JP2004083830A - 塗装樹脂成形品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プライマー塗装を省略しても、塗料と熱可塑性樹脂を成形して得られる成形品の表面との密着性が高い塗装樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】[1]熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品に二液硬化型アクリルウレタン系樹脂用塗料を塗布し、15℃〜85℃で硬化せしめることを特徴とする塗装樹脂成形品の製造方法。
[2]25℃〜85℃で硬化せしめる[1]記載の製造方法。
[3][1]または[2]記載の製造方法により得られる塗装樹脂成形品。
【選択図】     なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装樹脂成形品およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂を成形して得られる自動車部品や家庭電化製品等の成形品には、耐候性や耐傷つき性が高いことに加えて高級感のある外観を得るために、調色された塗料などがその表面に塗装されている。塗料の塗装に際しては、塗料と成形品の表面との密着性を向上せしめるために、通常、成形品の表面にプライマーを塗装(プライマー塗装)した後、塗料を塗装することが行なわれている。
一方、自動車部品や家庭電化製品等では、コストダウンが進められており、プライマー塗装を省略することが検討されている。
しかしながら、プライマー塗装を省略すると、熱可塑性樹脂を成形して得た成形品の表面と塗料との密着性が十分でないという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プライマー塗装を省略しても、熱可塑性樹脂を成形して得られる成形品の表面と塗料との密着性が高い塗装樹脂成形品の製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記したような問題がない塗装樹脂成形品の製造方法を見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品に二液硬化型アクリルウレタン系樹脂用塗料を塗布し、15℃〜85℃で硬化せしめることにより、熱可塑性樹脂を成形して得た成形品の表面と塗料との密着性が高い塗装樹脂成形品を製造し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品に二液硬化型アクリルウレタン系樹脂用塗料を塗布し、15℃〜85℃で硬化せしめることを特徴とする塗装樹脂成形品の製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ゴム強化ポリ(アクリロニトリル−スチレン)共重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルホン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト重合体などが挙げられる。
【0006】
熱可塑性樹脂組成物としては、上記した熱可塑性樹脂を2種類以上含有する樹脂組成物が好ましく、例えば、ポリフェニレンエーテルとポリアミドからなる樹脂組成物、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンからなる樹脂組成物、ポリフェニレンエーテルとポリプロピレンからなる樹脂組成物、ポリプロピレンとポリアミドからなる樹脂組成物などが挙げられる。
【0007】
また、熱可塑性樹脂組成物には、無機充填剤が含有されていてもよい。
無機充填剤としては、例えば、タルク(ケイ酸マグネシウム)、クレー(ケイ酸アルミニウム)、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、ガラス繊維などが挙げられる。
【0008】
さらに、熱可塑性樹脂組成物は、エラストマー、ゴム様物質および変性ゴム様物質からなる群から選ばれる少なくとも1種が含有されていてもよい。
エラストマー、ゴム様物質としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ブテン−非共役ジエンゴム、プロピレン−ブテンゴム、イソプレン−ブチレンゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、部分水素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンゴム、スチレングラフトエチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、スチレン−アクリロニトリルグラフトエチレン−プロピレンゴム、スチレン−アクリロニトリルグラフトエチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、部分水素化スチレン−イソプレンブロックコポリマー、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム(例えば、ポリプロピレンオキサイド等)、エピクロルヒドリンゴム、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、線状低密度ポリエチレンなどが挙げられ、これらは単独でも2種以上混合して用いてもよい。
ここで、線状低密度ポリエチレンの密度は、0.885〜0.935g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.885〜0.925 g/cmである。
【0009】
本発明で用いる変性ゴム様物質とは、通常、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド基、イソシアネート基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物、又は酸無水物、カルボン酸エステル及びオキサゾリン環からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物で変性されたゴム様物質をいう。ゴム様物質を変性する方法は、特に限定されないが、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などの方法により化合物の主鎖、側鎖、末端へ上記した基などを導入する方法などが挙げられる。
【0010】
変性ゴム様物質としては、例えば、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレンゴム、無水マレイン酸グラフトスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフト部分水素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフト部分水素化スチレン−イソプレンブロックコポリマー、グリシジルメタクリレートグラフトエチレン−プロピレンゴム、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレートコポリマーなどが挙げられる。
【0011】
更に、本発明で使用される熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤などが添加されていてもよい。
【0012】
上記の熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂組成物のうち、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとの混合物、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとのグラフト共重合体、ポリアミドおよびポリエステルからなる群から選ばれる少くとも1種の熱可塑性樹脂、ゴム様物質、無機充填剤、ガラス繊維、および相容化剤からなる樹脂組成物、またはポリプロピレンを主成分とした樹脂組成物が好適に使用される。
【0013】
熱可塑性樹脂組成物は、溶液ブレンド法、溶融混練法など各種の方法により得ることができるが、溶融混練法が好ましく使用される。
溶融混練法としては、各成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー等の公知の混合機で混合物した後、該混合物をバンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸の押出機等の公知の混練機で、通常、150〜400℃、好ましくは200〜350℃で溶融混練する方法を挙げることができる。
【0014】
熱可塑性樹脂組成物中の各成分の配合順序、混練順序は、特に限定されない。押出機等を用いて溶融混練する場合には、各成分を別々に供給して混練する、一台の押出機に複数個の成分供給口(フィード口)を設け、各フィード口から一種又は二種以上の成分を順次フィードして混練する、各成分を一括添加して混練する、一部の成分を予め溶融混練しておき、次いで残りの成分を添加して混練する方法などのいずれの方法も採用することができる。
【0015】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物を成形する成形方法は、特に限定されないが、例えば、射出成形法、ブロー成形法、押出成形法などを挙げることができる。
【0016】
得られた成形品には、二液硬化型アクリルウレタン系樹脂用塗料が塗布され、これを硬化せしめることによって塗膜が形成される。
二液硬化型アクリルウレタン系樹脂用塗料としては、例えば、アクリルポリオール樹脂を主成分とした主剤と、イソシアネートを主成分とした硬化剤とを混合してシンナーで希釈する塗料などが挙げられる。
塗布方法は、特に限定されないが、例えば、塗料を溶剤で希釈した後、エアースプレーなどを用いて、成形品に均一に塗布した後、オーブンなどを用いて加熱することにより、塗料の硬化を行う方法などを挙げることができる。
【0017】
本発明においては、成形品に塗布された塗料を硬化せしめる温度は、15℃〜85℃であることが必要であり、25℃〜85℃であることが好ましい。塗料を硬化する温度が85℃を超えると、初期密着性が低下する傾向にあり、硬化温度が15℃未満であると、初期密着性は良好であるものの、耐水二次密着性や耐湿二次密着性が悪くなる傾向にある。
塗料の硬化には、通常、15℃〜85℃で5分〜2時間程度を要する。
【0018】
このようにして得られる塗膜の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、5〜40ミクロンである。
また、得られる塗膜の破壊強度は、1.0KN/m〜2.8KN/mであることが好ましく、1.2KN/m〜2.5KN/mであることがより好ましい。
塗膜の破壊強度が1.0KN/m〜2.8KN/mであると、塗装後24時間での密着性(初期密着性)が良好で、かつ、水に接した状態や高い湿度条件下での経時による密着性、例えば、耐水二次密着性や耐湿二次密着性に優れている。塗膜の破壊強度が2.8KN/mを超えると、初期密着性が十分でない傾向があり、1.0KN/m未満であれば、初期密着性は良好であるものの、耐水二次密着性や耐湿二次密着性が悪くなる傾向がある。
【0019】
ここで、塗膜の破壊強度とは、樹脂成形品に塗料を塗装して硬化せしめた後、24時間経過した後、塗膜にダイヤモンドの切削刃を押し付けて強制的に食い込ませ、塗膜の厚みの50%に達するところで切削刃を水平方向に移動させて生じる切削力を測定した値をいう。塗膜の破壊強度を測定する装置としては、例えば、ダイプラウィンテス(株)製 表面/界面解析装置SAICAS(surface and interfacial cutting analysis system)を挙げることができる。また、調色された塗料、クリア塗料など積層して、二層、三層に塗装した塗装成形品においては、熱可塑性樹脂からなる基材層と接している層を構成している塗膜について破壊強度を測定する。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明が実施例により限定されるものでないことは言うまでもない。
なお、実施例においては、以下の方法により測定、評価などを行った。
【0021】
(1)塗装方法
樹脂成形品にアクリルウレタン系樹脂塗料をエア−スプレ−を用いて、厚み約35μmに塗布した後、焼き付け工程として、所定の温度に設定したオーブン中に30分間入れ、塗布された塗料の乾燥及び硬化を行い、塗装成形品を得た。
【0022】
(2)塗装性評価法
(初期密着性(%))
塗装成形品(サンプル)の塗膜にカミソリ刃にて2mmのゴバン目を100ケ(10縦×10横)を刻み、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を指で圧着した後、その端面をつかんで一気に引きはがした時に、残存したゴバン目数を数えることにより評価した。
初期密着性(%)=(残存したゴバン目数)/100 X 100
(耐湿二次密着性(%))
温度50℃、相対湿度98%にコントロ−ルされた恒温恒湿槽に塗装成形品(サンプル)を240時間浸漬させたあと、取り出し24時間恒温室(温度23℃、湿度50%)に放置後、塗装成形品(サンプル)の塗膜にカミソリ刃にて2mmのゴバン目を100ケ(10縦×10横)を刻み、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を指で圧着した後、その端面をつかんで一気に引きはがした時に、残存したゴバン目数を数えることにより評価した。
耐湿二次密着性(%)=(残存したゴバン目数)/100 X 100
【0023】
(3)塗膜の破壊強度測定方法
上記の塗装成形品(サンプル)を35mm×45mm程度にカッティングしてダイプラウィンテス(株)製 表面/界面解析装置SAICAS(surface and interfacial cutting analysis system)を用いて塗装された塗膜の破壊強度を測定する。
事前に基材に直接塗布された第一層の塗膜の厚みを測定し、その50%の厚みに達するところに該装置の切削刃を食い込ませた後、該切削刃を水平方向に移動させ、その際に生じる切削力をロ−ドセルで測定して、これを塗膜の破壊強度とした。測定条件は以下に示したとおりである。
Figure 2004083830
【0024】
実施例1
熱可塑性樹脂組成物として、ポリフェニレンエーテル(GE社製、グレード名P40)32重量%、ポリアミド−6(ユニチカ製、グレード名A1030BRL)20重量%、ポリアミド−6(カネボウ製、グレード名MC100)30重量%、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(シェル製、グレード名G1652)18重量%、無水マレイン酸0.3重量部、無水コハク酸0.5重量部の割合で配合したものを用い、東芝機械製TEM50二軸混練機を用いて、フィード口の上流側から原料を投入して260℃のシリンダー温度にて溶融混練し、ダイスより押しだした溶融樹脂を水槽にて冷却後、ストランドカッターによりペレット化して得た。次にこのペレットを110〜130℃で4時間真空乾燥した後、東芝機械製射出成形機IS220ENによりシリンダー温度290℃、射出圧力1200kg/cm、金型温度80℃の条件で塗装性を評価するためのテストピースを成形した。
得られた成形品に、オリジン電気製二液アクリルウレタン系樹脂塗料「オリジプレ−トZ−NY」を、塗膜厚み30〜40ミクロンになるよう、スプレ−塗装し、25℃で塗膜の硬化を行った後、24時間常温雰囲気で放置して、塗装品の初期密着性、耐湿二次密着性および基材表面に塗布された塗膜の破壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
塗膜の硬化を40℃で行う以外は実施例1と同様にして、塗装品の初期密着性、耐湿二次密着性および基材表面に塗布された塗膜の破壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
実施例3
塗膜の硬化を60℃で行う以外は実施例1と同様にして、塗装品の初期密着性、耐湿二次密着性および基材表面に塗布された塗膜の破壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
実施例4
塗膜の硬化を80℃で行う以外は実施例1と同様にして、塗装品の初期密着性、耐湿二次密着性および基材表面に塗布された塗膜の破壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
比較例1
塗膜の硬化を90℃で行う以外は実施例1と同様にして、塗装品の初期密着性、耐湿二次密着性および基材表面に塗布された塗膜の破壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0029】
比較例2
塗膜の硬化を100℃で行う以外は実施例1と同様にして、塗装品の初期密着性、耐湿二次密着性および基材表面に塗布された塗膜の破壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
比較例3
塗膜の硬化を10℃雰囲気下で行う以外は実施例1と同様にして、塗装品の初期密着性、耐湿二次密着性および基材表面に塗布された塗膜の破壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 2004083830
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、プライマー塗装を省略しても、熱可塑性樹脂を成形して得られる成形品の表面と塗料との密着性が高い塗装樹脂成形品の製造方法を提供することが可能となる。

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品に二液硬化型アクリルウレタン系樹脂用塗料を塗布し、15℃〜85℃で硬化せしめることを特徴とする塗装樹脂成形品の製造方法。
  2. 25℃〜85℃で硬化せしめる請求項1記載の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の方法により得られる塗装樹脂成形品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011218256A (ja) * 2010-04-06 2011-11-04 Misawa Homes Co Ltd 塗装樹脂成形品の製造方法

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