JP2004083487A - 抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物 - Google Patents

抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物 Download PDF

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Kimiyasu Shiraki
白木 公康
Masahiko Kurokawa
黒川 昌彦
Yoshitaka Tamura
田村 吉隆
Susumu Teraguchi
寺口 進
Hiroyuki Wakabayashi
若林 裕之
Koichiro Shin
新 光一郎
Tomomi Kawakami
川上 智美
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Abstract

【課題】安全性に優れ、日常的に長期間にわたり服用・摂取が可能であって、ヒトを含む動物の感染症の原因となる病原性ウイルスに対して抗ウイルス作用を有する抗ウイルス組成物を提供すること、及び安全性に優れ、日常的に長期間にわたり服用・摂取が可能であって、ヒトを含む動物のウイルス感染症に対して予防効果及び/又は治療効果を有するウイルス感染症予防・治療用組成物を提供することである。
【解決手段】抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物の有効成分として、月見草種子抽出物を含有し、好ましくは有効成分としてさらにラクトフェリンを含有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、月見草種子抽出物を有効成分として含有する抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自然界には、ヒトや動物に感染症を引き起こす種々の微生物が存在する。それらの微生物は、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、真菌、原虫、ウイルスに分類される。ウイルスの遺伝物質はデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)であるが、細菌やその他の微生物がエネルギー代謝系を持ち、従属栄養で増殖するのに対し、ウイルスは、宿主細胞に寄生することによってのみ増殖が可能である〔医科ウイルス学、改訂第2版、大里外誉郎編、南江堂発行、第15〜24ページ、2000年〕。
【0003】
ヒトや動物の感染症の原因となる病原性ウイルスの中で、痘瘡ウイルスは種痘によって地球上から撲滅され、ポリオウイルスは予防ワクチンによって患者数が激減した。一方、ヒト免疫不全ウイルスの感染が原因でおこる後天性免疫不全症候群(エイズ)は、現在でも最も恐れられる感染症の一つである。また、C型肝炎ウイルス感染症は、長期感染によって重篤な肝硬変及び肝癌に進行することが多い。また、単純ヘルペスウイルスは粘膜面から初感染するが、ウイルスが一度体内に入ると潜伏感染し、宿主の生理状態に応じて回帰発症を起こす。また、水痘−帯状疱疹ウイルスは、小児期に大多数のヒトが罹患した水痘によって体内に入ったウイルスが知覚神経節内に潜在感染し、回帰発症して帯状疱疹を引き起こす。帯状疱疹の発疹発生部位での強い炎症反応は、神経節から皮膚に出血壊死が起こる原因となる。
【0004】
これらのような慢性感染症に加えて、急性感染症であるインフルエンザウイルス感染症は、冬期に流行するが、悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患等を基礎疾患に持つ患者、老人、乳幼児はインフルエンザ感染のハイリスク群であり、命にかかわる重篤な感染につながることも多い。また、RS(Respiratory Syncytial)ウイルスは、通常、健康な成人には感染しないが、小児では上部呼吸器感染の主要な原因となる。
【0005】
微生物による感染症の中でも、特に細菌感染症に対しては、有効な抗生物質が開発されており、効果的な治療が行なわれているが、ウイルス感染症には抗生物質が有効に作用しない。抗生物質による化学療法の急速な進歩に比べると、ウイルス感染症の治療薬としての抗ウイルス剤の開発は、現在でもそれほど進んでいないのが現状である。いままでに開発された抗ウイルス剤には、ウイルス核酸の複製をターゲットとする核酸類似体のアシクロビル、アジドチミジン、リバビリン、ノイラミニダーゼ阻害剤のザナミビル(4−グアニジノノイラミン酸)、プロテアーゼ阻害剤のインジナビル等がある。これらの医薬品としての抗ウイルス剤は薬効が強いものの、投与による副作用は臨床上の大きな問題である。
【0006】
例えば、アジドチミジンには、吐気、筋肉痛、頭痛等の副作用があり、ソリブジンは、抗がん剤5−フルオロウラシル投与患者への重投与による薬害で死亡例が発生し、使用が中止された。また、これらの副作用に加えて、薬剤投与による耐性ウイルス出現も臨床上の大きな問題となっていた。
【0007】
上述したように、ウイルスは、宿主細胞に寄生することでのみ生存が可能であるため、宿主細胞の生理条件によって感染や増殖に影響を受ける。インターフェロンは、ウイルスに感染した細胞が産生するウイルス増殖阻害物質として発見された宿主由来の生理活性物質であり、現在では、医薬品の抗ウイルス剤として利用されている。インターフェロンの治療効果を高めるには、できるだけ感染初期から使用するほうが良く、さらに、感染組織や血液中のウイルス量が少ないほうが良い。しかしながら、このインターフェロンも、筋肉痛、頭痛、発熱、全身倦怠感等の副作用を起こすことがある。
【0008】
このような状況から、安全で副作用が少なく、日常的に長期服用が可能な抗ウイルス剤及びウイルス感染症予防・治療剤の開発が望まれている。一例としては、天然物の和漢生薬からの抗ウイルス剤の開発が試みられている〔薬学雑誌、第118巻、第383〜400ページ、1998年〕。また、栄養学的な観点からは、日常の食生活において長期間にわたる摂取が可能な抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を有する飲食品及び飼料の開発が望まれている。
【0009】
月見草〔別名:メマツヨイグサ、英名:イブニング・プリムローズ(Evening Primrose)、学名:Oenothera biennis〕の種子は、様々な機能性食品成分の原料として利用されている。月見草種子には、γ−リノレン酸を主体とした不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることが知られており、月見草種子油には、アトピー性湿疹〔クリニカル・インベスティゲーター(Clinical Investigator)、第70巻、第167〜171ページ、1992年〕、リューマチ性関節炎〔ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリション(British Journal of Nutrition)、第85巻、第251〜269ページ、2001年〕、糖尿病〔メタボリズム(Metabolism)、第50巻、第868〜875ページ、2001年〕等に対する症状緩和効果が報告されている。
【0010】
月見草種子抽出物は、例えば、月見草種子又は油分を脱脂した月見草種子を、水、エタノール又はそれらの混合物等の溶媒で抽出することによって得られる〔(ニュートリッション・リピッズ・ヘルス・アンド・ディジーズ(Nutrition, Lipids, Health, and Disease)、A.S.オング、H.ニキ、L.パーカー(Ong, A. S. H、Niki, E.、Parker, L.)編、AOCS・プレス(AOCS Press)発行、第86〜95ページ、1995年)、(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of Agricultural and Food Chemistry)、第47巻、第1801〜1812ページ、1999年)、(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of Agricultural and Food Chemistry)、第49巻、第4502〜4507ページ、2001年)〕。こうして得られた月見草種子抽出物には、極めて特有の構造を持つポリフェノール類が豊富に含まれており、オリゴメリックプロアントシアニジンに加えて、ブドウ種子抽出物や茶抽出物等には存在しないペンタガロイルグルコースやエラグ酸等が含有されている〔(ニュートリッション・リピッズ・ヘルス・アンド・ディジーズ(Nutrition, Lipids, Health, and Disease)、A.S.オング、H.ニキ、L.パーカー(Ong, A. S. H、Niki, E.、Parker, L.)編、AOCS・プレス(AOCS Press)発行、第86〜95ページ、1995年)、(食品と開発、第37巻、第42〜46ページ、2002年)〕。
【0011】
月見草種子抽出物には、食品に添加した場合の抗酸化作用〔ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of Agricultural and Food Chemistry)、第47巻、第1801〜1812ページ、1999年〕が確認されている。また、月見草種子抽出物には、活性酸素消去能、抗菌性、細胞の突然変異抑制、紫外線による皮膚細胞のダメージ抑制、血糖値上昇抑制作用、通風の原因となるキサンチンオキシダーゼ抑制等の生物機能が確認され〔食品と開発、第37巻、第42〜46ページ、2002年〕、肝障害、腎臓疾病、炎症、糖尿病等への評価試験も行なわれており〔食品と開発、第37巻、第42〜46ページ、2002年〕、生体の様々な生理機能の正常化を介しての疾病の予防及び症状緩和効果が期待されている。しかしながら、現在に至るまで、月見草種子抽出物の抗ウイルス活性及びウイルス感染症予防・治療効果については、全く知られていなかった。
【0012】
ラクトフェリンは、哺乳類の乳汁、唾液、涙液等の分泌液や好中球の二次顆粒に含有される鉄結合性糖蛋白質である〔アニュアル・レビュー・オブ・ニュートリション(Annual Review of Nutrition)、第15巻、第93〜110ページ、1995年〕。ラクトフェリンは、工業的には牛乳から大量スケールで精製される〔特公平6−13560公報〕。ラクトフェリンには、抗菌性、抗ウイルス活性、腸管からの鉄吸収調節作用、細胞増殖作用、免疫調節作用等の多様な生物機能が報告されており〔アニュアル・レビュー・オブ・ニュートリション(AnnualReview of Nutrition)、第15巻、第93〜110ページ、1995年〕、すでにインフルエンザウイルス感染防御剤〔特許第3061376号〕、ムチン産生促進剤〔特許第3183378号〕、新生子牛の造血機能の改善及び貧血の予防方法〔特許第2590449号〕、大腸菌付着防止剤〔特許第2832517号〕等に関する技術が開示されている。しかしながら、現在に至るまで月見草種子抽出物とラクトフェリンの組み合わせによる効果に関しては全く知られていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、安全性に優れ、日常的に長期間にわたり服用・摂取が可能であって、ヒトを含めた動物の感染症の原因となる病原性ウイルスに対して抗ウイルス作用を有する抗ウイルス組成物を提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、安全性に優れ、日常的に長期間にわたり服用・摂取が可能であって、ヒトを含めた動物のウイルス感染症に対して予防効果及び/又は治療効果を有するウイルス感染症予防・治療用組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、多機能性食品成分の抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果について鋭意研究を行なった結果、月見草種子抽出物が、ヒトを含めた動物の感染症の原因となる種々のウイルスに対して広域スペクトルな抗ウイルス作用を有するとともに、ウイルス感染で傷害を受けた宿主の生理機能を改善する作用を併有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物を提供する。
【0015】
(1)月見草種子抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗ウイルス組成物。
(2)前記月見草種子抽出物が、抽出溶媒として水、有機溶媒又はこれらの混合物を用いて得られた抽出物であることを特徴とする前記(1)記載の抗ウイルス組成物。
(3)インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス又はポリオウイルスに対する抗ウイルス作用を有することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の抗ウイルス組成物。
(4)医薬組成物、飲食品組成物又は飼料組成物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗ウイルス組成物。
(5)有効成分としてさらにラクトフェリンを含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の抗ウイルス組成物。
【0016】
(6)月見草種子抽出物を有効成分として含有することを特徴とするウイルス感染症予防・治療用組成物。
(7)前記月見草種子抽出物が、抽出溶媒として水、有機溶媒又はこれらの混合物を用いて得られた抽出物であることを特徴とする前記(6)記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
(8)インフルエンザウイルス感染症、RSウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症又はポリオウイルス感染症に対する予防効果及び/又は治療効果を有することを特徴とする前記(6)又は(7)記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
(9)医薬組成物、飲食品組成物又は飼料組成物であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれかに記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
(10)有効成分としてさらにラクトフェリンを含有することを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれかに記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において「月見草種子抽出物」には、月見草の種子を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液を乾燥して得られる乾燥物又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0018】
月見草の種子は、そのまま抽出原料として使用してもよいが、乾燥、粉砕、脱脂等の前処理を施したものを抽出原料として使用してもよい。
【0019】
抽出溶媒の種類は、月見草の種子から抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を有する物質を抽出し得る限り特に限定されるものではないが、水、有機溶媒又はこれらの混合物を使用することが好ましい。抽出溶媒として使用し得る水には、水に各種処理(例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等)を施したもの、例えば、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。抽出溶媒として使用し得る有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級脂肪族アルコール;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;又はこれらの混合物等の親水性有機溶媒が挙げられ、この中でも特にエタノールを使用することが好ましい。2種以上の混合物を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整できる。
【0020】
月見草種子抽出物を得るにあたり特別な抽出方法を採用する必要はなく、月見草の種子からの抽出に一般に用いられている抽出方法を採用できる(ニュートリッション・リピッズ・ヘルス・アンド・ディジーズ(Nutrition, Lipids, Health, and Disease)、A.S.オング、H.ニキ、L.パーカー(Ong, A. S. H、Niki, E.、Parker, L.)編、AOCS・プレス(AOCS Press)発行、第86〜95ページ、1995年;ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of Agricultural and Food Chemistry)、第47巻、第1801〜1812ページ、1999年)、(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of Agricultural and FoodChemistry)、第49巻、第4502〜4507ページ、2001年)。
【0021】
月見草の種子からの抽出は、例えば、室温又は還流加熱下、任意の装置を用いて行なうことができる。具体的には、抽出溶媒を満たした抽出槽に抽出原料を投入し、必要に応じて時々攪拌しながら、数時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去することにより抽出液を得ることができる。この際、抽出溶媒量は抽出原料の通常10〜20倍量(質量比)であり、抽出温度は通常10〜80℃である。得られた抽出液は、そのままでも抗ウイルス組成物又はウイルス感染症予防・治療用組成物の有効成分として使用できるが、濃縮液又は乾燥物とした後に使用することが好ましい。また、抽出液には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等の精製処理を施してもよい。
月見草種子抽出物としては、市販のものを利用することも可能である。
【0022】
月見草種子抽出物は、抗ウイルス作用及びウイルス感染症予防・治療効果を有しているので、抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物(以下、両者を併せて「本発明の組成物」という場合がある。)の有効成分として使用できる。ここで、「有効成分」とは、抗ウイルス組成物においては抗ウイルス作用を有する成分を、ウイルス感染症予防・治療用組成物においてはウイルス感染症予防・治療効果を有する成分を意味し、月見草種子抽出物が本発明の組成物の主成分である必要はなく、また、本発明の組成物には月見草種子抽出物以外に抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を有する成分が含まれていてもよい。
【0023】
本発明において「抗ウイルス作用」には、宿主へのウイルスの感染性を不活性化する作用、宿主に感染したウイルスの宿主内における増殖を抑制する作用及びウイルスが感染した宿主内におけるウイルス量を低減する作用のいずれもが含まれる。また、「ウイルス感染症予防・治療効果」には、ウイルス感染症を予防及び/又は治療する効果の他、ウイルス感染症の症状を改善又は緩和する効果が含まれる。また、「ウイルス感染症予防・治療効果」は、抗ウイルス作用に基づいて発揮されるウイルス感染症予防・治療効果に限定されるものではない。
【0024】
本発明の組成物の形態は特に限定されるものではなく、本発明の組成物の形態としては、例えば、医薬組成物、飲食品組成物、飼料組成物等が挙げられる。
【0025】
本発明の組成物は、月見草種子抽出物それ自体であってもよいし、月見草種子抽出物以外の成分を含有していてもよい。月見草種子抽出物以外の成分は、組成物の形態に応じて適宜選択できる。
【0026】
医薬組成物は、例えば、月見草種子抽出物を、薬学的に許容され得る賦形剤その他任意の添加剤を用いて製剤化することにより製造でき、製剤化した月見草種子抽出物は、抗ウイルス剤又はウイルス感染症予防・治療剤として使用できる。製剤化する場合、製剤中の月見草種子抽出物の含有量は、通常5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。製剤化にあたっては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。
【0027】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられ、結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マグロゴール等が挙げられ、崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられ、滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられ、安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられ、矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられ、注射剤用溶剤としては、例えば、水、エタノール、グリセリン等が挙げられる。
【0028】
医薬組成物の投与経路としては、例えば、経口投与、経腸投与等の非経口投与が挙げられ、医薬組成物の投与剤形としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等が挙げられる。また、医薬組成物は、飲食品、飼料等に配合して投与することもできる。投与投与量及び投与回数は、目的とする作用効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、投与量は、成人1日当たり通常20〜2000mgの範囲から適宜選択でき、投与回数は、1日1回から数回の範囲から適宜選択できる。
【0029】
飲食品組成物は、例えば、月見草種子抽出物に、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等を配合することにより製造できる。飲食品組成物の形態としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物、パン;経腸栄養食;機能性食品等が挙げられる。
【0030】
飼料組成物は、例えば、月見草種子抽出物に、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエー、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トラル酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を配合することにより製造できる。飼料組成物の形態としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【0031】
飲食品組成物又は飼料組成物は、タブレット状のサプリメントであることが好ましい。これによって、一日当りの食事量及び摂取カロリーを他の食品の摂取量を加味した上でコントロールする必要が無く、また、有効成分の摂取量を正確に把握できる。このようなサプリメントは、例えば、慢性ウイルス感染症患者、体調不良によってウイルス感染症の回帰発症の危険性が高いヒトを含む動物、インフルエンザウイルス感染症等のウイルス感染症が流行する時期のヒトを含む動物、乳幼児、高齢者等にとって、ウイルス感染症の予防・治療時の補助的な食品等として有用である。
【0032】
本発明の組成物は、月見草種子抽出物に加え、有効成分としてさらにラクトフェリンを含有することが好ましい。月見草種子抽出物とラクトフェリンとの相乗効果によって、抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を高めることができる。
【0033】
ラクトフェリンとしては、ウシ、ヒト、ヤギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類の初乳、移行乳、常乳、末期乳又はこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエー等から常法(例えば、イオンクロマトグラフィー等)によって分離されたラクトフェリンを使用できる。また、より簡便には、市販のラクトフェリン(例えば森永乳業社製等)を使用できる。また、遺伝子操作によって微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等が生産する組換えラクトフェリンを使用してもよい。
【0034】
本発明の組成物は、単独で使用してもよいが、その他の抗ウイルス剤又はウイルス感染症予防・治療剤と併用してもよい。併用によって、抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を高めることができる。併用する抗ウイルス剤又はウイルス感染症予防・治療剤は、本発明の組成物中に有効成分として含有させてもよいし、本発明の組成物中には含有させずに別個の薬剤として組み合わせて商品化してもよい。
【0035】
本発明の組成物が抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を発揮し得るウイルスは特に限定されるものではなく、多種類のウイルスに対して抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を発揮できる。本発明の組成物が抗ウイルス作用又はウイルス感染症予防・治療効果を発揮し得るウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポリオウイルス等が挙げられる。
【0036】
【実施例】
以下、試験例及び製造例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
〔試験例1〕
本試験は、月見草種子抽出物の病原性ウイルスに対する感染性不活性化作用を調べるために行なった。
(1)試料の調製
月見草種子抽出物(ニュージーランドファーマシューティカル社製)を、ジメチルスルホキシドに1ml当り10mgの濃度に溶解した。供試ウイルスとして、異なる性質を持つ4種類のウイルスを使用した。これらは、オルソミクソウイルス科(エンベロープを有する一本鎖RNAウイルス)に属するインフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)株、パラミクソウイルス科(エンベロープを有する一本鎖RNAウイルス)に属するRSウイルスA2株、ヘルペスウイルス科(エンベロープを有する二本鎖DNAウイルス)に属する単純ヘルペスウイルス1型7401H株、ピルコナウイルス科(エンベロープを持たない一本鎖RNAウイルス)に属するポリオウイルス・タイプ1 Sabin株である〔アンチバイラル・リサーチ(Antiviral Research)、第22巻、第175〜188ページ、1993年〕。培養動物細胞として、インフルエンザウイルスにはMDCK細胞、RSウイルスにはHep2細胞、ヘルペスウイルス及びポリオウイルスにはVero細胞を組み合わせて使用した。これらの培養動物細胞は、血清添加イーグルMEM培地(日水製薬社製)を用いて直径60mmのディッシュ中で単層になるまで培養した。
【0037】
(2)試験方法
インフルエンザウイルスは、1%ウシ血清アルブミン添加リン酸緩衝生理食塩水0.2ml中に100プラーク形成単位(PFU)となるように添加した。その他の供試ウイルスは、血清添加イーグルMEM培地0.2ml中に同じく100PFUとなるように添加した。これらの溶液に、さらに上記の月見草種子抽出物のジメチルスルホキシド溶液2μl(終濃度100μg/ml)を添加して、37℃で1時間インキュベートした。コントロールにはジメチルスルホキシド2μlだけを添加し、同じく37℃で1時間インキュベートした。このウイルス処理液の全量を直径60mmのディッシュで単層に培養した動物細胞に添加し、37℃で1時間インキュベートした。次に、リン酸緩衝生理食塩水でディッシュを洗浄した。インフルエンザウイルス処理液を添加したMDCK細胞には、0.8%アガロース添加イーグルMEM培地5mlを重層して3日間培養した。その他のウイルス処理液を添加した培養細胞には、0.8%メチルセルロース添加イーグルMEM培地5mlを重層して3日間培養した。培養終了後の単層培養動物細胞は、5%ホルマリン溶液で固定し、0.03%メチレンブルー溶液で染色した。単層培養動物細胞に検出されたプラーク形成数を測定し、月見草種子抽出物のコントロールに対する割合(%)を求めた〔(アンチバイラル・リサーチ(Antiviral Research)、第22巻、第175〜188ページ、1993年)、(ジャーナル・オブ・ジェネラル・バイロロジー(Journal of General Virology)、第71巻、第2149〜2155巻、1990年)〕。なお、これらの実験操作は、2回実施して平均値を算出した。
【0038】
(3)試験結果
本試験の結果は表1に示すとおりである。月見草種子抽出物のコントロールに対するプラーク形成率は、インフルエンザウイルスに対して25.4%、RSウイルスに対して0.0%、ヘルペスウイルスに対して0.0%、ポリオウイルスに対して80.9%を示した。したがって、月見草種子抽出物は、多種類の病原性ウイルスに対して感染性不活性化作用を持つことが明らかになった。
【0039】
【表1】
Figure 2004083487
【0040】
〔試験例2〕
本試験は、月見草種子抽出物の病原性ウイルスに対する感染性不活性化作用の有効濃度を調べるために行なった。
(1)試料の調製
試験例1と同様の方法で試料を調製した。なお、月見草種子抽出物のジメチルスルホキシド溶液は、ジメチルスルホキシドで種々の濃度に希釈して使用した。
(2)試験方法
試験例1と同様の方法で試験を行なったが、月見草種子抽出物を種々の濃度で添加した場合のプラーク形成抑制率を観察し、月見草種子抽出物の濃度とプラーク形成抑制率の関係から、50%プラーク形成抑制濃度(EC50)を求めた。
【0041】
(3)試験結果
本試験の結果は表2に示すとおりである。月見草種子抽出物のEC50は、インフルエンザウイルスに対して41.5μg/ml、RSウイルスに対して3.0μg/ml、ヘルペスウイルスに対して45.6μg/mlであった。ポリオウイルスに対しては、試験例1の結果(100μg/mlでのプラーク形成率は80.9%)から、100μg/ml以上であることは明らかである。したがって、月見草種子抽出物は、ポリオウイルスを除く病原性ウイルスの感染性を極めて低濃度で不活性化させることが明らかになった。これらの結果から、月見草種子抽出物の病原性ウイルスに対する感染性不活性化作用の有効濃度は、少なくとも3.0μg/ml以上であることが明らかになった。
【0042】
【表2】
Figure 2004083487
【0043】
〔試験例3〕
本試験は、病原性ウイルス感染細胞に対する月見草種子抽出物のプラーク形成抑制作用を調べるために行なった。
(1)試料の調製
試験例1と同様の方法で試料を調製した。
(2)試験方法
インフルエンザウイルスは、1%ウシ血清アルブミン添加リン酸緩衝生理食塩水0.2ml中に100PFUとなるように添加した。その他の供試ウイルスは、血清添加イーグルMEM培地0.2ml中に同じく100PFUとなるように添加した。このウイルス液全量を直径60mmのディッシュで単層に培養した動物細胞に添加し、37℃で1時間インキュベートした。この方法でインフルエンザウイルス感染させたMDCK細胞には、月見草種子抽出物のジメチルスルホキシド溶液50μl(月見草種子抽出物の終濃度100μg/ml)を添加した0.8%アガロース添加イーグルMEM培地5mlを重層して3日間培養した。その他のウイルスを感染させた培養細胞には、月見草種子抽出物のジメチルスルホキシド溶液50μl(月見草種子抽出物の終濃度100μg/ml)を添加した0.8%メチルセルロース添加イーグルMEM培地5mlを重層して3日間培養した。コントロールには、ジメチルスルホキシド50μlだけを添加した培地を用いた。培養終了後の単層培養動物細胞を5%ホルマリン溶液で固定し、0.03%メチレンブルー溶液で染色した。単層培養動物細胞に検出されたプラーク形成数を測定し、月見草種子抽出物のコントロールに対する割合(%)を求めた〔(アンチバイラル・リサーチ(Antiviral Research)、第22巻、第175〜188ページ、1993年)、(ジャーナル・オブ・ジェネラル・バイロロジー(Journal of General Virology)、第71巻、第2149〜2155巻、1990年)〕。なお、これらの実験操作は、2回実施して平均値を算出した。
【0044】
(3)試験結果
本試験の結果は表3に示すとおりである。月見草種子抽出物のコントロールに対するプラーク形成率は、インフルエンザウイルスに対して6.5%、RSウイルスに対して0.0%、ヘルペスウイルスに対して12.8%、ポリオウイルスに対して2.5%を示した。したがって、月見草種子抽出物は、多種類の病原性ウイルスに対して、ウイルス感染細胞におけるプラーク形成を抑制することが明らかになった。
【0045】
【表3】
Figure 2004083487
【0046】
〔試験例4〕
本試験は、病原性ウイルス感染細胞に対する月見草種子抽出物のプラーク形成抑制作用の有効濃度を調べるために行なった。
(1)試料の調製
試験例1と同様の方法で試料を調製した。
(2)試験方法
試験例2と同様の方法で試験を行なったが、月見草種子抽出物を種々の濃度で添加した場合のプラーク形成抑制率を観察し、月見草種子抽出物の濃度とプラーク形成抑制率の関係から、50%プラーク形成抑制濃度(EC50)を求めた。
【0047】
(3)試験結果
本試験の結果は表4に示すとおりである。月見草種子抽出物は、インフルエンザウイルスに対して34.3μg/ml、RSウイルスに対して9.4μg/ml、ヘルペスウイルスに対して31.1μg/ml、ポリオウイルスに対して2.1μg/mlのEC50を示した。したがって、月見草種子抽出物は、多種類の病原性ウイルス感染細胞に対して、極めて低濃度でプラーク形成抑制作用を示すことが明らかになった。これらの結果から、月見草種子抽出物のプラーク形成抑制作用の有効濃度は、少なくとも2.1μg/ml以上であることが明らかになった。試験例2の結果を考え合わせると、月見草種子抽出物の抗ウイルス活性の有効作用濃度は、少なくとも2.1μg/ml(0.00021%)以上であることが判明した。
【0048】
【表4】
Figure 2004083487
【0049】
〔試験例5〕
本試験は、月見草種子抽出物の細胞毒性を調べるために行なった。
(1)試料の調製
試験例1と同様の方法で試料を調製した。
(2)試験方法
24ウェルプレートに1ウェル当り2.5×10個の培養動物細胞を接種し、37℃で2日間培養した。培養液を、種々の濃度で月見草種子抽出物を添加した血清添加イーグルMEM培地と交換し、さらに2日間培養した。その後、細胞をトリプシンで処理し、トリパンブルーの細胞染色性を指標として生細胞数の割合を位相差顕微鏡で観察し、50%細胞毒性濃度(CC50)を求めた。
【0050】
(3)試験結果
本試験の結果は表5に示すとおりである。月見草種子抽出物は、MDCK細胞に対して239.3μg/ml、Hep2細胞に対して449.4μg/ml、Vero細胞に対して125.3μg/mlのCC50を示した。したがって、月見草種子抽出物は、動物細胞に対する細胞毒性が極めて低いことが明らかになった。
【0051】
【表5】
Figure 2004083487
【0052】
〔試験例6〕
本試験は、月見草種子抽出物のウイルス感染動物に対するウイルス量抑制効果及びウイルス感染症治療効果を調べるために行なった。さらに、本試験では、月見草種子抽出物とラクトフェリンとの組み合わせによるウイルス感染症治療効果の増強についても調べた。
(1)試料の調製
月見草種子抽出物(ニュージーランドファーマシューティカル社製)は、精製水に1ml当り25mgの濃度に添加して懸濁した。ウシラクトフェリン(森永乳業社製)は、精製水に1ml当り250mgの濃度に添加して溶解した。供試ウイルスとして、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)株を用いた。
【0053】
(2)試験方法
7週齢のBALB/C雌性マウス(日本エス・エル・シー社から購入)合計24匹を、糞食防止ネットを設置したケージに入れ、標準固形飼料(日本クレア社製)と飲水で一週間馴化飼育した。次に、マウスを6匹ずつ4群に分け、A群には精製水0.5mlをゾンデで経口投与した。B群には月見草種子抽出物懸濁液と精製水を等量ずつ混合した溶液0.5mlをゾンデで経口投与した。C群には、精製水とラクトフェリン水溶液を等量ずつ混合した溶液0.5mlをゾンデで経口投与した。D群には、月見草種子抽出物懸濁液とラクトフェリン水溶液を等量ずつ混合した溶液0.5mlをゾンデで経口投与した。これらの経口投与は、感染1日前から開始し、感染6日後まで一日一回ずつ8日間行なった。感染日には、すべてのマウスにネンブタール麻酔下でインフルエンザウイルス100PFUを含むリン酸緩衝液10μlを経鼻的に接種した。感染7日後にマウスを解剖し、気道に21ゲージの注射針を差し込み、1mlのリン酸緩衝生理食塩水を注射器で注入した後、同じ注射器内に液を回収した。同様の注入と回収を、さらに2回、合計3回繰り返した。このようにして採取した気管支肺胞洗浄液を1000回転で遠心分離した上清中のウイルス量を、MDCK細胞を用いて試験例1に記載の方法と類似の方法でプラーク形成数として測定し、対数値(log10 PFU/ml)で表示した。さらに、気管支肺胞洗浄液を回収した後のマウスから肺を摘出し、インフルエンザウイルス感染症による炎症の指標であるコンソリデーションを観察した。肺コンソリデーションの重症度は、ギンズバーグらの方法〔ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(Journal of Experimental Medicine)、第95巻、第135〜145ページ、1952年〕に従い、0(コンソリデーションなし)から10(重篤なコンソリデーション)にスコア化した。気管支肺胞洗浄液中のウイルス量及び肺コンソリデーションスコアは、一群6匹の測定値を平均化した。
【0054】
(3)試験結果
本試験の結果は表6に示すとおりである。気管支肺胞洗浄液中のウイルス量(体数値)は、非投与群であるA群では6.2であるのに対し、月見草種子抽出物を単独投与したB群では4.5に低下し、ラクトフェリン単独投与群であるC群では5.5に低下した。一方、月見草種子抽出物とラクトフェリンを組み合わせて併用投与したD群では、気管支肺胞洗浄液中のウイルス量が3.2へと顕著に低下した。肺コンソリデーションスコアは、非投与群であるA群では9.5であるのに対し、月見草種子抽出物を単独投与したB群では4.7に低下し、ラクトフェリン単独投与群であるC群では8.3に低下した。一方、月見草種子抽出物とラクトフェリンを組み合わせて併用投与したD群では、肺のコンソリデーションスコアは0.3に顕著に低下した。
これらの結果から、月見草種子抽出物は、インフルエンザウイルス感染宿主において、ウイルス量抑制効果及びウイルス感染症治療効果を示すことが明らかになった。また、ラクトフェリンにも、若干弱いものの同様の効果が認められた。一方、月見草種子抽出物とラクトフェリンを組み合わせて投与した場合のウイルス量抑制効果及びウイルス感染症治療効果は、月見草種子抽出物又はラクトフェリンを単独で投与した場合に比べて相乗的に増強されることが確認された。
【0055】
【表6】
Figure 2004083487
【0056】
〔製造例1〕
乳脂肪含量3.5%、無脂乳固形分含量9.2%の生乳10kgを均質化し、90〜92℃で10分間加熱殺菌した。約42℃に冷却し、スターターとして市販のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバシラス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)の牛乳カルチャーをそれぞれ100gずつ添加した。発酵タンク内で充分に攪拌し、42〜45℃で4時間静置して発酵させた。この発酵乳を攪拌しながら5〜8℃に冷却し、次いでホモゲナイザーで均質化することによって均質化発酵乳を調製した。次に、17%のグラニュウ糖(東洋精糖社製)液5kgにペクチン(三栄源FFI社製)60g及び月見草種子抽出物(ニュージーランドファーマシューティカル社製)30gを添加して、90〜92℃で10分間殺菌した後、5〜8℃に冷却して糖液を調製した。これらの方法で調製した均質化発酵乳、糖液のそれぞれ全量をタンク内で十分に混合し、紙容器に120mlづつ充填した後、密封してドリンクヨーグルトを製造した。
【0057】
〔製造例2〕
ホエー蛋白酵素分解物(森永乳業社製)10.8kg、デキストリン(昭和産業社製)36kg、及び少量の水溶性ビタミンとミネラルを水200kgに溶解し、水相をタンク内に調製した。これとは別に、大豆サラダ油(太陽油脂社製)3kg、パーム油(太陽油脂社製)8.5kg、サフラワー油(太陽油脂社製)2.5kg、レシチン(味の素社製)0.2kg、脂肪酸モノグリセリド(花王社製)0.2kg、及び少量の脂溶性ビタミンを混合溶解し、油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、更に、ホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約59kgを調製した。この中間製品粉末50kgに、蔗糖(ホクレン社製)6.8kg、アミノ酸混合粉末(味の素社製)167g、及び月見草種子抽出物(ニュージーランドファーマシューティカル社製)60gを添加し、均一に混合して、月見草種子抽出物を含有する抗ウイルス効果を有する経腸栄養食粉末約56kgを製造した。
【0058】
〔製造例3〕
月見草種子抽出物(ニュージーランドファーマシューティカル社製)150g、ラクチュロース粉末(森永乳業社製)100g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)635g、脱脂粉乳(森永乳業社製)85g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1g、ヨーグルト・フレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)5g、グリセリン脂肪酸エステル製剤(理研ビタミン社製)24gの各粉末を添加して均一に混合し、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、錠剤1錠当り0.5gとし、12錠/分の打錠速度、9.8KPaの圧力で前記混合粉末を連続的に打錠し、月見草種子抽出物含有タブレット1800錠(約900g)を製造した。
【0059】
〔製造例4〕
月見草種子抽出物(ニュージーランドファーマシューティカル社製)150g、ラクトフェリン(森永乳業社製)150g、ラクチュロース粉末(森永乳業社製)100g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)485g、脱脂粉乳(森永乳業社製)85g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1g、ヨーグルト・フレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)5g、グリセリン脂肪酸エステル製剤(理研ビタミン社製)24gの各粉末を添加して均一に混合し、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、錠剤1錠当り0.5gとし、12錠/分の打錠速度、9.8KPaの圧力で前記混合粉末を連続的に打錠し、月見草種子抽出物及びラクトフェリン含有タブレット1800錠(約900g)を製造した。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、新規な抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物が提供される。本発明の抗ウイルス組成物は、安全性に優れ、日常的に長期間にわたり服用・摂取が可能であって、ヒトを含む動物の感染症の原因となる病原性ウイルスに対して抗ウイルス作用を有する。また、本発明のウイルス感染症予防・治療用組成物は、安全性に優れ、日常的に長期間にわたり服用・摂取が可能であって、ヒトを含む動物のウイルス感染症に対して予防効果及び/又は治療効果を有する。本発明の抗ウイルス組成物及びウイルス感染症予防・治療用組成物が有効成分として月見草種子抽出物に加えてラクトフェリンを含有するとき、抗ウイルス作用及びウイルス感染症予防・治療効果は相乗的に増強される。

Claims (10)

  1. 月見草種子抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗ウイルス組成物。
  2. 前記月見草種子抽出物が、抽出溶媒として水、有機溶媒又はこれらの混合物を用いて得られた抽出物であることを特徴とする請求項1記載の抗ウイルス組成物。
  3. インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス又はポリオウイルスに対する抗ウイルス作用を有することを特徴とする請求項1又は2記載の抗ウイルス組成物。
  4. 医薬組成物、飲食品組成物又は飼料組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗ウイルス組成物。
  5. 有効成分としてさらにラクトフェリンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗ウイルス組成物。
  6. 月見草種子抽出物を有効成分として含有することを特徴とするウイルス感染症予防・治療用組成物。
  7. 前記月見草種子抽出物が、抽出溶媒として水、有機溶媒又はこれらの混合物を用いて得られた抽出物であることを特徴とする請求項6記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
  8. インフルエンザウイルス感染症、RSウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症又はポリオウイルス感染症に対する予防効果及び/又は治療効果を有することを特徴とする請求項6又は7記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
  9. 医薬組成物、飲食品組成物又は飼料組成物であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
  10. 有効成分としてさらにラクトフェリンを含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のウイルス感染症予防・治療用組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006298913A (ja) * 2005-03-25 2006-11-02 Lion Corp 歯周組織破壊の抑制・改善剤及びスクリーニング方法
JP2012526527A (ja) * 2009-05-12 2012-11-01 ネステク ソシエテ アノニム ラクトフェリン、並びに成人における脳の健康及び保護
JP2023516461A (ja) * 2020-03-09 2023-04-19 ソファル ソチエタ ペル アツィオニ 経口使用のための、抗ウイルス作用を有するラクトフェリン

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