JP2004075413A - 六フッ化リン酸錯体の製造方法および合成物並びに六フッ化リン酸およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高収率、安定且つ高純度の六フッ化リン酸の製造方法及び合成物を提供する。
【解決手段】20℃以下の温度でHPF6の水に対するモル比1.0〜3.3を含む安定なHPF6錯体の製造方法であり、五フッ化リンに対する当モル量のフッ化水素と約20〜76%の六フッ化リン酸水溶液に添加された五フッ化リン、及び70〜89重量%の六フッ化リン酸を含む合成物を生成する方法であるので、簡単で経済的な方法で合成でき、常温、常圧下で安定である点において優れており、従来にない高収率で安定した高純度のHPF6錯体を合成することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】20℃以下の温度でHPF6の水に対するモル比1.0〜3.3を含む安定なHPF6錯体の製造方法であり、五フッ化リンに対する当モル量のフッ化水素と約20〜76%の六フッ化リン酸水溶液に添加された五フッ化リン、及び70〜89重量%の六フッ化リン酸を含む合成物を生成する方法であるので、簡単で経済的な方法で合成でき、常温、常圧下で安定である点において優れており、従来にない高収率で安定した高純度のHPF6錯体を合成することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、最少量の水を含む濃縮した六フッ化リン酸(HPF6)錯体溶液の製造方法および合成物に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
既知の六フッ化リン酸の生成方法には以下の方法がある。
1. H3PO4+6HF→HPF6+4H2O
2. P2O5+12HF→2HPF6+5H2O
3. H3PO4+3CaF2+3H2SO4→HPF6・4H2O+3CaSO4
六フッ化リン酸は、通常リン酸あるいは五酸化リン(P2O5)に無水フッ化水素(HF)を添加することによって合成される。純粋な五酸化リンを用いた合成は、純粋な五酸化リンが吸湿性の高い粉末であるため取り扱いが難しい。従って、通常、HFとの混合と反応を促進させるためにいくらかの液相が加えられる。この結果H2O/HPF6の比は、約3−4となり、P2O5を用いた時のHPF6に対する水の比の理論値である2.5にはならなかった。
【0003】
上記方法3に関するニッカーソンらの米国特許第3634034では、五フッ化リン(PF5)とともにHPF6と硫酸カルシウムを生成する。この硫酸不純物を伴う方法は、多量の硫酸カルシウムの分離、処理工程を必要とする。
【0004】
HPF6は、水のような安定な配位化合物が存在しない環境下では不安定である。0℃で無水HFの中でバブリングした時に、PF5は、ほとんどあるいはまったく吸収されず、実際、水の非存在下で錯体は生成されないことを示している。
【0005】
しかし、HPF6溶液における過剰な水の存在は好ましくない。なぜなら過剰な水が、PF6アニオンの一部酸化された物質の加水分解を促進するためである。さらに、過剰な水は、全体的効果や酸の酸性度を低下させ、酸の濃度を希釈する。それは、運送量も増加させ費用がかかる。純粋なHPF6は、常温、常圧の条件下において未だ報告されていない。
【0006】
したがって、常温、常圧の環境下で安定であり、そして、簡単且つ経済的な方法により合成できる高濃度で高純度なHPF6を提供する必要がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、六フッ化リン酸の合成方法及び20℃で六フッ化リン酸1分子あたり水約1.0〜3.3分子を含む安定な六フッ化リン酸錯体を提供する。本発明のある実施例によれば、50℃以下の温度で六フッ化リン酸1分子あたり少なくとも水1分子、好適には20℃中で六フッ化リン酸1分子あたり水1.6〜1.7分子を含む六フッ化リン酸合成物を合成する。本発明の別の実施例によれば、ポリリン酸からHPF6約83%の濃度を有するモル比1.7のH2O/HPF6錯体をさらに合成する。発明の更なる実施例によれば、1水和物の六フッ化リン酸が合成される。したがって本発明の目的は、高収率、安定、高純度なフッ化リン酸錯体の合成方法を提供することである。
【0008】
さらに、本発明に関する別の目的は、高効果で経済的な方法を提供することである。更なる本発明の目的は、副生成物を最少限に抑える方法を提供することである。
【0009】
【発明の実施形態】
HPF6を安定にさせるには、蒸気圧を約1気圧に維持するのに十分な水分量を加えることを必要とする。必要な水分量は、好ましくは10℃以下で六フッ化リン酸1分子あたり少なくとも水1分子であり、さらに好ましくは約20℃でHPF61分子あたり水1.6〜1.7分子である。この水溶液は、テフロン(登録商標)容器、ポリエチレン容器、又はニッケル合金低圧タンクで保存できる。
【0010】
HFを追加してもよいが、高濃度のHFは、PF6アニオンの安定性にあまり寄与しない。できるだけ水を含まず、且つ最も高濃度の六フッ化リン酸が望ましいことから、好適なH2O/HPF6比は、1.6〜1.7である。他の従来技術から得られる最も高濃度のHPF6は、理論値の3.3より高いH2O/HPF6比を生成する。
【0011】
本発明によれば、生成物中の望まれた低水分量を生成するため種々のHF濃度の水溶液(25〜52重量%のHF)を冷却しながらPF5ガスを加えることによって六フッ化リン酸(比率1〜3.3)の濃縮液を生成できる。五フッ化リンは、酸化フッ化リン(POF3)を包含してもよい。
【0012】
本発明の別の実施例によれば、3より高い水分比率を有し、且つ低水分量(比率1〜3)をもつ望まれた濃度の六フッ化リン酸を得るため計算された過剰のHF量も含む合成後の六フッ化リン酸溶液に、PF5ガスを加えることによって高濃度の六フッ化リン酸(低水分量、11〜28重量%)を生成できる。
【0013】
本発明によれば、10℃以下すなわち0〜5℃で、基本的に50%HF/水の中でPF5ガスをバブリングすると、安定した無色の結晶HPF6/H2O 1: 1の錯体が形成された。この錯体は10〜12℃の範囲内で分解溶融する。さらに、前記結晶錯体は、10℃以下でH2O/HFの比1〜2の溶液中でサラリーを形成する。これらの固体錯体は、溶液が20℃(室温)まで加熱されると、PF5を放出しながら分解する。約1気圧の密閉容器(フッ化炭素、又はポリオレフィン)における平衡濃度は、H2O/HPF6のモル比1.6〜1.7(約83±2重量%のHPF6と17±2重量%の水)である。
【0014】
本発明によれば、その合成方法は以下の通りとなる。
1)PF5+HF(各々のHFに対する水1〜3.3モル)→HPF6+1.0−3.3H2O
H2O/HPF6の比は、1.0〜3.3である。
2)PF5+HPF6/3.33H2O+HF→HPF6+1−3.3H2O
H2O/HPF6の比は、1.0〜3.3である。
【0015】
【実施例】
〔実施例1〕
HF/水の原液は、水で52%HF(H2O/HFモル比1.0)に希釈することによってH2O/HF比を1.1〜2.2に調製した。一定のH2O/HFモル比の約25〜35gをアルゴン下でマグネティクスターラーを含むポリエチレン容器(風袋測定済)の中に入れ、重量を測定した。その容器全体を0〜5℃に冷却しながら攪拌した。PF5ガスは、溶液に飽和状態になるまで徐々に通すと通気管から蒸気を排出した。
【0016】
前記の容器を除去後、容器の重量を測定し、吸収された増加量(PF5の量)を記録した。その容器を20℃まで加熱し、ガス圧が平衡に達するまで数時間慎重にガスを抜いた。その後、吸収されたPF5の残量を記録した。比較的安定な溶液のH2O/HPF6のモル比を記録し、表1に示した。安定な溶液に対するH2O/HPF6のモル比は、1.6〜1.7である。
【0017】
【表1】
表1記載の合成番号1は、水の非存在下の無水HFを用いて行った。微量の
PF5は無水HFに溶解し、そして0℃においてHPF6は安定した。表1記載 の結果から、少なくともH2O/HPF6のモル比1(10℃以下のとき)、好適 には室温で1.6が、安定したHPF6溶液を生成するために必要である(約200mmHgより低い蒸気圧)。
【0018】
表1記載の合成番号7における低水含量HPF6溶液(H2O/HPF6のモル比3.3)は、ポリリン酸(116%のリン酸)の反応によって合成した。また、無水HFは、HFの1.3当量を加えることによって低水含量でさえも性能を高めることができた。さらに、H2O/HPF6のモル比2.0を含むHPF6溶液を生成するため温度10℃で1.3モル当量のPF5を添加した。
【0019】
その同一方法は、適当量のHFの添加によりいかなる濃度のHPF6溶液においても実施可能である。さらに、10〜20℃の温度範囲でH2O/HPF6のモル比を3.5以下、好適には1.5〜2.0になるようにPF5を添加した。このようにして、最少量の水分を含むHPF6(73〜89%HPF6)を合成した。
【0020】
〔実施例2〕
(PPA(116%のポリリン酸)を用いたHPF6の合成)
116%ポリリン酸(14.06モル当量のリン酸)の1200gの分量をテ フロン(登録商標)攪拌器で攪拌される1−ガルインコネル反応器に加えた。PPAを反応器に加えるにあたって、PPAは通常非常に高粘性材料であるから流動性を増すために約60℃に加熱した。粘性のあるPPA表面の真上にその攪拌器を設置した。また、その反応器をPPA表面上にある攪拌器を用いて約5〜15℃に冷却した。25℃未満(好適には20℃未満)の温度を維持するため十分に冷却しながら、攪拌された反応混合物に1716gの無水HF(約2%過剰)を徐々に添加した。無水HFを約10%添加後、流動性のある混合物を添加中終始、反応速度は一定であった。冷却材として氷水を用いた全ての添加は、約1.5時間費やした。その反応混合物が、室温になるまで攪拌を続けた。フッ化物とリンを含んだものに関して、六フッ化リン酸の収率は100%である。(注;実際、それは平衡混合物であり、有効濃度はPF6アニオンの沈殿物によって約62〜65%である。)過剰のHFは、理論値の濃度にまで達して有効濃度をもたらすであろう。水分定数は、計算された六フッ化リン酸の水に対するモル比3.3を用いると29%である。
【0021】
従来方法以上に本発明方法の優れた点は多く、以下の(1)〜(4)の通りとなる。
(1)材料に含まれている全てのリンは、最初に一回添加するだけでよい。
通常五酸化リンの反応性は非常に高く、また難融解性であるため取り扱う際危険な粉末である。従って、それは通常HFが既に反応器に加えられた後の段階で添加する。五酸化リンに対しHFを添加することは危険な手順である。安定性を維持し液体に五酸化リンの固体粉末を加える目的で液体の”ヒール”を形成するために始めに水溶性のリン酸を添加する。
(2)PPA(116%当量のリン酸)は、五酸化リンを除く全物質の六フッ化リン酸に関する最少量の水を生成する。実際に五酸化リンは、水溶性リン酸の同時添加なしには工業的な規模において五酸化リンのみの使用はできない。
(3)PPAは、五酸化リン又はリン酸よりコストの面でも安価である。
(4)PPAを用いた反応は、低コスト、迅速、安全そして全HF方法の汚染水に関する六フッ化リン酸の高濃度の収率を可能とする。
【0022】
〔実施例3〕
40.3重量%フッ化水素酸の300g溶液は、フッ化炭素ポリマー容器(FEP)中で冷却しながら49%フッ化水素酸の246gに水54gを加えることによって合成した。攪拌された溶液の表面下にあるFEP管の装置を使って溶液にPF5ガスを徐々に通す間、その溶液は10〜15℃の範囲で溶液を維持するため氷槽を用いて冷却し、攪拌した。PF5ガス882gを加えると、その添加を止め、FEP管を外して容器を閉じた。その結果できた溶液は、1180gになりH2O/HPF6比1.65をもつ83重量%の六フッ化リン酸を含んでいた。室温で開けた容器は、僅かな蒸気圧が残っておりガスが発散した。
【0023】
〔実施例4〕
前記合成済みのHPF6を用いた低水分含量の六フッ化リン酸の合成。前記実施例2より六フッ化リン酸300gをFEP容器に移し、冷却しながら攪拌した。その後、無水HF59gを10〜15℃に維持している溶液に加えた。溶液を10〜15℃に維持し、FEP管を通って2時間以上PF5ガス369gをこの溶液に通した。その結果溶液は125gになり、H2O/HPF6のモル比1.65を有する83%のHPF6を含有していた。
【0024】
〔比較例1〕
六フッ化リン酸に対する水分子の高比率を有する工業的に得られる六フッ化リン酸は、水分量低下のため4℃で真空にした。その結果、生成物が分解された。HPF6・(H2O)x VAC→2HF+POF3+(X−1)H2O
前詳述で、我々は発明の実施例を説明する目的で詳細に特定の方法を立案した。
そのような詳細は我々の発明を基に熟練した当業者に広く利用されるであろう。
【0025】
【発明の効果】
本発明の六フッ化リン酸の製造方法は、20℃以下の温度でHPF6の水に対するモル比1.0〜3.3を含む安定なHPF6錯体の製造方法であり、五フッ化リンに対する当モル量のフッ化水素と約20〜76%の六フッ化リン酸水溶液に添加された五フッ化リン、及び70〜89重量%の六フッ化リン酸を含む合成物を生成する方法であるので、簡単で経済的な方法で合成でき、常温、常圧下で安定である点において優れており、従来にない高収率で安定した高純度のHPF6錯体を合成することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、最少量の水を含む濃縮した六フッ化リン酸(HPF6)錯体溶液の製造方法および合成物に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
既知の六フッ化リン酸の生成方法には以下の方法がある。
1. H3PO4+6HF→HPF6+4H2O
2. P2O5+12HF→2HPF6+5H2O
3. H3PO4+3CaF2+3H2SO4→HPF6・4H2O+3CaSO4
六フッ化リン酸は、通常リン酸あるいは五酸化リン(P2O5)に無水フッ化水素(HF)を添加することによって合成される。純粋な五酸化リンを用いた合成は、純粋な五酸化リンが吸湿性の高い粉末であるため取り扱いが難しい。従って、通常、HFとの混合と反応を促進させるためにいくらかの液相が加えられる。この結果H2O/HPF6の比は、約3−4となり、P2O5を用いた時のHPF6に対する水の比の理論値である2.5にはならなかった。
【0003】
上記方法3に関するニッカーソンらの米国特許第3634034では、五フッ化リン(PF5)とともにHPF6と硫酸カルシウムを生成する。この硫酸不純物を伴う方法は、多量の硫酸カルシウムの分離、処理工程を必要とする。
【0004】
HPF6は、水のような安定な配位化合物が存在しない環境下では不安定である。0℃で無水HFの中でバブリングした時に、PF5は、ほとんどあるいはまったく吸収されず、実際、水の非存在下で錯体は生成されないことを示している。
【0005】
しかし、HPF6溶液における過剰な水の存在は好ましくない。なぜなら過剰な水が、PF6アニオンの一部酸化された物質の加水分解を促進するためである。さらに、過剰な水は、全体的効果や酸の酸性度を低下させ、酸の濃度を希釈する。それは、運送量も増加させ費用がかかる。純粋なHPF6は、常温、常圧の条件下において未だ報告されていない。
【0006】
したがって、常温、常圧の環境下で安定であり、そして、簡単且つ経済的な方法により合成できる高濃度で高純度なHPF6を提供する必要がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、六フッ化リン酸の合成方法及び20℃で六フッ化リン酸1分子あたり水約1.0〜3.3分子を含む安定な六フッ化リン酸錯体を提供する。本発明のある実施例によれば、50℃以下の温度で六フッ化リン酸1分子あたり少なくとも水1分子、好適には20℃中で六フッ化リン酸1分子あたり水1.6〜1.7分子を含む六フッ化リン酸合成物を合成する。本発明の別の実施例によれば、ポリリン酸からHPF6約83%の濃度を有するモル比1.7のH2O/HPF6錯体をさらに合成する。発明の更なる実施例によれば、1水和物の六フッ化リン酸が合成される。したがって本発明の目的は、高収率、安定、高純度なフッ化リン酸錯体の合成方法を提供することである。
【0008】
さらに、本発明に関する別の目的は、高効果で経済的な方法を提供することである。更なる本発明の目的は、副生成物を最少限に抑える方法を提供することである。
【0009】
【発明の実施形態】
HPF6を安定にさせるには、蒸気圧を約1気圧に維持するのに十分な水分量を加えることを必要とする。必要な水分量は、好ましくは10℃以下で六フッ化リン酸1分子あたり少なくとも水1分子であり、さらに好ましくは約20℃でHPF61分子あたり水1.6〜1.7分子である。この水溶液は、テフロン(登録商標)容器、ポリエチレン容器、又はニッケル合金低圧タンクで保存できる。
【0010】
HFを追加してもよいが、高濃度のHFは、PF6アニオンの安定性にあまり寄与しない。できるだけ水を含まず、且つ最も高濃度の六フッ化リン酸が望ましいことから、好適なH2O/HPF6比は、1.6〜1.7である。他の従来技術から得られる最も高濃度のHPF6は、理論値の3.3より高いH2O/HPF6比を生成する。
【0011】
本発明によれば、生成物中の望まれた低水分量を生成するため種々のHF濃度の水溶液(25〜52重量%のHF)を冷却しながらPF5ガスを加えることによって六フッ化リン酸(比率1〜3.3)の濃縮液を生成できる。五フッ化リンは、酸化フッ化リン(POF3)を包含してもよい。
【0012】
本発明の別の実施例によれば、3より高い水分比率を有し、且つ低水分量(比率1〜3)をもつ望まれた濃度の六フッ化リン酸を得るため計算された過剰のHF量も含む合成後の六フッ化リン酸溶液に、PF5ガスを加えることによって高濃度の六フッ化リン酸(低水分量、11〜28重量%)を生成できる。
【0013】
本発明によれば、10℃以下すなわち0〜5℃で、基本的に50%HF/水の中でPF5ガスをバブリングすると、安定した無色の結晶HPF6/H2O 1: 1の錯体が形成された。この錯体は10〜12℃の範囲内で分解溶融する。さらに、前記結晶錯体は、10℃以下でH2O/HFの比1〜2の溶液中でサラリーを形成する。これらの固体錯体は、溶液が20℃(室温)まで加熱されると、PF5を放出しながら分解する。約1気圧の密閉容器(フッ化炭素、又はポリオレフィン)における平衡濃度は、H2O/HPF6のモル比1.6〜1.7(約83±2重量%のHPF6と17±2重量%の水)である。
【0014】
本発明によれば、その合成方法は以下の通りとなる。
1)PF5+HF(各々のHFに対する水1〜3.3モル)→HPF6+1.0−3.3H2O
H2O/HPF6の比は、1.0〜3.3である。
2)PF5+HPF6/3.33H2O+HF→HPF6+1−3.3H2O
H2O/HPF6の比は、1.0〜3.3である。
【0015】
【実施例】
〔実施例1〕
HF/水の原液は、水で52%HF(H2O/HFモル比1.0)に希釈することによってH2O/HF比を1.1〜2.2に調製した。一定のH2O/HFモル比の約25〜35gをアルゴン下でマグネティクスターラーを含むポリエチレン容器(風袋測定済)の中に入れ、重量を測定した。その容器全体を0〜5℃に冷却しながら攪拌した。PF5ガスは、溶液に飽和状態になるまで徐々に通すと通気管から蒸気を排出した。
【0016】
前記の容器を除去後、容器の重量を測定し、吸収された増加量(PF5の量)を記録した。その容器を20℃まで加熱し、ガス圧が平衡に達するまで数時間慎重にガスを抜いた。その後、吸収されたPF5の残量を記録した。比較的安定な溶液のH2O/HPF6のモル比を記録し、表1に示した。安定な溶液に対するH2O/HPF6のモル比は、1.6〜1.7である。
【0017】
【表1】
表1記載の合成番号1は、水の非存在下の無水HFを用いて行った。微量の
PF5は無水HFに溶解し、そして0℃においてHPF6は安定した。表1記載 の結果から、少なくともH2O/HPF6のモル比1(10℃以下のとき)、好適 には室温で1.6が、安定したHPF6溶液を生成するために必要である(約200mmHgより低い蒸気圧)。
【0018】
表1記載の合成番号7における低水含量HPF6溶液(H2O/HPF6のモル比3.3)は、ポリリン酸(116%のリン酸)の反応によって合成した。また、無水HFは、HFの1.3当量を加えることによって低水含量でさえも性能を高めることができた。さらに、H2O/HPF6のモル比2.0を含むHPF6溶液を生成するため温度10℃で1.3モル当量のPF5を添加した。
【0019】
その同一方法は、適当量のHFの添加によりいかなる濃度のHPF6溶液においても実施可能である。さらに、10〜20℃の温度範囲でH2O/HPF6のモル比を3.5以下、好適には1.5〜2.0になるようにPF5を添加した。このようにして、最少量の水分を含むHPF6(73〜89%HPF6)を合成した。
【0020】
〔実施例2〕
(PPA(116%のポリリン酸)を用いたHPF6の合成)
116%ポリリン酸(14.06モル当量のリン酸)の1200gの分量をテ フロン(登録商標)攪拌器で攪拌される1−ガルインコネル反応器に加えた。PPAを反応器に加えるにあたって、PPAは通常非常に高粘性材料であるから流動性を増すために約60℃に加熱した。粘性のあるPPA表面の真上にその攪拌器を設置した。また、その反応器をPPA表面上にある攪拌器を用いて約5〜15℃に冷却した。25℃未満(好適には20℃未満)の温度を維持するため十分に冷却しながら、攪拌された反応混合物に1716gの無水HF(約2%過剰)を徐々に添加した。無水HFを約10%添加後、流動性のある混合物を添加中終始、反応速度は一定であった。冷却材として氷水を用いた全ての添加は、約1.5時間費やした。その反応混合物が、室温になるまで攪拌を続けた。フッ化物とリンを含んだものに関して、六フッ化リン酸の収率は100%である。(注;実際、それは平衡混合物であり、有効濃度はPF6アニオンの沈殿物によって約62〜65%である。)過剰のHFは、理論値の濃度にまで達して有効濃度をもたらすであろう。水分定数は、計算された六フッ化リン酸の水に対するモル比3.3を用いると29%である。
【0021】
従来方法以上に本発明方法の優れた点は多く、以下の(1)〜(4)の通りとなる。
(1)材料に含まれている全てのリンは、最初に一回添加するだけでよい。
通常五酸化リンの反応性は非常に高く、また難融解性であるため取り扱う際危険な粉末である。従って、それは通常HFが既に反応器に加えられた後の段階で添加する。五酸化リンに対しHFを添加することは危険な手順である。安定性を維持し液体に五酸化リンの固体粉末を加える目的で液体の”ヒール”を形成するために始めに水溶性のリン酸を添加する。
(2)PPA(116%当量のリン酸)は、五酸化リンを除く全物質の六フッ化リン酸に関する最少量の水を生成する。実際に五酸化リンは、水溶性リン酸の同時添加なしには工業的な規模において五酸化リンのみの使用はできない。
(3)PPAは、五酸化リン又はリン酸よりコストの面でも安価である。
(4)PPAを用いた反応は、低コスト、迅速、安全そして全HF方法の汚染水に関する六フッ化リン酸の高濃度の収率を可能とする。
【0022】
〔実施例3〕
40.3重量%フッ化水素酸の300g溶液は、フッ化炭素ポリマー容器(FEP)中で冷却しながら49%フッ化水素酸の246gに水54gを加えることによって合成した。攪拌された溶液の表面下にあるFEP管の装置を使って溶液にPF5ガスを徐々に通す間、その溶液は10〜15℃の範囲で溶液を維持するため氷槽を用いて冷却し、攪拌した。PF5ガス882gを加えると、その添加を止め、FEP管を外して容器を閉じた。その結果できた溶液は、1180gになりH2O/HPF6比1.65をもつ83重量%の六フッ化リン酸を含んでいた。室温で開けた容器は、僅かな蒸気圧が残っておりガスが発散した。
【0023】
〔実施例4〕
前記合成済みのHPF6を用いた低水分含量の六フッ化リン酸の合成。前記実施例2より六フッ化リン酸300gをFEP容器に移し、冷却しながら攪拌した。その後、無水HF59gを10〜15℃に維持している溶液に加えた。溶液を10〜15℃に維持し、FEP管を通って2時間以上PF5ガス369gをこの溶液に通した。その結果溶液は125gになり、H2O/HPF6のモル比1.65を有する83%のHPF6を含有していた。
【0024】
〔比較例1〕
六フッ化リン酸に対する水分子の高比率を有する工業的に得られる六フッ化リン酸は、水分量低下のため4℃で真空にした。その結果、生成物が分解された。HPF6・(H2O)x VAC→2HF+POF3+(X−1)H2O
前詳述で、我々は発明の実施例を説明する目的で詳細に特定の方法を立案した。
そのような詳細は我々の発明を基に熟練した当業者に広く利用されるであろう。
【0025】
【発明の効果】
本発明の六フッ化リン酸の製造方法は、20℃以下の温度でHPF6の水に対するモル比1.0〜3.3を含む安定なHPF6錯体の製造方法であり、五フッ化リンに対する当モル量のフッ化水素と約20〜76%の六フッ化リン酸水溶液に添加された五フッ化リン、及び70〜89重量%の六フッ化リン酸を含む合成物を生成する方法であるので、簡単で経済的な方法で合成でき、常温、常圧下で安定である点において優れており、従来にない高収率で安定した高純度のHPF6錯体を合成することができる。
Claims (16)
- 五フッ化リンをフッ化水素酸1モルあたり水1〜3.3モルを含むフッ化水素酸水溶液と反応させることによって、六フッ化リン酸1分子あたり水1〜3.3分子を含む六フッ化リン酸錯体を生成することを特徴とする六フッ化リン酸錯体の製造方法。
- 前記水溶液は、約25〜95重量%のフッ化水素酸を含むことを特徴とする請求項1記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法。
- 五フッ化リンは、約0〜5℃で50重量%のフッ化水素を含む水溶液に加えられることを特徴とする請求項1記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法。
- 五フッ化リンの添加により促進されることを特徴とする請求項1記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法。
- 五フッ化リンに対する当モル量のフッ化水素と約20〜76%の六フッ化リン酸水溶液に添加された五フッ化リン、及び70〜89重量%の六フッ化リン酸を含む合成物が生成することを特徴とする請求項4記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法。
- 前記五フッ化リンは、酸化フッ化リンを含むことを特徴とする請求項5記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法。
- 50℃以下の温度で、約72〜95重量%の五フッ化リンを含むポリリン酸水溶液に無水フッ化水素酸を加えて調製する六フッ化リン酸1分子あたり水2.6〜3.5分子を含む安定した六フッ化リン酸錯体を合成すること を特徴とする六フッ化リン酸錯体の製造方法。
- 請求項1記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法より合成されることを特徴とする合成物。
- 請求項2記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法より合成されることを特徴とする合成物。
- 請求項3記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法より合成されることを特徴とする合成物。
- 請求項4記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法より合成されることを特徴とする合成物。
- 請求項5記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法より合成されることを特徴とする合成物。
- 請求項6記載の六フッ化リン酸錯体の製造方法より合成されることを特徴とする合成物。
- 1〜3.3分子の水を含むことを特徴とする六フッ化リン酸。
- 1水和物であることを特徴とする六フッ化リン酸。
- 20℃以下の温度で、フッ化水素酸水溶液と五フッ化リンの反応から成り、安定した水の配位化合物を有する六フッ化リン酸を合成することを特徴とする六フッ化リン酸の製造方法。
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