JP2004075718A - ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】高いレベルでの雨天路面上制動性、及び乾燥路面上操縦安定性の双方を満足するタイヤ、及び特にタイヤのトレッドゴムに有効に使用されうるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種のゴム成分と、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールである芯鞘構造の短繊維とを含有することを特徴とするゴム組成物、及びそれをトレッドに用いたタイヤである。
【選択図】 なし
【解決手段】天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種のゴム成分と、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールである芯鞘構造の短繊維とを含有することを特徴とするゴム組成物、及びそれをトレッドに用いたタイヤである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関し、さらに詳しくは、特に市場が要望する優れた雨天路面上制動性と乾燥路面上操縦安定性とを有するタイヤ、並びに該タイヤのトレッド等に好適に使用できるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にタイヤは、路面に雨水が溜まると、タイヤと路面の摩擦係数は大きく低下し、制動距離が長くなり事故の要因となるので、特に雨天路面上の制動性能に対する市場要求は近年ますます大きくなってきている。
従来より、タイヤは、タイヤ接地面における水を排除するために、排水溝が刻まれており、その溝の配置や体積によりタイヤとしての雨天路面上制動性は大きく変わることが知られている。このため、タイヤの他の性能を考慮しながらのトレッド溝の工夫が数多くなされている。しかし、トレッド溝の体積を大きくすると雨天路面上の制動性能は向上するが、一方では、トレッド剛性やタイヤの有効接地面積は低下し、このために乾燥路面上操縦安定性は低下する傾向にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、市場が要求する高いレベルでの雨天路面上制動性、及び乾燥路面上操縦安定性の双方を満足するタイヤ、及び特にタイヤのトレッドゴムに有効に使用されうるゴム組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、トレッドとして、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールからなる芯鞘構造の短繊維を配合したゴム組成物を適用することが有効であることを見出した。
すなわち、本発明は、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種のゴム成分と、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールである芯鞘構造の短繊維とを含有することを特徴とするゴム組成物を提供するものである。
また、本発明は、一対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有するタイヤにおいて、少なくともトップトレッドが、前記ゴム組成物から構成されていることを特徴とするタイヤを提供するものである。
【0005】
【発明の実施の態様】
本発明のゴム組成物においては、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールからなる芯鞘構造の短繊維を含有していることが必要とされる。このようなゴム組成物をトレッドに適用したタイヤにおいては、摩耗時のトレッド表面には、短繊維の芯部の水溶によりミクロ溝状の空隙が形成される。特に雨天路面においては、これらのミクロな溝は接地下において、主溝部(いわゆる従来の排水パターン部)へ雨天路面上の水は効率的に排除される。このため、事故発生率の高い低摩擦係数路面において、制動距離が短くなるものと考えられる。
一方、トレッド剛性は表面近傍において繊維溶解による軟化が生じるものの、短繊維はブロック内部マトリックスゴムの拘束により、トレッドゴムブロック全体としての動きを抑制し、乾燥路面上操縦安定性が向上する。
【0006】
前記芯鞘構造の短繊維において、鞘部を構成する材質としては、通常の有機繊維であれば特に制限はく、例えばポリエチレン,ボリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロンなどの脂肪族ポリアミド、アラミドなどの芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルが挙げられるが、この中で、ポリエチレン,ポリプロピレン,脂肪族ポリアミド,芳香族ポリアミド,及びポリエステルから選ばれた少なくとも一種のものが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。
次に、本発明における前記短繊維の含有量は、ゴム成分100質量部当たり2〜20質量部であることが好ましい。2質量部未満では性能向上効果が小さく、20質量部を超えればゴム精練時の分散不良、ゴム押し出し時の作業性不良(肌荒れ)及びタイヤトレッドのクラック発生等の不具合などが生じることがある。したがって、さらに3〜15質量部、特に4〜10質量部が好ましい。
【0007】
本発明において、前記短繊維の平均長は1〜15mmが好ましい。1mm未満では本発明の効果が充分に得られず、15mmを超えれば繊維が絡み易く、ゴム精練作業性が悪化することがある。さらに、1〜10mm、特に2〜5mmが好ましい。
短繊維の直径は、10〜200μmが好ましい。タイヤ制動性能向上の観点からは小さい方が、同じ量を配合した際にタイヤ表面における溝本数が増え、排水効果が向上するので好ましい。しかし繊維製造上、あまり細くすると糸切れが多発するうえ、ゴム精練作業性も悪化するので極端に細くはできない。また、あまり細くするとゴム練り時に糸が切れることがある。このために10〜100μm、特に15〜70μmが好ましい。
【0008】
本発明のゴム組成物で用いる短繊維の芯部は、あらゆる湿潤路面環境ですばやく水溶し、タイヤ表面に空隙を形成することがタイヤ性能安定上重要である。この芯部に適用される水溶性ポリビニルアルコールとしては、例えばビニルアルコールユニットが50モル%以上、重合度100〜3000、鹸化度90%未満のポリビニルアルコールが好ましく用いられ、芯鞘構造の繊維は例えば溶融紡糸で製造することができる。
このような芯鞘構造の短繊維は、芯:鞘の質量比として50:50から90:10の範囲のものが好ましく、さらに60:40から80:20、特に70:30が好ましい。鞘部の比率が小さすぎると鞘部の被膜が破れ易く、通常のタイヤ製造においては、トレッドゴム押出し後の水冷却工程を必要とするので、この際芯部のポリビニルアルコールが溶け出してしまうおそれがある。
【0009】
また、ゴム加硫中に短繊維の鞘部樹脂は溶融して、ゴムとの間でいわゆるメルトボンディングにより接着することが好ましい。このことにより、ゴムの剛性が確保される。このためには、該樹脂の融点は200℃以下であることが好ましい。200℃より高いと工業的な加硫温度範囲では溶融しなくなる。ただし、実際に使用する製品(例えばタイヤ)の加硫条件(温度、圧力、時間等)で鞘部樹脂が溶融することが好ましいことから、鞘部樹脂の融点は180℃以下が好ましく、特に160℃以下が好ましい。
一方、短繊維は、トレッド押出し工程や未加硫ゴム中において繊維状の形態を保つために、鞘部樹脂の融点は120℃以上であることが好ましい。120℃より低い融点であると、一般的なゴムの混練り、押出し工程中に溶融してしまい、繊維形状を保てず、微細に分散してしまう傾向がある。ゴム練りのどの段階で、短繊維を混入するかは、特に制限されるものではないが、短繊維が溶融するような段階、すなわち初期の素練り段階で混入させることは避けることが好ましい。上記の観点から、本発明における短繊維の鞘部樹脂としてはポリエチレン(PE)が好ましい。
【0010】
また、本発明のゴム組成物では、ゴム成分として、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴムが用いられるが、ジエン系合成ゴムとしては、従来からタイヤ用として一般的に用いられている任意のゴム、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらのゴムは単独または任意のブレンドとして使用することができる。
本発明のゴム組成物においては、上記以外の配合成分には特に制約はなく、例えば補強性充填剤として、カーボンブラックを用い、さらにシリカを併用することができる。また、通常ゴム業界で用いられる各種配合添加剤、たとえば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、亜鉛華、ステアリン酸等を用いることができる。
【0011】
本発明のタイヤは、通常のタイヤ、例えば一対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有するタイヤにおいて、トレッドゴムに、前記ゴム組成物を適用したものである。トレッドがキャップ/ベース構造の場合には、少なくともトップトレッドに用いることが好ましい。
本発明のタイヤにおいては、トレッドゴムに芯部に水溶性PVAを有する芯鞘構造の短繊維を配合するために、該繊維がゴム中にある時はその高弾性によりゴム剛性を高めるので乾燥路操縦性安定性は向上する。また、タイヤが摩耗して水溶性PVAが露出したときには湿潤路面においてはPVAが溶けて水路を形成し、ウェットブレーキ制動性が向上する。さらに、タイヤ製造工程においては、トレッドゴム押出後の水冷却工程でPVAが溶け出すこととなく、配合した短繊維をそのままの形状でトレッドゴム中に保持させておくことができる。
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。このようにして得られた本発明のタイヤに充填する気体としては空気に限らず、窒素などの不活性なガスも使用できる。
【0012】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
なお、各種の試料及び供試タイヤの性能評価は下記の方法に従って行った。
(1)乾燥路操縦性安定性
各試験用のタイヤを、国産1600ccクラスの乗用車に装着して、一般アスファルト路上を200km走行させた後、乾燥平坦路を走行させ、テストドライバーが、駆動性,制動性,直進安定性,コントロール性を総合評価し指数表示した。結果は、比較例1のタイヤを100として指数表示した。数値が大きいほ乾燥路操縦性安定性はよいことを示す。
(2)ウェットブレーキ制動性
各試験用のタイヤを、国産1600ccクラスの乗用車に装着して、一般アスファルト路上を200km走行させた後、雨天平坦路を走行させ、テストドライバーが、駆動性,制動性,直進安定性,コントロール性を総合評価し指数表示した。結果は、比較例1のタイヤを100として指数表示した。数値が大きいほウェットブレーキ制動性はよいことを示す。
【0013】
<PVA/PE芯鞘構造短繊維の製造例>
下記により、芯部が水溶性ポリビニルアルコール(水溶性PVA)、鞘部がポリエチレン(PE)の芯鞘構造の短繊維を製造した。
短繊維A
溶融紡糸で得られた繊維の繊度は12dtexであった。この繊維をカッターで切断して平均長3mmの短繊維Aを得た。
短繊維B
溶融紡糸により、繊度15dtex、平均長6mmの短繊維Bを得た。
短繊維C
溶融紡糸により、繊度15dtex、平均長10mmの短繊維Cを得た。
【0014】
<ゴム組成物の調製>
天然ゴム60質量部、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR1500:ジェイエスアール(株)製)40質量部、カーボンブラック(N220:旭カーボン(株)80質量部、オイル10質量部、ステアリン酸1質量部、亜鉛華2.5質量部、老化防止剤(ノクラック6C:大内新興化学工業(株)製)1質量部、ワックス0.2質量部、加硫促進剤DPG(ジフェニルグアニジン:大内新興化学工業(株)製)0.3質量部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジスルフィド:大内新興化学工業(株)製)0.3質量部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド:大内新興化学工業(株)製)0.5質量部、硫黄1.5質量部、及び上記の製造法で得られた第1表に示す繊度と平均長を有するPVA/PE芯鞘構造短繊維を所定量配合したゴム組成物を調製した。なお、比較例1では短繊維は配合しなかったこと以外は上記同様に行った。
【0015】
<供試タイヤの製造>
上記により調製したゴム組成物をトレッドゴムに用いることにより、タイヤサイズ205/60R15の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って試作した。
実施例1〜6及び比較例1
前記の如く、第1表記載内容のゴム組成物をトレッドに適用したタイヤを試作し、各タイヤについて、ウエットブレーキ制動性(雨天路面上制動性)及び乾燥路操縦安定性を評価した。結果を第1表に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
上表において、比較例1は、本発明における短繊維を配合していない通常のカーボン補強コンパウンドをトレッドゴムに使用したタイヤである。本発明における芯部が水溶性PVAの短繊維を用いた実施例1〜6のタイヤは、乾燥路操縦安定性、及びウェットブレーキ制動性(雨天路面上制動性)の双方が大幅に向上していることが認められる。特にゴム成分100質量部当たり当該短繊維4〜10質量部を配合した実施例2〜6のタイヤにおいてははその効果が顕著である。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、芯部が水溶性ポリビニルアルコールの芯鞘構造の短繊維を配合したゴム組成物をトレッド用ゴムに用いることにより、湿潤路面でトレッド表面にミクロ排水溝を効果的に形成するとともに、該樹脂とゴムとの融着により高いトレッド剛性を保持することができるので、雨天路面上制動性と乾燥路面上操縦安定性の双方において優れたタイヤを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関し、さらに詳しくは、特に市場が要望する優れた雨天路面上制動性と乾燥路面上操縦安定性とを有するタイヤ、並びに該タイヤのトレッド等に好適に使用できるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にタイヤは、路面に雨水が溜まると、タイヤと路面の摩擦係数は大きく低下し、制動距離が長くなり事故の要因となるので、特に雨天路面上の制動性能に対する市場要求は近年ますます大きくなってきている。
従来より、タイヤは、タイヤ接地面における水を排除するために、排水溝が刻まれており、その溝の配置や体積によりタイヤとしての雨天路面上制動性は大きく変わることが知られている。このため、タイヤの他の性能を考慮しながらのトレッド溝の工夫が数多くなされている。しかし、トレッド溝の体積を大きくすると雨天路面上の制動性能は向上するが、一方では、トレッド剛性やタイヤの有効接地面積は低下し、このために乾燥路面上操縦安定性は低下する傾向にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、市場が要求する高いレベルでの雨天路面上制動性、及び乾燥路面上操縦安定性の双方を満足するタイヤ、及び特にタイヤのトレッドゴムに有効に使用されうるゴム組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、トレッドとして、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールからなる芯鞘構造の短繊維を配合したゴム組成物を適用することが有効であることを見出した。
すなわち、本発明は、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種のゴム成分と、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールである芯鞘構造の短繊維とを含有することを特徴とするゴム組成物を提供するものである。
また、本発明は、一対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有するタイヤにおいて、少なくともトップトレッドが、前記ゴム組成物から構成されていることを特徴とするタイヤを提供するものである。
【0005】
【発明の実施の態様】
本発明のゴム組成物においては、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールからなる芯鞘構造の短繊維を含有していることが必要とされる。このようなゴム組成物をトレッドに適用したタイヤにおいては、摩耗時のトレッド表面には、短繊維の芯部の水溶によりミクロ溝状の空隙が形成される。特に雨天路面においては、これらのミクロな溝は接地下において、主溝部(いわゆる従来の排水パターン部)へ雨天路面上の水は効率的に排除される。このため、事故発生率の高い低摩擦係数路面において、制動距離が短くなるものと考えられる。
一方、トレッド剛性は表面近傍において繊維溶解による軟化が生じるものの、短繊維はブロック内部マトリックスゴムの拘束により、トレッドゴムブロック全体としての動きを抑制し、乾燥路面上操縦安定性が向上する。
【0006】
前記芯鞘構造の短繊維において、鞘部を構成する材質としては、通常の有機繊維であれば特に制限はく、例えばポリエチレン,ボリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロンなどの脂肪族ポリアミド、アラミドなどの芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルが挙げられるが、この中で、ポリエチレン,ポリプロピレン,脂肪族ポリアミド,芳香族ポリアミド,及びポリエステルから選ばれた少なくとも一種のものが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。
次に、本発明における前記短繊維の含有量は、ゴム成分100質量部当たり2〜20質量部であることが好ましい。2質量部未満では性能向上効果が小さく、20質量部を超えればゴム精練時の分散不良、ゴム押し出し時の作業性不良(肌荒れ)及びタイヤトレッドのクラック発生等の不具合などが生じることがある。したがって、さらに3〜15質量部、特に4〜10質量部が好ましい。
【0007】
本発明において、前記短繊維の平均長は1〜15mmが好ましい。1mm未満では本発明の効果が充分に得られず、15mmを超えれば繊維が絡み易く、ゴム精練作業性が悪化することがある。さらに、1〜10mm、特に2〜5mmが好ましい。
短繊維の直径は、10〜200μmが好ましい。タイヤ制動性能向上の観点からは小さい方が、同じ量を配合した際にタイヤ表面における溝本数が増え、排水効果が向上するので好ましい。しかし繊維製造上、あまり細くすると糸切れが多発するうえ、ゴム精練作業性も悪化するので極端に細くはできない。また、あまり細くするとゴム練り時に糸が切れることがある。このために10〜100μm、特に15〜70μmが好ましい。
【0008】
本発明のゴム組成物で用いる短繊維の芯部は、あらゆる湿潤路面環境ですばやく水溶し、タイヤ表面に空隙を形成することがタイヤ性能安定上重要である。この芯部に適用される水溶性ポリビニルアルコールとしては、例えばビニルアルコールユニットが50モル%以上、重合度100〜3000、鹸化度90%未満のポリビニルアルコールが好ましく用いられ、芯鞘構造の繊維は例えば溶融紡糸で製造することができる。
このような芯鞘構造の短繊維は、芯:鞘の質量比として50:50から90:10の範囲のものが好ましく、さらに60:40から80:20、特に70:30が好ましい。鞘部の比率が小さすぎると鞘部の被膜が破れ易く、通常のタイヤ製造においては、トレッドゴム押出し後の水冷却工程を必要とするので、この際芯部のポリビニルアルコールが溶け出してしまうおそれがある。
【0009】
また、ゴム加硫中に短繊維の鞘部樹脂は溶融して、ゴムとの間でいわゆるメルトボンディングにより接着することが好ましい。このことにより、ゴムの剛性が確保される。このためには、該樹脂の融点は200℃以下であることが好ましい。200℃より高いと工業的な加硫温度範囲では溶融しなくなる。ただし、実際に使用する製品(例えばタイヤ)の加硫条件(温度、圧力、時間等)で鞘部樹脂が溶融することが好ましいことから、鞘部樹脂の融点は180℃以下が好ましく、特に160℃以下が好ましい。
一方、短繊維は、トレッド押出し工程や未加硫ゴム中において繊維状の形態を保つために、鞘部樹脂の融点は120℃以上であることが好ましい。120℃より低い融点であると、一般的なゴムの混練り、押出し工程中に溶融してしまい、繊維形状を保てず、微細に分散してしまう傾向がある。ゴム練りのどの段階で、短繊維を混入するかは、特に制限されるものではないが、短繊維が溶融するような段階、すなわち初期の素練り段階で混入させることは避けることが好ましい。上記の観点から、本発明における短繊維の鞘部樹脂としてはポリエチレン(PE)が好ましい。
【0010】
また、本発明のゴム組成物では、ゴム成分として、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴムが用いられるが、ジエン系合成ゴムとしては、従来からタイヤ用として一般的に用いられている任意のゴム、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらのゴムは単独または任意のブレンドとして使用することができる。
本発明のゴム組成物においては、上記以外の配合成分には特に制約はなく、例えば補強性充填剤として、カーボンブラックを用い、さらにシリカを併用することができる。また、通常ゴム業界で用いられる各種配合添加剤、たとえば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、亜鉛華、ステアリン酸等を用いることができる。
【0011】
本発明のタイヤは、通常のタイヤ、例えば一対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有するタイヤにおいて、トレッドゴムに、前記ゴム組成物を適用したものである。トレッドがキャップ/ベース構造の場合には、少なくともトップトレッドに用いることが好ましい。
本発明のタイヤにおいては、トレッドゴムに芯部に水溶性PVAを有する芯鞘構造の短繊維を配合するために、該繊維がゴム中にある時はその高弾性によりゴム剛性を高めるので乾燥路操縦性安定性は向上する。また、タイヤが摩耗して水溶性PVAが露出したときには湿潤路面においてはPVAが溶けて水路を形成し、ウェットブレーキ制動性が向上する。さらに、タイヤ製造工程においては、トレッドゴム押出後の水冷却工程でPVAが溶け出すこととなく、配合した短繊維をそのままの形状でトレッドゴム中に保持させておくことができる。
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。このようにして得られた本発明のタイヤに充填する気体としては空気に限らず、窒素などの不活性なガスも使用できる。
【0012】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
なお、各種の試料及び供試タイヤの性能評価は下記の方法に従って行った。
(1)乾燥路操縦性安定性
各試験用のタイヤを、国産1600ccクラスの乗用車に装着して、一般アスファルト路上を200km走行させた後、乾燥平坦路を走行させ、テストドライバーが、駆動性,制動性,直進安定性,コントロール性を総合評価し指数表示した。結果は、比較例1のタイヤを100として指数表示した。数値が大きいほ乾燥路操縦性安定性はよいことを示す。
(2)ウェットブレーキ制動性
各試験用のタイヤを、国産1600ccクラスの乗用車に装着して、一般アスファルト路上を200km走行させた後、雨天平坦路を走行させ、テストドライバーが、駆動性,制動性,直進安定性,コントロール性を総合評価し指数表示した。結果は、比較例1のタイヤを100として指数表示した。数値が大きいほウェットブレーキ制動性はよいことを示す。
【0013】
<PVA/PE芯鞘構造短繊維の製造例>
下記により、芯部が水溶性ポリビニルアルコール(水溶性PVA)、鞘部がポリエチレン(PE)の芯鞘構造の短繊維を製造した。
短繊維A
溶融紡糸で得られた繊維の繊度は12dtexであった。この繊維をカッターで切断して平均長3mmの短繊維Aを得た。
短繊維B
溶融紡糸により、繊度15dtex、平均長6mmの短繊維Bを得た。
短繊維C
溶融紡糸により、繊度15dtex、平均長10mmの短繊維Cを得た。
【0014】
<ゴム組成物の調製>
天然ゴム60質量部、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR1500:ジェイエスアール(株)製)40質量部、カーボンブラック(N220:旭カーボン(株)80質量部、オイル10質量部、ステアリン酸1質量部、亜鉛華2.5質量部、老化防止剤(ノクラック6C:大内新興化学工業(株)製)1質量部、ワックス0.2質量部、加硫促進剤DPG(ジフェニルグアニジン:大内新興化学工業(株)製)0.3質量部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジスルフィド:大内新興化学工業(株)製)0.3質量部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド:大内新興化学工業(株)製)0.5質量部、硫黄1.5質量部、及び上記の製造法で得られた第1表に示す繊度と平均長を有するPVA/PE芯鞘構造短繊維を所定量配合したゴム組成物を調製した。なお、比較例1では短繊維は配合しなかったこと以外は上記同様に行った。
【0015】
<供試タイヤの製造>
上記により調製したゴム組成物をトレッドゴムに用いることにより、タイヤサイズ205/60R15の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って試作した。
実施例1〜6及び比較例1
前記の如く、第1表記載内容のゴム組成物をトレッドに適用したタイヤを試作し、各タイヤについて、ウエットブレーキ制動性(雨天路面上制動性)及び乾燥路操縦安定性を評価した。結果を第1表に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
上表において、比較例1は、本発明における短繊維を配合していない通常のカーボン補強コンパウンドをトレッドゴムに使用したタイヤである。本発明における芯部が水溶性PVAの短繊維を用いた実施例1〜6のタイヤは、乾燥路操縦安定性、及びウェットブレーキ制動性(雨天路面上制動性)の双方が大幅に向上していることが認められる。特にゴム成分100質量部当たり当該短繊維4〜10質量部を配合した実施例2〜6のタイヤにおいてははその効果が顕著である。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、芯部が水溶性ポリビニルアルコールの芯鞘構造の短繊維を配合したゴム組成物をトレッド用ゴムに用いることにより、湿潤路面でトレッド表面にミクロ排水溝を効果的に形成するとともに、該樹脂とゴムとの融着により高いトレッド剛性を保持することができるので、雨天路面上制動性と乾燥路面上操縦安定性の双方において優れたタイヤを提供することができる。
Claims (7)
- 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種のゴム成分と、芯部材質が水溶性ポリビニルアルコールである芯鞘構造の短繊維とを含有することを特徴とするゴム組成物。
- 短繊維の配合量が、ゴム成分100質量部当たり2〜20質量部である請求項1に記載のゴム組成物。
- 短繊維が、平均長1〜15mm、直径10〜200μmのものである請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- 短繊維が、芯:鞘の質量比として50:50から90:10の範囲のものである請求項1から3のいずれかに記載のゴム組成物。
- 短繊維の鞘部材質が、ポリエチレン,ポリプロピレン,脂肪族ポリアミド,芳香族ポリアミド,及びポリエステルから選ばれた少なくとも一種のものである請求項1ないし4のいずれかに記載のゴム組成物。
- 短繊維の鞘部材質が、ポリエチレンである請求項5に記載のゴム組成物。
- 一対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有するタイヤにおいて、少なくともトップトレッドが、請求項1から6のいずれかに記載のゴム組成物から構成されていることを特徴とするタイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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