JP2004087333A - ゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゲッター膜を効率良く形成することが可能なゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置を提供する。
【解決手段】ゲート弁33を挟んで連結された第1および第2真空チャンバ31、32を用意し、第1真空チャンバ内に対象部材を配置するとともに第1真空チャンバ内を高真空状態に維持する。ゲート弁を閉じた状態で第2真空チャンバのみを大気に開放した後、第2真空チャンバに対してゲッター材の装填する。ゲッター材が装填された第2真空チャンバ内を真空状態に排気した後、ゲート弁を介してゲッター材を第2真空チャンバから第1真空チャンバに供給し、ゲート弁を閉じた状態でゲッター材を加熱しゲッターフラッシュを行う。
【選択図】 図3
【解決手段】ゲート弁33を挟んで連結された第1および第2真空チャンバ31、32を用意し、第1真空チャンバ内に対象部材を配置するとともに第1真空チャンバ内を高真空状態に維持する。ゲート弁を閉じた状態で第2真空チャンバのみを大気に開放した後、第2真空チャンバに対してゲッター材の装填する。ゲッター材が装填された第2真空チャンバ内を真空状態に排気した後、ゲート弁を介してゲッター材を第2真空チャンバから第1真空チャンバに供給し、ゲート弁を閉じた状態でゲッター材を加熱しゲッターフラッシュを行う。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空雰囲気中で対象部材にゲッター膜を形成するゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、陰極線管(以下、CRTと称する)に代わる次世代の軽量、薄型の表示装置として様々な平面型の画像表示装置が注目されている。例えば、放電現象による蛍光体の発光を利用したプラズマディスプレイ(PDP)や、主として電界による電子放出を利用したフィールド・エミッション・ディスプレイ(以下、FEDと称する)が知られている。
【0003】
これらの画像表示装置は、基本構成として、所定の間隔をおいて対向配置された前面基板および背面基板を備え、これらの基板は周辺部を互いに接合することにより外囲器を構成している。FEDにおいて、前面基板の内面には蛍光体層が形成され、背面基板の内面には、蛍光体を励起する電子放出源である電子放出素子が各画素に対応して配列されている。また、両プレート間には、プレート間の隙間を維持するため、多数の板状、柱状もしくはビーズ等のスペーサが配置されている。
【0004】
これらの画像表示装置において、前面基板と背面基板間の空間、すなわち真空外囲器内部は、高い真空度に維持されていることが重要となる。真空度が低いと安定した電子放出ができず、画像表示装置の寿命が低下することになる。
【0005】
そこで、長期間に渡って外囲器内を高真空度に維持するため、外囲器内にはガスを吸着するゲッター材が設けられ、重要な役割を果たしている。例えば、動作中にガス放出の生じ易い画像表示領域にゲッタ−膜を形成する方法として、真空チャンバ内に前面基板及び背面基板を投入し、真空排気した後、前面基板の画像表示領域を覆う領域にゲッタ−膜を形成し、更に、対向配置された両基板を真空中で封着する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように真空チャンバ内で前面基板の画像表示領域にゲッタ−膜を形成する場合、真空チャンバ内へゲッター材を供給する方法として、前面基板とゲッター材の両方を保持可能な治具を設け、この治具ごと前面基板及びゲッター材を真空チャンバ内に供給する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、上記方式では、大気に晒された治具を真空チャンバ内に供給することにより、治具からのガス放出が真空チャンバ内の真空度を低下させ手しまう。また、ゲッター材とゲッター膜を形成する前面基板との距離関係が治具の寸法によって規制され、所望の寸法を確保するのが困難となる。更に、ゲッター膜の形成対象部材に加えて治具も供給するため、真空チャンバ内の移載装置に十分な剛性と高い搬送動力が要求される。そのため、量産時には、作業効率上、複数台の治具が必要となり、コスト及び管理面で負荷が大きくなる。
【0008】
一方、上述したような治具を廃止し、前面基板とは別にゲッター材を供給する方法として、真空チャンバを大気開放した状態で専用扉を通してゲッター材を真空チャンバ内の所定位置に供給する方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、上記方法では、ゲッター材を供給した後、真空チャンバを所定の真空度まで排気するのに多大な時間を要するばかりでなく、場合によっては所定の真空度を得るために真空チャンバ自体の脱ガス処理が必要となる。この脱ガス処理には、真空チャンバを高温に加熱する工程が必要となる。従って、所定の真空度を得るために一層多大な時間を要するため、試作、実験用としては成しえるが、量産方法としては実用的でない。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、ゲッター膜を効率良く形成することが可能なゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係るゲッター膜形成方法は、対象部材上にゲッター膜を形成するゲッター膜形成方法において、
ゲート弁を挟んで連結された第1および第2真空チャンバを用意し、上記第1真空チャンバ内に上記対象部材を配置するとともに上記第1真空チャンバ内を高真空状態に維持し、上記ゲート弁を閉じた状態で上記第2真空チャンバのみを大気に開放した後、第2真空チャンバにゲッター材を装填し、上記ゲッター材が装填された第2真空チャンバ内を真空状態に排気した後、上記ゲート弁を介してゲッター材を第2真空チャンバから第1真空チャンバに供給し、上記ゲート弁を閉じた状態で上記ゲッター材を加熱しゲッターフラッシュを行い、上記対象部材にゲッター膜を形成することを特徴としている。
【0012】
また、この発明の他の態様に係るゲッター膜形成装置は、ゲッター膜を形成する対象部材を収納する第1真空チャンバと、ゲート弁を介して上記第1真空チャンバに連結されているとともに第1真空チャンバよりも小さい第2真空チャンバと、第1真空チャンバおよび第2真空チャンバをそれぞれ真空排気する第1および第2真空ポンプと、上記ゲート弁を介して、真空状態に維持された第1および第2真空チャンバ間でゲッター材を搬送する移載機構と、上記第1真空チャンバ内に設けられ、上記ゲッター材を加熱してゲッターフラッシュを行う加熱機構と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
上記のように構成されたゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置によれば、対象部材に対しゲッタ−膜を形成する作業用の真空チャンバとは別にゲッター材供給用の真空チャンバを設け、これらの真空チャンバをゲ−ト弁を介して連結している。そのため、作業用の真空チャンバを大気に晒すことなく、所要の真空度を維持した状態でゲッタ−材を供給および排出することができ、ゲッター膜を効率良く形成することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係るゲッター膜形成方法および形成装置について詳細に説明する。
始めに、ゲッター膜の形成対象となる部材として、例えば、前面基板を備えた画像表示装置について説明する。ここでは、表面伝導型の電子放出素子を備えたFEDを例にとって説明する。
【0015】
図1および図2に示すように、このFEDは、絶縁基板としてそれぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備え、これらの基板は1〜2mmの隙間を置いて対向配置されている。そして、前面基板11および背面基板12は、矩形枠状の側壁13を介して周縁部同士が接合され、内部が真空状態に維持された扁平な矩形状の真空外囲器10を構成している。
【0016】
真空外囲器10の内部には、前面基板11および背面基板12に加わる大気圧荷重を支えるため、複数のスペーサ14が設けられている。スペーサ14としては、板状あるいは柱状のスペーサ等を用いることができる。
【0017】
前面基板11の内面上には、画像表示面として、赤、緑、青の蛍光体層16とマトリクス状の黒色遮光層17とを有した蛍光体スクリーン15が形成されている。これらの蛍光体層16はストライプ状あるいはドット状に形成してもよい。この蛍光体スクリーン15上には、アルミニウム膜等からなるメタルバック20が形成され、更に、メタルバックに重ねてゲッター膜22が形成されている。
【0018】
背面基板12の内面上には、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16を励起する電子源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子18は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板12の内面には、電子放出素子18に電位を供給する多数本の配線21がマトリック状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引出されている。
【0019】
このようなFEDでは、画像を表示する場合、蛍光体スクリーン15およびメタルバック20にアノード電圧を印加し、電子放出素子18から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して蛍光体スクリーンへ衝突させる。これにより、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16が励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0020】
次に、上記のように構成されたFEDの製造方法について説明する。特に、前面基板11にゲッター膜を形成する方法について説明する。
図3に示すように、ゲッター膜形成装置は、蛍光面を有する前面基板11の内面にゲッター膜22を形成する作業用の第1真空チャンバ31と、装置外部からゲッター材41を供給するための供給用の第2真空チャンバ32と、を備え、これらの真空チャンバはゲート弁33を介して連結されている。
【0021】
第1および第2真空チャンバ31、32はそれぞれ真空処理槽により構成されている。また、第1および第2真空チャンバ31、32には真空ポンプ31a、32aがそれぞれ接続されている。そして、第1および第2真空チャンバ31、32は、独立して真空度を保持することが可能となっている。なお、第2真空チャンバ32は第1真空チャンバ31に対して充分小さく、例えば、20分の1程度の大きさに形成されている。
【0022】
第2真空チャンバ32には、ゲッター材を出し入れするための専用の扉36が設けられている。更に、ゲッター膜形成装置内には、第1真空チャンバ31と第2真空チャンバ32との間でゲッター材を所定位置に搬送する自動移載機構38が設けられている。
【0023】
図3および図4に示すように、第2真空チャンバ32内には、保持用円盤42を支持する昇降駆動可能な円盤保持治具40が設けられている。保持用円盤42の上には複数個のゲッター材41が保持されている。ゲッター材41は、保持用円盤42の上面外周縁部に載置され、保持用円盤の中心と同芯円上に等間隔で並べられている。ゲッター材41としては、例えば、BaAl4粉末とNi粉末との熱反応でBaを真空蒸着する反応型ゲッターを用いることができる。そして、第2真空チャンバ32内において、保持用円盤42は、円盤保持治具40によって中心部が保持され、ほぼ水平に支持されている。
【0024】
第2真空チャンバ32内には、保持用円盤42およびゲッター材41を脱ガス処理するため、保持用円盤42を加熱する加熱ユニット44、およびゲッター材を加熱する加熱ユニット46が設けられている。加熱ユニット44は、例えばホットプレートや加熱ランプ等により構成されている。また、加熱ユニット46は、例えば、高周波コイルを用いた高周波加熱ユニットにより構成され、保持用円盤42の下面側からこの保持用円盤を介してゲッター材41を加熱する。なお、保持用円盤42は、高周波加熱に影響を受けないセラミックまたは硝子等の非誘電材料で形成されている。
【0025】
図3および図5に示すように、第1真空チャンバ31内には、保持用円盤42を支持しゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に順次位置決めする位置決め機構50、およびゲッター材を加熱する加熱機構52が設けられている。位置決め機構50は、パルスモータ等の間欠回転駆動機構を備え、保持用円盤42をその中心の周りで間欠的に回動させ、ゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に移送および位置決めする。また、位置決め機構50は昇降駆動可能に構成されている。
【0026】
また、加熱機構52は、ゲッター材41を非接触で加熱可能な高周波加熱方式として構成され、高周波コイル51およびこの高周波コイルに高周波を印加する図示しない高周波発生器を備えている。そして、高周波コイル51は、ゲッターフラッシュ位置に移動したゲッター材と保持用円盤42を介して対向する位置に設けられている。このような非接触式の加熱機構を用いることにより、保持用円盤42を間欠回転させる際、高周波コイル51と保持用円盤42との干渉を無くすことができる。
【0027】
第2真空チャンバ32内の円盤保持治具40と第1真空チャンバ31内の位置決め機構50との間で保持用円盤42を搬送する自動移載機構38は、第2真空チャンバ内に配設されほぼ水平に伸びたガイド部53と、このガイド部によって支持され第1および第2真空チャンバ内に進退自在にガイドされた可動アーム54と、を備えている。可動アーム54には、保持用円盤42を把持する把持部56が設けられている。そして、自動移載機構38は、把持部56により保持用円盤42を把持した状態で可動アーム54を進退させることにより、円盤保持治具40と位置決め機構50との間で保持用円盤42を搬送し、円盤保持治具および位置決め機構に対して保持用円盤を選択的に装填および取り出しする。
【0028】
次に、以上のように構成されたゲッター膜形成装置を用いて前面基板11にゲッター膜を形成する工程について説明する。
まず、ゲッター材41を保持用円盤42の同一円周上に等間隔に複数個設置する。続いて、第2真空チャンバ32の扉36を開き、円盤保持治具40上に保持用円盤42を設置する。扉36を閉めた後、真空ポンプ32aを作動させ第2真空チャンバ32を真空排気し10−5Pa程度の高真空に維持する。
【0029】
この状態で、保持用円盤42およびゲッター材41の脱ガス処理を行う。すなわち、加熱ユニット44および46によって保持用円盤42およびゲッター材41をそれぞれ加熱し、保持用円盤およびゲッター材から吸着ガスを放出させる。この際、加熱温度をゲッター材41の蒸発温度よりも低い温度、例えば、500℃に設定し、約30〜60秒間、加熱する。加熱温度は、200℃以上であることが望ましい。
このように保持用円盤42およびゲッター材41を予め脱ガス処理することにより、ゲッター材供給動作時にゲッター材および保持用円盤からのガス放出により第1真空チャンバ31の真空度が低下することを防止する。
【0030】
脱ガス処理後、第2真空チャンバ32が所定の真空度に達してから、ゲート弁33を開き、保持用円盤42の移載動作に入る。この時、第1真空チャンバ31は、真空ポンプ31aによって真空排気され、予め所定の高真空状態に維持されている。また、第1真空チャンバ31内には、ゲッター膜の形成対象部材として、前面基板11が配置されている。
【0031】
保持用円盤42の移載する場合、自動移載機構38を駆動し、可動アーム54をゲート弁33の開口部を通して第2真空チャンバ32内に進入させる。そして、把持部56を保持用円盤42の下方に配置した後、円盤保持治具40を上下動させ、把持部56に保持用円盤42を移載する。
【0032】
この際、自動移載機構38の把持部56および円盤保持治具40には例えば複数個のピン等の円盤位置決め機構が設けられ、円盤保持治具に位置決めされていた保持用円盤42を所定の位置に規制した状態で、搬送することができる。
【0033】
次に、可動アーム54を第1真空チャンバ31内に引き込み、ゲート弁33を通して保持用円盤42を第1真空チャンバ内に搬入する。その後、位置決め機構50を上下動させ、保持用円盤42を把持部56から位置決め機構上に移載する。
【0034】
保持用円盤42が位置決め機構50上に設置された後、位置決め機構により保持用円盤を間欠回転させ、保持用円盤上のゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に位置決め搬送する。ここで、ゲッターフラッシュ位置は保持用円盤42上のゲッター材設置用ピッチ円周上の位置になるよう設計されている。
【0035】
ゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に位置決めした後、高周波コイル51によりゲッター材をその蒸発温度以上の温度まで加熱しゲッターフラッシュを行う。これにより、前面基板11の蛍光面側にゲッター膜を真空蒸着する。なお、保持用円盤42は高周波加熱に影響を受けない非誘電材料で形成されていることから、ゲッター材41のみの加熱制御することができる。
ゲッター膜の形成された前面基板11は、大気に晒されることなく他の真空チャンバに搬送され、真空雰囲気中で背面基板と封着される。これにより、FEDが得られる。
【0036】
一方、1枚の前面基板11に対してゲッター膜の形成が終了した後、次の前面基板を第1真空チャンバ31内に搬入し所定位置に配置する。続いて、位置決め機構50により保持用円盤を間欠回転させ、保持用円盤42上の次のゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に位置決め搬送する。そして、高周波コイル51によりゲッター材41を加熱してゲッターフラッシュを行い、前面基板11の蛍光面側にゲッター膜を真空蒸着する。
【0037】
上述した一連のゲッター膜形成工程を繰り返すことにより、保持用円盤42上のゲッター材41を使用して複数枚の前面基板11に順次ゲッター膜を形成する。保持用円盤42上の全てのゲッター材41が使用し終わった後、第1真空チャンバ31および第2真空チャンバ32を高真空に保持した状態で、ゲート弁33を開け、使用済みゲッター材を載置した保持用円盤を自動移載機構38によって第1真空チャンバから第2真空チャンバに移載する。続いて、ゲート弁33を閉じた後、第2真空チャンバ32を大気開放し、扉36から保持用円盤42を取り出す。これにより、作業用の第1真空チャンバ31を大気に開放することなく、ゲッター材41を供給および排出することができる。
【0038】
一方、本実施の形態によれば、複数のゲッター材41が支持された上述の保持用円盤42を予め複数組用意しておく。そして、1つの保持用円盤42に保持されたゲッター材41を用いてゲッター膜形成を行っている間、他の保持用円盤42を第2真空チャンバ32内に配置し、真空排気および脱ガス処理を行う。
【0039】
一連のゲッター材供給工程において、第1真空チャンバ31および第2真空チャンバ32を高真空に保持した状態で、ゲート弁33を開け、使用済みゲッター材を載置した保持用円盤42を第1真空チャンバから第2真空チャンバに排出するとともに、新規のゲッター材41を保持した保持用円盤42を第2真空チャンバから第1真空チャンバへ搬入する。
【0040】
これにより、保持用円盤42に搭載されているゲッター材の数量に対応するゲッター膜形成作業サイクル時間を第2真空チャンバ32におけるゲッター材41の供給排出作業、真空引き、脱ガス処理時間に当てることができる。従って、第1真空チャンバ31では、次のゲッター材供給の待ち時間を大幅に低減することができ、ゲッター膜形成の作業効率向上を図ることができる。
【0041】
以上のように構成されたゲッター膜形成装置およびゲッター形成方法によれば、対象部材に対しゲッタ−膜を形成する作業用の真空チャンバとは別にゲッター材供給用の真空チャンバを設け、これらの真空チャンバをゲ−ト弁を介して連結している。そのため、作業用の真空チャンバを大気に晒すことなく、所要の真空度を維持した状態でゲッタ−材を供給及び排出することができ、ゲッター膜の形成を効率良く行うことが可能となる。
【0042】
また、ゲッタ−材の供給形態としてゲッタ−材を複数個保持可能な保持用円盤を使用し、更に、供給用の真空チャンバにゲッタ−材および保持用円盤を脱ガス処理する加熱ユニットを設けている。これにより、1回の供給作業で複数個のゲッター材を供給することができるとともに、脱ガス処理されたゲッター材および保持用円盤を供給することにより作業用の真空チャンバを高い真空度に維持することができる。
【0043】
更に、ゲッター材を保持した保持用円盤を複数組用意しておくことにより、作業用の真空チャンバ内でゲッター膜形成作用を行っている間、供給用の真空チャンバ内でゲッター材の供給排出作業、真空引き、脱ガス処理時間を行うことができる。これにより、次のゲッター材供給の待ち時間を大幅に低減し、ゲッター材を連続的に供給することが可能となり、ゲッター膜形成の作業効率向上を図ることができる。
【0044】
なお、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、脱ガス処理およびゲッターフラッシュにおけるゲッター材の加熱方式は、上述した高周波加熱に限らず、ゲッター材に通電して加熱する抵抗加熱を用いることもできる。また、ゲッター材を保持する保持部材は、上述した保持用円盤に限らず、他の形状としてもよい。その他、この発明において、ゲッター膜の形成対象部材はFEDの前面基板に限定されることはなく、種々選択可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ゲッター膜を効率良く形成し、製造コストの低減を図ることが可能なゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像表示装置の一例としてのFEDを示す斜視図。
【図2】図1の線A−Aに沿った上記FEDの断面図。
【図3】上記FEDの製造に用いるゲッター膜形成装置を示す断面図。
【図4】上記ゲッター膜形成装置の第2真空チャンバを拡大して示す断面図。
【図5】上記ゲッター膜形成装置の第1真空チャンバ内に配設された位置決め機構および加熱機構を概略的に示す側面図。
【符号の説明】
10…真空外囲器
11…前面基板
12…背面基板
13…側壁
15…蛍光体スクリーン
18…電子放出素子
20…メタルバック
22…ゲッター膜
31…第1真空チャンバ
32…第2真空チャンバ
38…自動移載機構
40…円盤保持治具
41…ゲッター材
42…保持用円盤
44、46…加熱ユニット
50…位置決め機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空雰囲気中で対象部材にゲッター膜を形成するゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、陰極線管(以下、CRTと称する)に代わる次世代の軽量、薄型の表示装置として様々な平面型の画像表示装置が注目されている。例えば、放電現象による蛍光体の発光を利用したプラズマディスプレイ(PDP)や、主として電界による電子放出を利用したフィールド・エミッション・ディスプレイ(以下、FEDと称する)が知られている。
【0003】
これらの画像表示装置は、基本構成として、所定の間隔をおいて対向配置された前面基板および背面基板を備え、これらの基板は周辺部を互いに接合することにより外囲器を構成している。FEDにおいて、前面基板の内面には蛍光体層が形成され、背面基板の内面には、蛍光体を励起する電子放出源である電子放出素子が各画素に対応して配列されている。また、両プレート間には、プレート間の隙間を維持するため、多数の板状、柱状もしくはビーズ等のスペーサが配置されている。
【0004】
これらの画像表示装置において、前面基板と背面基板間の空間、すなわち真空外囲器内部は、高い真空度に維持されていることが重要となる。真空度が低いと安定した電子放出ができず、画像表示装置の寿命が低下することになる。
【0005】
そこで、長期間に渡って外囲器内を高真空度に維持するため、外囲器内にはガスを吸着するゲッター材が設けられ、重要な役割を果たしている。例えば、動作中にガス放出の生じ易い画像表示領域にゲッタ−膜を形成する方法として、真空チャンバ内に前面基板及び背面基板を投入し、真空排気した後、前面基板の画像表示領域を覆う領域にゲッタ−膜を形成し、更に、対向配置された両基板を真空中で封着する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように真空チャンバ内で前面基板の画像表示領域にゲッタ−膜を形成する場合、真空チャンバ内へゲッター材を供給する方法として、前面基板とゲッター材の両方を保持可能な治具を設け、この治具ごと前面基板及びゲッター材を真空チャンバ内に供給する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、上記方式では、大気に晒された治具を真空チャンバ内に供給することにより、治具からのガス放出が真空チャンバ内の真空度を低下させ手しまう。また、ゲッター材とゲッター膜を形成する前面基板との距離関係が治具の寸法によって規制され、所望の寸法を確保するのが困難となる。更に、ゲッター膜の形成対象部材に加えて治具も供給するため、真空チャンバ内の移載装置に十分な剛性と高い搬送動力が要求される。そのため、量産時には、作業効率上、複数台の治具が必要となり、コスト及び管理面で負荷が大きくなる。
【0008】
一方、上述したような治具を廃止し、前面基板とは別にゲッター材を供給する方法として、真空チャンバを大気開放した状態で専用扉を通してゲッター材を真空チャンバ内の所定位置に供給する方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、上記方法では、ゲッター材を供給した後、真空チャンバを所定の真空度まで排気するのに多大な時間を要するばかりでなく、場合によっては所定の真空度を得るために真空チャンバ自体の脱ガス処理が必要となる。この脱ガス処理には、真空チャンバを高温に加熱する工程が必要となる。従って、所定の真空度を得るために一層多大な時間を要するため、試作、実験用としては成しえるが、量産方法としては実用的でない。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、ゲッター膜を効率良く形成することが可能なゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係るゲッター膜形成方法は、対象部材上にゲッター膜を形成するゲッター膜形成方法において、
ゲート弁を挟んで連結された第1および第2真空チャンバを用意し、上記第1真空チャンバ内に上記対象部材を配置するとともに上記第1真空チャンバ内を高真空状態に維持し、上記ゲート弁を閉じた状態で上記第2真空チャンバのみを大気に開放した後、第2真空チャンバにゲッター材を装填し、上記ゲッター材が装填された第2真空チャンバ内を真空状態に排気した後、上記ゲート弁を介してゲッター材を第2真空チャンバから第1真空チャンバに供給し、上記ゲート弁を閉じた状態で上記ゲッター材を加熱しゲッターフラッシュを行い、上記対象部材にゲッター膜を形成することを特徴としている。
【0012】
また、この発明の他の態様に係るゲッター膜形成装置は、ゲッター膜を形成する対象部材を収納する第1真空チャンバと、ゲート弁を介して上記第1真空チャンバに連結されているとともに第1真空チャンバよりも小さい第2真空チャンバと、第1真空チャンバおよび第2真空チャンバをそれぞれ真空排気する第1および第2真空ポンプと、上記ゲート弁を介して、真空状態に維持された第1および第2真空チャンバ間でゲッター材を搬送する移載機構と、上記第1真空チャンバ内に設けられ、上記ゲッター材を加熱してゲッターフラッシュを行う加熱機構と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
上記のように構成されたゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置によれば、対象部材に対しゲッタ−膜を形成する作業用の真空チャンバとは別にゲッター材供給用の真空チャンバを設け、これらの真空チャンバをゲ−ト弁を介して連結している。そのため、作業用の真空チャンバを大気に晒すことなく、所要の真空度を維持した状態でゲッタ−材を供給および排出することができ、ゲッター膜を効率良く形成することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係るゲッター膜形成方法および形成装置について詳細に説明する。
始めに、ゲッター膜の形成対象となる部材として、例えば、前面基板を備えた画像表示装置について説明する。ここでは、表面伝導型の電子放出素子を備えたFEDを例にとって説明する。
【0015】
図1および図2に示すように、このFEDは、絶縁基板としてそれぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備え、これらの基板は1〜2mmの隙間を置いて対向配置されている。そして、前面基板11および背面基板12は、矩形枠状の側壁13を介して周縁部同士が接合され、内部が真空状態に維持された扁平な矩形状の真空外囲器10を構成している。
【0016】
真空外囲器10の内部には、前面基板11および背面基板12に加わる大気圧荷重を支えるため、複数のスペーサ14が設けられている。スペーサ14としては、板状あるいは柱状のスペーサ等を用いることができる。
【0017】
前面基板11の内面上には、画像表示面として、赤、緑、青の蛍光体層16とマトリクス状の黒色遮光層17とを有した蛍光体スクリーン15が形成されている。これらの蛍光体層16はストライプ状あるいはドット状に形成してもよい。この蛍光体スクリーン15上には、アルミニウム膜等からなるメタルバック20が形成され、更に、メタルバックに重ねてゲッター膜22が形成されている。
【0018】
背面基板12の内面上には、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16を励起する電子源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子18は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板12の内面には、電子放出素子18に電位を供給する多数本の配線21がマトリック状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引出されている。
【0019】
このようなFEDでは、画像を表示する場合、蛍光体スクリーン15およびメタルバック20にアノード電圧を印加し、電子放出素子18から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して蛍光体スクリーンへ衝突させる。これにより、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16が励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0020】
次に、上記のように構成されたFEDの製造方法について説明する。特に、前面基板11にゲッター膜を形成する方法について説明する。
図3に示すように、ゲッター膜形成装置は、蛍光面を有する前面基板11の内面にゲッター膜22を形成する作業用の第1真空チャンバ31と、装置外部からゲッター材41を供給するための供給用の第2真空チャンバ32と、を備え、これらの真空チャンバはゲート弁33を介して連結されている。
【0021】
第1および第2真空チャンバ31、32はそれぞれ真空処理槽により構成されている。また、第1および第2真空チャンバ31、32には真空ポンプ31a、32aがそれぞれ接続されている。そして、第1および第2真空チャンバ31、32は、独立して真空度を保持することが可能となっている。なお、第2真空チャンバ32は第1真空チャンバ31に対して充分小さく、例えば、20分の1程度の大きさに形成されている。
【0022】
第2真空チャンバ32には、ゲッター材を出し入れするための専用の扉36が設けられている。更に、ゲッター膜形成装置内には、第1真空チャンバ31と第2真空チャンバ32との間でゲッター材を所定位置に搬送する自動移載機構38が設けられている。
【0023】
図3および図4に示すように、第2真空チャンバ32内には、保持用円盤42を支持する昇降駆動可能な円盤保持治具40が設けられている。保持用円盤42の上には複数個のゲッター材41が保持されている。ゲッター材41は、保持用円盤42の上面外周縁部に載置され、保持用円盤の中心と同芯円上に等間隔で並べられている。ゲッター材41としては、例えば、BaAl4粉末とNi粉末との熱反応でBaを真空蒸着する反応型ゲッターを用いることができる。そして、第2真空チャンバ32内において、保持用円盤42は、円盤保持治具40によって中心部が保持され、ほぼ水平に支持されている。
【0024】
第2真空チャンバ32内には、保持用円盤42およびゲッター材41を脱ガス処理するため、保持用円盤42を加熱する加熱ユニット44、およびゲッター材を加熱する加熱ユニット46が設けられている。加熱ユニット44は、例えばホットプレートや加熱ランプ等により構成されている。また、加熱ユニット46は、例えば、高周波コイルを用いた高周波加熱ユニットにより構成され、保持用円盤42の下面側からこの保持用円盤を介してゲッター材41を加熱する。なお、保持用円盤42は、高周波加熱に影響を受けないセラミックまたは硝子等の非誘電材料で形成されている。
【0025】
図3および図5に示すように、第1真空チャンバ31内には、保持用円盤42を支持しゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に順次位置決めする位置決め機構50、およびゲッター材を加熱する加熱機構52が設けられている。位置決め機構50は、パルスモータ等の間欠回転駆動機構を備え、保持用円盤42をその中心の周りで間欠的に回動させ、ゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に移送および位置決めする。また、位置決め機構50は昇降駆動可能に構成されている。
【0026】
また、加熱機構52は、ゲッター材41を非接触で加熱可能な高周波加熱方式として構成され、高周波コイル51およびこの高周波コイルに高周波を印加する図示しない高周波発生器を備えている。そして、高周波コイル51は、ゲッターフラッシュ位置に移動したゲッター材と保持用円盤42を介して対向する位置に設けられている。このような非接触式の加熱機構を用いることにより、保持用円盤42を間欠回転させる際、高周波コイル51と保持用円盤42との干渉を無くすことができる。
【0027】
第2真空チャンバ32内の円盤保持治具40と第1真空チャンバ31内の位置決め機構50との間で保持用円盤42を搬送する自動移載機構38は、第2真空チャンバ内に配設されほぼ水平に伸びたガイド部53と、このガイド部によって支持され第1および第2真空チャンバ内に進退自在にガイドされた可動アーム54と、を備えている。可動アーム54には、保持用円盤42を把持する把持部56が設けられている。そして、自動移載機構38は、把持部56により保持用円盤42を把持した状態で可動アーム54を進退させることにより、円盤保持治具40と位置決め機構50との間で保持用円盤42を搬送し、円盤保持治具および位置決め機構に対して保持用円盤を選択的に装填および取り出しする。
【0028】
次に、以上のように構成されたゲッター膜形成装置を用いて前面基板11にゲッター膜を形成する工程について説明する。
まず、ゲッター材41を保持用円盤42の同一円周上に等間隔に複数個設置する。続いて、第2真空チャンバ32の扉36を開き、円盤保持治具40上に保持用円盤42を設置する。扉36を閉めた後、真空ポンプ32aを作動させ第2真空チャンバ32を真空排気し10−5Pa程度の高真空に維持する。
【0029】
この状態で、保持用円盤42およびゲッター材41の脱ガス処理を行う。すなわち、加熱ユニット44および46によって保持用円盤42およびゲッター材41をそれぞれ加熱し、保持用円盤およびゲッター材から吸着ガスを放出させる。この際、加熱温度をゲッター材41の蒸発温度よりも低い温度、例えば、500℃に設定し、約30〜60秒間、加熱する。加熱温度は、200℃以上であることが望ましい。
このように保持用円盤42およびゲッター材41を予め脱ガス処理することにより、ゲッター材供給動作時にゲッター材および保持用円盤からのガス放出により第1真空チャンバ31の真空度が低下することを防止する。
【0030】
脱ガス処理後、第2真空チャンバ32が所定の真空度に達してから、ゲート弁33を開き、保持用円盤42の移載動作に入る。この時、第1真空チャンバ31は、真空ポンプ31aによって真空排気され、予め所定の高真空状態に維持されている。また、第1真空チャンバ31内には、ゲッター膜の形成対象部材として、前面基板11が配置されている。
【0031】
保持用円盤42の移載する場合、自動移載機構38を駆動し、可動アーム54をゲート弁33の開口部を通して第2真空チャンバ32内に進入させる。そして、把持部56を保持用円盤42の下方に配置した後、円盤保持治具40を上下動させ、把持部56に保持用円盤42を移載する。
【0032】
この際、自動移載機構38の把持部56および円盤保持治具40には例えば複数個のピン等の円盤位置決め機構が設けられ、円盤保持治具に位置決めされていた保持用円盤42を所定の位置に規制した状態で、搬送することができる。
【0033】
次に、可動アーム54を第1真空チャンバ31内に引き込み、ゲート弁33を通して保持用円盤42を第1真空チャンバ内に搬入する。その後、位置決め機構50を上下動させ、保持用円盤42を把持部56から位置決め機構上に移載する。
【0034】
保持用円盤42が位置決め機構50上に設置された後、位置決め機構により保持用円盤を間欠回転させ、保持用円盤上のゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に位置決め搬送する。ここで、ゲッターフラッシュ位置は保持用円盤42上のゲッター材設置用ピッチ円周上の位置になるよう設計されている。
【0035】
ゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に位置決めした後、高周波コイル51によりゲッター材をその蒸発温度以上の温度まで加熱しゲッターフラッシュを行う。これにより、前面基板11の蛍光面側にゲッター膜を真空蒸着する。なお、保持用円盤42は高周波加熱に影響を受けない非誘電材料で形成されていることから、ゲッター材41のみの加熱制御することができる。
ゲッター膜の形成された前面基板11は、大気に晒されることなく他の真空チャンバに搬送され、真空雰囲気中で背面基板と封着される。これにより、FEDが得られる。
【0036】
一方、1枚の前面基板11に対してゲッター膜の形成が終了した後、次の前面基板を第1真空チャンバ31内に搬入し所定位置に配置する。続いて、位置決め機構50により保持用円盤を間欠回転させ、保持用円盤42上の次のゲッター材41をゲッターフラッシュ位置に位置決め搬送する。そして、高周波コイル51によりゲッター材41を加熱してゲッターフラッシュを行い、前面基板11の蛍光面側にゲッター膜を真空蒸着する。
【0037】
上述した一連のゲッター膜形成工程を繰り返すことにより、保持用円盤42上のゲッター材41を使用して複数枚の前面基板11に順次ゲッター膜を形成する。保持用円盤42上の全てのゲッター材41が使用し終わった後、第1真空チャンバ31および第2真空チャンバ32を高真空に保持した状態で、ゲート弁33を開け、使用済みゲッター材を載置した保持用円盤を自動移載機構38によって第1真空チャンバから第2真空チャンバに移載する。続いて、ゲート弁33を閉じた後、第2真空チャンバ32を大気開放し、扉36から保持用円盤42を取り出す。これにより、作業用の第1真空チャンバ31を大気に開放することなく、ゲッター材41を供給および排出することができる。
【0038】
一方、本実施の形態によれば、複数のゲッター材41が支持された上述の保持用円盤42を予め複数組用意しておく。そして、1つの保持用円盤42に保持されたゲッター材41を用いてゲッター膜形成を行っている間、他の保持用円盤42を第2真空チャンバ32内に配置し、真空排気および脱ガス処理を行う。
【0039】
一連のゲッター材供給工程において、第1真空チャンバ31および第2真空チャンバ32を高真空に保持した状態で、ゲート弁33を開け、使用済みゲッター材を載置した保持用円盤42を第1真空チャンバから第2真空チャンバに排出するとともに、新規のゲッター材41を保持した保持用円盤42を第2真空チャンバから第1真空チャンバへ搬入する。
【0040】
これにより、保持用円盤42に搭載されているゲッター材の数量に対応するゲッター膜形成作業サイクル時間を第2真空チャンバ32におけるゲッター材41の供給排出作業、真空引き、脱ガス処理時間に当てることができる。従って、第1真空チャンバ31では、次のゲッター材供給の待ち時間を大幅に低減することができ、ゲッター膜形成の作業効率向上を図ることができる。
【0041】
以上のように構成されたゲッター膜形成装置およびゲッター形成方法によれば、対象部材に対しゲッタ−膜を形成する作業用の真空チャンバとは別にゲッター材供給用の真空チャンバを設け、これらの真空チャンバをゲ−ト弁を介して連結している。そのため、作業用の真空チャンバを大気に晒すことなく、所要の真空度を維持した状態でゲッタ−材を供給及び排出することができ、ゲッター膜の形成を効率良く行うことが可能となる。
【0042】
また、ゲッタ−材の供給形態としてゲッタ−材を複数個保持可能な保持用円盤を使用し、更に、供給用の真空チャンバにゲッタ−材および保持用円盤を脱ガス処理する加熱ユニットを設けている。これにより、1回の供給作業で複数個のゲッター材を供給することができるとともに、脱ガス処理されたゲッター材および保持用円盤を供給することにより作業用の真空チャンバを高い真空度に維持することができる。
【0043】
更に、ゲッター材を保持した保持用円盤を複数組用意しておくことにより、作業用の真空チャンバ内でゲッター膜形成作用を行っている間、供給用の真空チャンバ内でゲッター材の供給排出作業、真空引き、脱ガス処理時間を行うことができる。これにより、次のゲッター材供給の待ち時間を大幅に低減し、ゲッター材を連続的に供給することが可能となり、ゲッター膜形成の作業効率向上を図ることができる。
【0044】
なお、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、脱ガス処理およびゲッターフラッシュにおけるゲッター材の加熱方式は、上述した高周波加熱に限らず、ゲッター材に通電して加熱する抵抗加熱を用いることもできる。また、ゲッター材を保持する保持部材は、上述した保持用円盤に限らず、他の形状としてもよい。その他、この発明において、ゲッター膜の形成対象部材はFEDの前面基板に限定されることはなく、種々選択可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ゲッター膜を効率良く形成し、製造コストの低減を図ることが可能なゲッター膜形成方法およびゲッター膜形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像表示装置の一例としてのFEDを示す斜視図。
【図2】図1の線A−Aに沿った上記FEDの断面図。
【図3】上記FEDの製造に用いるゲッター膜形成装置を示す断面図。
【図4】上記ゲッター膜形成装置の第2真空チャンバを拡大して示す断面図。
【図5】上記ゲッター膜形成装置の第1真空チャンバ内に配設された位置決め機構および加熱機構を概略的に示す側面図。
【符号の説明】
10…真空外囲器
11…前面基板
12…背面基板
13…側壁
15…蛍光体スクリーン
18…電子放出素子
20…メタルバック
22…ゲッター膜
31…第1真空チャンバ
32…第2真空チャンバ
38…自動移載機構
40…円盤保持治具
41…ゲッター材
42…保持用円盤
44、46…加熱ユニット
50…位置決め機構
Claims (13)
- 対象部材上にゲッター膜を形成するゲッター膜形成方法において、
ゲート弁を挟んで連結された第1および第2真空チャンバを用意し、
上記第1真空チャンバ内に上記対象部材を配置するとともに上記第1真空チャンバ内を高真空状態に維持し、
上記ゲート弁を閉じた状態で上記第2真空チャンバのみを大気に開放した後、第2真空チャンバにゲッター材を装填し、
上記ゲッター材が装填された第2真空チャンバ内を真空状態に排気した後、上記ゲート弁を介してゲッター材を第2真空チャンバから第1真空チャンバに供給し、
上記ゲート弁を閉じた状態で上記ゲッター材を加熱しゲッターフラッシュを行い、上記対象部材にゲッター膜を形成することを特徴とするゲッター膜形成方法。 - 上記第1および第2真空チャンバを真空に維持した状態で、上記第1真空チャンバ内の使用済みゲッター材を上記ゲート弁を介して第1真空チャンバから第2真空チャンバに搬送し、上記ゲート弁を閉じた状態で第2真空チャンバのみを大気に開放し、上記使用済みゲッター材を排出することを特徴とする請求項1に記載のゲッター膜形成方法。
- 上記第1真空チャンバ内でゲッター膜を形成している間、上記ゲート弁を閉じた状態で上記第2真空チャンバのみ大気に開放し、第2真空チャンバに対して新しいゲッター材を装填した後、第2真空チャンバ内を真空状態に維持し、
上記ゲッター膜の形成が終了した後、上記第1および第2真空チャンバを真空に維持した状態で、使用済みゲッター材を上記ゲート弁を介して第1真空チャンバから第2真空チャンバに搬送するとともに上記新しいゲッタ材を第2真空チャンバから第1真空チャンバへ供給し、
上記新しいゲッタ材の供給後、上記ゲート弁を閉じた状態で第2真空チャンバのみを大気に開放し、上記使用済みゲッター材を排出するとともに新しいゲッタ材を第2真空チャンバへ供給することを特徴とする請求項1に記載のゲッター膜形成方法。 - 保持部材上に複数のゲッター材を載置し、この支持部材と共に複数のゲッター材を上記第1あるいは第2真空チャンバに同時に供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記載のゲッター膜形成方法。
- 上記真空状態に維持された第2真空チャンバ内で上記ゲッター材を加熱してゲッター材の脱ガス処理を行った後、上記第1真空チャンバに供給することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゲッター膜形成方法。
- 上記真空状態に維持された第2真空チャンバ内で上記ゲッター材および支持部材を加熱してゲッター材および支持部材の脱ガス処理を行った後、上記第1真空チャンバに供給することを特徴とする請求項4に記載のゲッター膜形成方法。
- 上記第1真空チャンバにおいて、上記支持部材を移動させてこの支持部材上に載置された複数のゲッター材を順次ゲッターフラッシュ位置に位置決めすることを特徴とする請求項4又は6に記載のゲッター膜形成方法。
- ゲッター膜を形成する対象部材を収納する第1真空チャンバと、
ゲート弁を介して上記第1真空チャンバに連結されているとともに第1真空チャンバよりも小さい第2真空チャンバと、
第1真空チャンバおよび第2真空チャンバをそれぞれ真空排気する第1および第2真空ポンプと、
上記ゲート弁を介して、真空状態に維持された第1および第2真空チャンバ間でゲッター材を搬送する移載機構と、
上記第1真空チャンバ内に設けられ、上記ゲッター材を加熱してゲッターフラッシュを行う加熱機構と、
を備えたことを特徴とするゲッター膜形成装置。 - 複数のゲッター材が載置された保持部材と、
上記第2真空チャンバ内に設けられ上記保持部材を支持する保持治具と、
上記第1真空チャンバ内に設けられ上記保持部材を支持するとともに上記支持部材を移動させて支持部材上のゲッター材をゲッターフラッシュ位置に位置決めする位置決め機構と、を備え、
上記移載機構は、上記第1および第2真空チャンバの間を移動自在に設けられた可動アームと、上記可動アームに設けられ上記支持部材を把持する把持部と、を有していることを特徴とする請求項8に記載のゲッター膜形成装置。 - 上記保持部材は円盤状に形成され、上記ゲッター材は、上記保持部材の中心と同芯円上に所定の間隔で並べて配置され、
上記位置決め機構は、上記保持部材を中心部の周りで間欠的に回転させる間欠回転機構を備えていることを特徴とする請求項9に記載のゲッター膜形成装置。 - 上記加熱機構は、上記ゲッターフラッシュ位置に位置決めされたゲッター材を非接触で加熱する高周波コイルを備えていることを特徴とする請求項9又は10に記載のゲッター膜形成装置。
- 上記第2真空チャンバ内に設けられ、上記ゲッター材を加熱して脱ガス処理する加熱ユニットを備えていることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載のゲッター膜形成装置。
- 上記第2真空チャンバ内に設けられ、上記保持部材および上記ゲッター材を加熱して脱ガス処理する加熱ユニットを備えていることを特徴とする請求項9に記載のゲッター膜形成装置。
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