JP2004075759A - 着色微粒子分散物、インク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カプセルの芯物質として、少なくとも1種の疎水性色素と、少なくとも1種の疎水性ポリマーと、少なくとも1種の高沸点有機溶媒とを含有した着色組成物を内包し、且つ、下記一般式(A)で表される2個のイシアネート基を有する2官能イシアネート化合物と、同一分子内に3個以上のイシアネート基を有する多官能イシアネート化合物とを用いて該カプセル壁を形成したことを特徴とするマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
【化1】
〔一般式(A)において、Arはアリーレン基を表し、Xは単結合又は2価の連結基を表し、Rはアルキレン基、アラルキレン基又はアリーレン基を表し、mは0〜20の整数を表す。〕
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素を内包するマイクロカプセル含有着色微粒子分散物、該分散物を含有するインク組成物、及び該インクを用いたインクジェット記録方法に関し、特に、ノズル詰まりを改善し吐出安定性を向上させたインク組成物、及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューターの普及に伴い、インクジェット記録プリンターがオフィスだけでなく家庭でも、紙やフィルム、布等の印字等に広く利用されている。このインクジェット記録用のインクとしては、油性インクや水性インク、固体状インク等が知られているが、これらの中でも、製造容易性や取扱性、臭気性、安全性等の面より水性インクが有利であり、従って水性インクが主流となっている。
【0003】
しかしながら、水性インクの多くは、分子状態で溶解する水溶性染料を用いているため、透明性及び色濃度が高いという利点があるものの、染料が水溶性であることによる耐水性の不足、いわゆる普通紙に印字すると滲み(ブリード)を生じて著しく印字品質が低下したり、耐光性が悪く、更に、表面に多孔質無機微粒子を含むインク受容層を設けた記録紙(以下、これを「写真画質用紙」ということがある。)においては、酸化性ガス(SOx、NOx、オゾン等)の影響により画像保存性が著しく悪いという欠点を有していた。
【0004】
そこで、上記問題を解決する目的で顔料や分散染料を用いた水性インクが、例えば、特開昭56−157468号、特開平4−18468号、同10−110126号、同10−195355号等の各公報において提案されている。
ところが、これらの水性インクの場合、耐水性はある程度向上するものの十分とはいい難く、上記水性インク中の顔料や分散染料の分散物の保存安定性に欠け、インク吐出口での目詰まりを起こし易い等の問題がある。更に、写真画質用紙においては、上記顔料や染料を用いたインクは染み込性に乏しく、手で擦ると表面から顔料や染料が剥離し易いという問題もある。
【0005】
一方、特開昭58−45272号、特開平6−340835号、同7−268254号、同7−268257号、同7−268260号の各公報には、ウレタンやポリエステル分散物粒子に染料を内包させる方法が提案されている。しかしながら、この方法により得られたインクジェット用インクの場合、色調が不十分であり、色再現性が十分でなく、耐退色性も十分でない。更に、写真画質用紙に印字した場合、消しゴムなどによる耐擦過性が不足している。
【0006】
以上の通り、取扱性や臭気、安全性を具備すると共に、分散粒子の粒径が小さく、分散物の経時安定性及び保存安定性に優れ、従って、インクに適用した場合に、ノズル先端での目詰まりがなく吐出安定性に優れ、紙依存性がなく発色性や色調(色相)に優れ、写真画質用紙を用いた場合でもインク浸透性に優れ、印字後の耐水性、特に画像保存性及び耐擦過性に優れ、高濃度で高画質の記録を可能とする着色微粒子分散物は未だ提供されていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明の第1の目的は、取扱性や無臭性、安全性を備え、筆記用水性インク及び水性印刷インク及び情報記録用インク等の用途に好適であり、分散粒子の粒径が十分小さく、分散物の分散安定性及び保存安定性に優れる着色微粒子分散物を提供することである。
本発明の第2の目的は、サーマルや圧電、電界又は音響インクジェット方式に好適であり、取扱性や無臭性、安全性を備え、分散粒子の粒径が十分小さく、分散物の分散安定性及び保存安定性に優れ、特にノズル先端での目詰まりの発生が少なく、紙依存性がなく、任意に選択した紙に印字した際の発色性及び色調に優れ、写真画質用紙へのインク浸透性にも優れ、記録後の耐水性、特に画像保存性及び耐擦過性に優れ、高濃度かつ高画質に記録し得るインクジェット記録用インクを提供することである。
本発明の第3の目的は、取扱性や無臭性、安全性を備え、特にノズル先端での目詰まりによる吐出不良を解消し、紙依存性がなく、任意に選択した紙に印字した際の発色性及び色調に優れ、写真画質用紙へのインク浸透性にも優れ、記録後の耐水性、特に画像保存性及び耐擦過性に優れ、高濃度かつ高画質に記録し得るインクジェット記録方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する為の本発明の手段は、以下の通りである。即ち、
<1> カプセルの芯物質として、少なくとも1種の疎水性色素と、少なくとも1種の疎水性ポリマーと、少なくとも1種の高沸点有機溶媒とを含有した着色組成物を内包し、且つ、下記一般式(A)で表される2個のイシアネート基を有する2官能イシアネート化合物と、3個以上のイシアネート基を有する多官能イシアネート化合物とを用いて該カプセル壁を形成したことを特徴とするマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
【化6】
〔一般式(A)において、Arはアリーレン基を表し、Xは単結合又は2価の連結基を表し、Rはアルキレン基、アラルキレン基又はアリーレン基を表し、mは0〜20の整数を表す。〕
<2> 前記疎水性色素が、下記一般式(I)で表される化合物、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(Y−I)で表される化合物、下記一般式(M−I)で表される化合物、及び下記一般式(C−I)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする上記<1>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
【化7】
〔一般式(I)及び一般式(II)において、R1、R2、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基、又はスルホ基を表す。Aは、−NR5R6又はヒドロキシ基を表す。R5及びR6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を表す。R5及びR6は、互いに結合して環を形成していてもよい。B1は、=C(R3)−又は=N−を表す。B2は、−C(R4)=又は−N=を表す。R1とR5と、R3とR6とは、及び/又は、R1とR2とは、互いに結合して芳香族環又は複素環を形成していてもよい。〕
【化8】
〔一般式(Y−I)において、A及びBは各々独立に、置換されていてもよい複素環基を表す。〕
【化9】
〔一般式(M−I)において、Aは、5員複素環ジアゾ成分(A−NH2)の残基を表す。B1及びB2は、B1が=CR1−を表しB2が−CR2=を表すか、あるいは、いずれか一方が窒素原子、他方が=CR1−又は−CR2=を表す。R5及びR6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。G、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基又はアリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルアリールスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、又はヘテロ環チオ基を表す。各基は更に置換されていてもよい。R1とR5、又はR5とR6が結合して5〜6員環を形成してもよい。〕
【化10】
〔前記一般式(C−I)において、X1、X2、X3及びX4は、各々独立に、−SO−Z1、−SO2−Z1、又は−SO2NR21R22を表す。Z1は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。R21及びR22は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。Y1、Y2、Y3及びY4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基、又はスルホ基を表し、各々は、さらに置換基を有していてもよい。a1〜a4、b1〜b4は、各々、X1〜X4、Y1〜Y4の置換基数を表し、a1〜a4は各々独立に0〜4の整数を表し、b1〜b4は各々独立に0〜4の整数を表す。ただしa1〜a4の総和は2以上である。ここで、a1〜a4及びb1〜b4が2以上の整数を表すとき、複数のX1〜X4及びY1〜Y4は各々同一でも異なっていてもよい。a1、b1は、a1+b1=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表す。a2、b2は、a2+b2=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表す。a3、b3は、a3+b3=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表す。a4、b4は、a4+b4=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表す。Mは、水素原子、金属元素若しくはその酸化物、水酸化物、又はハロゲン化物を表す。〕
<3> 前記高沸点有機溶媒が、水の溶解度が4g以下の有機溶媒であることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
<4> 上記<1>〜<3>のいずれかに記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物を含有することを特徴とするインク組成物。
<5> 上記<4>に記載のインク組成物を用いて記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
【0009】
本発明においては、更に以下の手段が好適に提供される。
<6> 前記疎水性色素が、油溶性であることを特徴とする上記<1>〜<3>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
<7> 前記疎水性色素の酸化電位が、1.05V(vs.SCE)よりも貴であることを特徴とする上記<1>〜<3>又は<6>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
<8> 前記疎水性ポリマーにおける解離性基の含有量が、0.2mmol/g〜4.0mmol/gであることを特徴とする上記<1>〜<3>又は<6>又は<7>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
<9> 前記疎水性ポリマーの解離性性基が、カルボキシル基及びスルホン酸基の少なくとも一方であることを特徴とする上記<8>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
<10> 前記疎水性ポリマーが、ビニルポリマーであることを特徴とする上記<1>〜<3>又は<6>〜<9>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
<11> 前記着色微粒子分散物が、疎水性色素と疎水性ポリマーを含有する有機溶媒相に水を投入して乳化させること、及び、水中に該有機溶媒相を投入して乳化させること、のいずれかにより製造されることを特徴とする上記<1>〜<3>又は<6>〜<10>に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
<12> 上記<6>〜<11>の何れかに記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物を含有してなることを特徴とする水性インク組成物。
<13> 上記<12>に記載の水性インク組成物を用いて記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物は、カプセルの芯物質として、少なくとも1種の疎水性色素と、少なくとも1種の疎水性ポリマーと、少なくとも1種の高沸点有機溶媒とを含有した着色組成物を内包し、且つ、一般式(A)で表される2個のイシアネート基を有する2官能イシアネート化合物と、3個以上のイシアネート基を有する多官能イシアネート化合物とを用いて該カプセル壁を形成したことを特徴とする。
上記の様に形成したマイクロカプセル壁内に着色組成物を内包することにより、本発明の分散インクにおいては、ノズル詰まりが発生せずドット細りがなくなり、安定したインク吐出性が確保できる。
以下、本発明を構成する各主要成分について、順を追って詳細に説明する。
【0011】
(疎水性色素)
本発明の着色微粒子分散物を構成する成分の一つである疎水性色素とは、水に実質的に不溶な色素を意味する。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる色素の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを指す。従って、疎水性色素とは、所謂水に不溶性の顔料や油溶性色素を意味し、これらの中でも、油溶性色素が好ましい。
【0012】
前記疎水性色素としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い疎水性色素を用いることにより、着色微粒子分散物及びインク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
本発明の着色微粒子分散物及びインク組成物においては、疎水性色素は1種単独で用いてもよく、また、数種類を混合して用いてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の水溶性染料、分散染料、顔料等の着色材が含有されていてもよい。
【0013】
本発明の着色微粒子分散物及びインク組成物に使用可能な疎水性色素としては、例えば、アントラキノン系、ナフトキノン系、スチリル系、インドアニリン系、アゾ系、ニトロ系、クマリン系、メチン系、ポルフィリン系、アザポルフィリン系、フタロシアニン系色素等が挙げられる。なお、フルカラー印刷用のインクジェットインクとして完成させるためには、通常、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三原色に黒を加えた少なくとも4色の色素が必要となる。
【0014】
本発明に使用可能な疎水性色素のうち、イエロー色素としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料等があり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0015】
本発明に使用可能な疎水性色素のうち、マゼンタ色素としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のようなキノン系染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系染料等を挙げることができる。
【0016】
本発明に使用可能な疎水性色素のうち、シアン色素としては、任意のものを使用することができる。例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料あるいはカップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。
【0017】
前記の各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0018】
前記疎水性色素の中でも、好ましい具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
例えば、C.I.ソルベント・ブラック3,7,27,29及び34;C.I.ソルベント・イエロー14,16,19,29,30,56,82,93及び162;C.I.ソルベント・レッド1,3,8,18,24,27,43,49,51,72,73,109,122,132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット3;C.I.ソルベント・ブルー2,11,25,35,38,67及び70;C.I.ソルベント・グリーン3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ2等が好ましい。
これらの中でも、Nubian Black PC−0850、Oil Black HBB、Oil Yellow129、Oil Yellow105、Oil Pink312、Oil Red5B、Oil Scarlet308、Vali Fast Blue2606、Oil Blue BOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、Neopen Yellow075、Neopen Mazenta SE1378、Neopen Blue808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)等がより好ましい。
【0019】
また本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもでき、その好ましい具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
例えば、C.I.ディスパーズイエロー5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット33;C.I.ディスパーズブルー56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等が好ましい。
【0020】
また、前記疎水性色素の中でも、下記一般式(I)で表される化合物(アゾ染料)、及び下記一般式(II)で表される化合物(アゾメチン染料)が好適に挙げられる。下記一般式(II)で表されるアゾメチン染料は、写真材料において、カプラー及び現像主薬から酸化によって生成する染料として知られている。
なお、以下に、一般式(I)及び一般式(II)で表される化合物の説明をするが、下記一般式(I)及び一般式(II)の各基のうち、少なくとも1つが以下に示す好ましい範囲である化合物が好ましく、より多くの基が好ましい範囲である化合物がより好ましく、全ての基が好ましい範囲である化合物が特に好ましい。
【0021】
【化11】
【0022】
前記一般式(I)及び一般式(II)において、R1、R2、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
これらの中でも、R2としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が好ましい。
【0023】
前記一般式(I)及び一般式(II)において、Aは、−NR5R6又はヒドロキシ基を表す。Aとしては、−NR5R6が好ましい。
前記R5及びR6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を表す。その中でも、前記R5及びR6としては、各々独立に、水素原子、アルキル基及び置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基がより好ましく、水素原子、炭素原子数が1〜18のアルキル基、及び炭素原子数が1〜18の置換アルキル基が最も好ましい。R5及びR6は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0024】
前記一般式(II)において、B1は、=C(R3)−又は=N−を表す。B2は、−C(R4)=又は−N=を表す。B1及びB2が、同時には−N=とならない場合が好ましく、B1が=C(R3)−、B2が−C(R4)=となる場合がより好ましい。
【0025】
前記一般式(I)及び一般式(II)において、R1とR5と、R3とR6とは、及び/又は、R1とR2とは、互いに結合して芳香族環又は複素環を形成していてもよい。
【0026】
本明細書において、脂肪族基とは、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基及び置換アラルキル基を意味する。
前記脂肪族基は、分岐状であってもよいし、また環状であってもよい。前記脂肪族基における炭素原子数は1〜20が好ましく、1〜18がより好ましい。
前記アラルキル基及び置換アラルキル基のアリール部分は、フェニル基及びナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
前記置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基におけるアルキル部分の置換基としては、前記R1、R2、R3及びR4で挙げた置換基の例と同様のものが挙げられる。
前記置換アラルキル基におけるアリール部分の置換基としては、下記置換アリール基における置換基の例と同様のものが挙げられる。
【0027】
本明細書において、芳香族基とは、アリール基及び置換アリール基を意味する。前記アリール基としては、フェニル基及びナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
前記置換アリール基におけるアリール部分は、上記アリール基の場合と同様である。
前記置換アリール基における置換基としては、前記R1、R2、R3及びR4で挙げた置換基の例と同様のものが挙げられる。
【0028】
前記一般式(I)において、Yは、不飽和複素環基を表す。Yとしては、5員又は6員の不飽和複素環が好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。複素環のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
前記不飽和複素環としては、例えば、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ピリミジン環、ピリジン環、及びキノリン環等が好ましい。また、前記不飽和複素環基は、前記R1〜R4で挙げた置換基を有していてもよい。
【0029】
前記一般式(II)において、Xはカラー写真カプラーの残基を表す。前記カプラーとしては、以下のカプラーが好ましい。
イエローカプラーとしては、米国特許3,933,501号、同4,022,620号、同4,326,024号、同4,401,752号、同4,248,961号、特公昭58−10739号、英国特許1,425,020号、同1,476,760号、米国特許3,973,968号、同4,314,023号、同4,511,649号、欧州特許249,473A号、同502,424A号の式(I)、(II)で表されるカプラー、同513,496A号の式(1),(2)で表されるカプラー(特に18頁のY−28)、同568,037A号のクレーム1の式(I)で表されるカプラー、米国特許5,066,576号のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表されるカプラー、特開平4−274425号の段落0008の一般式(I)で表されるカプラー、欧州特許498,381A1号の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35)、同447,969A1号の4頁の式(Y)で表されるカプラー(特に、Y−1(17頁),Y−54(41頁))、米国特許4,476,219号のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表されるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))等が挙げられる。
【0030】
マゼンタカプラーとしては、米国特許4,310,619号、同4,351,897号、欧州特許73,636号、米国特許3,061,432号、同3,725,067号、リサーチ・ディスクロージャーNo.24220(1984年6月)、同No.24230(1984年6月)、特開昭60−33552号、同60−43659号、同61−72238号、同60−35730号、同55−118034号、同60−185951号、米国特許4,500,630号、同4,540,654号、同4,556,630号、国際公開WO88/04795号、特開平3−39737号(L−57(11頁右下),L−68(12頁右下),L−77(13頁右下)、欧州特許456,257号の〔A−4〕−63(134頁),〔A−4〕−73,−75(139頁)、同486,965号のM−4,−6(26頁),M−7(27頁)、同571,959A号のM−45(19頁)、特開平5−204106号の(M−1)(6頁)、同4−362631号の段落0237のM−22等が挙げられる。
【0031】
シアンカプラーとしては、米国特許4,052,212号、同4,146,396号、同4,228,233号、同4,296,200号、欧州特許73,636号、特開平4−204843号のCX−1,3,4,5,11,12,14,15(14〜16頁);特開平4−43345号のC−7,10(35頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42〜43頁);特開平6−67385号の請求項1の一般式(Ia)又は(Ib)で表されるカプラー等が挙げられる。
【0032】
その他、特開昭62−215272号(91頁)、特開平2−33144号(3頁,30頁)、EP355,660A(4頁,5頁,45頁,47頁)記載のカプラーも有用である。
【0033】
前記一般式(I)で表される染料の中でも、マゼンタ染料としては、下記一般式(III)で表される染料が、特に好ましい。
【0034】
【化12】
【0035】
前記一般式(III)において、Z1は、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表す。Z1としては、σp値が0.30以上1.0以下の電子吸引性基が好ましい。好ましい具体的な置換基としては、後述する電子吸引性置換基を挙げることができるが、その中でも、炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜12のカルバモイル基及び炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基がより好ましく、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基がさらに好ましく、シアノ基が特に好ましい。
【0036】
R1〜R6は、前記一般式(I)と同義である。
Z2は、水素原子、脂肪族基、又は芳香族基を表す。
Qは、水素原子、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。その中でも、Qとしては、5員環〜8員環を形成するのに必要な非金属原子群からなる基が好ましく、芳香族基又は複素環基がより好ましい。前記5員環〜8員環は、置換されていてもよく、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。前記非金属原子群としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子又は炭素原子が好ましい。
前記5員環〜8員環としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環,ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、オキサン環、スルホラン環及びチアン環等が好適に挙げられ、これらの環がさらに置換基を有する場合、該置換基としては、前記R1〜R4で例示した基が好ましい。
なお、前記一般式(III)で表される染料の好ましい構造としては、特願2000−220649号に記載がある。
【0037】
前記一般式(II)で表される染料の中でも、マゼンタ染料としては、下記一般式(IV)で表される染料が、特に好ましい。
【0038】
【化13】
【0039】
前記一般式(IV)において、Gは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エステル基、アミノ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、ウレイド基、ウレタン基、アシル基、アミド基、又はスルホンアミド基を表す。
またR1、R2、A、B1及びB2は、前記一般式(II)と同義であり、それらの好ましい範囲も、前記一般式(II)と同様である。
Lは、5員又は6員の含窒素複素環を形成する原子群を表し、該含窒素複素環を形成する原子群は、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、アルコキシ基、アリール基、オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エステル基、アミノ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、ウレイド基、ウレタン基、アシル基、アミド基、又はスルホンアミド基のうち、少なくとも1つで置換されていてもよく、さらに別の環と縮合環を形成してもよい。
【0040】
前記一般式(IV)で表される染料において、Aとしては、−NR5R6が好ましく、Lとしては、5員の含窒素複素環を形成するのが好ましく、5員の含窒素複素環としては、例えば、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が好ましい。
【0041】
前記一般式(I)及び一般式(II)で表される染料の内、マゼンタ染料の例示化合物としては、特願2002−10361号に記載の化合物(M−1〜M70)が好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
本発明に使用可能な化合物は、前記例示化合物の他、特願平11−365187号、同11−365190号、特願2000−220649号に記載されているが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の式(III)で表される色素は、例えば、特願2000−220649号、特開昭55−161856号公報に記載された方法を参考にして合成することができる。
本発明の式(IV)で表される色素は、例えば、特開平4−126772号、特公平7−94180号公報及び特願2000−78491号に記載された方法を参考にして合成することができる。
【0044】
前記一般式(II)で表される染料のうち、シアン染料としては、下記一般式(V)で表されるピロロトリアゾールアゾメチン染料が、特に好ましい。
【0045】
【化14】
【0046】
前記一般式(V)において、A、R1、R2、B1及びB2は、前記一般式(II)と同義であり、それらの好ましい範囲も、前記一般式(II)と同様である。
Z3及びZ4は、各々独立に、前記一般式(IV)におけるGと同義である。Z3及びZ4は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
Mは、前記一般式(V)の5員環に縮合した1,2,4−トリアゾール環を形成できる原子団であって、縮合部のにおける2つの原子B3及びB4のいずれか一方は窒素原子であり、他方は炭素原子である。
【0047】
さらに、前記一般式(V)で表されるピロロトリアゾールアゾメチン染料の中でも、Z3が、ハメット置換基定数σp値0.30以上の電子吸引性基であるものは、吸収がシャープなのでより好ましく、ハメット置換基定数σp値0.45以上の電子吸引性基であるものはさらに好ましく、ハメット置換基定数σp値0.60以上の電子吸引性基であるものは特に好ましい。
そして、Z3及びZ4のハメット置換基定数σp値の和が0.70以上のものはシアン色として優れた色相を呈し、最も好ましい。
【0048】
なお、前記一般式(V)で表されるピロロトリアゾールアゾメチン染料は、置換基を変更することによりマゼンタ染料として用いることもできるが、シアン染料として用いるのが好ましい。
【0049】
ここで、本明細書で用いられるハメットの置換基定数σp値について説明する。
ハメット則とは、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるため、1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。
ハメット則に求められた置換基定数には、σp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(McGraw−Hill)や、「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。
【0050】
なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であっても、ハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に包まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。
また、本発明の前記一般式(I)〜前記一般式(V)の中には、ベンゼン誘導体ではないものも含まれるが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。従って、本発明においては、σp値をこのような意味で使用する。
【0051】
ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)等が挙げられる。
【0052】
ハメットσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、前記に加え、アシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル)等が挙げられる。
【0053】
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル、ペンタクロロフェニル)、及び複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、1−フェニルー2−ベンズイミダゾリル)等が挙げられる。
【0054】
σp値が0.20以上の電子吸引性基としては、上記に加え、ハロゲン原子がなどが挙げられる。
【0055】
本発明におけるピロロトリアゾールアゾメチン染料の内、シアン染料の例示化合物としては、特願2002−10361号に記載の化合物(C−1〜C−9)が好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
本発明に使用可能な染料としては、さらに特願平11−365188号明細書に記載されている例示化合物が挙げられるが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0057】
本発明の疎水性色素として使用するイエロー色素としては、下記一般式(Y−I)で表される化合物(染料)が好ましい。
【0058】
【化15】
【0059】
前記一般式(Y−I)において、A及びBは各々独立に、置換されていてもよい複素環基を表す。前記複素環としては、5員環又は6員環から構成された複素環が好ましく、単環構造であっても、2つ以上の環が縮合した多環構造であってもよく、芳香族複素環であっても非芳香族複素環であってもよい。前記複素環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。
【0060】
前記一般式(Y−I)において、Aで表される複素環としては、5−ピラゾロン、ピラゾール、オキサゾロン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、ピリドン、ローダニン、ピラゾリジンジオン、ピラゾロピリドン、メルドラム酸及びこれらの複素環にさらに炭化水素芳香環や複素環が縮環した縮合複素環が好ましい。その中でも、5−ピラゾロン、5−アミノピラゾール、ピリドン、ピラゾロアゾール類が好ましく、5−アミノピラゾール、2−ヒドロキシ−6−ピリドン、ピラゾロトリアゾールが特に好ましい。
【0061】
前記一般式(Y−I)において、Bで表される複素環としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、チアジアゾール、ベンゾイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが好適に挙げられる。その中でも、ピリジン、キノリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、チアジアゾール、ベンゾイソオキサゾールが好ましく、キノリン、チオフェン、ピラゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアジアゾールがより好ましく、ピラゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イミダゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールが特に好ましい。
【0062】
前記A及びBに置換する置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0063】
前記一般式(Y−I)で表される染料の中でも、下記一般式(Y−II)、(Y−III)、及び(Y−IV)で表される染料がより好ましい。
【0064】
【化16】
【0065】
前記一般式(Y−II)において、R1及びR3は、水素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基又はイオン性親水性基を表す。R2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、カルバモイル基、アシル基、アリール基又は複素環基を表す。R4は複素環基を表す。
【0066】
【化17】
【0067】
前記一般式(Y−III)において、R5は、水素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基又はイオン性親水性基を表す。Zaは−N=、−NH−、又はC(R11)=を表し、Zb及びZcは各々独立して、−N=、又はC(R11)=を表し、前記R11は、水素原子又は非金属置換基を表す。R6は複素環基を表す。
【0068】
【化18】
【0069】
前記一般式(Y−IV)において、R7及びR9は各々独立して、水素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はイオン性親水性基を表す。R8は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アシル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシ基、又はイオン性親水性基を表す。R10は複素環基を表す。
【0070】
前記一般式(Y−II)、(Y−III)、及び(Y−IV)におけるR1、R2、R3、R5、R7、R8及びR9が表す置換基について以下に詳述する。
【0071】
R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR9が表すアルキル基には、置換基を有するアルキル基及び無置換のアルキル基が含まれる。
前記アルキル基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましく、前記置換基の例としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基が挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピル、及び4−スルホブチルが好適に挙げられる。
【0072】
R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR9が表すシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基及び無置換のシクロアルキル基が含まれる。
前記シクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましく、前記置換基の例としては、イオン性親水性基が挙げられる。
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシルが好適に挙げられる。
【0073】
R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR9が表すアラルキル基には、置換基を有するアラルキル基及び無置換のアラルキル基が含まれる。
前記アラルキル基としては、炭素原子数が7〜20のアラルキル基が好ましく、前記置換基の例にはイオン性親水性基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、ベンジル、及び2−フェネチルが好適に挙げられる。
【0074】
R1、R2、R3、R5、R7、及びR9が表すアリール基には、置換基を有するアリール基及び無置換のアリール基が含まれる。
前記アリール基としては、炭素原子数が6〜20のアリール基が好ましく、前記置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、及びイオン性親水性基が挙げられる。
前記アリール基の例としては、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニル、及びm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニルが好適に挙げられる。
【0075】
R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR9が表すアルキルチオ基には、置換基を有するアルキルチオ基及び無置換のアルキルチオ基が含まれる。
前記アルキルチオ基としては、炭素原子数が1〜20のアルキルチオ基が好ましく、前記置換基の例にはイオン性親水性基が挙げられる。
前記アルキルチオ基としては、メチルチオ及びエチルチオが好適に挙げられる。
【0076】
R1、R2、R3、R5、R7、R8及びR9が表すアリールチオ基には、置換基を有するアリールチオ基及び無置換のアリールチオ基が含まれる。
前記アリールチオ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールチオ基が好ましく、前記置換基の例としては、アルキル基、及びイオン性親水性基が挙げられる。
前記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基及びp−トリルチオが好適に挙げられる。
【0077】
R2で表される複素環基は、5員又は6員の複素環が好ましく、それらはさらに縮環していてもよい。複素環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。また、芳香族複素環であっても非芳香族複素環であってもよい。前記複素環はさらに置換されていてもよく、該置換基の例としては、後述のアリール基の置換基と同じものが好適に挙げられる。好ましい複素環としては、6員の含窒素芳香族複素環が挙げられ、その中でも、トリアジン、ピリミジン、フタラジンが特に好ましい。
【0078】
R8が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子が好適に挙げられる。
R1、R3、R5、及びR8が表すアルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基及び無置換のアルコキシ基が含まれる。
前記アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜20のアルコキシ基が好ましく、前記置換基の例としては、ヒドロキシル基、及びイオン性親水性基が含まれる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシ、及び3−カルボキシプロポキシが好適に挙げられる。
【0079】
R8が表すアリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基及び無置換のアリールオキシ基が含まれる。
前記アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールオキシ基が好ましく、前記置換基の例には、アルコキシ基、及びイオン性親水性基が含まれる。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、p−メトキシフェノキシ及びo−メトキシフェノキシが好適に挙げられる。
R8が表すアシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基及び無置換のアシルアミノ基が含まれる。
前記アシルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアシルアミノ基が好ましく、前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。
前記アシルアミノ基としては、例えば、アセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド及び3、5−ジスルホベンズアミドが好適に挙げられる。
【0080】
R8が表すスルホニルアミノ基には、置換基を有するスルホニルアミノ基及び無置換のスルホニルアミノ基が含まれる。
前記スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜20のスルホニルアミノ基が好ましい。
前記スルホニルアミノ基としては、例えば、メチルスルホニルアミノ、及びエチルスルホニルアミノが好適に挙げられる。
【0081】
R8が表すアルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基及び無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。
前記アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましく、前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。
前記アルコキシカルボニルアミノ基としては、エトキシカルボニルアミノが好適に挙げられる。
【0082】
R8が表すウレイド基には、置換基を有するウレイド基及び無置換のウレイド基が含まれる。
前記ウレイド基としては、炭素原子数が1〜20のウレイド基が好ましく、
前記置換基の例としては、アルキル基及びアリール基が含まれる。
前記ウレイド基としては、例えば、3−メチルウレイド、3、3−ジメチルウレイド及び3−フェニルウレイドが好適に挙げられる。
【0083】
R7、R8、R9が表すアルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基及び無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。
前記アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが好適に挙げられる。
【0084】
R2、R7、R8、及びR9が表すカルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基及び無置換のカルバモイル基が含まれる。前記置換基の例にはアルキル基が含まれる。
前記カルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル基及びジメチルカルバモイル基が好適に挙げられる。
R8が表すスルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基及び無置換のスルファモイル基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。
前記スルファモイル基としては、例えば、ジメチルスルファモイル基及びジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が好適に挙げられる。
【0085】
R8が表すスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル及びフェニルスルホニルが好適に挙げられる。
R2、R8が表すアシル基には、置換基を有するアシル基及び無置換のアシル基が含まれる。前記アシル基としては、炭素原子数が1〜20のアシル基が好ましく、前記置換基の例にはイオン性親水性基が含まれる。
前記アシル基としては、アセチル及びベンゾイルが好適に挙げられる。
【0086】
R8が表すアミノ基には、置換基を有するアミノ基及び無置換のアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基、アリール基、複素環基が含まれる。
前記アミノ基としては、メチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ及び2−クロロアニリノが好適に挙げられる。
【0087】
R4、R6、R10で表される複素環基は、前記一般式(Y−I)のBで表される置換されていてもよい複素環基と同じであり、好ましい例、さらに好ましい例、特に好ましい例も前記と同様である。
置換基としては、イオン性親水性基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、アリール基、アルキル又はアリールチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、スルファモイル基、スルホンアミノ基、カルバモイル基、及びアシルアミノ基等が挙げられ、前記アルキル基及びアリール基等はさらに置換基を有していてもよい。
【0088】
前記一般式(Y−III)において、Zaは−N=、−NH−、又はC(R11)=を表す。Zb及びZcは、各々独立して、−N=又はC(R11)=を表す。R11は、水素原子又は非金属置換基を表す。R11が表す非金属置換基としては、シアノ基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はイオン性親水性基が好ましい。前記置換基の各々は、R1が表す各々の置換基と同義であり、好ましい例も同様である。前記一般式(Y−III)に含まれる2つの5員環からなる複素環の骨格例を下記に示す。
【0089】
【化19】
【0090】
上記で説明した各置換基が、さらに置換基を有していてもよい場合の置換基の例としては、前記一般式(Y−I)の複素環A及びBに置換してもよい置換基を挙げることができる。
【0091】
前記一般式(Y−I)で表される染料の具体例としては、特願2002−10361号に記載の化合物(Y−101〜Y−155)が好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの化合物は,特開平2−24191号、特開2001−279145号公報を参考にして合成できる。
【0092】
更に、本発明の疎水性色素として好適に使用される油溶性色素としては、下記一般式(M−I)で表される化合物(以下、「アゾ染料」と称する場合がある。)が好ましい。以下に、本発明の一般式(M−I)で表される化合物について説明する。
【0093】
【化20】
【0094】
前記一般式(M−I)において、Aは、5員複素環ジアゾ成分(A−NH2)の残基を表す。
B1及びB2は、B1が=CR1−を表しB2が−CR2=を表すか、あるいは、いずれか一方が窒素原子、他方が=CR1−又は−CR2=を表す。
R5,R6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。
G、R1,R2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基又はアリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルアリールスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、又はヘテロ環チオ基を表す。各基は更に置換されていてもよい。
また、R1とR5、又はR5とR6が結合して5〜6員環を形成してもよい。
【0095】
本発明の前記一般式(M−I)で表される化合物について詳細に説明する。
前記一般式(M−I)において、Aは、5員複素環ジアゾ成分(A−NH2)の残基を表す。該5員複素環のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。好しくは含窒素5員複素環であり、複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。
Aの好ましい複素環の例としては、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができる。各複素環基は、更に置換基を有していてもよい。中でも、下記一般式(M−a)から(M−f)で表されるピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましい。
【0096】
【化21】
【0097】
前記一般式(M−a)〜(M−f)のR7〜R20は、後に説明する置換基G、R1及びR2と同じ置換基を表す。
前記一般式(M−a)〜(M−f)のうち、好ましいのは一般式(M−a)及び(M−b)で表されるピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましいのは一般式(M−a)で表されるピラゾール環である。
B1及びB2は、B1が=CR1−を表しB2が−CR2=を表すか、あるいは、いずれか一方が窒素原子、他方が=CR1−又は−CR2=を表すが、B1が=CR1−を表しB2が−CR2=を表すものがより好ましい。
R5及びR6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。R5及びR6で表される好ましい置換基には、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を挙げることができる。さらに好ましくは、水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、アリール基、又は複素環基である。各基は更に置換基を有していてもよい。ただし、R5、R6が同時に水素原子であることはない。
【0098】
G、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくは複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、又はスルホ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。
【0099】
Gで表される好ましい置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキル基、アリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びヘテロ環チオ基が挙げられ、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキル基若しくはアリール基若しくは複素環基で置換されたアミノ基、又はアシルアミノ基であり、中でも水素原子、アリールアミノ基、アミド基が最も好ましい。各基は更に置換基を有していてもよい。
【0100】
R1及びR2で表される好ましい置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基及びシアノ基を挙げることができる。各基は更に置換基を有していてもよい。
R1とR5、又は、R5とR6が結合して5〜6員環を形成してもよい。
A、R1、R2、R5、R6、Gで表される各置換基が更に置換基を有する場合の置換基としては、前記G、R1、R2で挙げた置換基を挙げることができる。
【0101】
以下、G、R1及びR2で表される置換基について詳しく説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、及び置換アラルキル基を意味する。脂肪族基は、分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜16であることがさらに好ましい。アラルキル基及び置換アラルキル基のアリール部分はフェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。脂肪族基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、及びアリル基を挙げることができる。
【0102】
本明細書において、芳香族基は、アリール基及び置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜16がさらに好ましい。
芳香族基の例としては、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基及びm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基が含まれる。
複素環基には、置換基を有する複素環基及び無置換の複素環基が含まれる。複素環に脂肪族環、芳香族環、又は他の複素環が縮合していてもよい。複素環基としては、5員又は6員環の複素環基が好ましい。置換基の例としては、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、及びイオン性親水性基などが含まれる。複素環基の例としては、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、及び2−フリル基が含まれる。
【0103】
前記アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基の例としては、各々、メタンスルホニル基及びフェニルスルホニル基を挙げることができる。
前記アルキルスルフィニル基及びアリールスルフィニル基の例としては、各々、メタンスルフィニル基及びフェニルスルフィニル基を挙げることができる。
【0104】
前記アシル基には、置換基を有するアシル基及び無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、炭素原子数が1〜12のアシル基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アシル基の例としては、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
【0105】
前記アミノ基には、アルキル基、アリール基、及び複素環基で置換されたアミノ基が含まれ、アルキル基、アリール基、及び複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。無置換のアミノ基は含まれない。アルキルアミノ基としては、炭素原子数1〜6のアルキルアミノ基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例としては、メチルアミノ基及びジエチルアミノ基が挙げられる。
前記アリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基及び無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜12のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基及び2−クロロアニリノ基が含まれる。
【0106】
前記アルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基及び無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基が好ましい。置換基の例としては、アルコキシ基、ヒドロキシル基、及びイオン性親水性基が含まれる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基及び3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0107】
前記アリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基及び無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜12のアリールオキシ基が好ましい。置換基の例としては、アルコキシ基、及びイオン性親水性基が含まれる。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基及びo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0108】
前記アシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基が含まれる。前記アシルアミノ基としては、炭素原子数が2〜12のアシルアミノ基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アシルアミノ基の例としては、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N−フェニルアセチルアミノ及び3,5−ジスルホベンゾイルアミノ基が含まれる。
【0109】
前記ウレイド基には、置換基を有するウレイド基及び無置換のウレイド基が含まれる。前記ウレイド基としては、炭素原子数が1〜12のウレイド基が好ましい。置換基の例としては、アルキル基及びアリール基が含まれる。ウレイド基の例としては、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基及び3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0110】
前記スルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基及び無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例としては、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例としては、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0111】
前記アルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基及び無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の例としては、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0112】
前記アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニルアミノ基、無置換のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が含まれる。アルキル及びアリールスルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜12のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アルキル及びアリールスルホニルアミノ基の例としては、メタンスルホニルアミノ基、N−フェニルメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基、及び3−カルボキシベンゼンスルホニルアミノ基が含まれる。
【0113】
前記カルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基及び無置換のカルバモイル基が含まれる。置換基の例としては、アルキル基が含まれる。カルバモイル基の例としては、メチルカルバモイル基及びジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0114】
前記スルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基及び無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例としては、アルキル基が含まれる。スルファモイル基の例としては、ジメチルスルファモイル基及びジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が含まれる。
【0115】
前記アルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基及び無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜12のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
【0116】
前記アシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基及び無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素原子数1〜12のアシルオキシ基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例としては、アセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0117】
前記カルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基及び無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基の例としては、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例としては、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0118】
前記アリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基及び無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜12のアリールオキシカルボニル基が好ましい。置換基には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニル基の例としては、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0119】
前記アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルアミノ基及び無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシカルボニルアミノ基の例としては、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0120】
前記アルキル、アリール及び複素環チオ基には、置換基を有するアルキル、アリール及び複素環チオ基と、無置換のアルキル、アリール及び複素環チオ基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基としては、炭素原子数が1〜12のものが好ましい。置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アルキル,アリール及び複素環チオ基の例としては、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0121】
本発明において、特に好ましいアゾ染料は、下記一般式(M−II)で表される化合物である。
【0122】
【化22】
【0123】
前記一般式(M−II)において、Z1はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子求引性基を表す。Z1はσp値が0.30〜1.0の電子求引性基であるのが好ましい。好ましい具体的な置換基については後述する電子求引性置換基を挙げることができるが、中でも、炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜12のカルバモイル基及び炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
【0124】
R1、R2、R5、及びR6は、前記一般式(M−I)の場合と同義である。
R3及びR4は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表す。その中でも、水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、水素原子、芳香族基、複素環基が、特に好ましい。
Z2は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表す。
Qは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表す。その中でも、Qは5〜8員環を形成するのに必要な非金属原子群からなる基が好ましい。この5〜8員環は置換されていてもよいし、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。その中でも、特に、芳香族基、複素環基が好ましい。好ましい非金属原子としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子及び炭素原子が挙げられる。5〜8員環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環,ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサン環、スルホラン環、及びチアン環等が挙げらる。
【0125】
前記一般式(M−II)で説明した各基は、更に置換基を有していてもよい。これらの各基が更に置換基を有する場合、該置換基としては、前記一般式(M−I)で説明した置換基、G、R1及びR2で例示した基やイオン性親水性基が挙げられる。
【0126】
ここで、置換基Z1に関連して、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について説明する。
ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合に、その範囲内に包まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。また、本発明の一般式(M−I)及び(M−II)の中には、ベンゼン誘導体ではない物も含まれるが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては、σp値をこのような意味で使用する。
【0127】
ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子求引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基〔例えば、メタンスルホニル基、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基〕を例として挙げることができる。ハメットσp値が0.45以上の電子求引性基としては、上記に加えアシル基(例えば、アセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル基)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル基)を挙げることができる。
【0128】
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子求引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ基)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ基)、スルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ基)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子求引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基、ペンタクロロフェニル基)、及び複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−フェニルー2−ベンズイミダゾリル基)を挙げることができる。
σp値が0.20以上の電子求引性基の具体例としては、上記に加え、ハロゲン原子がなどが挙げられる。
【0129】
前記一般式(M−I)で表される化合物として、特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の通りである。
(イ)R5及びR6は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、スルホニル基、アシル基であり、さらに好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、スルホニル基であり、最も好ましくは水素原子、アリール基、複素環基である。ただし、R5及びR6が共に水素原子であることはない。
(ロ)Gは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基であり、さらに好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基であり、最も好ましくは水素原子、アミノ基、アミド基である。(ハ)Aは、好ましくはピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、さらに好ましくはピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましくはピラゾール環である。
(ニ)B1及びB2は、各々=CR1−、−CR2=であり、そしてこれらR1、R2は、各々、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシ基である。
【0130】
なお、一般式(M−I)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0131】
前記一般式(M−I)で表される化合物の例示化合物としては、特願2002−10361号に記載の化合物(a−1〜a−27、b−1〜b−6、c−1〜c−3、d−1〜d−4、e−1〜e−4)が好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
本発明における油溶性色素としては、下記一般式(C−I)で表される化合物(以下、「フタロシアニン染料」と称する場合がある)を用いることが好ましい。以下に、一般式(C−I)で表される化合物について説明する。
【0133】
【化23】
【0134】
前記一般式(C−I)において、X1、X2、X3及びX4は、各々独立に、−SO−Z1、−SO2−Z1、又は−SO2NR21R22を表す。
【0135】
Z1は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、特に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換へテロ環基が最も好ましい。
【0136】
R21及びR22は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、特に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換へテロ環基が最も好ましい。ただしR21及びR22の両方が水素原子であることはない。
【0137】
R21、R22及びZ1が表す、置換又は無置換のアルキル基は、炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましい。置換基の例としては、後述のZ1、R21、R22、Y1、Y2、Y3及びY4が更に置換基を有することが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0138】
R21、R22及びZ1が表す、置換基を有するシクロアルキル基又は無置換のシクロアルキル基は、炭素原子数が5〜30のシクロアルキル基が好ましい。置換基の例としては、後述のZ1、R21、R22、Y1、Y2、Y3及びY4が更に置換基を有することが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0139】
R21、R22及びZ1が表す、置換基を有するアルケニル基又は無置換のアルケニル基は、炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。置換基の例としては、後述のZ1、R21、R22、Y1、Y2、Y3及びY4が更に置換基を有することが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0140】
R21、R22及びZ1が表す、置換基を有するアラルキル基又は無置換のアラルキル基は、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。置換基の例としては、後述のZ1、R21、R22、Y1、Y2、Y3及びY4が更に置換基を有することが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0141】
R21、R22及びZ1が表すアリール基の置換基としては、後述のZ1、R21、R22、Y1、Y2、Y3及びY4が更に置換基を有することが可能な場合の置換基と同じもの挙げられる。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、アシル基、スルホ基、4級アンモニウム基が挙げられ、中でもヘテロ環基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基が好ましく、シアノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基が更に好ましい。
【0142】
R21、R22及びZ1が表すヘテロ環基としては、5員又は6員環のものが好ましく、それらは更に縮環していてもよい。また、芳香族ヘテロ環であっても非芳香族ヘテロ環であってもよい。
以下に、R21、R22及びZ1で表されるヘテロ環基を、置換位置を省略してヘテロ環の形で例示するが、置換位置は限定されるものではなく、例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能である。
ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。この中でも、芳香族ヘテロ環基が好ましく、その好ましい例を先と同様に例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが挙げられる。これらは置換基を有していてもよい。
【0143】
Y1、Y2、Y3及びY4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基、又はスルホ基を表し、各々は、さらに置換基を有していてもよい。
【0144】
これらの中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、及びアルコキシカルボニル基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、及びシアノ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0145】
Z1、R21、R22、Y1、Y2、Y3及びY4が更に置換基を有することが可能な基であるときは、以下に挙げたような置換基を更に有してもよい。
【0146】
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜30の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜30の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基で、詳しくは(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、2−メタンスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、及び4級アンモニウム基)等が挙げられる。
【0147】
a1〜a4、b1〜b4は、各々、X1〜X4、Y1〜Y4の置換基数を表し、a1〜a4は各々独立に0〜4の整数を表し、b1〜b4は各々独立に0〜4の整数を表す。ただし、a1〜a4の総和は2以上である。ここで、a1〜a4及びb1〜b4が2以上の整数を表すとき、複数のX1〜X4及びY1〜Y4は各々同一でも異なっていてもよい。
【0148】
a1、b1は、a1+b1=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a1が1又は2を表し、b1が3又は2を表す組み合わせであり、その中でもa1が1を表し、b1が3を表す組み合わせが最も好ましい。
【0149】
a2、b2は、a2+b2=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a2が1又は2を表し、b2が3又は2を表す組み合わせであり、その中でもa2が1を表し、b2が3を表す組み合わせが最も好ましい。
【0150】
a3、b3は、a3+b3=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a3が1又は2を表し、b3が3又は2を表す組み合わせであり、その中でもa3が1を表し、b3が3を表す組み合わせが最も好ましい。
【0151】
a4、b4は、a4+b4=4の関係を満たす各々独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a4が1又は2を表し、b4が3又は2を表す組み合わせであり、その中でもa4が1を表し、b4が3を表す組み合わせが最も好ましい。
【0152】
Mは、水素原子、金属元素若しくはその酸化物、水酸化物、又はハロゲン化物を表す。
Mとして好ましいものは、水素原子、金属原子としては、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。酸化物としては、VO、GeO等が挙げられる。また、水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。これらの中でも特に、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
【0153】
また、L(2価の連結基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L−M−Pc)又は3量体を形成してもよく、その場合のMは、各々、同一であっても異なるものであってもよい。
【0154】
Lで表される2価の連結基は、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−SO2−)、イミノ基(−NH−)、又はメチレン基(−CH2−)が好ましい。
【0155】
前記一般式(C−I)で表される化合物として、特に好ましい組み合わせは以下の通りである。
【0156】
X1〜X4としては、各々独立に、−SO2−Z1又は−SO2NR21R22が特に好ましい。
【0157】
Z1は、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換へテロ環基が最も好ましい。
【0158】
R21及びR22は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換へテロ環基が最も好ましい。
【0159】
Y1〜Y4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、及びスルホ基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、及びスルホ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0160】
a1〜a4は、各々独立に、1又は2であることが好ましく、特に1であることが好ましい。b1〜b4は、各々独立に、3又は2であることが好ましく、特に3であることが好ましい。
【0161】
Mは、水素原子、金属元素又はその酸化物、水酸化物若しくはハロゲン化物を表し、特にCu、Ni、Zn、Alが好ましく、なかでも特に特にCuが最も好ましい。
【0162】
前記一般式(C−I)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0163】
前記一般式(C−I)で表される化合物の中でも、下記一般式(C−II)で表される構造の化合物がより好ましい。
【0164】
【化24】
【0165】
前記一般式(C−II)において、X11〜X14、Y11〜Y18は、前記一般式(C−I)の中のX1〜X4、Y1〜Y4と各々同義であり、好ましい例も同様である。また、M1は、前記一般式(C−I)中のMと同義であり、好ましい例も同様である。
【0166】
具体的には、前記一般式(C−II)中、X11、X12、X13及びX14は、各々独立に、−SO−Z11、−SO2−Z11、又は−SO2NR23R24を表す。
Z11は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。
R23は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、R24は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。
Y11、Y12、Y13、Y14、Y15、Y16、Y17及びY18は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基、又はスルホ基を表し、各々の基は、さらに置換基を有していてもよい。
a11〜a14は各々X11〜X14の置換基数を表し、各々独立に、0〜2の整数を表すが、すべてが同時に0になることは無い。なお、a11〜a14が2を表すとき、2つのX11〜X14は各々同一でも異なっていてもよい。
M1は水素原子、金属元素若しくはその酸化物、水酸化物、又はハロゲン化物である。
【0167】
前記一般式(C−II)中、好ましくはa11〜a14は、4≦a11+a12+a13+a14≦8の範囲である各々独立の1又は2の整数を表し、特に好ましいのは、4≦a11+a12+a13+a14≦6であり、その中でも特に好ましいのは、a11=a12=a13=a14=1のときである。
【0168】
一般式(C−II)で表される化合物の中でも、特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の通りである。
【0169】
X11〜X14としては、各々独立に−SO2−Z11又は−SO2NR23R24が特に好ましい。
【0170】
Z11は、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換へテロ環基が最も好ましい。
【0171】
R23は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換へテロ環基が最も好ましい。
【0172】
R24は、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換へテロ環基が最も好ましい。
【0173】
Y11〜Y18は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、及びアルコキシカルボニル基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、及びシアノ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0174】
a11〜a14は、各々独立に、1又は2であることが好ましく、特に全てが1であることが好ましい。
【0175】
M1は、水素原子、金属元素若しくはその酸化物、水酸化物、又はハロゲン化物を表し、特に、Cu、Ni、Zn、Alが好ましく、その中でもCuが最も好ましい。
【0176】
前記一般式(C−II)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0177】
前記一般式(C−I)で表される化合物は、その合成法によって不可避的に置換基Rn(n=1〜4)及びYq(q=1〜4)の導入位置及び導入個数が異なる類縁体混合物である場合が一般的であり、これら類縁体混合物を統計的に平均化して表している場合が多い。本発明は、これらの類縁体混合物を以下に示す三種類に分類すると、特定の混合物が特に好ましいことを見出したものである。
【0178】
本発明においては、前記一般式(C−I)及び(C−II)で表される化合物であるフタロシアニン系色素類縁体混合物を、置換位置に基づいて以下の三種類に分類して定義する。
【0179】
(1)β−位置換型:(2及び/又は3位、6及び/又は7位、10及び/又は11位、14及び/又は15位に特定の置換基を有するフタロシアニン系染料)
【0180】
(2)α−位置換型:(1及び/又は4位、5及び/又は8位、9及び/又は12位、13及び/又は16位に特定の置換基を有するフタロシアニン系染料)
【0181】
(3)α,β−位混合置換型:(1〜16位に規則性なく、特定の置換基を有するフタロシアニン系染料)
【0182】
本明細書中において、構造が異なる(特に、置換位置)フタロシアニン系染料の誘導体を説明する場合、上記β−位置換型、α−位置換型、α,β−位混合置換型を使用する。
【0183】
本発明に用いられるフタロシアニン誘導体は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行‘Phthalocyanines−Properties and Applications’(P.1〜54)等に記載、引用若しくはこれらに類似の方法を組み合わせて合成することができる。
【0184】
本発明の一般式(C−I)で表される化合物は、WO00/17275、同00/08103、同00/08101、同98/41853、特開平10−36471号の各公報などに記載されているように、例えば、無置換のフタロシアニン化合物のスルホン化、スルホニルクロライド化、アミド化反応を経て合成することができる。この場合、スルホン化がフタロシアニン核のどの位置でも起こり得る上にスルホン化される個数も制御が困難である。従って、このような反応条件でスルホ基を導入した場合には、生成物に導入されたスルホ基の位置と個数は特定できず、必ず置換基の個数や置換位置の異なる混合物を与える。従ってそれを原料として本発明の化合物を合成する時には、ヘテロ環置換スルファモイル基の個数や置換位置は特定できないので、本発明の化合物としては置換基の個数や置換位置の異なる化合物が何種類か含まれるα,β−位混合置換型混合物として得られる。
【0185】
前述したように、例えばスルファモイル基のような電子求引性基を多くフタロシアニン核に導入すると、酸化電位がより貴となり、オゾン耐性が高まる。上記の合成法に従うと、電子求引性基が導入されている個数が少ない、即ち酸化電位がより卑であるフタロシアニン染料が混入してくることが避けられない。従って、オゾン耐性を向上させるためには、酸化電位がより卑である化合物の生成を抑えるような合成法を用いることがより好ましい。
【0186】
それに対して、本発明の一般式(C−II)で表される化合物は、例えば、下記式で表されるフタロニトリル誘導体(化合物P)及び/又はジイミノイソインドリン誘導体(化合物Q)を下記一般式(C−III)で表される金属誘導体と反応させて得られる化合物から誘導できる。
【0187】
【化25】
【0188】
化合物P、Q中、pは、11〜14を表し、q及びq’は、各々独立に、11〜18を表す。
【0189】
一般式(C−III)
M−(Y)d
前記一般式(C−III)において、Mは、前記一般式(C−I)及び(C−II)で表される化合物におけるMと同義であり、Yはハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、酸素などの1価又は2価の配位子を表し、dは1〜4の整数を表す。
【0190】
即ち、上記の合成法に従えば、望みの置換基を特定の数だけ導入することができる。特に、本発明のように酸化電位を高くするために電子求引性基を数多く導入したい場合には、上記合成法は一般式(C−I)で表される化合物の合成法と比較して極めて優れている。
【0191】
かくして得られる前記一般式(C−II)で表される化合物は、通常、Xpの各置換位置における異性体である下記一般式(C−II−1)〜(C−II−4)で表される化合物の混合物、即ちβ−位置換型(2及び/又は3位、6及び/又は7位、10及び/又は11位、14及び/又は15位に特定の置換基を有するフタロシアニン系染料)となっている。
【0192】
【化26】
【0193】
【化27】
【0194】
前記一般式(C−II−1)〜(C−II−4)において、R1〜R4は、前記一般式(C−II)における(X11)a11〜(X14)a14と同義である。
【0195】
本発明では、いずれの置換型においても酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であることが堅牢性の向上に非常に重要であることが見出されている。中でもα,β−位混合置換型よりはβ−位置換型の方が、色相・光堅牢性・オゾンガス耐性等において優れている傾向にある。
【0196】
前記一般式(C−I)又は(C−II)で表される化合物の例示化合物としては、特願2002−10361号に記載の化合物(C−101〜C−120)が好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0197】
前記一般式(C−I)で表される化合物は、前述した特許に従えば合成することが可能である。また、一般式(C−II)で表される化合物は、特願2000−24352号、同2000−47013号、同2000−57063号、同2000−96610号の各明細書に記載の方法により合成することができる。また、出発物質、色素中間体及び合成ル−トについてはこれらにより限定されるものでない。
【0198】
本発明に使用される油溶性色素のインク組成物における含有量としては、インク組成物に対して0.05〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0199】
(疎水性ポリマー)
次に、本発明に用いられる疎水性ポリマーについて説明する。
本発明の着色微粒子分散物及びインク組成物に含有される着色微粒子は、少なくとも1種の疎水性色素と、少なくとも1種の疎水性ポリマーとを含有する。
前記着色微粒子を構成する成分の一つである、疎水性ポリマーの構造としては、重縮合で得られるポリマーでも、ビニルモノマーから得られるポリマーでもよい。
【0200】
本発明に係る疎水性ポリマーとしては、下記に具体例として示したモノマー群から選ばれる任意のモノマーの単独重合体を用いてもよく、任意のモノマーを自由に組み合わせた共重合体を用いてもよい。
また、使用可能なモノマー単位には特に制限はなく、通常のラジカル重合法で重合可能なものであれば、任意のものが使用可能である。
【0201】
前記重縮合で得られるポリマーとしては、ポリエステル系ポリマーが好ましく、例えば、多価カルボン酸類と多価アルコール類から構成され、単独あるいは二種類以上のモノマーを組み合わせて重合させた樹脂等が挙げられる。
【0202】
前記多価カルボン酸類としては、特に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタルレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸、スルホテレフタル酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等で示される芳香族多価カルボン酸、芳香族オキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸等が挙げられ、これらは金属塩、アンモニウム塩等としても使用できる。
【0203】
多価アルコール類としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエルスリトール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、ビスフェノールA、ラクトン系ポリエステル、ポリオール類等で示される脂肪族多価アルコール類、脂環族多価アルコール類、芳香族多価アルコール類等が挙げられる。
また、前記多価カルボン酸類と前記多価アルコール類との単独、あるいは二種類以上組み合わせて重合させたポリエステル樹脂は、通常知られている末端封止可能な化合物を用いて、高分子鎖の末端の極性基を封止したものを使用することもできる。
【0204】
前記ビニルモノマーから得られるポリマーとしては、下記に具体例として示したモノマー群から選ばれる任意のモノマーの単独重合体でもよく、任意のモノマーを自由に組み合わせた共重合体でもよい。
使用可能なモノマー単位には特に制限はなく、通常のラジカル重合法で重合可能なものであれば、任意の物が使用可能である。
また、以下にモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0205】
前記モノマー群としては、例えば、オレフィン類、α,β−不飽和カルボン酸及びその塩類、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体、α,β−不飽和カルボン酸のアミド類、スチレン及びその誘導体、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、その他の重合性単量体などが挙げられる。
【0206】
前記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、シクロペンタジエン、4−ペンテン酸、8−ノネン酸メチル、ビニルスルホン酸、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ブタジエン、ペンタジエン、イソプレン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2,5−トリビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0207】
前記α,β−不飽和カルボン酸及びその塩類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸カリウムなどが挙げられる。
【0208】
前記α,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート等)、置換アルキルアクリレート(例えば、2−クロロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、アリルアクリレート等)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート等)、置換アルキルメタクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数=2〜100のもの)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数=2〜100のもの)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシプロピレンの付加モル数=2〜100のもの)、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、4−オキシスルホブチルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート等]、不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジブチル等)、多官能エステル類(例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート等)などが挙げられる。
【0209】
前記α,β−不飽和カルボン酸のアミド類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、N−メチルマレイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミド、ジメタクリロイルピペラジンなどが挙げられる。
【0210】
前記スチレン及びその誘導体としては、スチレン、ビニルトルエン、p−tertブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩、p−スチレンスルフィン酸カリウム塩、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステルなどが挙げられる。
【0211】
前記ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
前記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニルなどが挙げられる。
その他の重合性単量体としては、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホンなどが挙げられる。
【0212】
前記モノマーを組み合わせた共重合により合成される、本発明の疎水性ポリマーの中でも、主成分がアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、オレフィン等の単独重合体、又は共重合体からなるものが好ましく選択される。
【0213】
以下に、本発明の好ましい疎水性ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。ここで、各モノマーの組成比を示す数値は質量百分率を表す。
(P−1) ポリ(N−tert−ブチルアクリルアミド)
(P−2) ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)
(P−3) ポリ(n−ブチルアクリレート)
(P−4) ポリ(メチルメタクリレート)
(P−5) ポリ(エチルメタクリレート)
(P−6) ポリ(N−シクロヘキシルアミド)
(P−7) ポリ(N−sec−ブチルアクリルアミド)
(P−8) ポリ(N、N−ジ−n−プロピルアクリルアミド)
(P−9) N−tert−ブチルアクリルアミド/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(80/20)
(P−10) メチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体(98/2)
(P−11) メチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/2−アセトアセトキシエチルメタクリレート共重合体(91/5/4)
(P−12) ブチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩/2−アセトアセトキシエチルメタクリレート共重合体(90/6/4)
(P−13) ブチルアクリレート/スチレン/メタクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩共重合体(55/29/11/5)
(P−14) ブチルアクリレート/スチレン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩共重合体(85/10/5)
(P−15) ポリスチレン
(P−16) ポリ(4−アセトキシスチレン)
(P−17) スチレン/メチルメタクリレート/アクリル酸ナトリウム塩共重合体(45/50/5)
(P−18) 2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩共重合体(74/23/3)
(P−19) N−tert−ブチルアクリルアミド/3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸共重合体(99/1)
【0214】
(P−20) N−tert−ブチルアクリルアミド/メチルアクリレート共重合体(50/50)
(P−21) メチルメタクリレート/メチルアクリレート共重合体(50/50)
(P−22) N−tert−ブチルアクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩共重合体(99/1)
(P−23) N−tert−ブチルアクリルアミド/n−ブチルアクリレート共重合体(50/50)
(P−24) スチレン/ブタジエン/アクリル酸共重合体(85/12/3)
(P−25) スチレン/ブタジエン共重合体(90/10)
(P−26) アクリル酸エチル/スチレン/ブタジエン共重合体(40/50/10)
(P−27) スチレン/メチルメタクリレート共重合体(80/20)
(P−28) エチルアクリレート/スチレン/2−アクリルアミドー2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体(55/40/5)
(P−29) n−ブチルアクリレート/スチレン共重合体(40/60)
(P−30) n−ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(47/50/3)
(P−31) 2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン共重合体(50/50)
(P−32) ポリn−ブチルメタクリレート
(P−33) n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(90/10)
(P−34) 2−エチルヘキシルメタクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(40/40/18/2)
(P−35) n−ドデシルメタクリレート/メチルメタクリレート/スチレン/スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体(45/25/25/5)
(P−36) ベンジルメタクリレート/メチルアクリレート共重合体(80/20)
(P−37) スチレン/n−ブチルアクリレート/アリルメタクリレート共重合体(40/30/30)
(P−38) 2−エチルヘキシルメタクリレート/スチレン/アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/30/5)
(P−39) 酢酸ビニル(単独重合体)
(P−40) t−ブチルアクリルアミド/n−ブチルアクリレート/2−カルボキシエチルアクリレート共重合体(45/45/10)
(P−41) メチルアクリレート/2−アセトアセトキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(80/17/3)
(P−42) t−ブチルアクリルアミド/n−ブチルアクリレート共重合体(50/50)
【0215】
前記疎水性ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0216】
前記疎水性ポリマーを重合により得る際に用いられる重合開始剤としては、アゾビス化合物、パーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒などが挙げられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、t−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスシアノ吉草酸のナトリウム塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2′−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1′−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}等のアゾ化合物などが好ましく、その中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムがより好ましい。
【0217】
ここでは、前記疎水性ポリマーを乳化重合により合成する場合について説明する。
本発明において、前記疎水性ポリマーは、乳化重合法により合成することができるが、その際用いる乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性の界面活性剤の他、水溶性ポリマー等が挙げられる。その具体例としては、例えば、ラウリン酸ソーダ、ドデシル硫酸ナトリウム、1−オクトキシカルボニルメチル−1−オクトキシカルボニルメタンスルホン酸ナトリウム、ラウリルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−2−エチルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステル、ポリビニルアルコール、特公昭53−6190号公報に記載の乳化剤、水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0218】
本発明に係る疎水性ポリマーを乳化重合により合成する場合においては、その目的に応じて、重合開始剤、濃度、重合温度、反応時間などを幅広く、かつ容易に変更できる。また、乳化重合反応は、モノマー、界面活性剤、水性媒体を、予め反応容器に全量入れておき、開始剤を投入して行ってもよく、必要に応じてモノマー、開始剤溶液のいずれか、もしくはその両者の一部あるいは全量を滴下しながら行ってもよい。
【0219】
本発明の疎水性ポリマーラテックスは、通常の乳化重合法の手法を用いることにより、容易に合成可能である。一般的な乳化重合の方法については次の成書に詳しい。「合成樹脂エマルジョン」(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行、1978)、「合成ラテックスの応用」(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行、1993)、「合成ラテックスの化学」(室井宗一著、高分子刊行会発行、1970)。
その他、所謂溶液重合や塊状重合によっても、乳化重合と同様に本発明の疎水性ポリマーを合成することができる。
【0220】
本発明の着色微粒子の調製に用いられる疎水性ポリマーの使用量としては、着色微粒子において共存する色素に対して、10〜500質量%が好ましく、20〜300質量%がより好ましい。
【0221】
(高沸点有機溶媒)
次に、本発明に用いられる高沸点有機溶媒について説明する。
本発明の着色微粒子分散物は、少なくとも1種の疎水性色素と、少なくとも1種の疎水性ポリマーと、少なくとも1種の高沸点有機溶媒とを含有し、必要に応じて、沸点が200℃以下であり、且つ水への溶解度が25g以下である補助溶媒を含む溶液、及び水性媒体を混合して乳化分散させた後に、補助溶媒を使用した場合には該補助溶媒を除去して、調製することができる。
前記着色微粒子の調製において、前記高沸点有機溶媒は、色相に優れた安定な着色微粒子を形成するのに必須の成分である。
本発明において、前記高沸点有機溶媒とは、沸点が200℃以上で、融点が80℃以下の有機溶媒であり、特に、25℃における水の溶解度が4g以下であるものが好ましい。該水の溶解度(25℃)が4gを越えると、インク組成物を構成する着色微粒子において、経時での粒子径の粗大化や凝集等が起こり易くなり、インクの吐出性に重大な悪作用を及ぼすことがある。該水の溶解度としては、4g以下が好ましく、3g以下がより好ましく、2g以下が更に好ましく、特に1g以下が好ましい。
【0222】
本明細書において、「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
【0223】
本発明に係る高沸点有機溶媒の使用量としては、着色微粒子の共存する色素に対して、5〜200質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましい。
【0224】
本発明において、前記高沸点有機溶媒としては、下記式〔S−1〕から〔S−9〕で表される化合物が好ましい。
【0225】
【化28】
【0226】
前記式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表す。また、a,b,cは、各々独立に0又は1を表す。
【0227】
式〔S−2〕においてR4及びR5は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R6は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I以下同じ)、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、dは0〜3の整数を表す。dが複数のとき、複数のR6は同じでも異なっていてもよい。
【0228】
式〔S−3〕においてArはアリール基を表し、eは1〜6の整数を表し、R7はe価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0229】
式〔S−4〕においてR8は脂肪族基を表し、fは1〜6の整数を表し、R9はf価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0230】
式〔S−5〕においてgは2〜6の整数を表し、R10はg価の炭化水素基(ただしアリール基を除く)を表し、R11は脂肪族基又はアリール基を表す。
【0231】
式〔S−6〕においてR12、R13及びR14は各々独立に、水素原子、脂肪族基又はアリール基を表す。Xは−CO−又は−SO2−を表す。R12とR13又はR13とR14は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0232】
式〔S−7〕においてR15は脂肪族基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリール基又はシアノ基を表し、R16はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、hは0〜3の整数を表す。hが複数のとき、複数のR16は同じでも異なっていてもよい。
【0233】
式〔S−8〕においてR17及びR18は、各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R19はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、iは0〜4の整数を表す。iが複数のとき、複数のR19は同じでも異なっていてもよい。
【0234】
式〔S−9〕においてR20及びR21は、脂肪族基又はアリール基を表す。jは1又は2を表す。
【0235】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1 〜R6、R8、R11〜R21が脂肪族基又は脂肪族基を含む基であるとき、脂肪族基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、また不飽和結合を含んでいても置換基を有していてもよい。置換基の例として、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、エポキシ基等がある。
【0236】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1 〜R6 、R8 、R11〜R21が環状脂肪族基、すなわちシクロアルキル基であるか、又はシクロアルキル基を含む基であるとき、シクロアルキル基は3〜8員の環内に不飽和結合を含んでよく、また置換基や架橋基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、脂肪族基、ヒドロキシル基、アシル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基、アルキル基等があり、架橋基の例としてメチレン、エチレン、イソプロピリデン等が挙げられる。
【0237】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21がアリール基又はアリール基を含む基であるとき、アリール基はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0238】
式〔S−3〕、〔S−4〕、〔S−5〕においてR7、R9又はR10が炭化水素基であるとき、炭化水素基は環状構造(例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環)や不飽和結合を含んでいてもよく、また置換基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基等がある。
【0239】
以下に、式〔S−1〕〜〔S−9〕で表される高沸点有機溶媒の中でも、特に好ましい高沸点有機溶媒について述べる。
式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は、各々独立して、炭素原子数(以下C数と略す)1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えばn−ブチル、2−エチルヘキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、ベンジル、オレイル、2−クロロエチル、2,3−ジクロロプロピル、2−ブトキシエチル、2−フェノキシエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)、又はC数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、クレジル、p−ノニルフェニル、キシリル、クメニル、p−メトキシフェニル、p−メトキシカルボニルフェニル)である。a、b、cは各々独立に0又は1であり、より好ましくはa、b、cすべて1である。
【0240】
式〔S−2〕においてR4及びR5 はC数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えば前記R1 について挙げたアルキル基と同じ基、エトキシカルボニルメチル、1,1−ジエチルプロピル、2−エチル−1−メチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、1−エチル−1,5−ジメチルヘキシル、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、メンチル、ボルニル、1−メチルシクロヘキシル)又はC数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R1について挙げたアリール基、4−t−ブチルフェニル、4−t−オクチルフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル、2,4,−ジ−t−ブチルフェニル、2,4,−ジ−t−ペンチルフェニル)であり、R6はハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、C数1〜18のアルキル基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ドデシル)、C数1〜18のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ベンジルオキシ)、C数6〜18のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−トリルオキシ、4−メトキシフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ)又はC数2〜19のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル)又はC数6〜25のアリールオキシカルボニル基であり、dは0又は1である。
【0241】
式〔S−3〕においてArはC数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、4−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、4−n−ブトキシフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル)であり、eは1〜4(好ましくは1〜3)の整数であり、R7はe価のC数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基〔例えば前記R4について挙げたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、−(CH2)2−、
【化29】
【0242】
又はe価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに結合した炭化水素基〔例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2(OCH2CH2)3−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、
【化30】
【0243】
である。
【0244】
式〔S−4〕においてR8はC数1〜24(好ましくは1〜17)の脂肪族基(例えばメチル、n−プロピル、1−ヒドロキシエチル、1−エチルペンチル、n−ウンデシル、ペンタデシル、8,9−エポキシヘプタデシル、シクロプロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)であり、fは1〜4(好ましくは1〜3)の整数であり、R9はf価のC数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基又はc価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに連結した炭化水素基(例えば前記R7について挙げた基)である。
【0245】
式〔S−5〕においてgは2〜4(好ましくは2又は3)であり、R10はg価の炭化水素基〔例えば、−CH2−、−(CH2)2−、−(CH2)4−、−(CH2)7−、
【化31】
【0246】
であり、R11はC数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基又はC数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R4について挙げた脂肪族基、アリール基)である。
【0247】
式〔S−6〕において、R12は水素原子、C数1〜24の脂肪族基(好ましくは3〜20)〔例えばn−プロピル、1−エチルペンチル、n−ウンデシル、n−ペンタデシル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシメチル、4−t−オクチルフェノキシメチル、3−(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)プロピル、1−(2,4−ジ−t−ブチルフェキシ)プロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)又はC数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記Arについて挙げたアリール基)であり、R13及びR14は、水素原子、C数1〜24(好ましくは1〜18)の脂肪族基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、シクロペンチル、シクロプロピル)又はC数6〜18(好ましくは6〜15)のアリール基(例えばフェニル、1−ナフチル、p−トリル)である。R13とR14とが互いに結合し、Nとともにピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成してもよく、R12とR13とが互いに結合してピロリドン環を形成してもよい。Xは−CO−又は−SO2−であり、好ましくはXは−CO−である。
【0248】
式〔S−7〕においてR15はC数1〜24(好ましくは3〜18)の脂肪族基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシル、t−オクチル、2−ブチル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ドデシル、2−ヘキサデシル、t−ペンタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、C数2〜24(好ましくは5〜17)のアルコキシカルボニル基(例えばn−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル)C数1〜24(好ましくは1〜18)のアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル、n−ブチルスルホニル、n−ドデシルスルホニル)、C数6〜30(好ましくは6〜24)のアリールスルホニル基(例えばp−トリルスルホニル、p−ドデシルフェニルスルホニル、p−ヘキサデシルオキシフェニルスルホニル)、C数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)又はシアノ基であり、R16はハロゲン原子(好ましくはCl)、C数1〜24(好ましくは1〜18)のアルキル基(例えば前記R15について挙げたアルキル基)、C数3〜18(好ましくは5〜17)のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、C数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)C数1〜24(好ましくは1〜18)のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ベンジルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ)又はC数6〜32(好ましくは6〜24)のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−t−ブチルフェノキシ、p−t−オクチルフェノキシ、m−ペンタデシルフェノキシ、p−ドデシルオキシフェノキシ)であり、hは1〜2の整数である。
【0249】
式〔S−8〕においてR17及びR18は前記R13及びR14と同じであり、R19は前記R16と同じである。
【0250】
式〔S−9〕においてR20、R21は前記R1、R2及びR3と同じである。jは1又は2を表し、好ましくは、jは1である。
【0251】
本発明において用いられる高沸点有機溶媒の具体例としては、特願2002−10361号に記載の化合物(S−1〜S−93)が好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0252】
本発明において、高沸点有機溶媒は1種類を単独で使用しても、2種以上を混合〔例えばトリクレジルホスフェートとジブチルフタレート、トリオクチルホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレートとポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)〕して使用してもよい。
【0253】
本発明において、前記疎水性色素と前記高沸点有機溶媒との質量比としては、疎水性色素:高沸点有機溶媒が、1:0.01〜1:1であるのが好ましく、1:0.05〜1:0.5であるのがより好ましい。
【0254】
本発明において用いられる高沸点有機溶媒の前記以外の化合物例、及び/又はこれら高沸点有機溶媒の合成方法については、例えば、米国特許第2,322,027号、同第2,533,514号、同第2,772,163号、同第2,835,579号、同第3,594,171号、同第3,676,137号、同第3,689,271号、同第3,700,454号、同第3,748,141号、同第3,764,336号、同第3,765,897号、同第3,912,515号、同第3,936,303号、同第4,004,928号、同第4,080,209号、同第4,127,413号、同第4,193,802号、同第4,207,393号、同第4,220,711号、同第4,239,851号、同第4,278,757号、同第4,353,979号、同第4,363,873号、同第4,430,421号、同第4,430,422号、同第4,464,464号、同第4,483,918号、同第4,540,657号、同第4,684,606号、同第4,728,599号、同第4,745,049号、同第4,935,321号、同第5,013,639号、欧州特許第276,319A号、同第286,253A号、同第289,820A号、同第309,158A号、同第309,159A号、同第309,160A号、同第509,311A号、同第510,576A号、東独特許第147,009号、同第157,147号、同第159,573号、同第225,240A号、英国特許第2,091,124A号等の各明細書、特開昭48−47335号、同50−26530号、同51−25133号、同51−26036号、同51−27921号、同51−27922号、同51−149028号、同52−46816号、同53−1520号、同53−1521号、同53−15127号、同53−146622号、同54−91325号、同54−106228号、同54−118246号、同55−59464号、同56−64333号、同56−81836号、同59−204041号、同61−84641号、同62−118345号、同62−247364号、同63−167357号、同63−214744号、同63−301941号、同64−9452号、同64−9454号、同64−68745号、特開平1−101543号、同1−102454号、同2−792号、同2−4239号、同2−43541号、同4−29237号、同4−30165号、同4−232946号、同4−346338号等の各公報に記載されている。
【0255】
(補助溶媒)
本発明においては、前記高沸点有機溶媒と共に、必要に応じて、補助溶媒を用いることができる。この補助溶媒は、低沸点溶媒又は水溶性の有機溶媒であり、色素を含む有機溶媒相の乳化分散後に、蒸発や膜透析及び限外濾過等で除去する溶媒である。
本発明に係る、少なくとも疎水性色素と疎水性ポリマーと高沸点有機溶媒とを含有する着色微粒子を調製する場合、粒子サイズの分布が狭く、かつ安定な分散物を得るには、上記補助溶媒の水への溶解度が小さい方が好ましい。その一方で、乳化分散後に補助溶媒をスムーズに除去し易くするためには、ある程度水への溶解性が必要となる。従って、水と完全に溶解する溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等は、粒子サイズの分布の狭い、安定な分散物を得るためには好ましくない。
本発明に係る前記補助溶媒の水への溶解度(25℃、水100gに対して)としては、0.5以上25g以下が好ましく、1g以上20g以下がより好ましい。
前記補助溶媒の好ましい具体例(AS−1〜11)、及びそれらの水への溶解度を以下に示すが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0256】
【0257】
本発明における補助溶媒の使用量としては、着色微粒子において共存する色素に対して、1〜200倍量が好ましく、2〜100倍量がより好ましい。
【0258】
(イソシアネート化合物)
次に、本発明においてカプセル壁の形成に用いられるイソシアネート化合物について説明する。
本発明で用いられるイシアネート化合物は、下記一般式(A)で表される2個のイシアネート基を有する2官能イシアネート化合物と、同一分子内に3個以上のイシアネート基を有する多官能イシアネート化合物であり、必要に応じて他のイシアネート化合物及びその他の化合物を併用してもよい。
【化32】
【0259】
(一般式(A)の2官能イシアネート化合物)
一般式(A)中、Arはアリーレン基を表し、Xは単結合又は2価の連結基を表し、Rはアルキレン基、アラルキレン基又はアリーレン基を表し、mは0〜20の整数を表す。
【0260】
一般式(A)において、Arで表されるアリーレン基としては、置換基を有していてもよく、具体的な例としては次の様なものが挙げられる。
【化33】
【0261】
一般式(A)において、Xで表される2価の連結基のとしては、−O−、−SO2−、−SO−、−S−、−CO−、−COO−、−CONH−、−SO2NH−、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアラルキレン基、置換又は無置換のアルキリデン基、置換又は無置換のシクロアルキリデン基、置換又は無置換のオキシアルキレン基、置換又は無置換オキシアリーレン基、置換又は無置換のオキシアラルキレン基、−COY−Z−YOC−基(該Yは−O−又は−NH−を表し、該Zは置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基、置換又は無置換のアラルキレン基を表す。)を挙げることができる。
【0262】
一般式(A)において、Rで表されるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、具体的な例としては次のものが挙げられる。
【0263】
【化34】
【0264】
一般式(A)において、Rで表されるアラルキレン基は、置換基を有していてもよく、具体的な例としては次のものが挙げられる。
【0265】
【化35】
【0266】
以上、一般式(A)で表される本発明の2官能イシアネート化合物の中でも、Arで表されるアリーレン基としては、置換又は無置換のベンゼン環が好ましく、Xで表される連結基としては、−O−、−SO2−、−SO−、−S−、−CO−、−COO−、炭素原子数1〜18のアルキレン基、炭素原子数2〜18のアルキリデン基、炭素原子数5〜12のシクロアルキリデン基、炭素原子数6〜20のアリーレン基、炭素原子数7〜18のアラルキレン基、又は−COO(CH2)nOOC−(該nは1〜12の整数)が好ましい。
【0267】
Rで表される基としては、炭素原子数8〜18のアラルキレン基が好ましい。また一般式(A)において、繰り返し単位数(m)は、好ましくは0〜8の整数であり、更に好ましくは0〜4の整数である。
【0268】
本発明の一般式(A)で表される同一分子内に2個のイソシアネート基を有する2官能イソシアネート化合物の合成は、ビスフェノール化合物の水酸基がイソシアネート化合物のイソシアネート基へ付加することによるウレタン結合形成反応で、一般的なウレタン化合物の合成方法が適用できる。両末端基がイソシアネート基となる様にする為には、イソシアネート化合物をビスフェノール化合物に対して過剰モル量で反応させればよく、具体的には、イソシアネート化合物のモル量はビスフェノール化合物に対して2倍〜8倍が好ましく、特に好ましくは2倍〜4倍である。
【0269】
本発明で用いる一般式(A)で表される2官能イソシアネート化合物としては、特に、下記一般式(N−1)及び(N−2)で表される2価アルコール化合物とジイソシアネート化合物の付加反応によって得られる。
【0270】
【化36】
【0271】
上式(N−1)の2価アルコール中、Arは置換又は無置換のアリーレン基を表し、Xは単結合又は2価の連結基を表す。
【0272】
【化37】
【0273】
上式(N−2)のジイソシアネート中、Rは置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアラルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基を表す。
【0274】
以下に、本発明に係わるビスフェノール化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4−ヒドロキシフェニキシ−3’フェノール、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルカルボニル−4’−フェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシナフチル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキキシ−3−クロロフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、N−(3’−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシ安息香酸アミド、N−(2’−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルスルホンアミド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシリレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシリレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)プロパン,1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−m−キシリレン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェノキシ)−5−メチルフェニレン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルカルボキシル)ペンタン、1,6−ビス(4−ヒドロキシベンゾイルアミノ)ヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)スルフォン等が挙げられる。
【0275】
以下に、本発明に係わるジイソシアネート化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0276】
(多官能イシアネート化合物)
本発明のマイクロカプセルの壁剤として用いられる1分子内に3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物の具体例としては、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートを主原料としこれらの3量体(ビューレット或いはイソシヌレート)の他、トリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体として多官能体としたもの、及びベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物などが挙げられる。これらの壁剤については成書(例えば、岩田敬治編「ポリウレタン樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1987)に詳しい。
【0277】
本発明において、マイクロカプセルの作製時における、一般式(A)で表される2官能イシアネート化合物(x)と、3個以上のイシアネート基を有する多官能イシアネート化合物(y)との質量混合比(x/y)は、0.02/1〜0.20/1で表される範囲内であることが好ましく、0.03/1〜0.18/1で表される範囲内であることがより好ましく、特に0.06/1〜0.18/1で表される範囲内であることが最も好ましい。
上記2官能イシアネート化合物と多官能イシアネート化合物の質量混合比(x/y)が、0.02/1〜0.20/1で表される範囲内であれば、発色濃度や生保存性を損なわずに、良好なカプセル壁が形成され、ノズル詰まりを抑止する効果が更に顕著となる。
【0278】
(マイクロカプセル及びインク組成物の作製)
以下、本発明のマイクロカプセルの製造方法について説明する。
着色剤(疎水性色素)を、疎水性オイルである疎水性ポリマーと高沸点有機溶媒中に溶解ないし分散させ、カプセル芯(油相)とする。この際、必要に応じ補助溶媒を使用することもできる。補助溶媒として高沸点(沸点約150℃以上)のオイルを用いた場合には、用いた補助溶媒はカプセル芯に取り込まれる。この様な場合には、使用する補助溶媒の量は上記の疎水性ポリマーと高沸点有機溶媒の1/20〜20倍であることが本発明の効果を得るためには好ましい。
【0279】
一方、補助溶媒が沸点100℃以下の低沸点溶媒である場合にはカプセル化反応中に蒸散し、完成したカプセル中には残存しない。従って、使用量に特に制限はない。高沸点補助溶媒の具体例としては、アルキルビフェニル、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、塩素化パラフィン、トリクレジルフォスフェート、マレイン酸化合物類、アジピン酸化合物類などが好適に挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。低沸点溶媒の例としては酢酸エチル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトンなどが好適に挙げられる。
【0280】
本発明のカプセル芯(油相)は、カプセル化のために水相に投入され乳化分散される。乳化分散を容易にするために水相には水溶性高分子あるいは界面活性剤が添加される。界面活性剤は油相に添加しておくこともできる。水相に添加しておく水溶性高分子としては、ゼラチン、変性ゼラチン、澱粉、変性澱粉、カゼイン、セルロース誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウムなどの天然水溶性高分子の他、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸誘導体、スチレン/無水マレイン酸共重合体およびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびその誘導体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体などがあげられる。これらの水溶性高分子は乳化分散を行う温度での水に対する溶解度が5以上であることが好ましい。
【0281】
界面活性剤は周知の乳化用界面活性剤が使用可能である。一般的には、アニオン系界面活性剤またはノニオン系界面活性剤が用いられる。具体的には、アニオン系界面活性剤としてアルキル硫酸化合物塩、高級脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アミドスルホン酸塩、ジアルキル琥珀酸塩などがあげられ、ノニオン系界面活性剤としてはパーフルオロアルコール、ポリエチレングリコールおよびその付加物、多価アルコール脂肪酸化合物などが上げられる。これらの詳細については成書(吉田時行他編「新版 界面活性剤ハンドブック」、工学図書株式会社、1987)などに詳しい。
【0282】
以下に、前記一般式(II)で表される2官能イシアネート化合物と、多官能イシアネート化合物とを反応させてマイクロカプセル壁を形成したマイクロカプセルの製法について更に詳しく述べる。前記一般式(II)で表される2官能イシアネート化合物および多官能イシアネート化合物は、前記の疎水性色素及び疎水性ポリマーを含有するカプセル芯(油相)に添加される。この油相を水溶性高分子を保護コロイドとして含有する水相中で乳化分散する。乳化分散はホモジナイサー等の公知の分散装置を用いることができ、乳化分散粒子径は0.01μ〜0.5μが適当である。これ未満であるとカプセル中に内包される芯材の量が極めて少なくなり効率が悪くなる恐れがある。一方、大き過ぎると圧力により容易に破壊されるため実用に耐えない恐れがある。
【0283】
乳化分散後、乳化分散液の温度を上昇させるか、触媒を添加することにより重合反応を開始させる。ポリイソシアネートの反応性が充分高い場合には室温でも重合反応を進行させることができる。該重合はイソシアネート基が水と反応し、カルバミン酸を形成することにより開始されるため、油相/水相界面でカプセル壁が形成される。この際、油相あるいは水相にポリオールを添加しておくことにより、これらの素材との反応を同時に生じさせ、希望するカプセル壁を形成することもできる
【0284】
上記ポリオールの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール等が挙げられる。
【0285】
本発明の前記一般式(A)で表される2官能イシアネート化合物と、多官能イシアネート化合物とを反応させて作成したマイクロカプセル壁は、明瞭なガラス転移温度を有し、該ガラス転移温度以下では安定して芯物質を保持する。そのため、インク吐出時に衝撃等による合一や凝集が発生しない。
【0286】
前記乳化分散の際、前記水相及び前記油相のいずれか又は両方に、後述する界面活性剤、湿潤剤、染料安定化剤、乳化安定剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0287】
前記界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤、また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)、また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド型の両性界面活性剤、また、特開昭59−157,636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載のものも好適に挙げられる。
【0288】
本発明においては、これらの界面活性剤と共に、乳化直後の安定化を図る目的で水溶性ポリマーを添加することができる。
前記水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体、また、多糖類、カゼイン、ゼラチン等の天然水溶性ポリマー、などが好適に挙げられる。
【0289】
前記乳化分散により前記着色微粒子を調製し、該着色微粒子を含有するインク組成物を調製する場合、印刷特性を向上させる上で、特に重要なのは着色微粒子のサイズのコントロールである。
本発明の着色微粒子の平均粒子径は、公知の方法で容易に測定することができ、例えば、インク組成物中の色素濃度が、0.1〜1質量%になるように蒸留水で希釈して、市販の体積平均粒子径測定機で容易に測定できる。該測定装置としては、例えば、日機装(株)製の「マイクロトラックUPA」が好適に挙げられる。
【0290】
本発明のインク組成物に含有される着色微粒子のサイズとしては、印字特性や本発明の大きな効果を得るという観点から、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmであるのが好ましく、0.01〜0.3μmであるのがより好ましく、0.01〜0.2μmであるのが特に好ましい。
【0291】
また、前記着色微粒子における粒子径の変動係数としては、45%以内であることが好ましく、40%以内であることがより好ましく、35%以内であることが特に好ましい。
なお、粒子径の変動係数とは、インク組成物の調製直後における、着色微粒子の粒子径の変動係数を意味し、(体積平均粒子径の分布の標準偏差/体積平均粒子径)により、求めることができる。
【0292】
本発明に係る前記着色微粒子の比重としては、0.90〜1.10が好ましく、0.93〜1.08がより好ましく、0.95〜1.05が特に好ましい。それらの範囲から外れると、水中で安定に存在し難くなる。
前記着色微粒子の比重は、着色微粒子の構成成分よりなる溶液を調製し、その後、補助溶媒を除去して得られる固まりを、例えば、新実験化学講座1巻(丸善(株))のP79〜P82に記載の方法等やその応用で測定することができる。
【0293】
本発明のインク組成物において、粗大粒子の存在も印刷性能に非常に大きな役割を示す。即ち、粗大粒子がヘッドのノズルを詰まらせる、あるいは詰まらないまでも汚れを形成することによって、インク組成物の不吐出や吐出のヨレを生じ、印刷性能に重大な影響を与えることが分かった。
これを防止するためには、本発明のインク組成物をインクジェット記録に用いた場合、インク1μl中において、5μm以上の粒子を10個以下、1μm以上の粒子を1000個以下に抑えることが好ましい。
【0294】
これらの粗大粒子を除去する方法としては、公知の遠心分離法、精密濾過法等を用いることができる。これらの分離手段は、乳化分散直後に行ってもよいし、乳化分散物に湿潤剤や界面活性剤等の各種添加剤を加えた後、インクカートリッジに充填する直前でもよい。
インク組成物における着色微粒子の平均粒子径を小さくし、かつ粗大粒子をなくす有効な手段として、機械的攪拌を行う乳化分散装置を好適に用いることができる。
【0295】
前記乳化分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー撹拌方式、インライン撹拌方式、コロイドミル等のミル方式、超音波方式など公知の装置を用いることができるが、本発明においては、高圧乳化分散装置が好ましく、その中でも、高圧ホモジナイザーが特に好ましい。
【0296】
前記高圧ホモジナイザーは、米国特許第4533254号明細書、特開平6−47264号公報等に詳細な機構が記載されているが、市販の装置としては、「ゴーリンホモジナイザー」(A.P.V GAULIN INC.)、「マイクロフルイダイザー」(MICROFLUIDEX INC.)、「アルティマイザー」(株式会社スギノマシン)等が挙げられる。
【0297】
また、近年になって米国特許第5720551号明細書に記載されているような、超高圧ジェット流内で微粒子化する機構を備えた高圧ホモジナイザーは本発明の乳化分散に特に有効である。この超高圧ジェット流を用いた乳化分散装置の例として、「DeBEE2000」(BEE INTERNATIONAL LTD.)が挙げられる。
【0298】
前記高圧乳化分散装置を用いて乳化分散する際の圧力としては、50MPa以上(500bar以上)が好ましく、60MPa以上(600bar以上)がより好ましく、180MPa以上(1800bar以上)が更に好ましい。
本発明においては、前記乳化分散の際、例えば、撹拌乳化機で乳化した後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。また、一度これらの乳化装置で乳化分散した後、湿潤剤や界面活性剤等の添加剤を添加した後、カートリッジにインク組成物を充填する間に、再度高圧ホモジナイザーを通過させるのも好ましい。
【0299】
前記乳化分散の際、前記高沸点有機溶媒に加えて、前記補助溶媒を含む場合、前記乳化物(着色微粒子)の安定性及び安全衛生上の観点から、前記補助溶媒を実質的に除去するのが好ましい。
前記補助溶媒を実質的に除去する方法としては、該補助溶媒の種類に応じて各種の公知の方法、例えば、蒸発法、真空蒸発法、限外濾過法等を採用することができる。前記補助溶媒の除去工程は、乳化直後、できるだけ速やかに行うのが好ましい。
【0300】
本発明のインク組成物は、各種分野に使用することができ、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録用インク等のインク組成物として好適に使用することができる。
本発明のインク組成物は、前記成分に加え更に必要に応じて、適宜選択したその他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分としては、例えば、乾燥防止剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防黴剤、pH調節剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知添加剤が挙げられる。
【0301】
前記乾燥防止剤は、インクジェット記録方法に用いるノズルのインク噴射口において該インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
前記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。該乾燥防止剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,3−ヘキサトリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げらる。これらの内グリセリンジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してよい。これらの乾燥防止剤は、インク中に10〜50質量部含有することが好ましい。
【0302】
前記浸透促進剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムや前記乳化分散用界面活性剤として掲げたノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは、インク組成物中に、10〜30質量%添加されれば十分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない範囲で添加される。
【0303】
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用され、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤なども挙げられる。
【0304】
前記酸化防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用され、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤が好適に挙げられる。
前記有機系の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などが挙げられる。
前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物などが好適に挙げられる。
【0305】
前記防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0306】
前記pH調整剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、酢酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の無機塩基、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0307】
前記表面張力調整剤としては、例えば、ノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。例えば、上記の乳化分散に用いる界面活性剤を用いることができるが、ここで用いられる界面活性剤は25℃での水に対する溶解度が0.5%以上のものが好ましい。
【0308】
前記分散剤及び前記分散安定剤としては、上述のカチオン、アニオン、ノニオン系の各種界面活性剤、などが好適に挙げられる。
前記消泡剤としては、フッソ系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるれるキレート剤等が挙げられる。
【0309】
なお、インク組成物のpHとしては、保存安定性の向上の点で、6〜10が好ましく、7〜10がより好ましい。
前記インク組成物の表面張力としては、20〜60mN/mが好ましく、25〜45mN/mがより好ましい。
前記インク組成物の粘度としては、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
本発明のインク組成物は、以下の本発明のインクジェット記録方法に好適に用いられる。
【0310】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、インク受像材料に対して、カプセルの芯物質として、少なくとも1種の疎水性色素と、少なくとも1種の疎水性ポリマーと、少なくとも1種の高沸点有機溶媒とを含有した着色組成物を内包し、且つ、一般式(A)で表される2個のイシアネート基を有する2官能イシアネート化合物と、同一分子内に3個以上のイシアネート基を有する多官能イシアネート化合物とを用いて該カプセル壁を形成したマイクロカプセル含有着色微粒子分散物を含有するインク組成物、即ち、前記インク組成物を用いて記録を行うというものであり、前記受像材料上に、前記インク組成物を着弾することにより画像を形成する。
前記疎水性色素としては、前述した一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物、一般式(Y−I)で表される化合物、一般式(M−I)で表される化合物、及び一般式(C−I)で表される化合物からなる群より選択される化合物の少なくとも一種を含有するのが好ましい。
前記受像材料としては、支持体上に、熱可塑性疎水性ポリマー粒子を含む少なくとも1層の多孔質樹脂層を有するものが好ましく、本発明のインクジェット記録方法としては、該受像材料上に、前記インク組成物を着弾することにより画像を形成後、前記着色微粒子及び前記多孔質樹脂層を加熱処理及び/又は加圧処理し、前記着色微粒子を融着させるのが好ましい態様である。
また、前記熱可塑性疎水性ポリマー粒子の平均粒子径が、前記着色微粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましく、前記着色微粒子の平均粒子径d1(μm)と、前記熱可塑性疎水性ポリマー粒子の平均粒子径d2(μm)との関係が、2<d2/d1<100であることがより好ましい。
さらに、前記熱可塑性疎水性ポリマー粒子と、前記着色微粒子に含まれる疎水性ポリマーとが、互いに少なくとも1種の共通するモノマーユニットを有することが好ましい。
【0311】
本発明のインクジェット記録方法においては、前述した本発明のインク組成物を用いることが特に好ましい。即ち、カプセルの芯物質として、少なくとも1種の疎水性色素と、少なくとも1種の疎水性ポリマーと、少なくとも1種の高沸点有機溶媒とを含有した着色組成物を内包し、且つ、下記一般式(A)で表される2個のイシアネート基を有する2官能イシアネート化合物と、同一分子内に3個以上のイシアネート基を有する多官能イシアネート化合物とを用いて該カプセル壁を形成したことを特徴とするマイクロカプセル含有着色微粒子分散物であって、平均粒子径が0.01〜0.5μmであり、粒子径の変動係数が45%以内であり、かつ比重が0.9〜1.2である着色微粒子を含有するインク組成物を用いるのが特に好ましい。
なお、本発明のインクジェット記録方法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0312】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、本実施例中の「部」及び「%」は全て「質量部」及び「質量%」を表す。
【0313】
[実施例1]
(「タケネートD119N」の製造方法)
キシリレンジイソシアネートとビスフェノールAとを、2.2モル対1.0モルで反応させた付加物(2官能イソシアネート化合物)の50%酢酸エチル溶液を、キシリレンジイソシアネート/トリメチルプロパン付加物(多官能イソシアネート化合物)の75%酢酸エチル溶液(三井武田ケミカル(株)製の商品名「タケネートD110N」、以降、これを単に「D110N」と称することがある。)にその固形分質量比率が3.0:7.0になるように混合し、2官能イソシアネート化合物と多官能イソシアネート化合物の52%酢酸エチル溶液(三井武田ケミカル(株)製の商品名「タケネートD119N」、以降、単に「D119N」と称することがある。)を得た。
【0314】
(色素含有マイクロカプセル液の調製)
下記の疎水性色素(a)3.0部、下記の疎水性ポリマー(b)4.5部、下記の高沸点有機溶媒(c)1.0部を、酢酸エチル48.5部に溶解した後、カプセル化壁剤として前記「D110N」5.5部と、前記「D119N」1.0部とを添加し、均一に混合して混合溶液を得た。
【0315】
別途、フタル化ゼラチンの6.0%水溶液64.0部及びジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム1.5部の混合溶液を調製した。
上記2種の混合溶液を合わせ、ホモジナイザーを使用して乳化分散した後、撹拌しながら40℃に加熱し、3時間かけてカプセル化反応を行い、固形分濃度が14.3%の着色微粒子含有マイクロカプセル液(D−1)を得た。
【0316】
【化38】
【0317】
(インク01の作製)
下記の素材を混合し、0.45μmのフィルターによって濾過し、水性のインクジェット記録用インク(01)を調製した。
・着色色素含有マイクロカプセル分散物(D−1) 50部
・ジエチレングリコール 8部
・テトラエチレングルコールモノブチルエーテル 2部
・グリセリン 5部
・ジエタノールアミン 1部
・ポリエチレングルコール(平均エチレンオキシド繰返し数10)の方末端2−ブチルオクタン酸エステル化物 1g
・水 全体で100部になる量
【0318】
[実施例2]
(インク02の作製)
上記のインク(01)の作製において得られた着色色素含有マイクロカプセル分散物(D−1)を、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC)にて600barの圧力で5回通過させることで微粒子化を行ない、平均粒子径が0.05μmの着色色素含有マイクロカプセル液(D−2)を得た。
次いで、上記インク(01)の作製において、着色色素含有マイクロカプセル分散物(D−1)を上記で得られた着色色素含有マイクロカプセル液(D−2)に代えたこと以外は、上記インク(01)の作製と同様にして水性のインクジェット記録用インク(02)を調製した。
【0319】
[実施例3〜実施例5]
(インク03〜05の作製)
実施例1の着色色素含有マイクロカプセル分散物(D−1)の調製において、疎水性色素(a)を下記疎水性色素(b)〜(d)に各々代えたこと以外は、実施例1と同様にしてカプセル化反応を行ない、着色微粒子含有マイクロカプセル液(D−3〜D−5)を得た。更に、前記インク(01)の作製と同様にして水性のインクジェット記録用インク(03〜05)を作製した。
【0320】
【化39】
【0321】
[比較例1]
(比較例インク01の作製)
下記の素材を混合し、0.45μmのフィルターによって濾過し、水性のインクジェット記録用インク(比較01)を調製した。
・水溶性着色剤(下記化合物(d)) 4部
・ジエチレングリコール 8部
・テトラエチレングルコールモノブチルエーテル 5部
・グリセリン 5部
・ジエタノールアミン 1部
・ポリエチレングルコール(平均エチレンオキシド繰り返し数10)の方末端2−ブチルオクタン酸エステル化物 1g
・水 全体で100部になる量
【0322】
【化40】
【0323】
[比較例2]
(比較例インク02の作製)
実施例1のインク01の作製において、カプセル化壁剤の「D110N」と「D119N」を除いたこと以外は、実施例1と同様にして水性のインクジェット記録用インク(比較02)を調製した。
【0324】
(画像記録及び評価)
上記で作製したインク(実施例01〜05及び比較例01〜02)を、インクジェット記録プリンター「PM−890C」(EPSON(株)製)のカートリッジに充填し、同機を用いて、PPC用普通紙とインクジェット記録用ペーパー「フォト光沢紙EX」(富士写真フイルム(株)製)に画像を記録し、以下の評価試験を行った。その評価結果を下記の表1に示した。
【0325】
(印刷性能評価)
カートリッジをプリンターにセットし、全ノズルからのインクの吐出を確認した後、A4用紙30枚に画像を出力し、印字の乱れと吐出性を以下の基準で評価した。
A:印刷開始から終了まで、印字の乱れや不吐出が無かった。
B:印刷開始から終了まで、印字の乱れや不吐出が時々発生した。
C:印刷開始から終了まで、印字の乱れや不吐出がかなりあった。
【0326】
(紙依存性評価)
上記フォト光沢紙に形成した画像とPPC用普通紙に形成した画像との色調を比較し、両画像間の差が殆どない場合をA、両画像間の差が小さい場合をB、両画像間の差が大きい場合をCとして、3段階で評価した。
【0327】
(耐水性評価)
上記画像を形成したフォト光沢紙を、1時間ほど室温で乾燥した後、30秒間水に浸漬し、室温にて自然乾燥させた後、滲みの発生状態を目視で観察した。滲みがないものをA、滲みが僅かに生じたものをB、滲みが多く発生したものをCとして、3段階で評価した。
【0328】
(耐光性評価)
上記画像を形成したフォト光沢紙に、ウェザーメーター(「アトラスC.I65」)を用いて、キセノン光(85000Lx)を10日間照射し、該キセノン照射の前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite「310TR」)を用いて測定し、色素残存率として評価した。尚、この反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。いずれの濃度でも、色素残存率が80%以上の場合をA、80%未満をB、70%未満の場合をCとして、3段階で評価した。
【0329】
(オゾン耐性)
耐オゾン性については、オゾン濃度5.0ppmの条件下に試料を3日間保存し、その前後での濃度を、X−Rite「310TR」にて測定し色素残存率を求め評価した。この色素残存率が90%以上の場合をA、90未満〜80%以上をB、80%未満をCとして、3段階で評価した。
【0330】
【表1】
【0331】
表1の結果から明らかなように、実施例のインクは、印字適性に優れ、発色性や色調に優れ、紙依存性がなく、耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好で、細線の滲みがなく優れたインクジェット記録用インクであった。
【0332】
【発明の効果】
本発明に拠れば、ノズル等を用いて印字等を行った際、連続印画性が良好であり、特にノズル先端で目詰まりを起こすことがなく、紙依存性もなく、任意に選択した紙に印字した際の耐水性や耐光性、耐オゾン性に優れるインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法を提供することができる。
Claims (5)
- 前記疎水性色素が、下記一般式(I)で表される化合物、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(Y−I)で表される化合物、下記一般式(M−I)で表される化合物、及び下記一般式(C−I)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
- 前記高沸点有機溶媒が、水の溶解度が4g以下の有機溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロカプセル含有着色微粒子分散物を含有することを特徴とするインク組成物。
- 請求項4に記載のインク組成物を用いて記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
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