JP2004084826A - 直動転がり装置 - Google Patents

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Eiji Hayashi
林 栄治
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Abstract

【課題】低騒音化を実現しながら、負荷転動体同士の衝突や競り合いによる損傷を防ぎ、さらに負荷転動体同士が接近して押し合っても作動性の悪化等を起こさず、滑らかに駆動することが可能な転がり直動装置を提供することを目的としている。
【解決手段】ねじ溝循環路6内に複数の転動体8,10が転動自在に配置されている。転動体8は、セラミック製のボールであり(セラミックボール)、転動体10は、樹脂製のボールである(樹脂ボール)。セラミックボール8と樹脂ボール10は、交互にねじ溝循環路6内に配置されている。樹脂ボール10は、セラミックボール8よりも若干小さくなっており、ボールねじの負荷が、セラミックボール8に加わるようになっている。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじ、リニアガイド、ボールスプライン等の直動転がり装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、直動転がり装置の転動体としてセラミックボールを用いることで、直動転がり装置の低騒音化が図れることが知られていた。また、通常の鋼球を用いた直動転がり装置では、負荷を受ける鋼球と鋼球との間に負荷を受けない鋼球(スペーサボール)や、保持ピースを入れるなどして、ボールの競り合いを防ぐ手段が実用化されていたが、転動体としてセラミックボールを使用する場合と比べて騒音が大きい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のセラミックボールを用いた直動転がり装置は、ボールの質量が鋼球に比べて小さいため、ボールが循環の際にすくいあげ部等に衝突する力を小さくすることができるので、騒音の低減に効果がある。しかし、セラミックボールは鋼球に比べて硬く、もろいため、セラミックボール同士の衝突や競り合いによってセラミックボールが損傷を受けることが多い。
【0004】
セラミックボールの損傷を防ぐ手段として保持ピースを介在させる場合があるが、セラミックボールの公転速度の変化によりセラミックボール同士が接近し、保持ピースが押し付けられるとセラミックボールと保持ピースの間の摩擦が大きくなり、保持ピースを用いずにセラミックボール同士が直接競り合う場合ほどではないが、直動転がり装置の駆動抵抗が変化し、作動性が悪化する等の問題が発生しやすい。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、低騒音化を実現しながら、負荷転動体同士の衝突や競り合いによる損傷を防ぎ、さらに負荷転動体同士が接近して押し合っても作動性の悪化等を起こさず、滑らかに駆動することが可能な転がり直動装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明の直動装置は、ねじ軸の外周面及びナットの内周面に、互いに対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ねじ溝の双方により形成した螺旋状のねじ溝循環路内に複数の負荷転動体が転動自在に配置され、前記ねじ溝循環路から取り出した負荷転動体を、再度前記ねじ溝循環路に戻すためのリターン循環路を設けた直動転がり装置において、前記複数の前記負荷転動体を、セラミック製の負荷転動体とし、各セラミック製の負荷転動体の間に、樹脂製のスペーサ転動体を介在した。
【0007】
本発明によると、セラミック製である負荷転動体の質量を、鋼球に比べてはるかに小さくできるので、直動転がり装置内で負荷転動体が循環する際に、救い上げ部、ねじ溝循環路やリターン循環路に衝突する力が小さくなり、直動転がり装置の騒音や振動が小さくなる。また、樹脂製のスペーサ転動体は、セラミック製の転動体に比べてはるかに弾性があるので、負荷転動体がスペーサ転動体に衝突することによって発生する騒音・振動は、全ての転動体をセラミックにした場合よりも小さくなる。さらに、樹脂製のスペーサ転動体を使用しているので、ねじ溝循環路内やリターン循環路内で転動体同士が衝突しても、その衝撃を樹脂製のスペーサ転動体が吸収できるとともに、セラミック製の負荷転動体の間の距離が詰まって負荷転動体及びスペーサ転動体同士が押し合う状況になっても、スペーサ転動体は、弾性変形しながら負荷転動体と転がり接触するので、負荷転動体に損傷を与えず、かつ良好な作動性(ボールねじの場合は駆動トルクの安定し、リニアガイド等の直動案内の場合は駆動摩擦力の安定)を実現することができる。
【0008】
また、前記負荷転動体を、セラミックで形成したセラミックボールとし、前記スペーサ転動体を、樹脂で形成した樹脂ボールとし、前記樹脂ボールの直径を、前記セラミックボールの直径より所定量だけ小さく設定してもよい。
この場合には、前記樹脂ボールの直径dを、以下の(1)式で設定すると好適である。
【0009】
 ≦ d/(1+α×T)   ………(1)式
なお、d:セラミックボール8の直径、α:樹脂ボール10の線膨張係数、T:想定する温度上昇である。
さらに、前記負荷転動体を、セラミックで形成したセラミックコロとし、前記スペーサ転動体を、樹脂で形成した樹脂コロとし、前記樹脂コロの形状を、前記セラミックコロの形状より所定量だけ小さく設定してもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、転がり直動装置の1実施形態としてボールねじを示す軸方向断面図である。
本実施形態のボールねじは、外周面に螺旋状のねじ溝2aが形成されているねじ軸2と、内周面に螺旋状のねじ溝4aが形成されているナット4と、互いに対向したねじ溝2a,4aで形成されている螺旋状のねじ溝循環路6と、ねじ溝循環路6内を転動する複数の転動体8,10と、ねじ溝循環路6から取り出した複数の転動体8,10を、再度ねじ溝循環路6に戻すリターン循環路12とを備えたチューブ方式のボールねじである。なお、符号14は、ナット4の長手方向端部に固定されているブランジである。
【0011】
ここで、転動体8は、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等の材料からなるセラミック製のボールである(以下、セラミックボール8と称する)。また、転動体10は、例えばポリアセタール樹脂、合成ゴム等の材料からなる樹脂製のボールである(以下、樹脂ボール10と称する)。
セラミックボール8と樹脂ボール10は、交互にねじ溝循環路6内に配置されている。
【0012】
そして、樹脂ボール10は、セラミックボール8よりも若干小さくなっており、ボールねじの負荷が、セラミックボール8に加わるようになっている。
ここで、樹脂ボール10の直径dは、以下の(1)式で設定されている。
 ≦ d/(1+α×T)   ………(1)式
なお、d:セラミックボール8の直径、α:樹脂ボール10の線膨張係数、T:想定される温度上昇である。
【0013】
次に、図2は、ねじ軸2がナット4に対して相対回転する場合に、ねじ溝循環路6内を転動する複数のセラミックボール8,樹脂ボール10を拡大して示したものであり、負荷をうけるセラミックボール8同士の間隔が狭くなり、セラミックボール8によって樹脂ボール10が押された状態となり、符号Aで示す部分が、セラミックボール8と樹脂ボール10の接触部となっている。
【0014】
ねじ軸2がナット4に対して相対回転すると、セラミックボール8と樹脂ボール10はそれぞれ自転しながら公転する。このとき、セラミックボール8は、ねじ軸2とナット4に接触して荷重を受けているので、ねじ軸2の回転に伴って(図中では時計回りに)自転する。これに対し、スペーサとしての樹脂ボール10は、ねじ軸2とナット4の間隔よりも小さく、またセラミックボール8と接触しているので、自転の方向はセラミックボール8とは逆となる。このため接触部Aでは相対的な滑りが殆ど無く、転がり接触をする。
【0015】
すなわち、セラミックボール8のみを使用した装置と比較して、セラミックボール8同士の衝突や競り合いによってセラミックボール8が損傷する心配がなく、他方、保持ピースを用いた装置と比較して、セラミックボール8と樹脂ボール10の間の摩擦により駆動トルクが変動せず、滑らかに駆動することができる。また、セラミックボール8、樹脂ボール10の両者は、従来の鋼球に比べて比重が小さく、同じ径のボールであっても質量が小さい。このため、ボールが、ねじ溝循環路6及びリターン循環路12を連通する掬いあげ部(図示せず)に衝突する力を小さくすることができる。これにより、ボールねじが作動する際の騒音・振動が低減できるとともに、高速で運転しても掬いあげ部にかかる負担が従来の鋼球に比べて小さいので、高速運転での耐久性を向上することができる。
【0016】
また、樹脂は、セラミックや鉄鋼と比較して線膨張係数が大きいため、高温になると、樹脂ボール10が、膨張によってセラミックボール8より大きくなってしまい、樹脂ボール10がねじ軸2とナット4に接触して負荷を受けるおそれがあるが、樹脂ボール10の直径をセラミックボール8に比較して小さく設定しているので、樹脂ボール10が負荷を受けるのを防止し、正常にボールねじを作動させることができる。
【0017】
ここで、樹脂ボール10の直径を、セラミックボール8に対して1〜2%程度小さくしておくと、温度が100℃程度上昇しても、セラミックボール8よりも大きくなることを防止することができる。ただし、この場合は樹脂ボール10にデルリンを用いた場合の例であり、素材の線膨張係数により多少異なる。また、使用条件等により上述した温度以上の温度上昇が見込まれる場合には、さらに、数%だけ樹脂ボール10をセラミックボール8よりも小さくしておけばよい。
【0018】
なお、本実施形態はチューブ方式のボールねじについて説明したが、コマ方式のボールねじ、エンドキャップ方式のボールねじ、サイドキャップ方式のボールねじ等に適用しても、同様の作用効果を得ることができる。また、サイドキャップ方式のボールねじのように、掬いあげ方向をリード方向としてセラミックボール8、樹脂ボール10が救い上げ部に衝突することを防いだボールねじに適用することで、更なる騒音低減を実現することができる。
【0019】
さらに、ボールねじに限らず、負荷転動体を、セラミックで形成したセラミックコロとし、スペーサ転動体を、樹脂で形成した樹脂コロとし、樹脂コロの形状をセラミックコロの形状より所定量だけ小さく設定したころねじ装置に適用しても、同様の作用効果を得ることができる。そして、リニアガイドやボールスプラインといった転がり直動装置全般にも、本発明は適用可能である。
【0020】
【発明の効果】
本発明の転がり直動装置によると、セラミック製である負荷転動体の質量を、鋼球に比べてはるかに小さくできるので、直動転がり装置内で負荷転動体が循環する際に、救い上げ部、ねじ溝循環路やリターン循環路に衝突する力が小さくなり、直動転がり装置の騒音や振動を小さくすることができる。
【0021】
また、樹脂製のスペーサ転動体は、セラミック製の転動体に比べてはるかに弾性があるので、負荷転動体がスペーサ転動体に衝突することによって発生する騒音・振動は、全ての転動体をセラミックにした場合よりも小さくすることができる。
さらに、樹脂製のスペーサ転動体を使用しているので、ねじ溝循環路内やリターン循環路内で転動体同士が衝突しても、その衝撃を樹脂製のスペーサ転動体が吸収できるとともに、セラミック製の負荷転動体の間の距離が詰まって負荷転動体及びスペーサ転動体同士が押し合う状況になっても、スペーサ転動体は、弾性変形しながら負荷転動体と転がり接触をするので、負荷転動体に損傷を与えず、かつ良好な作動性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】転がり直動装置の1実施形態としてボールねじを示す軸方向断面図である。
【図2】図1のボールねじのねじ軸がナットに対して相対回転する場合に、ねじ溝循環路内を転動する複数の負荷転動体及びスペーサ転動体を示したものである。
【符号の説明】
2 ねじ軸
2a,4a ねじ溝
4 ナット
6 ねじ溝循環路
8 セラミックボール(負荷転動体)
10 樹脂ボール(スペーサ転動体)
12 リターン循環路
 樹脂ボールの直径
 セラミックボールの直径

Claims (4)

  1. ねじ軸の外周面及びナットの内周面に、互いに対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ねじ溝の双方により形成した螺旋状のねじ溝循環路内に複数の負荷転動体が転動自在に配置され、前記ねじ溝循環路から取り出した負荷転動体を、再度前記ねじ溝循環路に戻すためのリターン循環路を設けた直動転がり装置において、
    前記複数の前記負荷転動体を、セラミック製の負荷転動体とし、各セラミック製の負荷転動体の間に、樹脂製のスペーサ転動体を介在したことを特徴とする直動転がり装置。
  2. 前記負荷転動体を、セラミックで形成したセラミックボールとし、前記スペーサ転動体を、樹脂で形成した樹脂ボールとし、前記樹脂ボールの直径を、前記セラミックボールの直径より所定量だけ小さく設定したことを特徴とする請求項1記載の直動転がり装置。
  3. 前記樹脂ボールの直径dを、以下の(1)式で設定したことを特徴とする請求項2記載の直動転がり装置。
     ≦ d/(1+α×T)   ………(1)式
    なお、d:セラミックボール8の直径、α:樹脂ボール10の線膨張係数、T:想定する温度上昇である。
  4. 前記負荷転動体を、セラミックで形成したセラミックコロとし、前記スペーサ転動体を、樹脂で形成した樹脂コロとし、前記樹脂コロの形状を、前記セラミックコロの形状より所定量だけ小さく設定したことを特徴とする請求項1記載の直動転がり装置。
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