JP2004083419A - 酵素を用いたパーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】毛髪の損傷を抑え、皮膚刺激が少ないパーマネントウエーブ処理方法として、タンパク質あるいはペプチドのジスルフィド結合を還元開裂する酵素を用いた、これまでにない新規のパーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤の提供を目的とする。
【解決手段】毛髪等の構成タンパク質であるケラチン中に含まれるシスチン結合等のジスルフィド結合(S−S)を切断(還元開裂)するのに酵素を用いた酵素学的還元活性を利用する点にある。
このように酵素を用いると、ほぼ、中性に近い領域にて毛髪のパーマネントウエーブ処理が可能であり、従来の強いアルカリ性領域における上記処理に比較して条件が温和であり、毛髪の損傷が少なく、アンモニア、硫化水素、メルカプタン等の不快臭の発生を抑えることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】毛髪等の構成タンパク質であるケラチン中に含まれるシスチン結合等のジスルフィド結合(S−S)を切断(還元開裂)するのに酵素を用いた酵素学的還元活性を利用する点にある。
このように酵素を用いると、ほぼ、中性に近い領域にて毛髪のパーマネントウエーブ処理が可能であり、従来の強いアルカリ性領域における上記処理に比較して条件が温和であり、毛髪の損傷が少なく、アンモニア、硫化水素、メルカプタン等の不快臭の発生を抑えることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素を用いた毛髪等の新規パーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤に関する。
温和な条件にてパーマネントウエーブ処理が可能なために毛髪を傷めることなく、不快臭や手荒れ等を抑えるのに効果的である。
【0002】
【従来の技術】
毛髪等にパーマネントウエーブ処理をする方法として、従来から一般的に2段階的に実施されている。
第1段階は、システイン、チオグリコール酸又はそれらの塩を用いた還元剤を主成分とする第1剤にて毛髪中のシスチンにおけるジスルフィド結合(S−S)を還元開裂させ、ロッド等に巻き付け(ロッド等に巻き付けた後に第1剤を塗布する場合も含む)、その状態にて、新たな位置でジスルフィド結合をさせるべく、臭素酸塩、過酸化水素水等の酸化剤を主成分とする第2剤が用いられている。
【0003】
上記の場合に第1剤には、還元剤を毛髪内に充分に浸透させるために毛髪が膨潤、軟化するようにpH8.5以上の比較的強いアルカリ性に調整されているものが殆どであった。
従って、このような強いアルカリ性処理剤を用いると、毛髪が傷みやすく、ウエーブ処理時にアンモニア、硫化水素、メルカプタン類等不快臭の発生や手荒れが生じやすかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術に有する技術的課題に鑑みて、毛髪の損傷を抑え、皮膚刺激が少ないパーマネントウエーブ処理方法として、タンパク質あるいはペプチドのジスルフィド結合を還元開裂する酵素を用いた、これまでにない新規のパーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の技術的要旨は、毛髪等の構成タンパク質であるケラチン中に含まれるシスチン結合等のジスルフィド結合(S−S)を切断(還元開裂)するのに酵素を用いた酵素学的還元活性を利用する点にある。
このように酵素を用いると、ほぼ、中性に近い領域にて毛髪のパーマネントウエーブ処理が可能であり、従来の強いアルカリ性領域における上記処理に比較して条件が温和であり、毛髪の損傷が少なく、アンモニア、硫化水素、メルカプタン等の不快臭の発生を抑えることができる。
【0006】
第2の技術的要旨は、上記のような毛髪のタンパク質中のジスルフィド結合を還元開裂するジスルフィドレダクターゼとして、本願出願人が先に発見、発明し、特許出願した新規微生物D1株(Bacterium D1)(特願2001−265181号)(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター、受託番号FERM P−18481)を培養することで産生されるジスルフィドレダクターゼD1を用いる点にある。
このジスルフィドレダクターゼD1は、以下のような酵素学的性質を有している。
(1)基質特異性:タンパク質あるいはペプチドに含まれるS−S結合に対して還元活性を有する。
(2)ケラチンを基質として、pH6.5〜8.0で反応を行った場合に、最大活性温度は30℃である。
(3)ケラチンを基質として、30℃、30分間反応を行った場合に、至適pH6.5〜8.0である。
(4)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による測定で分子量が15KDaである。
【0007】
以下、ジスルフィドレダクターゼD1についてさらに、詳述する。
図5に、SDS−PAGE及び等電点電気泳動により、分子量と等電点を測定した結果を示し、ジスルフィドレダクターゼD1の分子量は、約15Daであり、等電点(pI)7.2であった。
ジスルフィドレダクターゼD1のアミノ基末端側のアミノ酸配列を解析した結果、N末15残基が明らかになり、以下にその配列を示す。
−Pro−Val−Asp−Ile−Ala−Ala−Asp−Cys−Glu−Arg−Leu−His−Ala−Leu−Ser−NH2
なお、他のタンパク質との相同性を調査した結果、以下にアミノ酸配列を示すArabidopsis thaliana由来のチオレドキシン様タンパク質と約50%相同性が認められたものの、他の多くの生物種から得られたチオレドキシンとはほとんど相同性が認められなかった。
(Arabidopsis thaliana由来のチオレドキシン様タンパク質のN末アミノ酸配列)
−Met−Val−Asp−Ile−His−Ser−Thr−Glu−Glu−Phe−Leu−Ser−Ala−Leu−Ser−NH2
図6(A)に、ケラチン基質(ケラチンパウダー)を用いた温度変化に対するジスルフィドレダクターゼD1の相対活性を示し、図6(B)にその温度安定性を示す。
この結果、ジスルフィドレダクターゼD1の最大活性温度は、約30℃であり、40℃以上に対して不安定であることから、低温特性を有していることが明らかになった。
【0008】
図7に、ジスルフィドレダクターゼD1の至適pH及びそのpH安定性の調査結果を示す。
図7(A)は、後述するそれぞれの緩衝液を用いて各pHに調整後にケラチン基質の下で、30分間酵素反応させた相対活性度をグラフに表したものである。図7(B)は、それぞれの緩衝液中に30分間ジスルフィドレダクターゼD1を放置後に、30分間酵素反応させて活性度を調査したものである。
活性度はエルマン法を用いて遊離チオールをDTNB試薬に呈色反応させ、その吸光度(412nm)を測定した。
その結果、ジスルフィドレダクターゼの至適pHは、6.5〜8.0であり、pH6.0〜8.5の範囲にてpH安定性を示した。
なお、図7(B)に示す緩衝液の略号は、次のとおりである。
AA:acetic acid(酢酸)、
MES:2−(N−morpholino)ethanesulfonic acid(2−エヌ−モルフォリノ エタンスルフォン酸)、
MOPS:3−(N−morpholino)propanesulfonic acid(3−エヌ−モルフォリノ
プロパンスルフォン酸)、
TAPS:N−[Tris(hydroxymethyl)−methyl]−3−aminopropanesulfonic acid(エヌ−トリスヒドロキシメチルメチル−3−アミノプロパンスルフォン酸)、
CHES:2−(N−cyclohexylamino)ethanesulfonic acid(2−エヌ−シクロヘキシルアミノエタンスルフォン酸)、
CAPS:3−(cyclohexylamino)−1−propanesulfonic acid(3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルフォン酸)、
GLY:glycine(グリシン)
【0009】
ジスルフィドレダクターゼD1のS−S結合に対する還元特異性を各種の基質を用いて調査した結果を図8に示す。
この結果、ケラチンの様なタンパク質基質から、グルタチオンの様なペプチド基質まで広範囲に基質特異性を有していることが明らかになった。
【0010】
【発明の実施の形態】
例えば、図4に示すような、ケラチン含有培養液にて約20℃、10〜14日間、Bacterium D1(受託番号FERM P−18481)を大量培養し、この培養液から遠心分離機により菌体を除去し、その上清液を限外ロ過等により、10〜25倍に濃縮したBacterium D1産生酵素ジスルフィドレダクターゼD1含有濃縮粗液A(Crude enzyme液A)を得た。
また、上記限外ロ過によって得られた約10倍位程度の濃縮液をさらに陰イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィーにかけて、ケラチン分解酵素プロテアーゼD1と、ジスルフィド結合に対して還元活性を示す酵素ジスルフィドレダクターゼD1を分離し、ジスルフィドレダクターゼD1含有精製液B(Pure enzyme液B)を得た。
【0011】
以上のようにして得られた濃縮粗液A(Crude enzyme液A)、精製液B(Pure enzyme液B)、及び比較例として、蒸留水をそれぞれ用いて30℃、3時間、パーマネントウエーブ処理したウエーブ形成状態を図1(写真1)に示す。
パーマネントウエーブ効果は、キルビー法にて測定評価した。
長さ15〜20cmの毛髪を準備し、所定の洗浄、乾燥後に20本を一束とし、キルビーの器具に交互にジグザグにかけ、上記試験液を第1剤として上述したように、30℃、3時間浸漬放置後に流水で試験液を洗い出し、次に商品名アリスティアウエーブN(WN)ノーマルタイプ(製造元、資生ケミカル株式会社)の第2剤に約30℃、約15分間浸漬後に流水洗浄乾燥した。
形成されたウエーブの山5つ分の距離をbmmとし、このbをまっすぐに伸ばして測定した長さをcmmとする。
キルビーの器具の毛髪をジグザグに交互に巻いた棒の第1番目と第6番目の間の距離をammとする。
パーマネントウエーブ効果(%)=100−100×(b−a)/(c−a)
として求められる。
その結果、図1(ハ)に示す蒸留水によるものは全くウエーブを形成しなかったが、図1(イ)濃縮粗液A(Crude enzyme液A)、図1(ロ)精製液B(Pure enzyme液B)によりウエーブ処理したものは、約7%のパーマネントウエーブ効果を示した。
【0012】
上記に用いた酵素濃度が精製濃縮後においても、0.014mg/ml程度の非常に薄いものであったことから、商品名アリスティアウエーブN(WN)ノーマルタイプ(製造元、資生ケミカル株式会社)の第1剤との混合によるウエーブ処理試験を実施した結果を図2(グラフ2)に示す。
横軸がCrude enzyme液Bに対する上記市販ウエーブ処理第1剤の混合割合を示し、縦軸が、第1剤で約15分処理した後に第2剤で約15分処理したもののパーマネントウエーブ効果(%)を示す。
その結果、Crude enzyme液Bに対して同量の市販の第1剤を混合した約50%濃度において、最もジスルフィドレダクターゼD1の効果が認められた。
これは、Crude enzyme液Bだけでは酵素濃度が低く、毛髪をパーマネントウエーブ形成させるのが弱く、また、市販の第1剤の混合割合が高すぎると、酵素による効果が消されてしまうためと推定される。
次に、ジスルフィドレダクターゼD1の効果を明確にすべくCrude enzyme液Bを一度沸騰させた後に、前述市販第1剤50%混合したものを比較評価したのが図3(グラフ3)である。
図3(グラフ3)は、第1剤としての処理時間15分の場合のサンプル3回のパーマネントウエーブ効果(%)の平均値を示す。
これにより、酵素を一度沸騰処理し、酵素効果を消失させたものでも比較例とした、蒸留水に市販の第1剤50%混合したものより若干パーマネントウエーブ効果が高いものの、沸騰処理しないものより、パーマネントウエーブ効果が低くなっていることから、明らかに酵素によるパーマネントウエーブ効果が確認できた。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、ジスルフィド結合に対する還元活性を有する酵素を用いることにより、従来より温和な条件にて毛髪等のパーマネントウエーブ処理が可能となることが明らかになった。
また、これにより、毛髪の損傷を抑え、不快臭の発生を低減し、手荒れ等の取扱い上の問題を抑えたパーマネントウエーブ処理第1剤の提供が期待される。
さらには、タンパク質の改質や、羊毛等のタンパク質系繊維の調質においても本発明に係る酵素の適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酵素を用いた毛髪のパーマネントウエーブ処理の外観を示す。
【図2】(グラフ2) 濃縮粗液Aに対する市販第1剤混合効果を示す。
【図3】(グラフ3)酵素の煮沸処理の有無によるパーマネントウエーブ効果比較を示す。
【図4】新規細菌Bacterium D1の培養液例を示す。
【図5】ジスルフィドレダクターゼD1の分子量及び等電点の測定結果を示す。KDaの1が分子量マーカーを示し、2がジスルフィドレダクターゼD1の値を示す。
【図6】ジスルフィドレダクターゼD1の至適温度調査結果を示す。
【図7】ジスルフィドレダクターゼD1の至適pH調査結果を示す。
【図8】ジスルフィドレダクターゼD1の基質特異性を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素を用いた毛髪等の新規パーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤に関する。
温和な条件にてパーマネントウエーブ処理が可能なために毛髪を傷めることなく、不快臭や手荒れ等を抑えるのに効果的である。
【0002】
【従来の技術】
毛髪等にパーマネントウエーブ処理をする方法として、従来から一般的に2段階的に実施されている。
第1段階は、システイン、チオグリコール酸又はそれらの塩を用いた還元剤を主成分とする第1剤にて毛髪中のシスチンにおけるジスルフィド結合(S−S)を還元開裂させ、ロッド等に巻き付け(ロッド等に巻き付けた後に第1剤を塗布する場合も含む)、その状態にて、新たな位置でジスルフィド結合をさせるべく、臭素酸塩、過酸化水素水等の酸化剤を主成分とする第2剤が用いられている。
【0003】
上記の場合に第1剤には、還元剤を毛髪内に充分に浸透させるために毛髪が膨潤、軟化するようにpH8.5以上の比較的強いアルカリ性に調整されているものが殆どであった。
従って、このような強いアルカリ性処理剤を用いると、毛髪が傷みやすく、ウエーブ処理時にアンモニア、硫化水素、メルカプタン類等不快臭の発生や手荒れが生じやすかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術に有する技術的課題に鑑みて、毛髪の損傷を抑え、皮膚刺激が少ないパーマネントウエーブ処理方法として、タンパク質あるいはペプチドのジスルフィド結合を還元開裂する酵素を用いた、これまでにない新規のパーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の技術的要旨は、毛髪等の構成タンパク質であるケラチン中に含まれるシスチン結合等のジスルフィド結合(S−S)を切断(還元開裂)するのに酵素を用いた酵素学的還元活性を利用する点にある。
このように酵素を用いると、ほぼ、中性に近い領域にて毛髪のパーマネントウエーブ処理が可能であり、従来の強いアルカリ性領域における上記処理に比較して条件が温和であり、毛髪の損傷が少なく、アンモニア、硫化水素、メルカプタン等の不快臭の発生を抑えることができる。
【0006】
第2の技術的要旨は、上記のような毛髪のタンパク質中のジスルフィド結合を還元開裂するジスルフィドレダクターゼとして、本願出願人が先に発見、発明し、特許出願した新規微生物D1株(Bacterium D1)(特願2001−265181号)(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター、受託番号FERM P−18481)を培養することで産生されるジスルフィドレダクターゼD1を用いる点にある。
このジスルフィドレダクターゼD1は、以下のような酵素学的性質を有している。
(1)基質特異性:タンパク質あるいはペプチドに含まれるS−S結合に対して還元活性を有する。
(2)ケラチンを基質として、pH6.5〜8.0で反応を行った場合に、最大活性温度は30℃である。
(3)ケラチンを基質として、30℃、30分間反応を行った場合に、至適pH6.5〜8.0である。
(4)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による測定で分子量が15KDaである。
【0007】
以下、ジスルフィドレダクターゼD1についてさらに、詳述する。
図5に、SDS−PAGE及び等電点電気泳動により、分子量と等電点を測定した結果を示し、ジスルフィドレダクターゼD1の分子量は、約15Daであり、等電点(pI)7.2であった。
ジスルフィドレダクターゼD1のアミノ基末端側のアミノ酸配列を解析した結果、N末15残基が明らかになり、以下にその配列を示す。
−Pro−Val−Asp−Ile−Ala−Ala−Asp−Cys−Glu−Arg−Leu−His−Ala−Leu−Ser−NH2
なお、他のタンパク質との相同性を調査した結果、以下にアミノ酸配列を示すArabidopsis thaliana由来のチオレドキシン様タンパク質と約50%相同性が認められたものの、他の多くの生物種から得られたチオレドキシンとはほとんど相同性が認められなかった。
(Arabidopsis thaliana由来のチオレドキシン様タンパク質のN末アミノ酸配列)
−Met−Val−Asp−Ile−His−Ser−Thr−Glu−Glu−Phe−Leu−Ser−Ala−Leu−Ser−NH2
図6(A)に、ケラチン基質(ケラチンパウダー)を用いた温度変化に対するジスルフィドレダクターゼD1の相対活性を示し、図6(B)にその温度安定性を示す。
この結果、ジスルフィドレダクターゼD1の最大活性温度は、約30℃であり、40℃以上に対して不安定であることから、低温特性を有していることが明らかになった。
【0008】
図7に、ジスルフィドレダクターゼD1の至適pH及びそのpH安定性の調査結果を示す。
図7(A)は、後述するそれぞれの緩衝液を用いて各pHに調整後にケラチン基質の下で、30分間酵素反応させた相対活性度をグラフに表したものである。図7(B)は、それぞれの緩衝液中に30分間ジスルフィドレダクターゼD1を放置後に、30分間酵素反応させて活性度を調査したものである。
活性度はエルマン法を用いて遊離チオールをDTNB試薬に呈色反応させ、その吸光度(412nm)を測定した。
その結果、ジスルフィドレダクターゼの至適pHは、6.5〜8.0であり、pH6.0〜8.5の範囲にてpH安定性を示した。
なお、図7(B)に示す緩衝液の略号は、次のとおりである。
AA:acetic acid(酢酸)、
MES:2−(N−morpholino)ethanesulfonic acid(2−エヌ−モルフォリノ エタンスルフォン酸)、
MOPS:3−(N−morpholino)propanesulfonic acid(3−エヌ−モルフォリノ
プロパンスルフォン酸)、
TAPS:N−[Tris(hydroxymethyl)−methyl]−3−aminopropanesulfonic acid(エヌ−トリスヒドロキシメチルメチル−3−アミノプロパンスルフォン酸)、
CHES:2−(N−cyclohexylamino)ethanesulfonic acid(2−エヌ−シクロヘキシルアミノエタンスルフォン酸)、
CAPS:3−(cyclohexylamino)−1−propanesulfonic acid(3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルフォン酸)、
GLY:glycine(グリシン)
【0009】
ジスルフィドレダクターゼD1のS−S結合に対する還元特異性を各種の基質を用いて調査した結果を図8に示す。
この結果、ケラチンの様なタンパク質基質から、グルタチオンの様なペプチド基質まで広範囲に基質特異性を有していることが明らかになった。
【0010】
【発明の実施の形態】
例えば、図4に示すような、ケラチン含有培養液にて約20℃、10〜14日間、Bacterium D1(受託番号FERM P−18481)を大量培養し、この培養液から遠心分離機により菌体を除去し、その上清液を限外ロ過等により、10〜25倍に濃縮したBacterium D1産生酵素ジスルフィドレダクターゼD1含有濃縮粗液A(Crude enzyme液A)を得た。
また、上記限外ロ過によって得られた約10倍位程度の濃縮液をさらに陰イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィーにかけて、ケラチン分解酵素プロテアーゼD1と、ジスルフィド結合に対して還元活性を示す酵素ジスルフィドレダクターゼD1を分離し、ジスルフィドレダクターゼD1含有精製液B(Pure enzyme液B)を得た。
【0011】
以上のようにして得られた濃縮粗液A(Crude enzyme液A)、精製液B(Pure enzyme液B)、及び比較例として、蒸留水をそれぞれ用いて30℃、3時間、パーマネントウエーブ処理したウエーブ形成状態を図1(写真1)に示す。
パーマネントウエーブ効果は、キルビー法にて測定評価した。
長さ15〜20cmの毛髪を準備し、所定の洗浄、乾燥後に20本を一束とし、キルビーの器具に交互にジグザグにかけ、上記試験液を第1剤として上述したように、30℃、3時間浸漬放置後に流水で試験液を洗い出し、次に商品名アリスティアウエーブN(WN)ノーマルタイプ(製造元、資生ケミカル株式会社)の第2剤に約30℃、約15分間浸漬後に流水洗浄乾燥した。
形成されたウエーブの山5つ分の距離をbmmとし、このbをまっすぐに伸ばして測定した長さをcmmとする。
キルビーの器具の毛髪をジグザグに交互に巻いた棒の第1番目と第6番目の間の距離をammとする。
パーマネントウエーブ効果(%)=100−100×(b−a)/(c−a)
として求められる。
その結果、図1(ハ)に示す蒸留水によるものは全くウエーブを形成しなかったが、図1(イ)濃縮粗液A(Crude enzyme液A)、図1(ロ)精製液B(Pure enzyme液B)によりウエーブ処理したものは、約7%のパーマネントウエーブ効果を示した。
【0012】
上記に用いた酵素濃度が精製濃縮後においても、0.014mg/ml程度の非常に薄いものであったことから、商品名アリスティアウエーブN(WN)ノーマルタイプ(製造元、資生ケミカル株式会社)の第1剤との混合によるウエーブ処理試験を実施した結果を図2(グラフ2)に示す。
横軸がCrude enzyme液Bに対する上記市販ウエーブ処理第1剤の混合割合を示し、縦軸が、第1剤で約15分処理した後に第2剤で約15分処理したもののパーマネントウエーブ効果(%)を示す。
その結果、Crude enzyme液Bに対して同量の市販の第1剤を混合した約50%濃度において、最もジスルフィドレダクターゼD1の効果が認められた。
これは、Crude enzyme液Bだけでは酵素濃度が低く、毛髪をパーマネントウエーブ形成させるのが弱く、また、市販の第1剤の混合割合が高すぎると、酵素による効果が消されてしまうためと推定される。
次に、ジスルフィドレダクターゼD1の効果を明確にすべくCrude enzyme液Bを一度沸騰させた後に、前述市販第1剤50%混合したものを比較評価したのが図3(グラフ3)である。
図3(グラフ3)は、第1剤としての処理時間15分の場合のサンプル3回のパーマネントウエーブ効果(%)の平均値を示す。
これにより、酵素を一度沸騰処理し、酵素効果を消失させたものでも比較例とした、蒸留水に市販の第1剤50%混合したものより若干パーマネントウエーブ効果が高いものの、沸騰処理しないものより、パーマネントウエーブ効果が低くなっていることから、明らかに酵素によるパーマネントウエーブ効果が確認できた。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、ジスルフィド結合に対する還元活性を有する酵素を用いることにより、従来より温和な条件にて毛髪等のパーマネントウエーブ処理が可能となることが明らかになった。
また、これにより、毛髪の損傷を抑え、不快臭の発生を低減し、手荒れ等の取扱い上の問題を抑えたパーマネントウエーブ処理第1剤の提供が期待される。
さらには、タンパク質の改質や、羊毛等のタンパク質系繊維の調質においても本発明に係る酵素の適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酵素を用いた毛髪のパーマネントウエーブ処理の外観を示す。
【図2】(グラフ2) 濃縮粗液Aに対する市販第1剤混合効果を示す。
【図3】(グラフ3)酵素の煮沸処理の有無によるパーマネントウエーブ効果比較を示す。
【図4】新規細菌Bacterium D1の培養液例を示す。
【図5】ジスルフィドレダクターゼD1の分子量及び等電点の測定結果を示す。KDaの1が分子量マーカーを示し、2がジスルフィドレダクターゼD1の値を示す。
【図6】ジスルフィドレダクターゼD1の至適温度調査結果を示す。
【図7】ジスルフィドレダクターゼD1の至適pH調査結果を示す。
【図8】ジスルフィドレダクターゼD1の基質特異性を示す。
Claims (3)
- ジスルフィド結合を切断する酵素を用いたことを特徴とするパーマネントウエーブ処理方法。
- 請求項1記載のパーマネントウエーブ処理方法に用いるジスルフィド結合を切断する酵素が、以下の酵素学的性質を有するジスルフィドレダクターゼD1であることを特徴とするパーマネントウエーブ処理剤。
(1)基質特異性:タンパク質あるいはペプチドに含まれるS−S結合に対して還元活性を有する。
(2)ケラチンを基質として、pH6.5〜8.0で反応を行った場合に、最大活性温度は30℃である。
(3)ケラチンを基質として、30℃、30分間反応を行った場合に、至適pH6.5〜8.0である。
(4)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による測定で分子量が15KDaである。 - 請求項2記載のジスルフィドレダクターゼD1が、新規微生物D1株(Bacterium D1)(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター、受託番号FERM P−18481)により産生されたものであるパーマネントウエーブ処理剤。
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JP2002242561A JP2004083419A (ja) | 2002-08-22 | 2002-08-22 | 酵素を用いたパーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002242561A JP2004083419A (ja) | 2002-08-22 | 2002-08-22 | 酵素を用いたパーマネントウエーブ処理方法及びその処理剤 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016175577A1 (ko) * | 2015-04-30 | 2016-11-03 | 조선대학교 산학협력단 | 효소를 함유한 펌 산화제 조성물 |
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2002
- 2002-08-22 JP JP2002242561A patent/JP2004083419A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2016175577A1 (ko) * | 2015-04-30 | 2016-11-03 | 조선대학교 산학협력단 | 효소를 함유한 펌 산화제 조성물 |
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