JP2004076188A - 繊維仕上げ剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗老化効果、抗酸化効果、細胞賦活効果、抗色素沈着効果を有するコエンザイムQ10を、高濃度にかつ洗濯耐久性を有するように繊維に付着せしめるための繊維仕上げ剤を提供することを目的とする。
【解決手段】コエンザイムQ10と中鎖脂肪酸エステル、及びアルキル第4級アンモニウム塩を含有する繊維仕上げ剤により課題を解決することができる。更にコエンザイムQ10に加えて、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、レチノイン酸及びその誘導体、レチノール及び誘導体、並びにカロチン類から選ばれた1種、又は2種以上を含有せしめることにより、コエンザイムQ10の皮脂酸化抑制効果が、相乗的に高まる。
【選択図】なし
【解決手段】コエンザイムQ10と中鎖脂肪酸エステル、及びアルキル第4級アンモニウム塩を含有する繊維仕上げ剤により課題を解決することができる。更にコエンザイムQ10に加えて、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、レチノイン酸及びその誘導体、レチノール及び誘導体、並びにカロチン類から選ばれた1種、又は2種以上を含有せしめることにより、コエンザイムQ10の皮脂酸化抑制効果が、相乗的に高まる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、抗老化効果、抗酸化効果、細胞賦活効果、抗色素沈着効果を有するコエンザイムQ10を含有する繊維仕上げ剤に関するものであり、容易にコエンザイムQ10を、有効濃度で繊維製品に付着加工することができる繊維仕上げ剤、及び該仕上げ剤で仕上げた洗濯耐久性に優れた繊維、及び繊維製品、及びその仕上げ加工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、繊維製品の仕上げ加工において、化粧品に使用される成分を主成分とした仕上げ剤で繊維を加工し、着用時に皮膚との摩擦により、それら成分が皮膚に移行するといった化粧料や皮膚外用剤と同様のスキンケア効果を期待した特殊加工法や特殊加工繊維素材が開発されている。
具体的には、天然保湿成分であるピロリドンカルボン酸を綿に付与したスキンケア素材、抗炎症作用を有するアロエ抽出物を付与したスキンケア素材(加工技術 Vol34, No.6, 1999, 353−356)が、開示されている。
【0003】
また、化粧料用の油相成分の応用としては、化粧料に天然油相成分として広く使用されているスクワランを主成分としたスキンケア仕上げ剤(加工技術 Vol.34, No.5, 1999, 322−325)が、また、動・植物抽出物の応用例としては、保湿効果のあるトレメラエキスやコラーゲン産生促進効果のあるブンエキス、レイシエキスを使用したスキンケア加工剤、及び加工技術が、それぞれ開示されている。(加工技術 Vol.34, No.4, 1999, 259−264)
【0004】
同様に、抗炎症剤であるグリチルリチン酸及びその塩や誘導体を繊維上に定着させる仕上げ加工が(特願平8−288115)、また、消炎作用及び又は鎮痛作用を有する疎水性生理活性物質を、マイクロカプセル化して、繊維上に定着させる加工が(特願平9−189251)、それぞれ開示されている。
【0005】
一方、コエンザイムQ10は、補酵素として、ミトコンドリア中のアデノシン三リン酸の生産に必須とされており、免疫機能を向上させることにより心臓病、高血圧、リウマチ性弁疾患に対する有効性等が確認されている。またビタミンE様の作用を示すことが知られている。
【0006】
コエンザイムQ10の用途例として、老化皮膚に対する皮膚手入れ用薬剤について特開平11−513384及び特開平09−510724に開示がある。老年性皮膚乾燥症処置のための組成物として特開平09−510725に、アクネ治療効果を有する化粧料として特開昭61−27914に、抗色素沈着剤として特開昭61−289029に、美肌作用と皮膚賦活作用を有する化粧料について特開昭58−180410にそれぞれ開示がある。
このようにコエンザイムQ10は高い生理活性を持ち、かつ、もともと生体内に存在する安全性の高い物質であることから、化粧料や皮膚外用剤と同様のスキンケア効果を期待した特殊加工繊維素材及び繊維仕上げ加工剤を製造するうえで有望な活性成分である。
【0007】
しかしながらコエンザイムQ10は難水溶性であり、また同時に結晶性が高いため、一般的に、乳化により繊維仕上げ組成物を調製するには困難が伴う。また一旦乳化組成物を調製しても、数日以内にコエンザイムQ10の結晶化が起こって乳化組成物が分離したり、あるいは乳化組成物が固化したりする現象が見られる。また繊維仕上げ剤としての効果を確保するためには、仕上げ加工後の繊維製品にコエンザイムQ10を高濃度で付着させ、かつ、繰り返し洗濯に対する耐久性を付与することが必要であるが、前述したコエンザイムQ10の高結晶性や難溶性のために、これらの要件を満足することができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
抗老化効果、抗酸化効果、細胞賦活効果、抗色素沈着効果を有するコエンザイムQ10を、容易に、かつ高濃度で繊維製品に付着させ、しかも繰り返し洗濯に対する耐久性を付与することができる繊維仕上げ剤、及び、それを用いた仕上げ加工方法、更にはそれで仕上げ加工された繊維製品を提供することを本発明の課題とした。
【0009】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは種々検討した結果、コエンザイムQ10及び油を必須成分として含有する繊維仕上げ剤により、本目的を達成できることを見出した。
更に、本発明者らは、アルキル第4級アンモニウム塩を前記繊維仕上げ剤に含有せしめることにより、コエンザイムQ10の高濃度付着が可能となることを見出した。また更に上述の繊維仕上げ剤にアスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、レチノイン酸及びその誘導体、レチノール及び誘導体、並びにカロチン類から選ばれた1種、又は2種以上を含有せしめることにより、コエンザイムQ10の皮脂酸化抑制効果が、相乗的に高まることを見出し、本発明を完成した。
このような繊維仕上げ剤の加工方法としては、上述の繊維仕上げ剤を繊維に含浸する工程と、その繊維を乾燥する工程を少なくとも有する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の繊維仕上げ剤について詳細に説明する。
本発明に使用されるコエンザイムQ10は、ユビキノン類(2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノン)の側鎖のイソプレン単位が10であるヒト特有のユビキノン類であり、ユビデカレノン又は補酵素UQ10とも呼ばれている。このものは、日本薬局方に記載されており、本発明に好適に使用することができる。
【0011】
本発明では、コエンザイムQ10の溶解剤として油を使用することが必須である。本発明に用いる油としては、エステル系の油相成分、炭化水素系の油相成分、動植物油、シリコーン等が挙げられ、コエンザイムQ10の溶解能がある油であれば、特に制限されない。特に好ましくは、中鎖脂肪酸エステルが挙げられる。中鎖脂肪酸エステルを本発明の油として用いることにより、コエンザイムQ10の繊維仕上げ剤中での濃度を高めることができ有効である。中鎖脂肪酸エステルとは、炭素鎖部分が炭素数C4〜C10の脂肪酸のエステルであり、飽和、不飽和、直鎖、分岐のいずれでも好適に使用できる。
【0012】
中鎖脂肪酸エステルの具体例としては、カプリル酸メチル、イソオクタン酸プロピル、イソオクタン酸エチル、カプリン酸ブチル等の中鎖脂肪酸アルキルエステル、モノカプリル酸エチレングリコール、ジカプリル酸エチレングリコール、モノイソオクタン酸エチレングリコール、ジイソオクタン酸エチレングリコール等の中鎖脂肪酸エチレングリコールエステル類、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノイソオクタン酸プロピレングリコール、ジイソオクタン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール等の中鎖脂肪酸プロピレングリコールエステル類、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル等の中鎖脂肪酸グリセリンエステル類、モノカプリル酸ソルビタン、ジカプリル酸ソルビタン等の中鎖脂肪酸ソルビタンエステル類、ヘキサカプリル酸ソルビトール等の中鎖脂肪酸シルビトールエステル類、モノカプリル酸テトラグリセリル、ヘキサカプリル酸テトラグリセリル等の中鎖脂肪酸ポリグリセリンエステル類、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル等の中鎖脂肪酸ショ糖エステル類等が挙げられる。これらの中で、多価アルコール中鎖脂肪酸エステルについては、構造中にC1〜C3の直鎖、及びまたは分岐のカルボン酸残基を含んでいても差し支えない。
【0013】
これらの中でショ糖酢酸イソ酪酸エステル等のショ糖中鎖脂肪酸エステル類、中鎖脂肪酸ソルビタンエステル類、中鎖脂肪酸プロピレングリコールエステル類、中鎖脂肪酸グリセリンエステル類が、コエンザイムQ10に対する溶解性が良好であることから特に好ましい。またこれらの油を単独で用いるだけではなく、2種類、あるいは3種類以上を併用して用いることもできる。また、以上の中鎖脂肪酸エステル例は、本発明に用いることができる中鎖脂肪酸エステルの一例であって、それらのみに限定はされない。
【0014】
コエンザイムQ10と油の混合比は、コエンザイムQ10に対する油の溶解力に応じて決定すれば良く、特に制限はないが、重量比として0.1:99.9〜30:70が好ましい。
【0015】
本発明の繊維仕上げ剤中でのコエンザイムQ10配合量は特に限定されないが、組成物中に0.01〜10.0重量%、好ましくは0.05〜10.0重量%、更に好ましくは0.1〜10.0重量%である。
また、使用の際は、対象とする繊維重量に対して0.001〜5.0%owf(繊維重量に対するコエンザイムQ10の重量%)、更に0.005〜5.0%owf、特に0.01〜5.0%owfとなるように用いるのが好ましい。
【0016】
本発明では、コエンザイムQ10にアルキル第4級アンモニウム塩を併用すると、コエンザイムQ10の繊維への吸着性を向上させ、加工後の洗濯に対する耐久性を確保する点で、より好ましい。アルキル第4級アンモニウム塩は、本発明の仕上げ剤を調製する際に、コエンザイムQ10、更には、油及び、水の一部と、一定温度以上(以下相転移温度という)で混合するときに液晶を形成する。
更には、この液晶に水相の残分を添加混合することで、アルキル第4級アンモニウム塩からなる数分子膜多層構造中にコエンザイムQ10を内包した小胞体水分散物を得ることができる。
この数分子膜小胞体(本明細書では、以下代表して2分子膜小胞体と称する)とは、これ自体、繊維に対する吸着性が大きく、従って、コエンザイムQ10を内包した小胞体の希薄溶液に繊維を浸漬することで、繊維に、高濃度にコエンザイムQ10を付着させることができる。加えて、この2分子膜小胞体は、繊維に対する親和性が大きいので、加工後の耐洗濯性に優れ、洗濯に対して耐久性の良いコエンザイムQ10仕上げ加工を行うことができる。
【0017】
以上の2分子膜小胞体を形成し得るアルキル第4級アンモニウム塩としては、炭素数8〜22のアルキル基を少なくとも1つ有するものであり、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジタロージメチルアンモニウムブロマイド、ジオレイルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアロイルN,N―ジメチルエチレンジアミドジメチル硫酸4級化物、ジステアロイルジエチレントリアミンジメチル硫酸4級化物等が挙げられる。
【0018】
コエンザイムQ10とアルキル第4級アンモニウム塩の混合比は、コエンザイムQ10:アルキル第4級アンモニウム塩(重量比)として、好ましくは1:99〜90:10、より好ましくは5:95〜80:20、更に好ましくは10:90〜60:40である。
また、上記の2分子膜小胞体を得る場合、前記のアルキル第4級アンモニウム塩と高級アルコールの混合物も好適に使用できる。アルキル第4級アンモニウム塩と高級アルコールを組み合わせることで、得られる小胞体の繊維への吸着力を、更に向上させることができる。
【0019】
高級アルコールとしては特に制限はされず、デシルアルコール、ラウリルアルコール、エチルアルコール、ステアリルアルコール、牛脂アルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が好適に使用できる。
アルキル第4級アンモニウム塩と高級アルコールの混合比は、アルキル第4級アンモニウム塩:高級アルコール(重量比)として、好ましくは20:80〜99:5、より好ましくは30:70〜70:30、更に好ましくは40:60〜60:40である。
【0020】
本発明の繊維仕上げ剤には、コエンザイムQ10に更に加えて、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、レチノイン酸及びその誘導体、レチノール及びその誘導体、カロチン類から選ばれた1種、又は2種以上を併用することで、コエンザイムQ10の皮脂酸化抑制効果が相乗的に増強される。
これらは本発明の繊維仕上げ剤中に、コエンザイムQ10に対して重量比で0.1〜2重量部の範囲で配合することが好ましい。
好ましいアスコルビン酸及びその誘導体としては、ビタミンC、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、モノステアリン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル等が挙げられる。
好ましいトコフェロール及びその誘導体としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、天然ビタミンE、及びそれらの脂肪酸、及びまたは有機酸エステル、ポリオキシアルキレン付加物等が挙げられる。
好ましいレチノイン酸及びその誘導体としては、ビタミンA酸、及びそれらのアルキルエステル、レチノールエステル、トコフェロールエステル等が挙げられる。
好ましいレチノール及びその誘導体としては、ビタミンA、及びそれらの脂肪酸、及びまたは有機酸エステル等が挙げられる。
好ましいカロチン類としては、β−カロチン、α−カロチン、γ−カロチン、δ−カロチン、リコピン、ゼアキサンチン、クリプトチキサンチン、エキネチン等が挙げられる。
【0021】
本発明の繊維仕上げ剤には、上記必須成分のほか本発明の効果を損なわない範囲で食品、医薬品、医薬部外品、化粧品など許容される油分、高級アルコール、脂肪酸、紫外線吸収剤、粉体、顔料、界面活性剤、レシチン、多価アルコール、糖、高分子化合物、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等を配合することができる。
この他添加物として用いられるものは、類似の構造を持つCOQ9、COQ11、ビタミンK1、ビタミンK2、などイソプレノイド骨格を有する化合物等であり、これらを添加することにより、更にコエンザイムQ10の結晶析出を抑制させることが可能である。
【0022】
本発明の繊維用仕上げ剤組成物は、コエンザイムQ10、油、好ましくはアルキル第4級アンモニウム塩、またはアルキル第4級アンモニウム塩及び高級アルコールの混合物を、予め混合して、または別々に水相に攪拌下添加することで乳化分散させ調製することができる。その際に、ホモミキキサー、パドル式乳化機、高圧ホモジナイザー等の、繊維仕上げ剤を製造する際に、一般的に使用される乳化機械が好適に使用できる。
特に、本発明の繊維仕上げ剤は、コエンザイムQ10、油、水相の全重量の5〜50%、好ましくは10〜30%の水とを、アルキル第4級アンモニウム塩またはこれと高級アルコールの混合物の相転移温度以上で攪拌、混合して、液晶構造を有する組成物を形成させた後、この液晶構造組成物に水相の残量を添加混合することで、アルキル第4級アンモニウム塩からなる2分子膜多層構造中に、コエンザイムQ10が内包された小胞体水分散液を形成させて製造することが好ましい。
【0023】
本発明の繊維仕上げ剤は、繊維製品に加工される際、耐洗濯性を向上させる目的で、種々の樹脂を併用することができる。これらの樹脂は、一般に繊維加工に使用される樹脂ならいずれの樹脂も好適に使用できるが、弾性があり、繊維への接着機能を有し、かつ、繊維製品上のコエンザイムQ10が皮膚と接触するのを阻害しないものが好ましい。具体的には、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の繊維仕上げ剤を用いた繊維加工方法は、繊維に含浸する工程と、その繊維を乾燥する工程とを少なくとも含む。これにより本繊維仕上げ剤の有効成分であるコエンザイムQ10が繊維に有効量付着することが可能となる。例えば、繊維製品を仕上げ加工する際の一般的な方法、パッド−ドライ法、吸尽法、スプレー法等を適用することができる。また、洗濯時の洗濯液に、あるいはすすぎ時のすすぎ液に本発明の繊維仕上げ剤を添加して使用することができる。その際、使用量やすすぎ時間に特に制限はない。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお配合比は、特に断らない限り重量%で示す。
【0026】
(コエンザイムQ10の繊維への吸着量の評価)
本発明の繊維仕上げ剤を用いた、吸尽法を繊維仕上げ加工方法とする、コエンザイムQ10の繊維への吸着量の評価、及び当該処理繊維の洗濯安定性の評価結果を示す。
【0027】
(繊維仕上げ剤の調製方法:実施例1〜5、比較例1〜3)
真空装置、かき取り攪拌機、加熱装置を備えたステンレス製の1リットル乳化機に、水を除く表1の成分を、また水の全量の1/5に相当する分をそれぞれ仕込み、30mmHgの減圧下、相転移温度より15〜20℃高い温度70℃で、毎分100回転で60分間攪拌し、液晶構造組成物を得た。更に、同条件で、予め70℃に加温しておいた水の残量を添加し、60分間攪拌し、本発明、及び比較例の繊維仕上げ剤を得た。
【0028】
(繊維仕上げ加工方法)
それぞれ精錬漂白済みの綿100%からなる試験生地に対して、吸尽法を用いて繊維仕上げ加工を行った。すなわち、コエンザイムQ10が純分で0.2%owfになるように濃度調整した処理溶液を、試験生地に対して20倍重量調製した。この処理液中に、試験生地を40℃×30分間浸せきした後、遠心脱水、100〜105℃で15分間熱風乾燥を行った。
【0029】
(繊維への吸着量の測定)
上述の処理で得られた試験生地を、約10gに裁断し重量を精秤して、ソックスレー抽出器で溶媒にクロロホルム1/メタノール1(容量比)を用いて、30分間抽出を行った。得られた抽出液の溶媒を除去後、得られた残分について高速液体クロマトグラフィー条件1により、含有するコエンザイムQ10を定量した。
この定量値と、予め測定しておいた試験生地の精秤値から、コエンザイムQ10の繊維への吸着量を、試験生地重量に対するコエンザイムQ10の重量%(owf%)として算出した。更に、実施例、及び比較例の洗濯に対する耐久性を評価する目的で、上述の処理で得られた試験生地1Kgを、下記の洗濯処理条件で洗濯処理を行った。洗濯後の各試験生地について、同様の方法により、コエンザイムQ10の吸着量の測定を行い、洗濯に対する耐久性の指標とした。
【0030】
(高速液体クロマトグラフィー条件1)
カラム :オクタデシル修飾シリカゲルカラム(150mm×4.6mmφ)
カラム温度 :35℃
移動相 :メタノール/エタノール=8/2(容量比)
流速 :1.0ml/分
検出器 :紫外吸収検出器(波長275nm)
試料注入量 :20μl(試料はエタノールに希釈)
【0031】
(洗濯処理条件)
洗濯液として、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを主成分とした市販家庭用洗剤(花王製アタック)5g/リッター水道水溶液を30リッター調製した。この液を用いて、全自動家庭用洗濯機(日立製KWS312)により、室温で30分洗濯、更に30リットルの水道水で15分間すすぎ処理を行い、遠心脱水後、100〜105℃で15分間熱風乾燥を行った。
以上により得られた結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
表1に示すように、実施例1〜5のコエンザイムQ10を含有する繊維仕上げ剤は極めて良好なコエンザイムQ10の繊維への吸着量を示すことが分かる。また洗濯後においても吸着量の大きな減少は見られず、洗濯安定性においても優れることが分かる。
【0033】
(皮脂酸化抑制効果の評価)
次に、本発明の繊維仕上げ剤により、繊維仕上げ加工を行った生地による、皮膚に対する皮脂酸化抑制効果の評価結果を示す。
【0034】
(繊維仕上げ剤の調製方法:実施例6〜8、比較例4〜5)
表2に示す成分を用いて、実施例1〜5、比較例1〜3と同様の方法により、本発明の繊維仕上げ剤を得た。
【0035】
(繊維仕上げ加工方法)
実施例1〜5、比較例1〜3と同様の方法により、繊維仕上げ加工生地を調製した。
める。
【0036】
(皮脂酸化抑制効果の測定)
皮脂の主要成分であり、皮脂の酸化度合いの指標に一般的に使用される、スクワレンの酸化度合いを調べる方法により、皮脂酸化抑制効果の測定を行った。すなわち、表2に示す実施例6〜8、比較例4〜5の繊維仕上げ剤を用いて、実施例1〜5、比較例1〜3と同様の方法により調製した試験生地を、それぞれ10cm×20cmに裁断して試験試料を作成した。この試験試料を、男性(20〜40才台)被験者3名の前腕部に3日間接着させることで、その間に生ずる皮脂酸化に対する実施例、及び比較例の抑制効果を評価した。3日後、試験試料を外し、その前腕部の部位について、ストリッピング用テープ(CuDERM COPORATION社製)を用いて、3回ストリッピングを行い皮膚の角層を回収した。
回収したテープを、溶媒にクロロホルムを使用して、超音波洗浄器で、室温×15分間抽出処理を行い、後、溶媒を除去して得られた固形分中のスクワレンパーオキサイドとスクワレンを高速液体クロマトグラフィー条件2で定量した。得られたスクワレンのピーク面積に対するスクワレンパーオキサイドのピーク面積の比(%、皮脂の酸化度合い)を下記の皮脂酸化度合いを求める計算式を用いて、皮脂酸化抑制効果を評価した。結果を表2に示す。
【0037】
(皮脂酸化度合いを求める計算式)
皮脂酸化度合い(%)=(スクワレンパーオキサイドのピーク面積/スクワレンのピーク面積)×100
【0038】
(高速液体クロマトグラフィー条件2)
カラム :オクタデシル修飾シリカゲルカラム(150mm×4.6mmφ)
カラム温度 :室温
移動相 :メタノール
流速 :1.0ml/分
検出器 :紫外吸収検出器(波長275nm)
試料注入量 :20μl(試料は、メタノール/n−ブタノール=1/1(容量比)で希釈)
以上により得られた結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
表2に見られるように、実施例6〜8のコエンザイムQ10を含有する繊維仕上げ剤により仕上げ加工された繊維は、極めて良好な皮脂酸化抑制効果を示すことが分かる。
【0040】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の繊維仕上げ剤によれば、皮膚科学的に有用なコエンザイムQ10を、その性能が発揮される有効濃度で繊維に付着せしめ、かつその洗濯耐久性を保持しつつ繊維製品に固定させることができる。さらには、本発明の繊維あるいは製品は、皮脂酸化を抑制する効果を有する。
【発明が属する技術分野】
本発明は、抗老化効果、抗酸化効果、細胞賦活効果、抗色素沈着効果を有するコエンザイムQ10を含有する繊維仕上げ剤に関するものであり、容易にコエンザイムQ10を、有効濃度で繊維製品に付着加工することができる繊維仕上げ剤、及び該仕上げ剤で仕上げた洗濯耐久性に優れた繊維、及び繊維製品、及びその仕上げ加工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、繊維製品の仕上げ加工において、化粧品に使用される成分を主成分とした仕上げ剤で繊維を加工し、着用時に皮膚との摩擦により、それら成分が皮膚に移行するといった化粧料や皮膚外用剤と同様のスキンケア効果を期待した特殊加工法や特殊加工繊維素材が開発されている。
具体的には、天然保湿成分であるピロリドンカルボン酸を綿に付与したスキンケア素材、抗炎症作用を有するアロエ抽出物を付与したスキンケア素材(加工技術 Vol34, No.6, 1999, 353−356)が、開示されている。
【0003】
また、化粧料用の油相成分の応用としては、化粧料に天然油相成分として広く使用されているスクワランを主成分としたスキンケア仕上げ剤(加工技術 Vol.34, No.5, 1999, 322−325)が、また、動・植物抽出物の応用例としては、保湿効果のあるトレメラエキスやコラーゲン産生促進効果のあるブンエキス、レイシエキスを使用したスキンケア加工剤、及び加工技術が、それぞれ開示されている。(加工技術 Vol.34, No.4, 1999, 259−264)
【0004】
同様に、抗炎症剤であるグリチルリチン酸及びその塩や誘導体を繊維上に定着させる仕上げ加工が(特願平8−288115)、また、消炎作用及び又は鎮痛作用を有する疎水性生理活性物質を、マイクロカプセル化して、繊維上に定着させる加工が(特願平9−189251)、それぞれ開示されている。
【0005】
一方、コエンザイムQ10は、補酵素として、ミトコンドリア中のアデノシン三リン酸の生産に必須とされており、免疫機能を向上させることにより心臓病、高血圧、リウマチ性弁疾患に対する有効性等が確認されている。またビタミンE様の作用を示すことが知られている。
【0006】
コエンザイムQ10の用途例として、老化皮膚に対する皮膚手入れ用薬剤について特開平11−513384及び特開平09−510724に開示がある。老年性皮膚乾燥症処置のための組成物として特開平09−510725に、アクネ治療効果を有する化粧料として特開昭61−27914に、抗色素沈着剤として特開昭61−289029に、美肌作用と皮膚賦活作用を有する化粧料について特開昭58−180410にそれぞれ開示がある。
このようにコエンザイムQ10は高い生理活性を持ち、かつ、もともと生体内に存在する安全性の高い物質であることから、化粧料や皮膚外用剤と同様のスキンケア効果を期待した特殊加工繊維素材及び繊維仕上げ加工剤を製造するうえで有望な活性成分である。
【0007】
しかしながらコエンザイムQ10は難水溶性であり、また同時に結晶性が高いため、一般的に、乳化により繊維仕上げ組成物を調製するには困難が伴う。また一旦乳化組成物を調製しても、数日以内にコエンザイムQ10の結晶化が起こって乳化組成物が分離したり、あるいは乳化組成物が固化したりする現象が見られる。また繊維仕上げ剤としての効果を確保するためには、仕上げ加工後の繊維製品にコエンザイムQ10を高濃度で付着させ、かつ、繰り返し洗濯に対する耐久性を付与することが必要であるが、前述したコエンザイムQ10の高結晶性や難溶性のために、これらの要件を満足することができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
抗老化効果、抗酸化効果、細胞賦活効果、抗色素沈着効果を有するコエンザイムQ10を、容易に、かつ高濃度で繊維製品に付着させ、しかも繰り返し洗濯に対する耐久性を付与することができる繊維仕上げ剤、及び、それを用いた仕上げ加工方法、更にはそれで仕上げ加工された繊維製品を提供することを本発明の課題とした。
【0009】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは種々検討した結果、コエンザイムQ10及び油を必須成分として含有する繊維仕上げ剤により、本目的を達成できることを見出した。
更に、本発明者らは、アルキル第4級アンモニウム塩を前記繊維仕上げ剤に含有せしめることにより、コエンザイムQ10の高濃度付着が可能となることを見出した。また更に上述の繊維仕上げ剤にアスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、レチノイン酸及びその誘導体、レチノール及び誘導体、並びにカロチン類から選ばれた1種、又は2種以上を含有せしめることにより、コエンザイムQ10の皮脂酸化抑制効果が、相乗的に高まることを見出し、本発明を完成した。
このような繊維仕上げ剤の加工方法としては、上述の繊維仕上げ剤を繊維に含浸する工程と、その繊維を乾燥する工程を少なくとも有する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の繊維仕上げ剤について詳細に説明する。
本発明に使用されるコエンザイムQ10は、ユビキノン類(2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノン)の側鎖のイソプレン単位が10であるヒト特有のユビキノン類であり、ユビデカレノン又は補酵素UQ10とも呼ばれている。このものは、日本薬局方に記載されており、本発明に好適に使用することができる。
【0011】
本発明では、コエンザイムQ10の溶解剤として油を使用することが必須である。本発明に用いる油としては、エステル系の油相成分、炭化水素系の油相成分、動植物油、シリコーン等が挙げられ、コエンザイムQ10の溶解能がある油であれば、特に制限されない。特に好ましくは、中鎖脂肪酸エステルが挙げられる。中鎖脂肪酸エステルを本発明の油として用いることにより、コエンザイムQ10の繊維仕上げ剤中での濃度を高めることができ有効である。中鎖脂肪酸エステルとは、炭素鎖部分が炭素数C4〜C10の脂肪酸のエステルであり、飽和、不飽和、直鎖、分岐のいずれでも好適に使用できる。
【0012】
中鎖脂肪酸エステルの具体例としては、カプリル酸メチル、イソオクタン酸プロピル、イソオクタン酸エチル、カプリン酸ブチル等の中鎖脂肪酸アルキルエステル、モノカプリル酸エチレングリコール、ジカプリル酸エチレングリコール、モノイソオクタン酸エチレングリコール、ジイソオクタン酸エチレングリコール等の中鎖脂肪酸エチレングリコールエステル類、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノイソオクタン酸プロピレングリコール、ジイソオクタン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール等の中鎖脂肪酸プロピレングリコールエステル類、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル等の中鎖脂肪酸グリセリンエステル類、モノカプリル酸ソルビタン、ジカプリル酸ソルビタン等の中鎖脂肪酸ソルビタンエステル類、ヘキサカプリル酸ソルビトール等の中鎖脂肪酸シルビトールエステル類、モノカプリル酸テトラグリセリル、ヘキサカプリル酸テトラグリセリル等の中鎖脂肪酸ポリグリセリンエステル類、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル等の中鎖脂肪酸ショ糖エステル類等が挙げられる。これらの中で、多価アルコール中鎖脂肪酸エステルについては、構造中にC1〜C3の直鎖、及びまたは分岐のカルボン酸残基を含んでいても差し支えない。
【0013】
これらの中でショ糖酢酸イソ酪酸エステル等のショ糖中鎖脂肪酸エステル類、中鎖脂肪酸ソルビタンエステル類、中鎖脂肪酸プロピレングリコールエステル類、中鎖脂肪酸グリセリンエステル類が、コエンザイムQ10に対する溶解性が良好であることから特に好ましい。またこれらの油を単独で用いるだけではなく、2種類、あるいは3種類以上を併用して用いることもできる。また、以上の中鎖脂肪酸エステル例は、本発明に用いることができる中鎖脂肪酸エステルの一例であって、それらのみに限定はされない。
【0014】
コエンザイムQ10と油の混合比は、コエンザイムQ10に対する油の溶解力に応じて決定すれば良く、特に制限はないが、重量比として0.1:99.9〜30:70が好ましい。
【0015】
本発明の繊維仕上げ剤中でのコエンザイムQ10配合量は特に限定されないが、組成物中に0.01〜10.0重量%、好ましくは0.05〜10.0重量%、更に好ましくは0.1〜10.0重量%である。
また、使用の際は、対象とする繊維重量に対して0.001〜5.0%owf(繊維重量に対するコエンザイムQ10の重量%)、更に0.005〜5.0%owf、特に0.01〜5.0%owfとなるように用いるのが好ましい。
【0016】
本発明では、コエンザイムQ10にアルキル第4級アンモニウム塩を併用すると、コエンザイムQ10の繊維への吸着性を向上させ、加工後の洗濯に対する耐久性を確保する点で、より好ましい。アルキル第4級アンモニウム塩は、本発明の仕上げ剤を調製する際に、コエンザイムQ10、更には、油及び、水の一部と、一定温度以上(以下相転移温度という)で混合するときに液晶を形成する。
更には、この液晶に水相の残分を添加混合することで、アルキル第4級アンモニウム塩からなる数分子膜多層構造中にコエンザイムQ10を内包した小胞体水分散物を得ることができる。
この数分子膜小胞体(本明細書では、以下代表して2分子膜小胞体と称する)とは、これ自体、繊維に対する吸着性が大きく、従って、コエンザイムQ10を内包した小胞体の希薄溶液に繊維を浸漬することで、繊維に、高濃度にコエンザイムQ10を付着させることができる。加えて、この2分子膜小胞体は、繊維に対する親和性が大きいので、加工後の耐洗濯性に優れ、洗濯に対して耐久性の良いコエンザイムQ10仕上げ加工を行うことができる。
【0017】
以上の2分子膜小胞体を形成し得るアルキル第4級アンモニウム塩としては、炭素数8〜22のアルキル基を少なくとも1つ有するものであり、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジタロージメチルアンモニウムブロマイド、ジオレイルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアロイルN,N―ジメチルエチレンジアミドジメチル硫酸4級化物、ジステアロイルジエチレントリアミンジメチル硫酸4級化物等が挙げられる。
【0018】
コエンザイムQ10とアルキル第4級アンモニウム塩の混合比は、コエンザイムQ10:アルキル第4級アンモニウム塩(重量比)として、好ましくは1:99〜90:10、より好ましくは5:95〜80:20、更に好ましくは10:90〜60:40である。
また、上記の2分子膜小胞体を得る場合、前記のアルキル第4級アンモニウム塩と高級アルコールの混合物も好適に使用できる。アルキル第4級アンモニウム塩と高級アルコールを組み合わせることで、得られる小胞体の繊維への吸着力を、更に向上させることができる。
【0019】
高級アルコールとしては特に制限はされず、デシルアルコール、ラウリルアルコール、エチルアルコール、ステアリルアルコール、牛脂アルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が好適に使用できる。
アルキル第4級アンモニウム塩と高級アルコールの混合比は、アルキル第4級アンモニウム塩:高級アルコール(重量比)として、好ましくは20:80〜99:5、より好ましくは30:70〜70:30、更に好ましくは40:60〜60:40である。
【0020】
本発明の繊維仕上げ剤には、コエンザイムQ10に更に加えて、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、レチノイン酸及びその誘導体、レチノール及びその誘導体、カロチン類から選ばれた1種、又は2種以上を併用することで、コエンザイムQ10の皮脂酸化抑制効果が相乗的に増強される。
これらは本発明の繊維仕上げ剤中に、コエンザイムQ10に対して重量比で0.1〜2重量部の範囲で配合することが好ましい。
好ましいアスコルビン酸及びその誘導体としては、ビタミンC、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、モノステアリン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル等が挙げられる。
好ましいトコフェロール及びその誘導体としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、天然ビタミンE、及びそれらの脂肪酸、及びまたは有機酸エステル、ポリオキシアルキレン付加物等が挙げられる。
好ましいレチノイン酸及びその誘導体としては、ビタミンA酸、及びそれらのアルキルエステル、レチノールエステル、トコフェロールエステル等が挙げられる。
好ましいレチノール及びその誘導体としては、ビタミンA、及びそれらの脂肪酸、及びまたは有機酸エステル等が挙げられる。
好ましいカロチン類としては、β−カロチン、α−カロチン、γ−カロチン、δ−カロチン、リコピン、ゼアキサンチン、クリプトチキサンチン、エキネチン等が挙げられる。
【0021】
本発明の繊維仕上げ剤には、上記必須成分のほか本発明の効果を損なわない範囲で食品、医薬品、医薬部外品、化粧品など許容される油分、高級アルコール、脂肪酸、紫外線吸収剤、粉体、顔料、界面活性剤、レシチン、多価アルコール、糖、高分子化合物、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等を配合することができる。
この他添加物として用いられるものは、類似の構造を持つCOQ9、COQ11、ビタミンK1、ビタミンK2、などイソプレノイド骨格を有する化合物等であり、これらを添加することにより、更にコエンザイムQ10の結晶析出を抑制させることが可能である。
【0022】
本発明の繊維用仕上げ剤組成物は、コエンザイムQ10、油、好ましくはアルキル第4級アンモニウム塩、またはアルキル第4級アンモニウム塩及び高級アルコールの混合物を、予め混合して、または別々に水相に攪拌下添加することで乳化分散させ調製することができる。その際に、ホモミキキサー、パドル式乳化機、高圧ホモジナイザー等の、繊維仕上げ剤を製造する際に、一般的に使用される乳化機械が好適に使用できる。
特に、本発明の繊維仕上げ剤は、コエンザイムQ10、油、水相の全重量の5〜50%、好ましくは10〜30%の水とを、アルキル第4級アンモニウム塩またはこれと高級アルコールの混合物の相転移温度以上で攪拌、混合して、液晶構造を有する組成物を形成させた後、この液晶構造組成物に水相の残量を添加混合することで、アルキル第4級アンモニウム塩からなる2分子膜多層構造中に、コエンザイムQ10が内包された小胞体水分散液を形成させて製造することが好ましい。
【0023】
本発明の繊維仕上げ剤は、繊維製品に加工される際、耐洗濯性を向上させる目的で、種々の樹脂を併用することができる。これらの樹脂は、一般に繊維加工に使用される樹脂ならいずれの樹脂も好適に使用できるが、弾性があり、繊維への接着機能を有し、かつ、繊維製品上のコエンザイムQ10が皮膚と接触するのを阻害しないものが好ましい。具体的には、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の繊維仕上げ剤を用いた繊維加工方法は、繊維に含浸する工程と、その繊維を乾燥する工程とを少なくとも含む。これにより本繊維仕上げ剤の有効成分であるコエンザイムQ10が繊維に有効量付着することが可能となる。例えば、繊維製品を仕上げ加工する際の一般的な方法、パッド−ドライ法、吸尽法、スプレー法等を適用することができる。また、洗濯時の洗濯液に、あるいはすすぎ時のすすぎ液に本発明の繊維仕上げ剤を添加して使用することができる。その際、使用量やすすぎ時間に特に制限はない。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお配合比は、特に断らない限り重量%で示す。
【0026】
(コエンザイムQ10の繊維への吸着量の評価)
本発明の繊維仕上げ剤を用いた、吸尽法を繊維仕上げ加工方法とする、コエンザイムQ10の繊維への吸着量の評価、及び当該処理繊維の洗濯安定性の評価結果を示す。
【0027】
(繊維仕上げ剤の調製方法:実施例1〜5、比較例1〜3)
真空装置、かき取り攪拌機、加熱装置を備えたステンレス製の1リットル乳化機に、水を除く表1の成分を、また水の全量の1/5に相当する分をそれぞれ仕込み、30mmHgの減圧下、相転移温度より15〜20℃高い温度70℃で、毎分100回転で60分間攪拌し、液晶構造組成物を得た。更に、同条件で、予め70℃に加温しておいた水の残量を添加し、60分間攪拌し、本発明、及び比較例の繊維仕上げ剤を得た。
【0028】
(繊維仕上げ加工方法)
それぞれ精錬漂白済みの綿100%からなる試験生地に対して、吸尽法を用いて繊維仕上げ加工を行った。すなわち、コエンザイムQ10が純分で0.2%owfになるように濃度調整した処理溶液を、試験生地に対して20倍重量調製した。この処理液中に、試験生地を40℃×30分間浸せきした後、遠心脱水、100〜105℃で15分間熱風乾燥を行った。
【0029】
(繊維への吸着量の測定)
上述の処理で得られた試験生地を、約10gに裁断し重量を精秤して、ソックスレー抽出器で溶媒にクロロホルム1/メタノール1(容量比)を用いて、30分間抽出を行った。得られた抽出液の溶媒を除去後、得られた残分について高速液体クロマトグラフィー条件1により、含有するコエンザイムQ10を定量した。
この定量値と、予め測定しておいた試験生地の精秤値から、コエンザイムQ10の繊維への吸着量を、試験生地重量に対するコエンザイムQ10の重量%(owf%)として算出した。更に、実施例、及び比較例の洗濯に対する耐久性を評価する目的で、上述の処理で得られた試験生地1Kgを、下記の洗濯処理条件で洗濯処理を行った。洗濯後の各試験生地について、同様の方法により、コエンザイムQ10の吸着量の測定を行い、洗濯に対する耐久性の指標とした。
【0030】
(高速液体クロマトグラフィー条件1)
カラム :オクタデシル修飾シリカゲルカラム(150mm×4.6mmφ)
カラム温度 :35℃
移動相 :メタノール/エタノール=8/2(容量比)
流速 :1.0ml/分
検出器 :紫外吸収検出器(波長275nm)
試料注入量 :20μl(試料はエタノールに希釈)
【0031】
(洗濯処理条件)
洗濯液として、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを主成分とした市販家庭用洗剤(花王製アタック)5g/リッター水道水溶液を30リッター調製した。この液を用いて、全自動家庭用洗濯機(日立製KWS312)により、室温で30分洗濯、更に30リットルの水道水で15分間すすぎ処理を行い、遠心脱水後、100〜105℃で15分間熱風乾燥を行った。
以上により得られた結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
表1に示すように、実施例1〜5のコエンザイムQ10を含有する繊維仕上げ剤は極めて良好なコエンザイムQ10の繊維への吸着量を示すことが分かる。また洗濯後においても吸着量の大きな減少は見られず、洗濯安定性においても優れることが分かる。
【0033】
(皮脂酸化抑制効果の評価)
次に、本発明の繊維仕上げ剤により、繊維仕上げ加工を行った生地による、皮膚に対する皮脂酸化抑制効果の評価結果を示す。
【0034】
(繊維仕上げ剤の調製方法:実施例6〜8、比較例4〜5)
表2に示す成分を用いて、実施例1〜5、比較例1〜3と同様の方法により、本発明の繊維仕上げ剤を得た。
【0035】
(繊維仕上げ加工方法)
実施例1〜5、比較例1〜3と同様の方法により、繊維仕上げ加工生地を調製した。
める。
【0036】
(皮脂酸化抑制効果の測定)
皮脂の主要成分であり、皮脂の酸化度合いの指標に一般的に使用される、スクワレンの酸化度合いを調べる方法により、皮脂酸化抑制効果の測定を行った。すなわち、表2に示す実施例6〜8、比較例4〜5の繊維仕上げ剤を用いて、実施例1〜5、比較例1〜3と同様の方法により調製した試験生地を、それぞれ10cm×20cmに裁断して試験試料を作成した。この試験試料を、男性(20〜40才台)被験者3名の前腕部に3日間接着させることで、その間に生ずる皮脂酸化に対する実施例、及び比較例の抑制効果を評価した。3日後、試験試料を外し、その前腕部の部位について、ストリッピング用テープ(CuDERM COPORATION社製)を用いて、3回ストリッピングを行い皮膚の角層を回収した。
回収したテープを、溶媒にクロロホルムを使用して、超音波洗浄器で、室温×15分間抽出処理を行い、後、溶媒を除去して得られた固形分中のスクワレンパーオキサイドとスクワレンを高速液体クロマトグラフィー条件2で定量した。得られたスクワレンのピーク面積に対するスクワレンパーオキサイドのピーク面積の比(%、皮脂の酸化度合い)を下記の皮脂酸化度合いを求める計算式を用いて、皮脂酸化抑制効果を評価した。結果を表2に示す。
【0037】
(皮脂酸化度合いを求める計算式)
皮脂酸化度合い(%)=(スクワレンパーオキサイドのピーク面積/スクワレンのピーク面積)×100
【0038】
(高速液体クロマトグラフィー条件2)
カラム :オクタデシル修飾シリカゲルカラム(150mm×4.6mmφ)
カラム温度 :室温
移動相 :メタノール
流速 :1.0ml/分
検出器 :紫外吸収検出器(波長275nm)
試料注入量 :20μl(試料は、メタノール/n−ブタノール=1/1(容量比)で希釈)
以上により得られた結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
表2に見られるように、実施例6〜8のコエンザイムQ10を含有する繊維仕上げ剤により仕上げ加工された繊維は、極めて良好な皮脂酸化抑制効果を示すことが分かる。
【0040】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の繊維仕上げ剤によれば、皮膚科学的に有用なコエンザイムQ10を、その性能が発揮される有効濃度で繊維に付着せしめ、かつその洗濯耐久性を保持しつつ繊維製品に固定させることができる。さらには、本発明の繊維あるいは製品は、皮脂酸化を抑制する効果を有する。
Claims (7)
- コエンザイムQ10、及び油を必須成分として含有することを特徴とする繊維仕上げ剤。
- 請求項1に記載の油が、中鎖脂肪酸エステルであることを特徴とする繊維仕上げ剤。
- コエンザイムQ10、及び油に加えて、更にアルキル第4級アンモニウム塩を含有することを特徴とする請求項1〜2に記載の繊維仕上げ剤。
- 請求項3に記載のコエンザイムQ10が、アルキル第4級アンモニウム塩を含む小胞体中に内包され、かつ、その小胞体を水に分散してなることを特徴とする請求項3に記載の繊維仕上げ剤。
- コエンザイムQ10に加えて、アスコルビン酸及び/又はびその誘導体、トコフェロール及び/又はその誘導体、レチノイン酸及び/又はその誘導体、レチノール及び/又は誘導体、並びにカロチン類から選ばれた1種、又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維仕上げ剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維仕上げ剤を用いて処理されることにより、コエンザイムQ10を吸着した繊維。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維仕上げ剤を、繊維に含浸する工程と、その繊維を乾燥する工程とを少なくとも有する繊維仕上げ加工方法。
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