JP2004076663A - 水冷式内燃機関のシリンダヘッド - Google Patents

水冷式内燃機関のシリンダヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】砂中子によりウォータジャケットが形成されるように鋳造されたシリンダヘッドにおいて、砂中子の形状が複雑化することを防止または抑制して、シリンダヘッドの冷却性の向上を図ると共にシリンダヘッドの生産性の向上を図る。
【解決手段】水冷式内燃機関の鋳造されたシリンダヘッド2fは、砂中子を使用して形成されたウォータジャケットJcを有する。ウォータジャケットJcは、シリンダヘッド2の下壁30と上壁33との間に形成され、上壁33には、シリンダヘッド2の鋳造後に砂中子の砂を排出するための排出孔63bが設けられている。排出孔63bを閉塞するシーリングボルト72には、シリンダヘッド2の冷却性を向上させるために、冷却水の流れを燃焼室10が形成される下壁30に向けて偏向させるように、下壁30との間に間隙G1を形成してウォータジャケットJc内に突出する突出部73が設けられる。
【選択図】  図7

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水冷式内燃機関における鋳造されたシリンダヘッドの冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
水冷式内燃機関のシリンダヘッドには、シリンダヘッドにおいて熱負荷が大きい部分、例えば燃焼室壁の点火栓装着部の付近や排気ポート壁の冷却性を向上させるために、複雑な冷却水通路であるウォータジャケットが形成される。このため、通常、シリンダヘッドは、ウォータジャケットを形成するための砂中子を使用した鋳造により成形される。
【0003】
例えば、実開昭61−157144号公報に開示された多気筒内燃機関のシリンダヘッドでは、シリンダヘッド壁部およびシリンダ配列方向に直交する方向に延びる隔壁により、シリンダ毎にウォータジャケットが画成されて、その中央に点火栓が配置される。シリンダ毎に画成されたウォータジャケットには、排気ポート側に冷却水の入口が、また吸気ポート側に冷却水の出口が、それぞれ設けられる。また、シリンダヘッド壁部および隔壁には、冷却水の流通方向にほぼ直交する方向で点火栓に向かって突出する突出壁が設けられる。これにより、冷却水は、入口から出口に向かってシリンダ配列方向と直交する方向に流れる一方、その一部は、突出壁により点火栓の周囲に集まるように偏向されて流れるので、点火栓のまわりの冷却性が高められる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記公報に開示されたシリンダヘッドを鋳造により成形する場合、隔壁さらにはその隔壁に突出壁を形成する必要があるため、ウォータジャケットを形成するための砂中子の形状が複雑になって、砂中子の製作や、崩壊し易いことに起因して、その取扱いが一層困難になり、生産性が大きく低下する難点がある。また、ウォータジャケットを形成する壁であるシリンダヘッドの下壁の一部は、燃焼室壁ともなっているが、突出壁が設けられたことにより、突出壁の下壁近傍では、冷却水の流速が極めて小さいかまたは冷却水が澱む低流速領域が生じるので、この低流速領域では冷却水による熱の運搬が良好に行われないことになり、下壁の冷却性の点で改善の余地があった。そして、この低流速領域は、点火栓への水流の指向性を強めようとして突出壁の点火栓方向への突出度合いを大きくするほど広がるため、前記下壁の冷却性がさらに低下することになる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1ないし請求項5記載の発明は、砂中子によりウォータジャケットが形成されるように鋳造されたシリンダヘッドにおいて、砂中子の形状が複雑化することを防止または抑制して、シリンダヘッドの冷却性の向上を図ると共にシリンダヘッドの生産性の向上を図ることを目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、簡単な構造により、燃焼室壁を構成するシリンダヘッドの下壁の冷却性の向上を図ることを目的とし、請求項3記載の発明は、さらに、冷却制御手段の軽量化および冷却制御手段を通じての冷却水の放熱性の向上を図ることを目的とし、請求項4記載の発明は、さらに、隣接する燃焼室間での下壁の部分および隣接する燃焼室のうち冷却水の下流に位置する燃焼室の燃焼室壁の冷却性の向上を図ることを目的とし、請求項5記載の発明は、さらに、ウォータジャケットをクランク軸の回転軸線方向に延びる3つのジャケット部に分割して、シリンダヘッドを効率よく冷却することを可能とし、さらに燃焼室壁の冷却性の低下を防止または抑制することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、鋳造されたシリンダヘッドであって、そのウォータジャケットが鋳造後に排出孔を通じて排出される砂中子を使用して形成された水冷式内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記排出孔を閉塞する閉塞部材に、前記シリンダヘッドの冷却性を向上させるために前記ウォータジャケット内での冷却水の流れの方向や流速を制御する水流制御手段が設けられた水冷式内燃機関のシリンダヘッドである。
【0007】
これにより、シリンダヘッドの冷却性を向上させるためになされるウォータジャケット内での冷却水の流れの方向や流速の制御は、鋳造後に砂中子の砂を排出するための排出孔を閉塞する閉塞部材を利用して、シリンダヘッドに鋳造により一体成形されることなく、該閉塞部材に設けられた水流制御手段により行われる。
【0008】
この結果、請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、排出孔を閉塞する閉塞部材に、シリンダヘッドの冷却性を向上させるためにウォータジャケット内での冷却水の流れの方向や流速を制御する水流制御手段が設けられたことにより、砂中子の形状を複雑化することなく、ウォータジャケット内の冷却水を、シリンダヘッドの冷却性を向上させるための流れの方向や流速に制御することが可能となるので、冷却性を向上させたシリンダヘッドの鋳造による生産性が向上する。また、水流制御手段が設けられる閉塞部材は、排出孔を利用してシリンダヘッドに装着されるため、水流制御手段を保持するための保持部をシリンダヘッドに新たに形成する必要がないので、この点でもシリンダヘッドの生産性が向上する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記ウォータジャケットは、前記シリンダヘッドが結合されるシリンダブロックのシリンダ軸線方向で下壁と上壁との間に形成され、前記下壁の一部により燃焼室壁が構成され、前記水流制御手段は、冷却水の流れを前記下壁に向けて偏向させるように、前記下壁との間に間隙を形成して前記ウォータジャケット内に突出する突出部であるものである。
【0010】
これにより、冷却水の流れを偏向する突出部は、下壁との間に間隙を形成するので、突出部を設けたことによりウォータジャケット内の下壁の近傍に冷却水の流速が極めて小さいかまたは冷却水が澱む低流速領域が生じることが防止される。しかも、突出部により、冷却水が下壁に向かって流れるので、下壁近傍の冷却水の流速が増加して、下壁近傍での冷却水による熱の運搬が良好になる。
【0011】
この結果、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、ウォータジャケットは、シリンダヘッドの下壁と上壁との間に形成され、下壁の一部により燃焼室壁が構成され、水流制御手段は、冷却水の流れを下壁に向けて偏向させるように、下壁との間に間隙を形成してウォータジャケット内に突出する突出部であることにより、簡単な構造により、その一部が燃焼室壁を構成する下壁近傍での冷却水による熱の運搬が良好になって、シリンダヘッドの下壁の冷却性が向上する。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記閉塞部材は前記上壁に装着され、前記突出部は、上部で閉塞され、下端部で前記ウォータジャケットに開放する中空部を有する有底の筒状体であり、前記突出部の上部には、前記中空部内の空気を前記ウォータジャケット内に逃がす空気抜き孔が形成されたものである。
【0013】
これにより、閉塞部材が上壁に装着されることで、シリンダヘッドからの突出部の着脱が容易になり、中空部が形成されたことで突出部が軽量化される。しかも、中空部により突出部と冷却水との接触面積が増加する一方で、空気抜き孔を通じて中空部内の空気が抜けるため、中空部内に空気が滞留することがなく、滞留する空気による突出部と冷却水との接触面積の減少が防止されるので、冷却水から突出部への熱の移動量が増加する。
【0014】
この結果、請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、閉塞部材は上壁に装着されることにより、突出部の着脱が容易になって突出部のメンテナンスが容易になる。突出部は、上部で閉塞され、下端部でウォータジャケットに開放する中空部を有する有底の筒状体であり、突出部の上部には、中空部内の空気をウォータジャケット内に逃がす空気抜き孔が形成されたことことにより、突出部が軽量化され、ひいてはシリンダヘッドが軽量化される。また、中空部により突出部と冷却水との接触面積が増加し、突出部の上部には、中空部内の空気をウォータジャケット内に逃がす空気抜き孔が形成されたことにより、中空部内に滞留する空気による突出部と冷却水との接触面積の減少が防止されるので、冷却水から突出部への熱移動が促進されて、突出部を通じての上壁への放熱性が向上する。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記内燃機関はクランク軸の回転軸線の方向に直列に配列された複数のシリンダを備え、前記下壁には、前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数の燃焼室が回転軸線方向に直列に配列されて形成され、前記複数の燃焼室は、平面視で、前記ウォータジャケットへの冷却水の入口と前記ウォータジャケットからの冷却水の出口との間に位置し、平面視で、前記突出部は前記回転軸線方向で隣接する前記燃焼室の間に配置されたものである。
【0016】
これにより、複数の燃焼室の配列方向に冷却水が流れるために低流速領域になり易い燃焼室間に位置する下壁の部分において、請求項2記載の発明と同様に、低流速領域が生じることが防止され、しかも前記下壁の部分の近傍の冷却水の流速が増加して、前記下壁の部分の近傍での冷却水による熱の運搬が良好になる。さらに、隣接する燃焼室のうち、冷却水の下流に位置する燃焼室の燃焼室壁近傍を流れる冷却水の流速も増加して、下流に位置する燃焼室壁ので冷却水による熱の運搬が良好になる。
【0017】
この結果、請求項4記載の発明によれば、引用された請求項記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、下壁には複数の燃焼室が回転軸線方向に直列に配列されて形成され、前記複数の燃焼室は、平面視で、ウォータジャケットへの冷却水の入口とウォータジャケットからの冷却水の出口との間に位置し、平面視で、突出部は回転軸線方向で隣接する燃焼室の間に配置されたことにより、燃焼室間に位置する下壁の部分の近傍での冷却水による熱の運搬が良好になり、さらに冷却水の下流に位置する燃焼室壁での冷却水による熱の運搬が良好になるので、燃焼室の配列方向に冷却水が流れる冷却方式において、燃焼室間での下壁の部分および隣接する燃焼室のうちの下流に位置する燃焼室の燃焼室壁での冷却性が向上する。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッドにおいて、平面視で、前記回転軸線に対して一方の側に吸気ポートが、他方の側に排気ポートがそれぞれ形成され、前記各燃焼室の前記燃焼室壁に装着されて前記燃焼室に臨む点火栓が収納される収納部が前記吸気ポートおよび前記排気ポートとの間に形成され、前記吸気ポートを形成する吸気ポート壁および前記下壁には、前記収納部と前記吸気ポートとの間に位置して前記複数の燃焼室に属する前記吸気ポート壁に渡って前記回転軸線方向に連続して延びると共に前記下壁から前記上壁に向かって突出する吸気側隔壁が形成され、前記排気ポートを形成する排気ポート壁および前記下壁には、前記収納部と前記排気ポートの間に位置して前記複数の燃焼室に属する前記排気ポート壁に渡って前記回転軸線方向に連続して延びると共に前記下壁から前記上壁に向かって突出する排気側隔壁とが形成され、前記吸気側隔壁および前記排気側隔壁により、前記ウォータジャケットが、中央ジャケット部、吸気側ジャケット部および排気側ジャケット部に仕切られるものである。
【0019】
これにより、ウォータジャケットが、いずれも燃焼室の配列方向に沿って延びる中央ジャケット部、吸気側ジャケット部および排気側ジャケット部に分割され、最も熱負荷が大きい部位である点火栓装着部を含む燃焼室壁が位置する中央ジャケット部、吸気ポート壁が位置する吸気側ジャケット部、排気ポート壁が位置する排気側ジャケット部のジャケット部毎に、熱負荷に応じた流量の冷却水を供給することができる。また、中央ジャケット部において、突出部により両隔壁に向かって偏向された冷却水の流れが両突出壁により規制されて、点火栓装着部を含む燃焼室壁付近を流れるように整流される。
【0020】
この結果、請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、シリンダヘッドには、平面視で、回転軸線に対して一方の側に吸気ポートが、他方の側に排気ポートがそれぞれ形成され、各燃焼室の燃焼室壁に装着されて各燃焼室に臨む点火栓が収納される収納部が吸気ポートおよび排気ポートとの間に形成され、吸気ポート壁および下壁には、収納部と吸気ポートとの間に位置して複数の燃焼室に属する吸気ポート壁に渡って回転軸線方向に連続して延びると共に下壁から上壁に向かって突出する吸気側隔壁が形成され、排気ポート壁および下壁には、収納部と排気ポートの間に位置して前記複数の燃焼室に属する排気ポート壁に渡って回転軸線方向に連続して延びると共に下壁から上壁に向かって突出する排気側隔壁とが形成され、吸気側隔壁および排気側隔壁により、ウォータジャケットが、中央ジャケット部、吸気側ジャケット部および排気側ジャケット部に仕切られることにより、ジャケット部毎に熱負荷に応じた流量の冷却水を供給することができるので、各ジャケット部の冷却水が互いに混合することが少なく、各ジャケット部に囲まれるシリンダヘッドの部分を効率よく冷却することができる。また、中央ジャケット部において、突出部により偏向された冷却水は、両隔壁により規制されて、最も熱負荷が大きい部位である点火栓装着部を含む燃焼室壁付近を流れるように整流されるので、突出部を設けたことによる下流側の燃焼室壁の冷却性の低下が防止または抑制される。
【0021】
なお、この明細書において、「平面視」とは、シリンダ軸線方向から見ることを意味する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1ないし図8を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明が適用される水冷式内燃機関Eは、クランク軸6の回転軸線L1(図2も参照)が左右方向を指向する横置き配置で車両に搭載される水冷式の直列3気筒内燃機関であり、シリンダブロック1の上部を構成するシリンダ部1a上端部にはシリンダヘッド2がガスケットを介して結合され、シリンダヘッド2の上端部にヘッドカバー3が結合される。シリンダブロック1の下部の下端部には、クランクケース4が結合され、クランクケース4の下端部にはオイルパン5が結合される。そして、シリンダブロック1の前記下部およびクランクケース4は、両者に主軸受を介して回転可能に支持されたクランク軸6が収納されるクランク室を形成すると共に、変速機が収納されるミッション室を形成するミッションケースを兼ねている。
【0023】
シリンダ部1aは、シリンダ部1aを構成する複数のシリンダであって回転軸線L1の方向D1(図2参照。以下、回転軸線方向D1という。)に直列に配列された3つのシリンダ7を有する。
【0024】
各シリンダ7に往復動可能に嵌合されたピストン8は、シリンダ軸線L2の方向D2(以下、シリンダ軸線方向D2という。)でピストン8に対向する位置においてシリンダヘッド2の下壁30(図3,図4,図7も参照)の下面の凹部により形成される燃焼室10で発生する燃焼ガス圧により駆動され、さらにコンロッド9を介してクランク軸6を回転駆動する。
【0025】
なお、この明細書において、シリンダヘッド2における「下」および「上」は、シリンダ軸線方向D2において、シリンダブロック1側を「下」とし、シリンダブロック1側とは反対側(この実施例では、ヘッドカバー3側)を「上」とする。
【0026】
シリンダヘッド2を示す図2,図4,図6を図1と共に参照すると、シリンダヘッド2には、シリンダ7毎に、燃焼室10に開放する1対の吸気口11aを有する吸気ポート11が、シリンダ軸線方向D2から見て(以下、平面視という。)、回転軸線L1に対して一方の側に形成され、燃焼室10に開放する1対の排気口12aを有する排気ポート12が、平面視で回転軸線L1に対して他方の側に形成される。シリンダヘッド2において、後側の吸気側側面に開口する吸気ポート11の入口11bには、吸気装置(図示されず)の吸気通路が接続され、前側の排気側側面に開口する排気ポート12の出口12bには、排気装置(図示されず)の排気通路が接続される。
【0027】
シリンダヘッド2およびヘッドカバー3によりそれぞれ形成される動弁室13には、シリンダヘッド2に一体成形された軸受部14(図2参照)と該軸受部14に固定される軸受キャップ(図示されず)とにより回転可能に支持されてクランク軸6の1/2の回転数で回転駆動される吸気カム軸15および排気カム軸16と、シリンダヘッド2に一体成形されたホルダ17に往復動可能に支持されて両カム軸15,16に設けられたカムにより駆動されるリフタ18とを備える動弁装置が収納される。
【0028】
シリンダヘッド2には、シリンダヘッド2に固定された円筒状の弁ガイド19を介して、燃焼室10毎に1対の吸気弁20および1対の排気弁21が往復動可能に支持される。そして、各吸気口11aは、リフタ18を介して吸気カム軸15の回転に応じて駆動される吸気弁20により所定のタイミングで開閉され、各排気口12aは、リフタ18を介して排気カム軸16の回転に応じて駆動される排気弁21により所定のタイミングで開閉される。
【0029】
シリンダヘッド2は、軽金属、例えばアルミニウム合金を使用して鋳造により形成され、その際、シリンダヘッド2を冷却する冷却水が流通するウォータジャケットJ(図4参照)は砂中子を使用することにより形成される。
【0030】
以下、図2〜図7を参照して、シリンダヘッド2について説明する。先ず図3,図4,図6を参照すると、シリンダヘッド2の下壁30には、該下壁30の一部から構成される燃焼室壁31を有する3つの燃焼室10が、3つのシリンダ7にそれぞれ対応して、回転軸線方向D1(シリンダ配列方向に一致する。)に直列に配列されて形成される。平面視で、各燃焼室10のほぼ中央部に位置して燃焼室壁31に装着される点火栓22は、燃焼室壁31に形成されたねじ孔32に、燃焼室10に臨むようにしてねじ込まれる。ねじ孔32と同心であって燃焼室壁31からシリンダ軸線L2に対してやや前方に傾斜して(図3参照)上壁33に向かって延びる筒状、この実施例ではほぼ円筒状の収納部23は、さらに上壁33からシリンダヘッド2の上端面と同一平面上に至るまで延びて軸受部14と連結されている(図2参照)。そして、各収納部23には、点火栓22の上部が、点火コイル(図示されず)と共に収納される。
【0031】
ウォータジャケットJは、シリンダ軸線方向D2において、いずれも回転軸線方向D1に延びるシリンダヘッド2の下壁30と上壁33との間に形成される。さらに、ウォータジャケットJは、平面視で回転軸線方向D1と直交する方向D3(以下、直交方向D3という。)で、吸気ポート11よりも下方で回転軸線方向D1に延びて形成された吸気側端壁34と排気ポート12よりも下方で回転軸線方向D1に延びて形成された排気側端壁35との間に形成され、また、回転軸線方向D1で、回転軸線方向D1でのシリンダヘッド2の一方の端壁である内方右端壁36と回転軸線方向D1でのシリンダヘッド2の他方の端壁である左端壁37との間に形成される。なお、内方右端壁36および外方右端壁38により形成される伝動室24には、クランク軸6の動力を両カム軸15,16に伝達するための伝動機構が収納される。
【0032】
また、吸気ポート11を形成する吸気ポート壁39および下壁30には、各収納部23と吸気ポート11との間に位置して、内方右端壁36を起点として3つの燃焼室10に属する吸気ポート壁39に渡って回転軸線方向D1に連続して延びると共に、下壁30および吸気ポート壁39から上壁33に向かって延びる吸気側隔壁41が一体成形される。吸気側隔壁41は、各燃焼室10について収納部23との間に吸気ポート側通路64を形成するように位置する吸気ポート壁部分42と、内方右端壁36と右端の燃焼室10aの吸気ポート壁部分42とを連結する端部突出壁43と、隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cの吸気ポート壁部分42同士を連結する2つの燃焼室間突出壁44とからなる。
【0033】
同様に、排気ポート12を形成する排気ポート壁40および下壁30には、各収納部23と排気ポート12との間に位置して、内方右端壁36を起点として3つの燃焼室10に属する排気ポート壁40に渡って回転軸線方向D1に連続して延びると共に、下壁30および排気ポート壁40から上壁33に向かって延びる排気側隔壁45が一体成形される。排気側隔壁45は、各燃焼室10について収納部23との間に排気ポート側通路65を形成するように位置する排気ポート壁部分46と、内方右端壁36と右端の燃焼室10aの排気ポート壁部分46とを連結する端部突出壁47と、隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cの排気ポート壁部分46同士を連結する2つの燃焼室間突出壁48とからなる。
【0034】
そして、両隔壁41,45により、ウォータジャケットJは、吸気側隔壁41と吸気側端壁34と下壁30と吸気ポート壁39の一部とにより画成される吸気側ジャケット部Ja、排気側隔壁45と排気側端壁35と下壁30と排気ポート壁40の一部とにより画成される排気側ジャケット部Jb、および吸気側隔壁41と排気側隔壁45と下壁30と両隔壁41,45の間に位置する吸気ポート壁39の一部および排気ポート壁40の一部とにより画成される中央ジャケット部Jcに、直交方向D3に仕切られる。
【0035】
図5に代表して示されるように、下壁30から上壁33に向かって、回転軸線L1(図6参照)およびシリンダ軸線L2にほぼ平行に突出する各突出壁43,44,47,48は、上壁33に近接した位置まで延びており、各突出壁43,44,47,48の先端部と上壁33との間には、若干の冷却水の流通を許容する間隙からなる連通路49が形成され、これら連通路49を通じ、中央ジャケット部Jcと吸気ジャケット部Jaおよび排気ジャケット部Jbとの間で冷却水の流通が可能とされる。また、図3,図4に示されるように、各吸気ポート壁部分42および各排気ポート壁部分46は、上壁33と連結される。
【0036】
図6を参照すると、吸気ジャケット部Jaと中央ジャケット部Jcとは、左端壁37と左端の燃焼室10cに属する吸気ポート壁39との間の連通路50を介して連通し、同様に排気ジャケット部Jbと中央ジャケット部Jbとは、左端壁37と左端の燃焼室10cに属する排気ポート壁40との間の連通路51を介して連通する。
【0037】
さらに、下壁30には、シリンダ部1aに形成されたウォータジャケットを流通した冷却水が、前記ガスケットに形成された連通開口を介して流入するウォータジャケットJの入口52〜57が、各ジャケット部Ja,Jb,Jc毎に形成される。
【0038】
具体的には、吸気側ジャケット部Jaには、内方右端壁36と右端の燃焼室10aとの間の1つの端部入口52と、シリンダヘッド2の吸気側でシリンダヘッド2をシリンダ部1aに結合するヘッドボルトが挿通される4つの吸気側ボス部60のうちの回転軸線方向D1で隣接する吸気側ボス部60の間で、かつ各吸気ポート11の近傍に回転軸線方向D1に間隔をおいて位置する1対の側部入口53であって、合計6つの側部入口53とが形成される。
【0039】
また、排気側ジャケット部Jbには、内方右端壁36と右端の燃焼室10との間の1つの端部入口54と、シリンダヘッド2の排気側でシリンダヘッド2をシリンダ部1aに結合するヘッドボルトが挿通される4つの排気側ボス部61のうちの回転軸線方向D1で隣接する排気側ボス部61の間で、かつ各排気ポート12の近傍に回転軸線方向D1に間隔をおいて位置する1対の側部入口55であって、合計6つの側部入口55とが形成される。
【0040】
さらに、中央ジャケット部Jcには、平面視で両隔壁41,45の間隔にほぼ相当する範囲に渡って、内方右端壁36と右端の燃焼室10aとの間に1つの端部入口56が形成される。
【0041】
左端壁37と左端の燃焼室10cとの間には、平面視で後述する出口58と重なる位置に端部入口57が形成される。この端部入口57は、ウォータポンプにより圧送された冷却水がシリンダ部1aの左端壁に接続される導入管に近い位置にあるため、端部入口57からは比較的低温の冷却水がウォータジャケットJに流入して、中央ジャケット部Jcにおいて最も下流に位置する左端の燃焼室10cの燃焼室壁31の冷却性の向上に寄与している。
【0042】
これら入口52〜57のうち、中央ジャケット部Jcの端部入口56はその燃焼室壁31においてシリンダヘッド2において最も熱負荷の高い部位である点火栓22がねじ込まれる部分である点火栓装着部付近を冷却するのに十分な冷却水の流量が得られるように、最大の通路面積を有する。
【0043】
なお、吸気側ジャケット部Jaにおいて、吸気側ボス部60および燃焼室間突出壁44との間の下壁30の部分に設けられた2つの貫通孔、および排気側ジャケット部Jbにおいて、排気側ボス部61および燃焼室間突出壁48との間の下壁30の部分に設けられた2つの貫通孔には、それら貫通孔を液密に閉塞するシーリングプラグ62(図5も参照)が装着される。
【0044】
一方、図2を参照すると、上壁33には、ラジエータに連通する第1ホースが接続される出口58(図6に二点鎖線で示される。)が、平面視で、左端壁37と左端の燃焼室10cとの間で、回転軸線方向D1で見て収納部23と重なるように、それら収納部23と共に回転軸線方向D1でほぼ一直線上に位置するように形成される。それゆえ、中央ジャケット部Jcにおいては、3つの燃焼室10が、平面視で端部入口56と出口58との間に位置する。
【0045】
さらに、図7を併せて参照すると、上壁33には、シリンダヘッド2の鋳造後に、前記砂中子の砂を排出するための3つの排出孔63a,63bが、回転軸線方向D1でほぼ一直線上に並んで形成される。1つの排出孔63aは、平面視で、内方右端壁36と右端の燃焼室10aの燃焼室壁31に装着された点火栓22を収納する収納部23との間に位置し、残り2つの排出孔63bは、平面視で、隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cの間に位置する。
【0046】
各排出孔63a,63bには、液密に各排出孔63a,63bを閉塞するために、金属等の熱の良導体、例えばアルミニウム合金からなる閉塞部材が装着される。具体的には、各排出孔63a,63bは、その周壁にネジ切り加工が施されて、前記閉塞部材であるシーリングボルト71,72がそれぞれねじ込まれるねじ孔に形成される。そして、排出孔63aには、ウォータジャケットJ内に殆ど突出していないために冷却水の流れに殆ど影響を与えることがないシーリングボルト71がねじ込まれ、2つの排出孔63bには、シリンダヘッド2の冷却性を向上させるためにウォータジャケットJ内での冷却水の流れを偏向する、すなわち冷却水の流れの向きを変更する水流制御手段である突出部73が設けられたシーリングボルト72がねじ込まれる。
【0047】
排出孔63bと同様に、平面視で、回転軸線方向D1で隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cの間に配置された突出部73(図6参照)は、排出孔63bに螺合するシーリングボルト72のねじ部72aに連なって一体成形されて、上壁33からシリンダ軸線L2にほぼ平行に下壁30に向かって延びて、ウォータジャケットJ内に深く突出する。
【0048】
突出部73は、その内部に中空部74が形成されて、外周面および内周面が円形の横断面を有する有底の円筒からなる筒状体である。中空部74は、ねじ部72aの近傍に位置する突出部73の上部73aで閉塞され、下端部73bでウォータジャケットJに開放する。上部73aには、中空部74内の空気をウォータジャケットJ内に逃がして、中空部74に空気が滞留することを防止するための複数の空気抜き孔75が形成される。これら空気抜き孔75は、一端が中空部74の最奥部に開放し、他端が外周面でウォータジャケットJに開放する貫通孔から構成され、この実施例では、4つの空気抜き孔75が周方向に等しい間隔をおいて形成される。そして、図5に示されるように、空気抜き孔75の外周面での開口位置は、燃焼室間突出壁44,48と上壁33との間の連通路49に直交方向D3でほぼ対向する位置に形成される。
【0049】
突出部73は、平面視で、隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cの間を指向して、吸気側隔壁41の燃焼室間突出壁44および排気側隔壁45の燃焼室間突出壁48と、それぞれシリンダ軸線方向D2で重なる位置まで延びている。そして、その下端部73bと下壁30との間の間隙G1は、突出部73により、中央ジャケット部Jcを流れる冷却水の流れが下壁30に向けて偏向されるように設定される。また、突出部73は、直交方向D3で、互いにほぼ平行な両燃焼室間突出壁44,48の間に位置していて、突出部73と両燃焼室間突出壁44,48との間の直交方向D3での間隙は、突出部73により突出壁に向かうように偏向された冷却水の流れが、両燃焼室間突出壁44,48により規制されて、冷却水が両燃焼室間突出壁44,48に沿って回転軸線方向D1に整流されるように設定される。
【0050】
さらに、図2を参照すると、吸気ポート壁部分42および排気ポート壁部分46は、各突出部73よりも下流側に、弁ガイド19を支持するための支持部を利用して形成された湾曲した膨出部42a,46aを有する。これら膨出部42a,46aは、燃焼室間突出壁44,48に沿う冷却水の流れを収納部23に向けて偏向させるように、収納部23よりも上流の位置で、直交方向D3での中央ジャケット部Jcの中央部に向かって突出する。
【0051】
このうち、排気ポート壁部分46の膨出部46aと収納部23とは、排気ポート壁部分46と収納部23との間に形成される排気ポート側通路65への入口65aを形成する。また、吸気ポート壁部分42の膨出部42aと、該膨出部42aに向かって径方向に突出すると共に、収納部23の外周面に収納部23の軸線方向に延びる湾曲面を有する突条23aとは、吸気ポート壁部分42と収納部23との間に形成される吸気ポート側通路64への入口64aを形成する。そして、入口65aの面積は、入口64aの面積よりも大きくされる。
【0052】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
内燃機関Eにおける冷却水の全体的な流れについて説明する。前記ウォータポンプにより圧送された冷却水は、前記導入管を介してシリンダ部1aの前記ウォータジャケットに流入して3つのシリンダ7を冷却した後、前記ガスケットの前記連通開口を通って、シリンダヘッド2のウォータジャケットJに流入する。シリンダヘッド2を冷却した後の冷却水は、出口58に接続される前記第1ホースを通って前記ラジエータに流入する。前記ラジエータで放熱して低温となった冷却水は、第2ホースを経て、さらにサーモスタットを通った後、前記ウォータポンプに吸入されて再度圧送され、これらにより構成される経路からなる冷却系統を循環する。
【0053】
図6を参照すると、中央ジャケット部Jcでは、端部入口56から流入した冷却水が、該端部入口56がある中央ジャケット部Jcの右端部から出口58がある中央ジャケット部Jcの左端部に向かって回転軸線方向D1に沿って流れ、その途中で、端部入口56および出口58の間にある3つの燃焼室10に属する燃焼室壁31、吸気ポート壁39および排気ポート壁40を順次冷却して、端部入口57からの冷却水と合流して出口58から流出する。
【0054】
また、吸気側ジャケット部Jaでは、端部入口52から流入した冷却水が、該端部入口52がある吸気側ジャケット部Jaの右端部から中央ジャケット部Jcの左端部に連通する連通路50に向かって回転軸線方向D1に沿って流れて、その途中で、3つの燃焼室10に属する吸気ポート壁39を順次冷却した後、連通路50を通って中央ジャケット部Jcの冷却水と合流して、出口58から流出する。さらに、各吸気ポート11の近傍の側部入口53から流入した冷却水は、各吸気ポート壁39を冷却した後、回転軸線方向D1に沿って流れて、連通路50を通って中央ジャケット部Jcの冷却水と合流して、出口58から流出する。
【0055】
同様に、排気側ジャケット部Jbでは、端部入口54から流入した冷却水が、該端部入口54がある排気側ジャケット部Jbの右端部から中央ジャケット部Jcの左端部に連通する連通路51に向かって回転軸線方向D1に沿って流れて、その途中で、3つの燃焼室10に属する排気ポート壁40を順次冷却した後、連通路51を通って中央ジャケット部Jcの冷却水と合流して、出口58から流出する。さらに、各排気ポート12の近傍の側部入口55から流入した冷却水は、各排気ポート壁40を冷却した後、回転軸線方向D1に沿って流れて、連通路51を通って中央ジャケット部Jcの冷却水と合流して、出口58から流出する。
【0056】
そして、鋳造されたシリンダヘッド2に砂中子を使用して形成されたウォータジャケットJでは、排出孔63bを閉塞するシーリングボルト72に、シリンダヘッド2の冷却性を向上させるためにウォータジャケットJ内での冷却水の流れを偏向する突出部73が設けられたことにより、突出部73が、シリンダヘッド2に鋳造により一体成形されることなく、鋳造後に砂中子の砂を排出するための排出孔63bを閉塞するシーリングボルト72を利用して、該シーリングボルト72に設けられる。その結果、砂中子の形状を複雑化することなく、ウォータジャケットJ内の冷却水の流れを偏向することができるので、冷却性を向上させたシリンダヘッド2の鋳造による生産性が向上する。
【0057】
また、突出部73が設けられるシーリングボルト72は、排出孔63bを利用してシリンダヘッド2に装着されるため、突出部73を保持するための保持部をシリンダヘッド2に新たに形成する必要がないので、この点でもシリンダヘッド2の生産性が向上する。さらに、突出部73はシーリングボルト72に一体成形されるので、部品点数が増加することもない。
【0058】
ウォータジャケットJは、シリンダヘッドの下壁30と上壁33との間に形成され、下壁30の一部により燃焼室壁31が構成され、突出部73は、冷却水の流れを下壁30に向けて偏向させるように、下壁30との間に間隙G1を形成してウォータジャケットJ内に突出することにより、冷却水の流れを偏向する突出部73は、下壁30との間に間隙G1を形成するので、突出部73を設けたことによりウォータジャケットJ内の下壁30の近傍に冷却水の流速が極めて小さいかまたは冷却水が澱む低流速領域が生じることが防止される。しかも、突出部73により、冷却水が下壁30に向かって流れるので、下壁30近傍の冷却水の流速が増加して、下壁30近傍での冷却水による熱の運搬が良好になる。その結果、簡単な構造により、その一部が燃焼室壁31を構成する下壁30近傍での冷却水による熱の運搬が良好になって、下壁30の冷却性が向上する。
【0059】
シーリングボルト72は上壁33に装着されることにより、シリンダヘッド2からの突出部73の着脱が容易になって突出部73のメンテナンスが容易になる。突出部73は、上部73aで閉塞され、下端部73bでウォータジャケットJに開放する中空部74を有する有底の筒状体であり、突出部73の上部73aには、中空部74内の空気をウォータジャケットJ内に逃がす空気抜き孔75が形成されたことことにより、中空部74が形成されたことで突出部73が軽量化され、ひいてはシリンダヘッド2が軽量化される。また、中空部74により突出部73と冷却水との接触面積が増加する一方で、空気抜き孔75を通じて中空部74内の空気が抜けるため、中空部74内に空気が滞留することがなく、滞留する空気による突出部73と冷却水との接触面積の減少が防止されるので、冷却水から突出部73への熱移動が促進されて、突出部73を通じての上壁33への放熱性が向上する。
【0060】
突出部73が円筒状の筒状体であることにより、シーリングボルト72が固定位置を占めるときの軸線回りの位置に拘わらず、突出部73による冷却水の流れの偏向の向きが変化しないので、着脱が容易なねじ込み式の閉塞部材とすることできる。
【0061】
空気抜き孔75の、突出部73の外周面での開口位置は、吸気側隔壁41および排気側隔壁45を構成する燃焼室間突出壁44と上壁33との間の連通路49に直交方向D3でほぼ対向する位置に形成されることにより、中空部74から排出されて中央ジャケット部Jcに滞留する空気が、連通路49を流通する冷却水と共に吸気側ジャケット部Jaまたは排気側ジャケット部Jbに流出し易くなる。
【0062】
下壁30には3つの燃焼室10が回転軸線方向D1に直列に配列されて形成され、それら燃焼室10は、平面視で、中央ジャケット部Jcへの冷却水の端部入口56と中央ジャケット部Jcからの冷却水の出口58との間に位置し、平面視で、突出部73は回転軸線方向D1で隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cの間に配置されたことにより、3つの燃焼室10の配列方向に冷却水が流れるために低流速領域になり易い燃焼室10a,10b;10b,10c間に位置する下壁30の部分30a(図6,図7参照)において、低流速領域が生じることが防止され、しかも下壁30の部分30aの近傍の冷却水の流速が増加して、燃焼室10a,10b;10b,10c間に位置する下壁30の部分30aの近傍での冷却水による熱の運搬が良好になる。さらに、隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cのうち、冷却水の下流に位置する燃焼室10b;10cの燃焼室壁31近傍を流れる冷却水の流速も増加して、冷却水の下流に位置する燃焼室壁31での冷却水による熱の運搬が良好になる。その結果、燃焼室10の配列方向に冷却水が流れる冷却方式において、燃焼室10a,10b;10b,10c間での下壁30の部分30aおよび隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cのうちの下流に位置する燃焼室10b;10cの燃焼室壁31での冷却性が向上する。
【0063】
シリンダヘッド2には、平面視で、回転軸線L1に対して一方の側に吸気ポート11が、他方の側に排気ポート12がそれぞれ形成され、各燃焼室10の燃焼室壁31に装着されて各燃焼室10に臨む点火栓22が収納される収納部23が吸気ポート11および排気ポート12との間に形成され、吸気ポート壁39および下壁30には、収納部23と吸気ポート11との間に位置して3つの燃焼室10に属する吸気ポート壁39に渡って回転軸線方向D1に連続して延びると共に下壁30から上壁33に向かって突出する吸気側隔壁41が形成され、排気ポート壁40および下壁30には、収納部23と排気ポート12の間に位置して3つの燃焼室10に属する排気ポート壁40に渡って回転軸線方向D1に連続して延びると共に下壁30から上壁33に向かって突出する排気側隔壁45とが形成され、吸気側隔壁41および排気側隔壁45により、ウォータジャケットJが、いずれも3つの燃焼室10の配列方向に沿って延びる中央ジャケット部Jc、吸気側ジャケット部Jaおよび排気側ジャケット部Jbに分割され、最も熱負荷が大きい部位である前記点火栓装着部を含む燃焼室壁31が位置する中央ジャケット部Jc、吸気ポート壁39が位置する吸気側ジャケット部Ja、排気ポート壁40が位置する排気側ジャケット部Jbのジャケット部Ja,Jb,Jc毎に、熱負荷に応じた流量の冷却水を供給することができるので、各ジャケット部Ja,Jb,Jcの冷却水が互いに混合することが少なく、各ジャケット部Ja,Jb,Jに囲まれるシリンダヘッドの部分を効率よく冷却することができる。また、中央ジャケット部Jcにおいて、突出部73により両隔壁41,45に向かって偏向された冷却水は、両隔壁41,45により規制されて、最も熱負荷が大きい部位である前記点火栓装着部を含む燃焼室壁31付近を流れるように整流されるので、突出部73を設けたことによる下流側の燃焼室壁31の冷却性の低下が防止または抑制される。
【0064】
吸気ポート壁部分42および排気ポート壁部分46は、各突出部73よりも下流側に位置する膨出部42a,46aを有し、これら膨出部42a,46aは、燃焼室間突出壁44,48に沿う冷却水の流れを収納部23に向けて偏向させることにより、突出部73の直下流の冷却水の流れを前記点火栓装着部に向けることができるので、前記点火栓装着部付近の燃焼室壁31の冷却性が向上する。
【0065】
排気ポート壁部分46と収納部23との間に形成される排気ポート側通路65への入口65aの面積は、吸気ポート壁部分42と収納部23との間に形成される吸気ポート側通路64への入口64aの面積よりも大きくされることにより、内方右端壁36と右端の燃焼室10aに属する収納部23との間の冷却水、および隣接する燃焼室10a,10b;10b,10cに属する収納部23間の冷却水が、排気ポート側通路65により多くの冷却水が流入するようにされるので、中央ジャケット部Jcにおいて、排気ポート壁40の冷却性が向上する。
【0066】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
吸気ポート壁部分42および排気ポート壁部分46は、上壁33に向かって突出することなく、吸気ポート壁39自体の一部または排気ポート壁40自体の一部であってもよい。また、収納部23は、シリンダヘッド2とは別個の筒状体から構成されて、シリンダヘッド2に結合されてもよい。
【0067】
突出部73は、前記実施例では、横断面が円環形状(図6参照)の円筒体であったが、図8(A),(B)に示されるように、横断面が正方形や正三角形であるように角形の環形状である筒状体であってもよく、さらに一般に、流線型を含む非円形の環形状の横断面を有する筒状体であってもよい。
【0068】
また、突出部73は、中空部74を有する部材ではなく、中実の部材であってもよい。そして、図8(C)に示されるように、突出部73は、横断面が屈曲した矩形形状を有する平板状のものであってもよい。
【0069】
そして、突出部73が円環形状以外の横断面を有するときは、閉塞部材としてシーリングボルト72の代わりにシーリングプラグを使用することが好適である。その場合には、シーリングプラグに位置決め手段、例えば位置決めマークを設けることにより、突出部73が冷却水の流れを所望の方向に偏向させる位置を占める状態で、該シーリングプラグをシリンダヘッドの固定する。
【0070】
前記実施例では、突出部73はシーリングボルト72に一体成形されたが、突出部73が、シーリングボルト72またはシーリングプラグとは別部材とされて、シーリングボルト72またはシーリングプラグに一体に結合されたものであってもよい。
【0071】
水流制御手段は、前記実施例では突出部73から構成されて、冷却水の流れの方向を主として制御するものであったが、水流制御手段で、冷却水の流速を制御する、例えば流速を増加させることにより、または冷却水の流れの方向および流速を制御することにより、シリンダヘッド2の冷却性を向上させることもできる。
【0072】
本発明が適用される水冷式内燃機関は、直列3気筒内燃機関以外の内燃機関であってもよく、例えば3気筒以外の多気筒内燃機関、またはV型内燃機関であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示し、本発明が適用される水冷式の直列3気筒内燃機関の概略左側面図である。
【図2】図1の内燃機関における前シリンダヘッドのシリンダ軸線方向での図1のII矢視平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV−IV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図3および図5のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】水流制御手段である突出部の変形例を示し、突出部の横断面図である。
【符号の説明】
1…シリンダブロック、2…シリンダヘッド、3…ヘッドカバー、4…クランクケース、5…オイルパン、6…クランク軸、7…シリンダ、8…ピストン、9…コンロッド、10…燃焼室、11…吸気ポート、12…排気ポート、13…動弁室、14…軸受部、15,16…カム軸、17…ホルダ、18…リフタ、20…吸気弁、21…排気弁、22…点火栓、23…収納部、24…伝動室、
30…下壁、31…燃焼室壁、32…ねじ孔、33…上壁、34…吸気側端壁、35…排気側端壁、36…内方右端壁、37…左端壁、38…外方右端壁、39…吸気ポート壁、40…排気ポート壁、41…吸気側隔壁、42…吸気ポート壁部分、43…端部突出壁、44…燃焼室間突出壁、45…排気側隔壁、46…排気ポート壁部分、47…端部突出壁、48…燃焼室間突出壁、49〜51…連通路、52〜57…入口、58…出口、60,61…ボス部、62…シーリングプラグ、63a,63b…排出孔、64…吸気ポート側通路、65…排気ポート側通路、
71,72…シーリングボルト、73…突出部、73a…上部、73b…下端部、74…中空部、75…空気抜き孔、
E…内燃機関、L1…回転軸線、L2…シリンダ軸線、D1…回転軸線方向、D2…シリンダ軸線方向、D3…直交方向、J…ウォータジャケット、Ja…吸気側ジャケット部、G1…間隙。

Claims (5)

  1. 鋳造されたシリンダヘッドであって、そのウォータジャケットが鋳造後に排出孔を通じて排出される砂中子を使用して形成された水冷式内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
    前記排出孔を閉塞する閉塞部材に、前記シリンダヘッドの冷却性を向上させるために前記ウォータジャケット内での冷却水の流れの方向や流速を制御する水流制御手段が設けられたことを特徴とする水冷式内燃機関のシリンダヘッド。
  2. 前記ウォータジャケットは、前記シリンダヘッドが結合されるシリンダブロックのシリンダ軸線方向で下壁と上壁との間に形成され、前記下壁の一部により燃焼室壁が構成され、前記水流制御手段は、冷却水の流れを前記下壁に向けて偏向させるように、前記下壁との間に間隙を形成して前記ウォータジャケット内に突出する突出部であることを特徴とする請求項1記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッド。
  3. 前記閉塞部材は前記上壁に装着され、前記突出部は、上部で閉塞され、下端部で前記ウォータジャケットに開放する中空部を有する有底の筒状体であり、前記突出部の上部には、前記中空部内の空気を前記ウォータジャケット内に逃がす空気抜き孔が形成されたことを特徴とする請求項2記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッド。
  4. 前記内燃機関はクランク軸の回転軸線の方向に直列に配列された複数のシリンダを備え、前記下壁には、前記複数のシリンダにそれぞれ対応する複数の燃焼室が回転軸線方向に直列に配列されて形成され、前記複数の燃焼室は、平面視で、前記ウォータジャケットへの冷却水の入口と前記ウォータジャケットからの冷却水の出口との間に位置し、平面視で、前記突出部は前記回転軸線方向で隣接する前記燃焼室の間に配置されたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッド。
  5. 平面視で、前記回転軸線に対して一方の側に吸気ポートが、他方の側に排気ポートがそれぞれ形成され、前記各燃焼室の前記燃焼室壁に装着されて前記燃焼室に臨む点火栓が収納される収納部が前記吸気ポートおよび前記排気ポートとの間に形成され、前記吸気ポートを形成する吸気ポート壁および前記下壁には、前記収納部と前記吸気ポートとの間に位置して前記複数の燃焼室に属する前記吸気ポート壁に渡って前記回転軸線方向に連続して延びると共に前記下壁から前記上壁に向かって突出する吸気側隔壁が形成され、前記排気ポートを形成する排気ポート壁および前記下壁には、前記収納部と前記排気ポートの間に位置して前記複数の燃焼室に属する前記排気ポート壁に渡って前記回転軸線方向に連続して延びると共に前記下壁から前記上壁に向かって突出する排気側隔壁とが形成され、前記吸気側隔壁および前記排気側隔壁により、前記ウォータジャケットが、中央ジャケット部、吸気側ジャケット部および排気側ジャケット部に仕切られることを特徴とする請求項4記載の水冷式内燃機関のシリンダヘッド。
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