JP2004084875A - 鉛直免震装置および該装置を備えた三次元免震装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛直方向の固有振動数を小さく設定可能な鉛直免震機構を提供する。
【解決手段】鉛直免震機構14は、下プレート6と、下プレートの上方に配置される上プレート12との間に配置される。上プレート12の運動は、ラック16/ピニオン24を介して、連結軸28および該軸に取り付けたウォームギア34の回転運動に変換され、ウォームホイール38に伝達する。ウォームホイールを固定するホイール軸42の一端は下プレートに固定されており、ウォームホイールが回転する際に、ねじり力をウォームホイールに作用させる。上テーブルの上下運動は、減速比の大きなウォームギア・ホイールを介してホイール軸に伝達するため、上テーブルが大きく変位しても該軸のねじり角が非常に小さい。すなわち、上テーブルが大きく変位しても、上テーブルが受ける反力を小さくでき、鉛直免震機構の上下方向のばね定数を極めて小さくできる。
【選択図】図1
【解決手段】鉛直免震機構14は、下プレート6と、下プレートの上方に配置される上プレート12との間に配置される。上プレート12の運動は、ラック16/ピニオン24を介して、連結軸28および該軸に取り付けたウォームギア34の回転運動に変換され、ウォームホイール38に伝達する。ウォームホイールを固定するホイール軸42の一端は下プレートに固定されており、ウォームホイールが回転する際に、ねじり力をウォームホイールに作用させる。上テーブルの上下運動は、減速比の大きなウォームギア・ホイールを介してホイール軸に伝達するため、上テーブルが大きく変位しても該軸のねじり角が非常に小さい。すなわち、上テーブルが大きく変位しても、上テーブルが受ける反力を小さくでき、鉛直免震機構の上下方向のばね定数を極めて小さくできる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に構造物の鉛直方向の振動を絶縁するための鉛直免震装置に関する。本発明はまた、該鉛直免震装置を備えた三次元免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建物やプラントなどの構造物の耐震性を向上させるために、水平方向のみならず鉛直方向(上下方向)の構造物の振動を絶縁するための三次元免震装置の実現が望まれている。
【0003】
このような三次元免震装置として、水平方向に関する構造物の固有振動数を低減すると同時に、鉛直方向に関する構造物の固有振動数を低減することが要求される。また、鉛直方向の固有振動数を下げる目的で鉛直免震を行う鉛直免震手段のばね定数を小さくした場合、構造物に水平方向地震荷重が加わると、転倒モーメントの作用により構造物がロッキングすることがあるため、三次元免震装置は、構造物のロッキングを防止・抑制するロッキング機構を備えていることが要求される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
鉛直方向の免震を効果的に行うには、鉛直方向の固有振動数は1Hz程度まで低くするのが望ましい。これを実現するために鉛直免震手段としてコイルばねを用いる場合、コイルばねの剛性を非常に小さくする必要がある。しかしながら、他方、コイルばねは構造物の自重を支える必要があるため、寸法の大きなコイルばねを用いなければならない。また、鉛直免震手段として空気ばねを用いる場合、大型の空気タンク等を用意する必要があり、免震装置の規模が大きくなる問題がある。このような免震装置の大型化を避けるために、従来では、鉛直方向の固有振動数を例えば3Hz程度に高めに設定する必要があった。
【0005】
さらに、鉛直免震手段のばね定数を小さくすると、地震荷重以外の比較的小さな鉛直荷重変動(例えば、構造物の自重のアンバランスや構造物内での荷重の移動))が生じた場合であっても、鉛直免震手段の作用により構造物が上下に揺れる可能性がある。
【0006】
加えて、ロッキングを防止するための従来の機構は比較的複雑であり(例えば、特開10−213177号公報、特開2002−106632号公報参照)、その結果、免震装置が高コスト化する問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、鉛直方向の固有振動数を1Hz程度にまで低下させることができる比較的簡単な構成の鉛直免震装置、および該装置を備えた三次元免震装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、水平地震時のロッキング防止を行う機構を簡単化した鉛直免震装置(三次元免震装置)を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はさらに、比較的小さな鉛直荷重変動に対する構造体の揺れを防止する鉛直免震装置(三次元免震装置)を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る鉛直免震装置は、
基台部と該基台部の上方に配置される被免震体との間に配置され、被免震体の鉛直方向の振動を絶縁するための鉛直免震装置において、
被免震体の鉛直方向の運動を減速する減速ギア機構を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る鉛直免震装置は、請求項1の鉛直免震装置において、減速ギア機構がウォームギアと該ギアに係合するウォームホイールとを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る鉛直免震装置は、請求項2の鉛直免震装置において、
被免震体とともに鉛直方向に運動する可動部と、該可動部の運動をウォームギアの回転運動に変換する変換部と、ウォームホイールの所定の軸周りの所定の方向に関する回転に対し逆方向の回転力をウォームホイールに作用する反力発生部とをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る鉛直免震装置は、請求項3の鉛直免震装置において、
変換部は、可動部に固定されたラックと、該ラックに係合したピニオンと、ピニオンを固定する第1のシャフトとを備え、
第1のシャフトにウォームギアが取り付けてあることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る鉛直免震装置は、請求項3の鉛直免震装置において、
反力発生部は、ウォームホイールを固定し一端が基台部に固定された第2のシャフトを有し、ウォームホイールが回転する際に、ねじり力をウォームホイールに作用させることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る鉛直免震装置は、請求項3の鉛直免震装置において、
変換部は、可動部に固定された一対のラックと、これらラックにそれぞれ係合した一対のピニオンと、これらピニオンを固定する第1のシャフトとを備え、
第1のシャフトにウォームギアが取り付けてあることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る鉛直免震装置は、請求項1の鉛直免震装置において、
被免震体とともに鉛直方向に運動する可動部と、該可動部の運動を減速ギア機構の入力側のギアの回転運動に変換する変換部と、減速ギア機構の出力側のギアの所定の軸周りの所定の方向に関する回転に対し逆方向の回転力を前記出力側のギアに作用する反力発生部とをさらに備え、
変換部は、可動部に固定された一対のラックと、これらラックにそれぞれ係合した一対のピニオンと、これらピニオンを駆動連結する連結機構とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る鉛直免震装置は、請求項3〜7の鉛直免震装置において、
可動部が所定の値以下の鉛直方向の荷重変動を受けた場合に、免震装置が作動しないようにするための安全機構をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る鉛直免震装置は、請求項8の鉛直免震装置において、
安全機構は、可動部から鉛直方向に延びた第1の摩擦板と、基台部から鉛直方向に延びた第2の摩擦板とを備え、
第1の摩擦板と第2の摩擦板は、水平方向に関して互いに押付けられた状態で重ねられていることを特徴とする。
【0019】
請求項10に係る三次元免震装置は、請求項1〜9のいずれかの鉛直免震装置を備え、被免震体の鉛直方向および水平方向の振動を絶縁することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の説明において、同一または類似の構成要素は、同一の符号または同一の符号に適当な添字を付して示す。
【0021】
<第1の実施形態>
図1〜4を参照して本発明に係る三次元免震装置の第1の実施形態を説明する。全体を符号2で示す三次元免震装置は、基礎(地面)4の上側に配置され、下テーブル(基台部)6を支持する水平免震機構8と、下テーブル6の上側に配置され、建物などの被免震体10の下面に固定された上テーブル(可動部)12を支持する上下(鉛直)免震機構14とを備える。水平免震機構8は、被免震体10の重心を通る鉛直線の周りに複数配設されている。同様に、鉛直免震機構14は、被免震体10の重心を通る鉛直線の周りに複数配設されている(本実施形態では、図3に示すように、テーブルの4辺に一つずつ設けてある。)。
【0022】
以下、鉛直免震機構14を詳しく説明するが、説明の都合上、図1の左右方向をX方向、図1の紙面垂直方向をY方向、図1の上下方向をZ方向とする。各鉛直免震機構14は、X方向(またはY方向(図3参照))に関し所定の間隔をあけて、上テーブル12の下面から鉛直下向きに伸びた2つの鉛直板16R,16Lを備えている。鉛直板16Rの対向する側壁には一対のラック20Rが付いている。同様に、鉛直板16Lの対向する側壁には一対のラック20Lが付いている。鉛直板16Rの一対のラック20Rには一対のピニオン24Rが係合している。同様に、鉛直板16Lの一対のラック20Lには一対のピニオン24Lが係合している。ピニオン24Rとピニオン24Lは、X方向(またはY方向(図3参照))に伸びた連結軸(第1のシャフト)28を介して連結されている。各水平軸28の両端は、下テーブル6の上面に設けられた軸受30R,30Lにより回転自在に支持されている。各水平軸28の両端近傍にはウォームギア34R,34Lが取付けてある。ウォームギア34L,34Rにはそれぞれウォームホイール38R,38Lが係合している。ウォームホイール38R,38Lはそれぞれ、下テーブル6に下端が固定されZ方向に伸びたホイール軸(第2のシャフト)42R,42Lの上端近傍に固定されている。
【0023】
かかる鉛直免震機構14を備えた三次元免震装置2において、被免震体10に上下地震荷重が作用した場合、上テーブル12は、下テーブル6に対し相対的に上下方向に振動する。この上下運動は、ラック20R,20Lに係合するピニオン24R,24Lにより回転運動に変換され、連結軸28を介してウォームギア34R,34Lに伝達する。その結果ウォームホイール38R,38Lが回転し、この回転力は、ホイール軸42R,42Lのねじりモーメントに変換される。
【0024】
本実施形態では、上テーブル12の上下運動は、減速比の大きなウォームギア34R,34Lとウォームホイール38R,38Lを介してホイール軸42R,42Lに伝達するため、上テーブル12が大きく変位してもホイール軸42R,42Lのねじり角(したがってねじりモーメント)が非常に小さい。言い換えれば、上テーブル12が大きく変位しても、上テーブル12が受ける反力を小さくでき、したがって鉛直免震機構14の上下方向のばね定数を極めて小さくできる。上テーブル12の上下運動を減速するために、ピニオン24R,24Lの直径を大きく設計することで連結軸28の回転角を小さくすることもできる。
【0025】
また、隣接するピニオン24R,24Lは連結軸28を介して互いに連結されているので、一方のピニオン、例えばピニオン24Rに係合するラック20Rを備えた鉛直板16Rが上下に移動する際に、ピニオン24Rが回転すると同時に他方のピニオン24Lが回転する。したがって、ピニオン24Lに係合するラック20Lを備えた鉛直板16Lは、鉛直板16Rと同期して上下移動するため、上テーブル12のロッキングが防止される。なお、ピニオン24Rとピニオン24Lが逆方向に回転しないようにするために、連結軸28のねじり剛性は高く設定されている。図3を参照して、本実施形態では、X軸周りのロッキングおよびY軸周りのロッキングが防止される。
【0026】
次に、図1を参照して本実施形態に係る三次元免震装置2の水平免震機構8を詳しく説明する。各水平免震機構8は、下テーブル6の下面に一端が連結された高減衰積層ゴム50を有する。高減衰積層ゴム50の他端は、防塵カバー52を介して、基礎4上に配置された滑りパッド54に連結されている。滑りパッド54の下面には黒鉛プラグ56が埋め込まれており、これにより、滑りバッド54が基礎4上を滑る際の動摩擦力を低減するとともに、滑りパッド54が基礎4に固着するのを防止するようになっている。防塵カバー52は、滑りパッド54と基礎4との間に異物が入り込むのを抑制するためのものである。滑りパッド54は、高粘性流体58中に埋没しており、これにより、滑りパッド54の水平方向の運動を減衰するようになっている。この減衰効果を高めるために、滑りパッド54の周囲には複数の羽根60が取付けてある。下テーブル6が過大に水平方向に変位したときのフェイルセーフ用に、下テーブル6の側面に対向してばね付きストッパ62が基礎4に取付けてある。
【0027】
かかる水平免震機構8を備えた三次元免震装置2において、被免震体10に水平地震荷重が作用した場合、下テーブル6が水平方向に振動するが、該荷重が比較的小さければ滑りパッド64は摩擦力により動かず、高減衰積層ゴム50が被免震体10の水平方向の固有振動数を低減するとともに、被免震体10の水平方向の振動の減衰を行う。水平地震荷重が比較的大きければ、滑りパッド64が摩擦力に抗して滑り、これにより被免震体10の水平方向の固有振動数を低減する。また、滑りパッド64が高粘性流体58に没しているので、滑りパッド64は、被免震体10の水平方向の振動の減衰も行う。
【0028】
三次元免震装置2は、上テーブル12が上下方向に荷重変動を受けた場合に、その荷重が所定の値以下では鉛直免震機構14が作動しないようにするための安全機構64を備えている。安全機構64は、被免震体10の重心を通る鉛直線の周りに複数(図では4つ)配設されている。
【0029】
具体的に、各安全機構64は、上テーブル12の下面から鉛直下向きに伸びた一枚の上側摩擦板66と、該上側摩擦板66の一部を挟むように下テーブル6の上面から鉛直上向きに伸びた一対の下側摩擦板68とを有する。上下摩擦板66、68は例えばステンレスなどで構成されている。図4に示すように、上側摩擦板66と下側摩擦板68の対向する領域において、下側摩擦板68には円孔70が形成されるとともに、上側摩擦板66には上下方向に延びた長孔71が下側摩擦板68の円孔70に重なるように形成されている。上下摩擦板66、68には、円孔70および長孔71を介してボルト74が貫通しており、ボルト74のネジ部は、下側摩擦板68の一方の側面に固定したナット76のネジ孔に螺合している。上下摩擦板66、68を互いに押付けるために、ボルト74の軸部には、一端がボルト頭部に他端が下側摩擦板68の他方の側面に装着されたコイルばね78が巻回されている。円孔70は、ボルト74が下側摩擦板68に嵌合するよう、ボルト74の軸部と略同一の直径を有する。上側摩擦板66に形成する長孔71の大きさは、長孔71が円孔70に嵌合したボルト74に当接した状態で、上側摩擦板66が下側摩擦板68に対し相対的に上下方向に摺動可能に設定されている。
【0030】
上テーブル12に上下荷重変動が作用した場合、上下摩擦板66、68は、最大静止摩擦力(これは、荷重負荷ばね78の種類などを調整することで自由に調整可能である。)以下の摩擦力を受けても互いに滑ることはない。被免震体10が上下地震荷重を受けて、上下摩擦板66、68の受ける摩擦力が最大静止摩擦力を超えると、上側摩擦板66は、下側摩擦板68に対し上下方向に滑ることができ、その結果、鉛直免震機構14が作動することができる。なお、上下摩擦板66、68が互いに上下方向に滑る際に両板には動摩擦力が発生しているため、安全機構64は減衰機能を備えている。
【0031】
このように、安全機構64を設けることで、上テーブル12(あるいは被免震体10)に一定の値以下の上下荷重変動が加わっても鉛直免震機構14が作動するのを防止できる。
【0032】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る三次元免震装置の鉛直免震機構のみを示す図である。本実施形態では、鉛直免震機構14’の上テーブル12の上下運動を減速するための機構として、ウォームギア/ウォームホイールの代わりにベベルギアを用いている。具体的に、ピニオン24R,24Lを連結する連結軸28’には、ベベルギア80R,80Lが取付けてある。これらベベルギア80R,80Lはそれぞれ、鉛直方向に伸びた軸42R’、42L’の一端近傍にそれぞれ固定されたベベルギア84R,84Lに係合している。軸42R’、42L’の他端は下テーブル6に固定されている。
【0033】
かかる構成を有する鉛直免震機構14’において、被免震体に上下地震荷重が作用した場合、上テーブル12は、下テーブル6に対し相対的に上下方向に振動する。この上下運動は、ラック20R,20Lに係合するピニオン24R,24Lにより回転運動に変換され、連結軸28’を介してベベルギア80R,80Lに伝達する。その結果ベベルギア84R,84Lが回転し、この回転力は、軸42R’、42L’のねじりモーメントに変換される。
【0034】
本実施形態では、上テーブル12の上下運動は、ベベルギア80R,80L,84R,84Lで構成される減速ギア機構により減速されるため、上テーブル12が大きく変位しても軸42R’、42L’のねじり角(したがってねじりモーメント)を比較的小さくできる。言い換えれば、上テーブル12が大きく変位しても、上テーブル12が受ける反力を小さくでき、したがって鉛直免震機構14’の上下方向のばね定数を小さくできる。
【0035】
<第3の実施形態>
図6は、別のロッキング防止機構を備えた鉛直免震機構を示す。具体的に、この鉛直免震機構14”において、ピニオン24R,24Lは、回転軸を介して互いに連結されておらず、それぞれ水平軸28R’,28L’に固定されている。水平軸28R’、28L’にはそれぞれ、ベベルギア80R’、80L’が固定されている。ベベルギア80R’、80L’と係合するベベルギア84R’,84L’を支持する鉛直軸42R”,42L”にはそれぞれ、ギア86R,86Lが固定されている。これらギア86R,86Lは、一端が下テーブル6に設けた軸受(図示せず)に回転自在に支持された鉛直軸88R,88Lに固定されたギア90R,90Lを介して、互いに連結されている。
【0036】
かかる構成を有する鉛直免震機構14”において、例えば上テーブル12が鉛直下向きに移動する場合を考える。図面左側の鉛直壁16Lが下向きに変位すると、軸28L’および軸28L’に固定されたベベルギア80L’は矢印90L方向に回転する。その結果、ベベルギア84L’およびギア86Lが矢印92L方向に回転し、ギア90Lが矢印94L方向に回転する。同様に、図面右側の鉛直壁16Rが下向きに変位すると、軸28R’および軸28R’に固定されたベベルギア80R’は、矢印90Lと逆方向(矢印90R方向)に回転する。その結果、ベベルギア84R’およびギア86Rが矢印92Lと逆方向(矢印92R方向)に回転し、ギア90Rが矢印94Lと逆方向(矢印94R方向)に回転する。ギア90Rと90Lは係合しているので、これらの回転角に差が生じることはできない。したがって、鉛直壁16Rと16Lの下向きの変位は一致し、上テーブル12のロッキングが防止される。
【0037】
なお、図面左右に配置するユニット同士の距離が大きい場合は、ギア90R,90Lのようなギア対をさらに設けたり、あるいは、ギアとチェーンを併用すればよい。
【0038】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限らず種々改変可能である。例えば、第1の実施形態では、上テーブルが上下方向に荷重変動を受けた場合に、その大きさが所定の値以下では鉛直免震機構が作動しないようにするために、互いに押付けられた少なくとも一対の摩擦板を利用したが、例えば、柱の座屈の原理を利用して、荷重変動が所定の値以下では鉛直免震機構が作動せず、所定の値を超えると柱が座屈して鉛直免震機構が作動するようにしてもよい。
【0039】
また、水平免震機構は、第1の実施形態で説明した例に限らず、各種の形態が可能である。例えば、高減衰積層ゴム50の代わりに、鉛プラグ入り積層ゴムを用いてもよい。あるいは、滑りパッド54や高粘性流体58を省略することも可能である。但し、高減衰積層ゴム50と滑りパッド64を直列に設ける構成は、仮に滑りパッド64が基礎4に固着して機能しなくなった場合であっても、高減衰積層ゴム50により水平免震を行うというフェイルセーフ機能を水平免震機構8に持たせる点、および、高減衰積層ゴム単体の場合に比べて、滑りパッド64を併用することで高減衰積層ゴム50としてコストを低いものを使用できる点で有利である。
【0040】
さらに、第1の実施形態では、鉛直壁16の対向する側壁にラック20を形成したが、ラックとピニオンが常に係合するようにすれば、鉛直壁16の片側にのみラックを設けてもよい。なお、図3の鉛直免震機構14および安全機構64の数、配置位置などは、本発明を限定するものではない。
【0041】
なお、本発明は、機械構造物、ビル、プラント、重要文化財などあらゆる構造物の免震に適用可能である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、鉛直方向の固有振動数を小さく設定可能な鉛直免震装置および該装置を備えた三次元免震装置を提供できる。また、比較的簡単な構成でロッキングを抑制・防止できる。さらに、比較的小さな上下荷重変動に対して被免震体の縦揺れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る三次元免震装置を示す側面図であって、鉛直免震機構および安全機構を一組のみ示す。
【図2】図1の左側から見た鉛直免震機構の側面図。
【図3】図1の鉛直免震機構の上面図であって、上テーブルを省略した図。
【図4】図1の三次元免震装置に用いられる安全機構の部分側面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る三次元免震装置に用いられる鉛直免震機構を示す側面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る三次元免震装置に用いられる鉛直免震機構を示す側面図。
【符号の説明】
2:三次元免震装置
6:下テーブル(基台部)
8:水平免震機構
10:被免震体
12:上テーブル(可動部)
14:鉛直免震機構
20R,20L:ラック
24R,24L:ピニオン
28:連結軸(第1のシャフト)
34R,34L:ウォームギア
38R,38L:ウォームホイール
42R,42L:ウォーム軸
66:上側摩擦板(第1の摩擦板)
68:下側摩擦板(第2の摩擦板)
64:安全機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に構造物の鉛直方向の振動を絶縁するための鉛直免震装置に関する。本発明はまた、該鉛直免震装置を備えた三次元免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建物やプラントなどの構造物の耐震性を向上させるために、水平方向のみならず鉛直方向(上下方向)の構造物の振動を絶縁するための三次元免震装置の実現が望まれている。
【0003】
このような三次元免震装置として、水平方向に関する構造物の固有振動数を低減すると同時に、鉛直方向に関する構造物の固有振動数を低減することが要求される。また、鉛直方向の固有振動数を下げる目的で鉛直免震を行う鉛直免震手段のばね定数を小さくした場合、構造物に水平方向地震荷重が加わると、転倒モーメントの作用により構造物がロッキングすることがあるため、三次元免震装置は、構造物のロッキングを防止・抑制するロッキング機構を備えていることが要求される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
鉛直方向の免震を効果的に行うには、鉛直方向の固有振動数は1Hz程度まで低くするのが望ましい。これを実現するために鉛直免震手段としてコイルばねを用いる場合、コイルばねの剛性を非常に小さくする必要がある。しかしながら、他方、コイルばねは構造物の自重を支える必要があるため、寸法の大きなコイルばねを用いなければならない。また、鉛直免震手段として空気ばねを用いる場合、大型の空気タンク等を用意する必要があり、免震装置の規模が大きくなる問題がある。このような免震装置の大型化を避けるために、従来では、鉛直方向の固有振動数を例えば3Hz程度に高めに設定する必要があった。
【0005】
さらに、鉛直免震手段のばね定数を小さくすると、地震荷重以外の比較的小さな鉛直荷重変動(例えば、構造物の自重のアンバランスや構造物内での荷重の移動))が生じた場合であっても、鉛直免震手段の作用により構造物が上下に揺れる可能性がある。
【0006】
加えて、ロッキングを防止するための従来の機構は比較的複雑であり(例えば、特開10−213177号公報、特開2002−106632号公報参照)、その結果、免震装置が高コスト化する問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、鉛直方向の固有振動数を1Hz程度にまで低下させることができる比較的簡単な構成の鉛直免震装置、および該装置を備えた三次元免震装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、水平地震時のロッキング防止を行う機構を簡単化した鉛直免震装置(三次元免震装置)を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はさらに、比較的小さな鉛直荷重変動に対する構造体の揺れを防止する鉛直免震装置(三次元免震装置)を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る鉛直免震装置は、
基台部と該基台部の上方に配置される被免震体との間に配置され、被免震体の鉛直方向の振動を絶縁するための鉛直免震装置において、
被免震体の鉛直方向の運動を減速する減速ギア機構を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る鉛直免震装置は、請求項1の鉛直免震装置において、減速ギア機構がウォームギアと該ギアに係合するウォームホイールとを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る鉛直免震装置は、請求項2の鉛直免震装置において、
被免震体とともに鉛直方向に運動する可動部と、該可動部の運動をウォームギアの回転運動に変換する変換部と、ウォームホイールの所定の軸周りの所定の方向に関する回転に対し逆方向の回転力をウォームホイールに作用する反力発生部とをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る鉛直免震装置は、請求項3の鉛直免震装置において、
変換部は、可動部に固定されたラックと、該ラックに係合したピニオンと、ピニオンを固定する第1のシャフトとを備え、
第1のシャフトにウォームギアが取り付けてあることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る鉛直免震装置は、請求項3の鉛直免震装置において、
反力発生部は、ウォームホイールを固定し一端が基台部に固定された第2のシャフトを有し、ウォームホイールが回転する際に、ねじり力をウォームホイールに作用させることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る鉛直免震装置は、請求項3の鉛直免震装置において、
変換部は、可動部に固定された一対のラックと、これらラックにそれぞれ係合した一対のピニオンと、これらピニオンを固定する第1のシャフトとを備え、
第1のシャフトにウォームギアが取り付けてあることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る鉛直免震装置は、請求項1の鉛直免震装置において、
被免震体とともに鉛直方向に運動する可動部と、該可動部の運動を減速ギア機構の入力側のギアの回転運動に変換する変換部と、減速ギア機構の出力側のギアの所定の軸周りの所定の方向に関する回転に対し逆方向の回転力を前記出力側のギアに作用する反力発生部とをさらに備え、
変換部は、可動部に固定された一対のラックと、これらラックにそれぞれ係合した一対のピニオンと、これらピニオンを駆動連結する連結機構とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る鉛直免震装置は、請求項3〜7の鉛直免震装置において、
可動部が所定の値以下の鉛直方向の荷重変動を受けた場合に、免震装置が作動しないようにするための安全機構をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る鉛直免震装置は、請求項8の鉛直免震装置において、
安全機構は、可動部から鉛直方向に延びた第1の摩擦板と、基台部から鉛直方向に延びた第2の摩擦板とを備え、
第1の摩擦板と第2の摩擦板は、水平方向に関して互いに押付けられた状態で重ねられていることを特徴とする。
【0019】
請求項10に係る三次元免震装置は、請求項1〜9のいずれかの鉛直免震装置を備え、被免震体の鉛直方向および水平方向の振動を絶縁することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の説明において、同一または類似の構成要素は、同一の符号または同一の符号に適当な添字を付して示す。
【0021】
<第1の実施形態>
図1〜4を参照して本発明に係る三次元免震装置の第1の実施形態を説明する。全体を符号2で示す三次元免震装置は、基礎(地面)4の上側に配置され、下テーブル(基台部)6を支持する水平免震機構8と、下テーブル6の上側に配置され、建物などの被免震体10の下面に固定された上テーブル(可動部)12を支持する上下(鉛直)免震機構14とを備える。水平免震機構8は、被免震体10の重心を通る鉛直線の周りに複数配設されている。同様に、鉛直免震機構14は、被免震体10の重心を通る鉛直線の周りに複数配設されている(本実施形態では、図3に示すように、テーブルの4辺に一つずつ設けてある。)。
【0022】
以下、鉛直免震機構14を詳しく説明するが、説明の都合上、図1の左右方向をX方向、図1の紙面垂直方向をY方向、図1の上下方向をZ方向とする。各鉛直免震機構14は、X方向(またはY方向(図3参照))に関し所定の間隔をあけて、上テーブル12の下面から鉛直下向きに伸びた2つの鉛直板16R,16Lを備えている。鉛直板16Rの対向する側壁には一対のラック20Rが付いている。同様に、鉛直板16Lの対向する側壁には一対のラック20Lが付いている。鉛直板16Rの一対のラック20Rには一対のピニオン24Rが係合している。同様に、鉛直板16Lの一対のラック20Lには一対のピニオン24Lが係合している。ピニオン24Rとピニオン24Lは、X方向(またはY方向(図3参照))に伸びた連結軸(第1のシャフト)28を介して連結されている。各水平軸28の両端は、下テーブル6の上面に設けられた軸受30R,30Lにより回転自在に支持されている。各水平軸28の両端近傍にはウォームギア34R,34Lが取付けてある。ウォームギア34L,34Rにはそれぞれウォームホイール38R,38Lが係合している。ウォームホイール38R,38Lはそれぞれ、下テーブル6に下端が固定されZ方向に伸びたホイール軸(第2のシャフト)42R,42Lの上端近傍に固定されている。
【0023】
かかる鉛直免震機構14を備えた三次元免震装置2において、被免震体10に上下地震荷重が作用した場合、上テーブル12は、下テーブル6に対し相対的に上下方向に振動する。この上下運動は、ラック20R,20Lに係合するピニオン24R,24Lにより回転運動に変換され、連結軸28を介してウォームギア34R,34Lに伝達する。その結果ウォームホイール38R,38Lが回転し、この回転力は、ホイール軸42R,42Lのねじりモーメントに変換される。
【0024】
本実施形態では、上テーブル12の上下運動は、減速比の大きなウォームギア34R,34Lとウォームホイール38R,38Lを介してホイール軸42R,42Lに伝達するため、上テーブル12が大きく変位してもホイール軸42R,42Lのねじり角(したがってねじりモーメント)が非常に小さい。言い換えれば、上テーブル12が大きく変位しても、上テーブル12が受ける反力を小さくでき、したがって鉛直免震機構14の上下方向のばね定数を極めて小さくできる。上テーブル12の上下運動を減速するために、ピニオン24R,24Lの直径を大きく設計することで連結軸28の回転角を小さくすることもできる。
【0025】
また、隣接するピニオン24R,24Lは連結軸28を介して互いに連結されているので、一方のピニオン、例えばピニオン24Rに係合するラック20Rを備えた鉛直板16Rが上下に移動する際に、ピニオン24Rが回転すると同時に他方のピニオン24Lが回転する。したがって、ピニオン24Lに係合するラック20Lを備えた鉛直板16Lは、鉛直板16Rと同期して上下移動するため、上テーブル12のロッキングが防止される。なお、ピニオン24Rとピニオン24Lが逆方向に回転しないようにするために、連結軸28のねじり剛性は高く設定されている。図3を参照して、本実施形態では、X軸周りのロッキングおよびY軸周りのロッキングが防止される。
【0026】
次に、図1を参照して本実施形態に係る三次元免震装置2の水平免震機構8を詳しく説明する。各水平免震機構8は、下テーブル6の下面に一端が連結された高減衰積層ゴム50を有する。高減衰積層ゴム50の他端は、防塵カバー52を介して、基礎4上に配置された滑りパッド54に連結されている。滑りパッド54の下面には黒鉛プラグ56が埋め込まれており、これにより、滑りバッド54が基礎4上を滑る際の動摩擦力を低減するとともに、滑りパッド54が基礎4に固着するのを防止するようになっている。防塵カバー52は、滑りパッド54と基礎4との間に異物が入り込むのを抑制するためのものである。滑りパッド54は、高粘性流体58中に埋没しており、これにより、滑りパッド54の水平方向の運動を減衰するようになっている。この減衰効果を高めるために、滑りパッド54の周囲には複数の羽根60が取付けてある。下テーブル6が過大に水平方向に変位したときのフェイルセーフ用に、下テーブル6の側面に対向してばね付きストッパ62が基礎4に取付けてある。
【0027】
かかる水平免震機構8を備えた三次元免震装置2において、被免震体10に水平地震荷重が作用した場合、下テーブル6が水平方向に振動するが、該荷重が比較的小さければ滑りパッド64は摩擦力により動かず、高減衰積層ゴム50が被免震体10の水平方向の固有振動数を低減するとともに、被免震体10の水平方向の振動の減衰を行う。水平地震荷重が比較的大きければ、滑りパッド64が摩擦力に抗して滑り、これにより被免震体10の水平方向の固有振動数を低減する。また、滑りパッド64が高粘性流体58に没しているので、滑りパッド64は、被免震体10の水平方向の振動の減衰も行う。
【0028】
三次元免震装置2は、上テーブル12が上下方向に荷重変動を受けた場合に、その荷重が所定の値以下では鉛直免震機構14が作動しないようにするための安全機構64を備えている。安全機構64は、被免震体10の重心を通る鉛直線の周りに複数(図では4つ)配設されている。
【0029】
具体的に、各安全機構64は、上テーブル12の下面から鉛直下向きに伸びた一枚の上側摩擦板66と、該上側摩擦板66の一部を挟むように下テーブル6の上面から鉛直上向きに伸びた一対の下側摩擦板68とを有する。上下摩擦板66、68は例えばステンレスなどで構成されている。図4に示すように、上側摩擦板66と下側摩擦板68の対向する領域において、下側摩擦板68には円孔70が形成されるとともに、上側摩擦板66には上下方向に延びた長孔71が下側摩擦板68の円孔70に重なるように形成されている。上下摩擦板66、68には、円孔70および長孔71を介してボルト74が貫通しており、ボルト74のネジ部は、下側摩擦板68の一方の側面に固定したナット76のネジ孔に螺合している。上下摩擦板66、68を互いに押付けるために、ボルト74の軸部には、一端がボルト頭部に他端が下側摩擦板68の他方の側面に装着されたコイルばね78が巻回されている。円孔70は、ボルト74が下側摩擦板68に嵌合するよう、ボルト74の軸部と略同一の直径を有する。上側摩擦板66に形成する長孔71の大きさは、長孔71が円孔70に嵌合したボルト74に当接した状態で、上側摩擦板66が下側摩擦板68に対し相対的に上下方向に摺動可能に設定されている。
【0030】
上テーブル12に上下荷重変動が作用した場合、上下摩擦板66、68は、最大静止摩擦力(これは、荷重負荷ばね78の種類などを調整することで自由に調整可能である。)以下の摩擦力を受けても互いに滑ることはない。被免震体10が上下地震荷重を受けて、上下摩擦板66、68の受ける摩擦力が最大静止摩擦力を超えると、上側摩擦板66は、下側摩擦板68に対し上下方向に滑ることができ、その結果、鉛直免震機構14が作動することができる。なお、上下摩擦板66、68が互いに上下方向に滑る際に両板には動摩擦力が発生しているため、安全機構64は減衰機能を備えている。
【0031】
このように、安全機構64を設けることで、上テーブル12(あるいは被免震体10)に一定の値以下の上下荷重変動が加わっても鉛直免震機構14が作動するのを防止できる。
【0032】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る三次元免震装置の鉛直免震機構のみを示す図である。本実施形態では、鉛直免震機構14’の上テーブル12の上下運動を減速するための機構として、ウォームギア/ウォームホイールの代わりにベベルギアを用いている。具体的に、ピニオン24R,24Lを連結する連結軸28’には、ベベルギア80R,80Lが取付けてある。これらベベルギア80R,80Lはそれぞれ、鉛直方向に伸びた軸42R’、42L’の一端近傍にそれぞれ固定されたベベルギア84R,84Lに係合している。軸42R’、42L’の他端は下テーブル6に固定されている。
【0033】
かかる構成を有する鉛直免震機構14’において、被免震体に上下地震荷重が作用した場合、上テーブル12は、下テーブル6に対し相対的に上下方向に振動する。この上下運動は、ラック20R,20Lに係合するピニオン24R,24Lにより回転運動に変換され、連結軸28’を介してベベルギア80R,80Lに伝達する。その結果ベベルギア84R,84Lが回転し、この回転力は、軸42R’、42L’のねじりモーメントに変換される。
【0034】
本実施形態では、上テーブル12の上下運動は、ベベルギア80R,80L,84R,84Lで構成される減速ギア機構により減速されるため、上テーブル12が大きく変位しても軸42R’、42L’のねじり角(したがってねじりモーメント)を比較的小さくできる。言い換えれば、上テーブル12が大きく変位しても、上テーブル12が受ける反力を小さくでき、したがって鉛直免震機構14’の上下方向のばね定数を小さくできる。
【0035】
<第3の実施形態>
図6は、別のロッキング防止機構を備えた鉛直免震機構を示す。具体的に、この鉛直免震機構14”において、ピニオン24R,24Lは、回転軸を介して互いに連結されておらず、それぞれ水平軸28R’,28L’に固定されている。水平軸28R’、28L’にはそれぞれ、ベベルギア80R’、80L’が固定されている。ベベルギア80R’、80L’と係合するベベルギア84R’,84L’を支持する鉛直軸42R”,42L”にはそれぞれ、ギア86R,86Lが固定されている。これらギア86R,86Lは、一端が下テーブル6に設けた軸受(図示せず)に回転自在に支持された鉛直軸88R,88Lに固定されたギア90R,90Lを介して、互いに連結されている。
【0036】
かかる構成を有する鉛直免震機構14”において、例えば上テーブル12が鉛直下向きに移動する場合を考える。図面左側の鉛直壁16Lが下向きに変位すると、軸28L’および軸28L’に固定されたベベルギア80L’は矢印90L方向に回転する。その結果、ベベルギア84L’およびギア86Lが矢印92L方向に回転し、ギア90Lが矢印94L方向に回転する。同様に、図面右側の鉛直壁16Rが下向きに変位すると、軸28R’および軸28R’に固定されたベベルギア80R’は、矢印90Lと逆方向(矢印90R方向)に回転する。その結果、ベベルギア84R’およびギア86Rが矢印92Lと逆方向(矢印92R方向)に回転し、ギア90Rが矢印94Lと逆方向(矢印94R方向)に回転する。ギア90Rと90Lは係合しているので、これらの回転角に差が生じることはできない。したがって、鉛直壁16Rと16Lの下向きの変位は一致し、上テーブル12のロッキングが防止される。
【0037】
なお、図面左右に配置するユニット同士の距離が大きい場合は、ギア90R,90Lのようなギア対をさらに設けたり、あるいは、ギアとチェーンを併用すればよい。
【0038】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限らず種々改変可能である。例えば、第1の実施形態では、上テーブルが上下方向に荷重変動を受けた場合に、その大きさが所定の値以下では鉛直免震機構が作動しないようにするために、互いに押付けられた少なくとも一対の摩擦板を利用したが、例えば、柱の座屈の原理を利用して、荷重変動が所定の値以下では鉛直免震機構が作動せず、所定の値を超えると柱が座屈して鉛直免震機構が作動するようにしてもよい。
【0039】
また、水平免震機構は、第1の実施形態で説明した例に限らず、各種の形態が可能である。例えば、高減衰積層ゴム50の代わりに、鉛プラグ入り積層ゴムを用いてもよい。あるいは、滑りパッド54や高粘性流体58を省略することも可能である。但し、高減衰積層ゴム50と滑りパッド64を直列に設ける構成は、仮に滑りパッド64が基礎4に固着して機能しなくなった場合であっても、高減衰積層ゴム50により水平免震を行うというフェイルセーフ機能を水平免震機構8に持たせる点、および、高減衰積層ゴム単体の場合に比べて、滑りパッド64を併用することで高減衰積層ゴム50としてコストを低いものを使用できる点で有利である。
【0040】
さらに、第1の実施形態では、鉛直壁16の対向する側壁にラック20を形成したが、ラックとピニオンが常に係合するようにすれば、鉛直壁16の片側にのみラックを設けてもよい。なお、図3の鉛直免震機構14および安全機構64の数、配置位置などは、本発明を限定するものではない。
【0041】
なお、本発明は、機械構造物、ビル、プラント、重要文化財などあらゆる構造物の免震に適用可能である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、鉛直方向の固有振動数を小さく設定可能な鉛直免震装置および該装置を備えた三次元免震装置を提供できる。また、比較的簡単な構成でロッキングを抑制・防止できる。さらに、比較的小さな上下荷重変動に対して被免震体の縦揺れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る三次元免震装置を示す側面図であって、鉛直免震機構および安全機構を一組のみ示す。
【図2】図1の左側から見た鉛直免震機構の側面図。
【図3】図1の鉛直免震機構の上面図であって、上テーブルを省略した図。
【図4】図1の三次元免震装置に用いられる安全機構の部分側面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る三次元免震装置に用いられる鉛直免震機構を示す側面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る三次元免震装置に用いられる鉛直免震機構を示す側面図。
【符号の説明】
2:三次元免震装置
6:下テーブル(基台部)
8:水平免震機構
10:被免震体
12:上テーブル(可動部)
14:鉛直免震機構
20R,20L:ラック
24R,24L:ピニオン
28:連結軸(第1のシャフト)
34R,34L:ウォームギア
38R,38L:ウォームホイール
42R,42L:ウォーム軸
66:上側摩擦板(第1の摩擦板)
68:下側摩擦板(第2の摩擦板)
64:安全機構
Claims (10)
- 基台部と該基台部の上方に配置される被免震体との間に配置され、被免震体の鉛直方向の振動を絶縁するための鉛直免震装置において、
被免震体の鉛直方向の運動を減速する減速ギア機構を有する鉛直免震装置。 - 前記減速ギア機構は、ウォームギアと該ギアに係合するウォームホイールとを備えることを特徴とする請求項1の鉛直免震装置。
- 被免震体とともに鉛直方向に運動する可動部と、該可動部の運動をウォームギアの回転運動に変換する変換部と、ウォームホイールの所定の軸周りの所定の方向に関する回転に対し逆方向の回転力をウォームホイールに作用する反力発生部とをさらに備えた請求項2の鉛直免震装置。
- 前記変換部は、可動部に固定されたラックと、該ラックに係合したピニオンと、ピニオンを固定する第1のシャフトとを備え、
前記第1のシャフトにウォームギアが取り付けてあることを特徴とする請求項3の鉛直免震装置。 - 前記反力発生部は、ウォームホイールを固定し一端が基台部に固定された第2のシャフトを有し、ウォームホイールが回転する際に、ねじり力をウォームホイールに作用させることを特徴とする請求項3の鉛直免震装置。
- 前記変換部は、可動部に固定された一対のラックと、これらラックにそれぞれ係合した一対のピニオンと、これらピニオンを固定する第1のシャフトとを備え、
前記第1のシャフトにウォームギアが取り付けてあることを特徴とする請求項3の鉛直免震装置。 - 被免震体とともに鉛直方向に運動する可動部と、該可動部の運動を減速ギア機構の入力側のギアの回転運動に変換する変換部と、減速ギア機構の出力側のギアの所定の軸周りの所定の方向に関する回転に対し逆方向の回転力を前記出力側のギアに作用する反力発生部とをさらに備え、
前記変換部は、可動部に固定された一対のラックと、これらラックにそれぞれ係合した一対のピニオンと、これらピニオンを駆動連結する連結機構とを備えることを特徴とする請求項1の鉛直免震装置。 - 前記可動部が所定の値以下の鉛直方向の荷重変動を受けた場合に、免震装置が作動しないようにするための安全機構をさらに備えた請求項3〜7のいずれかに記載の鉛直免震装置。
- 前記安全機構は、可動部から鉛直方向に延びた第1の摩擦板と、基台部から鉛直方向に延びた第2の摩擦板とを備え、
前記第1の摩擦板と第2の摩擦板は、水平方向に関して互いに押付けられた状態で重ねられていることを特徴とする請求項8の鉛直免震装置。 - 請求項1〜9のいずれかの鉛直免震装置を備え、被免震体の鉛直方向および水平方向の振動を絶縁するための三次元免震装置。
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