JP2004083377A - 内部マーキングされた石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents
内部マーキングされた石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及びその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】高エネルギー線を石英ガラス内部に集光させることにより形成され、励起エネルギーの照射で蛍光を発するマーキングを前記石英ガラス内部に有することを特徴とする内部マーキングされた石英ガラス。
【効果】本発明によれば、石英ガラス基板にマーキングしてもマーキング部の目視透過率をそのままに、しかもマーキング近傍の光学的特性を損なうことなくマーキングを達成できるものである。
【選択図】 なし
【効果】本発明によれば、石英ガラス基板にマーキングしてもマーキング部の目視透過率をそのままに、しかもマーキング近傍の光学的特性を損なうことなくマーキングを達成できるものである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部材用石英ガラス基板の光学的精度を損なうことなく、内部にマーキングを形成した石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
電子工業において、石英ガラス乃至石英ガラス基板は、例えばリソグラフィーの描写パターンの基板であるマスク基板や、投影プロジェクターの投影セルのTFTパネル用基板等に用いられている。この用途を満足するために、石英ガラス乃至石英ガラス基板は、光透過性が優れていることや耐熱性が高いこと等の特徴を生かしつつ、表面を研磨して、ゴミ等の付着していない高精度の研磨面を持ったものとして用いられる。しかし、電子工業に使用される石英ガラス基板の使用枚数は多いため、個々の基板の管理が煩雑となることや、石英ガラスの種類も多いことから、一見しただけでは石英ガラス基板の種類が不明になることが多々あった。このため、各々の石英ガラス基板を識別するために石英ガラス基板に物理的な変化を付け、マーキングする技術が提案されてきた。
【0003】
石英ガラスにマーキングを施す方法としては、いわゆるレーザーアブレーションと呼ばれるレーザー光を石英ガラス表面に照射してガラス表面を溶融、蒸発等の作用で刻印する方法が提案されている。しかし、この方法で刻印したものは、必然的に石英ガラス表面にマーキングの窪みが発生するばかりでなく、マーキング部には微細なクラックが生成する。この窪みには汚れが堆積し易く、この堆積した汚れ、更にはクラックの剥離によって発生するガラスパーティクルが石英の表面に付着して、基板表面の清浄度が要求される上記用途に適さないものとなってしまうことがあった。
【0004】
このため石英ガラスの内部にマーキングする方法が提案された。例えば、特開平3−124486号公報では、マーキング時の照射レーザーエネルギーとして、石英ガラス表面の破壊閾値の5〜20倍の照射エネルギー密度でマーキングができることが、また、特開平4−71792号公報では、石英ガラス基板のマーク形成領域に白い符号として識別されるマーキングがされることが、特開平11−156568号公報では、fθレンズでマーキング時の焦点移動を防止することがそれぞれ開示されている。更に、特開平11−267861号公報では、フェムト秒レーザーの採用等で光透過性材料中に光学的変化を起こさせる方法が開示されている。
【0005】
これらの方法は、レーザー光を石英ガラス内部に集光させることで石英ガラス内部にのみ変化を誘発させることができるため、石英ガラスの表面に材料損傷を与えることがなく、清浄度が要求される電子工業用石英基板には好適である。しかし、これらの先行技術はいずれもガラスあるいは透明材料にクラックの形成や屈折率変化等の物理的変化でマーキングするもので、目視での確認が可能なマーキングである。このためマーキングした石英基板は、容易にそのマーキングの有無が確認できるものの、その部分は不透明で光が透過しなかったり、異常な透過状態であったりすることや、さらには石英ガラスにクラックや屈折率変化等の物理的な変化をマーキングとすることでガラス内に残留内部応力が発生し易くなり、マーキング近傍では複屈折が発生する傾向にあること等の問題点があり、マーキングによってガラスの使用法、用途を限定させていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、目視上ではマーキング部が全く観察されず、マーキング近傍での複屈折の発生もない石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及び内部マーキングされた石英ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、高エネルギー線を石英ガラス内部に集光させることで石英ガラスに構造欠陥を発生させ、この構造欠陥が紫外線の照射等で励起することで発光する蛍光をマーキングすることにより、マーキング部の目視透過率をそのままに、しかもマーキング近傍の光学的特性を損なうことなくマーキングを達成できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
すなわち、石英ガラスの構造欠陥には、E′センター(≡Si・)、非架橋酸素(≡SiO・)等の構造欠陥が報告されている。これらの構造欠陥種やその生成には、石英ガラスの製造方法や製造熱履歴が大きく関与しているので、どのような条件でどの様な欠陥が発生し、その欠陥に起因する蛍光が発生するかは一概には断定できない。
【0009】
しかし、本発明によれば、石英ガラス本来の蛍光や、どのような構造欠陥から蛍光が発光するかを問わず、高エネルギー線を照射することで発生する構造欠陥(蛍光源)と蛍光光によってマーキングが可能となるものである。
【0010】
従って、本発明は以下の石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及び石英ガラスの製造方法を提供する。
(1) 高エネルギー線を石英ガラス内部に集光させることにより形成され、励起エネルギーの照射で蛍光を発するマーキングを前記石英ガラス内部に有することを特徴とする内部マーキングされた石英ガラス。
(2) 前記石英ガラスが、合成石英ガラスであることを特徴とする(1)記載の内部マーキングされた石英ガラス。
(3) 前記石英ガラスが、リソグラフィー用石英ガラス基板の材料であることを特徴とする(1)又は(2)記載の内部マーキングされた石英ガラス。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の石英ガラスから製造されたことを特徴とする光学部材用石英ガラス基板。
(5) 高エネルギー線を石英ガラスの内部に集光させて、励起エネルギーを照射した際に蛍光を発するマーキングを上記石英ガラス内部に形成することを特徴とする内部マーキングされた石英ガラスの製造方法。
【0011】
以下、更に本発明を詳しく説明する。
本発明の石英ガラスは、高エネルギー線を石英ガラスの内部に集光させることによりガラス内部にマーキングし、そのマーキングに励起エネルギーを照射することで発光した蛍光によってマーキングを確認するようにした内部マーキングされた石英ガラスである。
【0012】
高エネルギー線とは、高速、高密度の素粒子あるいは電磁波が同一方向に放射されるものをいう。このような高エネルギー線としては、レーザー光、ガンマー線、エックス線、電子ビーム、イオンビーム等の発生源が挙げられ、そのどれもが石英ガラスに構造欠陥を発生させることができるが、取り扱いの容易さ、集光のし易さ等からレーザー光を線源として使用することが好ましい。更に、レーザー光でも短波長の高いエネルギーを発生することが容易なKrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー等のエキシマレーザー光を線源として使用することや、固体レーザーの高調波としての短波長光等が好ましい。
【0013】
エキシマレーザー光等の高エネルギー線は、通常エネルギー線を集光してガラス基板に照射する。この集光はレンズや反射鏡等の反射光学的集光方法やピンホール、スリット等の貫通穴を通過する集光等があるが、使用する高エネルギー光の種類に応じて集光方法を選択することができる。
【0014】
マーキングされる石英ガラスは、その分子構造が、≡Si−O−Si≡で構成される三次元網目構造として代表され、石英中の代表的な網目結合の端末基である水酸基は、≡Si−O−Hで表されるが、石英ガラスに照射された高エネルギー線は、これらの構造の結合を切断して常磁性欠陥を発生させる。
【0015】
例えば、酸素と水素を燃焼させて発生する高温の酸水素炎中に珪素化合物を導入し、珪素化合物を二酸化珪素とし、同時に酸水素火炎が発生する高温においてそのまま溶融堆積することで、合成石英を製造するいわゆる直接法で製造した合成石英にF2エキシマレーザーを照射すると、石英ガラス構造の≡Si−O−Si≡構造の一部が切断されて、≡Si・と≡SiO・となる構造欠陥に転化する。この欠陥は、215nmと163nmに光吸収を持つ欠陥であるが、この吸収波長域どちらかと同じ波長の光、例えば高圧水銀ランプをこの石英に照射すると、吸収された光のエネルギーの一部は蛍光となって可視光として発光する。その発光色は、鮮やかな赤色であり、暗室でなくても簡単な遮光をした場所であれば容易に確認することができる。
【0016】
蛍光光によるマーキングは、それが規格化された一次元又は二次元のマーキングでもよく、独自の規格によるものでも図形あるいは造形的なマーキングでもどのような形状でもよく、マーキングする内容に応じて任意のマーキングをすればよい。
【0017】
レーザーに代表される高エネルギー線のエネルギー密度は、これが高エネルギー密度であると、石英ガラスの急激な物理的変化で内部クラックや屈折率変化を発生させることや、マーキング近傍に複屈折を発生させてしまう原因にもなる。従って、高エネルギー線のエネルギー密度や総照射量は、目視上ではマーキング部が観察されずに蛍光で確認でき、かつマーキング近傍での複屈折の発生がない範囲となるようにその都度決定することが重要である。
【0018】
石英ガラスには、水晶を溶融して製造するいわゆる天然石英ガラスと、珪素化合物から化学反応を経由して製造する合成石英ガラスとがある。石英ガラスは合成石英ガラスが好ましい。これは、天然石英ガラスでは、原料である水晶がそのまま石英ガラス中に粒状構造と呼ばれる光学的不均一組織となっており、原料の水晶粒により石英ガラス中の位置による物性が変動することがあることから、マーキングの蛍光光の発光状態も変動する可能性があるためである。
【0019】
本発明の石英ガラスは、リソグラフィー用、特に光学部材用石英ガラス基板の材料として好適に用いられる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0021】
[実施例1]
酸素と水素の燃焼による酸水素火炎中に四塩化珪素ガスを導入し、高温火炎中で酸化・加水分解して微細な二酸化珪素滴を生成し、そのまま石英ガラス表面に溶融堆積するいわゆる直接法によって合成石英ガラスを製造し、これを鏡面研磨した。この合成石英ガラスについて、偏光を利用した歪み計で観察したところ、複屈折は観察されなかった。
次に、F2エキシマレーザー光を500μmφの径に集光し、エキシマレーザーのエネルギーを1mJ/cm2/pulseとし、1個所の照射部分に対し100パルスを照射して照射部分を移動させながらこのガラスに照射を継続した。照射後の石英ガラスの目視観察では、照射部にはクラックや屈折率変動等の物理的変化は観察されなかった。
この石英ガラスに高圧水銀ランプを照射し、暗室で観察したところ、照射部には赤い蛍光が観察され、蛍光発光部は意図したマーキング図通りに確認された。偏光を利用した歪み計での測定では、マーキング部近傍には複屈折は発生していなかった。
【0022】
[実施例2]
ArFエキシマレーザー光を500μmφの径に集光し、エキシマレーザーのエネルギーを100mJ/cm2/pulseとし、1個所の照射部分に対し1000パルスを照射し、照射部分を移動させながら実施例1の研磨した合成石英ガラスに照射を継続した。照射後の石英ガラスの目視観察では照射部にはクラックや屈折率変動等の物理的変化は観察されなかった。
この石英ガラスに高圧水銀ランプを照射し、暗室で観察したところ、照射部には赤い蛍光が観察され、蛍光発光部は意図したマーキング図通りに確認された。偏光を利用した歪み計での測定では、マーキング部近傍には複屈折は発生していなかった。
【0023】
[比較例1]
NdをドープしたYAGレーザーの第三高調波(波長355nm)を焦点距離80mmで凸レンズ集光し、実施例1の研磨した石英ガラス内部に焦点を結ぶようにレーザー、レンズ、基板をセッティングした。1W/shotのエネルギーのレーザーを5ショット照射し、石英ガラス内部に白いドット状のマーキングを描写した。このマーキングドットを200倍で光学顕微鏡観察したところ、ドットの形状はほぼ200μmφの円形で、ドットから微細なクラックが放射状に、長さ100μm程度の長さで存在していた。
偏光を利用した歪み計での測定ではマーキング部近傍にはドット部分から2mm離れた場所にも複屈折が存在した。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、石英ガラス基板にマーキングしてもマーキング部の目視透過率をそのままに、しかもマーキング近傍の光学的特性を損なうことなくマーキングを達成できるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部材用石英ガラス基板の光学的精度を損なうことなく、内部にマーキングを形成した石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
電子工業において、石英ガラス乃至石英ガラス基板は、例えばリソグラフィーの描写パターンの基板であるマスク基板や、投影プロジェクターの投影セルのTFTパネル用基板等に用いられている。この用途を満足するために、石英ガラス乃至石英ガラス基板は、光透過性が優れていることや耐熱性が高いこと等の特徴を生かしつつ、表面を研磨して、ゴミ等の付着していない高精度の研磨面を持ったものとして用いられる。しかし、電子工業に使用される石英ガラス基板の使用枚数は多いため、個々の基板の管理が煩雑となることや、石英ガラスの種類も多いことから、一見しただけでは石英ガラス基板の種類が不明になることが多々あった。このため、各々の石英ガラス基板を識別するために石英ガラス基板に物理的な変化を付け、マーキングする技術が提案されてきた。
【0003】
石英ガラスにマーキングを施す方法としては、いわゆるレーザーアブレーションと呼ばれるレーザー光を石英ガラス表面に照射してガラス表面を溶融、蒸発等の作用で刻印する方法が提案されている。しかし、この方法で刻印したものは、必然的に石英ガラス表面にマーキングの窪みが発生するばかりでなく、マーキング部には微細なクラックが生成する。この窪みには汚れが堆積し易く、この堆積した汚れ、更にはクラックの剥離によって発生するガラスパーティクルが石英の表面に付着して、基板表面の清浄度が要求される上記用途に適さないものとなってしまうことがあった。
【0004】
このため石英ガラスの内部にマーキングする方法が提案された。例えば、特開平3−124486号公報では、マーキング時の照射レーザーエネルギーとして、石英ガラス表面の破壊閾値の5〜20倍の照射エネルギー密度でマーキングができることが、また、特開平4−71792号公報では、石英ガラス基板のマーク形成領域に白い符号として識別されるマーキングがされることが、特開平11−156568号公報では、fθレンズでマーキング時の焦点移動を防止することがそれぞれ開示されている。更に、特開平11−267861号公報では、フェムト秒レーザーの採用等で光透過性材料中に光学的変化を起こさせる方法が開示されている。
【0005】
これらの方法は、レーザー光を石英ガラス内部に集光させることで石英ガラス内部にのみ変化を誘発させることができるため、石英ガラスの表面に材料損傷を与えることがなく、清浄度が要求される電子工業用石英基板には好適である。しかし、これらの先行技術はいずれもガラスあるいは透明材料にクラックの形成や屈折率変化等の物理的変化でマーキングするもので、目視での確認が可能なマーキングである。このためマーキングした石英基板は、容易にそのマーキングの有無が確認できるものの、その部分は不透明で光が透過しなかったり、異常な透過状態であったりすることや、さらには石英ガラスにクラックや屈折率変化等の物理的な変化をマーキングとすることでガラス内に残留内部応力が発生し易くなり、マーキング近傍では複屈折が発生する傾向にあること等の問題点があり、マーキングによってガラスの使用法、用途を限定させていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、目視上ではマーキング部が全く観察されず、マーキング近傍での複屈折の発生もない石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及び内部マーキングされた石英ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、高エネルギー線を石英ガラス内部に集光させることで石英ガラスに構造欠陥を発生させ、この構造欠陥が紫外線の照射等で励起することで発光する蛍光をマーキングすることにより、マーキング部の目視透過率をそのままに、しかもマーキング近傍の光学的特性を損なうことなくマーキングを達成できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
すなわち、石英ガラスの構造欠陥には、E′センター(≡Si・)、非架橋酸素(≡SiO・)等の構造欠陥が報告されている。これらの構造欠陥種やその生成には、石英ガラスの製造方法や製造熱履歴が大きく関与しているので、どのような条件でどの様な欠陥が発生し、その欠陥に起因する蛍光が発生するかは一概には断定できない。
【0009】
しかし、本発明によれば、石英ガラス本来の蛍光や、どのような構造欠陥から蛍光が発光するかを問わず、高エネルギー線を照射することで発生する構造欠陥(蛍光源)と蛍光光によってマーキングが可能となるものである。
【0010】
従って、本発明は以下の石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及び石英ガラスの製造方法を提供する。
(1) 高エネルギー線を石英ガラス内部に集光させることにより形成され、励起エネルギーの照射で蛍光を発するマーキングを前記石英ガラス内部に有することを特徴とする内部マーキングされた石英ガラス。
(2) 前記石英ガラスが、合成石英ガラスであることを特徴とする(1)記載の内部マーキングされた石英ガラス。
(3) 前記石英ガラスが、リソグラフィー用石英ガラス基板の材料であることを特徴とする(1)又は(2)記載の内部マーキングされた石英ガラス。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の石英ガラスから製造されたことを特徴とする光学部材用石英ガラス基板。
(5) 高エネルギー線を石英ガラスの内部に集光させて、励起エネルギーを照射した際に蛍光を発するマーキングを上記石英ガラス内部に形成することを特徴とする内部マーキングされた石英ガラスの製造方法。
【0011】
以下、更に本発明を詳しく説明する。
本発明の石英ガラスは、高エネルギー線を石英ガラスの内部に集光させることによりガラス内部にマーキングし、そのマーキングに励起エネルギーを照射することで発光した蛍光によってマーキングを確認するようにした内部マーキングされた石英ガラスである。
【0012】
高エネルギー線とは、高速、高密度の素粒子あるいは電磁波が同一方向に放射されるものをいう。このような高エネルギー線としては、レーザー光、ガンマー線、エックス線、電子ビーム、イオンビーム等の発生源が挙げられ、そのどれもが石英ガラスに構造欠陥を発生させることができるが、取り扱いの容易さ、集光のし易さ等からレーザー光を線源として使用することが好ましい。更に、レーザー光でも短波長の高いエネルギーを発生することが容易なKrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー等のエキシマレーザー光を線源として使用することや、固体レーザーの高調波としての短波長光等が好ましい。
【0013】
エキシマレーザー光等の高エネルギー線は、通常エネルギー線を集光してガラス基板に照射する。この集光はレンズや反射鏡等の反射光学的集光方法やピンホール、スリット等の貫通穴を通過する集光等があるが、使用する高エネルギー光の種類に応じて集光方法を選択することができる。
【0014】
マーキングされる石英ガラスは、その分子構造が、≡Si−O−Si≡で構成される三次元網目構造として代表され、石英中の代表的な網目結合の端末基である水酸基は、≡Si−O−Hで表されるが、石英ガラスに照射された高エネルギー線は、これらの構造の結合を切断して常磁性欠陥を発生させる。
【0015】
例えば、酸素と水素を燃焼させて発生する高温の酸水素炎中に珪素化合物を導入し、珪素化合物を二酸化珪素とし、同時に酸水素火炎が発生する高温においてそのまま溶融堆積することで、合成石英を製造するいわゆる直接法で製造した合成石英にF2エキシマレーザーを照射すると、石英ガラス構造の≡Si−O−Si≡構造の一部が切断されて、≡Si・と≡SiO・となる構造欠陥に転化する。この欠陥は、215nmと163nmに光吸収を持つ欠陥であるが、この吸収波長域どちらかと同じ波長の光、例えば高圧水銀ランプをこの石英に照射すると、吸収された光のエネルギーの一部は蛍光となって可視光として発光する。その発光色は、鮮やかな赤色であり、暗室でなくても簡単な遮光をした場所であれば容易に確認することができる。
【0016】
蛍光光によるマーキングは、それが規格化された一次元又は二次元のマーキングでもよく、独自の規格によるものでも図形あるいは造形的なマーキングでもどのような形状でもよく、マーキングする内容に応じて任意のマーキングをすればよい。
【0017】
レーザーに代表される高エネルギー線のエネルギー密度は、これが高エネルギー密度であると、石英ガラスの急激な物理的変化で内部クラックや屈折率変化を発生させることや、マーキング近傍に複屈折を発生させてしまう原因にもなる。従って、高エネルギー線のエネルギー密度や総照射量は、目視上ではマーキング部が観察されずに蛍光で確認でき、かつマーキング近傍での複屈折の発生がない範囲となるようにその都度決定することが重要である。
【0018】
石英ガラスには、水晶を溶融して製造するいわゆる天然石英ガラスと、珪素化合物から化学反応を経由して製造する合成石英ガラスとがある。石英ガラスは合成石英ガラスが好ましい。これは、天然石英ガラスでは、原料である水晶がそのまま石英ガラス中に粒状構造と呼ばれる光学的不均一組織となっており、原料の水晶粒により石英ガラス中の位置による物性が変動することがあることから、マーキングの蛍光光の発光状態も変動する可能性があるためである。
【0019】
本発明の石英ガラスは、リソグラフィー用、特に光学部材用石英ガラス基板の材料として好適に用いられる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0021】
[実施例1]
酸素と水素の燃焼による酸水素火炎中に四塩化珪素ガスを導入し、高温火炎中で酸化・加水分解して微細な二酸化珪素滴を生成し、そのまま石英ガラス表面に溶融堆積するいわゆる直接法によって合成石英ガラスを製造し、これを鏡面研磨した。この合成石英ガラスについて、偏光を利用した歪み計で観察したところ、複屈折は観察されなかった。
次に、F2エキシマレーザー光を500μmφの径に集光し、エキシマレーザーのエネルギーを1mJ/cm2/pulseとし、1個所の照射部分に対し100パルスを照射して照射部分を移動させながらこのガラスに照射を継続した。照射後の石英ガラスの目視観察では、照射部にはクラックや屈折率変動等の物理的変化は観察されなかった。
この石英ガラスに高圧水銀ランプを照射し、暗室で観察したところ、照射部には赤い蛍光が観察され、蛍光発光部は意図したマーキング図通りに確認された。偏光を利用した歪み計での測定では、マーキング部近傍には複屈折は発生していなかった。
【0022】
[実施例2]
ArFエキシマレーザー光を500μmφの径に集光し、エキシマレーザーのエネルギーを100mJ/cm2/pulseとし、1個所の照射部分に対し1000パルスを照射し、照射部分を移動させながら実施例1の研磨した合成石英ガラスに照射を継続した。照射後の石英ガラスの目視観察では照射部にはクラックや屈折率変動等の物理的変化は観察されなかった。
この石英ガラスに高圧水銀ランプを照射し、暗室で観察したところ、照射部には赤い蛍光が観察され、蛍光発光部は意図したマーキング図通りに確認された。偏光を利用した歪み計での測定では、マーキング部近傍には複屈折は発生していなかった。
【0023】
[比較例1]
NdをドープしたYAGレーザーの第三高調波(波長355nm)を焦点距離80mmで凸レンズ集光し、実施例1の研磨した石英ガラス内部に焦点を結ぶようにレーザー、レンズ、基板をセッティングした。1W/shotのエネルギーのレーザーを5ショット照射し、石英ガラス内部に白いドット状のマーキングを描写した。このマーキングドットを200倍で光学顕微鏡観察したところ、ドットの形状はほぼ200μmφの円形で、ドットから微細なクラックが放射状に、長さ100μm程度の長さで存在していた。
偏光を利用した歪み計での測定ではマーキング部近傍にはドット部分から2mm離れた場所にも複屈折が存在した。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、石英ガラス基板にマーキングしてもマーキング部の目視透過率をそのままに、しかもマーキング近傍の光学的特性を損なうことなくマーキングを達成できるものである。
Claims (5)
- 高エネルギー線を石英ガラス内部に集光させることにより形成され、励起エネルギーの照射で蛍光を発するマーキングを前記石英ガラス内部に有することを特徴とする内部マーキングされた石英ガラス。
- 前記石英ガラスが、合成石英ガラスであることを特徴とする請求項1記載の内部マーキングされた石英ガラス。
- 前記石英ガラスが、リソグラフィー用石英ガラス基板の材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の内部マーキングされた石英ガラス。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の石英ガラスから製造されたことを特徴とする光学部材用石英ガラス基板。
- 高エネルギー線を石英ガラスの内部に集光させて、励起エネルギーを照射した際に蛍光を発するマーキングを上記石英ガラス内部に形成することを特徴とする内部マーキングされた石英ガラスの製造方法。
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JP2002250095A JP2004083377A (ja) | 2002-08-29 | 2002-08-29 | 内部マーキングされた石英ガラス、光学部材用石英ガラス基板及びその製造方法 |
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JP2004083377A true JP2004083377A (ja) | 2004-03-18 |
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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