JP3944615B2 - レーザアシストによる加工装置 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はレーザアシストによる加工装置に関し、詳しくは、高性能の光学レンズを必要とする応用分野〔カメラ、計測装置、レーザプリンタ等〕や大口径の光学素子を必要とするプロジェクタ、大型レーザ装置及びリソグラフィー装置に必要とされるレンズ、ミラー等を高精度で製作するためのレーザアシストによる加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、精密加工用として使用されるレーザ加工装置などでは、微小なスポットにレーザを集光させるために高精度の光学レンズや反射ミラー等が必要である。一般に、この種の光学素子〔以下、光学レンズと称す〕は、光学ガラスで組成されるものと、光学プラスチックで組成されるものとに大別される。
【0003】
これらいずれか一方で組成される光学レンズでは、その光学面〔以下、レンズ面と称す〕の形状が、レーザ光の集光特性に大きく影響する。即ち、前記光学レンズに入射するレーザが平行波面を具備していたとしても、その光学レンズが波面収差を有している場合、レーザ光の集光スポット径が増大し、結果として集光強度が低下する。
【0004】
そのため、上述した光学レンズでは、ポイントに集光したレーザが最小のスポット径を持つようなレンズ面を形成する必要がある。そこで、本出願人は、短波長の紫外線レーザを加工対象物の表面に照射することによりその表面をエッチングして高精度な非球面加工を実現したレンズ面の形成方法を先に提案している(特開平8−20077号公報)。
【0005】
このレンズ面の形成方法は、光学ガラスからなる母体の表面に光学素子用樹脂をコーティングした光学レンズのレンズ面の反射波面を干渉計により測定し、その干渉計による反射波面をコンピュータシステムによりモニタリングしながら、そのコンピュータシステムからのモニタリング情報に基づいて前記レンズ面に対して短波長紫外線レーザを走査させることにより、そのレンズ面を前記短波長紫外線レーザにより非接触でエッチングして最適な反射波面となる形状に表面加工するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したレンズ面の形成方法では、紫外線レーザによるエッチング量が大きくなると、デブリス(飛散物)の再付着等で光学レンズのレンズ面が大きく荒れる可能性が大きく、その結果、光学レンズの透明性が損なわれる可能性が生じてきた。
【0007】
そこで、本出願人は前述したレンズ面の形成方法におけるレーザ加工を改善するために本発明を提案し、その目的とするところは、紫外線レーザの照射により生じるデブリス(飛散物)の再付着を可能なかぎり抑制することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための技術的手段として、本発明は、加工対象物の被加工面にメインレーザを照射して前記被加工面をエッチングする第1のレーザ発振器と、前記メインレーザの照射部位にアシストレーザを照射して前記メインレーザの照射部位を含む部位を局部的に加熱する第2のレーザ発振器と、前記被加工面上にメインレーザ照射すると共にアシストレーザ照射するように最適制御すると共に、前記メインレーザ及びアシストレーザと加工対象物とを相対的に移動させる駆動機構を位置制御する制御器とを具備し、アシストレーザによる局部的な加熱によりメインレーザの照射によるエネルギー不足を補足し、メインレーザの照射によるエッチングで発生するデブリス(飛散物)が再付着することを抑制することを特徴とする。
【0009】
尚、前記メインレーザとしては短波長の紫外線レーザ、アシストレーザとしては長波長の炭酸ガスレーザが好適である。
【0010】
具体的に、本発明が適用される加工対象物としては、光学ガラスからなる母体の表面に光学素子用樹脂をコーティングした光学面、又は、光学ガラス又は石英ガラスからなる母体の光学面を被加工面とし、その光学面を前記紫外線レーザ及び炭酸ガスレーザの照射により最適な透過波面又は反射波面となる形状に加工する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図1乃至図4に示して説明する。
【0012】
本発明のレーザアシストによる加工装置は、図1に示すように加工対象物1の被加工面2にメインレーザとして短波長の紫外線レーザMLを照射する第1のレーザ発振器3と、その紫外線レーザMLの照射部位にアシストレーザとして長波長の炭酸ガスレーザALを照射して紫外線レーザMLの照射部位を含む部位を局部的に加熱する第2のレーザ発振器4と、二つのレーザ発振器3,4に接続され、紫外線レーザMLのメイン照射と炭酸ガスレーザALのアシスト照射を最適制御すると共に、位置決め載置された加工対象物1をモータ等の駆動源(図示せず)によりXY方向に移動可能とする駆動機構5(以下、XYテーブルと称す)を位置制御する制御器6とを具備する。
【0013】
尚、前述したレーザ発振器3,4の前方には、紫外線レーザML及び炭酸ガスレーザALを加工対象物1の被加工面2上でスポット状に集光させるための集束レンズ7,8がそれぞれ配置され、更にその前方に紫外線レーザML及び炭酸ガスレーザALを被加工面2上に方向転換させるための反射ミラー9,10を配置する。
【0014】
この実施形態で適用する加工対象物1の被加工面2は、光学ガラスからなる母体の表面に光学素子用樹脂をコーティングした光学面、又は、光学ガラス又は石英ガラスからなる母体の光学面が好適である。具体的に、加工対象物1としては、例えばBK7等の光学ガラスからなる母体の表面に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート等の光学素子用樹脂を例えばその膜厚が数ミクロンから数ミリ程度となるようにコーティングした光学レンズがある。その他、光学ガラス又は石英ガラスからなる母体自体の光学レンズであってもよい。
【0015】
短波長の紫外線レーザMLをメイン照射する第1のレーザ発振器3は、例えば110〜220nmの短波長を有する紫外線レーザMLを光源とするもので、その紫外線レーザMLとしては、光学素子用樹脂をコーティングした場合には193nmの短波長のArFからなるエキシマレーザが好適であり、また、石英ガラスの場合には、153nmの短波長のフッ素レーザが好適であり、その他水素レーザ等が使用可能である。また、長波長の炭酸ガスレーザALをアシスト照射する第2のレーザ発振器4は、例えば10μm程度の長波長を有する炭酸ガスレーザALを光源とすることが好適である。尚、アシストレーザとしては、前述の炭酸ガスレーザ以外にも、例えば、熱を発生させるレーザであればよい。
【0016】
このレーザアシストによる加工装置では、レーザ発振器3,4から紫外線レーザML及び炭酸ガスレーザALを集束レンズ7,8及び反射ミラー9,10を介してXYテーブル5上の加工対象物1に向けて照射する。この時、制御器6により被加工面2上に紫外線レーザMLをメイン照射すると共に炭酸ガスレーザALをアシスト照射するように制御すると共に、紫外線レーザML及び炭酸ガスレーザALが被加工面2の全面に移動するようにXYテーブル5を駆動制御する。
【0017】
前述した短波長の紫外線レーザMLのメイン照射により被加工面2を非接触でエッチングする。被加工面2が光学素子用樹脂の場合には高分子材料のC−C結合が破壊されてポリマーからモノマーへの分解が生じ、また、石英ガラスの場合にはSiO2 が飛散し、エッチング後の表面がスムーズな加工が実現される。
【0018】
この時、前述した紫外線レーザMLによるエッチング量が大きくなってもデブリス(飛散物)が被加工面2に再付着して透明性が損なわれることはない。即ち、本発明では、この紫外線レーザMLのメイン照射と共にその紫外線レーザMLの照射部位に炭酸ガスレーザALをアシスト照射することにより、紫外線レーザMLの照射部位を含む部位を局部的に加熱し、紫外線レーザMLの照射によるエネルギー不足を炭酸ガスレーザALの照射により補足し、紫外線レーザMLの照射によるエッチングで発生するデブリス(飛散物)が再付着することを抑制し、被加工面2の透明性が確保できる。
【0019】
以下では、紫外線レーザMLとしてArFエキシマレーザを、アシストレーザとして低出力(例えば10〜40mJ/cm2 )の小型炭酸ガスレーザを使用し、基板にアクリル樹脂を用いて大きさ3mm角の平凸シリンドリカルレンズを試作した。尚、前述したアクリル樹脂以外に、ポリカーボネートやポリオリフィン樹脂など有機高分子でも同様の効果が得られる。
【0020】
図2(a)は紫外線レーザMLと炭酸ガスレーザALとを併用した加工時における被加工面2の形状プロファイルを示し、同図(b)は紫外線レーザMLのみを使用した加工時における被加工面2の形状プロファイルを示す。この両者を比較してみると、紫外線レーザMLのみを使用した加工〔同図(b)参照〕ではその被加工面2が荒れて良好な面加工が困難であるのに対して、紫外線レーザMLと炭酸ガスレーザALとを併用した加工〔同図(a)参照〕ではスムーズな被加工面2が得られて良好な面加工が実現できる。
【0021】
また、図3(a)は紫外線レーザMLと炭酸ガスレーザALとを併用した加工時における被加工面2の形状プロファイルを示し、同図(b)は紫外線レーザMLのみを使用した加工時における被加工面2の形状プロファイルを示す。但し、両者はガラスの被加工面2を定点で穴加工した場合を示し、この両者を比較してみると、紫外線レーザMLのみを使用した加工〔同図(b)参照〕ではデブリス(飛散物)が再付着して穴周辺に盛り上がり(図中m部分)ができて良好な穴加工が困難であるのに対して、紫外線レーザMLと炭酸ガスレーザALとを併用した加工〔同図(a)参照〕では穴周辺の盛り上がりがなくて良好な穴加工が実現できる。
【0022】
ここで、本発明では炭酸ガスレーザALを併用することにより、その炭酸ガスレーザALにより被加工面2を局部的に加熱するようにしている。これに対して、図4は加工対象物1の全体を軟化点以下(加熱温度80℃)で加熱した場合における被加工面2の形状プロファイルを示すが、この場合には被加工面2を全体的に加熱するために炭酸ガスレーザALを併用した場合と比較して被加工面2の荒れを防止する大きな効果を得ることが困難であって好適ではない。
【0023】
尚、精密加工用レーザ装置などで使用され、均等なレーザを集光させるための光学レンズのレンズ面を被加工面2としてレーザ加工するに際しては、被加工面2の透過波面又は反射波面をモニタリングしながら、そのモニタリング情報に基づいて被加工面2を紫外線レーザML及び炭酸ガスレーザALの照射により非接触でエッチングして最適な透過波面又は反射波面となる形状に加工すれば、最適な透過波面又は反射波面をリアルタイムで目標設定することができる点で好適である。
【0024】
この被加工面2をモニタリングするためには被加工面2と対向させて干渉計を配置する。この干渉計は制御器6に接続され、例えば赤色光〔633nm〕又は緑色光〔543nm〕のHe−Neレーザ等の光源を含む光学系及びCCDカメラを具備し、光源から発せられた測定レーザを被加工面2で透過又は反射させて干渉計に内蔵している平面参照板からの反射光と干渉させてCCDカメラで撮像する。このCCDカメラからの撮像信号を制御器6で画像処理し、被加工面2での透過波面又は反射波面をモニタリングする。このモニタリングは、制御器6のディスプレイ装置に画面表示することが可能である。
【0025】
以上の実施形態では、加工対象物1をXYステージ5上に載置してその加工対象物1を移動させるようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、加工対象物1を固定した状態で反射ミラー9,10を移動させて紫外線レーザML及び炭酸ガスレーザALを走査するようにしてもよい。更に、本発明は、精密加工用レーザ装置などで使用され、均等なレーザを集光させるための光学レンズ以外の各種の光学レンズに適用可能であるのは勿論である。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、短波長の紫外線レーザ等のメインレーザを照射することにより加工対象物の被加工面をエッチングし、そのメインレーザの照射と共に長波長の炭酸ガスレーザ等のアシストレーザを照射することによりメインレーザの照射部位を局部的に加熱するようにしたから、メインレーザによる被加工面のエッチング量が大きくなっても、アシストレーザによる補足でもってデブリスの再付着を抑制することができて被加工面での透明性などの点で良好な加工が実現でき、高品質の加工対象物を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態におけるレーザアシストによる加工装置を示す概略構成図
【図2】(a)は紫外線レーザと炭酸ガスレーザとを併用してアクリル樹脂をコーティングした被加工面を加工した時の形状プロファイルを示す特性図
(b)は紫外線レーザのみを使用してアクリル樹脂をコーティングした被加工面を加工した時の形状プロファイルを示す特性図
【図3】(a)は紫外線レーザと炭酸ガスレーザとを併用してガラスの被加工面を穴加工した時の形状プロファイルを示す特性図
(b)は紫外線レーザのみを使用してガラスの被加工面を穴加工した時の形状プロファイルを示す特性図
【図4】加工対象物を軟化点以下(加熱温度80℃)で加熱した場合における被加工面の形状プロファイルを示す特性図
【符号の説明】
1 加工対象物
2 被加工面
3 第1のレーザ発振器
4 第2のレーザ発振器
5 駆動機構(XYテーブル)
6 制御器
ML メインレーザ(紫外線レーザ)
AL アシストレーザ(炭酸ガスレーザ)

Claims (3)

  1. 加工対象物の被加工面にメインレーザを照射して前記被加工面をエッチングする第1のレーザ発振器と、前記メインレーザの照射部位にアシストレーザを照射して前記メインレーザの照射部位を含む部位を局部的に加熱することにより前記メインレーザの照射によるエネルギー不足を補足する第2のレーザ発振器と、前記被加工面上にメインレーザ照射すると共にアシストレーザ照射するように最適制御すると共に、前記メインレーザ及びアシストレーザと加工対象物とを相対的に移動させる駆動機構を位置制御する制御器とを具備したことを特徴とするレーザアシストによる加工装置。
  2. 前記メインレーザとして短波長の紫外線レーザ、アシストレーザとして長波長の炭酸ガスレーザをそれぞれ使用したことを特徴とする請求項1記載のレーザアシストによる加工装置。
  3. 請求項1又は2記載の被加工面は、光学ガラスからなる母体の表面に光学素子用樹脂をコーティングした光学面、又は、光学ガラス又は石英ガラスからなる母体の光学面であり、前記光学面を最適な透過波面又は反射波面となる形状に加工することを特徴とするレーザアシストによる加工装置。
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