JP2004074018A - 光触媒用担体、その装置及び流体処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】かゝる本発明は、ガラス又は石英ガラスなどの光透過性材料からなりその長手方向に1又は2以上の穴を有する光導波体11と、光導波体11の少なくとも穴12の内面側に設けた多孔質構造などの光触媒層13とからなる光触媒用担体10Aにあり、光触媒の有効面積が大きく、これに狭帯域光源を組み込めば、汚水処理方法や廃油処理方法、排ガス処理方法、除菌処理方法、脱臭処理方法などを簡単に実現することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒を担持させる光触媒用担体、その装置及び流体処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光触媒は、その優れた特性からいろいろ分野での応用が期待されている。代表的な光触媒としてはTiO2 が挙げられ、基本的には、380nm以下の波長の光(紫外線、紫外光とも同義)が照射されると、活性化して周囲にある有機化合物などを分解する機能(光触媒分解機能)や周囲にある水と馴染み易くなる機能(光親水化機能)などがあるとされている。
【0003】
しかも、光触媒の反応には、熱エネルギーを必要としないため、常温での反応が可能となるだけでなく、熱と比較して、光の応答速度の速さ故に反応の制御性にも優れているなどの利点が挙げられている。
【0004】
このような優れた特性を有する光触媒であるが、触媒の機能上、当然のことであるが、先ず反応物質と接触している必要があり、また、それと同時に反応光である、紫外線が触媒部分に有効に到達することが必要とされる。
【0005】
例えば、光触媒を汚水などの流体浄化フィルタなどとして用いる場合、その汚れによって汚水の光透過性が悪いと、光触媒の側方に設置したUVランプなどからの紫外線が十分に伝達されないなどのことが問題となる。また、汚水の分解反応は光触媒との接触部分で起きるため、浄化効率の向上の観点から、光触媒の表面積をどのようにして増すか、或いは、光触媒の担持部分を反応物質に対してどのようにして化学的に安定化させるか、さらには、反応温度下での機械的強度をどのようにして確保するかなどの問題がある。
【0006】
このような問題を解決するため、既に種々の形態からなる光触媒用担体や、これを用いた浄化フィルタなどの装置、さらには、流体浄化などの流体処理方法が提案されている。例えば、紫外線を伝達させる部分を、光透過性材料であるガラス、セラミックス、プラスチックなどの線材(導光体)で構成し、この表面に光触媒を担持させたものがある(特開平9−225262号)。この場合、紫外線は線材内から表面側の光触媒に伝達されるため、線材の周囲が汚れによって光透過性が悪化していても、光の効率的な伝達効果が得られる。
或いは、シングルモード形の光ファイバのクラッド部分側に光触媒を担持させたものもある(特開平11−290701号)。この場合にも、紫外線は主にクラッド部分を通じて光触媒に伝達されるため、やはり光の効率的な伝達効果が得られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような単に線材の外表面に光触媒を担持させるという構成では、その用途などによっては、不十分な場合がある。
例えば、光触媒用担体をよりコンパクトにまとめ、かつ、より一層高い光触媒機能を発揮させるためには、線材の外表面に光触媒を単に塗布や付着などにより担持させるだけでは、触媒面積の増量には限界があり不十分な場合がある。また、光触媒の塗布や付着による場合、担体側との密着性が不十分で、布設時や使用時の曲げ、或いは経時的な擦れなどによって、光触媒部分が剥離するなどの恐れもある。さらに、使用目的によっては、光触媒部分が外表面側に露出している場合、損傷し易いなどの懸念もある。また、反応光用の光源としてUVランプを用いていては、光触媒機能の発現にあたって、効率が悪いなどの問題もある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の状況下に鑑みてなされたもので、基本的には、長尺体や線条体からなる光導波体の長手方向に1又は2以上の穴を設けて、少なくともこの穴の内面側に多孔質構造などの光触媒層を施すことで、上記従来の問題点を解消せんとするものである。
【0009】
請求項1記載の本発明は、光透過性材料からなりその長手方向に1又は2以上の穴を有する光導波体と、当該光導波体の少なくとも前記穴の内面側に設けた光触媒層とからなる光触媒用担体にある。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記光導波体がガラス、石英ガラス又はプラスチックである請求項1記載の光触媒用担体にある。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記光触媒層が多孔質構造である請求項1又は2記載の光触媒用担体にある。
【0012】
請求項4記載の本発明は、前記光触媒層の光触媒がTiO2 、ZnO、Fe2 O3 、GaAs、CdS、GaP、SrTiO3 、WO3 又はこれらの化合物の少なくとも一つから選ばれる請求項1、2又は3記載の光触媒用担体にある。
【0013】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1、2、3又は4記載の光触媒用担体の光導波体の少なくとも一方の端面側に狭帯域光源を設置してなる光触媒用担体装置にある。
【0014】
請求項6記載の本発明は、前記狭帯域光源が発光ダイオード、レーザーダイオード、エキシマレーザ、又は固体レーザである請求項5記載の光触媒用担体装置にある。
【0015】
請求項7記載の本発明は、前記請求項5又は6記載の光触媒用担体装置において、光触媒用担体の光導波体に狭帯域光源からの光を導入する一方、少なくとも前記光導波体の穴の一方から他方にかけて処理対象の流体を通し、前記導入光による光触媒の活性化によって流体処理する流体処理方法にある。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1〜図2は、本発明に係る光触媒用担体の一例になる形態を示したものである。この光触媒用担体10Aは、光透過性材料からなり、その長手方向に2以上の穴12を有する光導波体11と、この光導波体11の穴12の内面側に設けた光触媒層13とからなる。
【0017】
光導波体11の材料としては、光透過性材料であれば特に問わないが、通常のガラスや石英ガラス、PMMA又はフッ素含有PMMA、フッ素樹脂などのプラスチックが用いられる。その長尺体や線条体としての太さや長さも、用途などによって適宜設定することができる。特に石英ガラスを用いる場合、光ファイバ製造技術を適用することで、外径が100mm程度以下であれば、任意の太さ、任意の長さのものを自在に得ることができる。例えば外径が100mm程度で、長さ1〜2m程度の石英母材を製造した後、これを加熱して延伸させれば、自在の太さ、長さのものが得られる。
【0018】
通常のガラスは1000℃程度まで安定し、また、石英ガラスでは1200℃程度まで安定しているため、担体自体としても高い安定性が得られる。
【0019】
光触媒層13部分は、好ましくは多孔質構造としてある。この多孔質構造は、例えば石英母材の段階で、穴12の内面側に光触媒材料の微粒子を単独で、又はガラス微粒子(スート)を堆積させた後、その上に光触媒材料の微粒子を堆積させたり、さらに光触媒材料の微粒子とガラス微粒子を一緒に堆積させることなどで得ることができる。
【0020】
この多孔質構造とすることで、光触媒面積の大幅な拡大増加を図ることができる。結果として、光触媒機能のより一層の向上、さらには、光触媒用担体自体のコンパクト化が可能となる。また、多孔質構造の層は、光導波体11側に対して、通常高温下で行い、光導波体材料と光触媒材料側が一体的な密着するため、剥離などの恐れのない安定した層が得られる。
【0021】
光触媒層の光触媒材料としては、最も代表的なものとしてTiO2 が挙げられ、その以外のものとしては、ZnO、Fe2 O3 、GaAs、CdS、GaP、SrTiO3 、WO3 などが挙げられる。そして、これら、又はこれらの化合物の少なくとも一つを選んで使用すればよい。この光触媒材料の屈折率は、通常光導波体材料のガラスや石英ガラス、プラスチックなどのそれより大きくして、紫外線がより有効に吸収されるように調整してある。また、光触媒の周囲に有機色素を有するものを用いることもできる。この有機色素により、効率良く光を吸収する効果が得られる。
【0022】
このようにしてなる、本発明の光触媒用担体10Aの用途としては、特に限定されないが、例えば図3に示すように、汚水(廃液)を処理する流体浄化フィルタなどの装置、即ち光触媒用担体装置100として使用することができる。
【0023】
ここでは、線条体とした光触媒用担体10Aをループ状に纏め、一方の端面側(図中左側)から汚水(処理液)を注入すれば、他方の端面側(図中右側)から浄化水(処理済液)を取り出すことができる。反応光としての紫外線は、例えば発光ダイオードやレーザーダイオード、エキシマレーザ、又は固体レーザなどの狭帯域光源20,20からのものを用い、光触媒用担体10Aの両端面側に設けた光導入部30,30を通じて、光導波体11の長さ方向に入射、伝搬させる。これにより、穴12内の光触媒層13側に紫外線が照射されるため、光触媒が活性化されて、所望の流体処理が行われる。
【0024】
この本発明に係る流体処理方法によると、先ず、光触媒用の穴12が複数あって、しかも、光触媒層13部分が多孔質構造であるため、光触媒面積の大幅な増加があり、高い光触媒機能が得られる。また、狭帯域光源20,20を用いているため、光エネルギーの無駄を最小限に抑えることができる。つまり、光触媒は、特定の波長以下の光で活性化される訳であるが(TiO2 などでは380nm以下、化合物とすることで280〜500nm以下も可能)、通常のUVランプなどでは、波長範囲が広く、光エネルギーの無駄が避けられないからである。また、光導波体材料中を紫外線が直接伝搬する構造であるため、伝搬損失を小さく抑えることができる。さらに、光導波体材料に対して、光触媒層の屈折率が大きくしてあるため、入射された紫外線は殆ど無駄になることなく、効率よく、触媒反応に利用される。
【0025】
図4は、本発明に係る流体処理方法の別の形態を示したもので、基本的には、図3の場合とほぼ同様であるが、流体処理容器(槽)40内に多数の光触媒用担体10Aを直線状にして充填してある。そして、この流体処理容器40の一方(図中左側)から汚水(処理液)を注入すれば、他方(図中右側)から浄化水(処理済液)を取り出すことができる。この場合も、反応光としての紫外線は、狭帯域光源20,20からのものを用い、多数の光触媒用担体10Aの両端面側に設けた光導入部30,30を通じて、光導波体11の長さ方向に入射、伝搬させる。これにより、穴12内の光触媒層13側に紫外線が照射されるため、光触媒が活性化されて、所望の流体処理が行われる。
【0026】
図5は、本発明に係る光触媒用担体の他の例になる形態を示したものである。この光触媒用担体10Bは、基本的には、図1〜図2の場合とほぼ同様であるが、光導波体11の外周に、遮光機能や反射機能を有する被覆層14を設けてある。これにより、紫外線が外方に漏れるのを防止したり、或いは、より積極的に内側に反射させることができる。この結果、光のより一層の有効利用が得られる。この被覆材料しては、例えば、石英ガラス、UV樹脂などで、光が通る部分より少なくとも1%以上屈折率の小さいものであればよい。また、金属塗布層や蒸着層としたり、さらには、着色塗料の塗布層とすることも可能である。
【0027】
図6は、本発明に係る光触媒用担体のさらに別の例になる形態を示したものである。この光触媒用担体10Cも、基本的には、図1〜図2の場合とほぼ同様であるが、光導波体11の外周にも、光触媒層13を設けてある。これにより、光導波体11の外周側でも光触媒の活性化が行われる。
【0028】
したがって、例えば図7に示すように、図4と同様流体処理容器40内に、光触媒用担体10Cをループ状に纏めた状態で納め、流体処理容器40の一方(図中左側)から汚水(処理液)を注入すれば、他方(図中右側)から浄化水(処理済液)を取り出すことができる。この場合も、反応光としての紫外線は、狭帯域光源20,20からのものを用い、光触媒用担体10Cの両端面側に設けた光導入部30,30を通じて、光導波体11の長さ方向に入射、伝搬させる。これにより、穴12内の光触媒層13側に勿論のこと、光導波体11の外周の光触媒層13側にも、紫外線が照射される。このため、光触媒のより一層の有効な活性化が得られる。
【0029】
なお、上記実施の形態では、光導波体11の穴12が複数の場合であったが、本発明は、これに限定されず、例えば1個の穴11を有する、図8〜図9に示すような、光触媒用担体10Dとすることもできる。また、図10に示すように、光導波体11の外周に、遮光機能や反射機能を有する被覆層14を設けた光触媒用担体10Eとしたり、さらには、図11に示すように、光導波体11の外周に、光触媒層13を設けた光触媒用担体10Eとすることもできる。これらの作用や機能も、上記複数穴の場合とほぼ同様のものが得られる。したがって、上述した流体処理方法にも、ほぼ同様にして使用することができる。
【0030】
また、上記の実施の形態では、光触媒用担体の利用法、即ち流体処理方法の例として、汚水を浄化する方法についてであったが、本発明は、勿論これに限定されるものではない。例えば廃油処理方法や排ガス処理方法などとして利用することができる。さらに、光触媒用担体を除菌フィルタや脱臭フィルタなどして用いた除菌処理方法や脱臭処理方法などとしても利用することもできる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によると、以下のような優れた効果が得られる。
【0032】
先ず、本発明の光触媒用担体では、長手方向に1又は2以上の穴を有する光導波体自体が光透過性材料からなるため、その端面側から紫外線を低損失で導入し、伝搬させることができる。したがって、狭帯域光源の利用が可能となり、入射光の有効利用が得られる。また、光触媒層が光導波体の穴側だけにある構成では、外傷に強い担体が得られ、用途によっては大きなメリットとなる。
【0033】
光触媒用担体の光導波体部分をガラス又は石英ガラスとしたときには、熱的にも、機械的にも安定した担体が得られる。勿論、これにより、光触媒の反応物質や反応生成物に対しても、化学的に高い安定性が得られる。
【0034】
光触媒層を多孔質構造としたときには、担体の単位堆積当たりの触媒面積を大幅に増加させることができる。結果として、担体のコンパクト化が可能となり、また、高効率の光触媒用担体が得られる。また、多孔質構造の場合、担体側と一体的に密着されるため、布設時や使用時の曲げ、或いは経時的な擦れなどによっても容易に剥離することのない、安定した光触媒層が得られる。
【0035】
次に、上記ように担体に狭帯域光源などを組み付けた光触媒用担体装置として利用するときには、担体自体のみならず、UVランプなどに比較して、狭帯域光源である、発光ダイオード、レーザーダイオード、エキシマレーザ、又は固体レーザが極めて小型化できるため、装置自体のコンパクト化も可能となり、優れた使い勝手が得られる。つまり、コンパクトで高効率の各種のフィルタして利用することができる。
【0036】
勿論、この光触媒用担体装置を用いれば、種々の流体処理方法、即ち、汚水処理方法や廃油処理方法、排ガス処理方法、除菌処理方法、脱臭処理方法などが簡単な実現できる利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光触媒用担体の一例を示した斜視図である。
【図2】図1の光触媒用担体の端面図である。
【図3】本発明に係る光触媒用担体装置及び流体処理方法の一例を示した概略説明図である。
【図4】本発明に係る光触媒用担体装置及び流体処理方法の他の例を示した概略説明図である。
【図5】本発明に係る光触媒用担体の他の例を示した端面図である。
【図6】本発明に係る光触媒用担体の別の例を示した端面図である。
【図7】本発明に係る光触媒用担体装置及び流体処理方法の別の例を示した概略説明図である。
【図8】本発明に係る光触媒用担体のさらに他の例を示した斜視図である。
【図9】図9の光触媒用担体の端面図である。
【図10】本発明に係る光触媒用担体の他の例を示した端面図である。
【図11】本発明に係る光触媒用担体の別の例を示した端面図である。
【符号の説明】
10A〜10F 光触媒用担体
11 光導波体
12 穴
13 光触媒層
14 被覆層
20 狭帯域光源
30 光導入部
100 光触媒用担体装置
Claims (7)
- 光透過性材料からなりその長手方向に1又は2以上の穴を有する光導波体と、当該光導波体の少なくとも前記穴の内面側に設けた光触媒層とからなる光触媒用担体。
- 前記光導波体がガラス、石英ガラス又はプラスチックである請求項1記載の光触媒用担体。
- 前記光触媒層が多孔質構造である請求項1又は2記載の光触媒用担体。
- 前記光触媒層の光触媒がTiO2 、ZnO、Fe2 O3 、GaAs、CdS、GaP、SrTiO3 、WO3 又はこれらの化合物の少なくとも一つから選ばれる請求項1、2又は3記載の光触媒用担体。
- 前記請求項1、2、3又は4記載の光触媒用担体の光導波体の少なくとも一方の端面側に狭帯域光源を設置してなる光触媒用担体装置。
- 前記狭帯域光源が発光ダイオード、レーザーダイオード、エキシマレーザ、又は固体レーザである請求項5記載の光触媒用担体装置。
- 前記請求項5又は6記載の光触媒用担体装置において、光触媒用担体の光導波体に狭帯域光源からの光を導入する一方、少なくとも前記光導波体の穴の一方から他方にかけて処理対象の流体を通し、前記導入光による光触媒の活性化によって流体処理する流体処理方法。
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