JP2004089784A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車ボディにおいて、チッピングプライマーの塗布工程を省略でき、耐チッピング性、仕上がり性に優れる複層塗膜形成方法を見出すこと。
【解決手段】以下の工程、
工程1:被塗物にカチオン電着塗装を行って塗膜を形成する工程、
工程2:工程1による塗膜の表面を水洗した後、セッティング、又はエアーブローの手段によって被塗物の水分を除去する工程、
工程3:浸漬(ディップ)槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし、該水洗槽に被塗物を浸漬して、被塗物の水洗と同時にウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する工程、
工程4: 被塗物にエアーブロー、及び/又は前後又は上下に揺らす揺動を加えることを施して、余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去したり、被塗物の隙間部や袋部に浸透させる工程、
工程5:加熱して、塗膜を乾燥硬化する工程、からなる複層塗膜形成方法。
【選択図】 なし
【解決手段】以下の工程、
工程1:被塗物にカチオン電着塗装を行って塗膜を形成する工程、
工程2:工程1による塗膜の表面を水洗した後、セッティング、又はエアーブローの手段によって被塗物の水分を除去する工程、
工程3:浸漬(ディップ)槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし、該水洗槽に被塗物を浸漬して、被塗物の水洗と同時にウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する工程、
工程4: 被塗物にエアーブロー、及び/又は前後又は上下に揺らす揺動を加えることを施して、余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去したり、被塗物の隙間部や袋部に浸透させる工程、
工程5:加熱して、塗膜を乾燥硬化する工程、からなる複層塗膜形成方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チッピングプライマー塗布工程を省略でき、被塗物の最終的な洗浄効果、耐チッピング性、仕上がり性に優れる複層塗膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現在自動車塗装分野において、商品性向上、環境対応、コスト最適化等の各視点から、さまざまな開発、取り込みがなされている。例えば、環境面においてはVOC(揮発性有機物質)低減のための中/上塗り塗料の水性化、粉体化や中塗りレスといった生産環境面での検討や、電着塗膜から鉛、錫フリー化といった製品環境面で有害金属フリー化に関する検討が進められている。
【0003】
またコスト面においては、ユーザーに安価な製品を提供するために、図1のような自動車ボディの生産工程の見直し、材料の低コスト化などの製造原価改善に関する取り組みが行われている。
【0004】
一方、塗膜品質面では飛び石による塗膜剥離(いわゆる耐チッピング性)の向上が望まれており、従来の発明として、カチオン電着塗料を塗装してなる未硬化塗膜面に、ポリウレタンエマルションを含有する水性プライマーを塗装し、さらに有機溶剤型の中塗り又は上塗り塗料を塗装し、該3層塗膜を同時に硬化させて複層塗膜を形成する方法に関して、特開平6−41787号公報が挙げられる。
【0005】
またカチオン電着塗料を塗装してなる未硬化面に、耐チッピングプライマーを塗装し、さらに中塗り塗料又は上塗り塗料を塗装し、該3層塗膜を同時に硬化させて複層塗膜を形成する方法であって、カチオン電着塗膜の塗膜減量が10重量%以下となる塗料で、かつ塗膜の最小溶融粘度が104〜108cpsである塗膜形成方法に関する発明として、特開平6−65791号公報が挙げられる。
【0006】
カチオン電着塗料を塗装してなる未硬化面に、形成塗膜の動的ガラス転移温度が−30〜−60℃である変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とするバリアコートを塗装し、さらに有機溶剤型の中塗り又は上塗り塗料を塗装し、該3層塗膜を同時に硬化させて複層塗膜を形成する方法で、カチオン電着塗膜の塗膜減量が10重量%以下となる塗料で、有機溶剤型の塗料がポリエステル系樹脂とアミノ樹脂と脂環式エポキシ化合物を含有する発明として、特開平6−10190号公報が挙げられる。
【0007】
他に、電着塗装面にポリオレフィン系の樹脂を含む塗料を塗布し、このポリオレフィン系の樹脂を含む塗料が湿潤状態である間に、この湿潤面にメタリックカラー塗料とクリア塗料とを順次塗布する上塗り塗装を行い、同時に焼き付ける発明として特開平10−94753号公報がある。
【0008】
しかしこれらの発明は、水性プライマー、及びポリオレフィン系の樹脂を含む塗料を塗装する設備やスペースを確保しなければならない、また水性プライマー、及びポリオレフィン系の樹脂の湿潤面(未硬化面)に上塗り塗料を塗装するために、混層やタレなどによって仕上がり性の低下を招くことがあった。このようなことから既存の設備、工程を流用して、仕上がり性が良好な塗膜形成方法が求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決すべく本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、従来からあるカチオン電着塗料の塗装設備を利用し、回収液の水洗後、最終水洗工程における浸漬(ディップ)水洗槽にウレタン樹脂の水分散体を満たし、電着塗装後の被塗物を浸漬することによって、被塗物の最終的な洗浄効果、及び耐チッピング性や仕上がり性に優れる複層塗膜を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1. 以下の工程、
工程1:被塗物にカチオン電着塗装を行って塗膜を形成する工程、
工程2:工程1による塗膜の表面を水洗した後、セッティング、又はエアーブローの手段によって被塗物の水分を除去する工程、
工程3:浸漬(ディップ)槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし、該水洗槽に被塗物を浸漬して、被塗物の水洗と同時にウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する工程、
工程4: 被塗物にエアーブロー、及び/又は前後又は上下に揺らす揺動を加えることを施して、余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去したり、被塗物の隙間部や袋部に浸透させる工程、
工程5:加熱して塗膜を乾燥硬化する工程、
からなる複層塗膜形成方法。
2.1項に記載の工程5が、さらに中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料を塗装し、複層からなる塗膜を同時に焼付け硬化する工程である複層塗膜形成方法、
3.ウレタン樹脂の水分散体(A)の動的ガラス転移温度が、0℃以下である1項、又は2項に記載の複層塗膜形成方法。
4.ウレタン樹脂の水分散体(A)がノニオン性、又はカチオン性である1項乃至3項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
5.工程3の浸漬槽のウレタン樹脂の水分散体(A)の固形分が、10重量%以下である1項乃至4項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
6.工程4で得られるウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜の膜厚が、0.5〜20μmである1項乃至5項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
7.中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料が水性である2項乃至6項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
8.被塗物が自動車ボディであって、工程3のウレタン樹脂の水分散体(A)に浸漬する工程が、自動車ボディの一部分のみを浸漬する1項乃至7項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について工程1〜工程5について説明する。
【0012】
工程1:被塗物にカチオン電着塗装を行って塗膜を形成する工程である。
電着槽にカチオン電着塗料を満たして、電着塗装を行うことによって塗膜を形成する。
【0013】
被塗物は、電着塗装することが可能な金属表面を有する素材であれば、その種類は何ら制限を受けず、例えば、鉄、アルミニウム、錫、亜鉛ならびにこれらの金属を含む合金などで、具体的には自動車ボディ、部品、電気製品、建材などが挙げられる。これらの導電性被塗物は、電着塗料を塗装する前にリン酸亜鉛などの表面処理を施しておくことが防食性の向上に好ましい。
【0014】
カチオン電着塗料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの水酸基およびイオン性基を導入し、中和・水分散によりエマルション化された基体樹脂が使用できる。エマルション中に硬化剤を含んでも、また硬化剤を含まなくてもかまわない。さらに分散用樹脂を用いて顔料や触媒などを分散して得られる顔料ペーストを配合することもできる。
【0015】
上記の水酸基を有する基体樹脂として、防食性に優れていることからエポキシ樹脂を出発物質に用い、アミン化合物を付加して得られるカチオン性のアミン付加エポキシ樹脂が多く使用されている。
【0016】
エポキシ樹脂の平均分子量としては特に通常と異ならず、平均分子量で1,000〜10,000、さらには2,000〜5,000が好ましく、平均分子量が10,000を超える場合には樹脂粘度が高くなり、焼き付け時の熱流動性の低下により電着塗膜の仕上がり性において不具合を生じ、平均分子量が1,000未満の場合にはアミン付加量によるアミン価の調整が困難となり、エマルション分散性の低下の不具合を生じる危険がある。
【0017】
次にアミン化合物としては、1級モノ−及びポリアミン、2級モノ−及びポリアミン又は1、2級混合ポリアミン、ケチミン化された1級アミノ基を有する2級モノ−及びポリアミン、ケチミン化された1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物等が挙げられ、具体的には、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミンのケチミン化物などを用いるのが好ましい。
【0018】
上記アミン付加エポキシ樹脂をそのまま使用しても構わないが、勿論、可塑化変性されたエポキシ樹脂を使用しても良い。エポキシ樹脂の可塑化変性剤としてはエポキシ樹脂との相溶性があり、かつ疎水性のものが好ましく、変性方法としては末端エポキシ基に上記アミン化合物と同様に反応させることが好ましい。
【0019】
変性量としては可塑化に必要な最少量に留める必要があり、エポキシ樹脂100重量部に対し5〜50重量部、さらには10〜30重量部が好ましい。好ましい変性剤の例としては、エポキシ基との反応性を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂やポリカプロラクトンが挙げられる。
【0020】
出発材料として用いられるエポキシ樹脂としては、塗膜の防食性等の観点から、特に、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が好適である。
【0021】
該エポキシ樹脂の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、従来のものと同様のものが使用でき、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
【0022】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式
【0023】
【化1】
ここでn=0〜8で示されるものが好適である。
【0024】
エポキシ樹脂は、一般に180〜2,500、好ましくは200〜2,000であり、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有することができ、また、一般に少なくとも200、特に400〜4,000、さらに特に800〜2,500の範囲内の数平均分子量を有するものが適している。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社からエピコート828EL、同左1002、同左1004、同左1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0025】
本発明の塗膜形成方法に用いるカチオン電着塗料は、硬化剤として使用されるブロック化ポリイシアネートとしては、シーラーや上塗り塗膜と一体化して硬化するため、130℃以上で硬化するものが使用される。例えば、アルコール類でブロックした芳香族ポリイソシアネート、あるいはオキシムでブロックした脂肪族ポリイソシアネートや脂環式ポリイソシアネートなどが代表的である。
【0026】
アミン付加エポキシ樹脂は有機酸で中和されカチオン化される。この有機酸としては、低級カルボン酸、特に、酢酸、ギ酸又はこれらの混合物が好適であり、これらの酸の使用により、形成される塗料組成物の均一塗装性、防錆性、仕上がり性、塗料の安定性が向上する。
【0027】
カチオン電着塗料には、従来からカチオン電着塗料に使用されている顔料であれば、特に制限なく配合することができ、例えば、酸化チタン、カ−ボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレ−、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカ等の体質顔料;塩基性珪酸鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、五酸化アンチモン等の防錆顔料;が挙げられる。
【0028】
さらに、腐食抑制剤としてビスマス化合物を含有することができ、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、乳酸ビスマスが挙げられる。他に目的に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤などを加えることができる。これらの顔料類の配合量は、基体樹脂と硬化剤との合計固形分100重量部あたり、1〜100重量部、特に10〜50重量部の範囲内が好ましい。
【0029】
上記、カチオン電着塗料は、カチオン電着塗装によって所望の基材表面に塗装することができる。カチオン電着塗装は、一般には、固形分濃度が約5〜40重量%、好ましくは15〜25重量%となるように脱イオン水などで希釈し、さらにpHを5.5〜9.0の範囲内に調整したカチオン電着浴を、通常、浴温15〜35℃に調整し、負荷電圧100〜400Vの条件で行うことができる。
【0030】
カチオン電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、硬化塗膜に基づいて10〜40μm、特に15〜35μmの範囲内が好ましい。
【0031】
工程2:工程1による塗膜の表面を水洗した後、セッティング、又はエアーブローの手段によって被塗物の水分を除去する工程である。
UF濾液を用いた回収液による洗浄として、回収液によるスプレー洗浄、回収液による浸漬洗浄、及び少なくとも1つの工業用水、あるいは純水による洗浄を行うことによって、複雑な構造を有する被塗物において隙間部や合わせ目に残る塗料を洗い落す。次に、セッテイング、エアーブロー、プレヒートの少なくとも1種類の手段を用いて、被塗物の水分を除去する。
【0032】
工程3:浸漬(ディップ)槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし、該水洗槽に被塗物を浸漬して、被塗物の水洗と同時にウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する工程である。
【0033】
詳しくは、カチオン電着塗料の塗装ラインにおける最終水洗の浸漬(ディップ)水洗槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし(図2の21)、該水洗槽に被塗物を浸漬してウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する。
浸漬槽のウレタン樹脂の水分散体(A)の固形分としては、10重量%以下、好ましくは5%以下で最終の水洗効果とウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成するにはよい。
【0034】
浸漬槽のウレタン樹脂の水分散体(A)の固形分としては、10重量%を越えると被塗物の仕上がり性を損なったり、持ち出し量が増えるので好ましくない。被膜の膜厚は0.5〜20μmの範囲、好ましくは2〜15μmであることが、耐チッピング性や防錆性、仕上がり性の為には好ましい。
【0035】
ウレタン樹脂の水分散体(A)としては、脂肪族および/または脂環族ジイソシアネート、数平均分子量が500〜5,000のポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物を反応させてなる生成物を使用したウレタンエマルションである。
【0036】
ウレタンエマルションは、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素を持たない親水性有機溶剤の存在下または非存在下で、脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネート、数平均分子量が500〜5,000のポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物を、NCO/OH当量費が1.1〜1.9の比率で、ワンショット法または多段法により重合させてウレタンプレポリマーを合成し、ついで該プレポリマーをアミンと水と混合してアミン伸長反応を行なわしめ、次いでノニオン性あるいはカチオン性の乳化剤と混合して水を加えることで乳化分散させた後、必要により前記有機溶剤を留去することにより調製される動的ガラス転移温度(注1)が0℃以下、平均粒径(注2)0.001〜3μm程度のウレタンエマルションが得られる。
また、ウレタン樹脂骨格中にノニオン性、カチオン性の官能基を有するポリオールを用いることにより、乳化剤を用いずにウレタンエマルションが得られる。
【0037】
(注1)動的ガラス転移温度:動的ガラス転移温度ついては、ウレタンエマルションを5mm×20mm×20μmの短冊状にして、UBM−V4スペクトルメーター、有限会社ユービーエム社製、商品名、自動動的粘弾性測定装置にて動的ガラス転移温度を求めた。
【0038】
(注2)平均粒径:平均粒径は、ナノサイザーN4、コールター社製、商品名を用いて測定した。
【0039】
なおウレタンプレポリマーの製造に用いられる脂肪族および/または脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなど;
炭素数4〜18の脂環族ジイソシアネート、例えば1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4´−ジイソシアネートなど;
これらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)、及びこれらの2種以上の混合物などがあげられる。このうち好ましいものは、脂環族ジイソシアネートで、特に、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)および4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。該成分として芳香族ジイソシアネートを用いると塗膜の焼き付け硬化時に塗膜が黄変しやすく、また塗膜が紫外線の影響により変色しやすいので好ましくない。
【0040】
ウレタンエマルションの市販品としては、スーパーフレックス E−2000、スーパーフレックス E−2500、スーパーフレックス E−4000、スーパーフレックス E−4500、スーパーフレックス R−3000、スーパーフレックス R−5000、スーパーフレックス R−5100以上、第一工業製薬社製、商品名、ケミチレンGA−2、ケミチレンGA−4、パーマリンUC−20、三洋化成株式会社製、商品名、アデカボンタイターHUX−670、アデカボンタイターHUX−680、アデカボンタイターHUX−800、旭電化株式会社製、商品名、タケラックW−512A6、タケラックW−635、三井武田株式会社製、商品名、等が挙げられる。
【0041】
工程4: 被塗物にエアーブロー、及び/又は前後又は上下に揺らす揺動を加えることを施して余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去したり、被塗物の隙間部や袋部に浸透させる工程である。
そのことにより余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去するほかに、カチオン電着塗膜のガス穴にウレタン樹脂の水分散体(A)を浸透させ、仕上がり性や耐チッピング性に対する効果、被塗物の袋部やクリアランス部にウレタン樹脂の水分散体(A)を浸透させる効果などが得られる。
被塗物を前後に揺らしたり、又は被塗物を上下揺らしたりする揺動を与えるには、被塗物の搬送に用いるハンガーレールを波状にして揺動を与える方法、個々のハンガー自体に可動性を持たせて揺動を与える方法が挙げられる。
【0042】
工程5:加熱して、塗膜を乾燥硬化する工程である。
加熱温度は、約120〜200℃、好ましくは約150〜180℃の範囲、加熱時間は1〜120分間、好ましくは20〜60分間が好ましい。加熱手段としては、特にこだわらず、電気炉、ガス炉などの直接、または間接の熱風乾燥方法、赤外線や遠赤外線による加熱方法、高周波による誘導加熱方法によるものが挙げられ、ゴミやホコリ対策として赤外線や遠赤外線による加熱方法を行った後、熱風乾燥方法を行うこともできる。
【0043】
またさらに乾燥した塗膜上に、中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料を塗装して複層からなる塗膜を形成することもできる。中塗り塗料としては、水性、又は有機溶剤型の中塗り塗料や上塗り塗料が挙げられるが、環境対策からエマルションやカルボキシル基や水酸基を含有するアクリル樹脂やポリエステル樹脂などの水分散体からなる水性塗料であることが好ましい。
【0044】
上塗り塗料としては、ソリッドカラーの上塗り塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装(これらは静電印加していてもよい)などの方法によって膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmとなるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間、加熱乾燥してなる1コート1ベーク方法;
1層以上の着色ベース塗料を塗装し、次ぎにその未硬化、又は硬化面に1層以上のクリア塗料を塗装する方法として、具体的には、着色ベース塗料を、膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmとなるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、クリア塗料を膜厚が約10〜70μmになるように塗装し、約60〜160℃、好ましくは約80〜140℃で、約10〜90分間加熱して架橋硬化させることからなる、2コート1ベーク方式(2C1B)又は2コート2ベーク方式(2C2B)、3コート1ベーク方式(3C1B)、3コート2ベーク方式(3C2B)、又は3コート3ベーク方式(3C3B)が挙げられる。
【0045】
【発明の効果】本発明の複層塗膜形成方法によると、混層やタレなどによって仕上がり性の低下を招くことなく仕上がり性が良好で、かつ既存の設備や工程を流用して、又はわずかの改良のみで、耐チッピング性機能を有する被膜を形成できる。
そのことからチッピングプライマー塗布工程、焼付け、作業人材や設備などの省工程化、省エネルギー化が可能である。
【0046】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
【0047】
製造例1 アミン付加エポキシ樹脂の製造
エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂)1000部、ビスフェノールA 390部、ジメチルベンジルアミノ0.2部を加え、130℃でエポキシ当量755になるまで反応させた。
次にε−カプロラクトン260部、テトラブトキシチタン0.03部を加え、170℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングを行い赤外吸収スペクトル測定において未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98質量%以上になった時点で120℃に温度を下げた。
次にジエタノールアミン160部、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルジケチミン化物65部を加え、120℃で4時間反応させ、ブチルセルソルブ470部を加え、アミン価57mgKOH/g、樹脂固形分80質量%のアミン付加エポキシ樹脂を得た。
【0048】
製造例2 カチオン電着用のエマルションの製造
上記、製造例1で得られたアミン付加エポキシ樹脂No.1を87.5部(樹脂固形分で70g)、硬化剤としてメチルエチルケトオキシムでブロックしたヘキサメチレンジイソシアネートトリイソヌレート 33.3g(樹脂固形分で30部)、サンニックスPP−1000 (三洋化成株式会社製、商品名、表面調整剤)1部、中和剤として酢酸1.5g(中和価14に相当)を配合し、強く攪拌しながら脱イオン水 174部を約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着用のエマルションを得た。
【0049】
製造例3 顔料分散ペーストの製造
4級アンモニウム塩型エポキシ系の顔料分散用樹脂 4.67部(固形分3.5部)、酸化チタン14.5部、水酸化ビスマス2.0部、トリポリリン酸アルミニウム 2部、精製クレー 7.0部、カーボンブラック0.5部、有機錫1.0部、脱イオン水 23.8部を加えて分散し、固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
【0050】
製造例4 カチオン電着塗料の製造
カチオン電着塗料用のエマルション 297部(固形分101部)に、顔料分散ペーストを 55.5 部(固形分 30.5部)、脱イオン水 305部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料を得た。
【0051】
被塗物について
亜鉛メッキ鋼板をフード、フェンダー、ドアに使用した自動車ボディを用い、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理)を施した後、実施例、及び比較例の工程に供した。試験には、フードからパネル状(15×20cm)に裁断して性能試験を行った。
【0052】
実施例及び比較例
実施例1
工程1:製造例4で得たカチオン電着塗料を電着槽に入れ、被塗物のフードの膜厚が20μmとなるように電着塗装を行った(図2の1)。
工程2:被塗物の洗浄を行い(図2の2〜6)、エアブローを施した(図2の20)。
工程3:10%に希釈したスーパーフレックスE−4000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−58℃)を浸漬槽(図2の21)に満たし、被塗物を全没して浸漬した(図2の21)。
工程4:エアーブロー(図2の22)、及び揺動を行う(図2の23)を施した。
工程5:乾燥炉にて170℃−20分間加熱し、塗膜を硬化乾燥した(図2の9)。
中・上塗り塗装工程:さらにTP−65−2(関西ペイント株式会社製、商品名、中塗り塗料)を30μm塗装して140℃で30分硬化乾燥し、マジクロンTB−515(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗りベース塗料)を15μm施し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、クリア塗料)を膜厚35μmに塗装し、140℃で30分加熱してこの両塗膜を一緒に硬化した(図2の13〜16)。
【0053】
実施例2
実施例1の工程3で用いたスーパーフレックスE−4000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−58℃)の代わりに、スーパーフレックスE−2000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−38℃)を用いる以外は同様工程内容にて、複層の塗膜を得た。
【0054】
実施例3
実施例1の工程3で用いたスーパーフレックスE−4000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−58℃)の代わりに、スーパーフレックスE−4500(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−34℃)を用いる以外は同様工程内容にて、複層の塗膜を得た。
【0055】
比較例 1
工程1:製造例4で得たカチオン電着塗料を電着槽に入れ、被塗物にカチオン電着塗装を行った(図1の1)。
工程2:被塗物の洗浄を行った(図1の2〜8)。
工程3:なし
工程4:なし
工程5:乾燥炉にて170℃−20分間加熱し、塗膜を硬化乾燥した(図1の9)。
中塗り・上塗り塗装工程:さらに TP−65−2(関西ペイント株式会社製、商品名、中塗り塗料)を30μm塗装して140℃で30分硬化乾燥し、マジクロンTB−515(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗りベース塗料)を15μm施し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、クリア塗料)を膜厚35μmに塗装し、140℃で30分加熱してこの両塗膜を一緒に硬化した(図1の13〜16)。
【0056】
比較例 2
工程1:製造例4で得たカチオン電着塗料を電着槽に入れ、被塗物にカチオン電着塗装を行った(図1の1)。
工程2:被塗物の洗浄を行った(図1の2〜7)。
工程3:なし
工程4:なし
工程5:乾燥炉にて170℃−20分間加熱し、塗膜を硬化乾燥した(図1の9)。
チッピングプライマー塗布工程:チッピングプライマーを塗布して、乾燥した(図1の10〜11)。
中塗り・上塗り塗装工程:さらにTP−65−2(関西ペイント株式会社製、商品名、中塗り塗料)を30μm塗装して140℃で30分硬化乾燥し、マジクロンTB−515(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗りベース塗料)を15μm施し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、クリア塗料)を膜厚35μmに塗装し、140℃で30分加熱してこの両塗膜を一緒に硬化した(図1の13〜16)。
【0057】
実施例、比較例についての性能を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(注4)耐チッピング性:飛石試験機 JA−400型(スガ試験機社製、商品名、チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、0.392MPa(4kgf/cm2)の圧縮空気により粒度7号の花崗岩砕石50gを塗面に吹き付け、これによる塗膜のキズの発生程度などを目視で観察し評価した。
評価:塗膜状態
◎:キズの大きさはかなり小さく、上塗り塗膜の着色面がわずかに露出している程度
○:キズの大きさは小さく、上塗り塗膜の着色面が露出している程度
△:キズの大きさは小さいが、電着面が露出している
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板が露出している。
【0060】
(注5)衝撃性:デュポン式の衝撃試験機を用い、撃心1/2インチ、荷重500gで塗膜がワレる落下高さを測定した。
【0061】
(注6)耐水性:工程 1 〜工程 5 により作成した塗板を用いて、50℃のブリスターボックスに入れて、試験後、2mm角のゴバン目を切り、セロハンテープにて剥離試験を行った
○:問題なく良好
△:90〜99/100個の剥がれがみらる
×:90個未満/100個の剥がれがみらる。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の塗装ライン工程図である。
【0063】
【図2】本発明の塗装ライン工程図である。
【符号の説明】
1.電着槽
2.回収液によるスプレー洗浄
3.回収液によるスプレー洗浄
4.回収液による浸漬洗浄
5.工業用水によるスプレー洗浄
6.工業用水によるスプレー洗浄
7.工業用水による浸漬洗浄
8.純水シャワー
9.乾燥炉
10.チッピングプライマーを塗布する工程である。
11.チッピングプライマーの乾燥炉である。
12.中塗り塗料の塗装
13.中塗り塗料の乾燥炉
14.上塗り塗料の塗装
15.上塗り塗料の乾燥炉
20.エアブロー、又はセッティング
21.ウレタンエマルションの浸漬槽
22.エアブロー
23.被塗物を揺らす揺動
【発明の属する技術分野】本発明は、チッピングプライマー塗布工程を省略でき、被塗物の最終的な洗浄効果、耐チッピング性、仕上がり性に優れる複層塗膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現在自動車塗装分野において、商品性向上、環境対応、コスト最適化等の各視点から、さまざまな開発、取り込みがなされている。例えば、環境面においてはVOC(揮発性有機物質)低減のための中/上塗り塗料の水性化、粉体化や中塗りレスといった生産環境面での検討や、電着塗膜から鉛、錫フリー化といった製品環境面で有害金属フリー化に関する検討が進められている。
【0003】
またコスト面においては、ユーザーに安価な製品を提供するために、図1のような自動車ボディの生産工程の見直し、材料の低コスト化などの製造原価改善に関する取り組みが行われている。
【0004】
一方、塗膜品質面では飛び石による塗膜剥離(いわゆる耐チッピング性)の向上が望まれており、従来の発明として、カチオン電着塗料を塗装してなる未硬化塗膜面に、ポリウレタンエマルションを含有する水性プライマーを塗装し、さらに有機溶剤型の中塗り又は上塗り塗料を塗装し、該3層塗膜を同時に硬化させて複層塗膜を形成する方法に関して、特開平6−41787号公報が挙げられる。
【0005】
またカチオン電着塗料を塗装してなる未硬化面に、耐チッピングプライマーを塗装し、さらに中塗り塗料又は上塗り塗料を塗装し、該3層塗膜を同時に硬化させて複層塗膜を形成する方法であって、カチオン電着塗膜の塗膜減量が10重量%以下となる塗料で、かつ塗膜の最小溶融粘度が104〜108cpsである塗膜形成方法に関する発明として、特開平6−65791号公報が挙げられる。
【0006】
カチオン電着塗料を塗装してなる未硬化面に、形成塗膜の動的ガラス転移温度が−30〜−60℃である変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とするバリアコートを塗装し、さらに有機溶剤型の中塗り又は上塗り塗料を塗装し、該3層塗膜を同時に硬化させて複層塗膜を形成する方法で、カチオン電着塗膜の塗膜減量が10重量%以下となる塗料で、有機溶剤型の塗料がポリエステル系樹脂とアミノ樹脂と脂環式エポキシ化合物を含有する発明として、特開平6−10190号公報が挙げられる。
【0007】
他に、電着塗装面にポリオレフィン系の樹脂を含む塗料を塗布し、このポリオレフィン系の樹脂を含む塗料が湿潤状態である間に、この湿潤面にメタリックカラー塗料とクリア塗料とを順次塗布する上塗り塗装を行い、同時に焼き付ける発明として特開平10−94753号公報がある。
【0008】
しかしこれらの発明は、水性プライマー、及びポリオレフィン系の樹脂を含む塗料を塗装する設備やスペースを確保しなければならない、また水性プライマー、及びポリオレフィン系の樹脂の湿潤面(未硬化面)に上塗り塗料を塗装するために、混層やタレなどによって仕上がり性の低下を招くことがあった。このようなことから既存の設備、工程を流用して、仕上がり性が良好な塗膜形成方法が求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決すべく本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、従来からあるカチオン電着塗料の塗装設備を利用し、回収液の水洗後、最終水洗工程における浸漬(ディップ)水洗槽にウレタン樹脂の水分散体を満たし、電着塗装後の被塗物を浸漬することによって、被塗物の最終的な洗浄効果、及び耐チッピング性や仕上がり性に優れる複層塗膜を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1. 以下の工程、
工程1:被塗物にカチオン電着塗装を行って塗膜を形成する工程、
工程2:工程1による塗膜の表面を水洗した後、セッティング、又はエアーブローの手段によって被塗物の水分を除去する工程、
工程3:浸漬(ディップ)槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし、該水洗槽に被塗物を浸漬して、被塗物の水洗と同時にウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する工程、
工程4: 被塗物にエアーブロー、及び/又は前後又は上下に揺らす揺動を加えることを施して、余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去したり、被塗物の隙間部や袋部に浸透させる工程、
工程5:加熱して塗膜を乾燥硬化する工程、
からなる複層塗膜形成方法。
2.1項に記載の工程5が、さらに中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料を塗装し、複層からなる塗膜を同時に焼付け硬化する工程である複層塗膜形成方法、
3.ウレタン樹脂の水分散体(A)の動的ガラス転移温度が、0℃以下である1項、又は2項に記載の複層塗膜形成方法。
4.ウレタン樹脂の水分散体(A)がノニオン性、又はカチオン性である1項乃至3項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
5.工程3の浸漬槽のウレタン樹脂の水分散体(A)の固形分が、10重量%以下である1項乃至4項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
6.工程4で得られるウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜の膜厚が、0.5〜20μmである1項乃至5項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
7.中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料が水性である2項乃至6項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
8.被塗物が自動車ボディであって、工程3のウレタン樹脂の水分散体(A)に浸漬する工程が、自動車ボディの一部分のみを浸漬する1項乃至7項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について工程1〜工程5について説明する。
【0012】
工程1:被塗物にカチオン電着塗装を行って塗膜を形成する工程である。
電着槽にカチオン電着塗料を満たして、電着塗装を行うことによって塗膜を形成する。
【0013】
被塗物は、電着塗装することが可能な金属表面を有する素材であれば、その種類は何ら制限を受けず、例えば、鉄、アルミニウム、錫、亜鉛ならびにこれらの金属を含む合金などで、具体的には自動車ボディ、部品、電気製品、建材などが挙げられる。これらの導電性被塗物は、電着塗料を塗装する前にリン酸亜鉛などの表面処理を施しておくことが防食性の向上に好ましい。
【0014】
カチオン電着塗料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの水酸基およびイオン性基を導入し、中和・水分散によりエマルション化された基体樹脂が使用できる。エマルション中に硬化剤を含んでも、また硬化剤を含まなくてもかまわない。さらに分散用樹脂を用いて顔料や触媒などを分散して得られる顔料ペーストを配合することもできる。
【0015】
上記の水酸基を有する基体樹脂として、防食性に優れていることからエポキシ樹脂を出発物質に用い、アミン化合物を付加して得られるカチオン性のアミン付加エポキシ樹脂が多く使用されている。
【0016】
エポキシ樹脂の平均分子量としては特に通常と異ならず、平均分子量で1,000〜10,000、さらには2,000〜5,000が好ましく、平均分子量が10,000を超える場合には樹脂粘度が高くなり、焼き付け時の熱流動性の低下により電着塗膜の仕上がり性において不具合を生じ、平均分子量が1,000未満の場合にはアミン付加量によるアミン価の調整が困難となり、エマルション分散性の低下の不具合を生じる危険がある。
【0017】
次にアミン化合物としては、1級モノ−及びポリアミン、2級モノ−及びポリアミン又は1、2級混合ポリアミン、ケチミン化された1級アミノ基を有する2級モノ−及びポリアミン、ケチミン化された1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物等が挙げられ、具体的には、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミンのケチミン化物などを用いるのが好ましい。
【0018】
上記アミン付加エポキシ樹脂をそのまま使用しても構わないが、勿論、可塑化変性されたエポキシ樹脂を使用しても良い。エポキシ樹脂の可塑化変性剤としてはエポキシ樹脂との相溶性があり、かつ疎水性のものが好ましく、変性方法としては末端エポキシ基に上記アミン化合物と同様に反応させることが好ましい。
【0019】
変性量としては可塑化に必要な最少量に留める必要があり、エポキシ樹脂100重量部に対し5〜50重量部、さらには10〜30重量部が好ましい。好ましい変性剤の例としては、エポキシ基との反応性を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂やポリカプロラクトンが挙げられる。
【0020】
出発材料として用いられるエポキシ樹脂としては、塗膜の防食性等の観点から、特に、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が好適である。
【0021】
該エポキシ樹脂の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、従来のものと同様のものが使用でき、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
【0022】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式
【0023】
【化1】
ここでn=0〜8で示されるものが好適である。
【0024】
エポキシ樹脂は、一般に180〜2,500、好ましくは200〜2,000であり、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有することができ、また、一般に少なくとも200、特に400〜4,000、さらに特に800〜2,500の範囲内の数平均分子量を有するものが適している。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社からエピコート828EL、同左1002、同左1004、同左1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0025】
本発明の塗膜形成方法に用いるカチオン電着塗料は、硬化剤として使用されるブロック化ポリイシアネートとしては、シーラーや上塗り塗膜と一体化して硬化するため、130℃以上で硬化するものが使用される。例えば、アルコール類でブロックした芳香族ポリイソシアネート、あるいはオキシムでブロックした脂肪族ポリイソシアネートや脂環式ポリイソシアネートなどが代表的である。
【0026】
アミン付加エポキシ樹脂は有機酸で中和されカチオン化される。この有機酸としては、低級カルボン酸、特に、酢酸、ギ酸又はこれらの混合物が好適であり、これらの酸の使用により、形成される塗料組成物の均一塗装性、防錆性、仕上がり性、塗料の安定性が向上する。
【0027】
カチオン電着塗料には、従来からカチオン電着塗料に使用されている顔料であれば、特に制限なく配合することができ、例えば、酸化チタン、カ−ボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレ−、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカ等の体質顔料;塩基性珪酸鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、五酸化アンチモン等の防錆顔料;が挙げられる。
【0028】
さらに、腐食抑制剤としてビスマス化合物を含有することができ、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、乳酸ビスマスが挙げられる。他に目的に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤などを加えることができる。これらの顔料類の配合量は、基体樹脂と硬化剤との合計固形分100重量部あたり、1〜100重量部、特に10〜50重量部の範囲内が好ましい。
【0029】
上記、カチオン電着塗料は、カチオン電着塗装によって所望の基材表面に塗装することができる。カチオン電着塗装は、一般には、固形分濃度が約5〜40重量%、好ましくは15〜25重量%となるように脱イオン水などで希釈し、さらにpHを5.5〜9.0の範囲内に調整したカチオン電着浴を、通常、浴温15〜35℃に調整し、負荷電圧100〜400Vの条件で行うことができる。
【0030】
カチオン電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、硬化塗膜に基づいて10〜40μm、特に15〜35μmの範囲内が好ましい。
【0031】
工程2:工程1による塗膜の表面を水洗した後、セッティング、又はエアーブローの手段によって被塗物の水分を除去する工程である。
UF濾液を用いた回収液による洗浄として、回収液によるスプレー洗浄、回収液による浸漬洗浄、及び少なくとも1つの工業用水、あるいは純水による洗浄を行うことによって、複雑な構造を有する被塗物において隙間部や合わせ目に残る塗料を洗い落す。次に、セッテイング、エアーブロー、プレヒートの少なくとも1種類の手段を用いて、被塗物の水分を除去する。
【0032】
工程3:浸漬(ディップ)槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし、該水洗槽に被塗物を浸漬して、被塗物の水洗と同時にウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する工程である。
【0033】
詳しくは、カチオン電着塗料の塗装ラインにおける最終水洗の浸漬(ディップ)水洗槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし(図2の21)、該水洗槽に被塗物を浸漬してウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する。
浸漬槽のウレタン樹脂の水分散体(A)の固形分としては、10重量%以下、好ましくは5%以下で最終の水洗効果とウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成するにはよい。
【0034】
浸漬槽のウレタン樹脂の水分散体(A)の固形分としては、10重量%を越えると被塗物の仕上がり性を損なったり、持ち出し量が増えるので好ましくない。被膜の膜厚は0.5〜20μmの範囲、好ましくは2〜15μmであることが、耐チッピング性や防錆性、仕上がり性の為には好ましい。
【0035】
ウレタン樹脂の水分散体(A)としては、脂肪族および/または脂環族ジイソシアネート、数平均分子量が500〜5,000のポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物を反応させてなる生成物を使用したウレタンエマルションである。
【0036】
ウレタンエマルションは、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素を持たない親水性有機溶剤の存在下または非存在下で、脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネート、数平均分子量が500〜5,000のポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物を、NCO/OH当量費が1.1〜1.9の比率で、ワンショット法または多段法により重合させてウレタンプレポリマーを合成し、ついで該プレポリマーをアミンと水と混合してアミン伸長反応を行なわしめ、次いでノニオン性あるいはカチオン性の乳化剤と混合して水を加えることで乳化分散させた後、必要により前記有機溶剤を留去することにより調製される動的ガラス転移温度(注1)が0℃以下、平均粒径(注2)0.001〜3μm程度のウレタンエマルションが得られる。
また、ウレタン樹脂骨格中にノニオン性、カチオン性の官能基を有するポリオールを用いることにより、乳化剤を用いずにウレタンエマルションが得られる。
【0037】
(注1)動的ガラス転移温度:動的ガラス転移温度ついては、ウレタンエマルションを5mm×20mm×20μmの短冊状にして、UBM−V4スペクトルメーター、有限会社ユービーエム社製、商品名、自動動的粘弾性測定装置にて動的ガラス転移温度を求めた。
【0038】
(注2)平均粒径:平均粒径は、ナノサイザーN4、コールター社製、商品名を用いて測定した。
【0039】
なおウレタンプレポリマーの製造に用いられる脂肪族および/または脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなど;
炭素数4〜18の脂環族ジイソシアネート、例えば1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4´−ジイソシアネートなど;
これらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)、及びこれらの2種以上の混合物などがあげられる。このうち好ましいものは、脂環族ジイソシアネートで、特に、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)および4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。該成分として芳香族ジイソシアネートを用いると塗膜の焼き付け硬化時に塗膜が黄変しやすく、また塗膜が紫外線の影響により変色しやすいので好ましくない。
【0040】
ウレタンエマルションの市販品としては、スーパーフレックス E−2000、スーパーフレックス E−2500、スーパーフレックス E−4000、スーパーフレックス E−4500、スーパーフレックス R−3000、スーパーフレックス R−5000、スーパーフレックス R−5100以上、第一工業製薬社製、商品名、ケミチレンGA−2、ケミチレンGA−4、パーマリンUC−20、三洋化成株式会社製、商品名、アデカボンタイターHUX−670、アデカボンタイターHUX−680、アデカボンタイターHUX−800、旭電化株式会社製、商品名、タケラックW−512A6、タケラックW−635、三井武田株式会社製、商品名、等が挙げられる。
【0041】
工程4: 被塗物にエアーブロー、及び/又は前後又は上下に揺らす揺動を加えることを施して余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去したり、被塗物の隙間部や袋部に浸透させる工程である。
そのことにより余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去するほかに、カチオン電着塗膜のガス穴にウレタン樹脂の水分散体(A)を浸透させ、仕上がり性や耐チッピング性に対する効果、被塗物の袋部やクリアランス部にウレタン樹脂の水分散体(A)を浸透させる効果などが得られる。
被塗物を前後に揺らしたり、又は被塗物を上下揺らしたりする揺動を与えるには、被塗物の搬送に用いるハンガーレールを波状にして揺動を与える方法、個々のハンガー自体に可動性を持たせて揺動を与える方法が挙げられる。
【0042】
工程5:加熱して、塗膜を乾燥硬化する工程である。
加熱温度は、約120〜200℃、好ましくは約150〜180℃の範囲、加熱時間は1〜120分間、好ましくは20〜60分間が好ましい。加熱手段としては、特にこだわらず、電気炉、ガス炉などの直接、または間接の熱風乾燥方法、赤外線や遠赤外線による加熱方法、高周波による誘導加熱方法によるものが挙げられ、ゴミやホコリ対策として赤外線や遠赤外線による加熱方法を行った後、熱風乾燥方法を行うこともできる。
【0043】
またさらに乾燥した塗膜上に、中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料を塗装して複層からなる塗膜を形成することもできる。中塗り塗料としては、水性、又は有機溶剤型の中塗り塗料や上塗り塗料が挙げられるが、環境対策からエマルションやカルボキシル基や水酸基を含有するアクリル樹脂やポリエステル樹脂などの水分散体からなる水性塗料であることが好ましい。
【0044】
上塗り塗料としては、ソリッドカラーの上塗り塗料をエアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装(これらは静電印加していてもよい)などの方法によって膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmとなるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間、加熱乾燥してなる1コート1ベーク方法;
1層以上の着色ベース塗料を塗装し、次ぎにその未硬化、又は硬化面に1層以上のクリア塗料を塗装する方法として、具体的には、着色ベース塗料を、膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmとなるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、クリア塗料を膜厚が約10〜70μmになるように塗装し、約60〜160℃、好ましくは約80〜140℃で、約10〜90分間加熱して架橋硬化させることからなる、2コート1ベーク方式(2C1B)又は2コート2ベーク方式(2C2B)、3コート1ベーク方式(3C1B)、3コート2ベーク方式(3C2B)、又は3コート3ベーク方式(3C3B)が挙げられる。
【0045】
【発明の効果】本発明の複層塗膜形成方法によると、混層やタレなどによって仕上がり性の低下を招くことなく仕上がり性が良好で、かつ既存の設備や工程を流用して、又はわずかの改良のみで、耐チッピング性機能を有する被膜を形成できる。
そのことからチッピングプライマー塗布工程、焼付け、作業人材や設備などの省工程化、省エネルギー化が可能である。
【0046】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
【0047】
製造例1 アミン付加エポキシ樹脂の製造
エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂)1000部、ビスフェノールA 390部、ジメチルベンジルアミノ0.2部を加え、130℃でエポキシ当量755になるまで反応させた。
次にε−カプロラクトン260部、テトラブトキシチタン0.03部を加え、170℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングを行い赤外吸収スペクトル測定において未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98質量%以上になった時点で120℃に温度を下げた。
次にジエタノールアミン160部、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルジケチミン化物65部を加え、120℃で4時間反応させ、ブチルセルソルブ470部を加え、アミン価57mgKOH/g、樹脂固形分80質量%のアミン付加エポキシ樹脂を得た。
【0048】
製造例2 カチオン電着用のエマルションの製造
上記、製造例1で得られたアミン付加エポキシ樹脂No.1を87.5部(樹脂固形分で70g)、硬化剤としてメチルエチルケトオキシムでブロックしたヘキサメチレンジイソシアネートトリイソヌレート 33.3g(樹脂固形分で30部)、サンニックスPP−1000 (三洋化成株式会社製、商品名、表面調整剤)1部、中和剤として酢酸1.5g(中和価14に相当)を配合し、強く攪拌しながら脱イオン水 174部を約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着用のエマルションを得た。
【0049】
製造例3 顔料分散ペーストの製造
4級アンモニウム塩型エポキシ系の顔料分散用樹脂 4.67部(固形分3.5部)、酸化チタン14.5部、水酸化ビスマス2.0部、トリポリリン酸アルミニウム 2部、精製クレー 7.0部、カーボンブラック0.5部、有機錫1.0部、脱イオン水 23.8部を加えて分散し、固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
【0050】
製造例4 カチオン電着塗料の製造
カチオン電着塗料用のエマルション 297部(固形分101部)に、顔料分散ペーストを 55.5 部(固形分 30.5部)、脱イオン水 305部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料を得た。
【0051】
被塗物について
亜鉛メッキ鋼板をフード、フェンダー、ドアに使用した自動車ボディを用い、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理)を施した後、実施例、及び比較例の工程に供した。試験には、フードからパネル状(15×20cm)に裁断して性能試験を行った。
【0052】
実施例及び比較例
実施例1
工程1:製造例4で得たカチオン電着塗料を電着槽に入れ、被塗物のフードの膜厚が20μmとなるように電着塗装を行った(図2の1)。
工程2:被塗物の洗浄を行い(図2の2〜6)、エアブローを施した(図2の20)。
工程3:10%に希釈したスーパーフレックスE−4000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−58℃)を浸漬槽(図2の21)に満たし、被塗物を全没して浸漬した(図2の21)。
工程4:エアーブロー(図2の22)、及び揺動を行う(図2の23)を施した。
工程5:乾燥炉にて170℃−20分間加熱し、塗膜を硬化乾燥した(図2の9)。
中・上塗り塗装工程:さらにTP−65−2(関西ペイント株式会社製、商品名、中塗り塗料)を30μm塗装して140℃で30分硬化乾燥し、マジクロンTB−515(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗りベース塗料)を15μm施し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、クリア塗料)を膜厚35μmに塗装し、140℃で30分加熱してこの両塗膜を一緒に硬化した(図2の13〜16)。
【0053】
実施例2
実施例1の工程3で用いたスーパーフレックスE−4000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−58℃)の代わりに、スーパーフレックスE−2000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−38℃)を用いる以外は同様工程内容にて、複層の塗膜を得た。
【0054】
実施例3
実施例1の工程3で用いたスーパーフレックスE−4000(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−58℃)の代わりに、スーパーフレックスE−4500(第一工業製薬、商品名、ウレタンエマルション、Tg=−34℃)を用いる以外は同様工程内容にて、複層の塗膜を得た。
【0055】
比較例 1
工程1:製造例4で得たカチオン電着塗料を電着槽に入れ、被塗物にカチオン電着塗装を行った(図1の1)。
工程2:被塗物の洗浄を行った(図1の2〜8)。
工程3:なし
工程4:なし
工程5:乾燥炉にて170℃−20分間加熱し、塗膜を硬化乾燥した(図1の9)。
中塗り・上塗り塗装工程:さらに TP−65−2(関西ペイント株式会社製、商品名、中塗り塗料)を30μm塗装して140℃で30分硬化乾燥し、マジクロンTB−515(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗りベース塗料)を15μm施し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、クリア塗料)を膜厚35μmに塗装し、140℃で30分加熱してこの両塗膜を一緒に硬化した(図1の13〜16)。
【0056】
比較例 2
工程1:製造例4で得たカチオン電着塗料を電着槽に入れ、被塗物にカチオン電着塗装を行った(図1の1)。
工程2:被塗物の洗浄を行った(図1の2〜7)。
工程3:なし
工程4:なし
工程5:乾燥炉にて170℃−20分間加熱し、塗膜を硬化乾燥した(図1の9)。
チッピングプライマー塗布工程:チッピングプライマーを塗布して、乾燥した(図1の10〜11)。
中塗り・上塗り塗装工程:さらにTP−65−2(関西ペイント株式会社製、商品名、中塗り塗料)を30μm塗装して140℃で30分硬化乾燥し、マジクロンTB−515(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗りベース塗料)を15μm施し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、クリア塗料)を膜厚35μmに塗装し、140℃で30分加熱してこの両塗膜を一緒に硬化した(図1の13〜16)。
【0057】
実施例、比較例についての性能を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(注4)耐チッピング性:飛石試験機 JA−400型(スガ試験機社製、商品名、チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、0.392MPa(4kgf/cm2)の圧縮空気により粒度7号の花崗岩砕石50gを塗面に吹き付け、これによる塗膜のキズの発生程度などを目視で観察し評価した。
評価:塗膜状態
◎:キズの大きさはかなり小さく、上塗り塗膜の着色面がわずかに露出している程度
○:キズの大きさは小さく、上塗り塗膜の着色面が露出している程度
△:キズの大きさは小さいが、電着面が露出している
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板が露出している。
【0060】
(注5)衝撃性:デュポン式の衝撃試験機を用い、撃心1/2インチ、荷重500gで塗膜がワレる落下高さを測定した。
【0061】
(注6)耐水性:工程 1 〜工程 5 により作成した塗板を用いて、50℃のブリスターボックスに入れて、試験後、2mm角のゴバン目を切り、セロハンテープにて剥離試験を行った
○:問題なく良好
△:90〜99/100個の剥がれがみらる
×:90個未満/100個の剥がれがみらる。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の塗装ライン工程図である。
【0063】
【図2】本発明の塗装ライン工程図である。
【符号の説明】
1.電着槽
2.回収液によるスプレー洗浄
3.回収液によるスプレー洗浄
4.回収液による浸漬洗浄
5.工業用水によるスプレー洗浄
6.工業用水によるスプレー洗浄
7.工業用水による浸漬洗浄
8.純水シャワー
9.乾燥炉
10.チッピングプライマーを塗布する工程である。
11.チッピングプライマーの乾燥炉である。
12.中塗り塗料の塗装
13.中塗り塗料の乾燥炉
14.上塗り塗料の塗装
15.上塗り塗料の乾燥炉
20.エアブロー、又はセッティング
21.ウレタンエマルションの浸漬槽
22.エアブロー
23.被塗物を揺らす揺動
Claims (8)
- 以下の工程、
工程1:被塗物にカチオン電着塗装を行って塗膜を形成する工程、
工程2:工程1による塗膜の表面を水洗した後、セッティング、又はエアーブローの手段によって被塗物の水分を除去する工程、
工程3:浸漬(ディップ)槽に、ウレタン樹脂の水分散体(A)を満たし、該水洗槽に被塗物を浸漬して、被塗物の水洗と同時にウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜を形成する工程、
工程4: 被塗物にエアーブロー、及び/又は前後又は上下に揺らす揺動を加えることを施して、余分に付着したウレタン樹脂の水分散体(A)を除去したり、被塗物の隙間部や袋部に浸透させる工程、
工程5:加熱して塗膜を乾燥硬化する工程
、からなる複層塗膜形成方法。 - 請求項1に記載の工程5が、さらに中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料を塗装し、複層からなる塗膜を同時に焼付け硬化する工程である複層塗膜形成方法。
- ウレタン樹脂の水分散体(A)の動的ガラス転移温度が、0℃以下である請求項1、又は2項に記載の複層塗膜形成方法。
- ウレタン樹脂の水分散体(A)がノニオン性、又はカチオン性である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
- 工程3の浸漬槽のウレタン樹脂の水分散体(A)の固形分が、10重量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
- 工程4で得られるウレタン樹脂の水分散体(A)の被膜の膜厚が、0.5〜20μmである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
- 中塗り塗料、及び/又は上塗り塗料が水性である請求項2乃至6のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
- 被塗物が自動車ボディであって、工程3のウレタン樹脂の水分散体(A)に浸漬する工程が、自動車ボディの一部分のみを浸漬する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
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-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002251929A patent/JP2004089784A/ja active Pending
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