JP2004079916A - 半導体ウエハダイシング用粘着シート - Google Patents

半導体ウエハダイシング用粘着シート Download PDF

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Abstract

【課題】ウエハチップのピックアップ性に優れ、かつ、チップの汚損が低減した半導体ウエハダイシング用粘着シートの提供。
【解決手段】基材シート上に粘着層を積層してなる半導体ウエハ加工用粘着シートにおいて、該基材シートが熱可塑性樹脂(A)0〜50質量%と多層構造重合体粒子(B)100〜50質量%とからなる熱可塑性重合体(組成物)から得られ、該多層構造重合体粒子(B)がアクリル酸エステル及び多官能性単量体を含む単量体混合物の共重合によって形成されるゴム成分層(I)とメタクリル酸エステル及び任意成分としての他の単量体からなる単量体の重合によって形成される熱可塑性樹脂成分層(II)とを有し、(1)最外層を構成する熱可塑性樹脂成分の数平均分子量は30,000以下、(2)層(I)/層(II)の質量比は30/70〜90/10、(3)平均粒子径は150nm以下を満足する半導体ウエハダイシング用粘着シート。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハを細かく切断しウエハチップを製造する際(ダイシング工程)に用いる、均一拡張性およびウエハチップのピックアップ性に優れた半導体ウエハダイシング用粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハ加工において、半導体ウエハに粘着層を有するシートを貼り付けて、ウエハを切断(ダイシングという)した後、個々のウエハチップをピックアップし易くするためにシート全体を拡張している。従来、半導体ウエハダイシング用粘着シートの基材シートとしては、塩化ビニルシート(特開昭58−147644号公報、特開昭59−210965号公報)またはポリオレフィンシート(特開昭62−69640号公報,特開昭62−121781号公報、特開平1−249877号公報)が用いられている。
なお、以下に詳述する本発明の半導体ウエハダイシング用粘着シートを構成する基材シートのために用いられる多層構造重合体粒子は、その基本的構成について、例えば特開平11−292940号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塩化ビニルシートにおいては、最近の環境問題で焼却が難しいことや、塩化ビニルに含まれる金属化合物からなる安定剤や可塑剤などが移行して半導体ウエハの表面を汚損することに問題がある。また、ポリオレフィンシートにおいては、ダイシング後にシートを拡張する工程において、シートの拡張性が均一でなくウエハチップのピックアップ性に劣る問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を行った。その結果、特定の多層構造重合体粒子と熱可塑性樹脂からなる熱可塑性重合体組成物をシート化して得られる基材シート上に粘着層を積層して得られる半導体ウエハダイシング用シートが、焼却ガスの問題がなく、金属化合物からなる安定剤や可塑剤などが移行して半導体ウエハの表面を汚損する問題を解決し、かつシートの均一拡張性にも優れ半導体ウエハチップのピックアップ性が良好であることを見出した。
【0005】
本発明は、基材シート上に粘着剤層を積層してなる半導体ウエハダイシング用粘着シートにおいて、該基材シートが熱可塑性樹脂(A)0〜50質量%と多層構造重合体粒子(B)100〜50質量%とからなる熱可塑性重合体(組成物)から得られ、該多層構造重合体粒子(B)が
(1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
(2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
(3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
(4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
(5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
(6)平均粒子径が150nm以下である;
ことを特徴とする半導体ウエハダイシング用粘着シートに関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
上記本発明において、「熱可塑性重合体(組成物)」は熱可塑性重合体又は熱可塑性重合体組成物の意味である。
本発明で使用する熱可塑性樹脂(A)としては極性の高い樹脂が好適であり、具体例としてはエチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、エチレン−アクリル酸メチルコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、エチレン系アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、ABS、AES、AAS、ACS、MBS等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、他のアクリル系熱可塑性樹脂等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド類;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン等が挙げられる。これらは各単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0007】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(B)は、ゴム成分層(I)を内部に少なくとも1層有し、かつ熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外層として有する。本発明で使用する多層構造重合体粒子を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層で構成されていても4層以上で構成されていてもよい。2層構造の場合は、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の構成であり、3層構造の場合は、層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(II)(最外層)又は層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成であり、4層構造の場合には、例えば、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成を有することができる。これらの中でも、取扱い性に優れる点において、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の2層構造;又は層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)若しくは層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の3層構造が好ましい。
【0008】
また、層(I)と層(II)の総質量比は、(I)/(II)において30/70〜90/10の範囲内にあることが必要である。層(I)の割合がこの範囲より小さいと多層構造重合体粒子を成形して得られる基材シートにおける弾性回復性が不十分となり、一方層(I)の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため、他の成分(物性改善剤等)との混練及び成形が困難となる。なお、層(I)の総質量とは、多層構造重合体粒子中の層(I)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(I)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。同様に、層(II)の総質量とは、多層構造重合体粒子中の層(II)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(II)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。層(I)と層(II)の総質量比は、(I)/(II)において50/50〜90/10の範囲内にあることが好ましく、60/40〜90/10の範囲内にあることがより好ましい。
【0009】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(B)における層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。
【0010】
層(I)を形成するために用いられるアクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸とC〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC又はCの脂環式アルコールとのエステル;フェニルアクリレート等のアクリル酸とフェノール類とのエステル;ベンジルアクリレート等のアクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどが挙げられる。アクリル酸エステルは、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して50〜99.99質量%の範囲において、単独で又は2種以上混合して用いられる。アクリル酸エステルの量が50質量%より少ないと多層構造重合体粒子のゴム弾性が低下することになり、また、99.99質量%を超えると多層構造重合体粒子の構造が形成されなくなるので、いずれも好ましくない。
【0011】
層(I)を形成するために用いられる多官能性単量体は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記の不飽和モノカルボン酸とエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。なお、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリレート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。多官能性単量体は、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して0.01〜10質量%の範囲において、単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。多官能性単量体の量が、10質量%より多いと、多層構造重合体粒子がゴム弾性を示さなくなり、弾性回復性が不十分となるので好ましくない。また、多官能性単量体の量が0.01質量%より少ないと、層(I)が粒子構造として形成されなくなるので好ましくない。
【0012】
層(I)を形成するためには、アクリル酸エステル及び多官能性単量体以外に、アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体を併用することができる。該他の単官能性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のメタクリル酸とC〜C22の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸とC又はCの脂環式アルコールとのエステル;フェニルメタクリレート等のメタクリル酸とフェノール類とのエステル、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステルが代表的であるが、他にも、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。これらの単量体は、必要に応じて、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して49.99質量%以下の割合において、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記の他の単官能性単量体の割合が49.99質量%を超える場合は、多層構造重合体粒子のゴム弾性が不十分となるので好ましくない。
【0013】
本発明で使用する多層構造重合体粒子における層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%、好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは8〜99質量%、及びそれと共重合可能な他の単量体60〜0質量%、好ましくは40〜1質量%、さらに好ましくは20〜1質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される熱可塑性を有する重合体層である。メタクリル酸エステルの量が40質量%未満であると多層構造重合体粒子の成形性が不十分となる。
【0014】
層(II)を形成するために用いられるメタクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられ、好ましくはメチルメタクリレートである。
【0015】
層(II)を形成するために用いられる共重合可能な他の単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸とC〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC又はCの脂環式アルコールとのエステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体;前記例で示した多官能性単量体等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0016】
本発明で使用する多層構造重合体粒子においては、層(I)はゴム弾性を有する重合体成分から構成され、層(II)は熱可塑性を有する重合体成分から構成されるように、それぞれ、上記した単量体の種類及び使用割合の範囲内で適宜条件を選択すればよい。
【0017】
本発明で使用する多層構造重合体粒子においては、その中に含有される層(II)のうち少なくとも粒子の最外層を構成する共重合体の数平均分子量がGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法での測定に基づいて30,000以下であることが重要である。数平均分子量が30,000を超える場合、多層構造重合体粒子を成形して得た基材シートにおける弾性回復性が不十分となり、さらに溶融流動性が低下する場合もある。数平均分子量の下限については、必ずしも厳密な制限はないが、生産工程における多層構造重合体粒子の通過性の点からは、数平均分子量は1,000を下回らないことが好ましい。弾性回復性及び生産工程での通過性の両立の点からは、数平均分子量を3,000〜20,000の範囲内とすることが特に好ましい。
【0018】
本発明で使用する多層構造重合体粒子の平均粒子径は、150nm以下である。150nmより大きいと弾性回復性が不十分となる。また、溶融流動性が良くない場合もある。平均粒子径の下限値については特に限定されるものではないが、多層構造重合体粒子の所定の層構造を形成させやすい観点からは、平均粒子径は30nm以上であることが好ましい。平均粒子径はさらに好ましくは80〜120nmである。
【0019】
本発明で使用する多層構造重合体粒子は、特に物性面および製造の簡便性の点から最内部にゴム成分層(Ia)を有し、該最内部の外部表面を覆う状態で位置する隣接部にゴム成分層(Ib)を有し、かつ最外部に熱可塑性樹脂成分層(II)を有する3層構造の多層構造重合体粒子が好ましい。
層(Ia)及び(Ib)を形成するために用いられるアクリル酸エステル、多官能性単量体及び該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体としては、前述の層(I)を形成するために用いられる単量体を使用することができる。
【0020】
本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子を成形して得た基材シートにおいて、優れた弾性回復性と良好な柔軟性及び他の機械的物性とを両立させるには、単量体混合物(ia)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)と単量体混合物(ib)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)との差〔(ia)(単位:質量%)−(ib)(単位:質量%)又は(ib)(単位:質量%)−(ia)(単位:質量%)〕が3質量%以上の値となることが一般に好ましく、(ia)(単位:質量%)−(ib)(単位:質量%)が3質量%以上の値となることがより好ましい。
【0021】
本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子においては、層(Ia)及び層(Ib)がゴム弾性を有する重合体成分から構成され、層(II)が熱可塑性を有する重合体成分から構成されるように、それぞれ上記したような単量体の種類及び使用割合の範囲内で適宜条件を選択すればよい。
【0022】
本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、30/70〜90/10の範囲内である。層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より小さいと多層構造重合体粒子を成形して得られる基材シートにおける弾性回復性及び柔軟性が不十分となり、反対に層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため成形が困難となる。本発明の効果をより顕著なものとする目的においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、50/50〜90/10の範囲内であることが好ましく、60/40〜90/10の範囲内であることがより好ましい。
【0023】
また、本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子においては、ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比は、(Ia)/(Ib)において、5/95〜95/5、好ましくは20/80〜80/20の範囲内である。ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比が5/95〜95/5の範囲内である場合、一般に、優れた弾性回復性と適度な柔軟性及びこれ以外の機械的物性とを両立させることができる。
【0024】
なお、本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子は、最内部のゴム成分層(Ia)、その隣接部のゴム成分層(Ib)及び最外部の熱可塑性樹脂成分層(II)の3層を基本構成とするが、層(Ib)と層(II)との間に1つ以上の任意の重合体層が介在していてもよい。ただし、本発明の効果を特に顕著に発揮させる目的においては、ゴム成分層(Ia)、ゴム成分層(Ib)及び熱可塑性樹脂成分層(II)の質量の和が多層構造重合体粒子全体の質量に対して80%以上であることが好ましく、多層構造重合体粒子がゴム成分層(Ia)、ゴム成分層(Ib)及び熱可塑性樹脂成分層(II)のみから構成されることがより好ましい。
【0025】
本発明で使用する多層構造重合体粒子は、ゴム成分層を形成させるための重合反応工程と熱可塑性樹脂成分層を形成させるための重合反応工程とを所定の順序で行うことによって、中心部から外部に向かって順次層を形成させることからなる、少なくとも1つのゴム成分層を内部に有し、かつ少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分層を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子を製造するための公知の製造方法に準じて製造することができる。その際、以下の点に留意する。
【0026】
(1)ゴム成分層(I)を形成させるための重合反応工程(a)において、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)を共重合させること。
(2)熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程(b)において、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)を重合させること。
【0027】
(3)該重合反応工程(b)のうち、少なくとも、最外部の熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を単量体(ii)に対して、好ましくは0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用して重合反応を行うこと。
(4)全重合反応工程で使用する単量体混合物(i)の総質量と単量体(ii)の総質量との比を、単量体混合物(i)/単量体(ii)において30/70〜90/10の範囲内とすること。
(5)全ての重合反応工程が終了した時点における多層構造重合体粒子の平均粒子径が150nm以下となるように制御すること。
【0028】
さらに、本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子は、多層構造重合体粒子を製造するための公知の製造方法に準じ、ゴム層成分(Ia)を形成させるための重合反応操作、ゴム層成分(Ib)を形成させるための重合反応操作及び熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応操作を含む、所定の重合体層を形成させるための重合反応操作を所定の順序で行うことにより、中心部から外部に向かって順次層を形成させることによって製造することができる。その際、以下の点に留意する。
【0029】
(1)ゴム成分層(Ia)及び(Ib)をそれぞれ形成させるための重合反応操作(a)及び(b)において、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(ia)及び(ib)をそれぞれ共重合させること。
(2)単量体混合物(ia)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)と単量体混合物(ib)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)との差が3質量%以上となるよう設定すること。
(3)熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応操作(c)において、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)を重合させること。
(4)上記重合反応操作(c)において、層(II)を構成する重合体の数平均分子量が30,000以下となるように反応条件を制御すること。
(5)単量体混合物(ia)と単量体混合物(ib)の質量の和と単量体(ii)の質量との比が、〔(ia)+(ib)〕/(ii)において30/70〜90/10の範囲内となるよう設定すること。
(6)単量体混合物(ia)の質量と単量体混合物(ib)の質量との比が、(ia)/(ib)において5/95〜95/5の範囲内となるよう設定すること。
(7)すべての重合反応操作が終了した時点における多層構造重合体粒子の平均粒子径が150nm以下となるように制御すること。
【0030】
本発明で使用する多層構造重合体粒子を製造するための重合法については特に制限はなく、例えば、通常の多層構造重合体粒子を製造するための公知の重合法に準じて、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、又はこれらの組み合わせを採用することができる。
【0031】
例えば、乳化重合では公知の手段に従い、各層を形成させるための重合を行うことにより、多層構造重合体粒子を得ることができる。乳化重合の温度としては、必ずしも限定されないが一般的な範囲は0〜100℃である。ここで使用する乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸のアルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪アルコールの硫酸エステル塩;ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸等;ポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が挙げられ、これらは、1種類ないし2種類以上の組合せで用いられる。乳化重合で使用する重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が一般的である。ラジカル重合開始剤の具体例としては、過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を単独で用いることができる。また、ラジカル重合開始剤として、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、遷移金属塩等の還元剤との組合せによるレドックス系開始剤も使用することができる。
【0032】
上記のとおり、公知の乳化重合法に従って所定の単量体混合物の所定量を順次重合させることにより、所定の重合体層を、粒子の中心部から外部に向かって段階的に形成させることができるが、本発明の多層構造重合体粒子を製造するためには、少なくとも最外層を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を、その工程で使用する単量体(ii)に対して、好ましくは0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用する。通常の多層構造体粒子を製造する場合、最外部の熱可塑性樹脂成分層を形成させるための重合反応において使用される分子量調節剤の使用量は、一般に単量体に対して0〜0.3質量%程度であるが、このように0.4質量%未満の場合には、その層を構成する熱可塑性樹脂成分の数平均分子量が高くなり過ぎ、多層構造重合体粒子を成形して得られる基材シートの弾性回復性が不十分となり、さらに成形流動性が不十分となる場合もある。分子量調節剤の量は上記基準において高々10質量%あれば十分であり、それ以上の量を使用しても、もはやそれ以上の弾性回復性付与効果の向上はなく、むしろ多層構造重合体粒子における分子量調節剤の残存量が多くなるので望ましくない。分子量調節剤の量は、単量体(ii)に対して0.4〜5質量%の範囲内であるのが好ましく、0.6〜2質量%の範囲内であるのがより好ましい。
【0033】
分子量調節剤の具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ターピノーレン、ジペンテン、t−テルピネン及び少量の他の環状テルペン類よりなるテルペン混合物;クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好ましい。
【0034】
乳化重合によって得られる多層構造重合体粒子の平均粒子径は乳化剤の添加量等の重合条件によって影響されるので、それらの条件を適宜選択することによって、容易に最終的な多層構造重合体粒子の平均粒子径を150nm以下に制御することができる。
【0035】
乳化重合後、生成した多層構造重合体粒子の重合反応系からの分離取得も、公知の手法に従って行うことができ、例えば、酸析法、塩析法、スプレードライ法、凍結凝固法などを採用することができる。なお、分離取得された多層構造重合体粒子は、熱可塑性樹脂成分からなる最外層において粒子間相互で部分的に融着していても差し支えない。
【0036】
基材シートを構成する熱可塑性重合体(組成物)には、該重合体もしくは組成物の物性を改善するための種々の物性改善剤の1種又は2種以上を、所望に応じて、本発明の効果を損わない程度において、配合してもよい。かかる物性改善剤としては、特に制限はなく、例えば、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、滑剤等、フィラー(例えば、無機充填剤等)、他の合成樹脂(例えば他のアクリル系多層構造重合体)等が挙げられる。
【0037】
また本発明における、熱可塑性樹脂(A)と多層構造重合体粒子(B)の総質量比は、(A)/(B)において0/100〜50/50の範囲内であることが必要であり、5/95〜40/60の範囲内であることが好ましく、10/90〜30/70の範囲内であることがより好ましい。多層構造重合体粒子(B)の割合が50/50より小さいと、得られる半導体ウエハダイシング用シートの引張り特性および均一拡張性が不良となり、ウエハチップのピックアップ性が悪化する。
【0038】
熱可塑性重合体(組成物)から本発明における基材シートを製造するにあたっては、従来のシート製造法を用いることができる。具体的にはカレンダー法、Tダイ法、インフレーション法が挙げられる、加工温度としては、200〜240℃が好適である。
本発明の半導体ウエハダイシング用粘着シートにおける基材シートの厚さは、取扱い性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、一般に50〜300μm程度、好ましくは70〜200μm程度である。
【0039】
本発明の半導体ウエハダイシング用粘着シートにおける粘着層としては、特開昭62―69640号公報、特開2001−234136号公報に開示されているような従来の感圧性粘着剤又は特開昭60―196956号公報に開示されているような光硬化型感圧性粘着剤を用いることができる。
【0040】
従来の感圧性粘着剤の具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種の単独重合体もしくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルの2種以上の任意な相互割合での共重合体、又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体をベースポリマー(粘着剤の基本成分)とし、これに、通常、架橋剤を配合したアクリル系感圧性粘着剤が挙げられる。ここで共重合可能な他のモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアマイド、アクリロニトリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合わせて用い得る。共重合可能な他のモノマーの使用量は、モノマー総質量に対して50質量%未満とするのが接着性能上好ましい。架橋剤は粘着剤の凝集力を向上させるために用いられ、ポリイソシアネート化合物;例えばトリレンジイソシアネート、メチレンビスジフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;アルキルエーテル化メラミン化合物等を包含する。かかる架橋剤は単独でもしくは2種以上組合わせて用い得る。架橋剤の使用量はベースポリマーの組成や分子量などに応じて適宜選択できる。
【0041】
光硬化性型感圧性粘着剤の具体例としては、通常のゴム系感圧性粘着剤あるいはアクリル系感圧性粘着剤中に、分子中に少なくとも2個の光重合性炭素―炭素二重結合を有する低分子量化合物(光重合性化合物)及び光重合開始剤を配合してなる光硬化性型感圧性粘着剤組成物が挙げられる。
ゴム系感圧性粘着剤としては、上記のごとき架橋剤を配合していてもよい、天然ゴム、各種合成ゴムなどのゴム系ポリマーが挙げられる。アクリル系感圧性粘着剤としては上述のものが挙げられる。
【0042】
光重合性化合物は、その分子量が通常10000以下程度であるのがよく、より好ましくは、光照射による感圧性粘着層の三次元網状化が効率良くなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内の光重合性炭素―炭素二重結合の数が2〜6個のものを用いるのがよい。このような特に好ましい光重合性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。また、その他の光重合性化合物としては、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。光重合性化合物としては、上記の化合物のうちの1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用しても良く、その使用量はベースポリマー(上記ゴム系ポリマー又はアクリル系感圧性粘着剤におけるベースポリマー)100質量部に対して、1〜100質量部の範囲とするのが通常であり、5〜90質量部の範囲とするのが好ましく、10〜80質量部の範囲とするのがより好ましい。この使用量が1質量部より少ないと、感圧性粘着剤層の光照射による三次元網状化が不十分となり、ウエハチップに対する粘着力の低下の程度が小さすぎて好ましくない。また、この使用量が100質量部より多いと感圧性粘着剤層の可塑化が著しく半導体ウエハ切断時に必要な接着力が得られないため好ましくない。
【0043】
なお、光重合性化合物の使用に代えてもしくは使用と共に、上記のベースポリマーとして、例えば上記光重合性化合物に由来する光重合性炭素―炭素二重結合を分子内に持つベースポリマーを用いても良い。
【0044】
上記の光重合開始剤としては、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパンなどが挙げられ、これらのうち1種単独で使用しても2種混合で使用しても良い。重合開始剤の添加量としては、上記のベースポリマー100重量部に対して、0.005〜10質量部の範囲とするのが通常であり、0.1〜5質量部の範囲とするのが好ましい。この添加量が0.1質量部より少ないと、感圧性粘着剤の光照射による三次元網状化が不十分となり、ウエハチップに対する接着力の低下が小さすぎて好ましくない。また、この添加量が5質量部より多いとそれに見合う効果が得られないばかりか、ウエハチップの表面に光重合開始剤が残留するために好ましくない。なお、必要に応じてこの光重合開始剤とともにトリエチルアミン、テトラエチルペンタアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアミン化合物を光重合促進剤として併用しても良い。
【0045】
本発明において、前記粘着剤層の厚さ(乾燥後の厚さ)は特に限定されるものではないが、一般に5〜100μm程度であり、10〜40μm程度であるのが好ましく、5〜35μm程度であるのがより好ましい。本発明において、前記粘着剤層を前記基材シートに形成し、半導体ウエハダイシング用粘着シート製造するには、粘着剤を構成する成分をそのまま、又は適当は有機溶剤により溶液化した後、塗布又は散布等により基材上に塗布し、例えば80〜100℃、30秒〜10分程度の加熱処理等により乾燥させればよい。
【0046】
本発明の半導体ウエハダイシング用粘着シートを使用するには公知の方法を用いることができる。例えば、半導体ウエハダイシング用粘着シートを半導体ウエハに貼り付けて固定した後、回転丸刃で半導体ウエハをチップに切断し、前記ダイシング用粘着シートの基材シート側から紫外線及び/又は電子線を照射し、次いで専用治具を用いて前記ウエハダイシング用粘着シートを放射状に拡大してチップ間を一定間隔に広げた後、チップをニードル等で突き上げるとともに、真空コレット、エアピンセット等で吸引する方法によりピックアップすると同時にマウンティングする。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例の中の各測定値は以下の評価法に従った。
多層構造重合体粒子の平均粒子径は、重合完了後のラテックスから採取した試料を用いて、レーザー粒径解析装置PAR−III(大塚電子製)を用いて動的散乱法により測定し、キュムラント法により解析し求めた。
最外層を構成する重合体成分の数平均分子量としては、多層構造重合体粒子の試料を室温下にトルエン中で十分に攪拌した後、遠心分離して得られた溶液を用いてGPC法により測定した数平均分子量を、本発明において最外層を構成する重合体成分の数平均分子量とみなした。
【0048】
実施例および比較例でおこなった試験方法を以下に示す。
ピックアップ性
作製した半導体ウエハダイシング用粘着シート上にシリコンウエハを貼り付け4mm角にダイシングし、次に基材シート側から高圧水銀ランプ(40W/cm)で15cmの距離から20秒間光照射した。これをウエハ拡張装置(ヒューグルエレクトロニクス(株)製HS−1000型)で全体に20%拡張した。これをピックアップ装置に取り付け、下部より1mmφのニードルで約1mm突き上げ、上部より2mmφ真空吸引パイプで吸引した。この時ウエハチップが完全に吸引されシートから離れた数をピックアップ数とし、この時の不良個数によりピックアップ不良率を算出した。
【0049】
ウエハ汚損度
ウエハをシート上に貼り付け1時間後に剥離し、ウエハの貼付け面のくもりの有無を目視により判定した。
判定:○:くもり全くなし、△:くもり若干あり、×:くもり大
【0050】
拡張の均一性
前記ピックアップ性のテストにおいて、ダイシング工程、及び拡張工程後のチップの並びを目視により判定した。
Figure 2004079916
【0051】
多層構造重合体粒子(B)の製造例
窒素雰囲気下、攪拌翼、冷却管及び滴下ロートを装着した重合器に、蒸留水200質量部、乳化剤としてのネオペレックスF−25(花王製)0.6質量部、及び炭酸ナトリウム0.1質量部を加え、80℃に加熱して均一に溶解させた。次いで、同温度において、ペルオキソ二硫酸カリウム0.05質量部を加えた後、アクリル酸n−ブチル30質量部、メタクリル酸メチル13.5質量部、スチレン6.5質量部、メタクリル酸アリル0.2質量部、及び乳化剤としてのアデカコールCS−141E(旭電化製)0.25質量部からなる混合物を滴下ロートより1時間かけて滴下し、1層目を形成した。滴下終了後、同温度でさらに1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認した。
【0052】
次いで、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.025質量部を加えた後、アクリル酸n−ブチル20質量部、メタクリル酸メチル0.5質量部、スチレン4.5質量部、メタクリル酸アリル0.1質量部、及び乳化剤としてのアデカコールCS−141E(旭電化製)0.125質量部からなる混合物を滴下ロートより30分間かけて滴下し、2層目を形成した。滴下終了後さらに80℃で1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認した。
【0053】
さらに、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.025質量部を加えた後、メタクリル酸メチル23.75質量部、アクリル酸メチル1.25質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、及び乳化剤としてのアデカコールCS−141E(旭電化製)0.125質量部からなる混合物を滴下ロートより30分間かけて滴下し、3層目を形成した。滴下終了後さらに80℃で1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認し、重合を終了した。得られたラテックスにおける多層構造重合体粒子の平均粒子径は104nmであった。
【0054】
このラテックスを−20℃に24時間冷却して凝集させた後、凝集物を取り出し、40℃の温水で3回洗浄した。60℃で2日間減圧乾燥して、凝集粉末状の3層型多層構造重合体粒子(B−1)を得た。なお、最外層を構成する重合体成分の数平均分子量は、18,000であった。
【0055】
光硬化型粘着層組成物の調製例
アクリル酸ブチル100質量部、アクリロニトリル5質量部およびアクリル酸5質量部からなる配合組成物をトルエン中で共重合させて、数平均分子量350000のアクリル系共重合体を得た。この共重合体100質量部にポリイソシアネート化合物5質量部、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート15質量部及びα―ヒドリキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部を添加し混合して粘着剤組成物を調製した。
【0056】
実施例1
上記の製造例により得られた3層型多層構造重合体粒子を用いて、Tダイ押出機により100μmのシートを作製した。得られたシートの片面に上記調整例により得られた光硬化型粘着剤組成物を厚みが10μmとなるように塗工し、100℃5分間加熱して半導体ウエハダイシング用粘着シートを作製した。
実施例2
上記の製造例により得られた3層型多層構造重合体粒子80質量部とPMMA樹脂(クラレ製パラペットGF)20質量部からなる熱可塑性重合体組成物を用いて、Tダイ押出機により100μmのシートを作製した以外は、実施例1と同様にして半導体ウエハダイシング用粘着シートを作製した。
【0057】
比較例1
上記の製造例により得られた3層型多層構造重合体粒子40質量部とPMMA樹脂(クラレ製パラペットGF)60質量部からなる熱可塑性重合体組成物を用いて、Tダイ押出機により100μmのシートを作製した以外は、実施例1と同様にして半導体ウエハダイシング用粘着シートを作製した。
比較例2
ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対してDOP34質量部を含むポリ塩化ビニルシート(厚さ100μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして半導体ウエハダイシング用粘着シートを作製した。
【0058】
比較例3
エチレン−メチルメタクリレートコポリマー(住友化学工業(株)製アクリフトWK307)を用いてシート(厚さ100μm、)を作製した以外は、実施例1と同様にして半導体ウエハダイシング用粘着シートを作製した。
各種測定により得られた結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 2004079916
【0060】
上記表1から、実施例1及び2で得られた本発明に従う半導体ウエハダイシング用粘着シートは、シート均一拡張性に優れ、ウエハチップのピックアップ性に優れるだけでなく、ウエハチップに対する汚損度が低い。これに対して、熱可塑性樹脂と多層構造重合体粒子との配合割合が本発明の範囲外である比較例1と従来基材フィルムとして用られている塩化ビニルシート及びエチレンーメチルメタクリレートコポリマーを使用して作製した比較例2および3の半導体ウエハダイシング用粘着シートでは、ピックアップ不良率、シートの均一拡張性および汚損度のいずれかが劣っている。
【0061】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、熱可塑性樹脂と多層構造重合体粒子からなる熱可塑性重合体(組成物)をシート化して得られる基材シート上に粘着剤層を積層することにより、半導体ウエハのダイシング工程おいて、ウエハチップのピックアップ性に優れ、チップの汚損も低減した半導体ウエハダイシング用粘着シートが提供される。

Claims (5)

  1. 基材シート上に粘着剤層を積層してなる半導体ウエハダイシング用粘着シートにおいて、該基材シートが熱可塑性樹脂(A)0〜50質量%と多層構造重合体粒子(B)100〜50質量%とからなる熱可塑性重合体(組成物)から得られ、該多層構造重合体粒子(B)が
    (1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
    (2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
    (3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
    (4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
    (5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
    (6)平均粒子径が150nm以下である;
    ことを特徴とする半導体ウエハダイシング用粘着シート。
  2. 熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド類、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン及びポリウレタンから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の半導体ウエハダイシング用粘着シート。
  3. 粘着剤層が光硬化型感圧性粘着剤より構成される請求項1又は2記載の半導体ウエハダイシング用粘着シート。
  4. 多層構造重合体粒子(B)が最内部にゴム成分層(Ia)を有し、該最内部の外部表面を覆う状態で位置する隣接部にゴム成分層(Ib)を有し、かつ最外部に熱可塑性樹脂成分層(II)を有する3層構造の多層構造重合体粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウエハダイシング用粘着シート。
  5. 熱可塑性重合体(組成物)に物性改善剤を配合する請求項1〜4のいずれかに記載の半導体ウエハダイシング用粘着シート。
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