JP2004074448A - 酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価で、かつ、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性が良好な二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層が積層されてなり、かつ相対湿度85%の雰囲気下での酸素透過度が1000ミリリットル/m2・day・MPa以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層が積層されてなり、かつ相対湿度85%の雰囲気下での酸素透過度が1000ミリリットル/m2・day・MPa以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法、特に包装用、さらには食品包装用フィルムとして好適な酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、燃焼したときに塩化水素ガスを発生せずに、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性に優れた酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲食品、医薬品、化学薬品、日用雑貨品等の種々の物品を充填包装する包装用材料として各種樹脂フィルムが用いられており、例えばポリプロピレンフィルムは加工性、透明性、耐熱性など優れた特性を有しており、汎用されている。しかしながら、食品、医薬品など酸素によってその品質が劣化する物品の包装用材料には、これら被包装物の品質を保護・保存するために高い酸素ガスバリア性(酸素遮断性)が要求されており、十分な酸素ガスバリア性を有していないポリプロピレンフィルムでは適用が難しい。
【0003】
そこで、酸素ガスバリア性を付与する手段として、酸素ガスバリア性を有する材料をコーティングすることが行われている。その一つとして、ポリ塩化ビニリテン系樹脂(以下「PVDC」と略記することがある。)をフィルムにコーティングしたPVDCコートフィルムがあり、吸湿性がほとんどなく、高湿度下でも良好な酸素ガスバリア性を有することから、現在大量に使用されている。
【0004】
しかしながら、PVDCコートフィルムは塩素を含有することから、燃焼により、有毒な塩化水素ガス、ダイオキシンを発生し、地球環境を汚染する点で問題になってきた。そこで、塩素を使わない素材による酸素ガスバリア性フィルムが強く要望されており、開発検討がなされている。
【0005】
そのような酸素ガスバリア性が高い素材としては、ポリビニルアルコール樹脂(以下「PVA」と略記することがある。)、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(以下「EVOH」と略記することがある。)がよく知られている。このような樹脂をコートしたフィルムは、低湿度下では非常に優れた酸素ガスバリア性を示すが、吸湿性が大きいため、相対湿度が上昇するにつれ酸素ガスバリア性が低下し、実用性に乏しいと考えられていた。
【0006】
また、特開平3−30944号公報には「PVA系樹脂のコーティング液に膨潤性を有するコロイド性合水層状ケイ酸塩化合物を添加する方法」が、特許2789705号公報には「膨潤性を有するコロイド性含水層状ケイ酸塩化合物及び分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種により変性されたポリビニルアルコール」が開示されている。しかしながら、これらを用いたフィルムは、いずれも高湿下での酸素ガスバリア性は優れているが、コスト高になる問題がある。
【0007】
従って、現状では、高湿度下での酸素ガスバリア性が十分でないことや、高コストであることから、PVDCコートフィルムを代替できる実用的なフィルムはまだ得られていないのが現状である。また、これらのフィルムは、包装袋にするためにシーラントとラミネートされて使用されるが、そのシーラントとの接着性も十分でないことも問題になっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはこれらの現状を踏まえ、PVDCコート二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの代替として、容易に入手可能な素材としてPVAを選択し、PVAの問題点である、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性を改良することについて鋭意検討した結果、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを基材フィルムとし特定のポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子とを用いて、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性を大きく改善できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、安価で、かつ、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性が良好な酸素ガスバリア性フィルム、及び、容易に入手可能な素材から低コストで優れた酸素ガスバリア性を有するフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層が積層されてなり、かつ相対湿度85%の雰囲気下での酸素透過度が1000ミリリットル/m2・day・MPa以下であることを特徴とする。
【0011】
この場合、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)との混合重量比を、(A)/(B)=95.0/5.0〜99.5/0.5とすることができる。
【0012】
また、この場合、ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度パラメータをCP(M//)⊥=0.8以上とすることができる。
【0013】
ここで、結晶化度パラメータとは、赤外偏光ATR法(全反射測定法)における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)であって、具体的にはこの結晶化度パラメータは、ポリビニルアルコール系樹脂の吸収帯を利用したもので、1095cm−1付近の吸収強度に対する1140cm−1付近の吸収強度の比を意味する。
【0014】
また、この場合、ポリビニルアルコール系樹脂層の層厚みを1μm以下とし、不定形シリカの粒径を層厚みより小さくすることができる。
【0015】
さらにまた、この場合、接着剤層を、酸変性ポリオレフィンからなる層とすることができる。
【0016】
上記の構成からなる本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、容易に入手することができる素材から得られ、かつ、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性が良好である。
【0017】
また、本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法は、少なくとも一方の面に接着剤層が積層された未延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを一方向に延伸した後、該接着剤層の表面に重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、次いで前記延伸方向と直角方向に延伸することを特徴とする。
【0018】
上記の構成からなる本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法は、容易に入手可能な素材から低コストで優れた酸素ガスバリア性を有するフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、公知の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであり、その原料、混合比率などは特に限定されない。例えば、ポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、ポリプロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等のα−オレフィンから選ばれる1種又は2種以上とのランダム共重合体やブロック共重合体等、或いはこれらの重合体を二種以上混合した混合体によるものであってもよい。また、物性改質を目的として酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤等、公知の添加剤が添加されていてもよく、例えば石油樹脂やテルペン樹脂などが添加されていてもよい。
【0021】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、機械強度、透明性等、所望の目的に応じて任意の膜厚のものを使用することができる。特に限定されないが、通常は10〜250μmであることが推奨され、包装材料として用いる場合は15〜60μmであることが望ましい。
【0022】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、或いは二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0023】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムにおいては、このような二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を積層するのに、接着剤層を介することが必要である。接着剤層がないと、二軸延伸プロピレン系樹脂フィルム層とポリビニルアルコール系樹脂層との接着力が弱くなってしまう。
【0024】
このような接着剤層は、二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムとポリビニルアルコール系樹脂を接着するものであればよいが、酸変性ポリオレフィンを含むものが好ましい。例えば、ポリオレフィン系重合体を(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィンを含むものが推奨され、特に0.01〜5モル%のマレイン酸又は無水マレイン酸をオレフィン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体を含むものを好適に用いることができる。
【0025】
また、接着剤層の厚みは特に限定されないが、接着性、コストの観点からも接着剤層の厚みは0.5〜5μmとすることが望ましい。また、接着剤層には目的に応じて帯電防止剤等の任意の添加剤が添加されていてもよい。
【0026】
本発明においては、前記の二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介し、重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層が積層されている。ポリビニルアルコール系樹脂層は、(A)のポリビニルアルコール系樹脂のみでは、シーラント接着性が不十分であり、(B)の不定形シリカ粒子のみでは、層の形成が不可能であり、高湿下での酸素ガスバリア性が不十分である。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)の混合重量比は、(A)/(B)=95.0/5.0〜99.5/0.5であるのが好ましい。
【0027】
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂(A)の重合度と鹸化度は、目的とする酸素ガスバリア性フィルムの特性、特に酸素ガスバリア性及びフィルム製造時のPVA水溶液の粘度及びコート後のコート層の延伸性から定めることができる。延伸性については、重合度の高い方が結晶化速度が遅く、延伸性が良好である。しかし、重合度が高すぎると、水溶液粘度が高くゲル化しやすいことから、コーティングすることが困難となる。従って、重合度はコート層の延伸性の点から200以上であり、コーティングの作業性から2600以下であることが必要であり、好ましくは500〜2000である。鹸化度については、90.0%未満では高湿度下での必要な酸素ガスバリア性が得られず、99.7%を越えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすく、工業生産には向かない。従って、鹸化度は90.0〜99.7%であることが必要であり、好ましくは93.0〜99.0%である。
【0028】
一方、不定形シリカ粒子(B)は、ポリビニルアルコール系樹脂(A)との混和性から親水性不定形シリカ粒子であるのが好ましく、ケイ酸ナトリウムと酸との反応や、四塩化ケイ素の分解などの公知の方法により製造することができる。
【0029】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)を混合したポリビニルアルコール系樹脂層は、偏向ATRスペクトルによって得られる結晶化度パラメータCP(M//)⊥が0.8以上であることが好ましい。CP(M//)⊥の値が0.8以上であれば、高湿度下であっても特に優れた酸素ガスバリア性を発揮することができる。
【0030】
本発明において結晶化度パラメータは、酸素ガスバリア性フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を赤外偏光ATR法(全反射測定法)によって測定した値であり、詳細には赤外偏光ATR法における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)である。なお、lRスペクトルによってポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度を評価する場合、通常1140cm−1付近の吸収強度で評価するが、赤外偏光ATR法によるスペクトル吸収強度は、試料の測定面積、厚み及び表面状態の影響を強く受けるため、他の吸収強度との相対強度によって評価することが好ましい。そこで、本発明における結晶化度パラメータは、1140cm−1付近の吸収強度と1095cm−1付近の吸収強度との相対強度とした。結晶化度パラメータCP(M//)⊥は高いほど、より優れた酸素ガスバリア性が得られるため、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上、最も好ましくは1.9以上である。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子の混合物の積層方法としては、特にコーティング法が好ましい。コーティングの方法は限定するものではないが、使用するコーティング液の塗布量と粘度により、最適な方法を選択すればよく、リバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法などを採用することができる。
【0032】
コーティング時の乾燥、熱処理の条件は塗布厚み、装置の設定条件にもよるが、乾燥工程を別に設けずに直ちに直角方向の延伸工程に送入し、延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましい。このような場合、通常80〜170℃程度で行う。なお、必要であれば、ポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子の混合物からなるポリビニルアルコール系樹脂層を形成させる前にポリプロピレン系樹脂フィルムにコロナ放電処理、その他の表面活性化処理や公知のアンカー処理剤を用いてアンカー処理を施してもよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂層中に静電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
【0033】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚み及び必要とする酸素ガスバリア性によって異なるが、酸素ガスバリア性を発揮させる最小限の厚みがよく、通常は乾燥厚みで1μm以下であることが、透明性、取り扱い性、経済性の点で好ましい。
【0034】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子の混合物からなるポリビニルアルコール系樹脂層の上にシーラントと呼ぶヒートシール性樹脂層を形成して包装材料として使用することが好ましい。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。
【0035】
ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂などを使用できる。通常、ヒートシール性樹脂層を形成する樹脂も塩素含有樹脂でないものが、焼却処理時の環境問題の点から好ましい。
【0036】
本発明により、安価でかつ、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性が優れ、さらに焼却排ガス中にダイオキシン、塩化水素ガスを含まず、近年問題とされている環境保全に対して有効であるフィルムを提供できる。
【0037】
そして、本発明の酸素ガスバリア性フィルムは高湿度下でも優れた酸素ガスバリア性を有し、また、優れたシーラント接着性を有するので、その特性を生かして種々の分野に用いることができ、特に、包装用の分野、例えば食品包装用フィルム等に好適に用いることができる。
【0038】
【実施例】
次に、本発明を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお液中の濃度表示は、特に断らない限り重量基準であり、特性値評価は以下の方法により行った。
【0039】
(1)酸素透過度
酸素透過度は、モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」を使用し、23℃、相対湿度85%にコントロールした雰囲気下、測定時間は30分で実施した。酸素透過度の単位は、ミリリットル/m2・day・MPaで示した。
【0040】
(2)ラミネート強度(シーラント接着性)
ラミネート強度は、15mm幅のラミネートフィルムを常温で90度剥離したときの強度で示した。
【0041】
(3)結晶化度パラメータ
Bio−Rad社製FT−IR(FTS−60A/896)にATR測定用付属装置(Perkin−Elmer社製)、偏光子、及び対称形のエッジを有するInternal Reflection Element(Ge、入射角45度、厚み2mm×長さ50mm×幅20mm)を取り付けたATR装置を用いて赤外偏光ATR法によって各試験片(長さ45mm×幅17mm)の結晶化度を測定した。
【0042】
なお、Internal Reflection Elementの中央部(幅12mm)のみに赤外光が入射するように端部の赤外光を遮断した。
【0043】
試験片は、長さ方向をフィルムの幅方向(流れ方向に対し直角方向)にとり、ポリビニルアルコール系樹脂層を該Internal Reflection Elementに密着させて、試験片の反射面に対し垂直偏光の光を照射して測定した。得られたスペクトルをSpectrum(M//)⊥とする。
【0044】
得られた偏光ATRスペクトルにおいて、1140cm−1付近の吸収と1095cm−1付近の吸収の吸光度を求める。このとき、偏光ATRスペクトルの1140cm−1付近のピークの高波数側の谷部と1095cm−1付近のピークの低波数側の谷部の二点を結んだ線をべースラインとし、ベースラインから吸収帯のピークまでの高さをポリビニルアルコール系樹脂層吸収帯の吸光度とする。1140cm−1付近のピークの吸光度をA1140、1095cm−1付近のピークの吸光度をA1095とする。明確なピークが観察されない場合は、1140cm−1、1095cm−1の位置での吸光度をA1140、A1095とした。
【0045】
Spectrum(M//)⊥のスペクトルに対し、A1095に対するA1140の比(A1140/A1095)を求めた。この値を結晶化度パラメータとし、CP(M//)⊥で示す。
【0046】
(実施例1)
(コート液の調製)
イソプロピルアルコール7%を含有する水溶液900gを攪拌しながら、その水溶液にポリビニルアルコール系樹脂(鹸化度98.5モル%、重合度1700)の粉末97gを徐々に投入した。約80℃に加熱し完全に溶解させた後、40℃まで冷却した。その後、不定形シリカ粒子(粒径0.5μm)を固形分で3g添加した。
【0047】
(フィルムヘのコーティングと評価)
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを形成するための基層としてポリプロピレン系樹脂97重量%に極性基を実質的に含まない石油樹脂(エスコレッツE5300:トーエネックス社製)3重量%混合した樹脂からなる層、接着剤層としては酸変性ポリオレフィンを使用した。これらを基層/接着剤層=19/1(重量比)の割合で樹脂温度260℃になるように2層状態でTダイから共押出しして、温度25℃のキャスティングロールにてキャスティング後、縦方向に4倍延伸し、厚み180μmのフィルムを得た。次に、得られた積層フィルムの接着剤層面上にリバースロールコーティング法にて前記コート液を塗布後、横方向に9倍延伸し、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面に接着剤層を介して厚み0.7μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成した。得られた酸素ガスバリア性フィルムの酸素透過度、結晶化度パラメータを測定した。
【0048】
次に、このフィルムのコート面側に、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤(東洋モートン製:商品名=アドコート)を3g/m2塗布した後、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み20μm、東洋紡績社製:P1128)のコロナ放電処理面と張り合わせ、40℃で72時間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムにつき、ラミネート強度を評価した。
【0049】
(実施例2、3、比較例4、5)
ポリビニルアルコール系樹脂(A)の重合度を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し評価を行った。
【0050】
(実施例4、5、比較例6、7)
ポリビニルアルコール系樹脂(A)の鹸化度を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し評価を行った。
【0051】
(実施例6)
ポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)の混合比を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し、評価を行った。
【0052】
(比較例1)
接着剤層を基層に積層せず、基層だけのフィルムに直接前記コート液をコーティングした以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し、評価を行った。
【0053】
(比較例2)
コート層を、ポリビニルアルコール系樹脂(A)(鹸化度98.5モル%、重合度1000)のみで調整したコート液を用いて形成した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し、評価を行った。
【0054】
(比較例3)
厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムのコロナ放電処理面にアンカー処理剤として、イソシアネート系接着剤を乾燥後コート量で1g/m2となるようにグラビアコートした。アンカー層上に、実施例1で用いたと同じコート液をグラビアコートし、140℃で乾燥し、酸素ガスバリア性フィルムを得た。
【0055】
次に、このフィルムのコート面側に、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤(東洋モートン製:商品名=アドコート)を3g/m2塗布した後、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み20μm、東洋紡績社製:P1128)のコロナ放電処理面と張り合わせ、40℃で72時間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムにつき、ラミネート強度を評価した。
【0056】
表1に、上記の実施例、比較例のコート組成、評価結果を示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムによれば、容易に入手することができる素材から得られ、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性に優れており、極めて実用的である。
【0059】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法によれば、容易に入手可能な素材から低コストで優れた高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性を有するフィルムを製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法、特に包装用、さらには食品包装用フィルムとして好適な酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、燃焼したときに塩化水素ガスを発生せずに、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性に優れた酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲食品、医薬品、化学薬品、日用雑貨品等の種々の物品を充填包装する包装用材料として各種樹脂フィルムが用いられており、例えばポリプロピレンフィルムは加工性、透明性、耐熱性など優れた特性を有しており、汎用されている。しかしながら、食品、医薬品など酸素によってその品質が劣化する物品の包装用材料には、これら被包装物の品質を保護・保存するために高い酸素ガスバリア性(酸素遮断性)が要求されており、十分な酸素ガスバリア性を有していないポリプロピレンフィルムでは適用が難しい。
【0003】
そこで、酸素ガスバリア性を付与する手段として、酸素ガスバリア性を有する材料をコーティングすることが行われている。その一つとして、ポリ塩化ビニリテン系樹脂(以下「PVDC」と略記することがある。)をフィルムにコーティングしたPVDCコートフィルムがあり、吸湿性がほとんどなく、高湿度下でも良好な酸素ガスバリア性を有することから、現在大量に使用されている。
【0004】
しかしながら、PVDCコートフィルムは塩素を含有することから、燃焼により、有毒な塩化水素ガス、ダイオキシンを発生し、地球環境を汚染する点で問題になってきた。そこで、塩素を使わない素材による酸素ガスバリア性フィルムが強く要望されており、開発検討がなされている。
【0005】
そのような酸素ガスバリア性が高い素材としては、ポリビニルアルコール樹脂(以下「PVA」と略記することがある。)、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(以下「EVOH」と略記することがある。)がよく知られている。このような樹脂をコートしたフィルムは、低湿度下では非常に優れた酸素ガスバリア性を示すが、吸湿性が大きいため、相対湿度が上昇するにつれ酸素ガスバリア性が低下し、実用性に乏しいと考えられていた。
【0006】
また、特開平3−30944号公報には「PVA系樹脂のコーティング液に膨潤性を有するコロイド性合水層状ケイ酸塩化合物を添加する方法」が、特許2789705号公報には「膨潤性を有するコロイド性含水層状ケイ酸塩化合物及び分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種により変性されたポリビニルアルコール」が開示されている。しかしながら、これらを用いたフィルムは、いずれも高湿下での酸素ガスバリア性は優れているが、コスト高になる問題がある。
【0007】
従って、現状では、高湿度下での酸素ガスバリア性が十分でないことや、高コストであることから、PVDCコートフィルムを代替できる実用的なフィルムはまだ得られていないのが現状である。また、これらのフィルムは、包装袋にするためにシーラントとラミネートされて使用されるが、そのシーラントとの接着性も十分でないことも問題になっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはこれらの現状を踏まえ、PVDCコート二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの代替として、容易に入手可能な素材としてPVAを選択し、PVAの問題点である、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性を改良することについて鋭意検討した結果、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを基材フィルムとし特定のポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子とを用いて、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性を大きく改善できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、安価で、かつ、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性が良好な酸素ガスバリア性フィルム、及び、容易に入手可能な素材から低コストで優れた酸素ガスバリア性を有するフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層が積層されてなり、かつ相対湿度85%の雰囲気下での酸素透過度が1000ミリリットル/m2・day・MPa以下であることを特徴とする。
【0011】
この場合、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)との混合重量比を、(A)/(B)=95.0/5.0〜99.5/0.5とすることができる。
【0012】
また、この場合、ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度パラメータをCP(M//)⊥=0.8以上とすることができる。
【0013】
ここで、結晶化度パラメータとは、赤外偏光ATR法(全反射測定法)における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)であって、具体的にはこの結晶化度パラメータは、ポリビニルアルコール系樹脂の吸収帯を利用したもので、1095cm−1付近の吸収強度に対する1140cm−1付近の吸収強度の比を意味する。
【0014】
また、この場合、ポリビニルアルコール系樹脂層の層厚みを1μm以下とし、不定形シリカの粒径を層厚みより小さくすることができる。
【0015】
さらにまた、この場合、接着剤層を、酸変性ポリオレフィンからなる層とすることができる。
【0016】
上記の構成からなる本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、容易に入手することができる素材から得られ、かつ、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性が良好である。
【0017】
また、本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法は、少なくとも一方の面に接着剤層が積層された未延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを一方向に延伸した後、該接着剤層の表面に重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、次いで前記延伸方向と直角方向に延伸することを特徴とする。
【0018】
上記の構成からなる本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法は、容易に入手可能な素材から低コストで優れた酸素ガスバリア性を有するフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、公知の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであり、その原料、混合比率などは特に限定されない。例えば、ポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、ポリプロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等のα−オレフィンから選ばれる1種又は2種以上とのランダム共重合体やブロック共重合体等、或いはこれらの重合体を二種以上混合した混合体によるものであってもよい。また、物性改質を目的として酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤等、公知の添加剤が添加されていてもよく、例えば石油樹脂やテルペン樹脂などが添加されていてもよい。
【0021】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、機械強度、透明性等、所望の目的に応じて任意の膜厚のものを使用することができる。特に限定されないが、通常は10〜250μmであることが推奨され、包装材料として用いる場合は15〜60μmであることが望ましい。
【0022】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、或いは二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0023】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムにおいては、このような二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を積層するのに、接着剤層を介することが必要である。接着剤層がないと、二軸延伸プロピレン系樹脂フィルム層とポリビニルアルコール系樹脂層との接着力が弱くなってしまう。
【0024】
このような接着剤層は、二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムとポリビニルアルコール系樹脂を接着するものであればよいが、酸変性ポリオレフィンを含むものが好ましい。例えば、ポリオレフィン系重合体を(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィンを含むものが推奨され、特に0.01〜5モル%のマレイン酸又は無水マレイン酸をオレフィン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体を含むものを好適に用いることができる。
【0025】
また、接着剤層の厚みは特に限定されないが、接着性、コストの観点からも接着剤層の厚みは0.5〜5μmとすることが望ましい。また、接着剤層には目的に応じて帯電防止剤等の任意の添加剤が添加されていてもよい。
【0026】
本発明においては、前記の二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介し、重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層が積層されている。ポリビニルアルコール系樹脂層は、(A)のポリビニルアルコール系樹脂のみでは、シーラント接着性が不十分であり、(B)の不定形シリカ粒子のみでは、層の形成が不可能であり、高湿下での酸素ガスバリア性が不十分である。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)の混合重量比は、(A)/(B)=95.0/5.0〜99.5/0.5であるのが好ましい。
【0027】
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂(A)の重合度と鹸化度は、目的とする酸素ガスバリア性フィルムの特性、特に酸素ガスバリア性及びフィルム製造時のPVA水溶液の粘度及びコート後のコート層の延伸性から定めることができる。延伸性については、重合度の高い方が結晶化速度が遅く、延伸性が良好である。しかし、重合度が高すぎると、水溶液粘度が高くゲル化しやすいことから、コーティングすることが困難となる。従って、重合度はコート層の延伸性の点から200以上であり、コーティングの作業性から2600以下であることが必要であり、好ましくは500〜2000である。鹸化度については、90.0%未満では高湿度下での必要な酸素ガスバリア性が得られず、99.7%を越えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすく、工業生産には向かない。従って、鹸化度は90.0〜99.7%であることが必要であり、好ましくは93.0〜99.0%である。
【0028】
一方、不定形シリカ粒子(B)は、ポリビニルアルコール系樹脂(A)との混和性から親水性不定形シリカ粒子であるのが好ましく、ケイ酸ナトリウムと酸との反応や、四塩化ケイ素の分解などの公知の方法により製造することができる。
【0029】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)を混合したポリビニルアルコール系樹脂層は、偏向ATRスペクトルによって得られる結晶化度パラメータCP(M//)⊥が0.8以上であることが好ましい。CP(M//)⊥の値が0.8以上であれば、高湿度下であっても特に優れた酸素ガスバリア性を発揮することができる。
【0030】
本発明において結晶化度パラメータは、酸素ガスバリア性フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を赤外偏光ATR法(全反射測定法)によって測定した値であり、詳細には赤外偏光ATR法における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)である。なお、lRスペクトルによってポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度を評価する場合、通常1140cm−1付近の吸収強度で評価するが、赤外偏光ATR法によるスペクトル吸収強度は、試料の測定面積、厚み及び表面状態の影響を強く受けるため、他の吸収強度との相対強度によって評価することが好ましい。そこで、本発明における結晶化度パラメータは、1140cm−1付近の吸収強度と1095cm−1付近の吸収強度との相対強度とした。結晶化度パラメータCP(M//)⊥は高いほど、より優れた酸素ガスバリア性が得られるため、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上、最も好ましくは1.9以上である。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子の混合物の積層方法としては、特にコーティング法が好ましい。コーティングの方法は限定するものではないが、使用するコーティング液の塗布量と粘度により、最適な方法を選択すればよく、リバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法などを採用することができる。
【0032】
コーティング時の乾燥、熱処理の条件は塗布厚み、装置の設定条件にもよるが、乾燥工程を別に設けずに直ちに直角方向の延伸工程に送入し、延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましい。このような場合、通常80〜170℃程度で行う。なお、必要であれば、ポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子の混合物からなるポリビニルアルコール系樹脂層を形成させる前にポリプロピレン系樹脂フィルムにコロナ放電処理、その他の表面活性化処理や公知のアンカー処理剤を用いてアンカー処理を施してもよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂層中に静電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
【0033】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚み及び必要とする酸素ガスバリア性によって異なるが、酸素ガスバリア性を発揮させる最小限の厚みがよく、通常は乾燥厚みで1μm以下であることが、透明性、取り扱い性、経済性の点で好ましい。
【0034】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂と不定形シリカ粒子の混合物からなるポリビニルアルコール系樹脂層の上にシーラントと呼ぶヒートシール性樹脂層を形成して包装材料として使用することが好ましい。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。
【0035】
ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂などを使用できる。通常、ヒートシール性樹脂層を形成する樹脂も塩素含有樹脂でないものが、焼却処理時の環境問題の点から好ましい。
【0036】
本発明により、安価でかつ、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性が優れ、さらに焼却排ガス中にダイオキシン、塩化水素ガスを含まず、近年問題とされている環境保全に対して有効であるフィルムを提供できる。
【0037】
そして、本発明の酸素ガスバリア性フィルムは高湿度下でも優れた酸素ガスバリア性を有し、また、優れたシーラント接着性を有するので、その特性を生かして種々の分野に用いることができ、特に、包装用の分野、例えば食品包装用フィルム等に好適に用いることができる。
【0038】
【実施例】
次に、本発明を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお液中の濃度表示は、特に断らない限り重量基準であり、特性値評価は以下の方法により行った。
【0039】
(1)酸素透過度
酸素透過度は、モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」を使用し、23℃、相対湿度85%にコントロールした雰囲気下、測定時間は30分で実施した。酸素透過度の単位は、ミリリットル/m2・day・MPaで示した。
【0040】
(2)ラミネート強度(シーラント接着性)
ラミネート強度は、15mm幅のラミネートフィルムを常温で90度剥離したときの強度で示した。
【0041】
(3)結晶化度パラメータ
Bio−Rad社製FT−IR(FTS−60A/896)にATR測定用付属装置(Perkin−Elmer社製)、偏光子、及び対称形のエッジを有するInternal Reflection Element(Ge、入射角45度、厚み2mm×長さ50mm×幅20mm)を取り付けたATR装置を用いて赤外偏光ATR法によって各試験片(長さ45mm×幅17mm)の結晶化度を測定した。
【0042】
なお、Internal Reflection Elementの中央部(幅12mm)のみに赤外光が入射するように端部の赤外光を遮断した。
【0043】
試験片は、長さ方向をフィルムの幅方向(流れ方向に対し直角方向)にとり、ポリビニルアルコール系樹脂層を該Internal Reflection Elementに密着させて、試験片の反射面に対し垂直偏光の光を照射して測定した。得られたスペクトルをSpectrum(M//)⊥とする。
【0044】
得られた偏光ATRスペクトルにおいて、1140cm−1付近の吸収と1095cm−1付近の吸収の吸光度を求める。このとき、偏光ATRスペクトルの1140cm−1付近のピークの高波数側の谷部と1095cm−1付近のピークの低波数側の谷部の二点を結んだ線をべースラインとし、ベースラインから吸収帯のピークまでの高さをポリビニルアルコール系樹脂層吸収帯の吸光度とする。1140cm−1付近のピークの吸光度をA1140、1095cm−1付近のピークの吸光度をA1095とする。明確なピークが観察されない場合は、1140cm−1、1095cm−1の位置での吸光度をA1140、A1095とした。
【0045】
Spectrum(M//)⊥のスペクトルに対し、A1095に対するA1140の比(A1140/A1095)を求めた。この値を結晶化度パラメータとし、CP(M//)⊥で示す。
【0046】
(実施例1)
(コート液の調製)
イソプロピルアルコール7%を含有する水溶液900gを攪拌しながら、その水溶液にポリビニルアルコール系樹脂(鹸化度98.5モル%、重合度1700)の粉末97gを徐々に投入した。約80℃に加熱し完全に溶解させた後、40℃まで冷却した。その後、不定形シリカ粒子(粒径0.5μm)を固形分で3g添加した。
【0047】
(フィルムヘのコーティングと評価)
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを形成するための基層としてポリプロピレン系樹脂97重量%に極性基を実質的に含まない石油樹脂(エスコレッツE5300:トーエネックス社製)3重量%混合した樹脂からなる層、接着剤層としては酸変性ポリオレフィンを使用した。これらを基層/接着剤層=19/1(重量比)の割合で樹脂温度260℃になるように2層状態でTダイから共押出しして、温度25℃のキャスティングロールにてキャスティング後、縦方向に4倍延伸し、厚み180μmのフィルムを得た。次に、得られた積層フィルムの接着剤層面上にリバースロールコーティング法にて前記コート液を塗布後、横方向に9倍延伸し、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面に接着剤層を介して厚み0.7μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成した。得られた酸素ガスバリア性フィルムの酸素透過度、結晶化度パラメータを測定した。
【0048】
次に、このフィルムのコート面側に、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤(東洋モートン製:商品名=アドコート)を3g/m2塗布した後、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み20μm、東洋紡績社製:P1128)のコロナ放電処理面と張り合わせ、40℃で72時間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムにつき、ラミネート強度を評価した。
【0049】
(実施例2、3、比較例4、5)
ポリビニルアルコール系樹脂(A)の重合度を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し評価を行った。
【0050】
(実施例4、5、比較例6、7)
ポリビニルアルコール系樹脂(A)の鹸化度を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し評価を行った。
【0051】
(実施例6)
ポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)の混合比を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し、評価を行った。
【0052】
(比較例1)
接着剤層を基層に積層せず、基層だけのフィルムに直接前記コート液をコーティングした以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し、評価を行った。
【0053】
(比較例2)
コート層を、ポリビニルアルコール系樹脂(A)(鹸化度98.5モル%、重合度1000)のみで調整したコート液を用いて形成した以外は、実施例1と同様の方法で、酸素ガスバリア性フィルム及びラミネートフィルムを作製し、評価を行った。
【0054】
(比較例3)
厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムのコロナ放電処理面にアンカー処理剤として、イソシアネート系接着剤を乾燥後コート量で1g/m2となるようにグラビアコートした。アンカー層上に、実施例1で用いたと同じコート液をグラビアコートし、140℃で乾燥し、酸素ガスバリア性フィルムを得た。
【0055】
次に、このフィルムのコート面側に、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤(東洋モートン製:商品名=アドコート)を3g/m2塗布した後、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み20μm、東洋紡績社製:P1128)のコロナ放電処理面と張り合わせ、40℃で72時間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムにつき、ラミネート強度を評価した。
【0056】
表1に、上記の実施例、比較例のコート組成、評価結果を示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムによれば、容易に入手することができる素材から得られ、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性に優れており、極めて実用的である。
【0059】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法によれば、容易に入手可能な素材から低コストで優れた高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性を有するフィルムを製造することができる。
Claims (6)
- 二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して、重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層が積層されてなり、かつ相対湿度85%の雰囲気下での酸素透過度が1000ミリリットル/m2・day・MPa以下であることを特徴とする酸素ガスバリア性フィルム。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)との混合重量比が、(A)/(B)=95.0/5.0〜99.5/0.5であることを特徴とする請求項1記載の酸素ガスバリア性フィルム。
- ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化度パラメータがCP(M//)⊥=0.8以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の酸素ガスバリア性フィルム。
- ポリビニルアルコール系樹脂層の層厚みが1μm以下であり、不定形シリカの粒径が層厚みより小さいことを特徴とする請求項1、2又は3記載の酸素ガスバリア性フィルム。
- 接着剤層が、酸変性ポリオレフィンからなることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の酸素ガスバリア性フィルム。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法であって、少なくとも一方の面に接着剤層が積層された未延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを一方向に延伸した後、該接着剤層の表面に重合度200〜2600、鹸化度90.0〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と不定形シリカ粒子(B)とを混合したポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、次いで前記延伸方向と直角方向に延伸することを特徴とする酸素ガスバリア性フィルムの製造方法。
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CN100357374C (zh) * | 2004-04-12 | 2007-12-26 | 刘建林 | 一种不溶于水的改性聚乙烯醇涂布液及其制作工艺 |
WO2023025267A1 (zh) * | 2021-08-26 | 2023-03-02 | 康美包(苏州)有限公司 | 包装用阻隔层、片状复合层及其包装容器 |
-
2002
- 2002-08-12 JP JP2002234357A patent/JP2004074448A/ja active Pending
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