JP2004090290A - 平版印刷版用原版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】親水性表面を有する支持体上に、親油性化合物を内包するマイクロカプセル、光熱変換剤、並びに、分子量が1000以下で炭素数が10以下の、多価アルコール、有機酸、有機酸塩、無機酸及び無機酸塩から選ばれる少なくとも1つの水溶性化合物を含有する画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版用原版。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、親水性支持体上に、マイクロカプセルを含有する画像形成層を有する平版印刷版用原版に関する。より詳しくは、デジタル信号に基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものはそのまま印刷機に装着して機上現像による製版が可能な平版印刷版用原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年進展が目覚ましいコンピュータ・ツウ・プレート(CTP)システムについては、多数の研究がなされている。その中で、一層の工程合理化と廃液処理問題の解決を目指すものとして、露光後、現像処理することなしにそのまま印刷機に装着して印刷できる平版印刷版用原版が研究され、種々の方法が提案されている。
【0003】
処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機の版胴に装着し、版胴を回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で現像処理が完了する方式である。このような機上現像に適した平版印刷版用原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な画像形成層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに明室取り扱い性を有することが必要とされる。
【0004】
例えば、特許第2938397号には、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体の微粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷版用原版が記載されている。この公報には、該平版印刷版用原版において、赤外線レーザ露光して熱可塑性疎水性重合体の微粒子を熱により合体させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取り付け、湿し水及び/又はインキにより機上現像できることが記載されている。この平版印刷版用原版は感光域が赤外線域であることにより、明室取り扱い適性も有している。
【0005】
また、特開平9−127683号公報及びWO99−10186号公報にも熱可塑性微粒子を熱による合体後、機上現像により印刷版を作製することが記載されている。
【0006】
また、特開2001−277740号公報には、熱反応性化合物を含有するマイクロカプセルを用いて耐刷性を改良した機上現像型の平版印刷版用原版が記載されている。
【0007】
また、特開2002−29162号には、ビニルオキシ基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが記載されている。
【0008】
また、特開2002−46361号には、エポキシ基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが記載されている。
【0009】
さらに、特開2002−137562号には、ラジカル重合性基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び感熱性ラジカル発生剤を含有する画像形成層を有する機上現像型の平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の技術による平版印刷用原版には、耐刷性は向上したが、まだ機上現像性が不十分で、地汚れが発生しやすい問題があった。本発明の目的は、この問題を解決することである。すなわち、機上現像性に優れ、地汚れが生じにくく、高耐刷の平版印刷版用原版を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記の構成により解決されることが見出された。
1.親水性表面を有する支持体上に、親油性化合物を内包するマイクロカプセル、光熱変換剤、並びに、分子量が1000以下で炭素数が10以下の、多価アルコール、有機酸、有機酸塩、無機酸及び無機酸塩から選ばれる少なくとも1つの水溶性化合物を含有する画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版用原版。
【0012】
2.該水溶性化合物が、炭素数6以下の多価アルコールであることを特徴とする前記1記載の平版印刷版用原版。
【0013】
3.該水溶性化合物が、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリエチレングリコール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、硝酸ニッケル、亜硝酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする前記1記載の平版印刷版用原版。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
[画像形成層]
本発明の画像形成層には、親油性化合物を内包するマイクロカプセルが含有される。この親油性化合物は、熱反応性基を有する化合物であることが好ましい。この熱反応性官能基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でも良いが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基及びそれら反応相手であるヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及びそれら反応相手であるアミノ基又はヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。
以下、熱反応性官能基を有する親油性化合物についてより詳しく説明する。
【0016】
ラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などを少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を好適なものとして挙げられる。このような化合物群は当該産業分野において、光重合性又は熱重合性組成物用のモノマー又は架橋剤として広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定せずに用いることができる。化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体、オリゴマー、重合体もしくは共重合体、又はこれらの混合物である。
【0017】
本発明に好適なラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、特開2001−277740号に重合性不飽和基を有する化合物として記載の化合物が挙げられる。代表的な化合物例としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートとキシリレンジイソシアナートとの付加体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明に好適なビニルオキシ基を有する化合物として、特開2002−29162号に記載の化合物が挙げられる。具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,2−ビス(ビニルオキシメトキシ)ベンゼン、1,2−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3,5−トリス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ビフェニル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルエーテル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルメタン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ナフタレン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フラン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}チオフェン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}イミダゾール、2,2−ビス[4−{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシメチルオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシ)フェニル}プロパンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明に好適なエポキシ基を有する化合物としては、2個以上エポキシ基を有する化合物が好ましく、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物又はそのプレポリマー、更に、アクリル酸グリシジルもしくはメタクリ酸グリシジルの重合体又は共重合体等を挙げることができる。
【0020】
好適な具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、ビスフェノール類もしくはポリフェノール類又はそれらの水素添加物のポリグリシジルエーテル、例えば水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等も好適なものとして挙げられる。更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等も好適なものとして挙げられる。
【0021】
上記化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、エピコート1004(約1060、エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、エピコート1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、エピコート1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、エピコート1100L(エポキシ当量4000)、エピコートYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195XL、ESCN−195XF等を挙げることができる。
【0022】
本発明に好適なイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、又は、これらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物を挙げることができる。
【0023】
本発明に好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0024】
本発明に好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類などを挙げることができる。
【0025】
本発明に好適なカルボキシル基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸などの芳香族多価カルボン酸、アジピン酸などの脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
【0026】
本発明に好適な酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0027】
上記の親油性化合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許2800457号、同2800458号にみられるコアセルベーションを利用した方法、英国特許990443号、米国特許3287154号、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号にみられる界面重合法による方法、米国特許3418250号、同3660304号にみられるポリマーの析出による方法、米国特許3796669号に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許3914511号に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許4001140号、同4087376号、同4089802号にみられる尿素―ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許4025445号にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許930422号、米国特許3111407号にみられるスプレードライング法、英国特許952807号、同967074号にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。マイクロカプセル壁に熱反応性官能基を有する化合物を導入しても良い。
【0029】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.05〜2.0μmがより好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0030】
このようなマイクロカプセルは、カプセル同志が熱により合体してもよいし、合体しなくとも良い。要は、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にマイクロカプセルの表面もしくはマイクロカプセル外に滲み出したもの、又は、マイクロカプセル壁に浸入したものが、熱により化学反応を起こせば良い。また、添加された親水性樹脂又は添加された低分子化合物と反応してもよい。また、2種類以上のマイクロカプセルに、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせることによって、マイクロカプセル同士を反応させてもよい。従って、熱によってマイクロカプセル同士が、熱で溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
【0031】
マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、画像形成層固形分の50質量%以上が好ましく、60〜95質量%がより好ましい。この範囲内で、良好な現像性と同時に、良好な感度及び良好な耐刷性が得られる。
【0032】
本発明の画像形成層にマイクロカプセルを含有させる場合には、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類などが好ましい。
【0033】
上記溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。
【0034】
このような溶剤の添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0035】
本発明の画像形成層には、分子量が1000以下で炭素数が10以下の、多価アルコール、有機酸、有機酸塩、無機酸及び無機酸塩から選ばれる少なくとも1つの水溶性化合物が含有される。水溶性化合物の水への溶解度は、25℃において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが最も好ましい。水溶性化合物の分子量は、800未満であることがより好ましく、500未満であることが最も好ましい。
【0036】
本発明に用いられる多価アルコールに含まれる炭素数は10以下である。好ましくは炭素数6以下である。このような多価アルコールの具体例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。なかでも、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリエチレングリコールがより好ましい。
【0037】
また、多価アルコールとしては、ヒドロキシルキ基以外に親水性基、例えばアミノ基又はその塩を有するものも好適なものとして挙げられる。アミノ基又はその塩を有する多価アルコールの例として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩が挙げられる。なかでも塩酸塩がより好ましい。
【0038】
本発明に用いられる有機酸としては、炭素数10以下の、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸が挙げられる。具体例としては、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェニルホスホン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アスコルビン酸、アミノ酸などが挙げられる。
【0039】
本発明に用いられる有機酸塩としては、上記有機酸の塩が挙げられる。塩としては金属塩が好ましく、より好ましくは、アルカリ金属塩がより好ましい。具体例としては、上記有機酸のナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。特に好ましいものとして クエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0040】
本発明に用いられる無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、フィチン酸がなど挙げられる。なかでも、リン酸がより好ましい。
【0041】
本発明に用いられる無機塩としては、塩酸、炭酸及び上記無機酸の塩が挙げられる。より好ましいものとして、これら無機酸のアルカリ金属塩又はニッケル塩が挙げられる。なかでも好適な無機酸の具体例として、リン酸ナトリウム、硝酸ニッケル、亜硝酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0042】
上記水溶性化合物は、必要に応じて、二種類以上を併用することもできる。水溶性化合物の添加量は、画像形成層中の0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。この範囲内で、耐刷性を劣化させず機上現像性を向上できる。
【0043】
本発明の画像形成層には、機上現像性や画像形成層自体の皮膜強度向上のため親水性樹脂を含有させることができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水基を有するものが好ましい。また、親水性樹脂は、マイクロカプセルに内包される親油性化合物が有する熱反応性基と反応し架橋することによって画像強度が高まり、高耐刷化されるので、熱反応性基と反応する基を有することが好ましい。例えば、親油性化合物がビニルオキシ基又はエポキシ基を有する場合は、親水性樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などを有するものが好ましい。中でも、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましい。
【0044】
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、ソヤガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、2−メタクロイルオキシエチルホスホン酸のホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
【0045】
上記親水性樹脂の画像形成層への添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明の画像形成層には、上記の他に、光を吸収して発熱する光熱変換剤、マイクロカプセルが反応性基を含有する場合には反応を促進する反応促進剤、さらに無機微粒子、着色剤、可塑剤、界面活性剤など、種々の目的の化合物を添加することができる。以下これらについて説明する。
【0047】
本発明の画像形成層に用いられる光熱変換剤としては、赤外線、中でも近赤外線(波長700〜2000nm)を吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子が挙げられる。特に、波長700〜1300nmを吸収する物質が好適である。
【0048】
例えば、日本印刷学会誌、38卷35〜40頁(2001)「新イメージング材料、2.近赤外線吸収色素」、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)、米国特許4756993号、同4973572号、特開平10−268512号、同11−235883号、特公平5−13514号、同5−19702号、特開2001−347765号、特開2001−301350号、特開2002−137562号等に記載の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子が好適に用いられる。顔料及び金属微粒子は、必要に応じて、公知の表面処理を施したものを用いることができる。
【0049】
染料又は色素の種類としては、シアニン色素、ポリメチン色素、アゾメチン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム及びチオピリリウム塩系染料、ジチオール金属錯体、フタロシアニン色素等が挙げられる。特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、フタロシアニン色素が挙げられる。
【0050】
顔料の種類としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。中でもカーボンブラックが好適である。
【0051】
金属微粒子としてはAg、Au、Cu、Sb、Ge及びPbの微粒子が好ましく、Ag、Au及びCuの微粒子がより好ましい。
【0052】
上記の中でも、特開2001−301350号、特開2002−137562号等に記載のシアニン色素及びフタロシアニン色素が特に好適である。
【0053】
光熱変換剤の画像形成層への添加は、画像形成層塗布液への直接添加でも、マイクロカプセル中に含有させた形での添加でも良い。画像形成層塗布液への直接添加には、水溶性の光熱変換剤が好ましく、マイクロカプセル中に含有させる場合は、親油性の光熱変換剤が好ましい。
【0054】
光熱変換剤の添加割合は、画像形成層固形分の1〜50質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。これらの範囲で、画像形成層の膜強度を損なうことなく、良好な感度が得られる。
【0055】
本発明の画像形成層に用いられる反応促進剤としては、公知の酸前駆体、酸発生剤、熱ラジカル発生剤と呼ばれる化合物が挙げられる。例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、焼き出し画像形成用の酸発生剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等が挙げられる。
【0056】
より具体的には、特開2001−301350号、特開2002−29162号、特開2002−46361号、特開2002−137562号などに記載のロフィンダイマー、トリハロメチル置換ヘテロ化合物、過酸化物、アゾ化合物、イミノスルホナート化合物、ジスルホン化合物、アシルホスフィン化合物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、及びオニウム塩(例えば、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩など)などを挙げることができる。また、これらの酸を発生する基又は化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物を用いることもできる。
【0057】
なかでもより好適なものとして、トリハロメチル置換−s−トリアジン化合物、ジスルホン化合物、イミノスルフォネート化合物、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩などが挙げられる。
【0058】
上記反応促進剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、反応促進剤の画像形成層への添加は、画像形成層塗布液への直接添加でも、マイクロカプセル中に含有させた形での添加でもよい。画像形成層中の反応促進剤の含有量は、画像形成層全固形分の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。この範囲内で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
【0059】
本発明の画像形成層には無機微粒子を添加してもよく、無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物などが好適な例として挙げられ、これらは光熱変換性でなくても皮膜の強化や表面粗面化による界面接着性の強化などに用いることができる。
【0060】
無機微粒子の平均粒径は5nm〜10μmのものが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。このような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物などの市販品として容易に入手できる。粒径が上記範囲内で、マイクロカプセルや光熱変換剤の金属微粒子とも親水性樹脂内に安定に分散し、画像形成層の膜強度を充分に保持し、印刷汚れを生じにくい親水性に優れた非画像部を形成できる。
【0061】
本発明の画像形成層には、画像形成後、画像部と非画像部の区別をつきやすくするため、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。添加量は、画像形成層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0062】
本発明の画像形成層には、画像形成層の分散安定性、製版及び印刷性能向上や塗布性の向上のため、特開平2−195356号、特開昭59−121044号、特開平4−13149号及び特願2001−169731号に記載されているノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性又はフッ素系の界面活性剤を添加することができる。これらの界面活性剤の好適な添加量は、画像形成層全固形物の0.005〜1質量%である。
【0063】
本発明の画像形成層には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。例えば、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0064】
本発明の画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独で又は2種類以上を混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0065】
塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層の乾燥塗布量は、用途によって異なるが、一般的に0.2〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0066】
[オーバーコート層]
本発明の平版印刷版用原版は、保存時の外部からの親油性物質による汚染や取り扱い時の手指の接触による指紋跡汚染等から親水性の画像形成層表面を保護するため、画像形成層上に、特開2001−162961号、特開2002−19318号に記載の水溶性樹脂を含有するオーバーコート層を設けることができる。
【0067】
オーバーコート層に用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルロース等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、等を挙げることができる。目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0068】
上記のオーバーコート層には、感度を向上させるため光熱変換剤を含有させることができる。好ましい光熱変換剤として、画像形成層に用いられる前記赤外線吸収色素中の水溶性の赤外線吸収色素が挙げられる。
【0069】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることが出来る。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0070】
さらに、上記オーバーコート層には、積み重ね保存時のプレート間のくっつきを防止するため、特開2001−341448号記載のフッ素原子及びケイ素原子のうちいずれかを有する化合物を含有することができる。
【0071】
本発明のオーバーコート層の厚みは、0.1〜4.0μmが好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜1.0μmである。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、親油性物質による画像形成層の汚染を防止できる。
【0072】
[支持体]
本発明の平版印刷版用原版において前記画像形成層を塗布可能な支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0073】
該アルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、さらにはアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。また、DC鋳造法を用いたアルミニウム鋳塊からのアルミニウム板でも、連続鋳造法による鋳塊からのアルミニウム板であっても良い。しかし、本発明に適用されるアルミニウム板は、従来から公知公用の素材のアルミニウム板をも適宜に利用することができる。
【0074】
本発明で用いられる上記の基板の厚みは0.05mm〜0.6mm、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
【0075】
アルミニウム板を使用するに先立ち、表面の粗面化、陽極酸化などの表面処理をすることが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像形成層との接着性の確保が容易になる。
【0076】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適している。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸などの酸を含む電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように混合酸を用いた電解粗面化方法も利用することができる。
【0077】
上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。形成される酸化皮膜量は、1.0〜5.0g/m2、特に1.5〜4.0g/m2であることが好ましい。
【0078】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。上記親水化処理のための好適な親水性化合物としては、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基をもつ化合物、糖類化合物、クエン酸、アルカリ金属珪酸塩、フッ化ジルコニウムカリウム及びリン酸塩・無機フッ素化合物の混合物などを挙げることができる。
【0079】
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが好ましい。親水層としては、特開2001−199175号に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモン及び遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0080】
本発明においては、画像形成層を塗布する前に、必要に応じて、特開2001−322365号に記載の、例えばホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層、又は例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアクリル酸などの含有する有機下塗層を設けることができる。また、この下塗層には、前記赤外線吸収色素を含有させてもよい。
【0081】
[製版及び印刷]
本発明の平版印刷版用原版は熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1300nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。このような露光は、支持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通して行うこともできる。
【0082】
画像露光された本発明の平版印刷版用原版は、それ以上の処理なしに印刷機に装着し、湿し水とインキを供給し、さらに紙を供給する通常の印刷開始操作によって機上現像され、続いて印刷することができる。すなわち、印刷をスタートすると、湿し水、インキ、紙との接触及びシリンダーの回転に伴う擦りによって、画像形成層の未露光部(加熱されていない部分)が除去される機上現像を経て製版され、本格的印刷が始まる。
【0083】
本発明の平版印刷版用原版は、日本特許2938398号に記載されているように、印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザにより露光し、その後に湿し水及び/又はインクをつけて機上現像することも可能である。また、これらの平版印刷版用原版は、水又は適当な水溶液を現像液とする現像をした後、印刷に用いることもできる。
【0084】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
(アルミニウム支持体の作製)
99.5質量%アルミニウムに、銅を0.01質量%、チタンを0.03質量%、鉄を0.3質量%、ケイ素を0.1質量%含有するJISA1050アルミニウム材(熱伝導率0.48cal/cm・sec・℃)の厚み0.24mm圧延板を、400メッシュのパミストン(共立窯業製)の20質量%水性懸濁液と、回転ナイロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用いてその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。これを15質量%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウムイオン4.5質量%含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が5g/m2になるようにエッチングした後、流水で水洗した。更に、1質量%硝酸で中和し、次に0.7質量%硝酸水溶液(アルミニウム0.5質量%含有)中で、陽極時電圧10.5ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形波交番波形電圧(電流比r=0.90、特公昭58−5796号公報実施例に記載されている電流波形)を用いて160クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。水洗後、35℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2になるようにエッチングした後、水洗した。次に、50℃、30質量%の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットした後、水洗した。さらに、35℃の硫酸20質量%水溶液(アルミニウム0.8質量%含有)中で直流電流を用いて、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極酸化皮膜重量2.7g/m2とした。この支持体を水洗後、70℃のケイ酸ナトリウムの0.2質量%水溶液に30秒間浸漬処理し、水洗乾燥した。
【0086】
(マイクロカプセル(1)の合成)
油相成分としてトリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N、マイクロカプセル壁材)20g、芳香族イソシアネートオリゴマー(日本ポリウレタン(株)製、ミリオネートMR−200、マクロカプセル壁材)15g、ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル12g、赤外線吸収色素A(下記)4g、酸発生剤A(下記)4g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)製アニオン界面活性剤)0.1gを酢酸エチル60gに溶解した。水相成分としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA205)の4質量%水溶液120gを調製した。油相成分と水相成分とをホモジナイザーを用いて10000rpmで10分間乳化した。その後水を40g添加し、室温で30分さらに65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は25質量%であり、平均粒径は0.4μmであった。
【0087】
【化1】
【0088】
(マイクロカプセル(2)の合成)
油相成分としてトリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N、マイクロカプセル壁材)20g、芳香族イソシアネートオリゴマー(日本ポリウレタン(株)製、ミリオネートMR−200、マクロカプセル壁材)15g、ビスフェノールAとエピクロロヒドリン付加反応物(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート1004)12g、赤外線吸収色素A 4g、酸発生剤A 4g、パイオニンA41C 0.1gを酢酸エチル60gに溶解した。水相成分としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA205)の4質量%水溶液120gを調製した。油相成分と水相成分とをホモジナイザーを用いて10000rpmで10分間乳化した。その後、水40g及びテトラエチレンペンタミン1.5gを添加し、室温で30分さらに65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は25質量%であり、平均粒径は0.4μmであった。
【0089】
実施例1
上記アルミニウム支持体上に、下記の組成よりなる画像形成層塗布液(1)をバー塗布し、オーブンで80℃、90秒の条件で乾燥し、画像形成層の乾燥塗布量1.0g/m2の平版印刷版用原版を作製した。
【0090】
画像形成層塗布液(1)
・水 100g
・マイクロカプセル(1)(固形分換算で) 5g
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA117) 0.5g
・水溶性化合物 グリセリン 0.2g
・フッ素系界面活性剤メガファックF−171 0.05g
(大日本インキ化学工業(株)製)
【0091】
このようにして得られた平版印刷版用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力17W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー200mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール(容量比1/89/10)からなる湿し水と、大日本インキ化学工業(株)製ジオスG墨インキを用い、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行ったところ、問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。印刷10枚目の印刷物を20倍のルーペを用いて評価したところ、地汚れはなく、ベタ画像部の濃度の均一性は極めて良好であった。すなわち、機上現像は印刷10枚目で完了していた。更に印刷を継続したところ、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0092】
比較例1
実施例1の画像形成層塗布液中に、グリセリンを添加しない以外は、実施例1と同様に、平版印刷版用原版を作製し、露光、印刷を実施したところ、地汚れがなくなるまでに印刷用紙50枚を要した。
【0093】
実施例2
実施例1の画像形成層塗布液マイクロカプセル(1)をマイクロカプセル(2)に変えた以外は、実施例1と同様に、平版印刷版用原版を作製し、露光、印刷を実施したところ、問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。印刷10枚目の印刷物を20倍のルーペを用いて評価したところ、地汚れはなく、ベタ画像部の濃度の均一性は極めて良好であった。更に印刷を継続したところ、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
できる。
【0094】
実施例3〜6
実施例2の画像形成層塗布液(1)のグリセリンを、実施例4ではペンタエリスリトールに、実施例5ではソルビトールに、実施例6ではトリエチレングリコールに変えた以外は実施例2と同様にして平版印刷版用原版を作製し、実施例1と同様に、製版し、印刷した。その結果、いずれの原版を用いても、印刷10枚目までに機上現像は完了した。更に印刷を継続したところ、いずれの原版の場合も、細線や細文字の欠落及びベタ画像濃度のムラがなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が20000枚以上得られた。
【0095】
実施例7〜12
実施例1の画像形成層塗布液(1)のグリセリンを、実施例7ではトリエタノールアミン/トリエタノールアミン塩酸塩の1/1(質量比)混合物に、実施例8ではジエタノールアミン/ジエタノールアミン塩酸塩の1/1(質量比)混合物に、実施例9ではリン酸ナトリウムに、実施例10では硝酸ニッケルに、実施例11ではクエン酸ナトリウムに、実施例12ではリン酸/エチレングリコール/亜硝酸ナトリウムの1/10/1(質量比)混合物に変えた以外は、実施例1と同様にして平版印刷版用原版を作製し、実施例1と同様に、製版し、印刷した。その結果、いずれの原版においても実施例1と同等の良好な結果が得られた。
【0096】
上記の結果から、本発明の平版印刷版用原版は、機上現像性、汚れ難さ、耐刷性とも良好であることが分かる。
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、デジタル信号に基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、機上現像性に優れ、地汚れが生じにくく、高耐刷の平版印刷版用原版を提供できる。
Claims (3)
- 親水性表面を有する支持体上に、親油性化合物を内包するマイクロカプセル、光熱変換剤、並びに、分子量が1000以下で炭素数が10以下の、多価アルコール、有機酸、有機酸塩、無機酸及び無機酸塩から選ばれる少なくとも1つの水溶性化合物を含有する画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版用原版。
- 該水溶性化合物が、炭素数6以下の多価アルコールであることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版用原版。
- 該水溶性化合物が、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリエチレングリコール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、硝酸ニッケル、亜硝酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版用原版。
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