JP2004082499A - 優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600ml/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルムを提供するものである。これにより、塩素を含有せず、優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を兼ね備えた多層樹脂フィルムを得ることができ、包装用、特に食品包装用のフィルムとして好適なフィルムを得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600ml/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルムを提供するものである。これにより、塩素を含有せず、優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を兼ね備えた多層樹脂フィルムを得ることができ、包装用、特に食品包装用のフィルムとして好適なフィルムを得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は優れた酸素ガスバリア性と防湿性を有する多層樹脂フィルムに関するものであり、主として包装用、例えば食品包装用フィルム等に好適に用いることができるフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、飲食品、医薬品、化学薬品、日用雑貨品等の種々の物品を充填包装する包装用材料として各種樹脂フィルムが用いられており、例えばポリプロピレンフィルムは加工性、透明性、耐熱性など優れた特性を有しており、汎用されている。しかしながら食品、医薬品など、酸素によってその品質が劣化する物品の包装用材料には、これら被包装物の品質を保護・保存するために高いガスバリア性(酸素遮断性含む)が要求されているため、充分な酸素ガスバリア性を有していないポリプロピレンフィルムでは適用が難しかった。
【0003】
ポリプロピレンフィルムのような酸素ガスバリア性の低い樹脂フィルムの酸素ガスバリア性を改善したフィルムとして、例えばポリプロピレンフィルムなどの基材樹脂フィルムにポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC系樹脂」)をコーティングしたPVDC系樹脂コートフィルムが汎用されている。PVDC系樹脂コートフィルムは吸湿性が極めて低いため、高湿度下でも良好な酸素ガスバリア性を有するが、PVDC系樹脂コートフィルムを燃焼させると塩素ガスが発生するという問題を有していた。
【0004】
特に近年、ダイオキシン対策の一環として塩素を含まず、しかも高い酸素ガスバリア性を有するフィルムが求められている。このようなフィルムとしては、例えば、基材樹脂フィルムにポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と略することがある。)をコーティングしたPVA系樹脂コートフィルムが提案されている。しかしながらPVA系樹脂コートフィルムは低湿度下では優れた酸素ガスバリア性を示すが吸湿性が高いため、湿度上昇に伴って酸素ガスバリア性が劣化してしまい、PVDC系樹脂コートフィルムの代替としては充分な実用性を有していなかった。
【0005】
PVA系樹脂コートフィルムの吸湿性を改善したフィルムとしては、例えば、基材樹脂フィルムにエチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂(以下、「EVOH系樹脂」)をコーティングしたEVOH系樹脂コートフィルムが提案されている。しかしながらEVOH系樹脂コートフィルムは、吸湿性は改善されたが、低湿度下での酸素ガスバリア性はPVA系樹脂コートフィルムと比べて低く、充分な酸素ガスバリア性を有していなかった。
【0006】
また、特開平3−30944号では、PVA系樹脂のコーティング液に膨潤性を有するコロイド性合水層状ケイ酸塩化合物を添加する方法について、特許2789705号公報では、膨潤性を有するコロイド性含水層状ケイ酸塩化合物及び分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種により変性されたポリビニルアルコールについて開示されている。しかしながらこれらを基材樹脂フィルムにコーティングして得られるコートフィルムはいずれも製造コストが高いため、製造コストの低いPVDC系樹脂コートフィルムの代替として充分ではない。
【0007】
また、特開昭49−64676号公報には基材樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレートを用い、該フィルムにPVA系樹脂層を積層し、その後延伸する技術が開示されているが、基材樹脂フィルムとしての一軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムにPVA水溶液を塗布し、その後延伸して得られる樹脂フィルムは、該基材樹脂フィルムと該PVA樹脂層との接着性が充分でない旨が記載されている。
【0008】
また、特公平1−25503号公報には水蒸気バリア性向上させる手段として、ポリプロピレンに石油樹脂及びテルペン樹脂を添加する技術が開示されている。しかし、石油樹脂やテルペン樹脂は低軟化点であるため、添加量が多いと製膜工程において発煙が生じてしまい、また得られた樹脂フィルムについては寸法安定性が劣り、フィルムをロール状に巻いた時に巻締まりが起こり平面性が悪化してしまう。また熱収縮率が大きいため、印刷やラミネートなどの加工時において、工程安定性に劣るという問題を有していた。
【0009】
さらには、上記従来の酸素バリア性を改善したフィルムを用いてスナック類や米菓類などを包装した時、内容物の油分に対する酸化劣化防止は充分であるものの、水蒸気透過度が充分でないため、スナック類や米菓類などが湿気をおびてしまい、味覚及び食感を損ね商品価値を低下させてしまうという問題も有していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、塩素を含有しないでも、特に高湿度下において優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を兼ね備えた多層樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムにおいて、高湿度下における酸素ガスバリア性及び防湿性を改善できることを見出し、さらに、酸素透過度及び水蒸気透過度を特定範囲とすることで、スナック類や米菓類などの乾燥食品の味覚や食感を保持できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルムを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の多層樹脂フィルムは、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなることが必要である。本発明の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、例えばポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、ポリプロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等から選ばれる1種または2種以上のプロピレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体やブロック共重合体等、更にはこれらの重合体を2種以上混合した混合樹脂等が挙げられ、これらの原料、混合比率等は特に限定されない。
【0014】
本発明における二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚さは、機械強度、透明性等、所望の目的に応じて任意に設定することができ、特に限定されないが、通常は厚さが10〜250μmであることが推奨され、包装材料として用いる場合は厚さが15〜60μmであることが望ましい。
【0015】
本発明における二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層は、単層であっても、ポリプロピレン系樹脂層を有する複数の樹脂層が積層されてなっていても構わないが、二軸延伸されてなることが必要である。ポリプロピレン系樹脂層を有する複数の樹脂層が積層されてなる場合の各層の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0016】
本発明における高結晶化樹脂としては、例えばポリプロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。本発明においては、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層中の高結晶化樹脂の含有量は10〜40重量%であることが必要であり、好ましくは15〜30重量%である。含有量が10%未満では結晶化度が上がらず充分な防湿性が得られにくい。また、高結晶化樹脂の含有量が40重量%を超えると、結晶化度が上がりすぎ、延伸工程において延伸性が悪くなりやすく、工程安定性に劣る。
【0017】
本発明における石油樹脂としては、例えば、石油系不飽和炭化水素を直接原料とするシクロペンタジエン系、あるいは高級オレフィン系炭化水素を主原料とする樹脂等が挙げられる。本発明においては、石油樹脂に水素を添加し、その水素添加率を好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上とした水添系石油樹脂が特に望ましい。
【0018】
本発明における石油樹脂の含有量は6〜15重量%であることが必要であり、好ましくは8〜12重量%である。含有量が6%未満では石油樹脂添加による効果が低く充分な防湿性が得られない。また、含有量が15重量%を超えると、製膜工程において発煙が生じやすく、また得られたフィルムについては寸法安定性が劣り、フィルムをロール状に巻いた時に巻締まりが起こって平面性が悪化しやすい。また、熱収縮率が大きいために印刷やラミネートなどの加工時において、工程安定性に劣り好ましくない。
【0019】
本発明の多層樹脂フィルムは、スナック類や米菓類などの乾燥食品の包装材料として使用した場合に、味覚や食感を保持し、商品価値を低下させないために、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることが必要である。相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPaを超え、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μmを超えると、乾燥食品の包装材料として使用した場合に充分な湿気防止効果が得られなくなる。
【0020】
本発明におけるアイソタクチックペンダット分率(以下、「II」と略すことがある。)とは、プロピレン重合体中の総メチル基数に対するアイソタクチック連鎖中のメチル基数の分率である。すなわち、13C−NMRにおいて測定した、プロピレンユニットのメチル基由来のピーク強度に対するアイソタクチックに結合したプロピレンユニットの5連鎖における中央のメチル基由来のピーク強度の分率である。13C−NMR測定は、日本電子社製JNM−LA500NMR装置を用い、試料200mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=9/1(容積比)の混合溶媒3mlに加熱溶解させた後、内径10mmのNMR試験管に入れ、130℃にて10000回の積算を行った。13C核の共鳴周波数は125MHz、繰り返し時間は4秒とし、各シグナルの帰属はA.Zambelli et.al.、Macromolcules、8、687(1975)、T.Hayashi et.al.、Polymer、29、138(1988)に従った。本発明における高結晶化樹脂は、IIが94.0%以上であることが好ましい。IIが94.0%未満では結晶化度が上がらず、充分な防湿性が得られにくい。
【0021】
本発明において、接着剤層は、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層との間に形成され、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層とを接着させる作用を有するものである。接着剤層を有することにより、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層との接着強度が向上する。本発明における接着剤層としては、その原料等は特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むものが好ましく、例えば、ポリオレフィン系重合体を(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むものが好ましく、特に0.01〜5モル%のマレイン酸または無水マレイン酸をオレフィン重合体にグラフト共重合させて得られるグラフト共重合体を含むものが好適に用いられる。
【0022】
また、本発明における接着剤層の厚さは特に限定されないが、接着性、コストの観点からも0.5〜5μmであることが好ましく、より好ましくは2.2〜3.8μmである。また、接着剤層は、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層の間に存在し、かつ二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層とを接着させることができるのであれば、2層以上の多層構成であってもよく、各積層体の種類、積層数等は特に限定されず、さらに、目的に応じて帯電防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0023】
本発明においては、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に前記接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなることが必要である。本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコールのモノマー単位を主成分とするポリマーであって、例えば、酢酸ビニル重合体、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体などを鹸化して得られるポリマーなどが挙げられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度と鹸化度は、目的とするフィルムの特性、特に酸素ガスバリア性及びフィルムの延伸性から定められる。延伸性については、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度の高い方が結晶化速度が遅く、延伸性が良好である。しかし、重合度が高すぎると、水溶液粘度が高くなることやゲル化し易くなることから、コーティングが困難になりやすい。従って、本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂の重合度(以下、いずれも「数平均分子量」を示す。)はコーティングフィルムの延伸性の観点から好ましくは200以上、より好ましくは300以上であり、コーティング作業性から好ましくは2600以下であり、500〜2000であることがより好ましい。重合度が200未満になると、結晶化速度が速すぎるため、充分な延伸性が得られにくい。また重合度が2600を超えると、PVA水溶液粘度が高くなり過ぎ、ゲル化し易くなるため、コーティングが困難になりやすい。また、本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度は90〜99.7%であることが好ましく、より好ましくは93〜99%である。鹸化度が90%未満では高湿度下での必要な酸素ガスバリア性が得られにくく、99.7%を超えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすいため、工業生産には向かない。
【0024】
本発明における結晶化度パラメータとは、酸素ガスバリア性フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を赤外偏光ATR法(全反射測定法)のよって測定した値であり、詳細には赤外偏光ATR法における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)である。尚、IRスペクトルによってポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度を評価する場合、通常1140cm−1付近の吸収強度で評価するが、赤外偏光ATR法によるスペクトル吸収強度は、試料の測定面積、厚みおよび表面状態の影響を強く受けるため、他の吸収強度との相対強度によって評価することが好ましい。従って本発明では、1140cm−1付近の吸収強度と1095cm−1付近の吸収強度との相対強度で結晶化度を評価する。尚、結晶化度が高いほど、フィルムにおいてより優れた酸素ガスバリア性が得られ、本発明における多層樹脂フィルムのポリビニルアルコール樹脂層においては好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.2以上、最も好ましくは1.9以上である。CP(M//)⊥の値が0.8以上であれば、高湿度下であっても優れた酸素ガスバリア性を発揮することができる。
【0025】
また、本発明においては、赤外光の入射方向をフィルムの流れ方向と幅方向の2方向から、偏光方向を平行方向と垂直方向の2方向から評価することによって4種類の偏光ATRスペクトルが得られるので、CP(M//)⊥を評価することにより、延伸による配向結晶性を定量することができる。
【0026】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂層は、偏光ATRスペクトルにより得られる結晶化度パラメーターがCP(M//)⊥=0.8以上であることが好ましく、その場合の原料、混合比率、添加物の有無等は特に限定されない。また、静電防止剤、滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を含有していても良く、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、添加剤の種類、添加量については特に限定されない。
【0027】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは、必要とする酸素ガスバリア性に応じて任意の厚さとすることができるが、透明性、取り扱い性、経済性の観点から酸素ガスバリア性を発揮するのに必要最小限の厚さとすることが推奨され、乾燥後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは1μm以下であることが好ましく、通常は0.2〜0.8μmとすることがより好ましい。厚さが0.2μm未満の場合は、ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度パラメータがCP(M//)⊥=0.8以上であっても、優れた酸素ガスバリア性が得られにくい。また、厚さが1.0μmより厚い場合は、優れた酸素ガスバリア性を得られるが、生産性、経済性、コスト性が低下しやすい。
【0028】
本発明の多層樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなり、かつ前述の酸素透過度及び水蒸気透過度を現出可能であれば、その積層方法、製膜方法、延伸条件等を適宜選択すればよい。
【0029】
また、本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂層を接着剤層上に積層する方法としては特に限定されず、公知の方法を採用すれば良いが、例えばリバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられ、使用するコーティング液の塗布量と粘度により、最適な方法を選択すればよい。また、コーティング時の乾燥、熱処理等の条件は、塗布厚み、装置の条件により適宜選択することができる。
【0030】
また、本発明の多層樹脂フィルムは、本発明の作用を阻害しない範囲で、目的に応じて更に任意の樹脂層等を形成させることもできる。例えば押出しラミネート法、あるいはドライラミネート法等公知の方法を用いてヒートシール性樹脂層を形成することも可能である。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、例えば、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、PP樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等が例示されるが、特に限定されない。尚、ダイオキシン対策などの環境面を考慮すると、積層する樹脂には塩素を含有していない樹脂を用いるのが望ましい。
【0031】
本発明の多層樹脂フィルムは、目的に応じて、例えばコロナ放電処理、オゾン処理、薬品処理等の従来公知の表面活性化処理や、公知のアンカー処理剤を用いてのアンカー処理を施されていてもよい。
【0032】
また、本発明の多層樹脂フィルムにおいては、各層を構成する材料に物性改質を目的とした酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤等の公知の添加剤が添加されていても良く、その種類、添加量または併用については、本発明の作用を阻害しない範囲で特に限定されない。
【0033】
本発明において、上記物性は、フィルムの組成、製膜方法、延伸条件等を適宜選択することによって得ることができる。
【0034】
本発明により、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルムを得ることができる。これにより、塩素を含有しないでも、高湿度下での酸素ガスバリア性及び防湿性に優れた多層樹脂フィルムを提供することができる。
【0035】
以下に、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
実施例1
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料として、ポリプロピレン系樹脂65重量%にIIが97.7重量%である高結晶化ポリプロピレン系樹脂(出光石油社製「F−300SV」)25重量%と石油樹脂(トーネックス社製「エスコレッツE5300」)10重量%とを混合した樹脂を用い、接着剤層の構成材料として、酸変性ポリオレフィン(三井化学社製「アドマーQB550」)/ポリオレフィン(住友化学社製「ポリプロピレンFS2011DG2」)=55/45(重量%)を混合した樹脂を用いた。さらに、ポリビニルアルコール系樹脂層の構成材料として、クラレ社製「ポリビニルアルコールRS110」を攪拌しながら水に徐々に添加し、密封後、攪拌しながら約90℃に加熱し、ポリビニルアルコール系樹脂を完全に溶解させた後、液温を低下させ、50℃の液温時に、更にイソプロピルアルコールが7重量%、グリセリンが1重量%となるように添加して、8重量%のポリビニルアルコール水溶液を作成した。
【0037】
上記二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料と上記接着剤層の構成材料は、それぞれ押出し機を用いて別々に溶融混錬したものを、(ポリプロピレン系樹脂+高結晶化樹脂+石油樹脂)/(酸変性ポリオレフィン+ポリオレフィン)=18.4/1.6(重量比)の割合でTダイに供給し、Tダイ内部で積層して樹脂温度260℃になるように2層積層状態で共押出しし、更に温度25℃のキャスティングロールにてキャスティングして、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層と接着剤層からなる厚さ20μmの2層樹脂フィルム(二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚み18.4μm、接着剤層の厚み1.6μm)を製造した後、該2層樹脂フィルムを一方向(縦方向)に4倍延伸して、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの接着剤層上に、上記ポリビニルアルコール水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール系樹脂層の延伸後の厚さが0.6μmとなるように、リバースロールコーティング法によりポリビニルアルコール系樹脂層を積層して3層樹脂フィルムを製造し、該3層樹脂フィルムを前記延伸方向に対して直角方向(横方向)に6倍延伸した。コーティングしたポリビニルアルコール水溶液は延伸工程の予熱ゾーン(80〜170℃)で乾燥させ、多層樹脂フィルムを得た。
【0038】
実施例2
ポリビニルアルコール系樹脂層の構成材料として、クラレ社製「ポリビニルアルコールRS117」を使用し、ポリビニルアルコール系樹脂層を積層後、該3層樹脂フィルムを横方向に9倍延伸したこと以外は、実施例1と同様にして、多層樹脂フィルムを得た。
【0039】
比較例1
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料として、ポリプロピレン系樹脂85重量%に、高結晶化ポリプロピレン系樹脂5重量%と石油樹脂10重量%とを混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、多層樹脂フィルムを得た。
【0040】
比較例2
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料として、ポリプロピレン系樹脂73重量%に、高結晶化ポリプロピレン系樹脂25重量%と石油樹脂2重量%とを混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、多層樹脂フィルムを得た。
【0041】
比較例3
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層として、石油樹脂10重量%を含む厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを用い、ポリビニルアルコール系樹脂層の構成材料として、クラレ社製「ポリビニルアルコールRS117」を用い、また、接着剤層の構成材料としてアンカー剤であるイソシアネート系接着剤を用いた。二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、該コロナ処理面に乾燥後のコート量が0.3g/m2となるように接着剤層となるアンカー剤をグラビアコートし、更に接着剤層にポリビニルアルコール水溶液をグラビアコートした後(オフラインコート)、乾燥(140℃)させ、多層樹脂フィルムを得た。
【0042】
実施例1〜2、比較例1〜3について、下記の試験を行ない、試験結果を表1に示した。
【0043】
試験方法
(1)酸素透過度(単位:mL/m2・day・MPa)
モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」を使用し、相対湿度85%RH(温度23℃)で30分間測定した。
【0044】
(2)水蒸気透過度(単位:g/m2・day・20μm)
JIS−Z−0208に基づき、40℃、相対湿度90%RHの条件で30分間測定した。
【0045】
(3)結晶化度パラメータ
Bio−Rad社製FT−IR(FTS−60A/896)にATR測定用付属装置(Perkin−Elmer社製)、偏光子、及び対称形のエッジを有するInternal Reflection Element(Ge、入射角45度、厚さ2mm×長さ50mm×幅20mm)を取り付けたATR装置を用いて、各試験材(長さ45mm×幅17mm)の長さ方向をフィルムの幅方向(流れ方向に対し直角方向)として、ポリビニルアルコール系樹脂層を該Internal Reflection Elementに密着させて、試験材の反射面に対し垂直偏光の光を照射して、赤外偏光ATR法によって結晶化度を測定した。尚、Internal Reflection Elementの中央部(幅12mm)のみに赤外光が入射するように端部の赤外光を遮断し、得られたスペクトルをSpenctrum(M//)⊥とした。
【0046】
得られた偏光ATRスペクトルにおいて、1140cm−1付近の吸収と1095cm−1付近の吸収の吸光度を求め、偏光ATRスペクトルの1140cm−1付近のピークの高波数側の谷部と、1095cm−1付近のピークの低波数側の谷部の2点を結んだ線をベースラインとし、ベースラインから吸収帯のピークまでの高さをポリビニルアルコール系樹脂層吸収帯の吸光度とした。1140cm−1付近のピークの吸光度をA1140、1095cm−1付近のピークの吸光度をA1095とし、明確なピークが観察されない場合は、1140cm−1、1095cm−1の位置での吸光度をそれぞれA1140、A1195とした。Spectrum(M//)⊥のスペクトルにおいて、A1095に対するA1140の比(A1140/A1095)を求めた。この値を結晶化度パラメータとし、CP(M//)⊥で示した。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜2及び比較例1〜2のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みはいずれも0.6μmであり、比較例3のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは1.0μmである。
【0049】
表1からも明らかなように、本発明の多層樹脂フィルムは高湿度下での酸素バリア性に優れており、さらには防湿性も良好であることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によって得られる多層樹脂フィルムは、塩素を含有しないでも、優れた酸素ガスバリア性と防湿性を兼ね備えた多層樹脂フィルムであり、主に包装用フィルムとして、特にスナック類や米菓類などの乾燥食品の味覚や食感を保持できる食品用フィルムとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層樹脂フィルムの一構成例である。
【発明の属する技術分野】
本発明は優れた酸素ガスバリア性と防湿性を有する多層樹脂フィルムに関するものであり、主として包装用、例えば食品包装用フィルム等に好適に用いることができるフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、飲食品、医薬品、化学薬品、日用雑貨品等の種々の物品を充填包装する包装用材料として各種樹脂フィルムが用いられており、例えばポリプロピレンフィルムは加工性、透明性、耐熱性など優れた特性を有しており、汎用されている。しかしながら食品、医薬品など、酸素によってその品質が劣化する物品の包装用材料には、これら被包装物の品質を保護・保存するために高いガスバリア性(酸素遮断性含む)が要求されているため、充分な酸素ガスバリア性を有していないポリプロピレンフィルムでは適用が難しかった。
【0003】
ポリプロピレンフィルムのような酸素ガスバリア性の低い樹脂フィルムの酸素ガスバリア性を改善したフィルムとして、例えばポリプロピレンフィルムなどの基材樹脂フィルムにポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC系樹脂」)をコーティングしたPVDC系樹脂コートフィルムが汎用されている。PVDC系樹脂コートフィルムは吸湿性が極めて低いため、高湿度下でも良好な酸素ガスバリア性を有するが、PVDC系樹脂コートフィルムを燃焼させると塩素ガスが発生するという問題を有していた。
【0004】
特に近年、ダイオキシン対策の一環として塩素を含まず、しかも高い酸素ガスバリア性を有するフィルムが求められている。このようなフィルムとしては、例えば、基材樹脂フィルムにポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と略することがある。)をコーティングしたPVA系樹脂コートフィルムが提案されている。しかしながらPVA系樹脂コートフィルムは低湿度下では優れた酸素ガスバリア性を示すが吸湿性が高いため、湿度上昇に伴って酸素ガスバリア性が劣化してしまい、PVDC系樹脂コートフィルムの代替としては充分な実用性を有していなかった。
【0005】
PVA系樹脂コートフィルムの吸湿性を改善したフィルムとしては、例えば、基材樹脂フィルムにエチレン・ビニルアルコール共重合体系樹脂(以下、「EVOH系樹脂」)をコーティングしたEVOH系樹脂コートフィルムが提案されている。しかしながらEVOH系樹脂コートフィルムは、吸湿性は改善されたが、低湿度下での酸素ガスバリア性はPVA系樹脂コートフィルムと比べて低く、充分な酸素ガスバリア性を有していなかった。
【0006】
また、特開平3−30944号では、PVA系樹脂のコーティング液に膨潤性を有するコロイド性合水層状ケイ酸塩化合物を添加する方法について、特許2789705号公報では、膨潤性を有するコロイド性含水層状ケイ酸塩化合物及び分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種により変性されたポリビニルアルコールについて開示されている。しかしながらこれらを基材樹脂フィルムにコーティングして得られるコートフィルムはいずれも製造コストが高いため、製造コストの低いPVDC系樹脂コートフィルムの代替として充分ではない。
【0007】
また、特開昭49−64676号公報には基材樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレートを用い、該フィルムにPVA系樹脂層を積層し、その後延伸する技術が開示されているが、基材樹脂フィルムとしての一軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムにPVA水溶液を塗布し、その後延伸して得られる樹脂フィルムは、該基材樹脂フィルムと該PVA樹脂層との接着性が充分でない旨が記載されている。
【0008】
また、特公平1−25503号公報には水蒸気バリア性向上させる手段として、ポリプロピレンに石油樹脂及びテルペン樹脂を添加する技術が開示されている。しかし、石油樹脂やテルペン樹脂は低軟化点であるため、添加量が多いと製膜工程において発煙が生じてしまい、また得られた樹脂フィルムについては寸法安定性が劣り、フィルムをロール状に巻いた時に巻締まりが起こり平面性が悪化してしまう。また熱収縮率が大きいため、印刷やラミネートなどの加工時において、工程安定性に劣るという問題を有していた。
【0009】
さらには、上記従来の酸素バリア性を改善したフィルムを用いてスナック類や米菓類などを包装した時、内容物の油分に対する酸化劣化防止は充分であるものの、水蒸気透過度が充分でないため、スナック類や米菓類などが湿気をおびてしまい、味覚及び食感を損ね商品価値を低下させてしまうという問題も有していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、塩素を含有しないでも、特に高湿度下において優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を兼ね備えた多層樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムにおいて、高湿度下における酸素ガスバリア性及び防湿性を改善できることを見出し、さらに、酸素透過度及び水蒸気透過度を特定範囲とすることで、スナック類や米菓類などの乾燥食品の味覚や食感を保持できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルムを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の多層樹脂フィルムは、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなることが必要である。本発明の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、例えばポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、ポリプロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等から選ばれる1種または2種以上のプロピレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体やブロック共重合体等、更にはこれらの重合体を2種以上混合した混合樹脂等が挙げられ、これらの原料、混合比率等は特に限定されない。
【0014】
本発明における二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚さは、機械強度、透明性等、所望の目的に応じて任意に設定することができ、特に限定されないが、通常は厚さが10〜250μmであることが推奨され、包装材料として用いる場合は厚さが15〜60μmであることが望ましい。
【0015】
本発明における二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層は、単層であっても、ポリプロピレン系樹脂層を有する複数の樹脂層が積層されてなっていても構わないが、二軸延伸されてなることが必要である。ポリプロピレン系樹脂層を有する複数の樹脂層が積層されてなる場合の各層の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0016】
本発明における高結晶化樹脂としては、例えばポリプロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。本発明においては、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層中の高結晶化樹脂の含有量は10〜40重量%であることが必要であり、好ましくは15〜30重量%である。含有量が10%未満では結晶化度が上がらず充分な防湿性が得られにくい。また、高結晶化樹脂の含有量が40重量%を超えると、結晶化度が上がりすぎ、延伸工程において延伸性が悪くなりやすく、工程安定性に劣る。
【0017】
本発明における石油樹脂としては、例えば、石油系不飽和炭化水素を直接原料とするシクロペンタジエン系、あるいは高級オレフィン系炭化水素を主原料とする樹脂等が挙げられる。本発明においては、石油樹脂に水素を添加し、その水素添加率を好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上とした水添系石油樹脂が特に望ましい。
【0018】
本発明における石油樹脂の含有量は6〜15重量%であることが必要であり、好ましくは8〜12重量%である。含有量が6%未満では石油樹脂添加による効果が低く充分な防湿性が得られない。また、含有量が15重量%を超えると、製膜工程において発煙が生じやすく、また得られたフィルムについては寸法安定性が劣り、フィルムをロール状に巻いた時に巻締まりが起こって平面性が悪化しやすい。また、熱収縮率が大きいために印刷やラミネートなどの加工時において、工程安定性に劣り好ましくない。
【0019】
本発明の多層樹脂フィルムは、スナック類や米菓類などの乾燥食品の包装材料として使用した場合に、味覚や食感を保持し、商品価値を低下させないために、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることが必要である。相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPaを超え、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μmを超えると、乾燥食品の包装材料として使用した場合に充分な湿気防止効果が得られなくなる。
【0020】
本発明におけるアイソタクチックペンダット分率(以下、「II」と略すことがある。)とは、プロピレン重合体中の総メチル基数に対するアイソタクチック連鎖中のメチル基数の分率である。すなわち、13C−NMRにおいて測定した、プロピレンユニットのメチル基由来のピーク強度に対するアイソタクチックに結合したプロピレンユニットの5連鎖における中央のメチル基由来のピーク強度の分率である。13C−NMR測定は、日本電子社製JNM−LA500NMR装置を用い、試料200mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=9/1(容積比)の混合溶媒3mlに加熱溶解させた後、内径10mmのNMR試験管に入れ、130℃にて10000回の積算を行った。13C核の共鳴周波数は125MHz、繰り返し時間は4秒とし、各シグナルの帰属はA.Zambelli et.al.、Macromolcules、8、687(1975)、T.Hayashi et.al.、Polymer、29、138(1988)に従った。本発明における高結晶化樹脂は、IIが94.0%以上であることが好ましい。IIが94.0%未満では結晶化度が上がらず、充分な防湿性が得られにくい。
【0021】
本発明において、接着剤層は、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層との間に形成され、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層とを接着させる作用を有するものである。接着剤層を有することにより、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層との接着強度が向上する。本発明における接着剤層としては、その原料等は特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むものが好ましく、例えば、ポリオレフィン系重合体を(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むものが好ましく、特に0.01〜5モル%のマレイン酸または無水マレイン酸をオレフィン重合体にグラフト共重合させて得られるグラフト共重合体を含むものが好適に用いられる。
【0022】
また、本発明における接着剤層の厚さは特に限定されないが、接着性、コストの観点からも0.5〜5μmであることが好ましく、より好ましくは2.2〜3.8μmである。また、接着剤層は、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層の間に存在し、かつ二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層とポリビニルアルコール系樹脂層とを接着させることができるのであれば、2層以上の多層構成であってもよく、各積層体の種類、積層数等は特に限定されず、さらに、目的に応じて帯電防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0023】
本発明においては、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に前記接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなることが必要である。本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコールのモノマー単位を主成分とするポリマーであって、例えば、酢酸ビニル重合体、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体などを鹸化して得られるポリマーなどが挙げられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度と鹸化度は、目的とするフィルムの特性、特に酸素ガスバリア性及びフィルムの延伸性から定められる。延伸性については、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度の高い方が結晶化速度が遅く、延伸性が良好である。しかし、重合度が高すぎると、水溶液粘度が高くなることやゲル化し易くなることから、コーティングが困難になりやすい。従って、本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂の重合度(以下、いずれも「数平均分子量」を示す。)はコーティングフィルムの延伸性の観点から好ましくは200以上、より好ましくは300以上であり、コーティング作業性から好ましくは2600以下であり、500〜2000であることがより好ましい。重合度が200未満になると、結晶化速度が速すぎるため、充分な延伸性が得られにくい。また重合度が2600を超えると、PVA水溶液粘度が高くなり過ぎ、ゲル化し易くなるため、コーティングが困難になりやすい。また、本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度は90〜99.7%であることが好ましく、より好ましくは93〜99%である。鹸化度が90%未満では高湿度下での必要な酸素ガスバリア性が得られにくく、99.7%を超えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすいため、工業生産には向かない。
【0024】
本発明における結晶化度パラメータとは、酸素ガスバリア性フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を赤外偏光ATR法(全反射測定法)のよって測定した値であり、詳細には赤外偏光ATR法における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)である。尚、IRスペクトルによってポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度を評価する場合、通常1140cm−1付近の吸収強度で評価するが、赤外偏光ATR法によるスペクトル吸収強度は、試料の測定面積、厚みおよび表面状態の影響を強く受けるため、他の吸収強度との相対強度によって評価することが好ましい。従って本発明では、1140cm−1付近の吸収強度と1095cm−1付近の吸収強度との相対強度で結晶化度を評価する。尚、結晶化度が高いほど、フィルムにおいてより優れた酸素ガスバリア性が得られ、本発明における多層樹脂フィルムのポリビニルアルコール樹脂層においては好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.2以上、最も好ましくは1.9以上である。CP(M//)⊥の値が0.8以上であれば、高湿度下であっても優れた酸素ガスバリア性を発揮することができる。
【0025】
また、本発明においては、赤外光の入射方向をフィルムの流れ方向と幅方向の2方向から、偏光方向を平行方向と垂直方向の2方向から評価することによって4種類の偏光ATRスペクトルが得られるので、CP(M//)⊥を評価することにより、延伸による配向結晶性を定量することができる。
【0026】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂層は、偏光ATRスペクトルにより得られる結晶化度パラメーターがCP(M//)⊥=0.8以上であることが好ましく、その場合の原料、混合比率、添加物の有無等は特に限定されない。また、静電防止剤、滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を含有していても良く、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、添加剤の種類、添加量については特に限定されない。
【0027】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは、必要とする酸素ガスバリア性に応じて任意の厚さとすることができるが、透明性、取り扱い性、経済性の観点から酸素ガスバリア性を発揮するのに必要最小限の厚さとすることが推奨され、乾燥後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは1μm以下であることが好ましく、通常は0.2〜0.8μmとすることがより好ましい。厚さが0.2μm未満の場合は、ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度パラメータがCP(M//)⊥=0.8以上であっても、優れた酸素ガスバリア性が得られにくい。また、厚さが1.0μmより厚い場合は、優れた酸素ガスバリア性を得られるが、生産性、経済性、コスト性が低下しやすい。
【0028】
本発明の多層樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなり、かつ前述の酸素透過度及び水蒸気透過度を現出可能であれば、その積層方法、製膜方法、延伸条件等を適宜選択すればよい。
【0029】
また、本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂層を接着剤層上に積層する方法としては特に限定されず、公知の方法を採用すれば良いが、例えばリバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられ、使用するコーティング液の塗布量と粘度により、最適な方法を選択すればよい。また、コーティング時の乾燥、熱処理等の条件は、塗布厚み、装置の条件により適宜選択することができる。
【0030】
また、本発明の多層樹脂フィルムは、本発明の作用を阻害しない範囲で、目的に応じて更に任意の樹脂層等を形成させることもできる。例えば押出しラミネート法、あるいはドライラミネート法等公知の方法を用いてヒートシール性樹脂層を形成することも可能である。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、例えば、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、PP樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等が例示されるが、特に限定されない。尚、ダイオキシン対策などの環境面を考慮すると、積層する樹脂には塩素を含有していない樹脂を用いるのが望ましい。
【0031】
本発明の多層樹脂フィルムは、目的に応じて、例えばコロナ放電処理、オゾン処理、薬品処理等の従来公知の表面活性化処理や、公知のアンカー処理剤を用いてのアンカー処理を施されていてもよい。
【0032】
また、本発明の多層樹脂フィルムにおいては、各層を構成する材料に物性改質を目的とした酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤等の公知の添加剤が添加されていても良く、その種類、添加量または併用については、本発明の作用を阻害しない範囲で特に限定されない。
【0033】
本発明において、上記物性は、フィルムの組成、製膜方法、延伸条件等を適宜選択することによって得ることができる。
【0034】
本発明により、高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルムを得ることができる。これにより、塩素を含有しないでも、高湿度下での酸素ガスバリア性及び防湿性に優れた多層樹脂フィルムを提供することができる。
【0035】
以下に、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
実施例1
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料として、ポリプロピレン系樹脂65重量%にIIが97.7重量%である高結晶化ポリプロピレン系樹脂(出光石油社製「F−300SV」)25重量%と石油樹脂(トーネックス社製「エスコレッツE5300」)10重量%とを混合した樹脂を用い、接着剤層の構成材料として、酸変性ポリオレフィン(三井化学社製「アドマーQB550」)/ポリオレフィン(住友化学社製「ポリプロピレンFS2011DG2」)=55/45(重量%)を混合した樹脂を用いた。さらに、ポリビニルアルコール系樹脂層の構成材料として、クラレ社製「ポリビニルアルコールRS110」を攪拌しながら水に徐々に添加し、密封後、攪拌しながら約90℃に加熱し、ポリビニルアルコール系樹脂を完全に溶解させた後、液温を低下させ、50℃の液温時に、更にイソプロピルアルコールが7重量%、グリセリンが1重量%となるように添加して、8重量%のポリビニルアルコール水溶液を作成した。
【0037】
上記二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料と上記接着剤層の構成材料は、それぞれ押出し機を用いて別々に溶融混錬したものを、(ポリプロピレン系樹脂+高結晶化樹脂+石油樹脂)/(酸変性ポリオレフィン+ポリオレフィン)=18.4/1.6(重量比)の割合でTダイに供給し、Tダイ内部で積層して樹脂温度260℃になるように2層積層状態で共押出しし、更に温度25℃のキャスティングロールにてキャスティングして、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層と接着剤層からなる厚さ20μmの2層樹脂フィルム(二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の厚み18.4μm、接着剤層の厚み1.6μm)を製造した後、該2層樹脂フィルムを一方向(縦方向)に4倍延伸して、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの接着剤層上に、上記ポリビニルアルコール水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール系樹脂層の延伸後の厚さが0.6μmとなるように、リバースロールコーティング法によりポリビニルアルコール系樹脂層を積層して3層樹脂フィルムを製造し、該3層樹脂フィルムを前記延伸方向に対して直角方向(横方向)に6倍延伸した。コーティングしたポリビニルアルコール水溶液は延伸工程の予熱ゾーン(80〜170℃)で乾燥させ、多層樹脂フィルムを得た。
【0038】
実施例2
ポリビニルアルコール系樹脂層の構成材料として、クラレ社製「ポリビニルアルコールRS117」を使用し、ポリビニルアルコール系樹脂層を積層後、該3層樹脂フィルムを横方向に9倍延伸したこと以外は、実施例1と同様にして、多層樹脂フィルムを得た。
【0039】
比較例1
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料として、ポリプロピレン系樹脂85重量%に、高結晶化ポリプロピレン系樹脂5重量%と石油樹脂10重量%とを混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、多層樹脂フィルムを得た。
【0040】
比較例2
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の構成材料として、ポリプロピレン系樹脂73重量%に、高結晶化ポリプロピレン系樹脂25重量%と石油樹脂2重量%とを混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、多層樹脂フィルムを得た。
【0041】
比較例3
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層として、石油樹脂10重量%を含む厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを用い、ポリビニルアルコール系樹脂層の構成材料として、クラレ社製「ポリビニルアルコールRS117」を用い、また、接着剤層の構成材料としてアンカー剤であるイソシアネート系接着剤を用いた。二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、該コロナ処理面に乾燥後のコート量が0.3g/m2となるように接着剤層となるアンカー剤をグラビアコートし、更に接着剤層にポリビニルアルコール水溶液をグラビアコートした後(オフラインコート)、乾燥(140℃)させ、多層樹脂フィルムを得た。
【0042】
実施例1〜2、比較例1〜3について、下記の試験を行ない、試験結果を表1に示した。
【0043】
試験方法
(1)酸素透過度(単位:mL/m2・day・MPa)
モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」を使用し、相対湿度85%RH(温度23℃)で30分間測定した。
【0044】
(2)水蒸気透過度(単位:g/m2・day・20μm)
JIS−Z−0208に基づき、40℃、相対湿度90%RHの条件で30分間測定した。
【0045】
(3)結晶化度パラメータ
Bio−Rad社製FT−IR(FTS−60A/896)にATR測定用付属装置(Perkin−Elmer社製)、偏光子、及び対称形のエッジを有するInternal Reflection Element(Ge、入射角45度、厚さ2mm×長さ50mm×幅20mm)を取り付けたATR装置を用いて、各試験材(長さ45mm×幅17mm)の長さ方向をフィルムの幅方向(流れ方向に対し直角方向)として、ポリビニルアルコール系樹脂層を該Internal Reflection Elementに密着させて、試験材の反射面に対し垂直偏光の光を照射して、赤外偏光ATR法によって結晶化度を測定した。尚、Internal Reflection Elementの中央部(幅12mm)のみに赤外光が入射するように端部の赤外光を遮断し、得られたスペクトルをSpenctrum(M//)⊥とした。
【0046】
得られた偏光ATRスペクトルにおいて、1140cm−1付近の吸収と1095cm−1付近の吸収の吸光度を求め、偏光ATRスペクトルの1140cm−1付近のピークの高波数側の谷部と、1095cm−1付近のピークの低波数側の谷部の2点を結んだ線をベースラインとし、ベースラインから吸収帯のピークまでの高さをポリビニルアルコール系樹脂層吸収帯の吸光度とした。1140cm−1付近のピークの吸光度をA1140、1095cm−1付近のピークの吸光度をA1095とし、明確なピークが観察されない場合は、1140cm−1、1095cm−1の位置での吸光度をそれぞれA1140、A1195とした。Spectrum(M//)⊥のスペクトルにおいて、A1095に対するA1140の比(A1140/A1095)を求めた。この値を結晶化度パラメータとし、CP(M//)⊥で示した。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜2及び比較例1〜2のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みはいずれも0.6μmであり、比較例3のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは1.0μmである。
【0049】
表1からも明らかなように、本発明の多層樹脂フィルムは高湿度下での酸素バリア性に優れており、さらには防湿性も良好であることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によって得られる多層樹脂フィルムは、塩素を含有しないでも、優れた酸素ガスバリア性と防湿性を兼ね備えた多層樹脂フィルムであり、主に包装用フィルムとして、特にスナック類や米菓類などの乾燥食品の味覚や食感を保持できる食品用フィルムとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層樹脂フィルムの一構成例である。
Claims (4)
- 高結晶化樹脂を10〜40重量%と石油樹脂を6〜15重量%とを含有してなる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤層を介して、ポリビニルアルコール系樹脂層をさらに有してなる多層樹脂フィルムであって、相対湿度85%RH、温度23℃における酸素透過度が600mL/m2・day・MPa以下であり、かつ相対湿度90%RH、温度40℃における水蒸気透過度が3.5g/m2・day・20μm以下であることを特徴とする優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルム。
- 前記高結晶化樹脂が、アイソタクチックペンダット分率(mmmm)94.0%以上であることを特徴とする請求項1記載の優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルム。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みが1μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルム。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度パラメータがCP(M//)⊥=0.8以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の優れた酸素ガスバリア性及び防湿性を有する多層樹脂フィルム。
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