JP2004085385A - 圧電体の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スパークが発生せず、信頼性の高い圧電特性の評価を可能とする圧電体の評価方法を提供する。
【解決手段】厚みが100μm以下の圧電体1の主面2a及び対向主面2bに、該圧電体1を挟持するように一対の電極3が設けられてなる評価用試料に対して、該電極3間に300V以下の電圧を印加して圧電特性を測定することを特徴とするもので、前記圧電体1の主面2aにおいて、縁端部7aから前記電極3までの最小距離Lが少なくとも100μmであること、及び前記圧電体1の主面2aの全面積Stotに対して、前記電極3の占める面積Sの割合S/Stotが95%以下であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細なインク吐出孔からインク滴を吐出して文字や画像を印刷する各種プリンターや記録計、ファクシミリ、あるいは捺染分野や窯業分野で文様形成等に用いられる印刷機等の記録装置に搭載されるインクジェット記録ヘッド等に好適に使用される圧電体の評価方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、マルチメディアの浸透に伴い、インパクト方式の記録装置に代わって、インクジェット方式や熱転写方式を利用したノンインパクト方式の記録装置が開発され、その利用範囲が各種産業分野および一般家庭分野において広がりつつある。
【0003】
かかるノンインパクト方式の記録装置のなかでも、インクジェット方式を利用した記録装置は、多階調化やカラー化が容易で、ランニングコストが低いことから将来性が注目されている。
【0004】
このインクジェット方式を利用した記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドの例を図2に示す。インクジェット記録ヘッドは、複数の溝を並設してなり、上記溝をインク流路11とするとともに、各溝を仕切る壁を隔壁12とした流路部材13と、圧電体14の一方の主面に共通電極15を、他方の主面に個別電極16を形成した圧電素子17を有し、圧電素子17の共通電極15側を流路部材13の開口部18に接着するとともに、圧電素子17の個別電極16の各々はインク流路11の各々と対応するように設けられている。
【0005】
そして、駆動回路より個別電極16に電圧を印加し、インク流路11を形成する圧電素子17を振動させることによりインク流路11内のインクを加圧し、流路部材13の底面に開口させたインク吐出孔18よりインク滴を吐出する構造が特開平10−151739号公報に提案されている。
【0006】
ところが、近年、インクジェットプリンターの高速化の要求が高まり、インク吐出に直接関係する圧電素子17に対して、高い圧電特性が要求されるようになった。そこで、圧電素子17を構成する圧電体14自体の圧電特性を評価することが行われるようになった。
【0007】
例えば、圧電体を挟持するように一対の電極が該圧電セラミックブロック体の主面に設けられてなる評価用試料を作製し、該評価用試料の一対の電極に電圧を印加して共振周波数を測定し、その値から圧電特性を算出する方法(共振法)が日本電子材料工業会標準規格EMAS−6100に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に記載の評価方法における測定用試料の形状が、実際の形状と大きく異なっているため、実際に圧電体を変位させた場合における圧電特性、具体的には圧電定数と一致しない場合が多く、正確な評価を行うことが困難であるという問題があった。
【0009】
また、上記の圧電セラミックブロック体を変位させようとすると、少なくとも数kVの電圧を印加することが必要であり、そのため、電流の少なくとも一部が圧電体中を電流が流れずに、圧電体の表面を周り込んで電気が流れ、スパークが発生するという問題があった。
【0010】
したがって、本発明は、スパークが発生せず、実製品における変位圧電特性と対応する評価を可能とする圧電体の評価方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、圧電体の厚みを100μm以下、印加電圧を300V以下に設定することによって、電極間に印加する電圧を大幅に低下せしめることができるため、スパークの発生を顕著に抑制できる。また、表面電流の発生を防止することが可能であり、その結果正確な測定が可能になるという新規な知見に基づくもので、特に圧電体の電極形成面における電極サイズを小さくし、圧電体の内部に設けることでさらに測定の信頼性を高めたものである。
【0012】
即ち、本発明の圧電体の評価方法は厚みが100μm以下の圧電体の主面及び対向主面に、該圧電体を挟持するように一対の電極が設けられてなる評価用試料に対して、該電極間に300V以下の電圧を印加して圧電特性を測定することを特徴とするものである。
【0013】
特に、前記圧電体の主面において、縁端部から前記電極までの最小距離が少なくとも100μmであることが好ましい。また、前記圧電体の主面の全面積に対して、前記電極の占める面積の割合が95%以下であることが好ましい。これにより、電流の表面周り込みがさらに抑制され、その結果測定精度がさらに向上し、スパークの発生をさらに抑制できる。
【0014】
さらに、前記圧電特性が、分極方向に対し垂直方向若しくは水平方向に伸び振動を行うモードであることが好ましい。これは、圧電体の厚み方向、辺方向の何れかの変位に関しては、圧電体の厚み100μm以下になっても、評価精度が保てる為である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を、図を用いて説明する。なお、以下に示す評価は、治具を用いて圧電体の測定するものであるが、治具の形状は本例に限定されるものではなく、圧電体の変位を測定できるものであれば良い。
【0016】
本発明によれば、圧電体の試料は、図1に示したように、圧電体1の主面2aと対向主面2bの表面に、導電性材料からなる一対の電極3が形成された構造となっている。そして、圧電特性の測定のため、電圧を印加するために圧電体1の主面2aと対向主面2bの表面に形成された電極3各々に接続されるように端子電極5が形成された絶縁端子ホルダー4に挟み込み、電圧印加を行うことで変位を発生させている。変位量と印加電圧の関係により圧電特性、具体的には圧電定数が求められる。
【0017】
変位量の測定は、圧電体の試料の一端が絶縁端子ホルダー4によって固定されているため、他端の変位量を測定することによって試料の変位量とすることができる。その際の変位量測定は、特に限定されないが、レーザードップラー振動計を用いることが、測定の容易性、測定精度の面で好ましい。
【0018】
なお、図1における試料形状は四角形であるが、円形でも多角形であっても良い。また、電極3の形状も特に図1に図示された形状に制限されるものではなく、電極3に電流を供給できれば良い。
【0019】
本発明においては、圧電体1の厚みtが100μm以下であることが重要である。特に、測定に耐え得る強度を確保するため、厚みtの下限値は、10μm、更には20μmであることが好ましい。また、所定の圧電特性を発揮させるためには、単位厚み当たりに印加する電圧値は一定にする必要があり、厚みtが大きくなる程、印加電圧自体は増大し、スパークが発生し易くなる。そのため上限値は特に70μm、さらには50μmであることが好ましい。
【0020】
また、一対の電極3間に印加する電圧は、300V以下であることが重要である。これにより、スパーク発生を抑制できる。特に、250V以下、さらには200V以下であることがより好ましい。
【0021】
また、電流の周り込みを抑制させるという面から、電極3が形成される圧電体1の主面の縁端部7aと、電極3の端部7bとの最小距離Lが少なくとも100μmであることが好ましい。これは、最小距離Lを100μm以上の値にすることで、電流の流路長が大きくなり、その結果リーク電流の流れる流路の抵抗値が増大し、電極3間が十分に絶縁され、スパークの発生をより効果的に低減するためである。
【0022】
同様に、前記圧電体1の主面2aの全面積Stotに対して、前記電極3の占める面積Sの割合S/Stotが95%以下、特に90%以下、さらには85%以下であることが好ましい。これも上記と同様に、電流の流路面積が狭くなることにより、リーク電流の流れる流路の抵抗値が増大し、電極3間が十分に絶縁され、スパークの発生を効果的に抑制できる。
【0023】
本発明においては、評価する圧電特性が、分極方向に対して垂直方向に振動するモード(d31モード)、分極方向に対して水平方向に伸び振動を行うモード(d33モード)であることが重要である。これは、振動方向が1軸方向のために、変位量の測定が簡単に、精度良く行えるためである。
【0024】
【実施例】
先ず、圧電セラミックスとしてチタン酸ジルコン酸鉛を用い、アクリル水溶液、分散剤と混合しスラリー化を行った。その後、ロールコーターにて4種類の厚みにテープを作製した。
【0025】
次に、それぞれのテープの両面に70:30のAg−Pd電極ペーストを用いて、厚み4μmの平面電極を印刷法にて形成した。その後、各厚みのテープから切断し、所望により積層して作製したからなる成形体を、トップ温度(焼成温度)1200℃、キープ時間3時間の焼成を行って評価試料を得た。
【0026】
評価試料の圧電体の厚みをマイクロメータで測定した。また、評価試料の主面の面積、及び平面電極の面積を測定し、主面に占める平面電極の占める割合を算出した。さらに、圧電体の主面において、縁端部から前記電極までの最小距離を測定した。
【0027】
次いで、それぞれの評価試料を図1と同様の治具に装填し、端子電極に表1に示した電圧を印加し、評価試料の電界強度(E)が一定になるようにするとともに、レーザードップラー振動計にて変位量の測定を行って、圧電定数を算出した。なお、試料No.19は、従来法で作製した試料であり、その厚みが1000μm(1mm)と厚いため、本発明の測定方法では変位量の測定が困難であり、圧電定数をEMAS試験(共振法)によって測定した。
【0028】
また、実際の形状との比較を行なうために、それぞれの評価試料を図2に示す実製品と同様にして流路部材に貼り付け、同様の手法にて圧電定数を求めた。そして、本発明の評価方法による圧電定数に対する実形状での圧電定数の割合を算出し、比率として示した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 2004085385
【0030】
本発明の試料No.1〜3、5〜17は、特性評価においてスパークの発生がなく、比率が90%以上であり、圧電特性の実効値を正確に測定することができた。
【0031】
一方、厚みが150μmで本発明の範囲外の試料No.4及び18は、スパークが発生し、圧電特性の実効値を測定することができなかった。
【0032】
また、従来の製造方法で作製し、厚みが1000μmもある本発明の範囲外の試料No.19は、比率が58.8%と低く、実形状での圧電定数がEMAS試験による圧電定数と大きく異なっていた。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、圧電体の厚みを100μm以下とすることにより、印加電圧を低減でき、且つリーク電流を著しく低減することができるため、スパークの発生を抑制でき、信頼性の高い圧電特性を評価することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の評価法を実施した一例を示す概要図である。
【図2】インクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・圧電体
2a・・・主面
2b・・・対向主面
3・・・電極
4・・・絶縁端子ホルダー
5・・・端子電極
7a・・・主面の縁端部
7a・・・電極の端部
t・・・圧電体の厚み
L・・・圧電体の主面の端部との距離
S・・・電極面積

Claims (4)

  1. 厚みが100μm以下の圧電体の主面及び対向主面に、該圧電体を挟持するように一対の電極が設けられてなる評価用試料に対して、該電極間に300V以下の電圧を印加して圧電特性を測定することを特徴とする圧電体の評価方法。
  2. 前記圧電体の主面において、縁端部から前記電極までの最小距離が少なくとも100μmであることを特徴とする請求項1記載の圧電体の評価方法。
  3. 前記圧電体の主面の全面積に対して、前記電極の占める面積の割合が95%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電体の評価方法。
  4. 前記圧電特性が、分極方向に対して垂直方向若しくは水平方向に伸び振動を行うモードであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電体の評価方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006313783A (ja) * 2005-05-06 2006-11-16 Ngk Insulators Ltd 圧電/電歪デバイスの検査方法、及び圧電/電歪デバイス
JP2012163502A (ja) * 2011-02-09 2012-08-30 Murata Mfg Co Ltd 圧電特性の測定装置および測定方法

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