JP2004074312A - 切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性等の切削性能を、安定的かつ良好に発揮することができる硬質被膜を備えた切削工具を提供すること。
とができる硬質被膜を備えた切削工具及びホルダ付き工具を提供すること。
【解決手段】切削工具(1)は、JIS規格K10相当の超硬合金の硬質材料からなる基材(3)を、ISO規格DCGT11T301の形状に研磨加工し、その表面に硬質被膜(5)を形成したスローアウェイチップである。切削工具(1)は、その基材(3)の表面に、厚さ0.5〜5μmの範囲内のTiAlN系の硬質被膜(5)が形成されている。また、硬質被膜(5)を構成する粒子の平均粒径は、1μm以下である。更に、切削工具(1)の硬質被膜(5)の先端側厚みTeと内側厚みTiとの比が、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内となるように設定されてる。
【選択図】 図2
とができる硬質被膜を備えた切削工具及びホルダ付き工具を提供すること。
【解決手段】切削工具(1)は、JIS規格K10相当の超硬合金の硬質材料からなる基材(3)を、ISO規格DCGT11T301の形状に研磨加工し、その表面に硬質被膜(5)を形成したスローアウェイチップである。切削工具(1)は、その基材(3)の表面に、厚さ0.5〜5μmの範囲内のTiAlN系の硬質被膜(5)が形成されている。また、硬質被膜(5)を構成する粒子の平均粒径は、1μm以下である。更に、切削工具(1)の硬質被膜(5)の先端側厚みTeと内側厚みTiとの比が、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内となるように設定されてる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性や耐欠損性等に優れた硬質被膜を表面に被覆した切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、超硬合金やサーメット等、高い耐摩耗性を要求される切削工具は、工具の基材表面に、TiNやTiCN等の硬質被膜を形成することにより、耐摩耗性の向上が図られている。
【0003】
特に物理蒸着法(PVD)は、低温での硬質被膜の形成が可能なため、基材の強度低下を生じることなく、耐摩耗性の向上が図れるため、近年益々その用途が広がっている。
しかし、この物理蒸着法は、被覆温度が低いことにより、化学蒸着法(CVD)に比べて、基材との密着強度が低いという傾向がある。
【0004】
また、物理蒸着法により形成された硬質被膜は、通常、残留圧縮応力が高いために、特に刃先が鋭い(鋭角な刃先の)切削工具に使用した場合には、硬質被膜が自身の応力に耐えられずに、自己破壊を起こして基材が露出することがあり、その場合には、切削性能が安定しなかったり、最悪の場合には、性能の低下を招くことがあった。
【0005】
この対策として、従来より、硬質被膜の剥離を生じない範囲に被覆条件を調整して、コーティングを実施している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現状では、コーティングのバラツキや、基材の形状、表面状態等の影響で、剥離を完全に抑制するのは困難な状態にある。
また、剥離を生じないコーティングの条件として、被膜の膜厚を薄くしたり、金属成分比を高めて軟被膜にする方法が考えられているが、この場合には、性能が低下する傾向にあり、性能的に満足のいくものではなかった。
【0007】
更に、場合によっては、硬質被膜の膜表面に、粗大な粒子が多数存在した状態のこともあり、その粒子の脱落により性能が不安定になるという問題もあった。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐摩耗性等の切削性能を、安定的かつ良好に発揮することができる硬質被膜を備えた切削工具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、物理蒸着法によって、基材の表面に、0.5〜5μmの厚みの硬質被膜を形成した切削工具において、前記切削工具の刃先先端部におけるすくい面側の硬質被膜の厚み(以下先端側厚みとも記す)Teと、前記基材の刃先先端部から0.2mm内部の位置におけるすくい面側の硬質被膜の厚み(以下内側厚みとも記す)Tiとの比Te/Tiが、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内であることを特徴としている。
【0009】
本発明において、硬質被膜の厚みを、0.5〜5μmの範囲としたのは、0.5μm未満では、所望の切削性能(例えば通常の使用に耐える程度の耐摩耗性)が得られないし、5μmを超えると、硬質被膜の残留応力が高くなり過ぎるため、被膜の剥離を制御することが困難になり、性能が低下してしまうためである。
【0010】
特に本発明にて、硬質被膜の先端側厚みTeと内側厚みTiとの比(以下単に硬質被膜の厚みの比とも記す)Te/Tiを、1.5以下としたのは、この範囲では、刃先と内部との残留応力差が少なく、よって、刃先における硬質被覆の剥離の発生を抑制できるとともに、剥離に到らないクラックの発生も抑制できるからである。従って、後の実験例でも示す様に、本発明の切削工具は、耐摩耗性(ひいては耐欠損性や耐熱衝撃性)に優れている。
【0011】
また、硬質被膜の厚みの比Te/Tiを、1.0以上としたのは、1.0未満は、(通常、刃先の方が硬質被膜が厚くなるので)原理的に生ずる可能性は低く、性能的にも満足のいくものではないからである。
尚、ここで、硬質被膜の厚みの比Te/Tiとは、後の実施例及び図2等に示す様に、切削工具のすくい面側の角部である刃先先端部におけるすくい面側の硬質被膜の厚み(従ってすくい面からの高さ)Teと、基材のすくい面側の角部である刃先先端部から0.2mm内部の位置におけるすくい面側の硬質被膜の厚みTiとの比Te/Tiである。また、硬質被膜の内側厚みTiを測定する位置は、基材の刃先先端部から切削工具の軸中心方向に、0.2mm内側における厚みである。
【0012】
(2)請求項2の発明では、前記硬質被膜の厚みTeと、前記硬質被膜の厚みTiとの比Te/Tiが、1.2≦Te/Ti≦1.3の範囲内であることを特徴としている。
本発明は、硬質被膜の厚みの比Te/Tiに関して、より好ましい範囲を例示したものである。この範囲であれば、後の実験例に示す様に、耐摩耗性等の一層優れた効果が得られる。
【0013】
(3)請求項3の発明では、前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミック、及びハイスのうち、いずれか1種を主成分とする硬質材料からなることを特徴としている。
本発明は、基材を構成する硬質材料を例示したものである。尚、基材の全材料が、前記硬質材料のみからなるものが一層好適である。
【0014】
(4)請求項4の発明では、前記硬質被膜は、下記式(1)で表される材料からなることを特徴としている。
(Tix、Aly、Mez)a(Nα、Cβ、Oγ、Bδ)b・・(1)
但し、x+y+z=1 (0≦x、y、z≦1)
α+β+γ+δ=1 (0≦α、β、γ、δ≦1)
0.8≦a/b≦1.2
本発明は、硬質被膜を構成する材料(例えば固溶体)を例示したものである。尚、Meは、金属成分を示している。
【0015】
例えばTiAl系の硬質被膜の場合には、金属成分として、TiAlに特に限定されるものではなく、高硬度で高耐摩耗性の被膜を形成し得るものであれば、TiAl合金に4a,5a,6a族金属やSi、Yおよび希土類元素等の金属成分を若干固溶した組成の物でも良い。また、TiとAl、あるいはその他の金属成分比も特に限定されるものではない。さらに、金属成分以外に含有される軽元素においても、窒素のみでなく、炭素や酸素、ホウ素等からなる化合物であっても良い。
【0016】
(5)請求項5の発明では、前記硬質被膜は、TiAlN、TiN、TiC、及びTiCNのうち、いずれか1種を主成分とする材料からなることを特徴としている。
本発明は、硬質被膜を構成する好適な材料(例えば固溶体)を例示したものである。尚、硬質被膜の全材料が、前記材料のみからなるものが一層好適である。
【0017】
(6)請求項6の発明では、前記硬質被膜の平均粒径が、1μm以下であることを特徴としている。
つまり、硬質被膜を構成する成分の粒子の平均粒径が、1μm以下の場合には、後の実験例に示す様に、硬質被膜の強度が高く、高い耐摩耗性等の優れた切削性能が得られる。
【0018】
(7)請求項7の発明では、前記切削工具が、スローアウェイチップであることを特徴としている。
本発明は、切削工具が、スローアウェイチップとして用いられる工具であることを例示したものである。
【0019】
(8)請求項8の発明では、前記スローアウェイチップをホルダに取り付けたことを特徴としている。
つまり、通常、スローアウェイチップはホルダに取り付けられて使用されるので、ここでは、ホルダにスローアウェイチップを取り付けたものを規定したものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の切削工具の実施の形態の例(実施例)について説明する。
(実施例1)
a)まず、本実施例の切削工具について説明する。
【0021】
尚、図1は、切削工具の硬質被膜の一部を破断して示す斜視図である。
図1に示す様に、本実施例の切削工具1は、JIS規格K10相当の超硬合金(例えばWC−Co系の超硬合金)の硬質材料からなる基材3を、ISO規格DCGT11T301の形状に研磨加工し、その表面に硬質被膜5を形成したスローアウェイチップである。
【0022】
つまり、切削工具1は、図1の上方であるすくい面(主面側)7の方が広い略菱形の板状で、その中央に固定用の貫通孔9が開けられたポジチップであり、基材3の表面には、厚さ0.5〜5μm(例えば平均3μm)の範囲内のTiAlN系の硬質被膜5が形成されている。尚、この硬質被膜5としては、例えば(Ti、Al)Nからなり、そのTi/Al比=1の硬質被膜5を採用できる。
【0023】
また、本実施例では、硬質被膜5を構成する粒子(TiAlNの粒子)の平均粒径が、1μm以下である。
特に、本実施例では、図2に示す様に、硬質被膜5の厚みが設定されている。
つまり、本実施例では、切削工具1のすくい面7側の角部である刃先先端部(即ち工具1の先端部分)11において、基材3のすくい面7側の表面13から工具表面までの高さとして、すくい面7側の硬質被膜5の厚み(先端側厚み)Teが規定されている。また、基材3のすくい面7側の角部である刃先先端部(即ち基材3の先端部分)15から0.2mm内部の位置において、基材3のすくい面7側の表面13から工具表面までの高さとして、すくい面7側の硬質被膜5の厚み(内側厚み)Tiが規定されている。
【0024】
尚、硬質被膜5の内側厚みTiを測定する位置は、刃先先端部15から切削工具1の軸中心(重心を板厚方向に貫く軸)方向に向かって、0.2mmだけ内側における厚みである。
そして、前記先端側厚みTeと内側厚みTiとの比(硬質被膜の厚みの比)Te/Tiが、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内(例えば1.2)となるように、硬質被膜5が形成されている。
【0025】
上述した切削工具1は、図3に上面又は図4に正面を示す様に、略四角柱状の金属製(例えば鉄鋼製)のホルダ17の先端において、切削工具1の形状に合わせて設けられた凹状の固定部19に嵌め込まれ、自身の貫通孔9に通されるネジ21により固定される。
【0026】
そして、この切削工具1によって、ワーク(図示せず)を加工する場合には、ホルダ17に取り付けられた切削工具1の先端を、回転するワークに押し当てる様にして、切削する。
b)次に、前記切削工具1の製造方法を説明する。
【0027】
・まず、基材3の材料であるWC粉末とCo粉末とを所定量秤量した後に、湿式にて混合粉砕を行う。
・次に、粉砕した材料に、パラフィンを2重量%添加し、乾燥・造粒を行い、成型用粉末を得る。
【0028】
・次に、得られた粉末を、所定のポジチップ形状に金型成形し、真空中で焼成する。
・次に、この焼成物を研磨して、所定の寸法公差の範囲内の基材3とする。
・次に、この基材3に対して、TiAlN系のPVDコーティング、具体的にはアークイオン式物理蒸着法によるコーティングを実施して、基材3表面に硬質被膜を形成し、切削工具1を完成する。
【0029】
尚、物理蒸着を行う際の被覆時間(コーティング時間)を調整することにより、硬質被膜の膜厚を調整する。
c)次に、本実施例の切削工具1の効果について説明する。
上述した様に、本実施例の切削工具1は、硬質被膜5の先端側厚みTeと内側厚みTiとの比Te/Tiが、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内であるので、長期にわたって、耐摩耗性、耐欠損性、耐熱衝撃性等の切削性能が優れているという顕著な効果を奏する。
【0030】
また、本実施例の切削工具1は、硬質被膜5の平均粒径が1μm以下であるので、切削加工を行う際に、硬質被膜5の強度が高いという利点がある。
d)次に、本実施例の効果を確認するための実験例について説明する。
▲1▼上述した実施例の製造方法にて製造した基材に対し、下記PVD条件でアークイオン式物理蒸着法によるコーティングを実施して、基材表面に硬質被膜を形成した。これによって、実験に供する本発明(請求項1)の範囲内の試料No.2〜5、7の切削工具を製造した。
【0031】
<PVD条件>
反応ガス圧 :1.33Pa
基材温度 :500〜650℃
バイアス電圧 :−100V
アーク電流 :150A
コーティング時間:10〜60min
尚、試料No.2〜5、7においては、硬質被膜の平均粒径が異なるが、硬質被膜を例えば調節する方法(例えば平均粒径を大きくする方法)としては、例えばコーティングの際の基材温度を高くする方法や、コーティング時間を長くする方法等が挙げられる。
【0032】
一方、本発明の範囲外の比較例(膜厚の比が範囲外のもの)として、実施例と同様な基材に対して、同様な同じアークイオン式PVD装置を使用して被覆を行って、比較例(試料No.1、6、8)の切削工具を得た。
尚、試料No.1〜8においては、硬質被膜の厚みの比Te/Tiが異なるが、この比を調節する方法(例えば比を大きくする方法)としては、次の方法が挙げられる。つまり、物理蒸着法によるコーティングの際には、通常、切削工具の中心を治具で保持して蒸着を行うが、物理蒸着法の特性により、蒸着する金属成分は電気伝導性の良い治具の方に多く付着するので、例えば治具の径を大きくすることにより、硬質被膜の厚みの比Te/Tiを大きくすることができる。また、例えば切削工具を回転させながら蒸着を行う場合には、回転速度を速めると、金属成分の刃先以外への周り込みが弱まって主に刃先に金属成分が付着する傾向があるので、回転速度を上げる方法が考えられる。
【0033】
そして、この様にして得られた各試料に対して、蛍光X線を用いて、硬質被膜の先端側厚みTeと内側厚みTiとを測定した。その結果を、下記表1に記す。
▲2▼また、前記切削工具を厚み方向に破断し、その硬質被膜の膜断面を走査電子顕微鏡で観察して、硬質被膜の平均粒径を測定した。その結果を、同じく下記表1に記す。
【0034】
▲3▼更に、前記切削工具をホルダに取り付けて、下記の切削条件にて、切削実験を行った。そして、欠損に到るまでの加工パス数(従って耐摩耗性)を測定した。その結果を、同じく下記表1に記す。
<切削条件>
切削速度:150m/min
送り速度:0.03mm/rev
切り込み:1.0mm
被削材 :SUS303、直径φ16mm、厚み(1パス)10mm、湿式
刃先処理:無し
【0035】
【表1】
【0036】
この表1からも明らかなように、本発明(請求項1)の範囲の切削工具(試料No.2〜5、7)は、比較例に対して、加工数が70以上と多く、耐摩耗性の切削性能が著しく優れており、これを実際の加工に使用した場合は、安定した加工を長時間行うことが可能となる。また、本発明の請求項6の平均粒径の条件を満たすもの(試料No.2〜5)は、加工数が80以上と多く、切削性能が一層優れていることが分かる。更に、本発明の請求項2の比の条件を満たすもの(試料No.3、4、7)のうち、特に前記平均粒径の条件を満たすもの(試料No.3、4)は、加工数が100と多く、切削性能がより一層優れていることが分かる。
【0037】
つまり、本発明の切削工具は、非常に優れた切削性能を、安定して長期に渡って実現することができるという顕著な効果を奏する。
それに対して、比較例のもの(試料No.1、6、8)は、耐摩耗性の切削性能が劣っており、好ましくない。
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な箇所の説明は省略する。
【0038】
図5に示す様に、本実施例の切削工具31は、前記実施例1と同様に、基材33の表面に硬質被膜35が形成されているが、前記実施例1と同様なポジチップではなく、刃先が直角になったネガチップである。
本実施例でも、前記実施例1と同様に、先端側厚みTeや内側厚みTi等が規定されている。
【0039】
従って、本実施例の切削工具も、前記実施例1と同様な効果を奏する。
(実施例3)
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な箇所の説明は省略する。
【0040】
図6に示す様に、本実施例の切削工具41は、前記実施例1と同様なポジチップであり、基材43の表面に硬質被膜45を備えているが、基材43の刃先先端部37に、角部を平面状にカットした面取り(チャンファ)39が形成されている点が大きく異なる。
【0041】
本実施例でも、前記実施例1と同様に、先端側厚みTeや内側厚みTi等が規定されているが、特に、内側厚みTiにおける0.2mmの位置の測定は、チャンファ39の上端から図るものとする。
従って、本実施例の切削工具も、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0042】
尚、丸く面取りした場合も同様に、面取り部分がすくい面に達した位置から0.2mmの位置にて、硬質被膜の厚みの測定を行う。
(実施例4)
次に、実施例4について説明するが、前記実施例2と同様な箇所の説明は省略する。
【0043】
図7に示す様に、本実施例の切削工具51は、前記実施例2と同様なネガチップであり、基材53の表面に硬質被膜55を備えているが、基材53の刃先先端部57に、角部を平面状にカットした面取り(チャンファ)59が形成されている点が大きく異なる。
【0044】
本実施例でも、前記実施例2と同様に、先端側厚みTeや内側厚みTi等が規定されているが、特に、内側厚みTiにおける0.2mmの位置の測定は、前記実施例3と同等に、チャンファ59の上端から図るものとする。
従って、本実施例の切削工具も、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0045】
尚、丸く面取りした場合も同様に、面取り部分がすくい面に達した位置から0.2mmの位置にて、硬質被膜の厚みの測定を行う。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0046】
(1)例えば切削工具の基材の材料としては、前記超硬合金以外に、サーメット、セラミック、及びハイス等の各種の硬質材料を使用することができる。
(2)また、前記硬質被膜の材料としては、TiAlN以外に、他の周知の硬質被膜の材料を採用することが可能である。
【0047】
(3)更に、前記硬質被膜は、アークイオン式物理蒸着により形成することが好ましいが、他の周知の物理蒸着の方法を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の切削工具を示す斜視図である。
【図2】実施例1の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【図3】実施例1の切削工具をホルダに取り付けた状態を示す上面図である。
【図4】実施例1の切削工具をホルダに取り付けた状態を示す正面図である。
【図5】実施例2の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【図6】実施例3の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【図7】実施例4の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【符号の説明】
1、31、41、51…切削工具
3、33、43、53…基材
5、33、43、53…硬質被膜
11、15、37、57…刃先先端部
13…すくい面
17…ホルダ
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性や耐欠損性等に優れた硬質被膜を表面に被覆した切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、超硬合金やサーメット等、高い耐摩耗性を要求される切削工具は、工具の基材表面に、TiNやTiCN等の硬質被膜を形成することにより、耐摩耗性の向上が図られている。
【0003】
特に物理蒸着法(PVD)は、低温での硬質被膜の形成が可能なため、基材の強度低下を生じることなく、耐摩耗性の向上が図れるため、近年益々その用途が広がっている。
しかし、この物理蒸着法は、被覆温度が低いことにより、化学蒸着法(CVD)に比べて、基材との密着強度が低いという傾向がある。
【0004】
また、物理蒸着法により形成された硬質被膜は、通常、残留圧縮応力が高いために、特に刃先が鋭い(鋭角な刃先の)切削工具に使用した場合には、硬質被膜が自身の応力に耐えられずに、自己破壊を起こして基材が露出することがあり、その場合には、切削性能が安定しなかったり、最悪の場合には、性能の低下を招くことがあった。
【0005】
この対策として、従来より、硬質被膜の剥離を生じない範囲に被覆条件を調整して、コーティングを実施している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現状では、コーティングのバラツキや、基材の形状、表面状態等の影響で、剥離を完全に抑制するのは困難な状態にある。
また、剥離を生じないコーティングの条件として、被膜の膜厚を薄くしたり、金属成分比を高めて軟被膜にする方法が考えられているが、この場合には、性能が低下する傾向にあり、性能的に満足のいくものではなかった。
【0007】
更に、場合によっては、硬質被膜の膜表面に、粗大な粒子が多数存在した状態のこともあり、その粒子の脱落により性能が不安定になるという問題もあった。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐摩耗性等の切削性能を、安定的かつ良好に発揮することができる硬質被膜を備えた切削工具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、物理蒸着法によって、基材の表面に、0.5〜5μmの厚みの硬質被膜を形成した切削工具において、前記切削工具の刃先先端部におけるすくい面側の硬質被膜の厚み(以下先端側厚みとも記す)Teと、前記基材の刃先先端部から0.2mm内部の位置におけるすくい面側の硬質被膜の厚み(以下内側厚みとも記す)Tiとの比Te/Tiが、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内であることを特徴としている。
【0009】
本発明において、硬質被膜の厚みを、0.5〜5μmの範囲としたのは、0.5μm未満では、所望の切削性能(例えば通常の使用に耐える程度の耐摩耗性)が得られないし、5μmを超えると、硬質被膜の残留応力が高くなり過ぎるため、被膜の剥離を制御することが困難になり、性能が低下してしまうためである。
【0010】
特に本発明にて、硬質被膜の先端側厚みTeと内側厚みTiとの比(以下単に硬質被膜の厚みの比とも記す)Te/Tiを、1.5以下としたのは、この範囲では、刃先と内部との残留応力差が少なく、よって、刃先における硬質被覆の剥離の発生を抑制できるとともに、剥離に到らないクラックの発生も抑制できるからである。従って、後の実験例でも示す様に、本発明の切削工具は、耐摩耗性(ひいては耐欠損性や耐熱衝撃性)に優れている。
【0011】
また、硬質被膜の厚みの比Te/Tiを、1.0以上としたのは、1.0未満は、(通常、刃先の方が硬質被膜が厚くなるので)原理的に生ずる可能性は低く、性能的にも満足のいくものではないからである。
尚、ここで、硬質被膜の厚みの比Te/Tiとは、後の実施例及び図2等に示す様に、切削工具のすくい面側の角部である刃先先端部におけるすくい面側の硬質被膜の厚み(従ってすくい面からの高さ)Teと、基材のすくい面側の角部である刃先先端部から0.2mm内部の位置におけるすくい面側の硬質被膜の厚みTiとの比Te/Tiである。また、硬質被膜の内側厚みTiを測定する位置は、基材の刃先先端部から切削工具の軸中心方向に、0.2mm内側における厚みである。
【0012】
(2)請求項2の発明では、前記硬質被膜の厚みTeと、前記硬質被膜の厚みTiとの比Te/Tiが、1.2≦Te/Ti≦1.3の範囲内であることを特徴としている。
本発明は、硬質被膜の厚みの比Te/Tiに関して、より好ましい範囲を例示したものである。この範囲であれば、後の実験例に示す様に、耐摩耗性等の一層優れた効果が得られる。
【0013】
(3)請求項3の発明では、前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミック、及びハイスのうち、いずれか1種を主成分とする硬質材料からなることを特徴としている。
本発明は、基材を構成する硬質材料を例示したものである。尚、基材の全材料が、前記硬質材料のみからなるものが一層好適である。
【0014】
(4)請求項4の発明では、前記硬質被膜は、下記式(1)で表される材料からなることを特徴としている。
(Tix、Aly、Mez)a(Nα、Cβ、Oγ、Bδ)b・・(1)
但し、x+y+z=1 (0≦x、y、z≦1)
α+β+γ+δ=1 (0≦α、β、γ、δ≦1)
0.8≦a/b≦1.2
本発明は、硬質被膜を構成する材料(例えば固溶体)を例示したものである。尚、Meは、金属成分を示している。
【0015】
例えばTiAl系の硬質被膜の場合には、金属成分として、TiAlに特に限定されるものではなく、高硬度で高耐摩耗性の被膜を形成し得るものであれば、TiAl合金に4a,5a,6a族金属やSi、Yおよび希土類元素等の金属成分を若干固溶した組成の物でも良い。また、TiとAl、あるいはその他の金属成分比も特に限定されるものではない。さらに、金属成分以外に含有される軽元素においても、窒素のみでなく、炭素や酸素、ホウ素等からなる化合物であっても良い。
【0016】
(5)請求項5の発明では、前記硬質被膜は、TiAlN、TiN、TiC、及びTiCNのうち、いずれか1種を主成分とする材料からなることを特徴としている。
本発明は、硬質被膜を構成する好適な材料(例えば固溶体)を例示したものである。尚、硬質被膜の全材料が、前記材料のみからなるものが一層好適である。
【0017】
(6)請求項6の発明では、前記硬質被膜の平均粒径が、1μm以下であることを特徴としている。
つまり、硬質被膜を構成する成分の粒子の平均粒径が、1μm以下の場合には、後の実験例に示す様に、硬質被膜の強度が高く、高い耐摩耗性等の優れた切削性能が得られる。
【0018】
(7)請求項7の発明では、前記切削工具が、スローアウェイチップであることを特徴としている。
本発明は、切削工具が、スローアウェイチップとして用いられる工具であることを例示したものである。
【0019】
(8)請求項8の発明では、前記スローアウェイチップをホルダに取り付けたことを特徴としている。
つまり、通常、スローアウェイチップはホルダに取り付けられて使用されるので、ここでは、ホルダにスローアウェイチップを取り付けたものを規定したものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の切削工具の実施の形態の例(実施例)について説明する。
(実施例1)
a)まず、本実施例の切削工具について説明する。
【0021】
尚、図1は、切削工具の硬質被膜の一部を破断して示す斜視図である。
図1に示す様に、本実施例の切削工具1は、JIS規格K10相当の超硬合金(例えばWC−Co系の超硬合金)の硬質材料からなる基材3を、ISO規格DCGT11T301の形状に研磨加工し、その表面に硬質被膜5を形成したスローアウェイチップである。
【0022】
つまり、切削工具1は、図1の上方であるすくい面(主面側)7の方が広い略菱形の板状で、その中央に固定用の貫通孔9が開けられたポジチップであり、基材3の表面には、厚さ0.5〜5μm(例えば平均3μm)の範囲内のTiAlN系の硬質被膜5が形成されている。尚、この硬質被膜5としては、例えば(Ti、Al)Nからなり、そのTi/Al比=1の硬質被膜5を採用できる。
【0023】
また、本実施例では、硬質被膜5を構成する粒子(TiAlNの粒子)の平均粒径が、1μm以下である。
特に、本実施例では、図2に示す様に、硬質被膜5の厚みが設定されている。
つまり、本実施例では、切削工具1のすくい面7側の角部である刃先先端部(即ち工具1の先端部分)11において、基材3のすくい面7側の表面13から工具表面までの高さとして、すくい面7側の硬質被膜5の厚み(先端側厚み)Teが規定されている。また、基材3のすくい面7側の角部である刃先先端部(即ち基材3の先端部分)15から0.2mm内部の位置において、基材3のすくい面7側の表面13から工具表面までの高さとして、すくい面7側の硬質被膜5の厚み(内側厚み)Tiが規定されている。
【0024】
尚、硬質被膜5の内側厚みTiを測定する位置は、刃先先端部15から切削工具1の軸中心(重心を板厚方向に貫く軸)方向に向かって、0.2mmだけ内側における厚みである。
そして、前記先端側厚みTeと内側厚みTiとの比(硬質被膜の厚みの比)Te/Tiが、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内(例えば1.2)となるように、硬質被膜5が形成されている。
【0025】
上述した切削工具1は、図3に上面又は図4に正面を示す様に、略四角柱状の金属製(例えば鉄鋼製)のホルダ17の先端において、切削工具1の形状に合わせて設けられた凹状の固定部19に嵌め込まれ、自身の貫通孔9に通されるネジ21により固定される。
【0026】
そして、この切削工具1によって、ワーク(図示せず)を加工する場合には、ホルダ17に取り付けられた切削工具1の先端を、回転するワークに押し当てる様にして、切削する。
b)次に、前記切削工具1の製造方法を説明する。
【0027】
・まず、基材3の材料であるWC粉末とCo粉末とを所定量秤量した後に、湿式にて混合粉砕を行う。
・次に、粉砕した材料に、パラフィンを2重量%添加し、乾燥・造粒を行い、成型用粉末を得る。
【0028】
・次に、得られた粉末を、所定のポジチップ形状に金型成形し、真空中で焼成する。
・次に、この焼成物を研磨して、所定の寸法公差の範囲内の基材3とする。
・次に、この基材3に対して、TiAlN系のPVDコーティング、具体的にはアークイオン式物理蒸着法によるコーティングを実施して、基材3表面に硬質被膜を形成し、切削工具1を完成する。
【0029】
尚、物理蒸着を行う際の被覆時間(コーティング時間)を調整することにより、硬質被膜の膜厚を調整する。
c)次に、本実施例の切削工具1の効果について説明する。
上述した様に、本実施例の切削工具1は、硬質被膜5の先端側厚みTeと内側厚みTiとの比Te/Tiが、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内であるので、長期にわたって、耐摩耗性、耐欠損性、耐熱衝撃性等の切削性能が優れているという顕著な効果を奏する。
【0030】
また、本実施例の切削工具1は、硬質被膜5の平均粒径が1μm以下であるので、切削加工を行う際に、硬質被膜5の強度が高いという利点がある。
d)次に、本実施例の効果を確認するための実験例について説明する。
▲1▼上述した実施例の製造方法にて製造した基材に対し、下記PVD条件でアークイオン式物理蒸着法によるコーティングを実施して、基材表面に硬質被膜を形成した。これによって、実験に供する本発明(請求項1)の範囲内の試料No.2〜5、7の切削工具を製造した。
【0031】
<PVD条件>
反応ガス圧 :1.33Pa
基材温度 :500〜650℃
バイアス電圧 :−100V
アーク電流 :150A
コーティング時間:10〜60min
尚、試料No.2〜5、7においては、硬質被膜の平均粒径が異なるが、硬質被膜を例えば調節する方法(例えば平均粒径を大きくする方法)としては、例えばコーティングの際の基材温度を高くする方法や、コーティング時間を長くする方法等が挙げられる。
【0032】
一方、本発明の範囲外の比較例(膜厚の比が範囲外のもの)として、実施例と同様な基材に対して、同様な同じアークイオン式PVD装置を使用して被覆を行って、比較例(試料No.1、6、8)の切削工具を得た。
尚、試料No.1〜8においては、硬質被膜の厚みの比Te/Tiが異なるが、この比を調節する方法(例えば比を大きくする方法)としては、次の方法が挙げられる。つまり、物理蒸着法によるコーティングの際には、通常、切削工具の中心を治具で保持して蒸着を行うが、物理蒸着法の特性により、蒸着する金属成分は電気伝導性の良い治具の方に多く付着するので、例えば治具の径を大きくすることにより、硬質被膜の厚みの比Te/Tiを大きくすることができる。また、例えば切削工具を回転させながら蒸着を行う場合には、回転速度を速めると、金属成分の刃先以外への周り込みが弱まって主に刃先に金属成分が付着する傾向があるので、回転速度を上げる方法が考えられる。
【0033】
そして、この様にして得られた各試料に対して、蛍光X線を用いて、硬質被膜の先端側厚みTeと内側厚みTiとを測定した。その結果を、下記表1に記す。
▲2▼また、前記切削工具を厚み方向に破断し、その硬質被膜の膜断面を走査電子顕微鏡で観察して、硬質被膜の平均粒径を測定した。その結果を、同じく下記表1に記す。
【0034】
▲3▼更に、前記切削工具をホルダに取り付けて、下記の切削条件にて、切削実験を行った。そして、欠損に到るまでの加工パス数(従って耐摩耗性)を測定した。その結果を、同じく下記表1に記す。
<切削条件>
切削速度:150m/min
送り速度:0.03mm/rev
切り込み:1.0mm
被削材 :SUS303、直径φ16mm、厚み(1パス)10mm、湿式
刃先処理:無し
【0035】
【表1】
【0036】
この表1からも明らかなように、本発明(請求項1)の範囲の切削工具(試料No.2〜5、7)は、比較例に対して、加工数が70以上と多く、耐摩耗性の切削性能が著しく優れており、これを実際の加工に使用した場合は、安定した加工を長時間行うことが可能となる。また、本発明の請求項6の平均粒径の条件を満たすもの(試料No.2〜5)は、加工数が80以上と多く、切削性能が一層優れていることが分かる。更に、本発明の請求項2の比の条件を満たすもの(試料No.3、4、7)のうち、特に前記平均粒径の条件を満たすもの(試料No.3、4)は、加工数が100と多く、切削性能がより一層優れていることが分かる。
【0037】
つまり、本発明の切削工具は、非常に優れた切削性能を、安定して長期に渡って実現することができるという顕著な効果を奏する。
それに対して、比較例のもの(試料No.1、6、8)は、耐摩耗性の切削性能が劣っており、好ましくない。
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な箇所の説明は省略する。
【0038】
図5に示す様に、本実施例の切削工具31は、前記実施例1と同様に、基材33の表面に硬質被膜35が形成されているが、前記実施例1と同様なポジチップではなく、刃先が直角になったネガチップである。
本実施例でも、前記実施例1と同様に、先端側厚みTeや内側厚みTi等が規定されている。
【0039】
従って、本実施例の切削工具も、前記実施例1と同様な効果を奏する。
(実施例3)
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な箇所の説明は省略する。
【0040】
図6に示す様に、本実施例の切削工具41は、前記実施例1と同様なポジチップであり、基材43の表面に硬質被膜45を備えているが、基材43の刃先先端部37に、角部を平面状にカットした面取り(チャンファ)39が形成されている点が大きく異なる。
【0041】
本実施例でも、前記実施例1と同様に、先端側厚みTeや内側厚みTi等が規定されているが、特に、内側厚みTiにおける0.2mmの位置の測定は、チャンファ39の上端から図るものとする。
従って、本実施例の切削工具も、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0042】
尚、丸く面取りした場合も同様に、面取り部分がすくい面に達した位置から0.2mmの位置にて、硬質被膜の厚みの測定を行う。
(実施例4)
次に、実施例4について説明するが、前記実施例2と同様な箇所の説明は省略する。
【0043】
図7に示す様に、本実施例の切削工具51は、前記実施例2と同様なネガチップであり、基材53の表面に硬質被膜55を備えているが、基材53の刃先先端部57に、角部を平面状にカットした面取り(チャンファ)59が形成されている点が大きく異なる。
【0044】
本実施例でも、前記実施例2と同様に、先端側厚みTeや内側厚みTi等が規定されているが、特に、内側厚みTiにおける0.2mmの位置の測定は、前記実施例3と同等に、チャンファ59の上端から図るものとする。
従って、本実施例の切削工具も、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0045】
尚、丸く面取りした場合も同様に、面取り部分がすくい面に達した位置から0.2mmの位置にて、硬質被膜の厚みの測定を行う。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0046】
(1)例えば切削工具の基材の材料としては、前記超硬合金以外に、サーメット、セラミック、及びハイス等の各種の硬質材料を使用することができる。
(2)また、前記硬質被膜の材料としては、TiAlN以外に、他の周知の硬質被膜の材料を採用することが可能である。
【0047】
(3)更に、前記硬質被膜は、アークイオン式物理蒸着により形成することが好ましいが、他の周知の物理蒸着の方法を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の切削工具を示す斜視図である。
【図2】実施例1の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【図3】実施例1の切削工具をホルダに取り付けた状態を示す上面図である。
【図4】実施例1の切削工具をホルダに取り付けた状態を示す正面図である。
【図5】実施例2の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【図6】実施例3の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【図7】実施例4の切削工具の先端側厚みTeと内側厚みTiを示す説明図である。
【符号の説明】
1、31、41、51…切削工具
3、33、43、53…基材
5、33、43、53…硬質被膜
11、15、37、57…刃先先端部
13…すくい面
17…ホルダ
Claims (8)
- 物理蒸着法によって、基材の表面に、0.5〜5μmの厚みの硬質被膜を形成した切削工具において、
前記切削工具の刃先先端部におけるすくい面側の硬質被膜の厚みTeと、前記基材の刃先先端部から0.2mm内部の位置におけるすくい面側の硬質被膜の厚みTiとの比Te/Tiが、1.0≦Te/Ti≦1.5の範囲内であることを特徴とする切削工具。 - 前記硬質被膜の厚みTeと、前記硬質被膜の厚みTiとの比Te/Tiが、1.2≦Te/Ti≦1.3の範囲内であることを特徴とする前記請求項1に記載の切削工具。
- 前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミック、及びハイスのうち、いずれか1種を主成分とする硬質材料からなることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の切削工具。
- 前記硬質被膜は、下記式(1)で表される材料からなることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の切削工具。
(Tix、Aly、Mez)a(Nα、Cβ、Oγ、Bδ)b・・(1)
但し、x+y+z=1 (0≦x、y、z≦1)
α+β+γ+δ=1 (0≦α、β、γ、δ≦1)
0.8≦a/b≦1.2 - 前記硬質被膜は、TiAlN、TiN、TiC、及びTiCNのうち、いずれか1種を主成分とする材料からなることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載の切削工具。
- 前記硬質被膜の平均粒径が、1μm以下であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の切削工具。
- 前記切削工具が、スローアウェイチップであることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載の切削工具。
- 前記スローアウェイチップをホルダに取り付けたことを特徴とする前記請求項7に記載の切削工具。
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-
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- 2002-08-12 JP JP2002234831A patent/JP2004074312A/ja active Pending
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