JP2004075242A - シート給紙装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シートを1枚に分離給送するシート給紙装置において、シートの分離性能、搬送性を向上させ、更に耐久性を向上させたリタード分離機構を装備したシート給送装置を提供することにある。
【解決手段】給紙方向へ回転駆動するフィードローラと、シート材給紙方向とは逆方向に一定トルクにて回転駆動して送り込まれてくるシートを戻す逆転ローラを具え、前記逆転ローラは前記フィードローラに圧接する第1の逆転ローラとは別に少なくとも1つ以上の複数個の逆転ローラを具え、前記第1逆転ローラと複数の逆転ローラは各々異径とする。
【選択図】 図1
【解決手段】給紙方向へ回転駆動するフィードローラと、シート材給紙方向とは逆方向に一定トルクにて回転駆動して送り込まれてくるシートを戻す逆転ローラを具え、前記逆転ローラは前記フィードローラに圧接する第1の逆転ローラとは別に少なくとも1つ以上の複数個の逆転ローラを具え、前記第1逆転ローラと複数の逆転ローラは各々異径とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート材を1枚ずつ順次分離給送するシート材給送装置に関する。詳細には、例えばプリンタ等の画像記録装置に用いられるシート給紙装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のシート給紙装置を用いる画像記録装置としては、例えば記録媒体に記録液(インク)を吐出して記録を行うインクジェット記録装置が挙げられる。
【0003】
図9は、該給紙装置を備えたインクジェット画像記録装置の概略断面図である。ここでは画像記録装置として、印字データに従いインクを吐出することで、記録シート上に文字又は画像を形成するインクジェット式の画像記録装置を一例として説明する。
【0004】
このインクジェット式の画像記録装置100は、給紙装置101と画像記録部120とを備えている。給紙装置101は、積層収納された未使用のシート111を収納するシート収納手段112と、該シート収納手段112からシート111を繰り出すシート給紙装置101と、該シート給紙装置101により分離して繰り出されたシート111を搬送する1対の搬送ローラ(シート搬送手段)113とを有している。尚、シート給紙装置101については後述にて説明する。
【0005】
シート給紙装置101によって繰り出された1枚のシート111は、シートの搬送経路を形成するガイド板114に案内されながら図面右方向に送り込まれる。ガイド板114aは右方向に搬送されるシート111の進行方向を上方左向きに変更させる略半円形の曲線経路部であり、搬送路途上に設けられる搬送ローラ113の間にシート111を導く。さらにこの搬送ローラ113の出口には、該曲線経路部114aに連続して設けられ略180度進路変更されたシート111を左方向に導く直線経路部114bが連続して配置されている。シートが搬送ローラ113の間に差し込まれた後、該搬送ローラ113が回転駆動されることによって、該ガイド板114の直線経路部114bにて導かれる。該ガイド板114の出口には、シート111を画像形成時に左方向に所定量ずつ間欠的に搬送する2組の副走査ローラ123、124が離間して設けられている。これら副走査ローラ123、124の間には、インクジェット記録ヘッド(画像記録部)121とプラテン板125とが配置されている。
【0006】
前記インクジェット記録ヘッド121は、不図示のキャリッジに載置されていて、このキャリッジは副走査ローラ123、124の回転軸と略平行に配置された不図示のキャリッジガイドによって、シート111の搬送方向に略直交する方向に移動可能に保持されている。前記キャリッジは、副走査ローラ123、124の間欠搬送が停止しているときに動かされ、この際、プラテン板125上に導かれたシート111にインクジェット記録ヘッド121からインクが吐出されて画像形成が行われる。尚、印字中は搬送ローラ対113がシートの挟持を開放すべく離間することで搬送抵抗を軽減させ、より高精彩な出力画像が得られるよう構成されている。
【0007】
前記副走査ローラ124の出口には、排紙トレイ126が設けられており、画像形成動作が終了した後、副走査ローラ124から排紙されるシート111はこの上に載置される。
【0008】
尚、インクジェット記録ヘッド121には、それに供給されるインクを収納するオンキャリッジタンク122が接続されており、該オンキャリッジタンク122はインクジェット記録ヘッド121と共にキャリッジに載置されている。
【0009】
印字終了後、引き続き同種サイズのシートに印字する場合には、同様の手順にて搬送・印字が履行される。
【0010】
ところで、上記装置において用いられるシート給紙装置として、図10、11に示すようなシート給紙装置101がある。このシート給紙装置101は、次工程の画像記録部に向けてシート材111を1枚ずつ順次供給する。図10に示すように、シート給紙装置101は、複数のシートが積層収納されたシート収納手段112から最上位のシート材111を1枚ずつ給送するピックアップローラ102と、給送されるシート材111を前記画像記録部へ向けて搬送するフィードローラ103と、このフィードローラ103と所定の加圧力で常時圧接して対をなすよう設置され、かつ同軸上に配置されるトルクリミッタの作用で所定のトルク制限の下にフィードローラ103の回転方向とは逆転方向に回転するよう駆動が伝達されるリタードローラ104が具備されている。
【0011】
ピックアップローラ102は不図示の支点軸を中心に揺動自在にシート収納手段内112に侵入可能に制御されると共に、最上位のシートに圧接して前方(図中右方向)に繰り出すよう回転駆動する。繰り出されるシートの前方にはシート収納手段112の先端縁であって適正な傾斜角を持ってシート先端を斜め上方へと変向させる傾斜部材112aが具えられている。この傾斜部材112aのシート接触表面を所定の抵抗粗さで仕上げることで、仮に複数枚のシートが繰り出されたとしても2枚目以降に搬送抵抗を与えつつ傾斜角との相乗効果によるシート先端への捌き動作を施す、所謂土手分離方式により分離性能の向上が図られることとなる。
【0012】
リタードローラ104は、ピックアップローラ102により給送されるシート材111が、もしも複数枚の場合には2枚目のシート(リタードローラ104と接する側)をピックローラ方向へ引き戻して1枚目のシート111と分離し、分離後はトルク最上位の1枚目をフィードローラ103と挟持することでトルクリミッタの所定トルクを超える搬送方向推進力が伝達され順方向へ従動回転する。つまり給紙開始当初、及び1枚ずつシート111が給紙される時には、リタードローラ104はフィードローラ103及びシート111を介在しての摩擦力によりトルクリミッタ105が空転して、リタードローラ104の回転方向と逆方向に従動回転する。また、複数枚のシート材111が給紙された際は、リタードローラ104とシート材111との間の摩擦力に対して複数枚のシート材111同士の摩擦力が小さいことからトルクリミッタ105は空転せずに、リタードローラ104はリタードローラ駆動軸106の回転方向と同方向(給送方向と逆方向)に回転する。これにより、複数枚送られたシート材111の中のフィードローラ103側、即ち最上位のシート111aとそれ以外のシート111bとを分離し、前記記録部へのシート材111の重送を防止するようになっている。こうして1枚に分離されたシート111を前記記録部に搬送するための搬送ローラ対113も具えられている。また、ガイド114cがピックアップローラ102とフィードローラ103及びリタードローラ104で形成するシート材搬送路を案内するよう配置され、フィードローラ103及びリタードローラ104との間、及び搬送ローラ対113と前記画像記録部との間にはガイド群114が配置され、それぞれシート111がガイドされるよう構成されている。
【0013】
次に、上記構成のシート給紙装置101においてシート111の給送、分離条件を満足する理論式について説明する。ここでは仮にピックアップローラ102が積層シートを押し付けて繰り出す際の加圧力をW、トルクリミッタ105の空転トルクをT、リタードローラ104のフィードローラ103への加圧力をN、リタードローラ104の半径をrとする。また、各構成要素間の摩擦係数を、μAPはピックアップローラ102とシート111間の摩擦係数、μBPはフィードローラ103とシート111間の摩擦係数、μCPはリタードローラ104とシート111間の摩擦係数、μAPPはピックアップローラ102加圧部下のシート111間の摩擦係数、μBPPはフィードローラ103とリタードローラ104とのニップ部のシート111間の摩擦係数とする。給紙ローラ群により1枚のシートを給紙方向へ搬送するための条件としてピックアップローラとフィードローラとがシートに抗力を与えながら摩擦力を利用して給紙する推進力(W・μAP+N・μBP)がリタードローラの逆送方向に与える引き戻し力と積層シート層の2枚目が給紙対象の1枚目に与える搬送抵抗力の合力(T/r+W・μAPP)よりも大きければ良い。
【0014】
従って、上記条件を満足する関係式は下記の通りに得られる。
N>T/rμBP+(μAPP−μAP)W/μBP…▲1▼
【0015】
次に、複数枚がリタードローラ間に給紙された際に2枚目以降を積層シート層側へ引き戻すための条件としては、リタードローラの引き戻し搬送力(T/r)が給紙推進力(W・μPP+N・μPP)に打ち勝てば良い。この時、積層シート層の抵抗は▲1▼と逆方向に働くことを考慮すると、満足するための関係式は下記のようになる。
N<T/rμBPP−2μAPPW/μBPP…▲2▼
【0016】
また、通常の給紙状態でリタードローラがフィードローラに追従して順方向に回転するためにはフィードローラの推進力(N・μCP)がリタードローラの回転駆動力(T/r)より大きければ良いので、下記の通りとなる。
N<T/rμCP…▲3▼
【0017】
上式▲1▼は給送条件、▲2▼は分離条件、▲3▼はリタードローラ の連れ回り条件をそれぞれ満足する式である。尚、上式中で同一のシート材を用いれば各ローラ加圧部の摩擦係数はさほど大きくばらつくことはないため、前記摩擦係数をμAPP≒μBPP=μPPと置き換えると、上式▲1▼、▲2▼はそれぞれ下式▲4▼、▲5▼となる。
N>T/rμBP+(μPP−μAP)W/μBP…▲4▼
N<T/rμPP−2W…▲5▼
【0018】
上式▲3▼、▲4▼、▲5▼の関係をグラフ化したものを図12に示す。同図において、斜線部は前述の如きシート材の分離給送が適正に行われるための給送領域である。この給送領域(斜線部)を更に広げるには、各ローラとシート材間の摩擦係数を大きくするかピックアップローラ102の加圧力を小さくすることが必要である。またリタードローラ104の加圧力Nとトルクリミッタ105の空転トルクTを共に大きくする方向(図中右上の方向)の条件下に給送条件を設定した方が給送領域(斜線部)が拡張されることが示されている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
近年、画像形成技術の発達に伴い種々の記録媒体に印字情報を記録することが可能となってきた。例えば、印字媒体に熱を与えることで該媒体自体が直接発色する感熱式プリンタや転写式の昇華型プリンタなどでは、画像形成装置に特化した専用紙が用いられていたが、例えば、LBP(レーザビームプリンタ)に代表される電子写真プリンタやインクジェットプリンタでは、普通紙からOHP(オーバヘッドプロジェクタ)用シートなどのシートフィルムまで幅広く種々の媒体に記録することが可能となっている。それにより、オペレータは同一の画像形成装置で文字情報や画像等の記録情報を所望の反射媒体や透過媒体へ出力させることが可能となっている。
【0020】
このような記録媒体として、例えば、光沢紙、OHP用透明シート、シール用紙などがあり、最近では、高画質な画像等を記録するために専用光沢フィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)ベースのフィルムシートなども用いられている。これらの記録媒体は、シート厚や表面の仕上げも各媒体により様々である。また、印字画像サイズに適合したシートサイズを給送して印字するために、画像形成装置に装填されているシート収納体を装置本体に対し着脱可能に構成し、所望画像にあわせて収納体を交換したり、複数の収納体装填口を装置本体に設けておき、オペレータの選択操作により所望シートを給送して印字が実行されたりする。
【0021】
また、大判のシート状の記録媒体にも対応できる画像形成装置が多数出現してきており、例えばA3判、A3ノビ判等の記録シートにも印字できる画像形成装置も一般化してきている。これと同時に、記録画素密度の高精細化に伴って記録される画質も向上し、そのため写真画像を記録するための光沢紙や透明シートなども多用されるようになってきた。
【0022】
これらのシートは、ベース材料にインクを吸収する受像層を形成したものであり、極めて平滑に形成されていると共に、そのシート厚もOHP用シートのような薄いものから、医用X線フイルムと同様なPETベースの厚手シートのものまで様々である。更に、一旦記録された受像層の長期保管性を高めるためや、インクのニジミ出しを防止するために、受像層の上面にコート層を塗布されているシートなどもある。このコート層は、記録用インクを自身から受像層まで透過させて記録させるために無数の空孔が形成されており、その表面は比較的凹凸があるなど種々のシート種が存在する。
【0023】
更に、同種シートでも、例えばベース素材に受像層を塗工する工程が環境条件、製造年月の変化によって受像層の吸収率に若干の差異が生じたり、日進月歩の改良によってより薄く吸収率の高い媒体が言い換えれば種々のシート摩擦係数を持ったシートが開発され印字記録が行われている。
【0024】
ところでこのような装置で使用されるシートの中には、同じ種類であっても各シート間において湿気等の吸収量の差や積層圧の差による密着性に違い、またシート層のズレなどの影響など積層状態の違いによりシート間の各摩擦係数がばらついていたり、また異なる種類のシート111を同時にシート収納台上に装填することもある。このような場合、シート収納台に積載されたシート111の中の多重シート層111aとその下層のシート層111b間の摩擦係数が当該シート111間の摩擦係数に比べて著しく小さい場合には、2枚重なった状態で繰り出され、図13に示すような2枚のシート111aが同時にリタードローラ間に侵入する重送搬送が発生することがある。この場合には、重送搬送されたシート111aはフィードローラ103とリタードローラ104のニップ部まで搬送され、分離動作を施されながら画像記録部へ搬送される。
【0025】
しかし、重送繰り出しされたシート111aは、前述の給紙条件の設定を変化させても分離できずに重送が発生してしまうことがある。通常、シート間摩擦係数μPPが同等の場合には多重搬送されたシート111はリタードローラ104の反転駆動により下層シートが分離されて逆方向搬送されることになる。
【0026】
ところが、近年のようにシートの種類が多種多様化している状況下においては、各シートの摩擦係数も広範囲に渡って扱われることになる。従って、図12のグラフにおいてシート間摩擦及び各ローラとの摩擦力が異なるため、グラフに示す関係式の勾配がシート毎に違う傾きを示すことになる。この機構において重送しにくく、かつ重送したシートを戻し易くしようとすると、トルクリミッタ105による戻し力を大きく設定するか、リタードバネによるリタードローラ加圧力を大幅に下げることが考えられる。しかし、1種類のシートのみを使用する装置や、同様のシート摩擦係数を所持するシート種だけを扱う装置であれば、問題はおきにくいが、摩擦係数が大きく違う種々のシート種を扱う場合には、各シート毎の前述の関係式の勾配に差があるため、その給送領域もばらついてくる。それらを一定の給紙条件下でリタード分離機構を機能させようとしても、給送可能領域の許容範囲は狭くなってしまい、その領域から外れた場合には重送やスリップによる給紙不能となってしまう。
【0027】
また、トルクリミッタの空転トルクやリタードローラの加圧力を大幅に下げることでフィードローラ103及びリタードローラ104とシート間での滑りを発生しやすくすることとなり、フィードローラ103及びリタードローラ104の摩耗を加速させることでフィードローラ103とリタードローラ104の耐久寿命を著しく低下させてしまう。このことにより、消耗部品の定期交換回数が増加し、シート給送装置の維持費が上昇してしまう。
【0028】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、シートの分離性能、搬送性を向上させ、更に耐久性を向上させたリタード分離機構を装備したシート給送装置を提供することにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係るシート供給装置は、未使用のシートを積層収納した収納部から繰り出されたシートを1枚ずつ分離するためのリタード分離機構と、該機構により取り出されたシートに印字記録する記録部へと給送するシート給紙装置において、前記リタード分離機構はシートを給紙方向へ回転駆動するフィードローラと、シート材給紙方向とは逆方向に一定トルクにて回転駆動して送り込まれてくるシートを戻す逆転ローラと、該フィードローラと逆転ローラとを圧接させる加圧手段とを備え、前記逆転ローラは前記フィードローラに圧接する第1の逆転ローラとは別に少なくとも1つ以上の複数個の逆転ローラを具え前記第1逆転ローラと複数の逆転ローラは各々異径であることを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るシート給紙装置の一実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は前記シート給送装置を装備する画像記録装置の一例として前述の従来例で示したインクジェット記録装置を用いて説明する。
【0031】
前述と同様に、図1は該給紙装置を備えたインクジェット画像記録装置の概略断面図である。尚、前述と同符号で表される部材は同機能を有すものとする。
【0032】
このインクジェット式の画像記録装置50は、シート給紙装置1と画像記録部120とを備えている。シート給紙装置1が積層収納された未使用のシート111を収納するシート収納手段112からシート111を分離して繰り出し、ガイド板114に案内されながら搬送ローラ113による搬送を経て、画像記録部120へと送り込む構成となっている。
【0033】
シート給紙装置1によって繰り出された1枚のシート111は、シートの搬送経路を形成するガイド板114の略半円形の曲線経路部により案内されつつ、搬送路途上に設けられる搬送ローラ113の搬送駆動を受けて略180度進路変更される。続いて、該ガイド板114の直線経路部114bにて導かれながら所定量ずつ間欠的に搬送する2組の副走査ローラ123、124へと差し込まれ、副走査工程が行われる。尚、印字中は搬送ローラ対113が搬送抵抗を軽減させるため離間してシートの挟持を開放するよう構成されている。インクジェット記録ヘッド121は、不図示のキャリッジに載置されていて、このキャリッジは副走査ローラ123、124の回転軸と略平行に配置された不図示のキャリッジガイドによって、シート111の搬送方向に略直交する方向に移動可能に取り付けられ、プラテン板125上に導かれたシート111にインクジェット記録ヘッド121からインクが吐出されて画像形成が行われる。印字終了後は、記録済みのシート111が順次排紙トレイ126上に積層排出される。
【0034】
次に上記装置において用いられるシート給紙装置1を図2、3に示す。このシート給紙装置1は、次工程の画像記録部に向けてシート材111を1枚ずつ順次供給する。図2に示すように、シート給紙装置1は、複数のシートが積層収納されたシート収納手段112から最上位のシート材111を1枚ずつ給送するピックアップローラ2を有し、シート収納手段112の先端縁に具えられた傾斜部材112aの案内によりシート先端を斜め上方へと変向させながら繰り出す。
【0035】
また、給送されるシート材111を前記画像記録部へ向けて搬送するフィードローラ3と、このフィードローラ3と所定の加圧力で常時圧接して対をなすよう設置され、かつ同軸上に配置されるトルクリミッタ5の作用で所定のトルク制限の下にフィードローラ3の回転方向とは逆転方向に回転するよう駆動が伝達される第1のリタードローラ4が具備されている。
【0036】
更に、前記フィードローラ3の円周方向下流側には第1のリタードローラ4の径とは違う径を有する第2のリタードローラ7が具えられている。ここでは第1逆転ローラに対して第2逆転ローラが小径であるとする。第2のリタードローラ7は第1のリタードローラ4と同様に所定の加圧力でフィードローラ3に常時圧接してトルクリミッタ8のトルク制限の下に逆転方向に回転する。また、図3に示すように第1のリタードローラ4は第2のリタードローラ7をお互いの駆動に干渉することなく、フィードローラ3の中心線(シート搬送方向に平行)を対称として挟むように分割して配置されている。此れにより第2のリタードローラ7の配列を第1のリタードローラ4と入れ子状にして略近傍に置くことが可能となると共に、シート搬送方向への推進力(又は引き戻し力)が平衡を保つこととなり、シートの斜行を防ぐことができる。
【0037】
これら給紙・分離ローラ対(以降リタード分離機構と称す)3、4、7の上流側入口にはガイド板114cが、下流側出口にはガイド板114aが夫々ピックアップローラ2とフィードローラ3及びリタードローラ4、7で形成するシート材搬送経路を案内するよう配置されている。
【0038】
次に、上記構成のシート給紙装置1において種々の摩擦係数を持ったシートを分離搬送する場合の給送、分離条件の変化と該シート給紙装置の給紙領域について説明する。仮に或る所定の摩擦係数を持つシートAを搬送する場合に第1リタードローラ給送領域が図12のような特性を持っていたとする。ここでシート収納手段112を別のシートBが収納されたシート収納手段112bに交換したり、或いはシートAとは別種類のシートBも混在載置されていた時など、シートB給紙領域はシートAとは違う給送領域に推移してしまう。
【0039】
シートBがシートAに比して大きな摩擦係数を持っていた場合には、図4に示すように関係式▲5▼の勾配が図中時計周りに傾き、給送領域が狭くなっていく。このときシートAに最適な加圧力−空転トルク値の図中の設定点PはシートBに対しては給送領域を満足できなくなり、重送が発生してしまうことになる。このため給送条件の設定変更を行い、加圧力を弱めかつ空転トルク値を高めたQ点に移行させる必要が生じる。この現象は使用するシート種間の摩擦係数の差が大きければ大きいほど設定点に移行量は大きくなり、この設定変更は前述の通り各ローラの耐久性を劣化させることとなる。
【0040】
しかし、第1逆転ローラの下流側に控える第2の逆転ローラが重送してしまったシート層を分離して通常搬送に引き戻すことで上記課題を解消することが可能となる。第2逆転ローラは第1逆転ローラよりも径が小径r2となっている。そのため、関係式▲3▼〜▲5▼で表される領域が図9に示す領域と異なってくる。関係式▲3▼〜▲5▼は図9で示す摩擦係数の関数だけではなく、逆転ローラの径の関数でもある。
【0041】
上記構成による給送、分離条件を満足する理論式について説明すると、前述従来例での理論式の説明に加えて、第2リタードローラのフィードローラ3への加圧力Nと空転トルクTの制限下での引き戻し力が付加されている。シートの摩擦力の関係は第1リタードローラと同等の関係を維持している。
【0042】
従って、▲1▼式の給紙条件を満足する式は第2リタードローラの引き戻し力を加えることで、
N>T(1/r+1/r2)/2・μBP+(μAPP−μAP)W/2・μBP…▲1▼b
【0043】
同様に、▲2▼、▲3▼の分離条件、連れ回り条件もそれぞれ、
N<T(1/r+1/r2)/2・μBPP−μAPPW/μBPP…▲2▼b
N>T(1/r+1/r2)/2・μCP…▲3▼b
となる。また、前述と同様に摩擦係数をμAPP≒μBPP=μPPと置き換えると、上式▲1▼b、▲2▼bはそれぞれ下式▲4▼b、▲5▼bとなる。
N>T(1/r+1/r2)/2・μBP+(μPP−μAP)W/2・μBP…▲4▼b
N<T(1/r+1/r2)/2・μPP−W…▲5▼b
【0044】
次に、給送領域の上限を規定する分離条件の関係式▲4▼と▲4▼bの傾き係数を比較してみる。▲4▼bと▲4▼の傾き係数の差分を取ると、(簡略化のため1/μBPを省く。)
{(1/r+1/r2)/2}−(1/r)=(r−r2)/2r・r2…▲6▼
r>r2より、▲6▼式は正の値をとることになる。つまり{(1/r+1/r2)/2}>(1/r)であるため▲4▼bの傾きは▲4▼よりも大きくなることが判る。
【0045】
以上より、第2リタードローラ径r2の値を小さくすると各関係式▲3▼〜▲5▼は図中反時計回りに傾きを変え、図5に示す▲3▼b〜▲5▼bで囲まれる領域を取ることとなる。つまりシートBに対する第2逆転ローラを用いての給送領域を最適化させP点が給送領域内に収まるよう第2逆転ローラの径を所定値にすれば、重送を防ぎかつ最適な加圧力−空転トルク値の下で、分離搬送工程が行われることとなる。ただし、第2リタードローラのスリップ領域が第1リタードローラの給送領域を侵食しない範囲内での設定にする必要がある。
【0046】
また、給送領域の範囲が図中、斜線及びテクスチャで示す部分に領域が拡がるため、シート間の摩擦係数にばらつきがあたったり、磨耗等によりローラとの摩擦係数が変化したり、加圧力にばらつきが生じたとしても、給送許容範囲が拡がることとなる。図14に具体例を示す。第1リタードローラの径が24mm、第2リタードローラの径が16mm、ピックアップローラの加圧力が200gのリタード分離機構を用いてシート摩擦係数μPP=0.7のシートを分離・給送する際の各ローラの給送領域を示している。
【0047】
また、図5はシートBに関する給送領域の範囲を示しているが、前記シートAに関しても第1逆転ローラ給送領域および第2逆転ローラ給送領域を合わせた範囲がシートBに対してその分布を変えて分離・給送領域となり、許容範囲も更に広がることとなる。
【0048】
次に上記構成のリタード分離機構を用いてのシート分離動作について説明する。図6はフィードローラ3及び第1及び第2のリタードローラ4、7のニップ部にシート111が重送搬送された状態を示す。まず、第1のリタードローラ4とのニップ部に複数枚のシートが差し込まれると、リタード分離作用により2枚目のシートに逆転の搬送力が掛かる。シートの摩擦係数が第1リタードローラ4の給送領域を満足する値であるときは1枚に分離されて下流へと進行していく。
【0049】
しかし、摩擦係数値が第1リタードローラ4の給送領域を満足する値に入らないシートBの場合には、重送しながら下流第2リタードローラ7のニップ部へと侵入していく。ここで、第2リタードローラ7はシートBの給送領域を満足するための径で構成されるため、シートBの2枚目を逆方向へと引き戻す推進駆動力が供与され1枚だけを残して分離される。続いて分離された1枚目のシートを更に下流側へと搬送する。以上により1枚目のシート以外はリタード機構により分離され、繰り出し分離動作が完了する。引き続いて、ガイド板114及び搬送ローラ113により画像記録部へとシートが搬送されることとなる。
【0050】
以上説明したように、上記リタード分離方式は径の異なる2対の逆転ローラを具えることで、同一の給紙装置において例えば、普通紙とPETベースの光沢系フィルムのような摩擦係数の差が大きいシートを搬送する場合でも確実に1枚に分離して次工程へと搬送することが可能となる。また、分離・給送領域が各シート毎にその許容範囲を広げることが可能なため、分離動作を安定して行うことができる。そして分離条件を満足するためにトルクリミッタの空転トルク値も大きくする必要が無いためローラの耐久性を低減する畏れが少なくて済む。
【0051】
尚、上記実施の形態では、2対の逆転ローラの例を示したが、2対に限定されるものでは無く、複数の逆転ローラを異径で配置させても良い。このことで更に給送領域は拡がることになる。
【0052】
図7、8は本発明に係る他の実施の形態を示したものである。尚、図中前述と同符号の部材は同一の機能を有すものとする。図2に示す第1の実施の形態で説明したリタード分離機構との違いは、逆転駆動軸23上に第1リタードローラ20、21と第2のリタードローラ22が具えられていることである。また、第2のリタードローラ22は第1実施の形態と同様に第1リタードローラ20、21に挟まれた位置関係にあり、第1リタードローラより小さな径を有している。
【0053】
逆転駆動軸23には不図示の駆動源からシート搬送方向とは逆方向にローラ回転駆動力が与えられると共に、トルクリミッタ24の作用により規定負荷トルクを超える場合には空転するよう設定されている。第1リタードローラ21と第2のリタードローラ22は逆転駆動軸23と略同軸であり、ピン27、28、29、30を介して屈曲自在に連結されつつ駆動を伝達するフレキシブルジョイント25、26にて連結されている。夫々のリタードローラは両側に長溝が刻まれたブラケット31、32、33に不図示の軸受けを介して回転自在に取り付いている。ブラケット31、32、33の下方にはバネ34、35、36がフィードローラ3側へとリタードローラ20、21、22を付勢するように係合されている。更にバネ34、35、36の下方にはバネ圧を制御するための圧板37、38、39が具えられており、不図示の制御手段によるカム40、41、42の位相制御により、圧板37、38、39の押付量を規定している。結局このカム制御により、リタードローラ20、21、22のフィードローラ3への加圧力を最適制御している。
【0054】
上記のようなシート給送装置を用いての分離給送動作は、実施の形態1と同様に例えば普通紙のような摩擦係数の比較的低いシートAがリタードローラニップ部に重送して繰り出されると、シートA用に最適化された第1リタードローラ20、21がカバーする給送領域内にて分離機能が作用して、確実に重送シート層を1枚に分離して次工程へと搬送することが可能となる。その際、第2リタードローラは仮に給送領域を外れていたとしても、逆転駆動軸23の回転に追随して従動回転するため、分離搬送工程には影響を及ぼさない。
【0055】
PETベースの光沢系フィルムを搬送する場合には、今度は小径の第2リタードローラ22が機能し、前述と同様に確実に重送シート層を1枚に分離して次工程へと搬送する。以上のような構成、機能を有すことで摩擦係数の違うシート種を搬送する場合でも確実に分離できると共に、逆転軸駆動を1本で構成できるため、トルクリミッタの数を減らせ、装置の小型化が図れる。
【0056】
また、カム40、41、42を制御してリタードローラのフィードローラへの加圧力を変更することで更なる効果が得られる。摩擦係数が大きく違う場合などに加圧力を大きく変更することは、前述の通りにローラの磨耗を加速させることになるが、使用するシートの摩擦係数の差が少なければ、加圧手段による加圧力を変更することで、当該シートに最適な給送領域で分離・搬送工程を行うことが可能となる。例えば、シート収納手段に載置されているシート種別情報をオンライン上から経由したり、装置の入力手段から直接入力したり、また種別検出センサ等を用いての自動認識手段を利用してシート種別情報を入手して加圧力を該シートに対して最適化しても良い。
【0057】
繰り出し手段近傍に重送検知手段を設け、通常は所定の加圧力であるが重送を検知したときのみ、対応して加圧力を変更しても良い。シート種別情報入手手段や重送検出手段に従って加圧手段の加圧力量を最適制御する方法はこれまでに幾多の実施の形態が提案されているのでここでは割愛するが、以上により給送領域が更に拡張することは言うまでも無い。
【0058】
また、第1リタードローラと第2リタードローラのシートと当接するローラ表面の摩擦係数を違えることでも給送領域の許容範囲を広げることが出来る。図5において、第2リタードローラのシートへの摩擦係数μCPを大きくすると、関係式▲3▼bは図中時計回りへと傾く。つまり第2ローラ給送領域が拡がることとなり、給送許容範囲が広くなり、シートの摩擦のばらつきや、加圧力の不安定、空転トルク設定置のバラツキなどの不安定な給紙条件でも、分離・給送動作が比較的安定して作動することが可能となる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、フィードローラに圧接する第1の逆転ローラとは別に少なくとも1つ以上の複数個の逆転ローラを具え、前記第1逆転ローラと異径である複数の逆転ローラを有すことで、リタードローラニップ部に重送シートが給送された場合でも確実に1枚に分離して次工程へと搬送することが可能となる。また、厚さや摩擦係数の異なる種々のシートであっても確実に分離給送することができ、分離動作を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る画像記録装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る第1リタードローラの給送領域示す説明図である。
【図5】実施の形態に係る第1&第2リタードローラの給送領域示す説明図である。
【図6】実施の形態シート給紙装置のリタード分離機構を示す拡大図である。
【図7】他の実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】他の実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す平面図である。
【図9】従来の画像記録装置の概略構成を示す断面図である。
【図10】従来のシート給紙装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】従来のシート給紙装置の概略構成を示す斜視図である。
【図12】従来のリタード分離機構の給送領域示す説明図である。
【図13】従来のシート給紙装置の多重搬送状態を表す断面図である。
【図14】第1実施の形態に係る第1と第2リタードローラの給送領域示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 シート給紙装置
2 ピックアップローラ
3 フィードローラ
4、20、21 第1リタードローラ
5 トルクリミッタ
7、22 第2リタードローラ
8 トルクリミッタ
50、100 画像記録装置
111 シート材
112 シート収納手段
120 画像記録部
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート材を1枚ずつ順次分離給送するシート材給送装置に関する。詳細には、例えばプリンタ等の画像記録装置に用いられるシート給紙装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のシート給紙装置を用いる画像記録装置としては、例えば記録媒体に記録液(インク)を吐出して記録を行うインクジェット記録装置が挙げられる。
【0003】
図9は、該給紙装置を備えたインクジェット画像記録装置の概略断面図である。ここでは画像記録装置として、印字データに従いインクを吐出することで、記録シート上に文字又は画像を形成するインクジェット式の画像記録装置を一例として説明する。
【0004】
このインクジェット式の画像記録装置100は、給紙装置101と画像記録部120とを備えている。給紙装置101は、積層収納された未使用のシート111を収納するシート収納手段112と、該シート収納手段112からシート111を繰り出すシート給紙装置101と、該シート給紙装置101により分離して繰り出されたシート111を搬送する1対の搬送ローラ(シート搬送手段)113とを有している。尚、シート給紙装置101については後述にて説明する。
【0005】
シート給紙装置101によって繰り出された1枚のシート111は、シートの搬送経路を形成するガイド板114に案内されながら図面右方向に送り込まれる。ガイド板114aは右方向に搬送されるシート111の進行方向を上方左向きに変更させる略半円形の曲線経路部であり、搬送路途上に設けられる搬送ローラ113の間にシート111を導く。さらにこの搬送ローラ113の出口には、該曲線経路部114aに連続して設けられ略180度進路変更されたシート111を左方向に導く直線経路部114bが連続して配置されている。シートが搬送ローラ113の間に差し込まれた後、該搬送ローラ113が回転駆動されることによって、該ガイド板114の直線経路部114bにて導かれる。該ガイド板114の出口には、シート111を画像形成時に左方向に所定量ずつ間欠的に搬送する2組の副走査ローラ123、124が離間して設けられている。これら副走査ローラ123、124の間には、インクジェット記録ヘッド(画像記録部)121とプラテン板125とが配置されている。
【0006】
前記インクジェット記録ヘッド121は、不図示のキャリッジに載置されていて、このキャリッジは副走査ローラ123、124の回転軸と略平行に配置された不図示のキャリッジガイドによって、シート111の搬送方向に略直交する方向に移動可能に保持されている。前記キャリッジは、副走査ローラ123、124の間欠搬送が停止しているときに動かされ、この際、プラテン板125上に導かれたシート111にインクジェット記録ヘッド121からインクが吐出されて画像形成が行われる。尚、印字中は搬送ローラ対113がシートの挟持を開放すべく離間することで搬送抵抗を軽減させ、より高精彩な出力画像が得られるよう構成されている。
【0007】
前記副走査ローラ124の出口には、排紙トレイ126が設けられており、画像形成動作が終了した後、副走査ローラ124から排紙されるシート111はこの上に載置される。
【0008】
尚、インクジェット記録ヘッド121には、それに供給されるインクを収納するオンキャリッジタンク122が接続されており、該オンキャリッジタンク122はインクジェット記録ヘッド121と共にキャリッジに載置されている。
【0009】
印字終了後、引き続き同種サイズのシートに印字する場合には、同様の手順にて搬送・印字が履行される。
【0010】
ところで、上記装置において用いられるシート給紙装置として、図10、11に示すようなシート給紙装置101がある。このシート給紙装置101は、次工程の画像記録部に向けてシート材111を1枚ずつ順次供給する。図10に示すように、シート給紙装置101は、複数のシートが積層収納されたシート収納手段112から最上位のシート材111を1枚ずつ給送するピックアップローラ102と、給送されるシート材111を前記画像記録部へ向けて搬送するフィードローラ103と、このフィードローラ103と所定の加圧力で常時圧接して対をなすよう設置され、かつ同軸上に配置されるトルクリミッタの作用で所定のトルク制限の下にフィードローラ103の回転方向とは逆転方向に回転するよう駆動が伝達されるリタードローラ104が具備されている。
【0011】
ピックアップローラ102は不図示の支点軸を中心に揺動自在にシート収納手段内112に侵入可能に制御されると共に、最上位のシートに圧接して前方(図中右方向)に繰り出すよう回転駆動する。繰り出されるシートの前方にはシート収納手段112の先端縁であって適正な傾斜角を持ってシート先端を斜め上方へと変向させる傾斜部材112aが具えられている。この傾斜部材112aのシート接触表面を所定の抵抗粗さで仕上げることで、仮に複数枚のシートが繰り出されたとしても2枚目以降に搬送抵抗を与えつつ傾斜角との相乗効果によるシート先端への捌き動作を施す、所謂土手分離方式により分離性能の向上が図られることとなる。
【0012】
リタードローラ104は、ピックアップローラ102により給送されるシート材111が、もしも複数枚の場合には2枚目のシート(リタードローラ104と接する側)をピックローラ方向へ引き戻して1枚目のシート111と分離し、分離後はトルク最上位の1枚目をフィードローラ103と挟持することでトルクリミッタの所定トルクを超える搬送方向推進力が伝達され順方向へ従動回転する。つまり給紙開始当初、及び1枚ずつシート111が給紙される時には、リタードローラ104はフィードローラ103及びシート111を介在しての摩擦力によりトルクリミッタ105が空転して、リタードローラ104の回転方向と逆方向に従動回転する。また、複数枚のシート材111が給紙された際は、リタードローラ104とシート材111との間の摩擦力に対して複数枚のシート材111同士の摩擦力が小さいことからトルクリミッタ105は空転せずに、リタードローラ104はリタードローラ駆動軸106の回転方向と同方向(給送方向と逆方向)に回転する。これにより、複数枚送られたシート材111の中のフィードローラ103側、即ち最上位のシート111aとそれ以外のシート111bとを分離し、前記記録部へのシート材111の重送を防止するようになっている。こうして1枚に分離されたシート111を前記記録部に搬送するための搬送ローラ対113も具えられている。また、ガイド114cがピックアップローラ102とフィードローラ103及びリタードローラ104で形成するシート材搬送路を案内するよう配置され、フィードローラ103及びリタードローラ104との間、及び搬送ローラ対113と前記画像記録部との間にはガイド群114が配置され、それぞれシート111がガイドされるよう構成されている。
【0013】
次に、上記構成のシート給紙装置101においてシート111の給送、分離条件を満足する理論式について説明する。ここでは仮にピックアップローラ102が積層シートを押し付けて繰り出す際の加圧力をW、トルクリミッタ105の空転トルクをT、リタードローラ104のフィードローラ103への加圧力をN、リタードローラ104の半径をrとする。また、各構成要素間の摩擦係数を、μAPはピックアップローラ102とシート111間の摩擦係数、μBPはフィードローラ103とシート111間の摩擦係数、μCPはリタードローラ104とシート111間の摩擦係数、μAPPはピックアップローラ102加圧部下のシート111間の摩擦係数、μBPPはフィードローラ103とリタードローラ104とのニップ部のシート111間の摩擦係数とする。給紙ローラ群により1枚のシートを給紙方向へ搬送するための条件としてピックアップローラとフィードローラとがシートに抗力を与えながら摩擦力を利用して給紙する推進力(W・μAP+N・μBP)がリタードローラの逆送方向に与える引き戻し力と積層シート層の2枚目が給紙対象の1枚目に与える搬送抵抗力の合力(T/r+W・μAPP)よりも大きければ良い。
【0014】
従って、上記条件を満足する関係式は下記の通りに得られる。
N>T/rμBP+(μAPP−μAP)W/μBP…▲1▼
【0015】
次に、複数枚がリタードローラ間に給紙された際に2枚目以降を積層シート層側へ引き戻すための条件としては、リタードローラの引き戻し搬送力(T/r)が給紙推進力(W・μPP+N・μPP)に打ち勝てば良い。この時、積層シート層の抵抗は▲1▼と逆方向に働くことを考慮すると、満足するための関係式は下記のようになる。
N<T/rμBPP−2μAPPW/μBPP…▲2▼
【0016】
また、通常の給紙状態でリタードローラがフィードローラに追従して順方向に回転するためにはフィードローラの推進力(N・μCP)がリタードローラの回転駆動力(T/r)より大きければ良いので、下記の通りとなる。
N<T/rμCP…▲3▼
【0017】
上式▲1▼は給送条件、▲2▼は分離条件、▲3▼はリタードローラ の連れ回り条件をそれぞれ満足する式である。尚、上式中で同一のシート材を用いれば各ローラ加圧部の摩擦係数はさほど大きくばらつくことはないため、前記摩擦係数をμAPP≒μBPP=μPPと置き換えると、上式▲1▼、▲2▼はそれぞれ下式▲4▼、▲5▼となる。
N>T/rμBP+(μPP−μAP)W/μBP…▲4▼
N<T/rμPP−2W…▲5▼
【0018】
上式▲3▼、▲4▼、▲5▼の関係をグラフ化したものを図12に示す。同図において、斜線部は前述の如きシート材の分離給送が適正に行われるための給送領域である。この給送領域(斜線部)を更に広げるには、各ローラとシート材間の摩擦係数を大きくするかピックアップローラ102の加圧力を小さくすることが必要である。またリタードローラ104の加圧力Nとトルクリミッタ105の空転トルクTを共に大きくする方向(図中右上の方向)の条件下に給送条件を設定した方が給送領域(斜線部)が拡張されることが示されている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
近年、画像形成技術の発達に伴い種々の記録媒体に印字情報を記録することが可能となってきた。例えば、印字媒体に熱を与えることで該媒体自体が直接発色する感熱式プリンタや転写式の昇華型プリンタなどでは、画像形成装置に特化した専用紙が用いられていたが、例えば、LBP(レーザビームプリンタ)に代表される電子写真プリンタやインクジェットプリンタでは、普通紙からOHP(オーバヘッドプロジェクタ)用シートなどのシートフィルムまで幅広く種々の媒体に記録することが可能となっている。それにより、オペレータは同一の画像形成装置で文字情報や画像等の記録情報を所望の反射媒体や透過媒体へ出力させることが可能となっている。
【0020】
このような記録媒体として、例えば、光沢紙、OHP用透明シート、シール用紙などがあり、最近では、高画質な画像等を記録するために専用光沢フィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)ベースのフィルムシートなども用いられている。これらの記録媒体は、シート厚や表面の仕上げも各媒体により様々である。また、印字画像サイズに適合したシートサイズを給送して印字するために、画像形成装置に装填されているシート収納体を装置本体に対し着脱可能に構成し、所望画像にあわせて収納体を交換したり、複数の収納体装填口を装置本体に設けておき、オペレータの選択操作により所望シートを給送して印字が実行されたりする。
【0021】
また、大判のシート状の記録媒体にも対応できる画像形成装置が多数出現してきており、例えばA3判、A3ノビ判等の記録シートにも印字できる画像形成装置も一般化してきている。これと同時に、記録画素密度の高精細化に伴って記録される画質も向上し、そのため写真画像を記録するための光沢紙や透明シートなども多用されるようになってきた。
【0022】
これらのシートは、ベース材料にインクを吸収する受像層を形成したものであり、極めて平滑に形成されていると共に、そのシート厚もOHP用シートのような薄いものから、医用X線フイルムと同様なPETベースの厚手シートのものまで様々である。更に、一旦記録された受像層の長期保管性を高めるためや、インクのニジミ出しを防止するために、受像層の上面にコート層を塗布されているシートなどもある。このコート層は、記録用インクを自身から受像層まで透過させて記録させるために無数の空孔が形成されており、その表面は比較的凹凸があるなど種々のシート種が存在する。
【0023】
更に、同種シートでも、例えばベース素材に受像層を塗工する工程が環境条件、製造年月の変化によって受像層の吸収率に若干の差異が生じたり、日進月歩の改良によってより薄く吸収率の高い媒体が言い換えれば種々のシート摩擦係数を持ったシートが開発され印字記録が行われている。
【0024】
ところでこのような装置で使用されるシートの中には、同じ種類であっても各シート間において湿気等の吸収量の差や積層圧の差による密着性に違い、またシート層のズレなどの影響など積層状態の違いによりシート間の各摩擦係数がばらついていたり、また異なる種類のシート111を同時にシート収納台上に装填することもある。このような場合、シート収納台に積載されたシート111の中の多重シート層111aとその下層のシート層111b間の摩擦係数が当該シート111間の摩擦係数に比べて著しく小さい場合には、2枚重なった状態で繰り出され、図13に示すような2枚のシート111aが同時にリタードローラ間に侵入する重送搬送が発生することがある。この場合には、重送搬送されたシート111aはフィードローラ103とリタードローラ104のニップ部まで搬送され、分離動作を施されながら画像記録部へ搬送される。
【0025】
しかし、重送繰り出しされたシート111aは、前述の給紙条件の設定を変化させても分離できずに重送が発生してしまうことがある。通常、シート間摩擦係数μPPが同等の場合には多重搬送されたシート111はリタードローラ104の反転駆動により下層シートが分離されて逆方向搬送されることになる。
【0026】
ところが、近年のようにシートの種類が多種多様化している状況下においては、各シートの摩擦係数も広範囲に渡って扱われることになる。従って、図12のグラフにおいてシート間摩擦及び各ローラとの摩擦力が異なるため、グラフに示す関係式の勾配がシート毎に違う傾きを示すことになる。この機構において重送しにくく、かつ重送したシートを戻し易くしようとすると、トルクリミッタ105による戻し力を大きく設定するか、リタードバネによるリタードローラ加圧力を大幅に下げることが考えられる。しかし、1種類のシートのみを使用する装置や、同様のシート摩擦係数を所持するシート種だけを扱う装置であれば、問題はおきにくいが、摩擦係数が大きく違う種々のシート種を扱う場合には、各シート毎の前述の関係式の勾配に差があるため、その給送領域もばらついてくる。それらを一定の給紙条件下でリタード分離機構を機能させようとしても、給送可能領域の許容範囲は狭くなってしまい、その領域から外れた場合には重送やスリップによる給紙不能となってしまう。
【0027】
また、トルクリミッタの空転トルクやリタードローラの加圧力を大幅に下げることでフィードローラ103及びリタードローラ104とシート間での滑りを発生しやすくすることとなり、フィードローラ103及びリタードローラ104の摩耗を加速させることでフィードローラ103とリタードローラ104の耐久寿命を著しく低下させてしまう。このことにより、消耗部品の定期交換回数が増加し、シート給送装置の維持費が上昇してしまう。
【0028】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、シートの分離性能、搬送性を向上させ、更に耐久性を向上させたリタード分離機構を装備したシート給送装置を提供することにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係るシート供給装置は、未使用のシートを積層収納した収納部から繰り出されたシートを1枚ずつ分離するためのリタード分離機構と、該機構により取り出されたシートに印字記録する記録部へと給送するシート給紙装置において、前記リタード分離機構はシートを給紙方向へ回転駆動するフィードローラと、シート材給紙方向とは逆方向に一定トルクにて回転駆動して送り込まれてくるシートを戻す逆転ローラと、該フィードローラと逆転ローラとを圧接させる加圧手段とを備え、前記逆転ローラは前記フィードローラに圧接する第1の逆転ローラとは別に少なくとも1つ以上の複数個の逆転ローラを具え前記第1逆転ローラと複数の逆転ローラは各々異径であることを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るシート給紙装置の一実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は前記シート給送装置を装備する画像記録装置の一例として前述の従来例で示したインクジェット記録装置を用いて説明する。
【0031】
前述と同様に、図1は該給紙装置を備えたインクジェット画像記録装置の概略断面図である。尚、前述と同符号で表される部材は同機能を有すものとする。
【0032】
このインクジェット式の画像記録装置50は、シート給紙装置1と画像記録部120とを備えている。シート給紙装置1が積層収納された未使用のシート111を収納するシート収納手段112からシート111を分離して繰り出し、ガイド板114に案内されながら搬送ローラ113による搬送を経て、画像記録部120へと送り込む構成となっている。
【0033】
シート給紙装置1によって繰り出された1枚のシート111は、シートの搬送経路を形成するガイド板114の略半円形の曲線経路部により案内されつつ、搬送路途上に設けられる搬送ローラ113の搬送駆動を受けて略180度進路変更される。続いて、該ガイド板114の直線経路部114bにて導かれながら所定量ずつ間欠的に搬送する2組の副走査ローラ123、124へと差し込まれ、副走査工程が行われる。尚、印字中は搬送ローラ対113が搬送抵抗を軽減させるため離間してシートの挟持を開放するよう構成されている。インクジェット記録ヘッド121は、不図示のキャリッジに載置されていて、このキャリッジは副走査ローラ123、124の回転軸と略平行に配置された不図示のキャリッジガイドによって、シート111の搬送方向に略直交する方向に移動可能に取り付けられ、プラテン板125上に導かれたシート111にインクジェット記録ヘッド121からインクが吐出されて画像形成が行われる。印字終了後は、記録済みのシート111が順次排紙トレイ126上に積層排出される。
【0034】
次に上記装置において用いられるシート給紙装置1を図2、3に示す。このシート給紙装置1は、次工程の画像記録部に向けてシート材111を1枚ずつ順次供給する。図2に示すように、シート給紙装置1は、複数のシートが積層収納されたシート収納手段112から最上位のシート材111を1枚ずつ給送するピックアップローラ2を有し、シート収納手段112の先端縁に具えられた傾斜部材112aの案内によりシート先端を斜め上方へと変向させながら繰り出す。
【0035】
また、給送されるシート材111を前記画像記録部へ向けて搬送するフィードローラ3と、このフィードローラ3と所定の加圧力で常時圧接して対をなすよう設置され、かつ同軸上に配置されるトルクリミッタ5の作用で所定のトルク制限の下にフィードローラ3の回転方向とは逆転方向に回転するよう駆動が伝達される第1のリタードローラ4が具備されている。
【0036】
更に、前記フィードローラ3の円周方向下流側には第1のリタードローラ4の径とは違う径を有する第2のリタードローラ7が具えられている。ここでは第1逆転ローラに対して第2逆転ローラが小径であるとする。第2のリタードローラ7は第1のリタードローラ4と同様に所定の加圧力でフィードローラ3に常時圧接してトルクリミッタ8のトルク制限の下に逆転方向に回転する。また、図3に示すように第1のリタードローラ4は第2のリタードローラ7をお互いの駆動に干渉することなく、フィードローラ3の中心線(シート搬送方向に平行)を対称として挟むように分割して配置されている。此れにより第2のリタードローラ7の配列を第1のリタードローラ4と入れ子状にして略近傍に置くことが可能となると共に、シート搬送方向への推進力(又は引き戻し力)が平衡を保つこととなり、シートの斜行を防ぐことができる。
【0037】
これら給紙・分離ローラ対(以降リタード分離機構と称す)3、4、7の上流側入口にはガイド板114cが、下流側出口にはガイド板114aが夫々ピックアップローラ2とフィードローラ3及びリタードローラ4、7で形成するシート材搬送経路を案内するよう配置されている。
【0038】
次に、上記構成のシート給紙装置1において種々の摩擦係数を持ったシートを分離搬送する場合の給送、分離条件の変化と該シート給紙装置の給紙領域について説明する。仮に或る所定の摩擦係数を持つシートAを搬送する場合に第1リタードローラ給送領域が図12のような特性を持っていたとする。ここでシート収納手段112を別のシートBが収納されたシート収納手段112bに交換したり、或いはシートAとは別種類のシートBも混在載置されていた時など、シートB給紙領域はシートAとは違う給送領域に推移してしまう。
【0039】
シートBがシートAに比して大きな摩擦係数を持っていた場合には、図4に示すように関係式▲5▼の勾配が図中時計周りに傾き、給送領域が狭くなっていく。このときシートAに最適な加圧力−空転トルク値の図中の設定点PはシートBに対しては給送領域を満足できなくなり、重送が発生してしまうことになる。このため給送条件の設定変更を行い、加圧力を弱めかつ空転トルク値を高めたQ点に移行させる必要が生じる。この現象は使用するシート種間の摩擦係数の差が大きければ大きいほど設定点に移行量は大きくなり、この設定変更は前述の通り各ローラの耐久性を劣化させることとなる。
【0040】
しかし、第1逆転ローラの下流側に控える第2の逆転ローラが重送してしまったシート層を分離して通常搬送に引き戻すことで上記課題を解消することが可能となる。第2逆転ローラは第1逆転ローラよりも径が小径r2となっている。そのため、関係式▲3▼〜▲5▼で表される領域が図9に示す領域と異なってくる。関係式▲3▼〜▲5▼は図9で示す摩擦係数の関数だけではなく、逆転ローラの径の関数でもある。
【0041】
上記構成による給送、分離条件を満足する理論式について説明すると、前述従来例での理論式の説明に加えて、第2リタードローラのフィードローラ3への加圧力Nと空転トルクTの制限下での引き戻し力が付加されている。シートの摩擦力の関係は第1リタードローラと同等の関係を維持している。
【0042】
従って、▲1▼式の給紙条件を満足する式は第2リタードローラの引き戻し力を加えることで、
N>T(1/r+1/r2)/2・μBP+(μAPP−μAP)W/2・μBP…▲1▼b
【0043】
同様に、▲2▼、▲3▼の分離条件、連れ回り条件もそれぞれ、
N<T(1/r+1/r2)/2・μBPP−μAPPW/μBPP…▲2▼b
N>T(1/r+1/r2)/2・μCP…▲3▼b
となる。また、前述と同様に摩擦係数をμAPP≒μBPP=μPPと置き換えると、上式▲1▼b、▲2▼bはそれぞれ下式▲4▼b、▲5▼bとなる。
N>T(1/r+1/r2)/2・μBP+(μPP−μAP)W/2・μBP…▲4▼b
N<T(1/r+1/r2)/2・μPP−W…▲5▼b
【0044】
次に、給送領域の上限を規定する分離条件の関係式▲4▼と▲4▼bの傾き係数を比較してみる。▲4▼bと▲4▼の傾き係数の差分を取ると、(簡略化のため1/μBPを省く。)
{(1/r+1/r2)/2}−(1/r)=(r−r2)/2r・r2…▲6▼
r>r2より、▲6▼式は正の値をとることになる。つまり{(1/r+1/r2)/2}>(1/r)であるため▲4▼bの傾きは▲4▼よりも大きくなることが判る。
【0045】
以上より、第2リタードローラ径r2の値を小さくすると各関係式▲3▼〜▲5▼は図中反時計回りに傾きを変え、図5に示す▲3▼b〜▲5▼bで囲まれる領域を取ることとなる。つまりシートBに対する第2逆転ローラを用いての給送領域を最適化させP点が給送領域内に収まるよう第2逆転ローラの径を所定値にすれば、重送を防ぎかつ最適な加圧力−空転トルク値の下で、分離搬送工程が行われることとなる。ただし、第2リタードローラのスリップ領域が第1リタードローラの給送領域を侵食しない範囲内での設定にする必要がある。
【0046】
また、給送領域の範囲が図中、斜線及びテクスチャで示す部分に領域が拡がるため、シート間の摩擦係数にばらつきがあたったり、磨耗等によりローラとの摩擦係数が変化したり、加圧力にばらつきが生じたとしても、給送許容範囲が拡がることとなる。図14に具体例を示す。第1リタードローラの径が24mm、第2リタードローラの径が16mm、ピックアップローラの加圧力が200gのリタード分離機構を用いてシート摩擦係数μPP=0.7のシートを分離・給送する際の各ローラの給送領域を示している。
【0047】
また、図5はシートBに関する給送領域の範囲を示しているが、前記シートAに関しても第1逆転ローラ給送領域および第2逆転ローラ給送領域を合わせた範囲がシートBに対してその分布を変えて分離・給送領域となり、許容範囲も更に広がることとなる。
【0048】
次に上記構成のリタード分離機構を用いてのシート分離動作について説明する。図6はフィードローラ3及び第1及び第2のリタードローラ4、7のニップ部にシート111が重送搬送された状態を示す。まず、第1のリタードローラ4とのニップ部に複数枚のシートが差し込まれると、リタード分離作用により2枚目のシートに逆転の搬送力が掛かる。シートの摩擦係数が第1リタードローラ4の給送領域を満足する値であるときは1枚に分離されて下流へと進行していく。
【0049】
しかし、摩擦係数値が第1リタードローラ4の給送領域を満足する値に入らないシートBの場合には、重送しながら下流第2リタードローラ7のニップ部へと侵入していく。ここで、第2リタードローラ7はシートBの給送領域を満足するための径で構成されるため、シートBの2枚目を逆方向へと引き戻す推進駆動力が供与され1枚だけを残して分離される。続いて分離された1枚目のシートを更に下流側へと搬送する。以上により1枚目のシート以外はリタード機構により分離され、繰り出し分離動作が完了する。引き続いて、ガイド板114及び搬送ローラ113により画像記録部へとシートが搬送されることとなる。
【0050】
以上説明したように、上記リタード分離方式は径の異なる2対の逆転ローラを具えることで、同一の給紙装置において例えば、普通紙とPETベースの光沢系フィルムのような摩擦係数の差が大きいシートを搬送する場合でも確実に1枚に分離して次工程へと搬送することが可能となる。また、分離・給送領域が各シート毎にその許容範囲を広げることが可能なため、分離動作を安定して行うことができる。そして分離条件を満足するためにトルクリミッタの空転トルク値も大きくする必要が無いためローラの耐久性を低減する畏れが少なくて済む。
【0051】
尚、上記実施の形態では、2対の逆転ローラの例を示したが、2対に限定されるものでは無く、複数の逆転ローラを異径で配置させても良い。このことで更に給送領域は拡がることになる。
【0052】
図7、8は本発明に係る他の実施の形態を示したものである。尚、図中前述と同符号の部材は同一の機能を有すものとする。図2に示す第1の実施の形態で説明したリタード分離機構との違いは、逆転駆動軸23上に第1リタードローラ20、21と第2のリタードローラ22が具えられていることである。また、第2のリタードローラ22は第1実施の形態と同様に第1リタードローラ20、21に挟まれた位置関係にあり、第1リタードローラより小さな径を有している。
【0053】
逆転駆動軸23には不図示の駆動源からシート搬送方向とは逆方向にローラ回転駆動力が与えられると共に、トルクリミッタ24の作用により規定負荷トルクを超える場合には空転するよう設定されている。第1リタードローラ21と第2のリタードローラ22は逆転駆動軸23と略同軸であり、ピン27、28、29、30を介して屈曲自在に連結されつつ駆動を伝達するフレキシブルジョイント25、26にて連結されている。夫々のリタードローラは両側に長溝が刻まれたブラケット31、32、33に不図示の軸受けを介して回転自在に取り付いている。ブラケット31、32、33の下方にはバネ34、35、36がフィードローラ3側へとリタードローラ20、21、22を付勢するように係合されている。更にバネ34、35、36の下方にはバネ圧を制御するための圧板37、38、39が具えられており、不図示の制御手段によるカム40、41、42の位相制御により、圧板37、38、39の押付量を規定している。結局このカム制御により、リタードローラ20、21、22のフィードローラ3への加圧力を最適制御している。
【0054】
上記のようなシート給送装置を用いての分離給送動作は、実施の形態1と同様に例えば普通紙のような摩擦係数の比較的低いシートAがリタードローラニップ部に重送して繰り出されると、シートA用に最適化された第1リタードローラ20、21がカバーする給送領域内にて分離機能が作用して、確実に重送シート層を1枚に分離して次工程へと搬送することが可能となる。その際、第2リタードローラは仮に給送領域を外れていたとしても、逆転駆動軸23の回転に追随して従動回転するため、分離搬送工程には影響を及ぼさない。
【0055】
PETベースの光沢系フィルムを搬送する場合には、今度は小径の第2リタードローラ22が機能し、前述と同様に確実に重送シート層を1枚に分離して次工程へと搬送する。以上のような構成、機能を有すことで摩擦係数の違うシート種を搬送する場合でも確実に分離できると共に、逆転軸駆動を1本で構成できるため、トルクリミッタの数を減らせ、装置の小型化が図れる。
【0056】
また、カム40、41、42を制御してリタードローラのフィードローラへの加圧力を変更することで更なる効果が得られる。摩擦係数が大きく違う場合などに加圧力を大きく変更することは、前述の通りにローラの磨耗を加速させることになるが、使用するシートの摩擦係数の差が少なければ、加圧手段による加圧力を変更することで、当該シートに最適な給送領域で分離・搬送工程を行うことが可能となる。例えば、シート収納手段に載置されているシート種別情報をオンライン上から経由したり、装置の入力手段から直接入力したり、また種別検出センサ等を用いての自動認識手段を利用してシート種別情報を入手して加圧力を該シートに対して最適化しても良い。
【0057】
繰り出し手段近傍に重送検知手段を設け、通常は所定の加圧力であるが重送を検知したときのみ、対応して加圧力を変更しても良い。シート種別情報入手手段や重送検出手段に従って加圧手段の加圧力量を最適制御する方法はこれまでに幾多の実施の形態が提案されているのでここでは割愛するが、以上により給送領域が更に拡張することは言うまでも無い。
【0058】
また、第1リタードローラと第2リタードローラのシートと当接するローラ表面の摩擦係数を違えることでも給送領域の許容範囲を広げることが出来る。図5において、第2リタードローラのシートへの摩擦係数μCPを大きくすると、関係式▲3▼bは図中時計回りへと傾く。つまり第2ローラ給送領域が拡がることとなり、給送許容範囲が広くなり、シートの摩擦のばらつきや、加圧力の不安定、空転トルク設定置のバラツキなどの不安定な給紙条件でも、分離・給送動作が比較的安定して作動することが可能となる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、フィードローラに圧接する第1の逆転ローラとは別に少なくとも1つ以上の複数個の逆転ローラを具え、前記第1逆転ローラと異径である複数の逆転ローラを有すことで、リタードローラニップ部に重送シートが給送された場合でも確実に1枚に分離して次工程へと搬送することが可能となる。また、厚さや摩擦係数の異なる種々のシートであっても確実に分離給送することができ、分離動作を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る画像記録装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る第1リタードローラの給送領域示す説明図である。
【図5】実施の形態に係る第1&第2リタードローラの給送領域示す説明図である。
【図6】実施の形態シート給紙装置のリタード分離機構を示す拡大図である。
【図7】他の実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】他の実施の形態に係るシート給紙装置の概略構成を示す平面図である。
【図9】従来の画像記録装置の概略構成を示す断面図である。
【図10】従来のシート給紙装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】従来のシート給紙装置の概略構成を示す斜視図である。
【図12】従来のリタード分離機構の給送領域示す説明図である。
【図13】従来のシート給紙装置の多重搬送状態を表す断面図である。
【図14】第1実施の形態に係る第1と第2リタードローラの給送領域示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 シート給紙装置
2 ピックアップローラ
3 フィードローラ
4、20、21 第1リタードローラ
5 トルクリミッタ
7、22 第2リタードローラ
8 トルクリミッタ
50、100 画像記録装置
111 シート材
112 シート収納手段
120 画像記録部
Claims (6)
- 未使用のシートを積層収納した収納部から繰り出されたシートを1枚ずつ分離するためのリタード分離機構と、該機構により取り出されたシートに印字記録する記録部へと給送するシート給紙装置において、前記リタード分離機構はシートを給紙方向へ回転駆動するフィードローラと、シート材給紙方向とは逆方向に一定トルクにて回転駆動して送り込まれてくるシートを戻す逆転ローラと、該フィードローラと逆転ローラとを圧接させる加圧手段とを備え、前記逆転ローラは前記フィードローラに圧接する第1の逆転ローラとは別に少なくとも1つ以上の複数個の逆転ローラを具え前記第1逆転ローラと複数の逆転ローラは各々異径であることを特徴とするシート給紙装置。
- 前記複数の逆転ローラは前記第1の逆転ローラに対して前記フィードローラの円周方向下流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシート給紙装置。
- 前記第1逆転ローラと複数の逆転ローラは各々独立的に加圧手段を有すことを特徴とする請求項1に記載のシート給紙装置。
- 前記フィードローラもしくは逆転ローラの一方のローラを他方のローラに対して加圧力を切り換える加圧切換手段を有すことを特徴とする請求項1に記載のシート給紙装置。
- 第1の逆転ローラ表面の摩擦係数と違う摩擦係数を有す第2の逆転ローラを具えることを特徴とする請求項1に記載のシート給紙装置。
- 摩擦係数の違う複数種のシートを使用する記録装置であることを特徴とする請求項1に記載のシート給紙装置。
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