JP2004082106A - 浄化用鉄系粉末 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アトマイズ法によって得られる鉄合金粉又は鉄粉で浄化用鉄系粉末を構成する。前記鉄合金粉は、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上であり、Mn:0.3〜1.1%を含有する場合には、還元減量が0.1〜0.8%程度となるものである。Ni:0.2〜12%を含有する場合には、還元減量が0.1〜1.0%となるものである。鉄粉はNi含有粉と共に、混合粉又は部分合金化粉として使用されるものであり、鉄粉は、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上、還元減量が0.1〜1.0%である。前記Ni含有粉は、Ni含有量が70%以上、目開き45μmの篩を通過する割合が90%以上である。前記鉄合金粉及び鉄粉は、マルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化物で汚染された物質(特に土壌、地下水など)を浄化するのに有用な鉄系粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物は、半導体工場や金属加工工場における脱脂洗浄剤として、またドライクリーニングの洗浄剤として広く使用されている。しかしこれら有機塩素化合物は、過去より排出・投棄されることがあった。有機塩素化合物は自然界において分解を受けにくいため、土壌中及び地下水中に徐々に蓄積され、土壌や地下水を汚染し社会問題となっている。
【0003】
土壌中や地下水中の汚染物質を無害化する処理方法としては、汚染土壌を掘削除去しロータリーキルン等で燃焼除去する熱分解法、地下水中に溶解した汚染物質を真空ポンプによって吸引し回収除去するガス吸引法、地下水を汲み上げ抽出除去する揚水曝気法、微生物の汚染物質分解能を利用した微生物法などが知られている。
【0004】
しかし、熱分解法では土壌掘削に大がかりな設備が必要となり、熱処理後の土壌を埋め戻して再利用する場合には高コストとなる。ガス吸引法では、気化している汚染物質しか回収することができず、さらには回収後に汚染物質を分解処理する必要が生じる。揚水曝気でも水に溶解する汚染物質しか回収することができず、しかも回収後に汚染物質を分解する必要がある。微生物法では、土壌条件によっては適用することができない場合があり、さらには微生物による分解反応であるため、高濃度汚染の場合には他の方法に比べて処理期間が長くなったり、分解反応が途中までしか進行しないこともある。
【0005】
大がかりな設備や回収後の分解操作が不要であって安定して有機塩素化合物を無害化できる方法として、鉄粉を使用して有機塩素化合物を還元分解する方法が提案されている。この方法では、鉄粉が酸化されることによって発生する電子を利用して、有機塩素化合物を還元分解している。しかし本来、鉄粉による有機塩素化合物の分解効率はそれほど高くないため、実用化の為に種々の方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、難分解性ハロゲン化炭化水素を含有する被処理水と鉄粉を添加して振盪することによってハロゲン化炭化水素を分解するに際して、被処理水から予め溶存酸素を除去し、pH6.5〜9.5に調整しておくことを提案している。しかしこの方法では、溶存酸素の除去やpH調整などの複雑な操作が必要となるため、汚染現場での原位置処理に適用するのが困難である。
【0007】
特許文献2には、有機塩素化合物を含有する汚染水を、鉄や鋼のヤスリ屑に通すことによって分解・無害化するに際して、前記鉄や鋼のヤスリ屑を活性炭と混合しておき、この混合物層に汚染水を通すことを提案している。しかしこの方法では、高価な活性炭を使用する必要があるため、処理費用が高くなる。
【0008】
近年、鉄粉そのものの反応性を高め、汚染土壌・汚染水の前処理や活性炭などを必要としない方法が提案されている。例えば、特許文献3には、炭素含有量が0.1重量%以上であって、比表面積が500cm2/g以上である鉄粉と土壌とを混合し、土壌中の有機塩素系化合物を分解する方法が開示されている。前記比表面積が大きな鉄粉としては、鉄鉱石を還元することによって得られる鉄粉(海綿状鉱石還元鉄粉)が使用されている。しかしこの方法は、比表面積を小さくすると反応性が低下するため、海綿状鉱石還元鉄粉以外には実質的に使用することができない。
【0009】
また特許文献4は、金属鉄による有機ハロゲン化合物の分解反応が金属銅によって著しく促進されることに着目し、銅含有鉄粉を用いることを提案している。しかし前記銅は原料コストが高く、さらには銅含有鉄粉を製造する際には硫酸銅水溶液等の銅イオン溶液中に鉄粉を混合し、得られる沈殿物を回収するという煩雑な製造工程を必要とするため製造コストも高くなる。
【0010】
ところで鉄粉としては上述のような海綿状鉄粉の他、アトマイズ鉄粉も知られている。アトマイズ鉄粉とは、アトマイズ法によって溶鋼を粉砕した後(表面が黒く酸化されているため、黒粉と称される)、この黒粉を完全に還元して製造されるものであり(前記黒粉に対して、白粉と称される場合がある)、さらに表面にバインダーとしての樹脂をコートすることによって、粉末冶金の用途に利用されている。上述のような海綿状鉄粉ではなく、粉末冶金用鉄粉(アトマイズ鉄粉)を土壌浄化用途に利用する方法も提案されている。
【0011】
例えば、特許文献5は、Ni表面で生成する水素によって分解反応(含ハロゲン有機汚染物質の還元反応、金属の酸化反応)が促進されることに着目し、粉末冶金用鉄粉にNiを0.01〜4.0質量%含有させることを提案している。しかしこの公報は、表面に酸化物が形成されると浄化反応の反応性が低下するとしている。
【0012】
【特許文献1】
特公平2−49158号公報
【特許文献2】
特表平6−506631号公報
【特許文献3】
特開平11−235577号公報
【特許文献4】
特開2001−9475号公報
【特許文献5】
特開2002−20806号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、表面に酸化物が形成されていても有機ハロゲン化物を効率よく分解できる浄化用鉄系粉末を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、白粉よりも短いプロセスで製造できるにも拘わらず白粉と同程度以上の効率で有機ハロゲン化物を分解できる浄化用鉄系粉末、並びに前記鉄系粉末を使用した土壌又は地下水の浄化方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、表面に形成される酸化物がアトマイズ時に形成されるものであれば、前記特許文献5の示唆とは反対に、有機ハロゲン化物を効率よく分解できることを発見し、アトマイズ法によって得られる鉄粉(黒粉;マルテンサイト組織となっている)を有機ハロゲン化物に汚染された物質(土壌、地下水など)の浄化用途に使用できることを見出した。さらにアトマイズのときの酸化を極力防止した場合、得られる鉄粉(マルテンサイト組織となっている)は、該鉄粉を還元して得られる白粉(フェライト組織となっている)と同等以上の効率で有機ハロゲン化物を分解できることを見出し、本発明を完成した。これらの作用効果を得るためには、鉄粉がマルテンサイト組織(焼戻しマルテンサイト組織を含む)であることも必要である。
【0016】
より詳細に説明すると、本発明らは有機ハロゲン化物に汚染された物質(土壌、地下水など)の浄化用途に黒粉(鉄合金粉、鉄粉など)を有効利用できることを見出した。前記黒粉は、アトマイズ法によって調製された粉であり、通常、H2による還元減量が0.15%以上となる程度の酸化被膜が表面に形成されている。この黒粉は、表面に酸化物が残存している限り(H2による還元減量が0.15%以上である限り)、部分的に還元されていてもよい。これら黒粉及びその部分還元物は、表面の酸化物がアトマイズ時に形成されるものであるため、酸化物が残存していても有機ハロゲン化物を効率よく分解できる。なお黒粉はマルテンサイト組織であり、その部分還元物は焼戻しマルテンサイト組織となっている。
【0017】
また前記黒粉は、酸化を極力防止しながらアトマイズすることによって得られるもの(H2による還元減量は0.1%以上、0.15%未満程度)であってもよい。このような非酸化黒粉は、通常の黒粉を還元することによって得られる白粉と酸化被膜量(還元減量)は同程度であるものの、金属組織が異なるため(非酸化黒粉=マルテンサイト組織、白粉=フェライト組織)、白粉と同程度以上の効率で有機ハロゲン化物を分解することができる。
【0018】
以上をまとめると、表面の酸化物がアトマイズ時に形成されるものであることは、表面の酸化物が一旦白粉とした後に新たに形成されるものであることに比べて分解反応にとって有利であり、またマルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織であることはフェライト組織に比べて分解反応にとって有利であるといえる。
【0019】
すなわち本発明に係る浄化用鉄系粉末は、アトマイズ法によって調製された酸化被膜を有する鉄合金粉(Fe−Mn合金粉、Fe−Ni合金粉)又は鉄粉、或いはアトマイズ法によって還元することなく調製された鉄合金粉(Fe−Mn合金粉、Fe−Ni合金粉)又は鉄粉で構成されている点に要旨を有する。なお前記Fe−Mn合金粉は、少なくともMn:0.3〜1.1%(質量%の意。以下同じ)を含有し、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上であり、H2による還元減量が0.1〜0.8%となり、組織はマルテンサイト又は焼戻しマルテンサイトとなるものである。
【0020】
前記Fe−Ni合金粉は、少なくともNi:0.2〜12%を含有し、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上であり、H2による還元減量が0.1〜1.0%となり、組織はマルテンサイト又は焼戻しマルテンサイトとなるものである。
【0021】
前記鉄粉は、Ni含有粉と併用されるものであり、具体的には混合粉又は部分合金化粉とすることにより、浄化用鉄系粉末として使用される。前記鉄粉は、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上、H2による還元減量が0.1〜1.0%であり、組織はマルテンサイト又は焼戻しマルテンサイトであり、前記Ni含有粉は、Ni含有量が40%以上、目開き45μmの篩を通過する割合が90%以上である。なお前記Ni含有粉のH2による還元減量は、通常、0〜1.0%程度である。前記鉄粉と前記Ni含有粉の割合は、鉄粉/Ni含有粉=99.5/0.5〜80/20(質量比)であるのが望ましい。
【0022】
本発明には上記鉄系粉末を用いて有機ハロゲン化物に汚染された土壌又は地下水を浄化する方法も含まれる。
【0023】
なお以下、本明細書において用語「黒粉」とは、アトマイズ法によって調製された鉄粉又は鉄合金粉を意味し、通常の白粉(フェライト組織の粉)を含まない限り、部分的に還元されたものは含む意味で使用する。また金属組織として実質的に黒粉である限り(すなわちマルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織である限り)、表面に酸化被膜が存在しないものも含む意味で使用する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる浄化用鉄系粉末は、有機ハロゲン化物の分解(脱ハロゲン化)に利用される。この脱ハロゲン作用について詳細に説明すると、以下の通りである。
【0025】
すなわち浄化用鉄系粉末の表面に有機ハロゲン化物が付着すると、鉄系粉末表面において金属側と有機ハロゲン化物側(環境側)の条件の差異によってアノード分極とカソード分極が生じる。このため電子の流れが生じ、アノード側では鉄の溶出(酸化)が起こって電子を放出し、カソード側では前記電子による還元作用によって脱ハロゲン反応(分解)が生じる。従ってトータルとして、下記式(1)に示す化学反応が起こる。
【0026】
Fe+H2O+RX → Fe2++OH−+RH+X− …(1)
(式中、Rは有機基を示し、Xは塩素原子などのハロゲン原子を示す)
そして前記機構より明らかなように、鉄系粉末表面が既に酸化されていると、脱ハロゲン化(分解)が困難となることが予測される。
【0027】
ところが本発明者らは、アトマイズ法(水アトマイズ法など)によって形成される酸化被膜であれば、上記分解反応の反応性を低下させないことを発見し、有機ハロゲン化物に汚染された物質(土壌、地下水など)の浄化用途に使用できることを見出した。従って本発明の第1のポイントはアトマイズ法によって得られる酸化鉄系粉(黒粉)を用いて浄化用鉄系粉末を構成する点にある。
【0028】
なお黒粉は、通常、不活性ガスなどの非酸化性ガス雰囲気下で酸化を避けながら、溶鋼に冷媒(水など)を吹き付けて微粉化することにより、製造されている。そして酸化を避けているにも拘わらず、冷媒や非酸化性ガス中に微量に存在している酸素の影響で、鉄粉表面に酸化被膜が形成される。この酸化被膜の量は、粉体粉末冶金協会標準(JSPM 標準 3−63)に準拠して黒粉をH2で還元し、還元後の減量(還元減量)を測定することによって評価できる(以下、H2ロスと称する場合もある)。非酸化性ガス雰囲気下で形成される黒粉のH2ロスは黒粉の成分に依存するものの、通常、約0.15〜約1%程度である(正確には、上限は後述の合金種によって異なる)。従って本発明は、そもそもはH2ロスが約0.15〜約1%程度の黒粉を有効利用する発明であるといえる。
【0029】
本発明では、前記黒粉として鉄合金粉(Fe−Mn合金粉、Fe−Ni合金粉)、又は鉄粉を使用する。前記鉄合金粉はそのままで浄化用鉄系粉末として使用でき、前記鉄粉はNi含有粉と組み合わせて混合粉又は部分合金化粉とすることによって浄化用鉄系粉末として使用する。なお前記鉄合金粉及び鉄粉は、表面に酸化被膜が形成されていない状態での反応性がもともと低いと、黒粉の状態で利用することがそもそも困難となる。従って黒粉として有効利用できる鉄合金粉や鉄粉は、ある程度の範囲に限定される。以下、Fe−Mn合金粉を使用する場合、Fe−Ni合金粉を使用する場合、鉄粉をNi含有粉と組み合わせて混合粉又は部分合金化粉にして使用する場合に分けて説明する。
【0030】
(1)Fe−Mn合金粉
Fe−Mn合金粉は、少なくともMnを含有する鉄合金粉である。Mnは、その標準電極電位がEo=−1.185VであってFeの標準電極電位(Eo=−0.894V)よりも低いため、電位差による金属腐食反応(酸化反応)を促進し、有機ハロゲン化物の分解反応(還元反応)を促進する点で有利である。Mnが少なすぎると、黒粉で使用するときに十分な反応性が得られないため、Mnの含有量は0.3%以上、好ましくは0.4%以上、さらに好ましくは0.45%以上とする。一方、MnはFeよりも酸化され易いため、Mnの含有量が多すぎると、通常の条件で黒粉を製造したときに酸化被膜が多くなり過ぎ(H2ロスが大きくなりすぎ)、十分な反応性が得られなくなる。Mn量の上限は、1.1%、好ましくは1.0%、さらに好ましくは0.95%とする。
【0031】
Fe−Mn合金粉の粒径が大きすぎる場合も、単位重量あたりの表面積が少なくなるため、黒粉で使用するときに十分な反応性が得られない。従って本発明では、目開き300μmの篩を通過する割合が、90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上(100%を含む)となる鉄合金粉を使用する。なお最も粒径が大きなものでも、通常、その粒径は600μm以下程度である。
【0032】
前記Fe−Mn合金粉(黒粉)は、通常の条件に従ってアトマイズ法によって製造されるものであり、H2ロスは0.15%以上(好ましくは0.18%以上、さらに好ましくは0.2%以上、特に0.3%以上、例えば0.4%以上)、0.8%以下(好ましくは0.75%以下)程度となるものである。なおH2ロスが前記値を外れる場合には、シール条件を改善してもよく、部分的に還元してもよい。
【0033】
Fe−Mn合金粉(黒粉)は、アトマイズままである場合にはマルテンサイト組織となっており、部分還元されている場合には焼戻しマルテンサイト組織となっている。マルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織であることも分解反応に有利に作用する。
【0034】
また黒粉(部分還元黒粉を含む)は、互いに適宜混合して使用してもよく、必要に応じて白粉と混合して浄化用鉄系粉末としてもよい。黒粉(部分還元黒粉を含む)と白粉の割合は、例えば、前者/後者=100/0〜10/90程度(質量比)、好ましくは100/0〜40/60程度(質量比)、さらに好ましくは100/0〜80/20程度(質量比)である。
【0035】
Fe−Mn合金粉は、Niを含有していてもよく、後述するNi含有粉と混合してもよい。
【0036】
上記のようなFe−Mn合金粉を使用すると、黒粉を実質的に還元しなくても(すなわち白粉としなくても)、浄化用途に使用することができる。
【0037】
(2)Fe−Ni合金粉
Fe−Ni合金粉は、少なくともNiを含有する鉄合金粉である。Niは、その標準電極電位がEo=−0.25Vと高いため、金属腐食反応性(酸化反応性)の点では不十分であるものの、触媒作用を有するため有機ハロゲン化物の分解反応(還元反応)を促進する。すなわちアノード側では、(A)Fe+2H2O→Fe2++2OH−+H2、及び(B)Fe+1/2O2+H2O→Fe2++2OH−の2種類の反応が起こっており、前記反応(A)で発生するH2によって有機ハロゲン化物が還元される際にNiは触媒として機能する。Ni量が少なすぎると、黒粉で使用するときに十分な反応性が得られないため、Niの含有量は0.2%以上、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上とする。一方、Niの含有量が多くなるほど、通常の条件で黒粉を製造したときに酸化被膜が多くなる(H2ロスが大きくなる)傾向があるため、Ni量の上限は、12%、好ましくは10%、さらに好ましくは8%とする。
【0038】
Fe−Ni合金粉においても、上記Fe−Mn合金粉と同様に粒径が小さいのが望ましく、目開き300μmの篩を通過する割合が、90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上(100%を含む)となる合金粉を使用する。なお最も粒径が大きなものでも、通常、その粒径は600μm以下程度である。
【0039】
Fe−Ni合金粉(黒粉)も、上記Fe−Mn合金粉と同様、通常の条件に従ってアトマイズ法によって製造されるものである。なおFe−Ni合金粉の場合は、上記Fe−Mn合金粉よりもH2ロスが大きくてもよく、0.15%以上(好ましくは0.18%以上、さらに好ましくは0.2%以上、特に0.3%以上、例えば0.4%以上)、1.0%以下(好ましくは0.95%以下、さらに好ましくは0.90%以下)程度である。なお通常の条件で製造してもH2ロスが前記値を外れる場合には、シール条件を改善してもよく、部分的に還元してもよい。
【0040】
Fe−Ni合金粉(黒粉)も、アトマイズままである場合にはマルテンサイト組織となっており、部分還元されている場合には焼戻しマルテンサイト組織となっている。マルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織であることも分解反応に有利に作用する。
【0041】
また黒粉(部分還元黒粉を含む)は、互いに適宜混合して使用してもよく、必要に応じて白粉と混合して浄化用鉄系粉末としてもよい。黒粉(部分還元黒粉を含む)と白粉の割合は、前記Fe−Mn合金粉の場合と同程度である。
【0042】
Fe−Ni合金粉は、Mnを含有していてもよく、後述するNi含有粉と混合してもよい。
【0043】
上記のようなFe−Ni合金粉を使用すると、黒粉を実質的に還元しなくても(すなわち白粉としなくても)、浄化用途に使用することができる。
【0044】
(3)混合粉又は部分合金化粉
本発明の混合粉は鉄粉とこの鉄粉よりも微少なNi含有粉とを混合したものであり、部分合金化粉は鉄粉の表面に微少なNi含有粉(以下、Ni系微粉と称する場合もある)を付着させた後、部分的に合金化させたものである。微少なNi含有粉で反応性を高めることにより、前記鉄粉を黒粉で使用しても有機ハロゲン化物を十分に分解(還元)することができる。
【0045】
鉄粉も、上記Fe−Mn合金粉等と同様に粒径が小さいのが望ましく、目開き300μmの篩を通過する割合が、90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上(100%を含む)となる鉄粉を使用する。なお最も粒径が大きなものでも、通常、その粒径は600μm以下程度である。
【0046】
前記鉄粉(黒粉)も、上記Fe−Mn合金粉等と同様、通常の条件に従ってアトマイズ法によって製造されるものであり、H2ロスは0.15%以上(好ましくは0.18%以上、さらに好ましくは0.2%以上、特に0.3%以上、例えば0.4%以上)、1.0%以下(好ましくは0.95%以下、さらに好ましくは0.90%以下)程度である。なお通常の条件で製造してもH2ロスが前記値を外れる場合には、シール条件を改善してもよく、部分的に還元してもよい。
【0047】
鉄粉(黒粉)も、アトマイズままである場合にはマルテンサイト組織となっており、部分還元されている場合には焼戻しマルテンサイト組織となっている。マルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織であることも分解反応に有利に作用する。
【0048】
また黒粉(部分還元黒粉を含む)は、互いに適宜混合して使用してもよく、必要に応じて白粉と混合して浄化用鉄系粉末としてもよい。黒粉(部分還元黒粉を含む)と白粉の割合は、前記Fe−Mn合金粉の場合と同程度である。
【0049】
なお前記鉄粉は、Mn及びNiを含有していてもよいが、上記Fe−Mn合金粉よりもMn含有量が少なく、上記Fe−Ni合金粉よりもNi含有量が少ないものである。
【0050】
前記Ni含有粉は、Niの純度が低くても有機ハロゲン化物を分解(還元)することができるものの、Ni含有量が少なすぎると分解効率が低くなる。従ってNi含有量は、40%以上、好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上(100%を含む)である。なお残部は実質的にFeであり、微量の他の成分(C,Mnなど)、不可避的不純物(P,Sなど)、及びその他の成分を含有していてもよい。
【0051】
また前記Ni含有粉は、目開き45μmの篩を通過する割合が、90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上(100%を含む)となるものである。粒径が大きすぎると、鉄粉を黒粉として使用したときに有機ハロゲン化物を十分に分解(還元)することができなくなる。なおNi含有粉の平均粒径は、通常、1〜15μm程度(好ましくは3〜13μm程度)である。
【0052】
前記Ni含有粉は、超高圧アトマイズ法、カーボニル法などによって製造することができる。このようにして得られるNi含有粉のH2ロスは、例えば、1.0%以下、好ましくは0.9%以下、さらに好ましくは0.85%以下(0%を含む)程度である。
【0053】
前記鉄粉と前記Ni含有粉の割合(鉄粉/Ni含有粉)は、例えば、99.5/0.5〜80/20(質量比)程度、好ましくは99/1〜85/15(質量比)程度、さらに好ましくは98/2〜90/10(質量比)程度である。Ni含有粉の割合が大きいほど、有機ハロゲン化物の分解効率を高めることができる。
【0054】
なお前記鉄粉は、製造の簡便性を考慮すると、Ni含有粉と部分合金化するよりも混合するのが望ましい。
【0055】
上述した黒粉(Fe−Mn合金粉、Fe−Ni合金粉、鉄粉)は、それぞれの必須成分以外に、C、Si、P、Sなどを含有していてもよく、本発明に悪影響を与えない範囲で他の成分を含有していてもよい。またこれら黒粉の見掛密度(嵩密度)は、通常、2.8〜4g/cm3程度である。
【0056】
本発明の鉄系粉末は、表面の酸化被膜がアトマイズ時に形成されるものであるため、表面に酸化物が存在していても有機ハロゲン化物を分解(還元)することができる。
【0057】
さらに上記鉄系粉末において、その構成成分である黒粉(Fe−Mn合金粉、Fe−Ni合金粉、鉄粉など;いずれも部分還元黒粉を含む)は、組織的に黒粉である限り(すなわちマルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織である限り)、酸化被膜が実質的に存在していなくてもよい(本明細書において、非酸化黒粉と称する場合がある)。非酸化黒粉は、アトマイズ時のシール条件を通常よりも極めて厳しくすることによって、例えば、水やN2中の酸素を極限まで除去することによって製造することができる。非酸化黒粉のH2ロスは、例えば、0.1以上(好ましくは0.12以上、さらに好ましくは0.13以上)、0.15未満程度である。非酸化黒粉は、還元工程が省略されている点で白粉よりも製造プロセスが短くなっているだけでなく、マルテンサイト組織(又は焼戻しマルテンサイト組織)であることが有利に働くため、白粉と同程度のH2ロスであっても、白粉と同程度以上の効率で有機ハロゲン化物を分解(還元)できる。特にFe−Ni合金粉、鉄粉などの非酸化黒粉は、白粉よりも有機ハロゲン化物を効率よく分解できる。
【0058】
なお非酸化性黒粉の詳細な態様は、Fe−Mn合金粉、Fe−Ni合金粉、鉄粉のいずれに分類されるかに応じて設定でき、H2ロスの範囲を除いては上述した酸化被膜を有する黒粉の場合と同様である。
【0059】
本発明の鉄系粉末によって分解できる前記有機ハロゲン化物としては、例えば、トリクロロエチレン、ジクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、ダイオキシンなどが挙げられる。
【0060】
本発明の鉄系粉末は、有機ハロゲン化物によって汚染された物質を浄化するのに有用である。例えば、有機ハロゲン化物によって汚染された土壌と混合することにより、又は有機ハロゲン化物によって汚染された地下水を混合又は透過させることにより、これら土壌及び地下水を浄化することができる。そのため大規模な処理装置が不要となり、汚染現場(原位置)で処理することもできる。
【0061】
前記浄化処理(土壌浄化処理、地下水浄化処理など)に際しては、他の浄化方法(例えば、微生物法など)と組み合わせてもよい。
【0062】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0063】
なお各実験例では、下記方法に従って試料の物性を測定した。
【0064】
[還元減量(H2ロス)]
粉体粉末冶金協会標準(JSPM 標準 3−63)に準拠して測定する。すなわち各実験例で得られる鉄粉、鉄合金粉、又はNi系微粉をH2で還元し、下記式に基づいて算出する。
【0065】
還元減量(質量%)=([還元前の試料の質量]−[還元後の試料の質量])/[還元前の試料の質量]×100
[分解反応性]
純粋に窒素をバブリングして溶存酸素を追い出した後、トリクロロエチレン(TCE)を加えてモデル汚水を調製する(TCE濃度:10mg/L)。このモデル汚水100mlと、各実験例で得られた鉄系粉末10gを容量125mlのバイアル瓶に封入した後、温度25℃に維持した室内にて、水平型振盪機(100ストローク/分)で144時間振盪する。振盪後のトリクロロエチレンの濃度をガスクロマトグラフ質量分析装置にて測定し、下記式に基づいてTCE残存率を算出する。
【0066】
TCE残存率(質量%)=[振盪後のTCE濃度]/[振盪前のTCE濃度]×100
実験例1
Mnを含む溶鋼を溶製した後、この溶鋼を水圧9.8〜12.7MPa(100〜130kgf/cm2)の条件で水アトマイズ(アトマイズ雰囲気:N2雰囲気)することによってFe−Mn合金粉(黒粉;なおマルテンサイト組織となっている)を製造した。得られたFe−Mn合金粉(黒粉)を脱水・乾燥し、篩網で篩い分けすることによって表1に示す浄化用鉄系粉末を製造した。
【0067】
得られた浄化用鉄系粉末の分解反応性を試験した。結果を表1に示す。なおNo.9の場合のみアトマイズ時の雰囲気シールを弱くした。
【0068】
【表1】
【0069】
No.1〜8より明らかなように、水アトマイズ条件下では、N2雰囲気でシールしても表面が酸化される(H2ロス=約0.5〜1%程度)。そしてNo.1〜2より明らかなように、水アトマイズ時に形成される酸化物であれば、Mn含有量及び粒度分布を所定の範囲内に制御することにより、トリクロロエチレン(TCE)を効率よく分解することができる。
【0070】
一方、No.3〜4ではMn含有量が少なすぎるため、No.5〜6ではMn含有量が過剰となってH2ロスが大きくなりすぎるため、No.7〜8ではFe−Mn合金粉の粒度が大きすぎるため、No.9では雰囲気シールを弱くすることによってH2ロスが大きくなりすぎたため、いずれもTCEを効率よく分解することができない。
【0071】
実験例2
Niを含む溶鋼を溶製した後、実験例1と同様にしてFe−Ni合金粉(黒粉;なおマルテンサイト組織となっている)を製造し、実験例1と同様に処理して浄化用鉄系粉末とした後、分解反応性を試験した。結果を表2に示す。なおNo.18の場合のみアトマイズ時の雰囲気シールを弱くした。
【0072】
【表2】
【0073】
No.10〜17より明らかなように、水アトマイズ条件下では、N2雰囲気でシールしても表面が酸化される(H2ロス=約0.5〜1%程度)。そしてNo.10〜14より明らかなように、水アトマイズ時に形成される酸化物であれば、Ni含有量及び粒度分布が所定の範囲内に制御することにより、トリクロロエチレン(TCE)を効率よく分解することができる。
【0074】
一方、No.15ではNi含有量が少なすぎるため、No.16〜17ではFe−Ni合金粉の粒度が大きすぎるため、No.18では雰囲気シールを弱くすることによってH2ロスが大きくなりすぎたため、いずれもTCEを効率よく分解することができない。
【0075】
実験例3
Niを実質的に含まず、Mn含有量が少ない溶鋼を溶製した後、実験例1と同様にして鉄粉を製造し、脱水・乾燥した後、篩網で篩い分けすることによって表3に示す鉄粉2(黒粉;なおマルテンサイト組織となっている)を得た。またこの鉄粉2を還元することによって鉄粉1(白粉;なおフェライト組織となっている)を得た。
【0076】
一方、Niベースの溶鋼を溶製した後、この溶鋼を水圧68.6〜88.3MPa(700〜900kgf/cm2)の条件で水アトマイズ(アトマイズ雰囲気:N2雰囲気)することによってNi系粉を製造した。このNi系粉を脱水・乾燥し、篩網で篩い分けすることによって表4に示す混合用Ni系微粉を製造した(なお表4中、「Ni系微粉5」はカーボニル法による)。
【0077】
表3に示す鉄粉と表4に示す混合用Ni系微粉とを混合することによって浄化用鉄系粉末を調製した後、実験例1と同様にして分解反応性を試験した。結果を表5に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
表5より明らかなように、還元鉄粉(白粉;鉄粉1)を使用すればTCEを効率よく分解することができる(No.19〜23)。そして鉄粉1に表面に付着する酸化物が水アトマイズ時の酸化物であれば(黒粉;鉄粉2)、酸化物が形成されていても、還元鉄粉の場合と同様にTCEを効率よく分解することができる(No.24〜28)。
【0082】
なお黒粉(鉄粉2)を使用する場合であっても、併用するNi系微粉中のNiの含有量が少ないと(Ni系微粉6)、またNi系微粉の粒径が大きすぎると(Ni系微粉7〜9)、TCEを効率よく分解するのは困難である(No.29〜32)。
【0083】
実験例4
N2雰囲気中の酸素濃度を適宜変更する以外は、実験例1と同様にして表6に示すFe−Mn合金粉(黒粉;マルテンサイト組織となっている)1〜3を調製した。なおFe−Mn合金粉3が通常の黒粉であり、Fe−Mn合金粉1〜2はN2雰囲気中の酸素濃度を減らすことによって得られた黒粉である。
【0084】
また前記Fe−Mn合金粉(黒粉)を通常の条件(H2を50体積%含むN2雰囲気;還元温度=900〜950℃;均熱時間=30分)で還元することにより、表6に示すFe−Mn合金粉4(白粉;フェライト組織となっている)を調製した。
【0085】
前記Fe−Mn合金粉1〜4を表7に示す割合で混合した後(浄化用鉄系粉末)、この浄化用鉄系粉末の分解反応性を試験した。結果を表7に示す。
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
表7より明らかなように、Fe−Mn合金系の黒粉(No.34〜35)は、表面に付着する酸化物が水アトマイズ時のものであるため、H2ロスが0.15以上と大きいにも拘わらずFe−Mn合金系の白粉(No.36)と同等のレベルでTCEを効率よく分解することができる。またH2ロスを0.15未満に抑えた非酸化黒粉(No.33)は、白粉よりも短いプロセスで製造でき、しかもマルテンサイト組織であるため白粉(No.36)と同等のレベルでTCEを効率よく分解することができる。さらに前記黒粉を白粉と併用しても、効率よくTCEを分解することができる(No.37〜39)。
【0089】
実験例5
N2雰囲気中の酸素濃度を適宜変更する以外は、実験例2と同様にして表8に示すFe−Ni合金粉(黒粉;マルテンサイト組織)1〜3を調製した。なおFe−Ni合金粉3が通常の黒粉であり、Fe−Ni合金粉1〜2はN2雰囲気中の酸素濃度を減らすことによって得られた黒粉である。
【0090】
また前記Fe−Ni合金粉(黒粉)を通常の条件(H2を50体積%含むN2雰囲気;還元温度=900〜950℃;均熱時間=30分)で還元することにより、表8に示すFe−Ni合金粉4(白粉;フェライト組織)を調製した。
【0091】
前記Fe−Ni合金粉1〜4を表9に示す割合で混合した後(浄化用鉄系粉末)、この浄化用鉄系粉末の分解反応性を試験した。結果を表9に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
表9より明らかなように、Fe−Ni合金系の黒粉(No.41〜42)は、表面に付着する酸化物が水アトマイズ時のものであるため、H2ロスが0.15以上と大きいにも拘わらずFe−Ni合金系の白粉(No.43)と同等のレベルでTCEを効率よく分解することができる。またH2ロスを0.15未満に抑えたNo.40の非酸化黒粉は、表面に付着する酸化物量(H2ロス)が白粉と同程度であるにも拘わらず、マルテンサイト組織であるため白粉(No.43)よりも効率よくTCEを分解することができる。さらに前記黒粉を白粉と併用しても、効率よくTCEを分解することができる(No.44〜46)。
【0095】
実験例6
N2雰囲気中の酸素濃度を適宜変更する以外は、実験例3と同様にして表10に示す鉄粉3〜5(マルテンサイト組織)を調製した。なお鉄粉5が通常の黒粉であり、鉄粉3〜4はN2雰囲気中の酸素濃度を減らすことによって得られた黒粉である。
【0096】
また前記鉄粉(黒粉)を通常の条件(H2を50体積%含むN2雰囲気;還元温度=900〜950℃;均熱時間=30分)で還元することにより、表10に示す鉄粉6(白粉;フェライト組織)を調製した。
【0097】
前記鉄粉3〜6を、実施例3のNi系微粉5と共に表11に示す割合で混合した後(浄化用鉄系粉末)、この浄化用鉄系粉末の分解反応性を試験した。結果を表11に示す。なお表11中、H2Loss、見掛密度、粒度分布は、いずれも、Ni系微粉5を添加する前の状態(すなわち鉄粉のみの状態)で測定したものである。
【0098】
【表10】
【0099】
【表11】
【0100】
表11より明らかなように、非合金系の黒粉(鉄粉;No.48〜49)は、表面に付着する酸化物が水アトマイズ時のものであるためH2ロスが0.15以上と大きいにも拘わらず、Ni系微粉と混合すれば、白粉とNi系微粉とを混合した場合(No.50)と同等のレベルでTCEを効率よく分解することができる。またH2ロスを0.15未満に抑えたNo.47の非酸化黒粉は、表面に付着する酸化物量(H2ロス)が白粉と同程度であるにも拘わらず、マルテンサイト組織であるため白粉(No.50)よりも効率よくTCEを分解することができる。さらに前記黒粉を白粉と併用しても、効率よくTCEを分解することができる(No.51〜53)。
【0101】
【発明の効果】
本発明では、鉄系粉末の表面に形成される酸化被膜として、アトマイズ時に形成される被膜を選択しているため、表面に酸化物が存在していても(すなわち酸化被膜を有する黒粉であっても)有機ハロゲン化物を分解(還元)することができる。そのため浄化用鉄系粉末を簡便に製造することができる。しかも非酸化黒粉を使用する場合には、白粉と同等以上の効率で有機ハロゲン化物を効率よく分解(還元)することができる。これらの効果には黒粉(部分還元黒粉、非酸化黒粉)がマルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組織であることが影響している。従って本発明によって、従来、有機ハロゲン化物を分解できないと考えられていた黒粉を有効利用することができるようになった。
Claims (5)
- アトマイズ法によって得られる鉄合金粉であって、少なくともMn:0.3〜1.1%(質量%の意。以下同じ)を含有し、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上であり、H2による還元減量が0.1〜0.8%であり、組織はマルテンサイト又は焼戻しマルテンサイトである鉄合金粉で構成されていることを特徴とする浄化用鉄系粉末。
- アトマイズ法によって得られる鉄合金粉であって、少なくともNi:0.2〜12%を含有し、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上であり、H2による還元減量が0.1〜1.0%であり、組織はマルテンサイト又は焼戻しマルテンサイトである鉄合金粉で構成されていることを特徴とする浄化用鉄系粉末。
- 鉄粉とNi含有粉とで構成される混合粉又は部分合金化粉であって、
前記鉄粉は、目開き300μmの篩を通過する割合が90%以上、H2による還元減量が0.1〜1.0%、組織はマルテンサイト又は焼戻しマルテンサイトであり、
前記Ni含有粉は、Ni含有量が40%以上、目開き45μmの篩を通過する割合が90%以上であることを特徴とする浄化用鉄系粉末。 - 前記Ni含有粉のH2による還元減量が0〜1.0%である請求項3に記載の浄化用鉄系粉末。
- 前記鉄粉と前記Ni含有粉の割合が、鉄粉/Ni含有粉=99.5/0.5〜80/20(質量比)である請求項3又は4に記載の浄化用鉄系粉末。
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