JP2004074851A - 車両用駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動手段20aと駆動輪21bを連結する駆動力伝達機構内にクラッチ20cを備え、駆動手段20aの非作動時にはクラッチ20cの結合を解除して、駆動手段20aと駆動輪21bの駆動力伝達可能な連結状態を遮断する車両用駆動装置において、クラッチ20cの結合解除時における駆動力伝達機構内の作動オイルの粘性抵抗に起因する引きずりトルクの発生を防止する。
【解決手段】クラッチ20cの結合解除時に、駆動力伝達機構を収容するケース内の作動オイルの粘度が所定値以上である場合には、駆動手段20aを駆動して作動オイルの粘度を所定値未満に低下させることによって作動オイルの粘性抵抗を低下させ、駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生を防止する。
【選択図】 図2
【解決手段】クラッチ20cの結合解除時に、駆動力伝達機構を収容するケース内の作動オイルの粘度が所定値以上である場合には、駆動手段20aを駆動して作動オイルの粘度を所定値未満に低下させることによって作動オイルの粘性抵抗を低下させ、駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生を防止する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用駆動装置の一形式として、駆動手段と駆動輪を駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達機構内にクラッチを備え、駆動手段の非作動時にはクラッチの結合を解除して、駆動手段と駆動輪の駆動力伝達可能な連結状態を遮断する構成の車両用駆動装置がある。当該形式の車両用駆動装置の一例が特開2001−253256号公報に示されている。
【0003】
当該形式の駆動装置は、例えば、前後輪駆動車を構成する補助駆動装置に採用されて、前後輪駆動車を構成する主駆動装置とともに作動して、車両を前後両輪駆動(例えば四輪駆動)の走行状態を形成するものである。また、前後輪のいずれか一方の単独駆動(例えば二輪駆動)の走行状態を形成する場合には、補助駆動装置の駆動手段を非作動とするとともに、クラッチの結合を解除して補助駆動装置の駆動手段と駆動輪の駆動力伝達可能な連結状態を遮断するものである。
【0004】
このように、当該形式の駆動装置においては、前後輪のいずれか一方の単独駆動(例えば二輪駆動)の走行時には、クラッチの結合を解除して駆動手段と駆動輪との駆動力伝達可能な連結が遮断されることから、駆動輪側から駆動手段側へのトルク伝達を遮断し得て、駆動輪側から駆動手段側への伝達トルクに起因するトラブルが解消されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、当該形式の駆動装置においては、通常、駆動力伝達機構は作動オイルを収容するケース内、例えば、トランスミッションオイルを収容するトランスミッションのケース内に収容されていて、作動オイルによって、駆動力伝達機構を構成するギヤ、軸受、その他の部品の潤滑、防錆、過熱防止等が図られている。しかしながら、当該作動オイルは粘性を有することから、駆動力伝達機構に対しては粘性抵抗としても作用する。このため、当該作動オイルの粘性が高い場合には、当該駆動力伝達機構内に引きずりトルクが発生して、クラッチの結合が解除されている場合にもかかわらず、駆動輪側から駆動手段側へトルクが伝達されるおそれがあり、当該伝達トルクに起因して駆動装置にトラブルが発生するおそれがある。
【0006】
作動オイルの粘性は、周囲の温度によって大きく影響を受けるもので、寒冷地や寒冷の季節等には粘性が高く、温暖地や温暖の季節等には、粘性は低い範囲にある。このように、作動オイルは寒冷地や寒冷の季節等には粘性が高いことから、この場合の駆動装置では、作動オイルの粘性抵抗に起因する、駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生には十分に対処しなければならない。
【0007】
本発明の目的は、当該形式の駆動装置において、作動オイルの粘性抵抗に起因する駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生を防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両用駆動装置に関するもので、駆動手段と駆動輪を駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達機構内にクラッチを備え、前記駆動手段の非作動時には前記クラッチの結合を解除して、前記駆動手段と前記駆動輪の駆動力伝達可能な連結状態を遮断する形式の車両用駆動装置を適用対象とするものである。
【0009】
しかして、本発明に係る車両用駆動装置においては、前記クラッチの結合解除時に前記駆動力伝達機構を収容するケース内の作動オイルの粘度が所定値以上である場合には、前記駆動手段を駆動して前記作動オイルの粘度を所定値未満に低下させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る駆動装置においては、前記駆動手段として電動モータを採用して、前記作動オイルの粘度を前記電動モータのモータトルクにて検出するようにすることができ、また、前記電動モータのモータトルクを電動モータのモータ電流値にて検出するようにすることができる。
【0011】
本発明に係る駆動装置は、前後輪駆動車を構成する補助駆動装置に採用することができ、これにより、前後輪駆動車を構成する主駆動装置とともに作動して、車両を前後両輪駆動の走行状態を形成することができる。
【0012】
【発明の作用・効果】
本発明に係る駆動装置においては、クラッチの結合解除時に、駆動力伝達機構を収容するケース内の作動オイルの粘度が所定値以上である場合には、駆動手段を駆動させるものである。駆動手段のこのような駆動によって、駆動力伝達機構の一部または全部の部位が駆動して、ケース内に収容されている作動オイルを撹拌する。この結果、ケース内に収容されている作動オイルは、漸次昇温してその粘性を漸次低下させる。作動オイルの粘度が所定値未満に低下した場合には、駆動手段の駆動を停止させる。
【0013】
これにより、ケース内に収容されている作動オイルは所定温度以上に保持されて、その粘度が所定値未満に保持される。このため、駆動力伝達機構に対する粘性抵抗が小さくて、当該駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生が防止され、クラッチの結合が解除されている場合においては、駆動輪側から駆動手段側へのトルクの伝達が確実に規制される。この結果、当該伝達トルクに起因する駆動装置でのトラブルは発生するおそれがない。
【0014】
本発明に係る駆動装置において、駆動手段として電動モータを採用するようにすれば、作動オイルの粘度を電動モータのモータトルクにて検出することができ、また、電動モータのモータトルクを電動モータのモータ電流値にて検出することができ、結果として、作動オイルの粘度をモータ電流値にて容易に検出することができるという利点がある。
【0015】
本発明に係る駆動装置は、このように有用性を有するため、前後輪駆動車を構成する補助駆動装置に採用することができ、これにより、主駆動装置とともに作動して車両を前後両輪駆動の走行状態に形成することができる、前後輪駆動車を好適に構成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、車両用駆動装置に関するものである。図1は、本発明の一例に係る駆動装置を補助駆動装置に採用して構成した前後輪駆動車を示している。当該前後輪駆動車は、主駆動輪である前輪側を駆動する主駆動装置10と、補助駆動輪である後輪側を駆動する補助駆動装置20と、補助駆動装置20を制御する制御装置30を備えている。当該前後輪駆動車においては、補助駆動装置20が本発明に係る車両用駆動装置の一実施形態であり、図2および図3には、当該補助駆動装置20の詳細を示している。
【0017】
当該前後輪駆動車を構成する主駆動装置10は、内燃機関であるエンジン11を備えている。主駆動装置10においては、エンジン11の駆動力は、トランスミッション12、減速ギヤ列13、および、フロントディファレンシャル14を経て各ドライブシャフト15に分配され、各ドライブシャフト15にて前輪16が駆動される。また、主駆動装置10は、ジェネレータ17を備え、ジェネレータ17はエンジン11にて駆動して発電し、発電された電力はバッテリー18に蓄電される。蓄電された電力は、後述する補助駆動装置20を構成する駆動手段である電動モータ20aの駆動エネルギーとして供給される。
【0018】
補助駆動装置20は、電動モータ20a、減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20cおよびリヤディファレンシャル20dを備えている。補助駆動装置20においては、減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20cおよびリヤディファレンシャル20dが駆動力伝達機構を構成していて、電磁クラッチ装置20cは減速ギヤ列20b内の入力側と出力側間に配設されている。
【0019】
電動モータ20aは、必要時、制御装置30からの指令信号に基づいて電力の供給を受けて駆動するもので、電磁クラッチ装置20cが結合状態にある場合には、電動モータ20aの駆動力は、減速ギヤ列20bの入力側から電磁クラッチ装置20cを介して減速ギヤ列20bの出力側へ伝達され、減速ギヤ列20bの出力側からリヤディファレンシャル20dに伝達される。伝達された駆動力は、リヤディファレンシャル20dにて各ドライブシャフト21aに分配されて、各ドライブシャフト21aにて後輪21bが駆動される。
【0020】
制御装置30は、4WDを選択するスイッチの状態を検出するスイッチセンサS1、スロットル開度センサS2、車輪速センサS3、モータ電流値を検出する電流値センサS4等に接続されているもので、MPU(マイクロプロセッサ)および駆動回路を備えている。MPUは、CPUおよびメモリーを備え、メモリーは、電磁クラッチ装置20cや電動モータ20a等を制御する制御プログラムやデータを保持している。制御装置30においては、各センサS1〜S3から出力される検出信号を、インタフェースを介して取込み、MPUは、取込んだ各検出信号に基づいて補助駆動装置20の作動すべき状態を判定し、補助駆動装置20を作動すべきであると判定した場合には、電動モータ20aや電磁クラッチ装置20cを動作すべき指令信号を、インタフェースを介して駆動回路に出力する。
【0021】
駆動回路は、MPUからの指令信号に基づいて、電磁クラッチ装置20cのON(結合)−OFF(遮断)を制御するとともに、電動モータ20aに対する電力の供給を制御するもので、MPUが補助駆動装置20を作動すべきであると判定した場合には、MPUからの指令信号に基づいて、電磁クラッチ装置20cをONして、設定された電圧の電力を電動モータ20aに供給する。これにより、補助駆動装置20は作動して後輪21b側を駆動させ、車両を前後輪駆動状態に形成する。
【0022】
しかして、補助駆動装置20は、図2に示すように、駆動手段である電動モータ20aと被駆動手段である後輪21b側とを駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達機構を構成する減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20cおよびリヤディファレンシャル20dを備えている。減速ギヤ列20bは入力側と出力側に分割されていて、電磁クラッチ装置20cは、減速ギヤ列20bにおける入力側と出力側間に配設されている。
【0023】
減速ギヤ列20bを構成する入力側は、ミッションケース21c内にて回転可能に支持されている入力軸22a、入力軸22a上に一体回転可能に組付けられている第1ギヤ22b、入力軸22a上に一体に形成されている第2ギヤ22c、出力側を構成する出力軸23a上に回転可能に組付けられている第3ギヤ22dにて構成されている。第1ギヤ22bは、ミッションケース21cに設置された電動モータ20aの出力軸24aに一体に形成されている出力ギヤ24bに噛合している。
【0024】
減速ギヤ列20bを構成する出力側は、ミッションケース21c内にて回転可能に支持されている出力軸23a、出力軸23a上に一体回転可能に組付けられている第4ギヤ23bにて構成されている。出力軸23aは、入力軸22aとは並列的に支持されていて、第4ギヤ23bはリヤディファレンシャル20dの入力手段であるリングギヤ25dに噛合している。出力軸23a上に回転可能に組付けられている入力側の第3ギヤ22dは、入力側の第2ギヤ22cに噛合している。
【0025】
リヤディファレンシャル20dは、それ自体公知のもので、ミッションケース21c内にて回転可能に支持されているディファレンシャルケース25a、同ケース25a内に収容されている一対のピニオン25b、両ピニオン25bに噛合する一対のサイドギヤ25c、および、ディファレンシャルケース25aの外周縁部に固定されているリングギヤ25dを備えている。当該リヤディファレンシャル20dにおいては、減速ギヤ列20bからの駆動力はリングギヤ25dを介して伝達され、入力された駆動力は、各サイドギヤ25cに連結する各ドライブシャフト21a側へ分配される。これにより、両後輪21bが駆動して、車両が前後輪駆動状態に形成される。
【0026】
減速ギヤ列20bの入力側と出力側間に配置されている電磁クラッチ装置20cは、出力軸23a上に組付けられている。電磁クラッチ装置20cは、図3に示すように、出力軸23aの外周上に一体的に組付けられている第1の部材である円盤状の回転部材26a、回転部材26aの環状凹所にヨークに支持されて嵌合して組付けられている電磁コイル26b、出力軸23aの外周上に回転可能に組付けられて回転部材26aの外側面側に位置するクラッチ部材であるアーマチャ26c、回転部材26aとアーマチャ26c間に介装されているリターンスプリング26dを備えるとともに、アーマチャ26cと第2の部材である第3ギヤ22d間に配置されているカム機構Cを備えている。
【0027】
電磁クラッチ装置20cにおいては、回転部材26aとアーマチャ26c間が摩擦クラッチに構成されている。当該摩擦クラッチを構成するアーマチャ26cは、非作動時には、ばね部材を構成するリターンスプリング26dの付勢作用にて回転部材26aとは離間していて、電磁コイル26bへの電流の印加によって生じる磁力の作用により、リターンスプリング26dに抗して回転部材26aの外側面側に吸引されて、回転部材26aの外側面に摩擦係合する。
【0028】
カム機構Cは、減速ギヤ列20bを構成する入力側の第3ギヤ22dを第1カム部材とし、これに対向するアーマチャ26cを第2カム部材とするもので、第1カム部材である第3ギヤ22dと第2カム部材であるアーマチャ26cの互いの対向面に形成されている互いに対向するカム溝にカムフォロア26eを嵌合して構成されている。
【0029】
かかる構成の電磁クラッチ装置20cにおいては、電磁コイル26bへの電流の印加が停止されている非作動時には、アーマチャ26cはリターンスプリング26dによって第3ギヤ22d側へ付勢されていて、電磁クラッチ20cは、電磁コイル26bへ電流を印加することによって作動する。
【0030】
すなわち、非作動中の電磁クラッチ装置20cにおいて、その電磁コイル26bへ電流を印加すると、これにより生じる磁力の作用にて、アーマチャ26cがリターンスプリング26dに抗して回転部材26aの外側面側に吸引されて、アーマチャ26cは回転部材26aの外側面に摩擦係合し、減速ギヤ列20bの入力側である第3ギヤ22dと出力側である出力軸23aを駆動力伝達可能に連結する。この際、カム機構Cが作動して、アーマチャ26cの回転部材26aの外側面に対する摩擦係合力を増大して、アーマチャ26cと回転部材26aを互いに結合させる。
【0031】
当該前後輪駆動車は、主駆動装置10を構成するエンジン11を始動することで、前輪駆動の二輪駆動走行状態を形成することができるとともに、4WDを選択する4WDスイッチをON操作した場合には、制御装置30は補助駆動装置20の作動を制御して、前後両輪駆動の四輪駆動走行状態を形成する。
【0032】
補助駆動装置20の制御では、制御装置30は、4WDスイッチの操作状態を検出するスイッチセンサS1、スロットル開度センサS2、車輪速センサS3から出力される検出信号を、インタフェースを介して取込み、MPUは、取込んだ各検出信号に基づいて補助駆動装置20の作動すべき状態を判定し、補助駆動装置20を作動すべきであると判定した場合には、電動モータ20aを動作すべき指令信号を、インタフェースを介して駆動回路に出力する。駆動回路は、MPUからの指令信号に基づいて、設定された電圧の電力を電動モータ20aに供給する。制御装置30は、補助駆動装置20の駆動制御のプログラムを、図4に示すフローチャートに基づいて実行する。
【0033】
制御装置30は、エンジン11の始動時に動作し、制御装置30を構成するマイクロコンピュータは、ステップ101にて4WDスイッチのON−OFF状態を判定し、4WDスイッチがOFF状態にあるものと判定した場合にはプログラムをステップ102に進め、クラッチをOFF状態に保持してプログラムの実行を終了する。また、マイクロコンピュータは、ステップ101にて4WDスイッチがON状態にあるものと判定した場合にはプログラムをステップ103に進める。
【0034】
マイクロコンピュータは、ステップ103では、スロットル開度、車輪速から補助駆動装置20の駆動制御すべき状態か否かの判定を行う。マイクロコンピュータは、ステップ103にて、補助駆動装置20を駆動制御すべき状態ではないと判定した場合には、ステップ104にてクラッチをOFF状態に保持し、ステップ105にて電動モータ20aを非駆動状態に保持してプログラムの実行を終了する。
【0035】
また、マイクロコンピュータは、ステップ103にて、補助駆動装置20を駆動制御すべき状態であるものと判定した場合には、プログラムをステップ106に進め、ステップ106にてクラッチをONするとともに、ステップ107にて電動モータ20aを駆動する。これにより、車両は前後両輪の四輪駆動状態に形成される。
【0036】
制御装置30は、上記した補助駆動装置20の基本的な駆動制御プログラムを備えるとともに、電磁クラッチ装置20cの結合が遮断されている状態にある場合に、補助駆動装置20の暖機運転を行う暖機制御プログラムを備えている。当該暖機制御プログラムは、例えば寒冷状態において、ミッションケース21cに収容されている作動オイルが低温であって、作動オイルの粘性が高い場合に電動モータ20aの駆動を制御することにより、減速ギヤ列20bを駆動して作動オイルを撹拌し、その撹拌力によって作動オイルを昇温して、作動オイルの粘性を所定値未満に低下させることを意図しているものである。
【0037】
これにより、作動オイルは所定温度以上に保持されて、その粘度が所定値未満に保持される。このため、駆動力伝達機構を構成する減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20c、リヤディファレンシャル20dに対する粘性抵抗が小さくて、当該駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生が防止される。この結果、電磁クラッチ装置20cの結合が解除されている場合においては、後輪21b側から電動モータ20a側へのトルクの伝達が規制され、このため、補助駆動装置20での当該伝達トルクに起因するトラブルの発生は防止される。
【0038】
制御装置30は、補助駆動装置20の暖機制御のプログラムを、図5に示すフローチャートに基づいて実行する。当該フローチャートに示す暖機終了フラグFは、暖機運転をすべきか否かの決定を判断する基準とするもので、エンジン11の始動に基づく暖機制御プログラムの実行開始後初期状態(暖機終了フラグF=0)にセットされるとともに、ミッションケース21c内の作動オイルが設定されている所定温度以上であって、その粘度が設定されている所定粘度未満にある場合には、暖機終了フラグF=1にセットされる。従って、暖機終了フラグF=1である場合には、暖機運転が不要であることを示している。
【0039】
制御装置30を構成するマイクロコンピュータは、ステップ111にて、暖機終了フラグFがセットされているか否か、換言すれば、暖機終了フラグF=1か否かを判定する。マイクロコンピュータは、ステップ111にて、暖機終了フラグF=1であるものと判定した場合には、暖機運転不要であると判断して制御プログラムを終了する。また、マイクロコンピュータは、ステップ111にて、暖機終了フラグF=1ではないものと判定した場合には、プログラムをステップ112に進め、ステップ112にて、電動モータ20aを駆動して暖機運転を行わせて、プログラムをステップ113に進め、ステップ113にて、電動モータ20aのモータ電流値の大小を判定する。
【0040】
モータ電流値は、電動モータ20aのモータトルクに関連し、モータトルクは作動オイルの粘性抵抗に関連し、作動オイルの粘性抵抗は作動オイルの粘度に関連し、かつ、作動オイルの粘度は作動オイルの温度に関連する。電動モータ20aの駆動によって減速ギヤ列20bが駆動し、その撹拌作用によってミッションケース21c内の作動オイルが漸次昇温した場合には、作動オイルの粘度が漸次低下し、作動オイルの粘性抵抗が漸次低下し、かつ、モータトルクが漸次低下してモータ電流値が漸次低下する。従って、モータ電流値が設定されている所定値未満である場合には、作動オイルの粘度は設定されている所定値未満であるものと判断することができる。モータ電流値が設定されている所定値未満である場合には、暖機運転は不要である。
【0041】
マイクロコンピュータは、ステップ113にて、モータ電流値が所定値未満であるものと判定した場合には、ステップ114にて、電動モータ20aの駆動を停止するとともに、暖機終了フラグFをセット(暖機終了フラグF=1)し、プログラムをステップ111に戻して暖機制御プログラムの実行を継続する。マイクロコンピュータは、ステップ113にて、モータ電流値が所定値以上であるものと判定した場合には、モータ電流値が所定値未満に達するまで電動モータ20aの駆動を継続する。
【0042】
このように、当該前後輪駆動車においては、上記した暖機制御プログラムを実行することにより、ミッションケース21c内に収容されている作動オイルは所定温度以上に保持されて、その粘度が所定値未満に保持される。このため、駆動力伝達機構に対する粘性抵抗が小さくて、当該駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生が防止され、電磁クラッチ装置20cの結合が解除されている場合においては、後輪21b側から電動モータ20a側へのトルクの伝達が規制される。この結果、当該伝達トルクに起因する補助駆動装置20でのトラブルは発生しない。
【0043】
当該暖機制御プログラムでは、作動オイルの粘度を所定値未満に低下させる制御を行うものであって、作動オイルの粘度を判断する基準として電動モータ20aのモータ電流値を採用しているが、モータ電流値に替えて、電動モータ20aのモータトルクを採用することができ、また、作動オイルの温度、粘度等を直接検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る駆動装置を補助駆動装置とする前後輪駆動車の概略的構成図である。
【図2】同補助駆動装置を構成する駆動力伝達機構の全体を示す横断平面図である。
【図3】同駆動力伝達機構を構成する減速ギヤ列における電磁クラッチ装置の配設部位を拡大して示す横断平面図である。
【図4】同補助駆動装置の駆動制御プログラムを実行するためのフローチャートである。
【図5】同補助駆動装置の暖機制御プログラムを実行するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10…主駆動装置、11…エンジン、12…トランスミッション、13…減速ギヤ列、14…フロントディファレンシャル、15…ドライブシャフト、16…前輪、17…ジェネレータ、18…バッテリー、20…補助駆動装置、20a…電動モータ、20b…減速ギヤ列、20c…電磁クラッチ装置、20d…リヤディファレンシャル、21a…ドライブシャフト、21b…後輪、21c…ミッションケース、22a…入力軸、22b…第1ギヤ、22c…第2ギヤ、22d…第3ギヤ、23a…出力軸、23b…第4ギヤ、24a…出力軸、24b…出力ギヤ、25a…ディファレンシャルケース、25b…ピニオン、25c…サイドギヤ、25d…リングギヤ、26a…回転部材、26b…電磁コイル、26c…アーマチャ、26d…リターンスプリング、26e…カムフォロア、C…カム機構。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用駆動装置の一形式として、駆動手段と駆動輪を駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達機構内にクラッチを備え、駆動手段の非作動時にはクラッチの結合を解除して、駆動手段と駆動輪の駆動力伝達可能な連結状態を遮断する構成の車両用駆動装置がある。当該形式の車両用駆動装置の一例が特開2001−253256号公報に示されている。
【0003】
当該形式の駆動装置は、例えば、前後輪駆動車を構成する補助駆動装置に採用されて、前後輪駆動車を構成する主駆動装置とともに作動して、車両を前後両輪駆動(例えば四輪駆動)の走行状態を形成するものである。また、前後輪のいずれか一方の単独駆動(例えば二輪駆動)の走行状態を形成する場合には、補助駆動装置の駆動手段を非作動とするとともに、クラッチの結合を解除して補助駆動装置の駆動手段と駆動輪の駆動力伝達可能な連結状態を遮断するものである。
【0004】
このように、当該形式の駆動装置においては、前後輪のいずれか一方の単独駆動(例えば二輪駆動)の走行時には、クラッチの結合を解除して駆動手段と駆動輪との駆動力伝達可能な連結が遮断されることから、駆動輪側から駆動手段側へのトルク伝達を遮断し得て、駆動輪側から駆動手段側への伝達トルクに起因するトラブルが解消されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、当該形式の駆動装置においては、通常、駆動力伝達機構は作動オイルを収容するケース内、例えば、トランスミッションオイルを収容するトランスミッションのケース内に収容されていて、作動オイルによって、駆動力伝達機構を構成するギヤ、軸受、その他の部品の潤滑、防錆、過熱防止等が図られている。しかしながら、当該作動オイルは粘性を有することから、駆動力伝達機構に対しては粘性抵抗としても作用する。このため、当該作動オイルの粘性が高い場合には、当該駆動力伝達機構内に引きずりトルクが発生して、クラッチの結合が解除されている場合にもかかわらず、駆動輪側から駆動手段側へトルクが伝達されるおそれがあり、当該伝達トルクに起因して駆動装置にトラブルが発生するおそれがある。
【0006】
作動オイルの粘性は、周囲の温度によって大きく影響を受けるもので、寒冷地や寒冷の季節等には粘性が高く、温暖地や温暖の季節等には、粘性は低い範囲にある。このように、作動オイルは寒冷地や寒冷の季節等には粘性が高いことから、この場合の駆動装置では、作動オイルの粘性抵抗に起因する、駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生には十分に対処しなければならない。
【0007】
本発明の目的は、当該形式の駆動装置において、作動オイルの粘性抵抗に起因する駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生を防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両用駆動装置に関するもので、駆動手段と駆動輪を駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達機構内にクラッチを備え、前記駆動手段の非作動時には前記クラッチの結合を解除して、前記駆動手段と前記駆動輪の駆動力伝達可能な連結状態を遮断する形式の車両用駆動装置を適用対象とするものである。
【0009】
しかして、本発明に係る車両用駆動装置においては、前記クラッチの結合解除時に前記駆動力伝達機構を収容するケース内の作動オイルの粘度が所定値以上である場合には、前記駆動手段を駆動して前記作動オイルの粘度を所定値未満に低下させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る駆動装置においては、前記駆動手段として電動モータを採用して、前記作動オイルの粘度を前記電動モータのモータトルクにて検出するようにすることができ、また、前記電動モータのモータトルクを電動モータのモータ電流値にて検出するようにすることができる。
【0011】
本発明に係る駆動装置は、前後輪駆動車を構成する補助駆動装置に採用することができ、これにより、前後輪駆動車を構成する主駆動装置とともに作動して、車両を前後両輪駆動の走行状態を形成することができる。
【0012】
【発明の作用・効果】
本発明に係る駆動装置においては、クラッチの結合解除時に、駆動力伝達機構を収容するケース内の作動オイルの粘度が所定値以上である場合には、駆動手段を駆動させるものである。駆動手段のこのような駆動によって、駆動力伝達機構の一部または全部の部位が駆動して、ケース内に収容されている作動オイルを撹拌する。この結果、ケース内に収容されている作動オイルは、漸次昇温してその粘性を漸次低下させる。作動オイルの粘度が所定値未満に低下した場合には、駆動手段の駆動を停止させる。
【0013】
これにより、ケース内に収容されている作動オイルは所定温度以上に保持されて、その粘度が所定値未満に保持される。このため、駆動力伝達機構に対する粘性抵抗が小さくて、当該駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生が防止され、クラッチの結合が解除されている場合においては、駆動輪側から駆動手段側へのトルクの伝達が確実に規制される。この結果、当該伝達トルクに起因する駆動装置でのトラブルは発生するおそれがない。
【0014】
本発明に係る駆動装置において、駆動手段として電動モータを採用するようにすれば、作動オイルの粘度を電動モータのモータトルクにて検出することができ、また、電動モータのモータトルクを電動モータのモータ電流値にて検出することができ、結果として、作動オイルの粘度をモータ電流値にて容易に検出することができるという利点がある。
【0015】
本発明に係る駆動装置は、このように有用性を有するため、前後輪駆動車を構成する補助駆動装置に採用することができ、これにより、主駆動装置とともに作動して車両を前後両輪駆動の走行状態に形成することができる、前後輪駆動車を好適に構成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、車両用駆動装置に関するものである。図1は、本発明の一例に係る駆動装置を補助駆動装置に採用して構成した前後輪駆動車を示している。当該前後輪駆動車は、主駆動輪である前輪側を駆動する主駆動装置10と、補助駆動輪である後輪側を駆動する補助駆動装置20と、補助駆動装置20を制御する制御装置30を備えている。当該前後輪駆動車においては、補助駆動装置20が本発明に係る車両用駆動装置の一実施形態であり、図2および図3には、当該補助駆動装置20の詳細を示している。
【0017】
当該前後輪駆動車を構成する主駆動装置10は、内燃機関であるエンジン11を備えている。主駆動装置10においては、エンジン11の駆動力は、トランスミッション12、減速ギヤ列13、および、フロントディファレンシャル14を経て各ドライブシャフト15に分配され、各ドライブシャフト15にて前輪16が駆動される。また、主駆動装置10は、ジェネレータ17を備え、ジェネレータ17はエンジン11にて駆動して発電し、発電された電力はバッテリー18に蓄電される。蓄電された電力は、後述する補助駆動装置20を構成する駆動手段である電動モータ20aの駆動エネルギーとして供給される。
【0018】
補助駆動装置20は、電動モータ20a、減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20cおよびリヤディファレンシャル20dを備えている。補助駆動装置20においては、減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20cおよびリヤディファレンシャル20dが駆動力伝達機構を構成していて、電磁クラッチ装置20cは減速ギヤ列20b内の入力側と出力側間に配設されている。
【0019】
電動モータ20aは、必要時、制御装置30からの指令信号に基づいて電力の供給を受けて駆動するもので、電磁クラッチ装置20cが結合状態にある場合には、電動モータ20aの駆動力は、減速ギヤ列20bの入力側から電磁クラッチ装置20cを介して減速ギヤ列20bの出力側へ伝達され、減速ギヤ列20bの出力側からリヤディファレンシャル20dに伝達される。伝達された駆動力は、リヤディファレンシャル20dにて各ドライブシャフト21aに分配されて、各ドライブシャフト21aにて後輪21bが駆動される。
【0020】
制御装置30は、4WDを選択するスイッチの状態を検出するスイッチセンサS1、スロットル開度センサS2、車輪速センサS3、モータ電流値を検出する電流値センサS4等に接続されているもので、MPU(マイクロプロセッサ)および駆動回路を備えている。MPUは、CPUおよびメモリーを備え、メモリーは、電磁クラッチ装置20cや電動モータ20a等を制御する制御プログラムやデータを保持している。制御装置30においては、各センサS1〜S3から出力される検出信号を、インタフェースを介して取込み、MPUは、取込んだ各検出信号に基づいて補助駆動装置20の作動すべき状態を判定し、補助駆動装置20を作動すべきであると判定した場合には、電動モータ20aや電磁クラッチ装置20cを動作すべき指令信号を、インタフェースを介して駆動回路に出力する。
【0021】
駆動回路は、MPUからの指令信号に基づいて、電磁クラッチ装置20cのON(結合)−OFF(遮断)を制御するとともに、電動モータ20aに対する電力の供給を制御するもので、MPUが補助駆動装置20を作動すべきであると判定した場合には、MPUからの指令信号に基づいて、電磁クラッチ装置20cをONして、設定された電圧の電力を電動モータ20aに供給する。これにより、補助駆動装置20は作動して後輪21b側を駆動させ、車両を前後輪駆動状態に形成する。
【0022】
しかして、補助駆動装置20は、図2に示すように、駆動手段である電動モータ20aと被駆動手段である後輪21b側とを駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達機構を構成する減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20cおよびリヤディファレンシャル20dを備えている。減速ギヤ列20bは入力側と出力側に分割されていて、電磁クラッチ装置20cは、減速ギヤ列20bにおける入力側と出力側間に配設されている。
【0023】
減速ギヤ列20bを構成する入力側は、ミッションケース21c内にて回転可能に支持されている入力軸22a、入力軸22a上に一体回転可能に組付けられている第1ギヤ22b、入力軸22a上に一体に形成されている第2ギヤ22c、出力側を構成する出力軸23a上に回転可能に組付けられている第3ギヤ22dにて構成されている。第1ギヤ22bは、ミッションケース21cに設置された電動モータ20aの出力軸24aに一体に形成されている出力ギヤ24bに噛合している。
【0024】
減速ギヤ列20bを構成する出力側は、ミッションケース21c内にて回転可能に支持されている出力軸23a、出力軸23a上に一体回転可能に組付けられている第4ギヤ23bにて構成されている。出力軸23aは、入力軸22aとは並列的に支持されていて、第4ギヤ23bはリヤディファレンシャル20dの入力手段であるリングギヤ25dに噛合している。出力軸23a上に回転可能に組付けられている入力側の第3ギヤ22dは、入力側の第2ギヤ22cに噛合している。
【0025】
リヤディファレンシャル20dは、それ自体公知のもので、ミッションケース21c内にて回転可能に支持されているディファレンシャルケース25a、同ケース25a内に収容されている一対のピニオン25b、両ピニオン25bに噛合する一対のサイドギヤ25c、および、ディファレンシャルケース25aの外周縁部に固定されているリングギヤ25dを備えている。当該リヤディファレンシャル20dにおいては、減速ギヤ列20bからの駆動力はリングギヤ25dを介して伝達され、入力された駆動力は、各サイドギヤ25cに連結する各ドライブシャフト21a側へ分配される。これにより、両後輪21bが駆動して、車両が前後輪駆動状態に形成される。
【0026】
減速ギヤ列20bの入力側と出力側間に配置されている電磁クラッチ装置20cは、出力軸23a上に組付けられている。電磁クラッチ装置20cは、図3に示すように、出力軸23aの外周上に一体的に組付けられている第1の部材である円盤状の回転部材26a、回転部材26aの環状凹所にヨークに支持されて嵌合して組付けられている電磁コイル26b、出力軸23aの外周上に回転可能に組付けられて回転部材26aの外側面側に位置するクラッチ部材であるアーマチャ26c、回転部材26aとアーマチャ26c間に介装されているリターンスプリング26dを備えるとともに、アーマチャ26cと第2の部材である第3ギヤ22d間に配置されているカム機構Cを備えている。
【0027】
電磁クラッチ装置20cにおいては、回転部材26aとアーマチャ26c間が摩擦クラッチに構成されている。当該摩擦クラッチを構成するアーマチャ26cは、非作動時には、ばね部材を構成するリターンスプリング26dの付勢作用にて回転部材26aとは離間していて、電磁コイル26bへの電流の印加によって生じる磁力の作用により、リターンスプリング26dに抗して回転部材26aの外側面側に吸引されて、回転部材26aの外側面に摩擦係合する。
【0028】
カム機構Cは、減速ギヤ列20bを構成する入力側の第3ギヤ22dを第1カム部材とし、これに対向するアーマチャ26cを第2カム部材とするもので、第1カム部材である第3ギヤ22dと第2カム部材であるアーマチャ26cの互いの対向面に形成されている互いに対向するカム溝にカムフォロア26eを嵌合して構成されている。
【0029】
かかる構成の電磁クラッチ装置20cにおいては、電磁コイル26bへの電流の印加が停止されている非作動時には、アーマチャ26cはリターンスプリング26dによって第3ギヤ22d側へ付勢されていて、電磁クラッチ20cは、電磁コイル26bへ電流を印加することによって作動する。
【0030】
すなわち、非作動中の電磁クラッチ装置20cにおいて、その電磁コイル26bへ電流を印加すると、これにより生じる磁力の作用にて、アーマチャ26cがリターンスプリング26dに抗して回転部材26aの外側面側に吸引されて、アーマチャ26cは回転部材26aの外側面に摩擦係合し、減速ギヤ列20bの入力側である第3ギヤ22dと出力側である出力軸23aを駆動力伝達可能に連結する。この際、カム機構Cが作動して、アーマチャ26cの回転部材26aの外側面に対する摩擦係合力を増大して、アーマチャ26cと回転部材26aを互いに結合させる。
【0031】
当該前後輪駆動車は、主駆動装置10を構成するエンジン11を始動することで、前輪駆動の二輪駆動走行状態を形成することができるとともに、4WDを選択する4WDスイッチをON操作した場合には、制御装置30は補助駆動装置20の作動を制御して、前後両輪駆動の四輪駆動走行状態を形成する。
【0032】
補助駆動装置20の制御では、制御装置30は、4WDスイッチの操作状態を検出するスイッチセンサS1、スロットル開度センサS2、車輪速センサS3から出力される検出信号を、インタフェースを介して取込み、MPUは、取込んだ各検出信号に基づいて補助駆動装置20の作動すべき状態を判定し、補助駆動装置20を作動すべきであると判定した場合には、電動モータ20aを動作すべき指令信号を、インタフェースを介して駆動回路に出力する。駆動回路は、MPUからの指令信号に基づいて、設定された電圧の電力を電動モータ20aに供給する。制御装置30は、補助駆動装置20の駆動制御のプログラムを、図4に示すフローチャートに基づいて実行する。
【0033】
制御装置30は、エンジン11の始動時に動作し、制御装置30を構成するマイクロコンピュータは、ステップ101にて4WDスイッチのON−OFF状態を判定し、4WDスイッチがOFF状態にあるものと判定した場合にはプログラムをステップ102に進め、クラッチをOFF状態に保持してプログラムの実行を終了する。また、マイクロコンピュータは、ステップ101にて4WDスイッチがON状態にあるものと判定した場合にはプログラムをステップ103に進める。
【0034】
マイクロコンピュータは、ステップ103では、スロットル開度、車輪速から補助駆動装置20の駆動制御すべき状態か否かの判定を行う。マイクロコンピュータは、ステップ103にて、補助駆動装置20を駆動制御すべき状態ではないと判定した場合には、ステップ104にてクラッチをOFF状態に保持し、ステップ105にて電動モータ20aを非駆動状態に保持してプログラムの実行を終了する。
【0035】
また、マイクロコンピュータは、ステップ103にて、補助駆動装置20を駆動制御すべき状態であるものと判定した場合には、プログラムをステップ106に進め、ステップ106にてクラッチをONするとともに、ステップ107にて電動モータ20aを駆動する。これにより、車両は前後両輪の四輪駆動状態に形成される。
【0036】
制御装置30は、上記した補助駆動装置20の基本的な駆動制御プログラムを備えるとともに、電磁クラッチ装置20cの結合が遮断されている状態にある場合に、補助駆動装置20の暖機運転を行う暖機制御プログラムを備えている。当該暖機制御プログラムは、例えば寒冷状態において、ミッションケース21cに収容されている作動オイルが低温であって、作動オイルの粘性が高い場合に電動モータ20aの駆動を制御することにより、減速ギヤ列20bを駆動して作動オイルを撹拌し、その撹拌力によって作動オイルを昇温して、作動オイルの粘性を所定値未満に低下させることを意図しているものである。
【0037】
これにより、作動オイルは所定温度以上に保持されて、その粘度が所定値未満に保持される。このため、駆動力伝達機構を構成する減速ギヤ列20b、電磁クラッチ装置20c、リヤディファレンシャル20dに対する粘性抵抗が小さくて、当該駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生が防止される。この結果、電磁クラッチ装置20cの結合が解除されている場合においては、後輪21b側から電動モータ20a側へのトルクの伝達が規制され、このため、補助駆動装置20での当該伝達トルクに起因するトラブルの発生は防止される。
【0038】
制御装置30は、補助駆動装置20の暖機制御のプログラムを、図5に示すフローチャートに基づいて実行する。当該フローチャートに示す暖機終了フラグFは、暖機運転をすべきか否かの決定を判断する基準とするもので、エンジン11の始動に基づく暖機制御プログラムの実行開始後初期状態(暖機終了フラグF=0)にセットされるとともに、ミッションケース21c内の作動オイルが設定されている所定温度以上であって、その粘度が設定されている所定粘度未満にある場合には、暖機終了フラグF=1にセットされる。従って、暖機終了フラグF=1である場合には、暖機運転が不要であることを示している。
【0039】
制御装置30を構成するマイクロコンピュータは、ステップ111にて、暖機終了フラグFがセットされているか否か、換言すれば、暖機終了フラグF=1か否かを判定する。マイクロコンピュータは、ステップ111にて、暖機終了フラグF=1であるものと判定した場合には、暖機運転不要であると判断して制御プログラムを終了する。また、マイクロコンピュータは、ステップ111にて、暖機終了フラグF=1ではないものと判定した場合には、プログラムをステップ112に進め、ステップ112にて、電動モータ20aを駆動して暖機運転を行わせて、プログラムをステップ113に進め、ステップ113にて、電動モータ20aのモータ電流値の大小を判定する。
【0040】
モータ電流値は、電動モータ20aのモータトルクに関連し、モータトルクは作動オイルの粘性抵抗に関連し、作動オイルの粘性抵抗は作動オイルの粘度に関連し、かつ、作動オイルの粘度は作動オイルの温度に関連する。電動モータ20aの駆動によって減速ギヤ列20bが駆動し、その撹拌作用によってミッションケース21c内の作動オイルが漸次昇温した場合には、作動オイルの粘度が漸次低下し、作動オイルの粘性抵抗が漸次低下し、かつ、モータトルクが漸次低下してモータ電流値が漸次低下する。従って、モータ電流値が設定されている所定値未満である場合には、作動オイルの粘度は設定されている所定値未満であるものと判断することができる。モータ電流値が設定されている所定値未満である場合には、暖機運転は不要である。
【0041】
マイクロコンピュータは、ステップ113にて、モータ電流値が所定値未満であるものと判定した場合には、ステップ114にて、電動モータ20aの駆動を停止するとともに、暖機終了フラグFをセット(暖機終了フラグF=1)し、プログラムをステップ111に戻して暖機制御プログラムの実行を継続する。マイクロコンピュータは、ステップ113にて、モータ電流値が所定値以上であるものと判定した場合には、モータ電流値が所定値未満に達するまで電動モータ20aの駆動を継続する。
【0042】
このように、当該前後輪駆動車においては、上記した暖機制御プログラムを実行することにより、ミッションケース21c内に収容されている作動オイルは所定温度以上に保持されて、その粘度が所定値未満に保持される。このため、駆動力伝達機構に対する粘性抵抗が小さくて、当該駆動力伝達機構内での引きずりトルクの発生が防止され、電磁クラッチ装置20cの結合が解除されている場合においては、後輪21b側から電動モータ20a側へのトルクの伝達が規制される。この結果、当該伝達トルクに起因する補助駆動装置20でのトラブルは発生しない。
【0043】
当該暖機制御プログラムでは、作動オイルの粘度を所定値未満に低下させる制御を行うものであって、作動オイルの粘度を判断する基準として電動モータ20aのモータ電流値を採用しているが、モータ電流値に替えて、電動モータ20aのモータトルクを採用することができ、また、作動オイルの温度、粘度等を直接検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る駆動装置を補助駆動装置とする前後輪駆動車の概略的構成図である。
【図2】同補助駆動装置を構成する駆動力伝達機構の全体を示す横断平面図である。
【図3】同駆動力伝達機構を構成する減速ギヤ列における電磁クラッチ装置の配設部位を拡大して示す横断平面図である。
【図4】同補助駆動装置の駆動制御プログラムを実行するためのフローチャートである。
【図5】同補助駆動装置の暖機制御プログラムを実行するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10…主駆動装置、11…エンジン、12…トランスミッション、13…減速ギヤ列、14…フロントディファレンシャル、15…ドライブシャフト、16…前輪、17…ジェネレータ、18…バッテリー、20…補助駆動装置、20a…電動モータ、20b…減速ギヤ列、20c…電磁クラッチ装置、20d…リヤディファレンシャル、21a…ドライブシャフト、21b…後輪、21c…ミッションケース、22a…入力軸、22b…第1ギヤ、22c…第2ギヤ、22d…第3ギヤ、23a…出力軸、23b…第4ギヤ、24a…出力軸、24b…出力ギヤ、25a…ディファレンシャルケース、25b…ピニオン、25c…サイドギヤ、25d…リングギヤ、26a…回転部材、26b…電磁コイル、26c…アーマチャ、26d…リターンスプリング、26e…カムフォロア、C…カム機構。
Claims (4)
- 駆動手段と駆動輪を駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達機構内にクラッチを備え、前記駆動手段の非作動時には前記クラッチの結合を解除して、前記駆動手段と前記駆動輪の駆動力伝達可能な連結状態を遮断する構成の車両用駆動装置であり、前記クラッチの結合解除時に前記駆動力伝達機構を収容するケース内の作動オイルの粘度が所定値以上である場合には、前記駆動手段を駆動して前記作動オイルの粘度を所定値未満に低下させることを特徴とする車両用駆動装置。
- 請求項1に記載の車両用駆動装置において、前記駆動手段は電動モータであって、前記作動オイルの粘度を前記電動モータのモータトルクにて検出することを特徴とする車両用駆動装置。
- 請求項2に記載の車両用駆動装置において、前記電動モータのモータトルクを電動モータのモータ電流値にて検出することを特徴とする車両用駆動装置。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置であり、当該駆動装置は前後輪駆動車を構成する補助駆動装置であって、前後輪駆動車を構成する主駆動装置とともに作動して車両を前後両輪駆動の走行状態を形成するものであることを特徴とする車両用駆動装置。
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Cited By (1)
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JP2013233610A (ja) * | 2012-05-08 | 2013-11-21 | Fanuc Ltd | 工作機械の暖機運転制御装置 |
-
2002
- 2002-08-12 JP JP2002234778A patent/JP2004074851A/ja active Pending
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JP2013233610A (ja) * | 2012-05-08 | 2013-11-21 | Fanuc Ltd | 工作機械の暖機運転制御装置 |
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