JP2004076629A - スクロール型圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】固定スクロールおよび可動スクロールの渦巻壁の中央部位に根元補強部と面取り部および凹部からなる逃げ部とを形成し、それらを有効に配置することにより、流体の圧縮効率を向上させる。
【解決手段】スクロール型圧縮機10では、固定スクロール20に対する可動スクロール42の回転に伴って、固定スクロール20の固定側渦巻壁60に重複する可動スクロール42の根元補強部84および段差86の位置関係が移動し、これと同時に、可動スクロール42の可動側渦巻壁64に重複する固定スクロール20の根元補強部80および段差82の位置関係が移動する。そして、段差86および82には凹部90および94を対応させ、一方、根元補強部84および80には面取り部88および92を対応させることによって干渉を回避させるとともに、デッドボリュームを可及的に小さくする。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール型圧縮機に関し、一層詳細には、スクロール型圧縮機を構成する固定スクロールおよび可動スクロールの各渦巻壁の中央部位に根元補強部および逃げ部が形成されたスクロール型圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクロール型圧縮機は、基板と該基板に直角に形成される渦巻壁とを有する固定スクロールに対して、同様に基板と渦巻壁とを有する可動スクロールを噛み合わせ、可動スクロールを偏心するピンによって回転させることにより、前記固定スクロールおよび前記可動スクロールの各基板と各渦巻壁との間で流体を圧縮する空間を外周部位から徐々に中央部位へと移動させる構造を採用している。その際、前記外周部位の空間内における流体は低圧状態となり、一方、前記中央部位の空間内における流体は高圧状態となる。
【0003】
この高圧状態に対する固定スクロールおよび可動スクロールの強度を確保するために、これらの中央部位における各基板と各渦巻壁との境界部に円弧形状や凹曲面形状等からなる根元補強部が形成され、一方、この根元補強部との干渉を回避させるために、前記各渦巻壁の先端部には、面取りや凹み等からなる逃げ部が形成される。
【0004】
例えば、実開昭61−140101号公報には、図9Aおよび図9Bに示すように、一対のスクロール本体1、2のラップ(渦巻壁)1a、2aの中央部位である内方先端部(図9A中、a〜b間)の根元1b、2bが、半径ρの円弧形状に形成され、一方、ラップ1a、2aの歯先(先端部)1c、2cが、前記半径ρに対応させた半径ρ1の円弧形状に形成されるか、あるいは、面取りされた形状が開示されている。
【0005】
また、特開平8−135582号公報には、図10Aおよび図10Bに示すように、固定スクロール3の渦巻壁3aの中央部位である巻き始め部(図10A中、c〜d間)の根元3bが、凹曲面形状に形成され、一方、渦巻壁3aの先端角部3cは、前記根元3bと同形状の凹曲面形状に形成されることが開示されている。なお、固定スクロール3と対をなす可動スクロール4においても、前記先端角部3cに対向する渦巻壁4aの根元4bと、前記根元3bに対向する渦巻壁4aの先端角部4cとが、前記根元3bと同形状の凹曲面形状に形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述した中央部位における各基板と各渦巻壁との境界部である根元を円弧形状や凹曲面形状に形成する際には、先ず、該円弧形状や凹曲面形状に対応させた先端形状を有する切削工具(例えば、エンドミル等)により前記境界部の全体を切削加工し、次いで、直角の先端形状を有する切削工具により前記中央部位を除いた境界部を切削加工するというように複数の工程を経ることが一般的である。このように、複数の工程を経るため、円弧形状や凹曲面形状に形成された前記中央部位と、該中央部位を除いて直角に形成された境界部との境い目には段差が形成されることになる(図9Aのa、bおよび図10Aのc、dに相当)。
【0007】
しかしながら、実開昭61−140101号公報に開示された技術のように、ラップ1a、2aの歯先1c、2cの面取りのみで前記段差をも含めた根元1b、2bとの干渉を確実に回避させるためには、該段差の高さ分を考慮してより広い範囲に歯先1c、2cを面取りしなければならない。その結果、スクロール本体1、2の中央部位における最終的な圧縮空間と、次に最終的に圧縮される圧縮空間との混合タイミングが早くなり、デッドボリューム(dead volume:死空間)を小さくすることができなくなる。このため、流体の圧縮効率が低下するという問題がある。しかも、歯先1c、2cの面取り加工範囲が広くなるので、切削加工時間が増大し、且つ切削工具の寿命が短くなるという問題がある。
【0008】
また、特開平8−135582号公報に開示された技術では、渦巻壁3a、4aの先端角部3c、4cの凹曲面形状によって前記段差の高さ分の逃げを確保することが可能となり、この凹曲面形状をより広い範囲に形成することは不要となるが、根元3bと先端角部4c、および根元4bと先端角部3cによってそれぞれ形成される隙間が大きくなるために、固定スクロール3と可動スクロール4との中央部位における圧縮空間のデッドボリュームが増大し、結局、流体の圧縮効率が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、固定スクロールおよび可動スクロールの渦巻壁の中央部位に根元補強部と面取り部および凹部からなる逃げ部とを形成し、且つそれらを有効に配置することにより、デッドボリュームを減少させ、且つ流体の圧縮効率を向上させるとともに、各スクロールに対する加工性を向上させることを可能とするスクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、固定側基板と該固定側基板に立設される固定側渦巻壁とを有する固定スクロールと、可動側基板と該可動側基板に立設される可動側渦巻壁とを有する可動スクロールとを備え、前記固定側渦巻壁と前記可動側渦巻壁とを互いに噛み合わせて空間を形成し、前記固定スクロールに対して前記可動スクロールを回転させることにより前記空間内で流体を圧縮するスクロール型圧縮機において、前記固定スクロールおよび可動スクロールは、それらの中央部位における前記各基板と前記各渦巻壁との境界部に曲面状に形成される根元補強部と、前記各根元補強部に隣接してそれぞれ形成される段差と、前記各根元補強部および前記各段差による干渉を回避するために前記各渦巻壁にそれぞれ形成される逃げ部と、を有し、前記逃げ部は、前記根元補強部による干渉を回避するための面取り部と、前記段差による干渉を回避するために形成された凹部とからなることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、固定スクロールに対する可動スクロールの回転に伴って、各渦巻壁に形成される逃げ部に対する各根元補強部および各段差の位置関係が移動するので、該段差には凹部を、また該根元補強部には面取り部をそれぞれ対応させることによって干渉を回避させるとともに、流体を圧縮する空間内のデッドボリュームを可及的に小さくするようにしている。その結果、スクロール型圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。
【0012】
この場合、前記凹部は、少なくとも一部が前記面取り部に隣接して形成されているとよい。これにより、流体を圧縮する空間内のデッドボリュームをより小さくすることが可能となり、スクロール型圧縮機の圧縮効率をより向上させることができる。また、逃げ部の切削加工の範囲を可及的に小さくすることが可能となるので、切削加工時間を削減し、且つ切削工具の寿命を延ばすことができる。
【0013】
さらに、前記凹部は、前記渦巻壁の端面を基準として前記面取り部よりも前記基板側により接近して設けられているとよい。これにより、流体を圧縮する空間内のデッドボリュームをさらに小さくすることが可能となり、スクロール型圧縮機の圧縮効率をより一層向上させることができる。
【0014】
また、前記凹部は、前記面取り部に先立って、予め前記固定スクロールおよび可動スクロールを成形する際に形成されているとよい。これにより、凹部を形成するための切削工具が不要になるとともに、切削加工時間を削減することができる。その結果、逃げ部の切削加工時間をさらに削減することができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記各渦巻壁は、該渦巻壁の巻き内側にそれぞれ段状にせり出した肉厚壁を有し、前記各渦巻壁と前記各肉厚壁の端面との境界部に前記根元補強部と前記段差とを形成し、前記各肉厚壁に該根元補強部および該段差との干渉を回避するための面取り部と凹部とを形成するとよい。これにより、肉厚壁を有する固定スクロールおよび可動スクロールを、それらの中央部位における流体を圧縮する空間内において、さらに高強度が要求されるスクロール型圧縮機に適用することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係るスクロール型圧縮機について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るスクロール型圧縮機10を示す。このスクロール型圧縮機10は、フロントハウジング12とリアハウジング14とを有し、前記フロントハウジング12とリアハウジング14との間で吐出室16が区画形成される。
【0018】
リアハウジング14にはボルト18を介して固定スクロール20が固着される。この場合、フロントハウジング12の縮径した端部の開口部から回転シャフト24を吐出室16側へと挿入する。
【0019】
回転シャフト24は第1軸受26によって回転自在に支承されるとともに、その一方の端部に拡径する支持体28を有する。支持体28の支持面30は、第2軸受32によって回転自在に支承される。この第2軸受32は、フロントハウジング12に形成された肩部34によって保持される。支持体28には、その軸心に偏心してピン36が固着され、このピン36の根元部には、バランスウエイト40が装着される。前記ピン36に可動スクロール42のブッシュ44が係合する。
【0020】
具体的には、可動スクロール42に凹部46が設けられ、この凹部46に旋回軸受48を介してブッシュ44が保持される。前記ブッシュ44にはその軸心に偏心して孔部50が形成され、この孔部50に前記ピン36が挿入される。ピン36の先端には環状溝52が形成され、この環状溝52にC型止めリング54が嵌合する。従って、ピン36は、前記環状溝52に嵌合するC型止めリング54によってブッシュ44に対する軸方向の移動が阻止されるように構成されている。
【0021】
なお、第1軸受26の近傍に電磁クラッチ56が設けられ、この電磁クラッチ56のオン(on)/オフ(off)動作によって前記回転シャフト24へ図示しないエンジン等の回転駆動源からの回転力の伝達あるいは切り離しが行われる。
【0022】
固定スクロール20は、前記リアハウジング14側に固着される部位である基板62と、該基板62から渦巻状に一体に立設された固定側渦巻壁60とを有する。一方、可動スクロール42は、前記凹部46により前記ブッシュ44を保持する部位である基板66と、該基板66から渦巻状に一体に立設された可動側渦巻壁64とを有する。
【0023】
これらの固定スクロール20の固定側渦巻壁60と、可動スクロール42の可動側渦巻壁64と、各基板62、66との間でガス圧縮室(空間)70が区画形成される。このガス圧縮室70は、固定スクロール20の基板62の略中心を貫通した圧縮ガス(流体)導出口68により吐出室16に連通する。
【0024】
なお、図1中、参照符号72はリアハウジング14の肩部と固定スクロール20の隅角部との間に設けられ、ガス圧縮室70を気密に封止するO−リングを示し、参照符号74は、固定スクロール20の固定側渦巻壁60と可動スクロール42の可動側渦巻壁64とによって、前記ガス圧縮室70を封止するシール部材を示す。
【0025】
ところで、本実施の形態では、図2に示すように、固定スクロール20の中央部位における固定側渦巻壁60と基板62との境界部分、すなわち、該中央部位における固定側渦巻壁60の根元には、この部位において高圧化された圧縮ガスに対する強度を確保するための根元補強部80が設けられる。この根元補強部80は、固定側渦巻壁60の壁面60aから基板62の基板面62aへと曲面状に形成される。また、根元補強部80と基板62の基板面62aとの境い目には、前記従来技術で説明した切削加工と同じ工程を経ているために、段差82が形成される。
【0026】
なお、可動スクロール42の中央部位においても、前記固定スクロール20の場合と同様に、可動側渦巻壁64の壁面64aから基板66の基板面66aに、曲面状に形成される根元補強部84が設けられるとともに、段差86が形成される。
【0027】
一方、固定スクロール20の中央部位における固定側渦巻壁60の端面60b側には、該固定側渦巻壁60のほぼ巻き始め端から巻き内側に沿って面取り部88が形成される。この面取り部88は、図2から諒解されるように、前記巻き始め端において大きな面取り代を有し、徐々にその面取り代は減少する。なお、本実施の形態においては、前記面取り部88に隣接して、前記端面60bを基準として該面取り部88よりも深く、すなわち、根元補強部80(基板62)側に接近するように凹部90が形成される。前記凹部90は、端面60bと略平行な面に形成される。これらの面取り部88および凹部90は、固定スクロール20に対して可動スクロール42が回転することによる前記根元補強部84および前記段差86との干渉を回避させるための逃げ部を構成する。
【0028】
なお、可動スクロール42においても、前記固定スクロール20と同様に、面取り部92が設けられ、この面取り部92に隣接して、可動側渦巻壁64の端面64bを基準として該面取り部92よりも深く、且つ該端面64bと略平行な面に凹部94が形成される。
【0029】
本実施の形態に係るスクロール型圧縮機10は基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果について説明する。
【0030】
電磁クラッチ56の駆動作用下に、回転シャフト24に回転力が伝達されると、支持体28が第2軸受32を介して回転し、これによって支持体28に設けられたピン36が回転シャフト24の軸心に対して偏心しながら回転する。その結果、ブッシュ44が回転して可動スクロール42が同様に回転し、固定スクロール20の固定側渦巻壁60と可動スクロール42の可動側渦巻壁64との間で画成されるガス圧縮室70が外周部位から徐々に中央部位へと進行し、シール部材74の封止作用下にガス(例えば、冷媒ガス等)が圧縮され、この圧縮されたガスが圧縮ガス導出口68から吐出室16へと吐出される。
【0031】
その際、本実施の形態では、固定スクロール20と可動スクロール42との噛み合わせ関係において、固定側渦巻壁60および可動側渦巻壁64の中央部位における各根元補強部80、84および各段差82、86に対して各面取り部92、88および各凹部94、90を設けているために、互いに干渉することがなく、且つ該中央部位におけるガス圧縮室70のデッドボリューム(dead volume:死空間)を可及的に小さくすることが可能となる。
【0032】
このことについて、図3A〜図7Bを参照しながら詳細に説明する。なお、ここでは、可動側渦巻壁64の根元補強部84および段差86に対する固定側渦巻壁60の面取り部88および凹部90の噛み合わせ関係を例示して説明する。
【0033】
先ず、図3Aに示す位置関係、すなわち、可動スクロール42が回転し、固定スクロール20の壁面60aに可動スクロール42の根元補強部84が重複し始める地点では、図3Bに示すように、根元補強部84および段差86に凹部90を対応させて干渉を回避させる。また、図3Aと同じ位置関係において、図4Aおよび図4Bに示すように、前記根元補強部84に凹部90を対応させて干渉を回避させている。
【0034】
図5Aに示す位置関係、すなわち、可動スクロール42がさらに回転し、前記段差86が固定スクロール20の壁面60aに重複しなくなった後には、図5Bに示すように、前記根元補強部84に、前記凹部90に加えて面取り部88を対応させて干渉を回避させる。
【0035】
図6Aに示す位置関係では、前記根元補強部84との干渉を回避させるために、前記面取り部88を対応させる割合を除々に増加させ(図6B参照)、図7Aに示す位置関係において、該面取り部88のみによって前記根元補強部84との干渉を回避させている(図7B参照)。
【0036】
なお、固定側渦巻壁60の根元補強部80および段差82に対する可動側渦巻壁64の面取り部92および凹部94の場合でも、前記と同様に干渉が回避されることは勿論である。また、図3A〜図7Bから容易に諒解される通り、前述した可動スクロール42の回転動作の間に、固定スクロール20の壁面60aと可動スクロール42の壁面64aとは、ガス圧縮室70を区画形成するために摺接している。
【0037】
このように、可動スクロール42の回転に伴って、固定スクロール20の固定側渦巻壁60に重複する可動スクロール42の根元補強部84および段差86の位置関係が移動し、これと同時に、可動スクロール42の可動側渦巻壁64に重複する固定スクロール20の根元補強部80および段差82の位置関係が移動するので、前記段差86および82には前記凹部90および94を対応させ、前記根元補強部84および80には前記面取り部88および92を対応させることによって干渉を回避させるとともに、ガス圧縮室70のデッドボリュームを可及的に小さくするようにしている。その結果、スクロール型圧縮機10の圧縮効率を向上させることができる。
【0038】
なお、前記面取り部88、92を形成するには、該面取り部88、92に対応させた先端形状を有する切削工具(例えば、エンドミル等)により前記各渦巻壁60、64を切削加工する。この場合、例えば、圧縮ガス導出口68の開口端部を面取りする切削工具と兼用してもよい。
【0039】
一方、前記凹部90、94を形成するには、直角の先端形状を有する切削工具により前記各渦巻壁60、64を切削加工する。この場合、例えば、前記根元補強部80、84を除いた各渦巻壁60、64と各基板62、66との境界部を形成する粗加工用または仕上加工用の切削工具と兼用してもよい。また、凹部90、94は、前記面取り部88、92の切削加工に先立って、予め鋳造や鍛造によって固定スクロール20および可動スクロール42を成形する際に形成するようにしてもよい。このようにすれば、凹部90、94を形成するための切削工具が不要になるとともに、凹部90、94の切削加工時間を削減することができる。
【0040】
これらの面取り部88、92および凹部90、94を形成する位置および範囲は、固定スクロール20と可動スクロール42との噛み合わせ関係、スクロール型圧縮機10の圧縮効率(すなわち、圧縮性能)および切削加工の加工性、すなわち、加工時間の短縮や前記各切削工具による容易な操作性等から鑑みて適宜決定すればよい。
【0041】
本実施の形態では、特に切削加工の加工性を考慮して、所謂、三日月状の比較的広い範囲に各凹部90、94を形成しているが、段差82、86が各渦巻壁60、64に重複するのは、根元補強部80、84が各渦巻壁60、64に重複し始める地点から比較的狭い範囲内であることから、これらの段差82、86の重複部分のみに各凹部90、94を対応させるようにすれば、ガス圧縮室70のデッドボリュームをさらに小さくでき、スクロール型圧縮機10の圧縮効率をより向上させることも可能となる。
【0042】
次に、固定スクロール20および可動スクロール42に代替したスクロールを適用した他の実施の形態に係るスクロール型圧縮機98について説明する。図8に示すように、ここでは、代替されるスクロールとして固定スクロール100のみを例示して説明するが、代替される可動スクロールも同様に構成されることは勿論である。また、前記スクロール型圧縮機10における構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0043】
この固定スクロール100は、固定側渦巻壁102の高さ方向略中央付近から基板62側に位置する部位が、さらに巻き内側(圧縮ガス導出口68側)にせり出した肉厚壁104を有する。この場合、前述した固定スクロール20と同様に、肉厚壁104の壁面104aから基板62の基板面62aに、曲面状に形成される根元補強部80が設けられるとともに、段差82が形成される。一方、固定側渦巻壁102の端面102b側には面取り部88が設けられるとともに、この面取り部88に続いて凹部90が設けられる。
【0044】
なお、固定側渦巻壁102の壁面102aから肉厚壁104の端面104bに、曲面状に形成される根元補強部80aを設けるとともに、段差82aを形成するようにしてもよい。一方、肉厚壁104の端面104b側には、面取り部88aおよび凹部90aを設けるようにしてもよい。これにより、肉厚壁104を有する固定スクロール100を、その中央部位において、例えば、さらに高強度が要求されるスクロール型圧縮機98に適用することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0046】
すなわち、固定スクロールおよび可動スクロールにおける各渦巻壁と各基板との境界部の段差および根元補強部に対して、それぞれ凹部および面取り部を逃げ部として対応させることによって干渉を回避させるとともに、流体を圧縮する空間内のデッドボリュームを可及的に小さくすることが可能となるので、スクロール型圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。
【0047】
また、各渦巻壁の逃げ部の切削加工の範囲を可及的に小さくすることが可能となるので、切削加工時間を削減し、且つ切削工具の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクロール型圧縮機の概略縦断面説明図である。
【図2】図1に示すスクロール型圧縮機に組み込まれる固定スクロール(可動スクロール)の要部拡大斜視説明図である。
【図3】図3Aは、図1に示すスクロール型圧縮機に組み込まれる固定スクロールと可動スクロールとの噛み合わせ関係において、第1の遷移状態を示す一部横断面説明図であり、図3Bは、図3AにおけるIIIB−IIIB断面説明図である。
【図4】図4Aは、前記固定スクロールと前記可動スクロールとの噛み合わせ関係において、第2の遷移状態を示す一部横断面説明図であり、図4Bは、図4AにおけるIVB−IVB断面説明図である。
【図5】図5Aは、前記固定スクロールと前記可動スクロールとの噛み合わせ関係において、第3の遷移状態を示す一部横断面説明図であり、図5Bは、図5AにおけるVB−VB断面説明図である。
【図6】図6Aは、前記固定スクロールと前記可動スクロールとの噛み合わせ関係において、第4の遷移状態を示す一部横断面説明図であり、図6Bは、図6AにおけるVIB−VIB断面説明図である。
【図7】図7Aは、前記固定スクロールと前記可動スクロールとの噛み合わせ関係において、第5の遷移状態を示す一部横断面説明図であり、図7Bは、図7AにおけるVIIB−VIIB断面説明図である。
【図8】他の実施の形態に係るスクロール型圧縮機に組み込まれる固定スクロールの要部拡大斜視説明図である。
【図9】図9Aは、従来技術に係るスクロール型圧縮機に組み込まれるスクロール本体の要部拡大斜視説明図であり、図9Bは、図9Aに示すスクロール本体の要部拡大断面説明図である。
【図10】図10Aは、他の従来技術に係るスクロール型圧縮機に組み込まれる固定スクロールの要部拡大平面説明図であり、図10Bは、図10Aに示す固定スクロールおよび可動スクロールの要部拡大断面説明図である。
【符号の説明】
10、98…スクロール型圧縮機  20、100…固定スクロール
42…可動スクロール       60、102…固定側渦巻壁
60a、64a、102a、104a…壁面
60b、64b、102b、104b…端面
62、66…基板         62a、66a…基板面
64…可動側渦巻壁        68…圧縮ガス導出口
80、80a、84…根元補強部  82、82a、86…段差
88、88a、92…面取り部   90、90a、94…凹部
104…肉厚壁

Claims (5)

  1. 固定側基板と該固定側基板に立設される固定側渦巻壁とを有する固定スクロールと、可動側基板と該可動側基板に立設される可動側渦巻壁とを有する可動スクロールとを備え、前記固定側渦巻壁と前記可動側渦巻壁とを互いに噛み合わせて空間を形成し、前記固定スクロールに対して前記可動スクロールを回転させることにより前記空間内で流体を圧縮するスクロール型圧縮機において、
    前記固定スクロールおよび可動スクロールは、それらの中央部位における前記各基板と前記各渦巻壁との境界部に曲面状に形成される根元補強部と、前記各根元補強部に隣接してそれぞれ形成される段差と、前記各根元補強部および前記各段差による干渉を回避するために前記各渦巻壁にそれぞれ形成される逃げ部と、を有し、
    前記逃げ部は、前記根元補強部による干渉を回避するための面取り部と、前記段差による干渉を回避するために形成された凹部とからなることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  2. 請求項1記載のスクロール型圧縮機において、
    前記凹部は、少なくとも一部が前記面取り部に隣接して形成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  3. 請求項1記載のスクロール型圧縮機において、
    前記凹部は、前記渦巻壁の端面を基準として前記面取り部よりも前記基板側により接近して設けられていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  4. 請求項1記載のスクロール型圧縮機において、
    前記凹部は、前記面取り部に先立って、予め前記固定スクロールおよび可動スクロールを成形する際に形成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクロール型圧縮機において、
    前記各渦巻壁は、該渦巻壁の巻き内側にそれぞれ段状にせり出した肉厚壁を有し、
    前記各渦巻壁と前記各肉厚壁の端面との境界部に前記根元補強部と前記段差とを形成し、前記各肉厚壁に該根元補強部および該段差との干渉を回避するための面取り部と凹部とを形成することを特徴とするスクロール型圧縮機。
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