JP2004084865A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温下での耐久性に優れた転がり軸受を提供する。
【解決手段】内輪2と、外輪4と、内輪2と外輪4との間に転動自在に配設された複数の玉5と、玉5を両輪2,4の間に保持するポリアミド樹脂製の冠形保持器7と、を備えるミニアチュア玉軸受において、前記ポリアミド樹脂は、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有するものとした。
【選択図】 図1
【解決手段】内輪2と、外輪4と、内輪2と外輪4との間に転動自在に配設された複数の玉5と、玉5を両輪2,4の間に保持するポリアミド樹脂製の冠形保持器7と、を備えるミニアチュア玉軸受において、前記ポリアミド樹脂は、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有するものとした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂製の保持器を備えた転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転がり軸受用の合成樹脂製保持器としては、ガラス繊維により強化されたポリアミド66樹脂で構成されたものが最も一般的に使用されている。このような保持器に使用されるポリアミド66樹脂には、耐熱性を向上させるために、酸化防止剤(熱安定剤)としてCuIとKIの混合物が添加されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
転がり軸受の構成部品である合成樹脂製保持器は通常射出成形法で別途成形され、加工された内輪,外輪,及び転動体、場合によってはシールと共に組み立てられて転がり軸受とされる。
近年、コンピュータ用のハードディスクなどで使用されているミニアチュア軸受においては、軸受自体の清浄度が回転時の音響に影響を及ぼすことから、高い清浄度を維持するために軸受の洗浄が行われている。そのため、上記のようなミニアチュア軸受は、クリーンルーム等の中に設置されたラインにおいて、洗浄された各部品を組み立てて製造される。
【0004】
このような洗浄に用いられる洗浄剤としては灯油系洗浄剤や水系洗浄剤があるが、合成樹脂性保持器の洗浄には、静電気によって表面に付着したゴミを除去するために、洗浄能力の高い水系洗浄剤が主に使用されている。
しかしながら、酸化防止剤としてCuIとKIの混合物が添加されている合成樹脂性保持器(例えばポリアミド66樹脂製の保持器)を水系洗浄剤で洗浄すると、CuIとKIが洗浄剤中に溶出し、保持器中の酸化防止剤の濃度が低下するおそれがあることがわかってきた。また、溶出したCuIとKIが保持器の表面に付着して残存することも考えられる。
【0005】
保持器中の酸化防止剤の濃度が低下すると高温下での保持器の熱安定性が低下するので、今まで特に使用上問題なかった温度でも保持器に破損が生じて転がり軸受に不具合が生じるおそれがある。すなわち、転がり軸受の高温下での耐久性が低下するおそれがある。
また、保持器の表面に残存したヨウ素分がグリース等の潤滑剤に混入して、何らかの不具合を生じさせることも考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、高温下での耐久性に優れた転がり軸受を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を前記両輪の間に保持するポリアミド樹脂製の保持器と、を備える転がり軸受において、前記ポリアミド樹脂は、イミノ基(−NH−)及びフェノール性水酸基(−OH)の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を0.03〜5質量%含有することを特徴とする。
【0008】
上記のような酸化防止剤は水系洗浄剤で保持器を洗浄した際に溶出しにくいので、前記保持器は熱安定性が優れており、したがって、前記転がり軸受は高温下における耐久性が優れている。
酸化防止剤の含有量は0.03〜5質量%である必要がある。0.03質量%未満であると、保持器の熱安定性が不十分となる。また、5質量%を超えて添加しても、熱安定性がほとんど向上しないことに加えて、ポリアミド樹脂量や後述する補強材量が少なくなるため、保持器の強度が低下するおそれがある。なお、上記のような不都合がより生じにくくするためには、酸化防止剤の含有量は0.1〜3質量%とすることが好ましい。
【0009】
以下に、本発明の転がり軸受の保持器を構成する材料について、詳細に説明する。
まず、本発明において好ましく使用される保持器のベース樹脂について説明する。ベース樹脂は構造中にアミド結合を有するポリアミド樹脂であり、射出成形可能であることが好ましく、また、耐熱性を考慮すると融点が200℃以上であることが好ましい。
【0010】
具体的には、ポリアミド6(融点215〜220℃),ポリアミド66(融点255〜260℃),ポリアミド612(融点210℃),ポリアミド610(融点213℃),ポリアミド46(融点295℃),ポリアミド6T(融点300〜320℃),ポリアミドMXD6(融点243℃)等があげられる。これらは、単独又は2種以上混合して(ポリマーアロイ化して)用いることができる。また、これらのポリアミド樹脂に少量のポリオレフィン,ポリフェニレンオキシド,ゴム等の他の樹脂をさらに加えてポリマーアロイ化したものも使用可能である。
【0011】
このようなベース樹脂には、強度を向上させるために、補強材を5〜45質量%添加することが好ましい。5質量%未満であると、保持器として必要な強度が得られず実用性がない。また、45質量%を超えると溶融時の粘度が上昇し、保持器のような複雑な形状のものを精度良く成形することが困難となる。なお、上記のような不都合がより生じにくくするためには、補強材の添加量は10〜25質量%とすることがより好ましい。
【0012】
補強材としては、例えば、ガラス繊維,炭素繊維,アラミド繊維,アルミナ繊維,チタン酸カリウムウィスカー,ホウ酸アルミニウムウィスカー,炭化ケイ素ウィスカー,窒化ケイ素ウィスカー,塩基性硫酸マグネシウムウィスカー,ウォラストナイト,ゾノトライト等の針状(繊維状)フィラーが好適である。
次に、酸化防止剤の具体例を説明する。イミノ基(−NH−)及びフェノール性水酸基(−OH)の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤としては、アミン−ケトン縮合生成物系酸化防止剤,芳香族第二アミン系酸化防止剤,ポリフェノール(ヒドロキノン)系酸化防止剤,モノフェノール系酸化防止剤,ビスフェノール系酸化防止剤,トリスフェノール系酸化防止剤,チオビスフェノール系酸化防止剤,ヒンダードフェノール系酸化防止剤等があげられる。
【0013】
アミン−ケトン縮合生成物系酸化防止剤としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体* 、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン* 等が例示できる。
また、芳香族第二アミン系酸化防止剤としては、フェニル−1−ナフチルアミン* 、フェニル−2−ナフチルアミン* 、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン* 、オクチル化ジフェニルアミン* 、ジオクチル化ジフェニルアミン* 、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン* 、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン* 、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン* 、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン* 、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン* 、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ビス(1,4−ジメチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン* 等が例示できる。
【0014】
さらに、ポリフェノール(ヒドロキノン)系酸化防止剤としては、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン* 、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン等が例示できる。
さらに、モノフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール* 、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール* 、モノ(又はジ又はトリ)(α−メチルベンジル)フェノール* 、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール* 、2,6−ジ−tert−ブチル−4−sec−ブチルフェノール* 、ブチルヒドロキシアニソール* 、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール* 等が例示できる。
【0015】
さらに、ビスフェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)* 、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)* 、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、2,2’ −メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)* 、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)* 、2,2’−メチレンビス(6−α−メチルベンジル−p−クレゾール)、4,4’ −ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,1’ −ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン* 、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン* 、ブチル酸3,3−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチレンエステル* 等が例示できる。
【0016】
さらに、トリスフェノール系酸化防止剤としては、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン* 、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート* 等が例示できる。
さらに、チオビスフェノール系酸化防止剤としては、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)* 、4,4’ −チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)* 、4,4’−ジ及びトリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド等が例示できる。
【0017】
さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン* 、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’ −ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[ 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン* 、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2−チオ−ジエチレンビス[ 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、2,4−ビス[ (オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、テトラキス[ メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメイト)] メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル等が例示できる。
【0018】
上記の酸化防止剤のうちの*印を付したものは水に不溶であるので、保持器を水系洗浄剤で洗浄した際に溶出しにくく特に好ましい。
また、上記のような一次酸化防止剤とともに、以下に示す二次酸化防止剤を併用してもよい。その場合には、上記と同様に水に不溶の二次酸化防止剤(*印を付したもの)を使用することが好ましい。
【0019】
二次酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル・チオジプロピオネート* 、ジステアリル・チオジプロピオネート* 、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート* 、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート* 、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)* 、チオジプロピオン酸ジラウリル等の有機チオ酸系二次酸化防止剤、2−メルカプトベンツイミダソール* 、2−メルカプトメチルベンツイミダソール* 等のベンツイミダソール系二次酸化防止剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト* 、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系二次酸化防止剤等があげられる。
【0020】
なお、ベース樹脂には、光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンソフェノン、2−(2’ −ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアソール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるミニアチュア玉軸受の構造を示す縦断面図であり、図2は、図1のミニアチュア玉軸受に使用された冠形保持器7の斜視図である。
【0022】
図1のミニアチュア玉軸受(呼び番号693)は、外周面に内輪軌道1を有する内輪2と、内周面に外輪軌道3を有する外輪4とを同心に配置し、冠形保持器7により保持された複数の玉5を内輪軌道1と外輪軌道3との間に転動自在に設けることにより構成されている。外輪4の内周面の両端部には、それぞれ円輪状のシールド板6,6の外周縁部が係止されていて、内輪2の外周面と外輪4の内周面との間の開口部分がこのシールド板6,6でほぼ覆われている。このことによって、内輪2と外輪4との間に形成される空間(玉5の設置部分)に存在する図示しないグリースや発生したダストが外部に漏洩したり、あるいは、外部に浮遊する塵挨が該空間内に侵入したりすることが防止されている。
【0023】
冠形保持器7は、ポリアミド66樹脂等のようなポリアミド樹脂を主成分とする樹脂組成物を射出成形することにより、一体に形成されたものである。前記樹脂組成物としては、例えば、ポリアミド樹脂73.5質量%と、ガラス繊維等のような補強材25質量%と、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤1.5質量%と、を混合したものが例示できる。
【0024】
そして、冠形保持器7は、円環状の主部8と、この主部8の片面に設けられた複数のポケット9とを備えていて、各ポケット9は、互いに間隔をあけ対向して配置された1対の弾性片10,10から形成されている。各ポケット9を構成する1対の弾性片10,10の互いに対向する面は、一般的には、同心の球状凹面をなしている。ただし、各面を円筒面としたものもある。
【0025】
このような冠形保持器7は、弾性片10,10の間隔を弾性的に押し広げつつ、1対の弾性片10,10の間に玉5を押し込むことにより、各ポケット9内に玉5を転動自在に保持することができる。
次に、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有するポリアミド樹脂について、熱水洗浄試験を行った結果について説明する。
【0026】
表1に示すような組成の5種(実施例1〜4及び比較例)のポリアミド樹脂組成物を射出成形して、図2に示すような形状のミニアチュア玉軸受(呼び番号693)用の冠形保持器を、1種のポリアミド樹脂組成物につき100個ずつ製造した。
なお、表1のベース樹脂はいずれもポリアミド66樹脂であり、補強材はいずれもガラス繊維である。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、得られた冠形保持器を、80〜90℃に保った水系洗浄剤(ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルを1質量%含有するイオン交換水)中に浸漬して、超音波洗浄を2時間行った。
その後に、冠形保持器を乾燥して絶乾状態とし、重量を測定した。そして、水系洗浄剤に浸漬する前の絶乾時の重量からの重量減少分を、水系洗浄剤に溶出した酸化防止剤の量と見なして、酸化防止剤の残存率(初期を100質量%とする)を算出した。その結果を表1に示す。なお、表1に示した数値は、100個の保持器の平均値である。
【0029】
表1から分かるように、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有し且つ水に不溶な酸化防止剤を用いた実施例1〜4は、水系洗浄剤で洗浄した後も酸化防止剤の水系洗浄剤への溶出が見られなかった。それに対して、水に易溶な従来の酸化防止剤を使用した比較例は、かなり多くの量の酸化防止剤が水系洗浄剤への溶出した。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の転がり軸受は、ポリアミド樹脂組成物で構成した保持器を備えていて、該ポリアミド樹脂組成物は、イミノ基(−NH−)及びフェノール性水酸基(−OH)の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有している。
このような保持器は、水系洗浄剤で洗浄された際に酸化防止剤が溶出しにくいので、熱安定性が優れており、したがって、本実施形態の転がり軸受は高温下における耐久性が優れている。
【0031】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては保持器の種類は冠形保持器であったが、保持器の種類は特に限定されるものではなく、例えば、かご形保持器、つの形保持器、波形保持器等でもよい。
【0032】
また、本実施形態においては、転がり軸受としてミニアチュア玉軸受を例示して説明したが、本発明の転がり軸受は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用可能である。例えば、深みぞ玉軸受,アンギュラ玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有するポリアミド樹脂で構成された保持器は、水系洗浄剤で洗浄されても、酸化防止剤が水系洗浄剤に溶出しにくいので、熱安定性が優れている。したがって、本発明の転がり軸受は、高温下における耐久性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受に係る一実施形態であるミニアチュア玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図2】図1のミニアチュア玉軸受に使用された冠形保持器の斜視図である。
【符号の説明】
2 内輪
4 外輪
5 玉
7 冠形保持器
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂製の保持器を備えた転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転がり軸受用の合成樹脂製保持器としては、ガラス繊維により強化されたポリアミド66樹脂で構成されたものが最も一般的に使用されている。このような保持器に使用されるポリアミド66樹脂には、耐熱性を向上させるために、酸化防止剤(熱安定剤)としてCuIとKIの混合物が添加されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
転がり軸受の構成部品である合成樹脂製保持器は通常射出成形法で別途成形され、加工された内輪,外輪,及び転動体、場合によってはシールと共に組み立てられて転がり軸受とされる。
近年、コンピュータ用のハードディスクなどで使用されているミニアチュア軸受においては、軸受自体の清浄度が回転時の音響に影響を及ぼすことから、高い清浄度を維持するために軸受の洗浄が行われている。そのため、上記のようなミニアチュア軸受は、クリーンルーム等の中に設置されたラインにおいて、洗浄された各部品を組み立てて製造される。
【0004】
このような洗浄に用いられる洗浄剤としては灯油系洗浄剤や水系洗浄剤があるが、合成樹脂性保持器の洗浄には、静電気によって表面に付着したゴミを除去するために、洗浄能力の高い水系洗浄剤が主に使用されている。
しかしながら、酸化防止剤としてCuIとKIの混合物が添加されている合成樹脂性保持器(例えばポリアミド66樹脂製の保持器)を水系洗浄剤で洗浄すると、CuIとKIが洗浄剤中に溶出し、保持器中の酸化防止剤の濃度が低下するおそれがあることがわかってきた。また、溶出したCuIとKIが保持器の表面に付着して残存することも考えられる。
【0005】
保持器中の酸化防止剤の濃度が低下すると高温下での保持器の熱安定性が低下するので、今まで特に使用上問題なかった温度でも保持器に破損が生じて転がり軸受に不具合が生じるおそれがある。すなわち、転がり軸受の高温下での耐久性が低下するおそれがある。
また、保持器の表面に残存したヨウ素分がグリース等の潤滑剤に混入して、何らかの不具合を生じさせることも考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、高温下での耐久性に優れた転がり軸受を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を前記両輪の間に保持するポリアミド樹脂製の保持器と、を備える転がり軸受において、前記ポリアミド樹脂は、イミノ基(−NH−)及びフェノール性水酸基(−OH)の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を0.03〜5質量%含有することを特徴とする。
【0008】
上記のような酸化防止剤は水系洗浄剤で保持器を洗浄した際に溶出しにくいので、前記保持器は熱安定性が優れており、したがって、前記転がり軸受は高温下における耐久性が優れている。
酸化防止剤の含有量は0.03〜5質量%である必要がある。0.03質量%未満であると、保持器の熱安定性が不十分となる。また、5質量%を超えて添加しても、熱安定性がほとんど向上しないことに加えて、ポリアミド樹脂量や後述する補強材量が少なくなるため、保持器の強度が低下するおそれがある。なお、上記のような不都合がより生じにくくするためには、酸化防止剤の含有量は0.1〜3質量%とすることが好ましい。
【0009】
以下に、本発明の転がり軸受の保持器を構成する材料について、詳細に説明する。
まず、本発明において好ましく使用される保持器のベース樹脂について説明する。ベース樹脂は構造中にアミド結合を有するポリアミド樹脂であり、射出成形可能であることが好ましく、また、耐熱性を考慮すると融点が200℃以上であることが好ましい。
【0010】
具体的には、ポリアミド6(融点215〜220℃),ポリアミド66(融点255〜260℃),ポリアミド612(融点210℃),ポリアミド610(融点213℃),ポリアミド46(融点295℃),ポリアミド6T(融点300〜320℃),ポリアミドMXD6(融点243℃)等があげられる。これらは、単独又は2種以上混合して(ポリマーアロイ化して)用いることができる。また、これらのポリアミド樹脂に少量のポリオレフィン,ポリフェニレンオキシド,ゴム等の他の樹脂をさらに加えてポリマーアロイ化したものも使用可能である。
【0011】
このようなベース樹脂には、強度を向上させるために、補強材を5〜45質量%添加することが好ましい。5質量%未満であると、保持器として必要な強度が得られず実用性がない。また、45質量%を超えると溶融時の粘度が上昇し、保持器のような複雑な形状のものを精度良く成形することが困難となる。なお、上記のような不都合がより生じにくくするためには、補強材の添加量は10〜25質量%とすることがより好ましい。
【0012】
補強材としては、例えば、ガラス繊維,炭素繊維,アラミド繊維,アルミナ繊維,チタン酸カリウムウィスカー,ホウ酸アルミニウムウィスカー,炭化ケイ素ウィスカー,窒化ケイ素ウィスカー,塩基性硫酸マグネシウムウィスカー,ウォラストナイト,ゾノトライト等の針状(繊維状)フィラーが好適である。
次に、酸化防止剤の具体例を説明する。イミノ基(−NH−)及びフェノール性水酸基(−OH)の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤としては、アミン−ケトン縮合生成物系酸化防止剤,芳香族第二アミン系酸化防止剤,ポリフェノール(ヒドロキノン)系酸化防止剤,モノフェノール系酸化防止剤,ビスフェノール系酸化防止剤,トリスフェノール系酸化防止剤,チオビスフェノール系酸化防止剤,ヒンダードフェノール系酸化防止剤等があげられる。
【0013】
アミン−ケトン縮合生成物系酸化防止剤としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体* 、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン* 等が例示できる。
また、芳香族第二アミン系酸化防止剤としては、フェニル−1−ナフチルアミン* 、フェニル−2−ナフチルアミン* 、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン* 、オクチル化ジフェニルアミン* 、ジオクチル化ジフェニルアミン* 、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン* 、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン* 、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン* 、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン* 、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン* 、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ビス(1,4−ジメチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン* 、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン* 等が例示できる。
【0014】
さらに、ポリフェノール(ヒドロキノン)系酸化防止剤としては、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン* 、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン等が例示できる。
さらに、モノフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール* 、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール* 、モノ(又はジ又はトリ)(α−メチルベンジル)フェノール* 、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール* 、2,6−ジ−tert−ブチル−4−sec−ブチルフェノール* 、ブチルヒドロキシアニソール* 、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール* 等が例示できる。
【0015】
さらに、ビスフェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)* 、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)* 、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、2,2’ −メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)* 、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)* 、2,2’−メチレンビス(6−α−メチルベンジル−p−クレゾール)、4,4’ −ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,1’ −ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン* 、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン* 、ブチル酸3,3−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチレンエステル* 等が例示できる。
【0016】
さらに、トリスフェノール系酸化防止剤としては、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン* 、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート* 等が例示できる。
さらに、チオビスフェノール系酸化防止剤としては、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)* 、4,4’ −チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)* 、4,4’−ジ及びトリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド等が例示できる。
【0017】
さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン* 、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’ −ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[ 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン* 、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2−チオ−ジエチレンビス[ 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、2,4−ビス[ (オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、テトラキス[ メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメイト)] メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル等が例示できる。
【0018】
上記の酸化防止剤のうちの*印を付したものは水に不溶であるので、保持器を水系洗浄剤で洗浄した際に溶出しにくく特に好ましい。
また、上記のような一次酸化防止剤とともに、以下に示す二次酸化防止剤を併用してもよい。その場合には、上記と同様に水に不溶の二次酸化防止剤(*印を付したもの)を使用することが好ましい。
【0019】
二次酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル・チオジプロピオネート* 、ジステアリル・チオジプロピオネート* 、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート* 、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート* 、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)* 、チオジプロピオン酸ジラウリル等の有機チオ酸系二次酸化防止剤、2−メルカプトベンツイミダソール* 、2−メルカプトメチルベンツイミダソール* 等のベンツイミダソール系二次酸化防止剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト* 、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系二次酸化防止剤等があげられる。
【0020】
なお、ベース樹脂には、光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンソフェノン、2−(2’ −ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアソール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるミニアチュア玉軸受の構造を示す縦断面図であり、図2は、図1のミニアチュア玉軸受に使用された冠形保持器7の斜視図である。
【0022】
図1のミニアチュア玉軸受(呼び番号693)は、外周面に内輪軌道1を有する内輪2と、内周面に外輪軌道3を有する外輪4とを同心に配置し、冠形保持器7により保持された複数の玉5を内輪軌道1と外輪軌道3との間に転動自在に設けることにより構成されている。外輪4の内周面の両端部には、それぞれ円輪状のシールド板6,6の外周縁部が係止されていて、内輪2の外周面と外輪4の内周面との間の開口部分がこのシールド板6,6でほぼ覆われている。このことによって、内輪2と外輪4との間に形成される空間(玉5の設置部分)に存在する図示しないグリースや発生したダストが外部に漏洩したり、あるいは、外部に浮遊する塵挨が該空間内に侵入したりすることが防止されている。
【0023】
冠形保持器7は、ポリアミド66樹脂等のようなポリアミド樹脂を主成分とする樹脂組成物を射出成形することにより、一体に形成されたものである。前記樹脂組成物としては、例えば、ポリアミド樹脂73.5質量%と、ガラス繊維等のような補強材25質量%と、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤1.5質量%と、を混合したものが例示できる。
【0024】
そして、冠形保持器7は、円環状の主部8と、この主部8の片面に設けられた複数のポケット9とを備えていて、各ポケット9は、互いに間隔をあけ対向して配置された1対の弾性片10,10から形成されている。各ポケット9を構成する1対の弾性片10,10の互いに対向する面は、一般的には、同心の球状凹面をなしている。ただし、各面を円筒面としたものもある。
【0025】
このような冠形保持器7は、弾性片10,10の間隔を弾性的に押し広げつつ、1対の弾性片10,10の間に玉5を押し込むことにより、各ポケット9内に玉5を転動自在に保持することができる。
次に、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有するポリアミド樹脂について、熱水洗浄試験を行った結果について説明する。
【0026】
表1に示すような組成の5種(実施例1〜4及び比較例)のポリアミド樹脂組成物を射出成形して、図2に示すような形状のミニアチュア玉軸受(呼び番号693)用の冠形保持器を、1種のポリアミド樹脂組成物につき100個ずつ製造した。
なお、表1のベース樹脂はいずれもポリアミド66樹脂であり、補強材はいずれもガラス繊維である。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、得られた冠形保持器を、80〜90℃に保った水系洗浄剤(ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルを1質量%含有するイオン交換水)中に浸漬して、超音波洗浄を2時間行った。
その後に、冠形保持器を乾燥して絶乾状態とし、重量を測定した。そして、水系洗浄剤に浸漬する前の絶乾時の重量からの重量減少分を、水系洗浄剤に溶出した酸化防止剤の量と見なして、酸化防止剤の残存率(初期を100質量%とする)を算出した。その結果を表1に示す。なお、表1に示した数値は、100個の保持器の平均値である。
【0029】
表1から分かるように、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有し且つ水に不溶な酸化防止剤を用いた実施例1〜4は、水系洗浄剤で洗浄した後も酸化防止剤の水系洗浄剤への溶出が見られなかった。それに対して、水に易溶な従来の酸化防止剤を使用した比較例は、かなり多くの量の酸化防止剤が水系洗浄剤への溶出した。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の転がり軸受は、ポリアミド樹脂組成物で構成した保持器を備えていて、該ポリアミド樹脂組成物は、イミノ基(−NH−)及びフェノール性水酸基(−OH)の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有している。
このような保持器は、水系洗浄剤で洗浄された際に酸化防止剤が溶出しにくいので、熱安定性が優れており、したがって、本実施形態の転がり軸受は高温下における耐久性が優れている。
【0031】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては保持器の種類は冠形保持器であったが、保持器の種類は特に限定されるものではなく、例えば、かご形保持器、つの形保持器、波形保持器等でもよい。
【0032】
また、本実施形態においては、転がり軸受としてミニアチュア玉軸受を例示して説明したが、本発明の転がり軸受は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用可能である。例えば、深みぞ玉軸受,アンギュラ玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、イミノ基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を含有するポリアミド樹脂で構成された保持器は、水系洗浄剤で洗浄されても、酸化防止剤が水系洗浄剤に溶出しにくいので、熱安定性が優れている。したがって、本発明の転がり軸受は、高温下における耐久性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受に係る一実施形態であるミニアチュア玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図2】図1のミニアチュア玉軸受に使用された冠形保持器の斜視図である。
【符号の説明】
2 内輪
4 外輪
5 玉
7 冠形保持器
Claims (1)
- 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を前記両輪の間に保持するポリアミド樹脂製の保持器と、を備える転がり軸受において、
前記ポリアミド樹脂は、イミノ基(−NH−)及びフェノール性水酸基(−OH)の少なくとも一方を構造中に有する酸化防止剤を0.03〜5質量%含有することを特徴とする転がり軸受。
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- 2002-08-28 JP JP2002248927A patent/JP2004084865A/ja not_active Withdrawn
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