JP2004074425A - 粉末成形板切断片の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を介して支持シートに固定された粉末成形板を切断する工程1と、前記粘着剤層に光を照射する工程2と、前記粉末成形板から前記支持シートを剥離する工程3とを有することを特徴とする粉末成形板切断片の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容易にかつ高い効率で粉末成形板を切断して、寸法精度の高い粉末成形板切断片を得ることができる粉末成形板切断片の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セラミックコンデンサチップ形成用の切断片を製造する方法としては、セラミックの粉末、バインダ及び溶剤の混合物を成形して得た未焼結のセラミックシートに所定の内部電極を印刷しつつ、これをアルミニウム板等からなる台座の上に粘着テープを介して固定された枠の中に重ね置いて圧着し、次いで、これを小片に打抜いて切断片を得るというシート法(積層法)が知られている。
【0003】
しかし、未焼結のセラミックシートのような粉末成形板は変形したり破損ししたりしやすいため、所定の枠内に変形や破損することなく収めることが困難であり、製造効率や歩留まりに劣るという問題があった。また、セラミックコンデンサチップ形成用の切断片のように、寸法精度に優れる切断片を得る必要がある場合には高精度の位置決めとその切断が不可欠なため、位置決め性に劣る枠方式では歩留まりが低かった。
【0004】
これに対して特開昭63−30206号公報には、粘着シートで粉末成形板を固着する粘着シート方式が記載されており、更に、切断後に粘着シートと粉末成形板とを容易に剥離できるように、光照射により硬化する感圧性接着剤と発泡剤との配合物からなる硬化発泡タイプの接着力消失型感圧接着剤により粘着シートと粉末成形板とを接着する方法が提案されている。
この粘着シート方式によれば枠内に収める必要がないので粉末成形板を変形したり破損したりすることがないうえ、粉末成形板の良接着性により高精度の位置決めが容易であることから寸法精度の高い切断片を得ることができた。更に、切断後には、硬化させ発泡剤を発泡させることにより粘着剤層の接着力を低下させ、得られた粉末成形板の切断片を変形や破損することなく粘着シートより取り外すことができた。
【0005】
しかしながら、この方法では発泡剤を発泡させることにより粘着剤層の表面に凹凸を生じさせることにより剥離を行うことから、剥離の際に粉末成形板の切断片が動いてしまい、その高さや位置が揃わず、後のピックアップ作業が困難になるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、容易にかつ高い効率で粉末成形板を切断して、寸法精度の高い粉末成形板切断片を得ることができる粉末成形板切断片の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明1は、光による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を介して支持シートに固定された粉末成形板を切断する工程1と、前記粘着剤層に光を照射する工程2と、前記粉末成形板から前記支持シートを剥離する工程3とを有する粉末成形板切断片の製造方法である。
【0008】
本発明2は、熱による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を介して支持シートに固定された粉末成形板を切断する工程1と、前記粘着剤層を加熱する工程2と、前記粉末成形板から前記支持シートを剥離する工程3とを有する粉末成形板切断片の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の粉末成形板切断片の製造方法では、粉末成形板を粘着剤層を介して支持シートに固定する。支持シートに固定することにより、切断する際に高精度の位置決めが容易であり、寸法精度の高い切断片を得ることができる。
上記粉末成形板としては特に限定されないが、セラミックコンデンサ形成用等の未焼結のセラミックシートを圧着したもののように柔らかくてかつ脆いものである場合に、特に本発明の方法は有効である。
【0010】
上記支持シートとしては特に限定されないが、特に本発明1においては上記粘着剤層に光を照射できるよう光透過性を有するものが好ましい。なかでも、強度等の点から、ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等の比較的硬くて自己支持性を有するフィルムが好適である。
上記支持シートの厚さとしては特に限定されないが、25〜500μmが好適である。
【0011】
上記粘着剤層は、本発明1においては光による刺激により気体を発生する気体発生剤を、本発明2においては熱による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する。なお、本明細書において光とは、赤外線、可視光線、紫外線だけでなく、電子線、エックス線、中性子線等の電離放射線をも包含するものである。
【0012】
上記気体発生剤は、上記粘着剤層中に粒子として存在しないものであることが好ましい。なお、本明細書において、気体発生剤が粘着剤層中に粒子として存在しないとは、電子顕微鏡により粘着剤層の断面を観察したときに気体発生剤を確認することができないことを意味する。上記粘着剤層中に気体発生剤が粒子として存在すると、気体を発生させたときに粘着剤層の表面に顕著な凹凸が生じることがあり、また、紫外線等を照射したときに粒子の界面で紫外線が散乱して気体発生効率が低くなってしまったり、上記粘着剤層の表面平滑性が悪くなったりすることがある。
【0013】
上記気体発生剤を粒子として存在しないようにするには、通常、上記粘着剤層を構成する粘着剤中に溶解する気体発生剤を選択するが、上記粘着剤層を構成する粘着剤中に溶解しない気体発生剤を選択する場合には、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることにより上記粘着剤層中に気体発生剤を微分散させる。この場合、気体発生剤は、微小な粒子状であることが好ましい。更に、これらの微粒子は、例えば、分散機や混練装置等を用いて必要に応じてより細かい微粒子とすることが好ましい。すなわち、電子顕微鏡により上記粘着剤層を観察したときに気体発生剤を確認することができない状態まで分散させることがより好ましい。
【0014】
上記気体発生剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ化合物又はアジト化合物が好適である。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0015】
なかでも、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)等の下記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物が好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ低級アルキル基を表し、R3は、炭素数2以上の飽和アルキル基を表す。なお、R1とR2は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
上記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物は、耐熱性に優れ、高温での使用及び安定した貯蔵が可能である。耐熱性が低いと、キャストにより成形して乾燥する際に発泡を生じてしまったり、経時的に分解反応を生じて分解残渣がブリードしてしまったり、経時的に気体を発生して貼り合わせた被着体との界面に浮きを生じさせてしまったりすることがある。
また、上記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物は、後述する光による刺激を与えることにより接着力が低下するアクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマー等を含んでなる光硬化型の接着性樹脂等への溶解性にも優れ、接着性物質中に粒子として存在しないものとすることができる。
【0019】
上記アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド等や、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、光、熱及び衝撃等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0020】
これらの気体発生剤のうち、上記アジド化合物は衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出することから、取扱いが困難であるという問題がある。更に、上記アジド化合物は、いったん分解が始まると連鎖反応を起こして爆発的に窒素ガスを放出しその制御ができないことから、爆発的に発生した窒素ガスによって粉末成形板が損傷することがあるという問題もある。このような問題から上記アジド化合物の使用量は限定されるが、限定された使用量では充分な効果が得られないことがある。
一方、上記アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり衝撃によっては気体を発生しないことから取扱いが極めて容易である。また、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないため粉末成形板を損傷することもなく、光の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから、用途に合わせた接着性の制御が可能であるという利点もある。従って、上記気体発生剤としては、アゾ化合物を用いることがより好ましい。
【0021】
上記気体発生剤から発生した気体の少なくとも一部は、上記粘着剤層外へ放出される。これにより、上記粘着剤層を介して接着した支持シートと粉末成形板との接着面に光を照射すると、気体発生剤から発生した気体が被着体から接着性物質の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させるため、容易に支持シートと粉末成形板とを剥離することができる。
【0022】
上記粘着剤層は、更に光増感剤も含有することが好ましい。上記光増感剤としては特に限定されないが、例えば、チオキサントン増感剤等が好適である。
上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、光増感剤を含有することにより、気体発生剤の感光領域以外の波長領域の光の照射により気体発生剤から気体を放出させることができる。また、粘着性物質に含有させる気体発生剤と光増感剤との量を調整することにより、気体の発生に必要な光量、気体発生にかかる時間等を自由に制御することができ、用途に合わせた性質を付与することができる。なお、チオキサントン増感剤は光重合開始剤としても用いることができる。
【0023】
本発明1の方法によれば、光を照射することにより気体発生剤から発生した気体により接着力が低下することから、加熱等により粉末成形板を損傷することなく支持シートを剥がすことができる。また、本発明2の方法でも、発泡剤を発泡させるのに要する熱量に比べれば、上記気体発生剤から気体を発生させるのに要する熱量は少なく、ほとんど粉末成形板に影響を与えることがない。
この際、気体発生剤から発生した気体は大部分粘着層外へ放出されることが好ましい。ただしこの場合であっても、粘着剤層が発泡して凝集力が著しく低下しない限りは、発生した気体の一部が気泡として粘着剤層中に存在していてもかまわない。
【0024】
上記気体発生剤を含有する粘着剤は、刺激により接着力が低下するものであることが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等からなるものが挙げられる。
【0025】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0026】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0027】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0028】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0029】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記後硬化型粘着剤には、以上の成分のほか、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。
【0033】
上記光硬化型接着性樹脂又は熱硬化型接着性樹脂等の後硬化型接着性樹脂は、光又は熱による刺激により接着性樹脂の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化によるゴム状領域のtanδの減少が著しくなり、粘着力が大きく低下する。このような後硬化型接着性樹脂からなる粘着剤層に光又は熱等による刺激を与えると、粘着剤層全体の弾性率が上昇して硬化するため、気体発生剤から発生した気体が気泡として粘着剤層中に留まりにくくなり、粘着剤層外への放出が促進される。放出された気体は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0034】
本発明の粉末成形板切断片の製造方法では、まず、上述のように光による刺激により気体を発生する気体発生剤又は熱による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を介して支持シートに固定された粉末成形板を切断する工程1を行う。
上記切断の方法としては特に限定されず、例えば、回転刃方式、ナイフによる切り込み方式等の公知の方法が用いられる。なお、切断に際しては得られた切断片を容易に支持シートから剥離できるように、上記粘着剤層をも同時に切断することが好ましい。また、工程2の光照射を円滑に行うため、支持シートは分断しないで一体化の状態に残しておくことが好ましい。
【0035】
次いで、上記粘着剤層に光を照射又は加熱する工程2を行う。上記粘着剤層に光を照射又は加熱することにより、気体発生剤から気体が発生し、発生した気体が粘着面の少なくとも一部を剥がすことにより支持シートと切断した粉末成形板の切断片とを剥離することができる。
【0036】
最後に、粉末成形板から支持シートを剥離する工程3を行う。工程2において光を照射又は加熱することにより、粉末成形板切断片と支持シートとはほぼ完全に剥離しているので、適当な方法により容易に粉末成形板切断片をピックアップすることができる。
【0037】
本発明の粉末成形板切断片の製造方法によれば、粉末成形板を支持シートに固定することにより、切断する際に高精度の位置決めが容易であり、寸法精度の高い切断片を得ることができる。切断後には、光を照射又は加熱することにより、容易に支持シートを粉末成形板切断片から剥離することができる。
本発明の粉末成形板切断片の製造方法では、気体発生剤から気体が発生させても、発泡剤を用いた場合のように粘着剤層の表面に顕著な凹凸が生じないことから、剥離した粉末成形板切断片が動くことなく高さや位置が揃っており、後のピックアップ工程を極めて容易に行うことができる。更に、本発明1の粉末成形板切断片の製造方法においては、光照射により気体発生剤から気体を発生させる方式であることから、ある特定部分にのみ光照射を行い他の部分には照射しないことにより、特定部分に固定された粉末成形板切断片のみを剥離してピックアップすることが可能である。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
(1)支持シートの作製
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート20重量部、光重合開始剤(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)0.5重量部、ポリイソシアネート1.5重量部を混合し粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.02重量部
粘着剤(1)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)100重量部混合して、気体発生剤を含有する粘着剤(2)を調製した。
【0040】
粘着剤(2)の酢酸エチル溶液を表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約10μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(2)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。その後、40℃、3日間静置養生を行った。
粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を、コロナ処理を施した厚さ100μmの透明なポリエステルフィルムの片面に乾燥皮膜の厚さが約15μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(1)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。その後、40℃、3日間静置養生を行った。
ポリエステルフィルムの粘着剤(1)層を保護する表面に離型処理が施されたPETフィルムを剥がし、粘着剤(2)層が形成された表面に離型処理が施されたPETフィルムの粘着剤(2)層と貼り合わせた。これにより表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護され、粘着剤(1)層の表層部分に粘着剤(2)からなる層が形成された支持シートを得た。
【0041】
(2)粉末成形板切断片の製造
得られた支持シートを、粘着剤層を設けていない面を介して、多数の吸引孔を有するアルミニウム製の平板上に載せて吸引下に支持シートを固定した。
この支持シート上に、BaTiO3とCaTiO3合計65重量部、メチルメタ
アクリレート系共重合体15重量部及びトルオールとブタノール合計20重量部の組成からなり、厚さ0.05mm、大きさ100mm×100mmのセラミックコンデンサ形成用の未焼結のセラミックシートの定位置に内部電極を印刷しながらその20枚を順次重ね置き、100kg/cm2の力で押圧してセラミック板とした。
【0042】
次いで、得られたセラミック板をカッターでポリエステルフィルム部分まで切り込みながら大きさ1.5mm×2.5mm角の切断片に切断した。
切断後吸引を解除して支持シートの固定状態を解いたのちポリエステルフィルム側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が40mW/cm2となるよう照度を調節して2分間照射した。
その結果、切断片は支持シートより剥離した。剥離時に、切断片の位置は変わることなく、回収された切断片に変形、破損は認められなかった。
【0043】
(実施例2)
(1)支持シートの作製
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート20重量部、光重合開始剤(イルガキュア819、50%酢酸エチル溶液)0.5重量部、ポリイソシアネート1.5重量部を混合し粘着剤(3)の酢酸エチル溶液を調製した。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.02重量部
粘着剤(3)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)100重量部混合して、気体発生剤を含有する粘着剤(4)を調製した。
【0044】
粘着剤(4)の酢酸エチル溶液を表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約10μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(4)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。その後、40℃、3日間静置養生を行った。
粘着剤(3)の酢酸エチル溶液を、コロナ処理を施した厚さ100μmの透明なポリエステルフィルムの片面に乾燥皮膜の厚さが約15μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(3)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。その後、40℃、3日間静置養生を行った。
ポリエステルフィルムの粘着剤(3)層を保護する表面に離型処理が施されたPETフィルムを剥がし、粘着剤(4)層が形成された表面に離型処理が施されたPETフィルムの粘着剤(4)層と貼り合わせた。これにより表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護され、粘着剤(3)層の表層部分に粘着剤(4)からなるプライマー層が形成された支持シートを得た。
【0045】
(2)粉末成形板切断片の製造
得られた支持シートを、粘着剤層を設けていない面を介して、多数の吸引孔を有するアルミニウム製の平板上に載せて吸引下に支持シートを固定した。
この支持シート上に、BaTiO3とCaTiO3合計65重量部、メチルメタ
アクリレート系共重合体15重量部及びトルオールとブタノール合計20重量部の組成からなり、厚さ0.05mm、大きさ100mm×100mmのセラミックコンデンサ形成用の未焼結のセラミックシートの定位置に内部電極を印刷しながらその20枚を順次重ね置き、100kg/cm2の力で押圧してセラミック板とした。
【0046】
次いで、得られたセラミック板をカッターでポリエステルフィルム部分まで切り込みながら大きさ1.5mm×2.5mm角の切断片に切断した。
切断後吸引を解除して支持シートの固定状態を解いた後、超音波加熱装置(本多電子社製、SONAC−150)により加熱した。
その結果、切断片は支持シートより剥離した。剥離時に、切断片の位置は変わることなく、回収された切断片に変形、破損は認められなかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、容易にかつ高い効率で粉末成形板を切断して、寸法精度の高い粉末成形板切断片を得ることができる粉末成形板切断片の製造方法を提供できる。
Claims (8)
- 光による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を介して支持シートに固定された粉末成形板を切断する工程1と、
前記粘着剤層に光を照射する工程2と、
前記粉末成形板から前記支持シートを剥離する工程3とを有する
ことを特徴とする粉末成形板切断片の製造方法。 - 熱による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を介して支持シートに固定された粉末成形板を切断する工程1と、
前記粘着剤層を加熱する工程2と、
前記粉末成形板から前記支持シートを剥離する工程3とを有する
ことを特徴とする粉末成形板切断片の製造方法。 - 気体発生剤は、粘着剤層中に粒子として存在しないことを特徴とする請求項1又は2記載の粉末成形板切断片の製造方法。
- 気体発生剤は、アゾ化合物であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粉末成形板切断片の製造方法。
- 気体発生剤は、アジド化合物であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粉末成形板切断片の製造方法。
- 気体発生剤を含有する粘着剤は、刺激により接着力が低下するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の粉末成形板切断片の製造方法。
- 粉末成形板は、未焼結のセラミックシートを圧着したものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の粉末成形板切断片の製造方法。
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