JP2004074015A - 塗布装置および塗布方法 - Google Patents

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橋ヶ谷 学
Kenji Hayashi
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Abstract

【課題】高速で走行する被塗布物にも高い付着効率で塗布液を付着させることができる塗布装置および塗布方法の提供。
【解決手段】塗布液の液滴を形成する液滴形成手段と、一端部に前記液滴形成手段を収容し、他端部に開口部を有し、前記一端部から前記他端部に向かう気流を形成して前記液滴形成手段で形成された液滴を前記開口部から前記塗布液が塗布される被塗布物に向かって噴出させる気流形成ケーシングと気体供給手段とを備える塗布装置、および液滴形成手段において塗布液の液滴を形成し、一端部に前記液滴形成手段を収容し、他端部に開口部を有する気流形成ケーシングの前記一端部から前記他端部に向かう気流を形成し、前記液滴形成手段において形成した液滴を前記開口部から前記被塗布物に向かって噴出させる塗布方法。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布装置に関し、特に、塗布液の被塗布物への付着効率の高い塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PS版のマット化においては、マット化液の液滴を帯電させて帯電微粒子を形成し、PS版の製版面に静電的に付着させる静電塗布が広く行われてきた。前記静電塗布においては、連続した帯状のPS原版を一定方向に走行させてマット化を行うことが一般的であった。
【0003】
しかしながら、前記静電塗布においては、PS原版の走行速度が高くなると、マット化液の付着効率が落ちるという問題があった。
【0004】
従来は、前記マット化液を付着させる塗布装置とPS原版との距離を小さくしたり、マット化液の液滴に印加する電圧を高くするなどの方法により、前記問題に対処していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法を採ると、PS原版の製版面に前記マット化液の帯電滴が付着して形成されるマット化面の品質が低下したり、前記マット化液の帯電滴の電位が高くなり過ぎて前記帯電滴が容易に放電を起こすようになり、前記放電によって帯電滴が破壊して所定の大きさのマットが得られなくなるなどの問題があった。
【0006】
本発明は、PS原版などの被塗布物を高速で走行させつつ、マット化液などの塗布液を塗布するときに高い付着効率が得られる塗布装置および塗布方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、塗布液の液滴を形成する液滴形成手段と、一端部に前記液滴形成手段を収容するとともに、他端部に開口部を有してなり、前記一端部から前記他端部に向かう気流を形成し、前記液滴形成手段で形成された液滴を、前記開口部から前記塗布液が塗布される被塗布物に向かって噴出させる気流形成ケーシングと、前記液滴形成手段に隣接して設けられ、前記気流形成ケーシング内部に気体を供給する気体供給手段とを備えてなることを特徴とする塗布装置に関する。
【0008】
前記塗布装置においては、前記気体供給手段によって気流形成ケーシング内部に気体を供給することにより、気流形成ケーシングの一端部から他端部に向かう気流が形成される。前記気流は、開口部から前記被塗布物に向かって噴出するとともに、前記液滴形成手段で形成された液滴を被塗布物に向かって加勢する。
【0009】
したがって、前記被塗布物を一定方向に走行させながら前記塗布液を塗布する場合において、前記走行速度が高い場合にも、前記液滴が前記被塗布物に付着する効率である付着効率を高めることができる。
【0010】
故に、気流形成ケーシングのの開口部と前記被塗布物までの距離を短くする必要がないから、良好な塗布面が得られる。
【0011】
また、前記液滴形成手段として後述する静電霧化頭や静電霧化装置を使用する場合においても、印加電圧を通常の場合に比べて特に高くする必要がないから、液滴の電位が高くなり過ぎて前記液滴が放電破壊するなどの問題が生じることがない上、安全上からも好ましい。
【0012】
前記気流形成ケーシング内は、外界の圧力よりも10〜2000mm水柱だけ高い圧力に保持されていることが好ましく、特に50〜1000mm水柱だけ高い圧力に保持されていることが好ましい。
【0013】
前記気体供給手段によって供給できる気体としては、空気、乾燥空気、窒素ガス、およびアルゴンガスなどが挙げられる。
【0014】
前記気体供給手段としては、前記気流形成ケーシング内に気体を供給する給気ノズルおよび押込みファンなどが挙げられる。
【0015】
前記気流形成ケーシングの形状としては、一方の端面が開口した角柱状、多角柱状、および円柱状などの柱状形、並びに底面が開口した円錐状、角錐状、多角錐状、円錐台状、角錐台状、および多角錐台状などの形状、言い換えればメガホン形などが挙げられる。
【0016】
前記気流形成ケーシングの開口部と被塗布物との距離は、0.05〜20mmの範囲が好ましく、中でも0.1〜15mmの範囲が好ましく、特に1〜15mmの範囲が好ましい。
【0017】
前記被塗布物としては、前記PS原版が挙げられるが、前記PS原版には限定されず、前記PS原版の基材であるアルミニウム支持体ウェブ、およびステンレス鋼や普通鋼、アルミニウムなどの金属帯板、オーディオテープやビデオテープ、フロッピー(R)ディスクなどの磁気記録材料、および銀塩写真フィルムや印画紙などの感光材料などが挙げられる。
【0018】
前記被塗布物は、前記PS原版のように連続した帯状であってもよく、枚葉状であってもよい。
【0019】
前記塗布液としては、粘度が数mPa・s〜1,000mPa・sまたはそれ以上の範囲の粘度を有する溶液が挙げられる。このような溶液としては、具体的には、前記マット化液のように、水溶性ビニル系樹脂の水溶液を主成分とする塗料が挙げられる。
【0020】
前記水溶性ビニル系樹脂としては、具体的には、(メタ)アクリル酸またはその水溶性塩などの水溶性ビニル系モノマーを単独重合して得られる水溶性ビニル単独重合体、並びに複数の水溶性ビニル系モノマーの共重合、または前記水溶性ビニル系モノマーと、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン等のアルキル化スチレン、クロロスチレンなどのハロゲン化スチレン、およびジビニルベンゼンからなる群から選択された1種以上の疎水性ビニル系モノマーとの共重合により得られる水溶性ビニル共重合体が挙げられる。
【0021】
前記塗布液としては、他に、エマルジョン系塗料や溶剤系塗料、ハイソリッド型塗料などの各種塗料などが挙げられる。
【0022】
前記液滴形成手段としては、後述するインクジェットノズル、回転霧化頭、および静電霧化装置などが挙げられるが、前記塗布液を滴化できる装置であれば、これらには限定されない。
【0023】
請求項2に記載の発明は、前記気流形成ケーシングの内部を外界よりも高い圧力に保持することにより前記気流を形成する塗布装置に関する。
【0024】
前記塗布装置においては、気流形成ケーシングの内部と外界との圧力差により、前記気流形成ケーシングの開口部から被塗布物に向かって強い気流が発生する。したがって、前記液滴形成手段で形成された液滴は、前記気流に乗って高い付着効率で塗布液を被塗布物に付着する。
【0025】
請求項3に記載の発明は、前記気体供給手段が給気ノズルである塗布装置に関する。
【0026】
前記塗布装置においては、前記給気ノズルから気流形成ケーシングの内部に気体を噴射することにより、前記気流形成ケーシングの開口部から被塗布物に向かう気流を形成できる。
【0027】
また、前記液滴形成手段を囲繞するように前記給気ノズルを設けることにより、前記給気ノズルからの気流によって前記液滴形成手段からの液滴流を包み込むことができるから、前記液滴を被塗布物に効率良く付着させることができる。
【0028】
前記給気ノズルには、イオン化した気体を供給できるように電極を設け、前記電極に直流高電圧を印加してもよい。
【0029】
前記電極は、前記給気ノズルの内部または壁面に設けてもよく、また、前記給気ノズルを外側から囲繞するように設けてもよい。
【0030】
請求項4に記載の発明は、前記気流形成ケーシングが、開口部の周囲に気体流を形成する気体流形成手段を備えてなる塗布装置に関する。
【0031】
気流形成ケーシングの開口部から噴出した気流は、被塗布物に当ると外側に広がる方向に向きを変えると考えられる。
【0032】
したがって、前記開口部の周縁部においては、中心部に比較して外側に向かって吹き飛ばされる液滴の割合が多くなるから、付着効率が低くなると考えられる。
【0033】
しかしながら、前記塗布装置においては、前記開口部から噴出された液滴の流れである液滴流を外側から囲む気流が前記気体流形成手段によって形成され、前記気流はスカートのように機能して前記液滴流が外側に広がるのを防止すると考えられる。
【0034】
したがって、前記液滴を高い付着効率で前記被塗布物に付着させることができる。
【0035】
請求項5に記載の発明は、前記気体流形成手段が、前記被塗布物に向かって気体を噴出する気体噴出ノズルである塗布装置に関する。
【0036】
前記塗布装置においては、気体噴出ノズルから噴出された気体によって前記液滴流を外側から囲む気流が形成される。
【0037】
請求項6に記載の発明は、前記液滴形成手段が、帯電した液滴である帯電液滴を形成する帯電液滴形成手段であり、前記気体流形成手段が、前記帯電液滴と同極性にイオン化したイオン化気体を生成させ、前記イオン化気体を前記被塗布物に向かって噴出してイオン化気体流を形成するイオン化気体流形成手段である請塗布装置に関する。
【0038】
前記塗布装置においては、前記液滴帯電手段で形成された帯電液滴によって液滴流が形成される。
【0039】
一方、前記イオン化気体流形成手段によって形成されるイオン化気体流は、前記帯電液滴と同一の極性の電荷を有している。
【0040】
したがって、前記イオン化気体流は、前記液滴流を、外側から抑えて広がらないようにする力が特に強いと考えられる。
【0041】
したがって、前記塗布装置によれば、液滴を高い付着効率で前記被塗布物に付着させることができる。
【0042】
前記イオン化気体流の速度は、0.05〜15m/s程度が好ましく、中でも2〜10m/sの範囲が好ましく、特に、4〜8m/sの範囲が好ましい。
【0043】
前記イオン化気体流形成手段としては、後述するイオン化気体噴出ノズルとイオン化気体供給手段とからなるもののほか、前記気流形成ケーシングの内壁における開口部近傍に設けられ、内壁近傍の気体をイオン化するイオン化部と、前記イオン化部においてイオン化された気体を、前記開口部から前記被塗布物に向かう方向に誘導・加速する誘導加速電極を備えるイオン化気体流形成部とを備えるものが挙げられる。
【0044】
前記帯電滴形成手段としては、前記液滴形成手段のうちの回転霧化装置および静電霧化装置などが挙げられる。また、正又は負の電圧が印加されたインクジェットノズルも前記帯電滴形成手段として使用できる。
【0045】
請求項7に記載の発明は、前記イオン化気体流形成手段が、前記被塗布物に向かってイオン化気体を噴出するイオン化気体噴出ノズルと、前記イオン化気体噴出ノズルにイオン化気体を供給するイオン化気体供給手段とを備えてなる塗布装置に関する。
【0046】
前記塗布装置においては、イオン化気体噴出ノズルからイオン化気体を噴出させているから、高速のイオン化気体流を容易に形成できる。
【0047】
したがって、前記イオン化気体流は、気体流形成ケーシングから放出された液滴流を拡散しないように外側から押さえる作用が強いから、前記塗布装置は、被塗布物の速度が高い場合にも、高い付着効率で液滴を付着させることができる。
【0048】
請求項8に記載の発明は、前記イオン化気体供給手段が、前記イオン化気体噴出ノズルに気体を供給する気体供給流路と、前記気体供給流路に設けられ、前記期待供給流路を流通する気体をイオン化するイオン化手段とを備えてなる塗布装置に関する。
【0049】
前記塗布装置においては、前記気体供給流路を流通する気体は、前記イオン化手段によってイオン化され、前記イオン化気体噴出ノズルからは前記イオン化手段においてイオン化されたイオン気体が噴出される。
【0050】
前記気体供給流路としては、前記気流形成ケーシングの壁の内部に設けられた気体流路が挙げられる。前記気体流路は、連通孔状であってもよく、スリット状の幅広い流路であっても良い。また、前記気体ケーシングの内壁面上または外壁面上に設けられた管路であってもよい。
【0051】
前記イオン化手段としては、前記気体流路を挟むように設けら、高圧の直流又は交流電圧が印加される1対または2対以上のイオン化電極などが挙げられる。前記イオン化電極は、前記気体流路の壁面に設けてもよく、前記気体流路を囲むように前記気体流路の周囲に設けてもよい。
【0052】
前記イオン化電極に高圧の直流又は交流電圧を印加することにより、前記気体流路内部において無声放電またはコロナ放電が起き、前記気体流路内部を流通する気体がイオン化される。
【0053】
前記気体流路内部を流通させる気体としては、空気、乾燥空気、窒素ガス、およびアルゴンガスなどが挙げられる。
【0054】
請求項9に記載の発明は、前記液滴形成手段がインクジェットノズルである塗布装置に関する。
【0055】
前記塗布装置においては、前記液滴を帯電させる必要は必ずしもないから、高圧電圧は必ずしも必要ではない。
【0056】
したがって、構成が簡略化できるだけでなく、安全性が高い。また、液滴が放電を起こして破壊することも防止できるから、特に良好な塗布面が得られる。
【0057】
請求項10に記載の発明は、前記液滴形成手段が、軸線の回りに回転し、前記塗布液を霧化すると同時に帯電させて帯電液滴を形成し、前記被塗布物に向かって前記帯電液滴を放出する回転霧化頭を備える回転霧化装置である塗布装置に関する。
【0058】
前記回転霧化頭は、円盤状または一端に向かって拡大するベル状であり、毎分10,000〜30,000回転もの高速で回転する。そして、前記塗布液は、前記回転霧化頭の中心部に供給される。したがって、前記塗布液は、前記回転霧化頭に作用する強大な遠心力によって周縁部から外側に向かって飛散して液滴を形成するから、粘度が高い塗布液も容易に滴化される。
【0059】
また、前記回転霧化頭に高圧の直流を印加することにより、前記塗布液を周縁部から飛散させつつ帯電させて帯電液滴を形成できる。そして、前記被塗布物を接地するか、または前記被塗布物に前記回転霧化頭の印加電圧とは逆の極性の電圧を印加することにより、前記帯電液滴を前記被塗布物に向かって誘導できる。
【0060】
したがって、前記塗布装置においては、液滴には、気流形成ケーシングからの気流による推進力だけでなく、被塗布物との間の静電力も作用する。
【0061】
故に、前記塗布装置においては、マット化液のような高粘度の塗布液が好適に使用できるだけでなく、より高い付着効率で前記塗布液を前記被塗布物に付着させることができる。
【0062】
前記被塗布物としては、PS原版、アルミニウム支持体ウェブ、および金属帯板が、接地したり、電圧を印加したりすることが容易である故に好ましい。
【0063】
請求項11に記載の発明は、前記液滴形成手段が、前記塗布液を内部に貯留する塗布液室と、前記被塗布物に対して正又は負の電圧を前記塗布液室内の塗布液に印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段により電圧が印加された塗布液を前記被塗布物に向かって滴状に塗布する吐出ノズルとを有する静電霧化装置である塗布装置に関する。
【0064】
前記塗布装置においては、マット化液のように粘度の高い塗布液を、単分散性の高い滴状に吐出できるから、PS版のマット化に好適に使用できる。また、構成が簡略である。
【0065】
さらに、塗布液が前記液滴形成手段の周囲に飛散することがないから、気体流形成ケーシングの内部の汚れも少ない。
【0066】
請求項12に記載の発明は、液滴形成手段において塗布液の液滴を形成し、一端部に前記液滴形成手段を収容し、他端部に開口部を有する気流形成ケーシングにおいて、前記一端部から前記他端部に向かう気流を形成し、前記液滴形成手段において形成した液滴を前記開口部から前記被塗布物に向かって噴出させることを特徴とする塗布方法に関する。
【0067】
前記塗布方法によれば、請求項1のところで述べたのと同様の理由により、 被塗布物の走行速度が高い場合においても、高い付着効率で塗布液を被塗布物に付着させることができ、また良好な塗布面が得られる。
【0068】
液滴形成手段、塗布液、被塗布物については、請求項1のところで説明した通りである。
【0069】
【発明の実施の形態】
1.実施形態1
本発明に包含され、PS原版のマット化に使用するマット化装置の一例について、構成の概略を図1〜図3に示す。
【0070】
図1〜図3に示すように、マット化装置100は、矢印aの方向に搬送されるPS原版Pをマット化するマット化装置であり、ケーシング2とインクジェットノズル4と給気ノズル6とを備えている。
【0071】
ケーシング2は、底面が、PS原版Pが通過する経路である通過面Tに相対するように配設され、しかも開口部2Bが形成された角錐台状、換言すればメガホン状に形成されている。ケーシング2の底面は、PS原版Pの搬送方向aに沿った短辺と、前記方向に対して直角な方向の長辺とを有し、通過面Tに対して平行な長方形状である。前記長辺の長さは、通過面Tを走行するPS原版Pの幅にほぼ等しい。
【0072】
ケーシング2の開口部2Bと通過面Tとの距離dは、1〜15mmが好ましい。
【0073】
ケーシング2の頂面2Aには、図1および図2に示すように、インクジェットノズル4が貫通し、さらに、インクジェットノズル4を挟むように1群の給気ノズル6Aと給気ノズル6Bとが貫通している。給気ノズル6Aと給気ノズル6Bとは、空気を噴出するノズルである。インクジェットノズル4は、本発明に係る塗布装置の備える液滴形成手段に相当し、給気ノズル6Aと給気ノズル6Bは、前記塗布装置における気体供給手段に相当する。
【0074】
図2および図3に示すように、インクジェットノズル4は、搬送方向aに対して直角な方向に配設され、前記方向に沿って1列に配列されたインク噴射ノズル4Aを有する。給気ノズル6Aおよび給気ノズル6Bは、何れもインク噴射ノズル4Aの配列方向に対して平行に配設されている。
【0075】
マット化装置100においては、図4に示すように、ケーシング2およびインクジェットノズル4に、それぞれ高圧直流電源8および高圧直流電源10を接続し、正または負の直流高圧電流を印加してもよい。但し、ケーシング2およびインクジェットノズル4に高圧直流電圧を印加する場合には、同一の極性の電圧が印加されるようにする。また、図4に示すように、PS原版Pを搬送する搬送ローラのうち金属胴を有する金属胴ローラ12を接地するか、又は金属胴ローラ12にケーシング2およびインクジェットノズル4に印加される直流電圧とは反対の極性を有する高圧直流電圧を印加する。
【0076】
マット化装置100の作用について以下に説明する。
【0077】
前述のように、ケーシング2は、開口部2Bに向かって拡大する角錐台状に形成され、また、前述のように、ケーシング2の開口部2Bと通過面Tとの距離dは小さいから、マット化時のケーシング2とPS原版Pとの間の隙間は小さい。したがって、給気ノズル6Aおよび給気ノズル6Bから圧縮空気を供給すると、ケーシング2の内圧が上昇する。給気ノズル6Aおよび給気ノズル6Bからは、ケーシング2の内圧が外界の気圧よりも5〜2000mm水柱だけ高くなるような供給量で空気を供給することが好ましい。
【0078】
したがって、図2に示すように、ケーシング2の内部からPS原版Pに向かって均一で高速の気流が噴き出す。
【0079】
ここで、インクジェットノズル4からマット化液を滴状に噴出させてマット化液滴を形成すると、前記マット化液滴は、前記気流からの推進力を受けてケーシング2の内部から開口部2Bを通ってPS原版Pに向かって飛行する。したがって、前記マット化液滴は、ケーシング2の内壁面に付着することなく、PS原版Pに付着する。
【0080】
また、図4に示すように、ケーシング2およびインクジェットノズル4にたとえば負の高圧直流電圧を印加すると、インクジェットノズル4から噴出されたマット化液滴は負の電荷を帯びる。したがって、同様に負に帯電したケーシング2の内壁面と前記前記マット化液滴との間には電気的な反発力が作用するから、前記マット化液滴がケーシング2の内壁面に付着することがない。また、PS原版Pは、金属胴ローラ12を介して接地されているから、前記マット化液滴の帯電電位に対して相対的に正の電位を有する。
【0081】
したがって、マット化液滴には、ケーシング2における気流からの推進力に加えてPS原版Pからの電気的吸引力も作用するから、ケーシング2およびインクジェットノズル4に高圧直流電圧を印加しない場合に比較してさらに高い効率で付着させることができる。
【0082】
このように、マット化装置100は、構成が比較的単純でありながら、インクジェットノズル4で形成されたマット化液滴を無駄なくPS原版Pに付着させることができる。
【0083】
したがって、マット化装置100を用いてPS原版Pをマット化すれば、PS原版Pの搬送速度が高い場合にも、均一性の高い良質なマット化面が形成できる。
【0084】
特に、図4に示すように、インクジェットノズル4およびケーシング2に同一の極性の直流電圧を印加すれば、高い付着効率が得られるから、PS原版Pの搬送速度が高い場合にも、均一性の高い良質なマット化面が形成できる。
【0085】
2.実施形態2
本発明に包含されるマット化装置の別の例について、構成の概略を図5〜図7に示す。図5〜図7において、図1〜図3と同一の符号は、前記符号が前記図面において示す要素と同一の要素を示す。
【0086】
図5〜図7に示すように、実施形態2に係るマット化装置102は、実施形態1のマット化装置100において、インクジェットノズル4に代えて回転霧化装置14を使用し、PS原版Pの搬送方向aに対して直角の方向に沿って回転霧化装置14を複数台配設したマット化装置である。回転霧化装置14は、本発明に係る塗布装置における液滴形成手段に相当し、また帯電液滴形成手段にも相当する。
【0087】
ケーシング2および回転霧化装置14は、それぞれ高圧直流電源8および高圧直流電源16の負極側に接続され、負の電圧が印加されている。一方、PS原版Pのマット化面とは反対側の面には、金属胴ローラ12が当接している。金属ローラ12は、接地されている。
【0088】
回転霧化装置14の構成の詳細を図8および図9に示す。
【0089】
回転霧化装置14は、一端に向かって拡大する略円錐状ないしはベル状の回転霧化頭14Aと、前記回転霧化頭14Aを軸線の廻りに回転させるエアモータ14Bとを備える。
【0090】
回転霧化頭14Bは、一端に向かって円錐状に拡大する拡大部14Cと、拡大部14Cにおける小径側端部において拡大部14Cに連続するとともに、前記拡大部14Cに対して同心に形成された円筒状の円筒部14Dとを備えている。
【0091】
円筒部14Dにおける拡大部14Cに連続する側とは反対側の端部には、半径方向に沿って外側に伸びるフランジ14Eが形成されている。
【0092】
回転霧化頭14Aにおける円筒部14Dの軸線に沿って、前記マット化液などの塗料を噴霧する細管であるマット化液噴射管14Fが設けられている。円筒部14Dの内側における拡大部14Cに連続する側の端部には、端円筒状乃至円板状の噴霧滴受け体14Gが、円筒部14Dと同心に設けられている。噴霧滴受け体14Gは、1対または2対以上のピン14Hによって円筒部14Dの壁面に固定されている。マット化液噴射管14Fは、噴霧滴受け体14Gの近傍において、噴霧滴受け体14Gに向かって開口する。
【0093】
噴霧滴受け体14Gにおけるマット化液噴射管14Fの先端に向かい合う側の面は、円錐状に凹陥し、凹陥円錐面を形成している。前記凹陥円錐面の頂角θは、60〜180°の範囲が好ましい。噴霧滴受け体14Gの反対側の面も円錐状に凹陥していてもよい。前記面が凹陥円錐面を形成する場合には、前記凹陥円錐面の頂角は、60〜240°の範囲が好ましい。
【0094】
霧化頭14Aは、後述するように直流高電圧を印加する関係上、金属などの導電性材料で形成することが好ましい。
【0095】
一方、エアモータ14Bは、中空円筒状の回転軸14iを有している。回転軸4iの内腔は円筒部14Dの内腔に連通し、マット化液噴射管14Fは回転軸4iの内腔を貫通している。
【0096】
回転軸14iの末端には、半径方向に沿って外側に延在するフランジ14Jが設けられている。フランジ14Jの直径は、回転霧化頭14Aのフランジ14Eの直径と同一である。
【0097】
フランジ14Jは、フランジ14Eに、回転軸14iと円筒部14Dとが同心になるようにボルト14Kによって固定されている。
【0098】
エアモータ14Bの回転数は、6,000〜40,000rpm程度の範囲が、マット化液の滴が安定して形成できる点、および安全性が高い点から好ましい。
【0099】
なお、エアモータ14Bに代えて各種の電気モータも使用できる。電気モータを使用したときにおいても、前記範囲の回転数が好ましい。
【0100】
エアモータ14Bの外周面には、回転霧化頭14Aの拡大部14Cに向かって延在し、フランジ14Eとフランジ14Jとを内部に収容する円筒状の遮蔽筒14Lが装着されている。
【0101】
回転霧化装置14は、回転霧化頭14の拡大部14Cが、ケーシング2の開口部を向くようにケーシング2の頂面2Aに固定されている。
【0102】
また、高圧直流電源16の負極は、エアモータ14Bに接続されている。ここで、エアモータ14Bおよび回転霧化頭14Aは、何れも金属製であり、フランジ14Eとフランジ14Jとを介して電気的に接続されている。したがって、高圧直流電源16によってエアモータ14Bに負の直流電圧が印加されると、回転霧化頭14A全体に、同一の電圧が印加される。
【0103】
これらの諸点を除いては、マット化装置102は、実施形対1に係るマット化装置100と同一の構成を有している。
【0104】
マット化装置102の作用について以下に説明する。
【0105】
給気ノズル6Aおよび6Bから圧縮空気を供給すると、実施形態1のところで述べたように、ケーシング2からPS原版Pに向かって強い気流が発生する。
【0106】
一方、回転霧化装置14においては、以下のようにして帯電マット化液滴が形成される。
【0107】
エアモータ14Bに所定の直流電圧を印加して遮蔽筒14Lおよび拡大部14Cに負の高圧直流電圧を印加する。
【0108】
次いでエアモータ14Bを回転させ、マット化液噴射管14Fから噴霧滴受け体14Gに向かってマット化液を噴射すると、前記マット化液は、回転霧化頭14Aととともに回転する噴霧滴受け体14Gの円錐凹陥面において遠心力を受けて円筒部14Dに向かって移動し、均一な薄膜を形成しつつ、拡大部14Cの表側面を周縁部に向かって移動する。拡大部14Cには前述のように負の直流電圧が印加されているから、前記マット化液も、拡大部14Cの表側面に沿って移動する間に負に帯電し、拡大部14Cの周縁部から飛散して帯電マット化液滴が生成する。
【0109】
一方、フランジ14Eおよびフランジ14iの周囲には遠心力により循環流が生じるが、前記循環流は、遮蔽筒14Lの内側に言わば閉じ込められた状態にあるから、拡大部14Cの裏側面の近傍には、後ろ向きの気流は発生しない。
【0110】
したがって、拡大部14Cから放出された帯電マット化液滴は、殆ど全部が 回転霧化装置14の前方に向かって飛行する。
【0111】
ここで、前記帯電マット化液滴は負に帯電しているから、同じく負に帯電したケーシング2の内壁面との間には電気的な反発力が作用する故に、前記マット化液滴がケーシング2の内壁面に付着することがない。
【0112】
また、PS原版Pは、前記マット化液滴の帯電電位に対して相対的に電位に帯電するから、前記マット化液滴とPS原版Pとの間には、吸引力が作用する。
【0113】
したがって、帯電マット化液滴には、ケーシング2における気流からの推進力に加えてPS原版Pからの電気的吸引力も作用する。
【0114】
したがって、マット化装置102においては、実施形対1に係るマット化装置100に比較してさらに無駄なくマット化液をPS原版Pの表面に付着させることができる。
【0115】
さらに、回転霧化装置14においては、回転霧化頭14Aは高速で回転するから、マット化液には強大な遠心力が作用する。
【0116】
したがって、マット化液の粘度が高い場合においても、均一な直径の帯電マット化液滴を安定して形成できるから、粘度の高いマット化液を使用することにより、底面の直径に対して高さの高いマットを形成できる。
【0117】
3.実施形態3
本発明に包含されるマット化装置のさらに別の例について、構成の概略を図10〜図12に示す。図10〜図12において、図1〜図3と同一の符号は、前記符号が前記図面において示す要素と同一の要素を示す。
【0118】
図10〜図12に示すように、実施形態2に係るマット化装置104は、実施形態1のマット化装置100において、インクジェットノズル4に代えて静電霧化装置24を使用したマット化装置である。静電霧化装置24は、本発明に係る塗布装置における液滴形成手段に相当し、また、帯電液滴形成手段にも相当する。静電霧化装置24は、搬送方向aに対して直角の方向に沿って配設されている。
【0119】
ケーシング2および静電霧化装置24は、それぞれ高圧直流電源8および高圧直流電源18の負極側に接続され、負の電圧が印加されている。一方、PS原版Pのマット化面とは反対側の面には、金属胴ローラ12が当接している。金属ローラ12は、接地されている。
【0120】
静電霧化装置24は、図13および図14に示すように、 内部にマット化液溜り24Bが形成された直方体状の本体24Aと、マット化液溜り24Bの内壁面に固定された板状の電極24Dとを備える。電極24Dには、高圧直流電源18の負極が接続されている。
【0121】
本体24Aは、マット化液溜り24Bを形成するとともに両端が開口した中央部24Eと、中央部24Eの両端開口部を覆蓋する一対の端板24Fとから形成されている。
【0122】
前記中央部24Eの一の側壁面には、三角形状の断面を有する稜状の吐出ノズル部24Cが、本体2の幅方向に沿って全幅に亘って突出している。吐出ノズル部24Eの頂部は平面状に形成され、ノズル開口面24Gを形成している。吐出ノズル部24Cには、吐出孔24Hが一列に一定間隔で穿設され、ノズル開口面24G上に開口して本発明における吐出側の開口部を形成している。なお、吐出孔24Hの内面を金属鍍金し、電極24Dと電気的に接続してもよい。
【0123】
中央部24Eにおける吐出ノズル部24Cが形成された側壁面に相対する壁面には、マット化液溜り24Bにマット化液を供給するマット化液供給流路24Jが貫通している。
【0124】
中央部24E、端板24F、および吐出ノズル部24Cは、高分子量ポリエチレンや弗素樹脂などの前記撥水性材料により形成され、ボルト(図示せず。)で互いに締結されている。なお、中央部24Fを金属材料で形成して高圧力流電源18に接続すれば、電極24Dを省略できる。
【0125】
高圧直流電源装置18から電極24Dに負の高圧直流電圧を印加し、マット化液溜り24Bのマット化液を供給すると、前記マットヶ液は、電極8によって負に帯電する。ここで、吐出ノズル部24Cは撥水性材料で形成されているから、マット化液のノズル開口面24Gに対する接触角θは90°以上である。
【0126】
したがって、電極24Dからマット化液に印加された負の電圧によって生じる電界は、ノズル開口面24Gにおける吐出孔24Hの開口部に集中するから、吐出孔24Hを流通したマット化液は、Taylor coneと称する円錐状のメニスカスTcを形成する。前記メニスカルTcは、ノズル開口面24Gに生じた電界によって吐出孔24Hの開口部からPS原版Pに向かって細長く引き伸ばされ、先端部に、負の電荷を帯びた球状の帯電マット化液滴が形成される。前記帯電マット化液滴は、次第に成長し、メニスカスTcの先端からちぎれてPS原版Pに向かって飛行する。
【0127】
ここで、PS原版Pは、接地された金属胴ローラ12に接触しているから、電位は0であり、静電霧化装置24に対して相対的に正の電位にある。故に、静電霧化装置24で生じた帯電マット化液滴は、ケーシング2における気流からの推進力に加えてPS原版Pからの電気的吸引力も受ける。
【0128】
また、ケーシング2の内壁は負に帯電しているから、静電霧化装置24で生じた帯電マット化液滴がケーシング2の内壁に付着することはない。
【0129】
したがって、マット化装置104においては、実施形対1に係るマット化装置100に比較してさらに無駄なくマット化液をPS原版Pの表面に付着させることができる。
【0130】
加えて、帯電マット化液滴の直径は、静電霧化装置24における電界の強度、およびメニスカスTcの底面の直径によって決まるるが、前述のように、マット化液は、ノズル開口面24Gに対して疎であるから、吐出孔24Hの開口部に形成されたメニスカスが周辺に濡れ広がることはない。したがって、メニスカスの直径は、電界の強度のみに依存するから、電極24Dに印加する直流電圧の強さを増減させることにより、帯電マット化液滴の直径を高精度で制御できる。
【0131】
故に、PS版Wに均一なマットを形成できる。また、静電霧化装置24は回転部分を有しないから、コンパクトに形成できるうえ、マット化液がケーシング2の内壁に飛び散ることもない。
【0132】
4.実施形態4
実施形態2に係るマット化装置において、ケーシング2の開口部の周囲にイオン化気体噴出ノズルを設けた例を図15〜図17に示す。図15〜17において、図1〜図3と同一の符号は、前記符号が前記図面において示す要素と同一の要素を示す。
【0133】
実施形態4に係るマット化装置106の備えるケーシング22は、図1〜図3に示すマット化装置100の備えるケーシング2と同様、搬送方向aに対して直角な方向に長い矩形状の底面および頂面22Aを有する角錐台状であり、底面に開口部22Bが形成されている。
【0134】
ケーシング22の開口部22B近傍には、図15および図16に示すようにイオン化空気噴出ノズル26と空気イオン化装置28とが設けられている。空気イオン化装置28は、イオン化空気噴出ノズル26に連通するとともに、イオン化空気噴出ノズル26にイオン化した空気を供給する。イオン化空気噴出ノズル26は、図16に示すように、開口部22Bの周囲にスリット状に開口している。イオン化空気噴出ノズル26と空気イオン化装置28とは、本発明に係る塗布装置の備えるイオン化気体流形成手段に相当する。そして、イオン化空気噴出ノズル26および空気イオン化装置28は、それぞれ前記塗布装置におけるイオン化気体噴出ノズルおよびイオン化気体供給手段に相当する。
【0135】
空気イオン化装置28は、ケーシング22の外部に設けられたコンプレッサやブロワー、圧搾空気ライン、空気ボンベなどの空気源(図示せず。)とイオン化空気噴出ノズル26とを連通する空気供給流路28Aと、空気供給流路28Aの壁面に設けられ、高圧直流電源28Cの負極に接続されたイオン化電極28Bとを有する。空気供給流路28Aおよびイオン化電極28Bは、それぞれ本発明に係る塗布装置の備える気体供給流路およびイオン化手段に対応する。
【0136】
マット化装置106においては、ケーシング22を用いる代わりに、図17に示すように、実施形態2に係るマット化装置102の備えるケーシング2と同様のケーシング32を用い、ケーシング32の内壁面における開口部32Bの近傍に、前記内壁面近傍の空気をイオン化するイオン化電極34を設け、イオン化電極34よりも開口部32B寄りに、イオン化電極34でイオン化した空気を開口部32Bに向かって誘導・加速する誘導加速電極36を設けてもよい。イオン化電極34および誘導加速電極36は、本発明に係る塗布装置の備えるイオン化気体流形成手段に相当する。回転霧化装置14およびケーシング32には負の直流電圧が印加されているから、イオン化電極34にも負の直流電圧を印加してマイナスイオンを生じさせることが好ましい。そして、イオン化電極34で生じたマイナスイオンを電気的に吸引して加速できるように、加速電極36には正の直流電圧を印加することが好ましい。
【0137】
これらの諸点を除いては、実施形態2に係るマット化装置102と同様の構成を有している。
【0138】
マット化装置106の作用について以下に説明する。
【0139】
ケーシング2および回転霧化装置14の作用については、実施形態2のところで述べたとおりである。
【0140】
空気源(図示せず。)から空気供給流路28Aに空気を供給すると同時に、イオン化電極28Bに負の直流電圧を印加すると、供給された空気は、イオン化電極28Bにおいて負に帯電し、マイナスにイオン化したイオン化空気が発生する。
【0141】
前記イオン化空気は、イオン化空気噴出ノズル26からPS原版Pに向かって噴出される。したがって、開口部22Bから噴出される帯電マット化液滴の流れは、負の電荷を有するイオン化空気の流れによって外側から包まれるから、前記帯電マット化液滴がPS原版Pの両側縁から外側に向かって飛散することが防止される。
【0142】
故に、マット化装置106によれば、実施形態1〜実施形態3に係るマット化装置に比較してさらに高い付着効率でマット化液滴を付着させることができる。
【0143】
【実施例】
(実施例1〜7、比較例1)
図5〜図7に示すマット化装置102を用い、PS原版は20m/分の速度で搬送してPS原版をマット化した。
【0144】
マット化液としては、メチルメタクリレートとエチルアクリレートとアクリル酸ソーダとを68/20/12の重量比で共重合した水溶性共重合体の18重量%水溶液を用いた。
【0145】
ケーシング2の開口部22BとPS版Pとの距離を10mmに設定し、ケーシング2内部の圧力を外界よりも+0〜1000mm水柱(mmAq)高い圧力に設定した。
【0146】
マット化の評価は、塗布効率および塗布品質に基づいて行った。塗布効率は、回転霧化装置14から吐出したマット化液の量に対するPS原版Pに付着したマット化液の重量割合である付着効率によって評価した。また、塗布品質は、マット化面を目視して◎、○、△、×の4段階で評価した。
【0147】
結果を表1に示す
【0148】
【表1】
Figure 2004074015
表1から明らかなように、ケーシング2内部を加圧しなかった比較例1においては、塗布効率は30%と低く、塗布面質も明らかに劣っていた。これに対し、ケーシング2内部を加圧した実施例1〜7においては塗布効率は、50〜92%と高かった。特に内圧が+100〜300mmAq高かった実施例3〜5においては、塗布効率および塗布品質の何れも優れていた。
【0149】
(実施例8〜14)
図15および図16に示すマット化装置を用いて,PS原版Pを200m/分の速度で搬送しながらマット化液を行った。ケーシング22の内圧は、外界よりも+200mmAq高い圧力に設定した。イオン化空気噴出ノズル26から噴出するイオン化空気の流速を2m/sから14m/sの範囲で変化させて塗布効率および塗布品質を評価した。マット化液は、実施例1〜7と同様のものを用いた。
【0150】
結果を表2に示す。
【0151】
【表2】
Figure 2004074015
表2に示すように、イオン化空気噴出ノズル26からイオン化空気を噴出させることにより、PS原版Pの搬送速度が高い場合にも、高い塗布効率および塗布品質が得られることが判った。とくに、イオン化空気の流速が4〜6m/sのとき、塗布効率および塗布品質の何れも最良であった。
【0152】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、被塗布物を高速で走行させつつ、マット化液な度の塗布液を塗布する際にも、高い付着効率が得られる塗布装置および塗布方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る塗布装置の一例であるマット化装置につき、PS原版の搬送方向に対して平行な平面で切断した断面を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示すマット化装置につき、前記搬送方向に対して直角な面で切断した断面を示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示すマット化装置の備えるケーシングの開口部から前記マット化装置を見た構成を示す平面図である。
【図4】図4は、図1に示すマット化装置の備えるケーシングおよびインクジェットノズルに高圧直流電源を接続して高圧直流を印加するマット化装置の例を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明に包含されるマット化装置の別の例につき、PS原版の搬送方向に対して平行な平面で切断した断面を示す断面図である。
【図6】図6は、図5に示すマット化装置につき、前記搬送方向に対して直角な面で切断した断面を示す断面図である。
【図7】図7は、図5に示すマット化装置の備えるケーシングの開口部から前記マット化装置を見た構成を示す平面図である。
【図8】図8は、図5に示すマット化装置の備える回転霧化装置の構成を示す斜視図である。
【図9】図9は、図9に示す回転霧化装置を、軸線を通る平面で切断した断面を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明に包含されるマット化装置のさらに別の例につき、PS原版の搬送方向に対して平行な平面で切断した断面を示す断面図である。
【図11】図11は、図10に示すマット化装置につき、前記搬送方向に対して直角な面で切断した断面を示す断面図である。
【図12】図12は、図10に示すマット化装置の備えるケーシングの開口部から前記マット化装置を見た構成を示す平面図である。
【図13】図13は、図10に示すマット化装置の備える静電霧化装置の構成を示す断面図である。
【図14】図14は、図10に示すマット化装置の備える静電霧化装置の構成を示す断面図である。
【図15】図15は、図5に示すマット化装置の備えるケーシングの開口部の周囲にイオン化気体噴出ノズルを設けた例を示す断面図である。
【図16】図16は、図15に示すマット化装置をケーシングの開口部から見たところを示す平面図である。
【図17】図17は、ケーシングの開口部の周囲にイオン化気体噴出ノズルを設けたマット化装置の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
2    ケーシング
2B   開口部
4    インクジェットノズル
6A   給気ノズル
6B   給気ノズル
14    回転霧化装置
14A   回転霧化頭
14C   拡大部
22    ケーシング
22B   開口部
24    静電霧化装置
26    イオン化空気噴出ノズル
28    空気イオン化装置
34    イオン化電極
36    誘導加速電極

Claims (12)

  1. 塗布液の液滴を形成する液滴形成手段と、
    一端部に前記液滴形成手段を収容するとともに、他端部に開口部を有してなり、前記一端部から前記他端部に向かう気流を形成し、前記液滴形成手段で形成された液滴を、前記開口部から前記塗布液が塗布される被塗布物に向かって噴出させる気流形成ケーシングと、
    前記液滴形成手段に隣接して設けられ、前記気流形成ケーシング内部に気体を供給する気体供給手段とを
    備えてなることを特徴とする塗布装置。
  2. 前記気流形成ケーシングの内部を外界よりも高い圧力に保持することにより前記気流を形成する請求項1に記載の塗布装置。
  3. 前記気体供給手段は給気ノズルである請求項1または2に記載の塗布装置。
  4. 前記気流形成ケーシングは、開口部の周囲に気体流を形成する気体流形成手段を備えてなる請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布装置。
  5. 前記気体流形成手段は、前記被塗布物に向かって気体を噴出する気体噴出ノズルである請求項4に記載の塗布装置。
  6. 前記液滴形成手段は、帯電した液滴である帯電液滴を形成する帯電液滴形成手段であり、
    前記気体流形成手段は、前記帯電液滴と同極性にイオン化したイオン化気体を生成させ、前記イオン化気体を前記被塗布物に向かって噴出してイオン化気体流を形成するイオン化気体流形成手段である請求項4に記載の塗布装置。
  7. 前記イオン化気体流形成手段は、
    前記被塗布物に向かってイオン化気体を噴出するイオン化気体噴出ノズルと、
    前記イオン化気体噴出ノズルにイオン化気体を供給するイオン化気体供給手段とを備えてなる請求項6に記載の塗布装置。
  8. 前記イオン化気体供給手段は、
    前記イオン化気体噴出ノズルに気体を供給する気体供給流路と、
    前記気体供給流路に設けられ、前記期待供給流路を流通する気体をイオン化するイオン化手段とを
    備えてなる請求項7に記載の塗布装置。
  9. 前記液滴形成手段はインクジェットノズルである請求項1〜8の何れか1項に記載の塗布装置。
  10. 前記液滴形成手段は、軸線の回りに回転し、前記塗布液を霧化すると同時に帯電させて帯電液滴を形成し、前記被塗布物に向かって前記帯電液滴を放出する回転霧化頭を備える回転霧化装置である請求項1〜8の何れか1項に記載の塗布装置。
  11. 前記液滴形成手段は、
    前記塗布液を内部に貯留する塗布液室と、
    前記被塗布物に対して正又は負の電圧を前記塗布液室内の塗布液に印加する電圧印加手段と、
    前記電圧印加手段により電圧が印加された塗布液を前記被塗布物に向かって滴状に塗布する吐出ノズルとを
    有する静電霧化装置である請求項1〜8の何れか1項に記載の塗布装置。
  12. 液滴形成手段において塗布液の液滴を形成し、
    一端部に前記液滴形成手段を収容し、他端部に開口部を有する気流形成ケーシングにおいて、前記一端部から前記他端部に向かう気流を形成し、前記液滴形成手段において形成した液滴を前記開口部から前記被塗布物に向かって噴出させることを特徴とする塗布方法。
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