリレンジアミンが有するメチレン基部位が、酸素や熱によって容易にラジカルを生成するためと考えられているが、今だ解明されていない。そこで、メタキシリレンジアミン(MXD)をジアミン成分とするポリアミドを、熱劣化や着色を起こすことなく、製造できる方法の開発が望まれる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、品質の良好なポリアミド、とりわけ芳香族含有ポリアミドの連続製造方法を提供することにある。特に、本発明の目的は、食品、飲料品、医薬品、化粧品などの用途における、フィルム、シート、包装袋、ボトル等に好適な、酸素バリヤー性に優れ、色調が良好であり且つ吸水率の小さいメタキシリレンジアミンをジアミン成分とするポリアミドの連続製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジアミン成分単位とジカルボン酸成分単位とを主として含むポリアミドの連続製造方法であって、
(1) ジアミンとジカルボン酸とをそれぞれ個別に溶融するか、又は、水中でアミンとカルボン酸との塩を生成させる原料調合工程と、
(2) 調合された原料を管状反応装置に連続的に導入し通過させアミド化を行い、アミド化生成物と縮合水とを含む反応混合物を得るアミド化工程と、
(3) 前記反応混合物を水の分離除去の可能な連続式反応装置に導入し、最終的に得られるポリアミドの融点以上の温度で水を分離除去しつつ重合度を高め、ポリアミドプレポリマーを得る初期重合工程と、
(4) ポリアミドプレポリマーを水の分離除去の可能な連続式反応装置に導入し、最終的に得られるポリアミドの融点以上の温度でさらに重合度を高め、所望の相対粘度[RV]とされたポリアミドを得る後期重合工程とを含み、
前記アミド化工程の前に、アルカリ金属化合物及びリン化合物を、アルカリ金属とリンのモル比(アルカリ金属/リン)が1.2以上3.5以下となるように添加する、ポリアミドの連続製造方法である。
【0015】
本発明は、ポリアミドは、ジアミン成分としてメタキシリレンジアミン(MXD)を含み、且つジアミン成分を基準としてメタキシリレンジアミン(MXD)は少なくとも70モル%である、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0016】
本発明は、(4) 後期重合工程における連続式反応装置は、横型反応装置である、前記のポリアミドの連続製造方法である。本発明は、(4) 後期重合工程における連続式反応装置は、セルフクリーニング方式の横型二軸反応装置である、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0017】
本発明は、(4) 後期重合工程における平均滞留時間は1〜30分である、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0018】
本発明は、(4) 後期重合工程で得られるポリアミドの相対粘度[RV]は1.6〜4.0の範囲である、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0019】
本発明は、(4) 後期重合工程において、不活性ガスをパージすること、反応装置の真空度を調整すること、又はそれらの併用によって、ポリアミドの相対粘度[RV]を制御する、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0020】
本発明は、(1) 原料調合工程において、原料調合時の酸素濃度が10ppm以下である、前記ののポリアミドの連続製造方法である。
【0021】
さらに、本発明は、(2) アミド化工程における管状反応装置は、管の内径をD(mm)、管の長さをL(mm)としたとき、L/Dが50以上のものである、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0022】
本発明は、(2) アミド化工程における平均滞留時間は10〜120分である、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0023】
本発明は、(2) アミド化工程におけるせん断速度(γ)が0.1(1/sec)以上、せん断応力(τ)が1.5×10−5Pa以上である、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0024】
本発明は、(2) アミド化工程において、反応混合物の相対粘度[RV]を0.05〜0.6高くする、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0025】
本発明は、(3) 初期重合工程における平均滞留時間は10〜150分である、前記のポリアミドの連続製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の連続製造方法で製造されるポリアミドについて説明する。
本発明の連続製造方法は、脂肪族ポリアミド、芳香族含有ポリアミドのいずれにも適用できるが、アミン成分として70モル%以上のメタキシリレンジアミン(MXD)を含むポリアミドに好ましく適用できる。
【0027】
ポリアミドは、ジアミン成分を基準としてメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むことが、酸素バリヤー性及び吸水性の点で重要である。メタキシリレンジアミンの量が少ないほど、熱劣化や色調の点では有利となるが、酸素バリヤー性の点からは70モル%以上が必要で、望ましくは75モル%以上である。一方、吸水性の点からは、MXD自体が芳香環を有することから、ナイロン6やナイロン66などの脂肪族ポリアミドと比べて吸水率は小さく有利である。しかしながら、テレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を共重合することによって吸水性をさらに改善することも可能である。
【0028】
芳香族ジカルボン酸を共重合する場合には、テレフタル酸の場合、ジカルボン酸成分を基準として5〜50モル%が望ましく、5〜40モル%がさらに望ましい。また、イソフタル酸の場合、ジカルボン酸成分を基準として15〜50モル%が望ましく、20〜40モル%がさらに望ましい。
【0029】
芳香族ジカルボン酸の共重合量を前記の範囲内とすることにより、十分な吸水性改善効果が期待できる。前記範囲を超える共重合量では、高融点化、高溶融粘度化により重合条件がより過酷となり、熱分解による物性低下や色調悪化の原因となりやすい。
【0030】
望ましいポリアミドとしては、ジアミン成分として70モル%以上のメタキシリレンジアミン(MXD)を含むことを条件に、その他のジアミン成分としてのヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ジカルボン酸成分としてのアジピン酸(ADA)、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)、及びラクタム成分としてのε−カプロラクタム(CLM)の中から任意に選ばれた成分の組み合わせから構成されるポリアミドが挙げられる。とりわけ、ADA−MXD、ADA−IPA−MXD、ADA−TPA−MXD、ADA−TPA−MXD−HDM、ADA−IPA−MXD−HMD、TPA−MXD−CLMの各組み合わせから構成されるポリアミドが好ましい。
【0031】
本発明のポリアミド製造において、ポリアミドに要求される性能の点から必要に応じて前記したジアミン、ジカルボン酸、ラクタム以外のポリアミド形成能のある原料を共重合することも可能である。
【0032】
ジアミン成分としては、エチレンジアミン、1−メチルエチルジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン類が挙げられ、その他にも、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノヘキシル)メタン、パラキシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0033】
ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカジオン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、パラキシリレンジカルボン酸、メタキシリレンジカルボン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などが挙げられる。
【0034】
上記ジアミン、ジカルボン酸成分以外にも、ラウロラクタム、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸などのラクタム、アミノカルボン酸も共重合成分として使用可能である。
【0035】
ポリアミド樹脂の相対粘度[RV]は、得られる成形体の物理的、機械的性質、並びに操業安定性の点からも、1.6〜4.0の範囲にあることが望ましい。[RV]が1.6未満の場合、得られる成形体が機械的性質に劣るだけでなく、ベントアップを生じたり、ポリマーのストランド取り出しが難しくなり、チップ化時に割れが発生するなど操業面における影響が大きくなる傾向がある。逆に、[RV]が4.0を超える場合、溶融粘度が高くなり、成形条件がより過酷なものとなることから、安定した品質の成形品が得られにくくなる傾向があり、また、それに要する労力に見合うだけの製品物性が期待できない。また、4.0を超える高い[RV]化を達成するためには、不活性ガスのパージ量を増やしたり、高真空度の適用が必要となり、コストアップやベントアップなど操業不安定を招き好ましくない。より望ましい[RV]は1.9〜3.8である。
【0036】
ポリアミド樹脂の色調[Co−b]の値は小さいほど黄味が少なく、色調が良好であることを意味する。[Co−b]は一般的には−3〜3の範囲にあれば、製品として問題ない。[Co−b]が−3未満であることは、それを達成するために要した労力に比べて、得られた色調の差は視認できる範囲外でありあまり意味がない。逆に、[Co−b]が3を超える場合は、黄味が増し、製品となってもその色調の悪化は明らかに視認できるようになる。望ましい[Co−b]は−2.5〜2.8の範囲である。
【0037】
ポリアミド樹脂の吸水率は、乾燥時と吸湿時との間の成形体の寸法変化の度合を示す指標である。吸水率が高いと寸法変化が大きくなることから、吸水率は小さいほど望ましい。吸水率は、7%以下が望ましく、6.7%以下がさらに望ましい。吸水率は低いほど寸法安定性に優れるので、吸水率の下限は特に定められないが、ポリアミド固有の性質上、吸水率3.5%以下のポリアミドを得ることは技術的に難しい。
【0038】
次に、本発明のポリアミドの連続製造方法について、図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明のポリアミドの連続製造方法の概略工程を示すフロー図である。図1において、ポリアミドの連続製造方法は、原料調合工程(1) とアミド化工程(2) と初期重合工程(3) と後期重合工程(4) とを含む。
【0039】
原料調合工程
原料調合工程には、ジアミンとジカルボン酸とをそれぞれ個別に溶融し、溶融した各モノマーをアミド化工程へ直接供給する方法と、水中でアミンとカルボン酸との塩を形成させ、塩の水溶液をアミド化工程へ供給する方法とがある。
【0040】
1.溶融モノマーの直接供給法
原料調合設備は、ジカルボン酸の溶融槽(11)、その溶融液体の貯蔵槽(12)及び供給ポンプ(15)、及びジアミンの溶融槽(13)、その溶融液体の貯蔵槽(14)及び供給ポンプ(16)とから主としてなる。図1には、この場合が例示されている。
【0041】
ジカルボン酸の溶融温度及び貯蔵温度はその融点以上かつ融点+50℃(融点よりも50℃高い温度)以下が適当である。溶融温度及び貯蔵温度を必要以上に高温にすることは、原料の熱分解や劣化を誘発し好ましくない。逆に低温すぎると、不均一溶融となり、アミド化工程への原料供給精度が悪くなりやはり好ましくない。望ましい溶融温度及び貯蔵温度は、融点+5℃以上融点+25℃以下である。ジアミンについても同様であり、ジアミンの溶融温度及び貯蔵温度はその融点以上かつ融点+50℃以下が適当であり、融点+5℃以上融点+25℃以下が望ましい。
【0042】
ジカルボン酸及びジアミンのいずれについても、熱酸化分解や熱分解を抑制するために原料調合時の溶融槽及び貯蔵槽を不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス雰囲気下におくことが好ましい。この際、0.05〜0.8MPa、望ましくは0.1〜0.6MPaの加圧下の不活性ガス雰囲気下におくことが、外気の混入を防ぐ意味で好ましい。
【0043】
原料調合工程において、ポリアミドの分解抑制の目的や重合触媒としてアルカリ金属及びリン化合物を、アルカリ金属とリンのモル比(アルカリ金属/リン)が1.2以上3.5以下となるように、ジカルボン酸の溶融槽又はジアミンの溶融槽に添加する。通常は、ジカルボン酸の溶融槽に添加するとよい。
【0044】
用いられるアルカリ金属化合物は、リチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物などであるが、ナトリウム化合物が最も好ましい。また、リン化合物としては、リン酸、 亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸及びそれらの塩が用いられる。また、アルカリ金属化合物とリン化合物の2種類両方を必ず用いなければならないのではなく、アルカリ金属/リンのモル比が上記範囲内となるならば、アルカリ金属のリン酸塩のような化合物1種類のみを用いても良い。
【0045】
アルカリ金属/リンのモル比が3.5を超えると、アミド化反応が遅くなり生産性が悪化する。逆に、モル比が1.2より小さくなると、反応速度は高まるが、アミド化反応以外の副反応が多くなりポリアミドの品質が悪化するため好ましくない。望ましいアルカリ金属/リンのモル比は1.3以上3.4以下、さらに望ましくは1.4以上3.3以下である。また、用いるリン化合物の量は、製品ポリアミドに対して10〜600ppm(重量)の範囲が好ましく、20〜400ppm(重量)の範囲がより好ましい。用いるアルカリ金属化合物の量は、このようなリン化合物量の場合に、上記モル比を満たすように選択される。
【0046】
このように調合されたジカルボン酸とジアミンとは、それぞれの原料供給ポンプによって個別にアミド化工程へと供給され、アミド化工程の入口で混合される。この時、両原料のアミド化工程への供給精度が重要であり、原料供給ポンプの精度が2%以内にあることが肝要であり、更に望ましくは1.5%以内である。供給精度が前記の範囲外では、ポリアミドの重合反応が大きく影響されアミド化工程以降の反応制御が難しくなり、ベントアップやコンデンサー詰まりなど操業性への悪影響も大となる。また、場合によっては、所望する重合度に達しないこともある。原料供給ポンプとしては、プランジャーポンプの使用が望ましい。
【0047】
2.塩形成方法
塩形成方法は、テレフタル酸やイソフタル酸など融点を持たないジカルボン酸を原料とするポリアミドの製造に有利である。原料調合設備は、塩形成槽、得られた塩の水溶液の貯蔵槽及び供給ポンプから主としてなる。
【0048】
塩形成槽は、ポリアミド原料のジカルボン酸、ジアミン、ラクタム、アミノカルボン酸などを水中で均一混合してアミノカルボン酸塩溶液とする設備である。この塩形成工程において、アミノ基とカルボキシル基のモル比は所望する製品物性に応じて任意に調節可能である。しかし、アミノ基/カルボキシル基=1(モル比)より大きくずれると、所望する[RV]のポリアミドが得られないだけでなく、例えば、後期重合工程において、ポリマーのベントアップを招くなど設備的トラブルの原因となり好ましくない。
【0049】
この原料調合時に、ポリアミドの分解抑制の目的や重合触媒としてアルカリ金属及びリン化合物を、アルカリ金属とリンのモル比(アルカリ金属/リン)が1.2以上3.5以下となるように、塩形成槽に添加する。用いられるアルカリ金属化合物やリン化合物の種類や量、アルカリ金属/リンの好ましいモル比などは、溶融モノマーの直接供給法において述べたとおりである。
【0050】
塩形成工程で生成するアミノカルボン酸塩の塩濃度は、ポリアミドの種類によって異なり特に限定はされないが、一般的には30〜90重量%とすることが望ましい。塩濃度が90重量%を超える場合、温度のわずかな変動で塩が析出して配管を詰まらせることがあり、また、塩の溶解度を高くする必要から、設備的には高温、高耐圧仕様となることからコスト的に不利となる。一方、塩濃度を30重量%未満とする場合、初期重合工程以降における水の蒸発量が多くなりエネルギー的に不利となるだけでなく、生産性低下によるコストアップ要因となる。望ましい塩濃度は35〜85重量%である。
【0051】
塩形成工程における条件は、ポリアミドの種類や塩濃度によって異なるが、一般的には、温度は60〜180℃、圧力は0〜1MPaの範囲である。温度が180℃を超える場合、又は圧力が1MPaを超える場合は、設備が高温高耐圧仕様となるため、設備費が増加し不利となる。逆に、温度が60℃未満の場合、又は圧力が0MPa未満の場合には、塩の析出による配管の詰まりなどトラブル要因となるだけでなく、塩濃度を高くすることが難しくなり、生産性の低下をきたす。望ましい条件は、温度が70〜170℃、圧力が0.05〜0.8MPa、更に望ましくは75〜1 65℃、0.1〜0.6MPaである。
【0052】
塩水溶液の貯蔵槽は、基本的には塩の析出がなければ問題はなく、塩形成工程の条件がそのまま適用できる。
【0053】
このように調製された塩水溶液は、供給ポンプによってアミド化工程へ連続供給される。ここで使用される供給ポンプは定量性に優れたものでなければならない。供給量の変動はアミド化工程の工程変動となり、結果として、相対粘度[RV]の偏差の大きい、品質の不安定なポリアミドが得られることになる。この意味から、供給ポンプとしては定量性に優れたプランジャーポンプの使用が推奨される。
【0054】
3.原料調合時の酸素濃度
原料調合時の雰囲気酸素濃度は得られるポリアミドの色調に大きく影響する。特に、メタキシリレンジアミンを原料とするポリアミドについては、この傾向が著しい。原料調合時の雰囲気酸素濃度は10ppm以下であれば問題ないが、酸素濃度が10ppm以上となると、得られるポリアミドの黄色味が強くなり製品の品位が悪くなる傾向がある。一方、酸素濃度の下限は特に定められないが、例えば、0.05ppm以上である。ポリアミドの製造において、酸素濃度が0.05ppm未満であることは何ら問題はないが、0.05ppm未満を達成するためには酸素の除去工程が必要以上に煩雑となるだけで、色調をはじめその他の物性にほとんど影響は見られない。望ましい酸素濃度の範囲は0.05ppm以上9ppm以下であり、更に望ましくは0.05ppm以上8ppm以下である。
【0055】
本発明において、予め酸素を除去し酸素濃度10ppm以下とした調合槽(溶融槽又は原料塩形成槽)に原料を供給するか、又は原料を調合槽(溶融槽又は原料塩形成槽)に投入した後に酸素を除去し調合槽内の雰囲気を酸素濃度10ppm以下とするか、又は両者を併用するとよい。このことは、設備的あるいは操業面から選択すればよい。また、貯蔵槽内の雰囲気を酸素濃度10ppm以下とすることも好ましい。
【0056】
酸素の除去方法としては、真空置換法、加圧置換法あるいはその併用がある。置換に適用する真空度あるいは加圧度及び置換回数は所望する酸素濃度達成に最も効率のよい条件を選べばよい。
【0057】
アミド化工程
アミド化工程では、原料調合工程で調合された原料を管状反応装置(21)に連続的に導入し通過させ重縮合アミド化を行い、低重合度のアミド化生成物と縮合水とを含む反応混合物を得る。管状反応装置(21)内では、水の分離除去は行われない。
【0058】
原料調合工程が溶融モノマーの直接供給法の場合には、溶融ジカルボン酸と溶融ジアミンとが、それぞれの原料供給ポンプ(15)(16)によって個別に供給され、管状反応装置(21)の入口(22)で混合される。
【0059】
管状反応装置(21)は、管の内径をD(mm)、管の長さをL(mm)としたとき、L/Dが50以上のものであることが好ましい。管状反応装置には、その構造上液面制御が不要であること、プラグフロー性が高いこと、耐圧性が優れること及び設備費が安価であること等のメリットがある。L/Dが50未満の場合、Lが小さいと、反応混合物流れの滞留時間が短くなり、相対粘度[RV]の上昇度合いが小さく、一方、Dが大きいと、プラグフロー性が小さくなり、滞留時間分布ができてしまい、所望する機能を果たさなくなる。L/Dの上限については特に定められないが、滞留時間や相対粘度[RV]の上昇度合いを考慮すると、3000程度である。L/Dは、下限については60以上がより好ましく、80以上がさらに好ましく、上限については2000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。また、Lは、下限については3m以上が好ましく、5m以上がより好ましく、上限については50m以下が好ましく、30m以下がより好ましい。
【0060】
管状反応装置(21)における反応条件は、ポリアミドの構造や目的とする重合度によって異なるが、例えば、内温は110〜310℃であり、内圧は0〜5MPaであり、反応混合物の管内平均滞留時間は10〜120分である。アミド化生成物の重合度は、内温、内圧及び平均滞留時間によって制御できる。
【0061】
平均滞留時間が10分より短い場合、低重合度のアミド化生成物の重合度が低くなり、その結果、後工程において飛沫同伴、ベントアップ等を起こし操業不安定となりやすい。一方、平均滞留時間が120分より長い場合、アミド化が平衡に達し[RV]の上昇が頭打ちとなる一方で熱劣化が進行するため好ましくない。望ましい平均滞留時間は12〜110分、さらに望ましくは15〜100分である。平均滞留時間の制御は、管状反応装置の管の内径D、管の長さLの調整、あるいは原料供給量を変化させることで可能である。
【0062】
アミド化工程での重縮合反応により、管状反応装置(21)の入口(22)と出口(23)とで、反応混合物の相対粘度[RV]が0.05〜0.6上昇するようにすることが好ましい。[RV]の上昇を0.05より小さくした場合、滞留時間が短い場合と同様にアミド化生成物の重合度が低いため、後工程において飛沫同伴、ベントアップ等を起こし操業不安定となりやすい。一方、[RV]の上昇を0.6より大きくする場合、共存する縮合水(塩形成法の場合には、塩形成に用いた水と縮合水)の影響により熱劣化が進行しやすい。また粘度の上がりすぎた反応混合物は配管閉塞の原因となるので、操業に悪影響を及ぼすことがある。アミド化工程における望ましい[RV]の上昇範囲は0.15〜0.5、さらに望ましくは0.2〜0.4である。
【0063】
アミド化工程におけるプラグフロー性を保証するためには、せん断速度(γ)が0.1(1/sec)以上であり、せん断応力(τ)が1.5×10−5Pa以上であることが好ましい。せん断速度とせん断応力のうちいずれか一方でも前記の値を下回ると、反応混合物の滞留時間分布の幅が広がってしまい、ポリアミドが着色したり工程変動を生ずることがある。望ましいせん断速度(γ)は0.3以上、せん断応力(τ)は2.0×10−5Pa以上である。これらの上限は特に定められないが、通常、せん断速度(γ)100(1/sec)以下であり、せん断応力(τ)が3×10−2Pa以下である。
【0064】
初期重合工程
初期重合工程では、アミド化工程からの低重合度のアミド化生成物と縮合水とを含む反応混合物を、水の分離除去の可能な連続式反応装置に導入し、最終的に得られるポリアミドの融点以上の温度で水を分離除去しつつ重合度を高め、ポリアミドプレポリマーを得る。
【0065】
初期重合工程では、縦型攪拌槽や遠心薄膜式蒸発機などの設備が適用できるが、反応条件の制御が簡便な縦型攪拌槽(31)を好ましく用いることができる。縦型攪拌槽(31)は、アミド化工程出口(23)からの反応混合物を連続的に受入れ、水の分離除去装置(32)を備え、その底部(33)からポリアミドプレポリマーを連続的に排出するように構成されている。
【0066】
初期重合工程における反応条件は、例えば、内温は最終的に得られるポリアミドの融点(Tm)以上Tm+90℃以下であり、内圧は0〜5MPaであり、平均滞留時間は10〜150分である。望ましい反応条件は、内温はポリアミドの融点(Tm)以上Tm+80℃以下であり、内圧は0〜4MPaであり、平均滞留時間は15〜140分であり、さらに望ましい反応条件は、内温はポリアミドの融点(Tm)以上Tm+70℃以下であり、内圧は0〜3.5MPaであり、平均滞留時間は20〜130分である。反応条件が上記範囲から外れると到達重合度が低すぎたり、熱劣化や生産性の低下をきたすなど好ましくない。ポリアミドプレポリマーの重合度は、内温、内圧及び平均滞留時間によって制御できる。
【0067】
後期重合工程
後期重合工程では、初期重合工程からのポリアミドプレポリマーを水の分離除去の可能な連続式反応装置に導入し、最終的に得られるポリアミドの融点以上の温度でさらに重合度を高め、所望の相対粘度[RV]とされたポリアミドを得る。
【0068】
後期重合工程での連続式反応装置としては、一軸押出機や二軸押出機を使用することができる。二軸押出機はその反応効率も良く、ある程度のセルフクリーニング機能を有することから、一般的に推奨される。しかしながら、二軸押出機は、装置内全体を真空下とすることができないだけでなく、低溶融粘度物ではベントアップを起こしやすい。また、高剪断力のため温度制御が困難で、しかも滞留時間の自由度に制約があるなどの問題点がある。さらに滞留時間を長くするためには、装置が大型化し、設備費用も高価になるなどの不利がある。
【0069】
そこで、連続式反応装置として、セルフクリーニング方式の横型二軸反応装置(41)、例えば、三菱重工製のSCRを用いることが好ましい。セルフクリーニング方式の横型二軸反応装置(41)では、翼(ロータ)がネジレを持って僅かな隙間をおいて重ねられた状態で2本の平行な駆動軸を構成し、2本の平行な駆動軸は同方向に回転される。一般的な横型二軸反応機と比べて、翼と内壁とのクリアランスが小さいので、駆動軸の回転に伴い内壁のクリーニング効果がもたらされる。この点は二軸押出機でも同じである。しかしながら、翼同士間にかなりの隙間があり且つ駆動軸が逆方向に回転する二軸押出機と比べ、 SCRでは翼同士間には僅かな隙間しかなく且つ平行な2本の駆動軸が同方向に回転するので、さらに翼同士のクリーニング効果が大きくなる。セルフクリーニング効果により、スケール付着の低減、コンタミネーションの減少による品質向上をもたらすので、反応中に熱劣化の起こり易いポリアミドの製造に好適に使用される。さらに、二軸押出機と異なり装置内全体を真空下におくことが可能であることから低溶融粘度物に対しても真空が適用できること、また、剪断力による発熱が小さく、滞留時間も比較的長く、粘度変動、流量変動に対する適用力が高く、しかも、生産可能粘度幅が大きいという利点がある。更に、設備的には、二軸押出機に比べ、コンパクト化が可能で、しかもコスト的に安価であるという有利性を有する。
【0070】
後期重合工程の反応条件は、ポリアミドの種類や所望する相対粘度[RV]によって異なるが、樹脂温度はポリアミドの融点(Tm)以上Tm+80℃以下、望ましくは融点以上Tm+70℃以下である。樹脂温度がTm+80℃以上となると、ポリアミドの劣化が加速されやすく、物性低下や着色の原因となる。逆に、Tm以下では、ポリアミドが固化し、反応装置の損傷を招く危険性がある。
【0071】
連続式反応装置における平均滞留時間は、ポリアミドの種類、所望する相対粘度[RV]、真空度、後述する酸無水物化合物の添加、後述する不活性ガスのパージ等によっても異なるが、1〜30分であることが好ましい。平均滞留時間が1分未満では、1.6〜4.0の範囲の[RV]を有するポリアミドが得られにくく、逆に、平均滞留時間が30分を超えると、ポリマーの連続式反応装置への供給量を小さくすることが必要となり、生産性の著しい低下をきたす。望ましい平均滞留時間は1.5〜25分、さらに望ましくは2〜20分である。
【0072】
反応装置SCRのスクリュー回転数(rpm)は、二軸押出機の場合と異なり重合反応や平均滞留時間に与える影響は小さく、適宜選択すれば良いが、一般的には20rpm〜150rpmが適用される。
【0073】
後期重合工程における重要な機能として相対粘度[RV]の制御がある。
[RV]の制御方法としては▲1▼不活性ガスのパージ、▲2▼真空度、▲3▼不活性ガスのパージと真空度の併用がある。以下に各法について説明する。
【0074】
不活性ガスパージは重合反応を促進する一方で、パージ量を調整することで[RV]の制御ができる。不活性ガスパージは、不活性ガスパージ口(42)から行う。不活性ガスのパージ量は所望する[RV]、温度などの重合条件によって異なるが、その量はポリマー1kgあたり0.005〜10Lが望ましい。パージ量が10L/kgを超えると、重合反応の促進作用より使用する不活性ガス量が過剰となり、コストアップ要因となる。より望ましいパージ量は0.005〜9.5L/kg、更に望ましくは0.01〜9L/kgである。また、不活性ガスパージを行わずとも所望のRVが得られる場合は、パージを行わないこと(すなわち、パージ量:10L/kg)も可能である。不活性ガスとしては、ポリアミド生成反応に対して不活性であれば種類を問わないが、窒素ガスが安全面、コスト面で有利である。
【0075】
また、真空度によっても重合反応を促進し、反応速度が制御できる。真空口(43)を通じて行う。ポリアミドの生成反応はカルボン酸とアミンの縮合反応であり、生成する水を除去することで、重合反応は促進される。後期重合工程で適用する真空度は、所望する[RV]、重合条件によって異なるが、150〜1200hPaである。150hPa未満となると、後期重合工程において、ポリマーがベントアップしたり、配管を詰まらせたり、安定した操業性が期待できない。逆に、1200hPaを超えると、真空度の効果はあまりなく、所望する[RV]への到達速度が遅くなり生産性が低下し、場合によっては、所望する[RV]に到達しない場合もある。望ましい真空度は200〜1100hPa、さらに望ましくは250〜1050hPaである。
【0076】
ADA−MXDを主原料とするポリアミドにおいて望ましい[RV]の制御方法は、不活性ガスパージと真空度の併用である。この方法の利点は、不活性ガス、又は真空度単独では達し得なかった高[RV]のポリアミドの製造が容易なこと、また、[RV]の制御が一定真空度下では不活性ガスのパージ量の調整で可能となり、あるいは逆に不活性ガス量一定下では真空度の調整で可能となり、[RV]制御がより柔軟に行える利点がある。
【0077】
望ましい条件は、不活性ガスパージ量が0.005〜9.5L/kg、真空度は200〜1150hPa、更に望ましくは0.01〜9L/kg、250〜1100hPaである。不活性ガスパージ量が0.005L/kg未満であるか、又は真空度が1150hPaを超えると、重合速度が遅くなる。逆に、不活性ガスパージ量が9.5L/kgを超えるか、又は真空度が200hPa未満となると、不活性ガスの使用量が増加してコストアップ要因となり、また、重合速度が遅くなって生産性が低下するなどの不利を生じる。
【0078】
一方、重合反応を抑制したい場合には、酸無水物化合物の添加によって重合反応を制御できる。添加口(44)を通じて行う。酸無水物化合物の添加により、ポリマーの末端アミノ基が封鎖されるので、重合反応を抑制できると考えられる。使用できる酸無水物化合物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HOPA)、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸などが挙げられ、ポリアミドの色調の点からHOPAの使用が望ましい。酸無水化合物の添加量は、所望する[RV]によって特に限定されるものではないが、通常はポリマー1kgあたり150meq/kg以下が望ましい。添加量が150meq/kgを超えると、重合速度が遅くなったり、ベントアップ要因となり操業安定性が悪くなる。また、未反応の酸無水物化合物がポリマー中に残留しポリアミドの品質低下の原因になる。
【0079】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
[パラメータの測定]
1.相対粘度[RV]
ポリアミド樹脂0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度管にて測定した。
【0081】
2.色調[Co−b]
ポリアミド樹脂のチップ10gをセルに均一充填し、日本電色工業(株)製のカラーメーターモデル1001DPにて測定した。
【0082】
[実施例1]
溶融槽(11)に25kgの粉末状アジピン酸(ADA)、13.7gの酢酸ナトリウム、及び28.4gのホスフィン酸ナトリウム一水和物を供給し、溶融槽(13)にメタキシリレンジアミン(MXD)18kgを供給した。続いて、溶融槽(11)及び溶融槽(13)それぞれについて、40hPaの真空度を5分間保持した後、窒素ガスで常圧とした。同操作を3回繰り返した後、0.2MPaの窒素圧で、ADAは180℃に、MXDは60℃に加熱し、それぞれ溶融液体とした。引き続き、ADAを貯蔵槽(12)に、MXDを貯蔵槽(14)に移送した。
【0083】
ADA、MXDの各溶融原料を、プランジャーポンプ(15)(16)にて、それぞれ4.75kg/hr、4.42kg/hrでアミド化工程管状反応装置(L/D=780)(21)へ定量供給した。アミド化工程における反応条件は、入口(22)での内温180℃、出口(23)での内温255℃、内圧0.7MPa、平均滞留時間30分であった。
【0084】
アミド化工程を経た反応混合物を、内温255℃、内圧0.7MPa、30rpmの攪拌下の条件に設定された初期重合工程の縦型攪拌槽(31)へと供給し、同条件下で50分間滞留させ、同時に縮合水を留去した。引き続き、初期重合工程を経た反応物を、反応温度255℃、真空度1013hPa、窒素ガスパージ量0.3L/kg、スクリュー回転数50rpmの条件に設定されたSCR(41)へと供給し、10分間の平均滞留時間で、[RV]が2.07、[Co−b]が0.4のポリアミド樹脂を得た。
【0085】
[実施例2]
酢酸ナトリウムの添加量をNa/Pモル比=1.75となるように変更した以外は、実施例1と同様に行った。[RV]が2.00、[Co−b]が0.5のポリアミド樹脂を得た。
【0086】
[比較例1]
酢酸ナトリウムの添加量をNa/Pモル比=4となるように変更した以外は、実施例1と同様に行った。[RV]が1.64、[Co−b]が0.7のポリアミド樹脂を得た。Na/Pモル比が高すぎたことによって反応速度が遅くなり、[RV]が実施例1と比べ小さくなった。
【0087】
[比較例2]
溶融槽(11)に25kgの粉末状アジピン酸(ADA)、及び28.4gのホスフィン酸ナトリウム一水和物を供給し、溶融槽(13)にメタキシリレンジアミン(MXD)18kgを供給した。続いて、溶融槽(11)及び溶融槽(13)それぞれについて、40hPaの真空度を5分間保持した後、窒素ガスで常圧とした。同操作を3回繰り返した後、0.2MPaの窒素圧で、ADAは180℃に、MXDは60℃に加熱し、それぞれ溶融液体とした。引き続き、ADAを貯蔵槽(12)に、MXDを貯蔵槽(14)に移送した。
【0088】
ADA、MXDの各溶融原料を、プランジャーポンプ(15)(16)にて、それぞれ4.75kg/hr、4.42kg/hrでアミド化工程管状反応装置(L/D=780)(21)へ定量供給した。アミド化工程における反応条件は、入口(22)での内温180℃、出口(23)での内温255℃、内圧0.7MPa、平均滞留時間30分であった。
【0089】
アミド化工程を経た反応混合物を、内温255℃、内圧0.7MPa、30rpmの攪拌下の条件に設定された初期重合工程の縦型攪拌槽(31)へと供給し、同条件下で50分間滞留させ、同時に縮合水を留去した。引き続き、初期重合工程を経た反応物を、反応温度255℃、真空度1013hPa、窒素ガスパージ量0.3L/kg、スクリュー回転数50rpmの条件に設定されたSCR(41)へと供給し、10分間の平均滞留時間でポリマーを得た。しかし、得られたポリマーはゲル化が激しくチップ化することができなかった。また、[RV]測定のため硫酸に溶解した際、不溶物が析出した。
【0090】
以上のポリアミドの製造条件及び得られたポリアミドの特性を表1に示す。いずれの実施例においても、操作は良好であり、優れた物性値を有するポリアミドが得られた。
【0091】
【表1】
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、品質の良好なポリアミド、とりわけ芳香族含有ポリアミドの連続製造方法が提供される。本発明の方法では、食品、飲料品、医薬品、化粧品などの用途における、フィルム、シート、包装袋、ボトル等に好適な、酸素バリヤー性に優れ、色調が良好であり且つ吸水率の小さいメタキシリレンジアミンをジアミン成分とするポリアミドが連続的に製造される。このメタキシリレンジアミンを成分として含むポリアミドは、ポリエチレンテレフタレートなどの異種ポリマーの改質にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリアミドの連続製造方法の概略工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
(1) :原料調合工程
(2) :アミド化工程
(21):管状反応装置
(3) :初期重合工程
(4) :後期重合工程
(41):セルフクリーニング方式の横型二軸反応装置
Claims (7)
- ジアミン成分単位とジカルボン酸成分単位とを主として含むポリアミドの連続製造方法であって、
(1) ジアミンとジカルボン酸とをそれぞれ個別に溶融するか、又は、水中でアミンとカルボン酸との塩を生成させる原料調合工程と、
(2) 調合された原料を管状反応装置に連続的に導入し通過させアミド化を行い、アミド化生成物と縮合水とを含む反応混合物を得るアミド化工程と、
(3) 前記反応混合物を水の分離除去の可能な連続式反応装置に導入し、最終的に得られるポリアミドの融点以上の温度で水を分離除去しつつ重合度を高め、ポリアミドプレポリマーを得る初期重合工程と、
(4) ポリアミドプレポリマーを水の分離除去の可能な連続式反応装置に導入し、最終的に得られるポリアミドの融点以上の温度でさらに重合度を高め、所望の相対粘度[RV]とされたポリアミドを得る後期重合工程とを含み、
前記アミド化工程の前に、アルカリ金属化合物及びリン化合物を、アルカリ金属とリンのモル比(アルカリ金属/リン)が1.2以上3.5以下となるように添加する、ポリアミドの連続製造方法。 - ポリアミドは、ジアミン成分としてメタキシリレンジアミン(MXD)を含み、且つジアミン成分を基準としてメタキシリレンジアミン(MXD)は少なくとも70モル%である、請求項1に記載のポリアミドの連続製造方法。
- (4) 後期重合工程における連続式反応装置は、セルフクリーニング方式の横型二軸反応装置である、請求項1又は2に記載のポリアミドの連続製造方法。
- (4) 後期重合工程における平均滞留時間は1〜30分である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のポリアミドの連続製造方法。
- (4) 後期重合工程で得られるポリアミドの相対粘度[RV]は1.6〜4.0の範囲である、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のポリアミドの連続製造方法。
- (4) 後期重合工程において、不活性ガスをパージすること、反応装置の真空度を調整すること、又はそれらの併用によって、ポリアミドの相対粘度[RV]を制御する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のポリアミドの連続製造方法。
- (1) 原料調合工程において、原料調合時の雰囲気酸素濃度が10ppm以下である、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のポリアミドの連続製造方法。
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