JP2004088936A - 電力変換装置の導体構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電力変換装置としてのPWMインバータ5と直流電源2を接続する正極側導体21と負極側導体22とを接近させ、第1相導体23と第2相導体24とを接近させる。
または正極側導体3と負極側導体4とに接地導体31,32を接近させ、第1相導体6と第2相導体7とに接地導体33,34を接近させる。
または、正極側導体21と負極側導体22とを接近させると共に、これらに接地導体41,42を接近させる。且つ第1相導体23と第2相導体24とを接近させるると共に、これらに接地導体44,44を接近させる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体スイッチ素子で構成している電力変換装置が動作する際に放射される電磁ノイズを低減できる電力変換装置の導体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の電力変換装置が実用に供されているが、ここでは直流電力をパルス幅変調制御により所望の電圧と周波数の交流電力に変換するPWMインバータを例にして、本発明の内容を以下に記述する。
図4はPWMインバータの主回路の構成を示した主回路接続図である。この図4において、電源2Aと平滑コンデンサ2Bとでなる直流電源2と電力変換装置としてのPWMインバータ5とは正極側導体3と負極側導体4により接続され、このPWMインバータ5と負荷8とは第1相導体6と第2相導体7により接続される。前記PWMインバータ5は、半導体スイッチ素子としての絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下ではIGBTと略記する)とダイオードとを逆並列接続して得られるスイッチング回路の4組を単相ブリッジ接続して構成している。これら4組のスイッチング回路5A,5B,5C,5Dは冷却体9に絶縁して搭載され、これら各スイッチング回路が発生する熱を冷却体9から大気中へ放散するのであるが、この冷却体9は接地されている。更に直流電源2も、その一端を接地コンデンサ1を介して接地する。
【0003】
PWMインバータ5を構成するスイッチング回路5Aとスイッチング回路5Dをオンすると、直流電源2→正極側導体3→スイッチング回路5A→第1相導体6→負荷8→第2相導体7→スイッチング回路5D→負極側導体4→直流電源2の経路で、負荷8へ正極電流を供給する。次いでスイッチング回路5Aと5Dをオフにしてスイッチング回路5Bとスイッチング回路5Cをオンにすると、直流電源2→正極側導体3→スイッチング回路5B→第2相導体7→負荷8→第1相導体6→スイッチング回路5C→負極側導体4→直流電源2の経路で、負荷8へ負極電流が流れる。更にスイッチング回路5Aとスイッチング回路5Bが同時にオン(あるいはスイッチング回路5Cとスイッチング回路5Dが同時にオン)することで、負荷8を流れる電流はスイッチング回路5A,5Bを介して還流(あるいはスイッチング回路5C,5Dを介して還流)する。各スイッチング回路のこれらの動作により、直流電源2からの直流電力は所望の電圧と周波数の単相交流電力に変換されて負荷8へ供給される。
【0004】
なお、符号13は正極側導体3と大地間の浮遊容量であり、同様に符号14は負極側導体4と大地間の浮遊容量,符号16は第1相導体6と大地間の浮遊容量,符号17は第2相導体7と大地間の浮遊容量である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図4に図示の回路で、スイッチング回路5Aがオンしているときの第1相導体6は正極電位であるが、スイッチング回路5Cがオンしているときは負極電位に変化する。同様に第2相導体7は、スイッチング回路5Bがオンのときに正極電位で、スイッチング回路5Dがオンのときは負極電位に変化する。また正極側導体3と負極側導体4には、各スイッチング回路が動作したときのスイッチングサージ電圧分の電圧変動が発生する。このスイッチング動作毎に、各導体の浮遊容量13,14,16,17と接地コンデンサ1を介して高周波振動電流がループ状に流れる。この高周波振動電流の経路は、例えば負極側導体4→浮遊容量14→大地→接地コンデンサ1→負極側導体4であり、あるいは正極側導体3→浮遊容量13→浮遊容量14→負極側導体4である。負荷側でも同様に浮遊容量16,17を経由する高周波振動電流が流れる。
【0006】
この高周波振動電流に伴って電磁ノイズが放射されて周囲に悪影響を及ぼしている。そこでこの電磁ノイズの放射を抑制するために、装置全体をシールド材で覆うと、装置が大形化するし、高価なシールド材を使用しなければならない欠点もある。そこでIGBTが動作する際の電圧変化率を低減させることで、電磁ノイスの発生の抑制を図ることになる。しかしIGBTの電圧変化率を低減することはその動作速度を遅くすることであって、これによりIGBTのスイッチング損失が増大するから、損失に伴って発生する熱を除去するための冷却装置(冷却体9や冷却ファン等)の容量の増大を招き、装置全体を大形化する欠点があるし、装置の変換効率が低下する不都合もある。
【0007】
そこでこの発明の目的は、半導体スイッチ素子の動作速度を遅くせずに、電磁シールドも設置せずに、電力変換装置の動作時に放射される電磁ノイズを低減することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、この発明の電力変換装置の導体構造は、
半導体スイッチ素子のオン・オフで電力変換を行う電力変換装置へ電力を供給する複数の電源側導体は、各電源側導体同士が接近した配置にすると共に、前記電力変換装置から負荷へ変換電力を供給する複数の負荷側導体も、各負荷側導体同士が接近した配置にする。
【0009】
半導体スイッチ素子のオン・オフで電力変換を行う電力変換装置へ電力を供給する複数の電源側導体のそれぞれを接地した導体に近接して敷設すると共に、前記電力変換装置から負荷へ変換電力を供給する複数の負荷側導体のそれぞれも接地した導体に近接して敷設する。
半導体スイッチ素子のオン・オフで電力変換を行う電力変換装置へ電力を供給する複数の電源側導体は、各電源側導体同士が接近し且つ各電源側導体のそれぞれが接地した導体に近接する配置にすると共に、前記電力変換装置から負荷へ変換電力を供給する複数の負荷側導体も、各負荷側導体同士が接近し且つ各負荷側導体のそれぞれが接地した導体に近接する配置にする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図5は高周波のループ電流で生じる電界を求める数式を説明する説明図であって、A点の電界Eは下記の数式1で表される。但しfは周波数,i1 は高周波ループ電流,rはこの高周波ループ電流からA点までの距離,S1 は高周波ループ電流で囲まれる面の面積である。
【0011】
【数1】
この数式1から明らかなように、高周波ループ電流i1 で囲まれる部分の面積S1 を小さくすることで、放射される電磁ノイズを低減できる。
図1は本発明の第1実施例を表した主回路接続図であるが、この図1に記載の接地コンデンサ1,直流電源2,電力変換装置としてのPWMインバータ5,負荷8および冷却体9の名称・用途・機能は、図4で既述の従来例回路と同じであるから、同じ部分の説明は省略する。
【0012】
この第1実施例では、直流電源2とPWMインバータ5を接続する正極側導体21と負極側導体22は、従来とは異なって両者を可能なかぎり接近させて敷設する。またPWMインバータ5と負荷8を接続する第1相導体23と第2相導体24も、両者を可能なかぎり接近させて敷設するが、このときの各導体と大地との間にはその静電容量が従来とは異なる浮遊容量26,27,28,29が存在することになる。
【0013】
前述したように、高周波ループ電流i1 は、正極側導体21→浮遊容量26→大地→浮遊容量27→負極側導体22の経路で流れるが、正極側導体21と負極側導体22とを極力接近させることにより、高周波ループ電流i1 で囲まれる面の面積S1 は、図4に図示の従来例の場合に比べて大幅に減少する。よって数式1で得られる電界Eも大幅に減少する。
【0014】
図2は本発明の第2実施例を表した主回路接続図であるが、この図2に記載の接地コンデンサ1,直流電源2,正極側導体3,負極側導体4,電力変換装置としてのPWMインバータ5,第1相導体6,第2相導体7,負荷8および冷却体9の名称・用途・機能は、図4で既述の従来例回路と同じであるから、同じ部分の説明は省略する。
【0015】
この第2実施例では、正極側導体3に近接して接地導体31を配置する。同様に負極側導体4には接地導体32を,第1相導体6には接地導体33を,第2相導体7には接地導体34をそれぞれ近接して配置する。このとき各導体3,4,6,7と各接地導体31,32,33,34との間のそれぞれには、従来とは静電容量が異なる浮遊容量36,37,38,39が存在する。高周波ループ電流が負極側導体4→浮遊容量37→接地導体32→大地→接地コンデンサ1→負極側導体4の経路で流れるときに形成される面積S1 も、図示の従来例の場合に比べて大幅に減少する。
【0016】
なお図2では、各導体と大地との間隔が接地導体の付加により狭くしているが、各導体を冷却体9などの接地部に接近して敷設すれば、接地導体を付加するのと同様の効果が得られるのは勿論である。
図3は本発明の第3実施例を表した主回路接続図であるが、この図3に記載の接地コンデンサ1,直流電源2,電力変換装置としてのPWMインバータ5,負荷8および冷却体9の名称・用途・機能は、図4で既述の従来例回路と同じであり、正極側導体21,負極側導体22,第1相導体23および第2相導体24の名称・用途・機能は、図1で既述の第1実施例回路と同じであるから、同じ部分の説明は省略する。
【0017】
この第3実施例は、正極側導体21と負極側導体22とを接近させると共に、これら両導体と接地導体41,42とを近接させることにより、両導体間を流れる高周波ループ電流i1 のループの面積S1 を縮小させると共に、各導体と大地との間を流れる高周波ループ電流i1 のループの面積S1 も縮小させている。また負荷側の第1相導体23と第2相導体24とを接近させると共に、これら両導体に接地導体43,44を近接させることにより、両導体間を流れる高周波ループ電流i1 のループの面積S1 を縮小させると共に、各導体と大地との間を流れる高周波ループ電流i1 のループの面積S1 も縮小させている。なお各導体21,22,23,24と各接地導体46,47,48,49が接近することで、浮遊容量46,47,48,49の静電容量が大きくなるが、接地コンデンサ1の静電容量はこれらよりもはるかに大であるため、各浮遊容量の静電容量の増加の影響は無視できる。
【0018】
この第3実施例の具体的な構造として、例えばバー構造の正極側導体21と負極側導体22との間に絶縁板を挿入してサンドイッチ状にし、この全体を絶縁してその上に金属箔を巻き付け、この金属箔を接地することで、高周波ループ電流i1 のループの面積S1 が極めて小さい導体構造が得られる。
【0019】
【発明の効果】
半導体スイッチ素子をオン・オフ動作させることで電力を変換する装置では、この半導体スイッチ素子の動作に伴って高周波数のループ電流が流れて電磁ノイズを放射する。従来はこの電磁ノイズの影響を軽減するために、装置全体をシールド材で覆ったり、あるいは半導体スイッチ素子の動作速度を遅くするなどの対策を施していた。これに対して本発明では、電源側導体同士や負荷側導体同士を極力接近させ,あるいは電源側導体と大地との間隔や負荷側導体と大地との間隔を極力狭めることで、高周波ループ電流が流れる際に形成される面の面積を縮小して放射ノイズの発生を抑制している。よって高価なシールド材が不要で装置全体の大形化を回避できるし、半導体スイッチ素子の動作速度を遅らせる必要がないから、当該半導体スイッチ素子が動作する際の損失が増加せず、冷却装置の大形化を回避できるし、装置の効率低下も回避できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を表した主回路接続図
【図2】本発明の第2実施例を表した主回路接続図
【図3】本発明の第3実施例を表した主回路接続図
【図4】PWMインバータの主回路の構成を示した主回路接続図
【図5】高周波のループ電流で生じる電界を求める数式を説明する説明図
【符号の説明】
1 接地コンデンサ
2 直流電源
3,21 正極側導体
4,22 負極側導体
5 電力変換装置としてのPWMインバータ
5A,5B,5C,5D スイッチング回路
6,23 第1相導体
7,24 第2相導体
8 負荷
9 冷却体
13,14,16,17 浮遊容量
26,27,28,29 浮遊容量
31,32,33,34 接地導体
36,37,38,39 浮遊容量
41,42,43,44 接地導体
46,47,48,49 浮遊容量
Claims (3)
- 半導体スイッチ素子のオン・オフで電力変換を行う電力変換装置へ電力を供給する複数の電源側導体は、各電源側導体同士が接近した配置にすると共に、前記電力変換装置から負荷へ変換電力を供給する複数の負荷側導体も、各負荷側導体同士が接近した配置にすることを特徴とする電力変換装置の導体構造。
- 半導体スイッチ素子のオン・オフで電力変換を行う電力変換装置へ電力を供給する複数の電源側導体のそれぞれを接地した導体に近接して敷設すると共に、前記電力変換装置から負荷へ変換電力を供給する複数の負荷側導体のそれぞれも接地した導体に近接して敷設することを特徴とする電力変換装置の導体構造。
- 半導体スイッチ素子のオン・オフで電力変換を行う電力変換装置へ電力を供給する複数の電源側導体は、各電源側導体同士が接近し且つ各電源側導体のそれぞれが接地した導体に近接する配置にすると共に、前記電力変換装置から負荷へ変換電力を供給する複数の負荷側導体も、各負荷側導体同士が接近し且つ各負荷側導体のそれぞれが接地した導体に近接する配置にすることを特徴とする電力変換装置の導体構造。
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