JP2004073481A - 縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】使用者の手間を増やすことなく、縫製動作中は、カセット取外手段の操作部材の誤操作を確実に防止し、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外せないようにして、縫目が崩れること等を防止することができる、縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラムを提供する。
【解決手段】ミシンモータが動作中のときに(S1;Yes )、下糸巻き軸が下糸巻き位置でないとき(S2;No)、縫製動作中であると判定されたこととなり、次に、ソレノイドアクチュエータがONされて駆動され(S4)、エジェクト操作部材が操作不能になり、カセット取外機構の糸カセット取り外し動作が制限される。
【選択図】 図18
【解決手段】ミシンモータが動作中のときに(S1;Yes )、下糸巻き軸が下糸巻き位置でないとき(S2;No)、縫製動作中であると判定されたこととなり、次に、ソレノイドアクチュエータがONされて駆動され(S4)、エジェクト操作部材が操作不能になり、カセット取外機構の糸カセット取り外し動作が制限される。
【選択図】 図18
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラムに関し、特に、縫製動作中は、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外せないようにした技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、糸駒を収容した糸カセットをカセット装着部に着脱自在に装着し、その糸カセットから延びる糸を上糸として使用するようにしたカセット着脱式の縫製装置が考案されている。カセット装着部に装着する糸カセットから導出される糸が、糸調子機構の1対の糸調子皿の間に掛けられ、この糸調子皿から下流側に延びる糸が天秤に掛けられ、この天秤から下流側に延びる糸が針棒に装着された縫針の針穴に通されてセットされる。
【0003】
このカセット着脱式の縫製装置において、例えば、本願出願人が出願している縫製装置(例えば、特願2002−201209 号)では、縫製装置の表面側から操作可能なエジェクトボタンが設けられ、カセット装着部に糸カセットが装着されている状態で、エジェクトボタンを操作すると、そのボタン操作に連動してカセット取外機構が作動し、糸カセットがカセット装着部に装着された状態から浮き上がって、カセット装着部から糸カセットの取り外しが可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記エジェクトボタンは操作し易いところに設けられていることもあって、縫製動作中であるにも関わらず、使用者が誤ってエジェクトボタンを操作してしまう虞がある。そうした場合、糸カセットがカセット装着部に装着された状態から浮き上がって、糸カセットから導出される糸の位置が変化して、糸調子機構、天秤、縫針、下糸、布(被縫製物)の少なくとも1つに対して、その糸が縫製可能にセットされた状態ではなくなり、縫目が崩れたりするという問題が生じる。
【0005】
そこで、エジェクトボタンをカバー部材で開閉可能に覆うことが考えられる。しかし、このカバー部材を使用者が実際に動かして開閉しなければならないものであると、カバー部材でエジェクトボタンを覆い忘れる虞もあって誤操作の原因になり兼ねない。また、カバー部材でエジェクトボタンが覆われた状態からカセット装着部から糸カセットを取り外す場合等、使用者がカバー部材を動かすために手間が増えるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、使用者の手間を増やすことなく、縫製動作中は、カセット取外手段の操作部材の誤操作を確実に防止し、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできないようにして、縫目が崩れること等を防止することができる、縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の縫製装置は、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段とを備えた縫製装置において、この縫製装置の表面側から操作可能な操作部材を有し、この操作部材を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、前記縫製手段が動作中であるか否か検出する縫製検出手段と、前記縫製検出手段の検出結果を受けて前記縫製手段が動作中の場合に、前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するカセット取外制限手段とを備えたものである。
【0008】
請求項1の縫製装置では、縫製検出手段により縫製手段が動作中であるか否か検出され、カセット取外制限手段により、縫製手段が動作中の場合にカセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限されて、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできないようになる。一方、縫製手段が動作中でない場合には、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限されなくなり、操作部材を操作するとことにより、カセット取外手段によりカセット装着部から糸カセットを取り外すことが可能になる。
【0009】
請求項2の縫製装置は、請求項1の発明において、前記縫製手段を駆動する駆動モータで駆動されて下糸を巻く下糸巻き手段と、前記駆動モータの駆動力を前記縫製手段と前記下糸巻き手段とに択一的に伝達する切換手段とを設け、前記駆動力が前記下糸巻き手段に伝達される状態においては、前記縫製検出手段は前記縫製手段が動作中でない場合であると検出するものである。
【0010】
請求項2の縫製装置では、切換手段により駆動モータの駆動力が縫製手段と下糸巻き手段とに択一的に伝達される。前記駆動力が下糸巻き手段に伝達される状態において、駆動モータが駆動されても、その駆動力は縫製手段に伝達されることはなく、縫製検出手段により縫製手段が動作中でない場合であると検出される。一方、前記駆動力が縫製手段に伝達される状態において、駆動モータが駆動されると、縫製検出手段により縫製手段が動作中であると検出される。
【0011】
請求項3の縫製装置は、請求項1又は2の発明において、前記カセット取外制限手段は、前記カセット取外手段の操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータと、前記縫製手段が動作中の場合に前記操作部材に前記係合ロック部を係合させるように前記アクチュエータを制御するカセット取外制限制御手段とを備えたものである。
【0012】
請求項3の縫製装置では、カセット取外制限制御手段によりアクチュエータが制御され、縫製手段が動作中の場合にアクチュエータにより係合ロック部が操作部材に係合されて、操作部材が操作不可能になってカセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限され、一方、縫製手段が動作中でない場合には、アクチュエータにより係合ロック部が操作部材から係合解除されて、操作部材が操作可能になり、カセット取外制限手段の糸カセット取り外し動作が制限されなくなる。
【0013】
請求項4の縫製装置は、請求項1〜3の何れかの発明において、前記操作部材が操作されたか否か検出する操作検出手段を設け、前記カセット取外制限手段は、前記縫製手段が動作中の場合、前記操作検出手段の検出結果を受けて操作部材が操作された場合に、前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するものである。
【0014】
請求項4の縫製装置では、操作検出手段により操作部材が操作されたか否か検出され、カセット取外制限手段により縫製手段が動作中の場合、操作部材が操作された場合にだけ、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限される。
【0015】
請求項5の縫製装置のカセット取外制限制御プログラムは、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段と、この縫製装置に設けられた操作部材を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、前記操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータとを備えた縫製装置のコンピュータに実行させる為のカセット取外制限制御プログラムであって、前記縫製手段が動作中であるか否か判定する第1ルーチンと、前記第1ルーチンの判定結果を受けて前記縫製手段が動作中の場合に、前記操作部材に前記係合ロック部を係合させて前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するように、前記アクチュエータを制御する第2ルーチンとを備えたものである。
【0016】
このカセット取外制限制御プログラムは、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段と、この縫製装置に設けられた操作部を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、前記操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータとを備えた縫製装置のコンピュータに適用される。このカセット取外制限制御プログラムを適用した縫製装置は、請求項1と同様の作用を奏する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態は、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部を備えた家庭用ミシンに、本発明を適用した場合の一例である。
【0018】
図1〜図4に示すように、家庭用のミシンMは、水平なベッド面を有するベッド部1と、ベッド部1の右端部分に立設された脚柱部2と、脚柱部2の上部からベッド部1と対向するように左方へ延びるアーム部3と、アーム部3の左端部分に設けられた頭部4とを有する。頭部4には、糸カセット10が着脱自在に装着されるカセット装着部5が設けられ、カセット装着部5に装着された糸カセット10から導出される糸11が上糸として使用される。
【0019】
アーム部3(の頭部4)には、縫製開始スイッチ、縫製終了スイッチ、等々の操作スイッチ類6(図16参照)が設けられている。また、アーム部3には、画面を正面に向けた液晶ディスプレイ7が設けられ、その液晶ディスプレイ7の表面にタッチパネル8(図16参照)が設けられている。
【0020】
図2、図4、図9、図10、図15に示すように、頭部4には、針棒12、天秤13、カセット装着部5に装着する糸カセット10から導出される糸11の糸調子を調節する糸調子機構14、カセット装着部5に糸カセット10を装着する際にそのカセット装着動作に連動して作動する糸搬送機構16A及び糸通し機構16B及び糸掛け機構17、針棒12を上下動させる針棒上下動機構18、針棒12を揺動させる針棒揺動機構19、天秤駆動機構等が設けられている。
【0021】
糸搬送機構16Aは、カセット装着部5に糸カセット10装着する際に、糸カセット10から導出される糸11を引っ掛けて針棒12に装着された縫針12aの針穴12b付近まで運んでくる機構であり、糸通し機構16Bは、カセット装着部5に糸カセット10を装着する際に、糸カセット10から導出され糸搬送機構16Aで針穴12b付近まで運ばれてきた糸11を針穴12bに通す機構である。糸掛け機構17は、カセット装着部5に装着する糸カセット10から導出される糸11を針棒12の針棒糸案内H(図12参照)に糸掛けする機構である。
【0022】
図3、図4に示すように、カセット装着部5に装着された糸カセット10から導出される糸11は、糸調子機構14の1対の糸調子皿41,42の間の糸調子軸40(図11等参照)に上側から掛けられ、その糸調子軸40から下流側へ延びる糸11が天秤13に掛けられ、天秤13から下流側へ延びる糸11が針棒12に装着された縫針12aの針穴12bに通されて縫製可能にセットされる。
【0023】
ベッド部1にはボビン装着部(図示略)が設けられ、このボビン装着部に装着されたボビン(図示略)から延びる糸が下糸として使用される。また、ベッド部1には、釜機構(図示略)が設けられている。上糸と下糸を縫製可能にセットした状態で、ミシンモータ9(図16参照)が駆動されると、針棒上下動機構18により針棒12が上下動され、これに同期して釜機構が駆動されて、その釜機構によりベッド部1の針板1aよりも下側に下降した縫針12a付近の上糸11が引っ掛けられ、その上糸11と下糸とが交絡して縫目が形成される。
【0024】
ここで、糸カセット10について説明する。図5〜図8に示すように、糸カセット10は、カセット本体20と、カセット本体20に枢着された開閉部材21とを有し、これらの内部に糸供給源である糸駒22を収容する糸収容部23が形成されている。開閉部材21には糸立棒24が取り付けられ、開閉部材21を前側へ開くと(図7参照)、糸立棒24への糸駒22の着脱が可能になり、糸駒22が糸立棒24に装着された状態で、開閉部材21を閉めるとその糸駒22が収容部23に収容される。
【0025】
糸駒22からは糸11が上側へ延びて収容部23外に導出され、そこから、カセット本体20と開閉部材21の左端間の糸経路25を通って、糸カセット10の左下端部の糸掛け部26aに導かれてそこに掛けられ、そこから右方へ延びて仕切壁27の下端部の糸掛け部26bと糸カセット10の右下端部の糸掛け部26cに掛けられ、そこから前方へ延びてから糸掛け部26dに掛けられてUターンし、左方へ延びて糸保持部28に保持されて、更に左方へ延びる糸11は、糸保持部28の左側の刃29で切断され糸掛け部26eに掛けられる。
【0026】
以上のように糸11をセットした糸カセット10は、カセット装着部5に装着された状態のものでなく、カセット装着部5に装着するために準備された状態のものである。この糸カセット10の右端部分には、後方と下方を開口した天秤ガイドスペース30がほぼ上下全長に亙って形成され、糸カセット10の下端部分の中央部分に下方を開口した糸調子スペース31が形成され、これらのスペース30,31が仕切壁27により仕切られている。
【0027】
カセット装着部5には糸カセット10を下降させて挿入していくが、その際に、天秤ガイドスペース30に天秤13とこの天秤13をガイドする天秤ガイド13a(図2等参照)が下側から入り込み、糸調子スペース31に糸調子機構14の糸調子軸40と1対の糸調子皿41,42が下側から入り込む。尚、糸調子軸40等が糸カセット10と干渉しないように、カセット本体20の後壁下端部に切欠き20aが形成されている。糸カセット10をカセット装着部5に少し挿入したところで、先ず、天秤ガイドスペース30に入り込んだ天秤13に、糸11の糸掛け部26b,26cの間の糸部分11aが引っ掛かる。
【0028】
その後、糸カセット10をカセット装着部5に挿入していくと、前記糸部分11aが掛かった天秤13に対して糸掛け部26a,26bが下降していくが、この糸部分11aよりも下流側の糸11は糸保持部28に保持された状態が維持されるため、糸収容部23の糸駒22から糸11が引き出されていって、例えば、糸カセット10を2/3程度挿入したときの糸部分11aは図1、図2のような山型になる。糸カセット10をカセット装着部5に装着すると、図3、図4に示すように、糸掛け部26a,26bの間の糸部分11bが、糸調子スペース31に入り込んだ1対の糸調子皿41,42の間の糸調子軸40に引っ掛かる。
【0029】
糸調子機構14について説明する。図11に示すように、糸調子機構14は、フレーム(図示略)に固定されて後方へ延びる糸調子軸40と、糸調子軸40に固定的に外嵌された前糸調子皿41と、前糸調子皿41に面接触可能に糸調子軸40に外嵌された後糸調子皿42と、糸調子軸40に外装されて後糸調子皿42を前方の前糸調子皿41に付勢する圧縮コイルバネからなる糸調子バネ42aとを有し、1対の糸調子皿41,42を開閉させるパルスモータ44(図16参照)を含む開閉機構部43(図11参照)が設けられている。
【0030】
開閉機構部43は、パルスモータ44の他に複数のギヤ部材やリンク部材を有し、少なくとも糸カセット10をカセット装着部5に装着する際に糸調子皿41,42を開放し、糸カセット10をカセット装着部5に装着すると糸調子皿41,42を閉じ、また、糸カセット10をカセット装着部5から取り外す際に糸調子皿41,42を開放する。尚、パルスモータ44は、針棒揺動機構19と共通のモータになっている。
【0031】
糸搬送機構16Aについて説明する。図9、図12に示すように、糸搬送機構16Aは、針棒台60(図13参照)が枢着されたフレームに設けられ、糸カセット10から導出される糸11を引っ掛ける糸掛け部材50と、糸掛け部材50を待機位置(図9参照)から姿勢を変化させつつ下降させて糸掛け位置(図示略)→糸運び位置(図12参照)へと移動させる糸掛け駆動機構部55を有する。
【0032】
糸掛け部材50は前後1対の糸掛け板51を有し、前記糸掛け位置において、糸カセット10から導出される糸11の天秤13よりも下流側部分が、1対の糸掛け板51に亙ってピンと張った状態に引っ掛けられ、前記糸運び位置において、糸掛け部材50の上下方向位置は針棒12の位置に対して位置決めされ、1対の糸掛け板51の間に縫針12aが位置して、糸11が針穴12bに接近する。
【0033】
糸通し機構16Bについて説明する。図13、図14に示すように、糸通し機構16Bは針棒台60に設けられ、針棒12の左側において針棒台60に上下動可能に支持された糸通し軸61及びスライダガイド軸62と、これら糸通し軸61とスライダガイド軸62の上端部分に上下動自在に外嵌された糸通しスライダ63と、糸通し軸61の下端部に取り付けられたフック機構部64を有する。尚、針棒12は針棒台60に上下動可能に支持され、この針棒台60の上端部がフレームに枢支されて、針棒12と糸通し機構16Bは一体的に揺動する。
【0034】
糸通し軸61の上部に上下2本のピン65a,65bが突出され、上側のピン65aが糸通しスライダ63に形成された螺旋的な係合溝63aに係合し、下側のピン65bが針棒12に外嵌固着された係合部材12cに上側から係合可能になっている。糸通し軸61には糸通し軸61に対してスライダ63を上方へ付勢する圧縮コイルバネ66が外装され、通常、ピン65aは係合溝63aの下端部に係合している。
【0035】
また、スライダガイド軸62には糸通しスライダ63を上方へ付勢する圧縮コイルバネ67が外装され、通常、糸通し軸61と糸通しスライダ63は上限位置に位置している。図14に示すように、フック機構部64は、針穴12bを貫通可能で先端に糸掛部68aを有する糸通しフック68と、糸通しフック68の両側に位置する2枚のガイド部材69と、糸通しフック68の糸掛け部68aに係合可能なワイヤ69aとを有する。
【0036】
糸カセット10がカセット装着部5に装着されていないときには、糸通し機構16Bは図13に示す状態になっているが、糸カセット10をカセット装着部5に装着していくと、糸通しスライダー63が下降し、最初は、糸通し軸61も一体的に下降する。そして、糸通し軸61は、そのピン65bが針棒12の係合部材12cに上側から係合すると下方への移動が禁止されて停止し、針棒12に対する糸通し軸61の上下方向位置が位置決めされる。
【0037】
その後、糸通し軸61に対して糸通しスライダー63が下降するため、ピン65aが糸通しスライダ63の螺旋的な係合溝63aを上側へと係合していって、糸通し軸61が回動される。このとき、フック機構部64は、縫針12a付近に位置しており、しかも、前記糸搬送機構16Aにより糸カセット10から導出される糸11も縫針12a付近に運ばれ、縫針12aの手前に張られた状態で保持されている。
【0038】
即ち、糸通し軸61が回動されると、図14(a)に示すように、フック機構部64の糸通しフック68が針穴12bを貫通して、図14(b)に示すように、糸通しフック68の先端の糸掛け部68aにより糸11が引っ掛けられてから、糸通し軸61が前記と逆方向に回動されると、糸通しフック68が針穴12bから抜けて、針穴12bに糸11が通される。尚、このとき、針棒糸案内Hにも糸11は糸掛け機構17によって掛けられる。
【0039】
針棒上下動機構18はミシンモータ9(駆動モータ)により駆動されて針棒12を上下動し、その駆動力はミシンモータ9から主軸9aとクランク機構部等18a(図10参照)等を介して針棒上下動機構18に伝達される。針棒揺動機構19は、パルスモータ44(図16参照)により駆動され、このパルスモータ44を往復駆動することにより、往復回動されるカム(図示略)により針棒12の揺動動作を発生させる。
【0040】
尚、ミシンモータ9により回転駆動される主軸9aの角度を検出する主軸角検出センサ91(図16参照)が設けられ、また、カセット装着部5への糸カセット10の装着の有無を検出するカセット検出手段としてのカセット検出スイッチ92(図16参照)が設けられている。
【0041】
さて、図9に示すように、このミシンMには、頭部4に設けられミシンMの表面側から操作可能なエジェクト操作部材71を有し、このエジェクト操作部材71を操作することによりカセット装着部5から糸カセット10を取り外し可能にするカセット取外機構70と、縫製動作中にカセット取外機構70の糸カセット取外動作を制限するカセット取外制限機構80とが設けられている。
【0042】
図9、図10、図15に示すように、カセット取外機構70は、エジェクト操作部材71と、このエジェクト操作部材71に連動連結されたリンク72と、カセット装着部5に装着されている糸カセット10をエジェクトする為のエジェクト機構部73等を備えている。
【0043】
エジェクト操作部材71は、頭部4の左側へ突出してほぼ前後方向に操作可能な操作部71aと、この操作部71aが上端部に固定されて下端部がフレーム79に軸71cを介して枢支された縦長の操作レバー71bを有する。操作レバー71bの下端部にリンク72が軸71cを介して固定され、軸71c回りに操作レバー71bが揺動されるとリンク72も一体的に揺動される。
【0044】
図10に示すように、エジェクト機構部73は、縦向きのガイド軸74、このガイド軸74に外嵌されて上下方向に移動自在にガイドされたエジェクト部材75、このエジェクト部材75を上方へ付勢する引っ張りコイルバネ76を有する。カセット装着部5に糸カセット10が装着されていない状態では、引っ張りコイルバネ76によりエジェクト部材75は図示の上限位置に位置している。
【0045】
エジェクト部材75の下端部には前方へ張出す張出部75aが形成され、この張出部75aに、糸カセット10のカセット本体20に形成された段部20b(図7、図8参照)が上側から係合可能になっている。カセット装着部5に糸カセット10を装着していくと、糸カセット10の段部20bがエジェクト部材75の張出部75aに係合し、その後、引っ張りコイルバネ76の付勢力に抗して、糸カセット10と一体的にエジェクト部材75が下降していく。
【0046】
そして、カセット装着部5に糸カセット10が完全に装着されると、エジェクト部材75が下限位置に位置し、そこで、エジェクト部材75が係合部材(図示略)に係合されて下限位置に保持される。カセット装着部5に糸カセット10を装着した状態で、エジェクト操作部材71が操作されて後方に移動されると、リンク72等を介して前記係合部材が移動され、この係合部材によるエジェクト部材75の保持が解除される。すると、引っ張りコイルバネ76によりエジェクト部材75が下限位置から上昇して糸カセット10が撥ね上げられて浮き上がり、カセット装着部5から糸カセット10を取り外すことが可能になる。
【0047】
図9に示すように、カセット取外制限機構80は、頭部4の内部において操作レバー71bの左側において右向きに固定され、カセット取外機構70のエジェクト操作部材71の操作レバー71bにその出力部からなる係合ロック部82を係脱させるソレノイドアクチュエータ81と、縫製動作中に操作レバー72bに係合ロック部82を係合させるようにソレノイドアクチュエータ81を制御する制御装置90(図16参照)とを備えている。
【0048】
例えば、操作レバー71bには係合穴71dが形成されており、前述のように、カセット装着部5に糸カセット10が装着され、エジェクト部材75が下限位置に保持された状態で、この係合穴71dと係合ロック部82とが係合可能な位置関係となり、ソレノイドアクチュエータ81が通電されてONになると、係合ロック部82が右方へ突出して係合穴71dに係合する。尚、ソレノイドアクチュエータ81が通電されていなければ、係合ロック部82を図9の左方へ付勢している引張バネ(図示略)の弾性力により、係合ロック部82は係合穴71dから離脱している。
【0049】
すると、エジェクト操作部材71が操作不可能(移動不可能)になって、カセット取外機構70の糸カセット取外動作が制限され、エジェクト操作部材71を操作してカセット装着部5から糸カセット10を取り外しできないようになる。即ち、エジェクト操作部材71を後方へ移動させないので、前記係合部材も移動されず、エジェクト部材75は係合部材に保持されたままである。尚、このエジェクト操作部材71が操作されると、糸調子機構14の1対の糸調子皿42が強制的に開放されるようになっている。
【0050】
また、このミシンMには、アーム部3の右部に、針棒上下動機構18を駆動するミシンモータ9(駆動モータ)によって駆動されて下糸を巻く下糸巻き機構Dと、ミシンモータ9の駆動力を針棒上下動機構10と下糸巻き機構Dとに択一的に伝達する切換機構Eとが設けられている。切換機構Eにより下糸巻き機構Dの下糸巻き軸D1が下糸巻き位置に切り換えると、ミシンモータ9の駆動力が下糸巻き機構Dに伝達されて糸巻き機構Dが作動して下糸巻き軸D1が回転する。
【0051】
その下糸巻き軸D1に取り付けられたボビンは、下糸巻き軸D1と一体的に回転し、そのボビンに、所定の装着部に装着された糸供給源(例えば、糸カセット10とは別に設けられた糸駒13)から糸を引き出して下糸として巻き付けることができる。そして、前記下糸巻き軸D1の位置(図1に実線で示す待機位置又は図1に破線で示す下糸巻き位置)を検出する下糸巻き切換検出スイッチ73(図15参照)が設けられている。
【0052】
ここで、針棒上下動機構18等が、カセット装着部5に装着された糸カセット10から導出される糸11を用いて縫製する縫製手段に相当し、下糸巻き切換検出スイッチ73と制御装置90が、縫製手段(針棒上下動機構18等)が動作中であるか否か検出する縫製検出手段に相当する。
【0053】
そして、ミシンモータ9が駆動されている状態で、且つ、ミシンモータ9の駆動力が針棒上下動機構18に伝達される状態においてのみ、針棒上下動機構18が動作中であると検出され、それ以外の状態においては、針棒上下動機構18が動作中でない場合であると検出される。つまり、ミシンモータ9の駆動力が下糸巻き機構Dに伝達される状態においては、たとえミシンモータ9が駆動されていても、針棒上下動機構18が動作中でない場合であると検出される。
【0054】
そして、カセット取外制限機構80は、前記の検出結果を受けて針棒上下動機構18が動作中の場合に、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限し、具体的には、制御装置90によりソレノイドアクチュエータ81を制御して、その係合ロック部82を操作レバー71bの係合穴71dに係合させて、エジェクト操作部材71を操作不可能にする。
【0055】
次に、ミシンMの制御系について説明する。図16に示すように、ミシンMの制御装置90は、CPU90a、ROM90b、RAM90c、入力インターフェース90d、出力インターフェース90eを有する。入力インターフェース90dに、操作スイッチ類6、タッチパネル8、主軸角検出センサ91、カセット検出スイッチ92、下糸巻き切換検出スイッチ93が電気的に接続され、出力インターフェース90eに、ミシンモータ9、パルスモータ44、ソレノイドアクチュエータ81、液晶ディスプレイ7、ランプ類94を駆動する為の駆動回路95a〜95eが電気的に接続されている。
【0056】
図17に示すように、ROM90bには、ミシンMの制御プログラムが格納されており、その制御プログラムは、縫製の為の縫製制御プログラム、カセット装着部5に糸カセット10を着脱する際のカセット着脱制御プログラム、カセット取外制限制御を行うカセット取外制限制御プログラム、ディスプレイ7に表示させる為の表示制御プログラムを備えている。
【0057】
特に、カセット取外制限制御プログラムは、縫製動作中であるか否か判定する第1ルーチンと、この第1ルーチンの判定結果を受けて縫製動作中の場合に、エジェクト操作部材71に係合ロック部82を係合させてカセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限するように、ソレノイドアクチュエータ81を制御する第2ルーチンとを備えている。
【0058】
次に、制御装置90がカセット取外制限制御プログラムに基づいて実行する制御について、図18のフローチャートに基づいて説明する。但し、フローチャート中のSi(i=1、2、3・・・)は各ステップを示す。
【0059】
この制御は、例えば1msec毎のインターバル割り込みにより開始され、先ず、ミシンモータ9が動作中か否か判定される(S1)。次に、ミシンモータ9が動作中のときには(S1;Yes )、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置か否か判定される(S2)。そして、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置でないとき(S2;No)、縫製動作中であると判定され、次に、ソレノイドアクチュエータ81がONされて駆動され(S3)、エジェクト操作部材71が操作不能になり、その他のインターバル処理(S5)の後、このインターバル割り込み制御が終了する。
【0060】
一方、ミシンモータ9が動作中でないときに(S1;No)、或いは、ミシンモータ9が動作中のときでも(S1;Yes )、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置のとき(S2;Yes )、縫製動作中でない場合であると判定され、次に、ソレノイドアクチュエータ81がOFFされて(S4)、エジェクト操作部材71が操作可能になり、その他のインターバル処理(S5)の後、このインターバル割り込み制御が終了する。
【0061】
尚、S1とS2が前記第1ルーチンに相当し、S3が第2ルーチンに相当する。そして、S1〜S3及びこのS1〜S3を実行する制御装置10が、針棒上下動機構18が動作中の場合にエジェクト操作部材71に係合ロック部82を係合させるようにソレノイドアクチュエータ81を制御するカセット取外制限制御手段に相当する。
【0062】
このミシンMの作用・効果について説明する。針棒上下動機構18が動作中(縫製動作中)であるか否か検出され、この場合、ミシンモータ9が動作中であるか否か、及び、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置であるか否か、の判定に基づいて行われる。カセット装着部5に糸カセット10が装着された状態で、縫製動作中でない場合、エジェクト操作部材71の後方への操作が可能になり、このエジェクト操作部材71を後方へ操作することにより、カセット取外機構70により、糸カセット10がエジェクトされて浮き上がり、カセット装着部5から糸カセット10を取り外し可能になる。
【0063】
一方、カセット装着部5に糸カセット10が装着された状態で、縫製動作中の場合、カセット取外制限機構80により、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作が制限される。この場合、制御装置90によりソレノイドアクチュエータ81が制御され、このソレノイドアクチュエータ81により係合ロック部82がエジェクト操作部材71の係合穴71dに係合して、エジェクト操作部材71の操作が不可能になり、このエジェクト操作部材71を操作してカセット装着部5から糸カセット9を取り外しできないようになる。
【0064】
このように、カセット取外制限機構80により、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作の制限/制限解除を自動的に行うことができ、使用者の手間を増やすことなく、縫製動作中は、カセット取外機構70のエジェクト操作部材71の誤操作を確実に防止し、カセット装着部5から糸カセット10を取り外しできないようにして、前記誤操作により、縫目が崩れること、場合によっては、縫針12aが折れること、その他の部材等が破損すること、等を確実に防止することができる。
【0065】
また、前記下糸巻き機構Dと切換機構Eとを設け、ミシンモータ9の駆動力が下糸巻き機構Dに伝達される状態においては、針棒上下動機構18が動作中でない場合であると検出するので、針棒上下動機構18が動作中でないことを確実に検出し、このとき、カセット取外制限機構80によりカセット取外機構70の糸カセット取り外し動作が制限されなくなり、エジェクト操作部材71を後方に操作してカセット装着部5から糸カセット10を取り外しできるようになる。
【0066】
カセット取外制限機構80は、カセット取外機構70のエジェクト操作部材71に係合ロック部82を係脱させるソレノイドアクチュエータ81と、針棒上下動機構18が動作中の場合にエジェクト操作部材71に係合ロック部82を係合させるようにソレノイドアクチュエータ81を制御する制御装置90とを備えたので、針棒上下動機構18が動作中の場合、係合ロック部82をエジェクト操作部材71に係合させて、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を簡単・確実に制限することができる。尚、ミシンMの電源が遮断されている場合にも、係合ロック部82は係合穴71bから離脱しており、糸カット取り外し動作は可能である。
【0067】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変更形態について説明する。
【0068】
1]エジェクト操作部材71が操作されたか否か検出する操作検出手段に相当するエジェクト操作検出スイッチ89(図19参照)を設け、カセット取外制限機構80は、針棒上下動機構18が動作中の場合、エジェクト操作検出スイッチ89の検出結果を受けてエジェクト操作部材71が操作された場合に、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限するようにしてもよい。即ち、縫製中は常にソレノイドアクチュエータ81がON状態であり、その分電力が消費され、ソレノイドアクチュエータ81はON状態では熱を発する。
【0069】
図19に示すように、エジェクト操作検出スイッチ89は制御装置90の入力インタフェース90dに電気的に接続され、このエジェクト操作検出スイッチ89は、例えば、エジェクト操作部材71が操作されたとき(瞬間)にONするリミットスイッチで構成されている。
【0070】
この場合、カセット取外制限制御プログラムに基づいて制御装置90が実行する制御は、図20に示すように、前記の図18のフローチャートにおいて、S1とS2の間に、エジェクト操作部材71が操作されたか否か(S10)のステップを挿入したものになり、この判定が、エジェクト操作検出スイッチ89の検出結果を受けて行われる。
【0071】
即ち、針棒上下動機構18が動作中の場合、エジェクト操作検出スイッチ89の検出結果を受けてエジェクト操作部材71が操作された場合にだけ、ソレノイドアクチュエータ81をONにして、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限することができる。従って、電力の消費を少なくでき、ソレノイドアクチュエータ81からの発熱を少なくできる。
【0072】
2]前記下糸巻き機構Dと切換機構Eを省略したミシンに構成してもよい。この場合、針棒上下動機構18が動作中か否かは、ミシンモータ9が動作中か否かのみの判定で判断される。つまり、制御装置90が実行する制御は、図18、図20のS1を省略したものになる。また、上述の実施の形態では、カセット装着部5に装着された糸カセット10とは別の糸駒の糸を下糸巻き用の糸としているが、そのカセット装着部5に装着された糸カセット10に納められた糸駒22の糸を下糸巻き用の糸とする構成のミシンであっても、同様に、針棒上下動機構18が動作中か否かは、ミシンモータ9が動作中か否かのみの判定で判断される。
【0073】
3]ソレノイドアクチュエータ81により係合ロック部82を、エジェクト操作部材71に形成された係合穴71dに係脱させるようにしているが、カセット装着部5に糸カセット10が装着されている状態において、エジェクト操作部材71のうち、糸カセット10を取り外すために揺動させる側(例えば後側)の端縁に係合ロック部82を係合させて、エジェクト操作部材71を操作不能にするようにしてもよい。
【0074】
4]ソレノイドアクチュエータ81の出力部以外の部材を係合ロック部として、その係合ロック部をエジェクト操作部材71に係脱させるように、ソレノイドアクチュエータ81を駆動するようにしてもよいし、ソレノイドアクチュエータ81以外の電動モータ等の種々のアクチュエータにより、係合ロック部をエジェクト操作部材71に係脱させるように構成してもよい。
【0075】
5]エジェクト操作部材71を省略し、或いは、エジェクト操作部材71を設けたうえで、ディスプレイ7にエジェクト操作ボタン等のを操作部表示を行い、この表示に対応するタッチパネル8の部分をタッチすることにより、カセット取外機構70を作動可能にしてもよい。この場合、カセット取外機構70を作動させるアクチュエータが必要となるが、タッチ操作した際、針棒上下動機構18が動作中の場合には、カセット取外機構70を作動させ、針棒上下動機構18が動作中でない場合には、カセット取外機構70を作動させないように制御して前記糸カセット取り外し動作の制限/制限解除を行うことが可能になる。
【0076】
6]カセット取外機構において、カセット装着部5に装着された糸カセット10を排出する為に、その糸カセット10に接触する排出ローラ、この排出ローラを回転駆動する電動モータを設け、この電動モータを制御することにより、カセット装着部5から糸カセット10を取り外したり、又は、カセット装着部5から糸カセット10を取り外しできないように構成したミシン(本願出願人による特願2002−189517 号)について、上述の糸カセット取り外し動作を制限するようにしてもよい。
【0077】
7]前記実施形態の糸カセットは一例を開示したものにすぎず、適用可能な糸カセットとして、例えば、糸駒等に糸を巻いた糸供給源ではなく、糸を塊状にした糸供給源を収容部に収容して使用する糸カセットとしてもよい。また、糸収容部を覆う壁を少なくとも1つ省略し、糸立棒等の保持部に糸駒等を保持して収容するようにしてもよい。
【0078】
8]制御装置70のROM70bに格納されている、カセット取外制限制御プログラムは、前記ミシンMと同等のミシンに適用できるものであり、このカセット取外制限制御プログラムを、インターネット等の通信手段を介して、或いは、CDやMDやFD等の記録媒体に記録してその記録媒体と共にユーザー等に供給してもよい。
9]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加して実施可能である。
【0079】
【発明の効果】請求項1の縫製装置によれば、前記操作部材を有するカセット取外手段と縫製検出手段とカセット取外制限手段とを設け、縫製手段が動作中の場合に、カセット取外制限手段によりカセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するので、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできないようになり、縫製手段が動作中でない場合には、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限しないようにして、操作部材を操作することによりカセット装着部から糸カセットを取り外し可能にすることができる。つまり、使用者の手間を増やすことなく、縫製動作中は、カセット取外手段の操作部材の誤操作を確実に防止し、カセット装着部から糸カセットを取り外しできないようにして、縫目が崩れたりすること等を防止することができる。
【0080】
請求項2の縫製装置によれば、前記下糸巻き手段と切換手段とを設け、前記駆動力が下糸巻き手段に伝達される状態においては、縫製検出手段は縫製手段が動作中でない場合であると検出するので、このとき、カセット取外制限手段によりカセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限されなくなり、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできるようになる。
【0081】
請求項3の縫製装置によれば、カセット取外制限手段は、カセット取外手段の操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータと、縫製手段が動作中の場合に操作部材に係合ロック部を係合させるようにアクチュエータを制御するカセット取外制限制御手段とを備えたので、縫製手段が動作中の場合、係合ロック部を操作部材に係合させて、操作部材を操作不可能にして、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を簡単・確実に制限することができる。
【0082】
請求項4の縫製装置によれば、前記操作検出手段を設け、カセット取外制限手段は、縫製手段が動作中の場合、操作検出手段の検出結果を受けて操作部材が操作された場合に、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するので、縫製手段が動作中の場合に、操作部材が操作された場合にだけ、カセット取外制限手段によりカセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限できる。
【0083】
請求項5の縫製装置のカセット取外制限制御プログラムによれば、カセット装着部と縫製手段とを備えた縫製装置のコンピュータに適用でき、このカセット取外制限制御プログラムを適用した縫製装置は、請求項1と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るミシン(糸カセット装着途中状態)の正面図である。
【図2】ミシン(糸カセット装着途中状態)の頭部を切り欠いた正面図である。
【図3】ミシン(糸カセット装着状態)の正面図である。
【図4】ミシン(糸カセット装着状態)の頭部を切り欠いた正面図である。
【図5】糸カセットの正面図である。
【図6】糸カセットの背面図である。
【図7】糸カセット(開閉部材開放状態)の左側面図である。
【図8】糸カセットの底面図である。
【図9】ミシンの頭部内の前側の正面図である。
【図10】ミシンの頭部内の前側の正面図である。
【図11】糸調子機構の糸調子皿等の平面図である。
【図12】糸搬送機構の左側面図である。
【図13】糸通し機構の(a)は左側面図(b)は正面図である。
【図14】糸通し機構の作動説明図であり(a)は糸通しフックが針穴を貫通した状態(b)は糸通しフックが針穴から抜けて糸が通された状態を示す。
【図15】ミシンの頭部内の前側の左側面図である。
【図16】ミシンの制御系のブロック図である。
【図17】制御装置のROMに格納されているプログラムを示す図表である。
【図18】針棒位置制御を含む初期設定処理のフローチャートである。
【図19】変更形態に係るミシンの制御系のブロック図である。
【図20】変更形態に係るカセット取外制限制御を含むフローチャートである。
【符号の説明】
M ミシン
5 カセット装着部
9 ミシンモータ
10 糸カセット
18 針棒上下動機構
22 糸駒
23 糸収容部
70 カセット取外機構
71 エジェクト操作部材
80 カセット取外制限機構
81 ソレノイドアクチュエータ
82 係合ロック部
89 操作検出スイッチ
90 制御装置
【発明の属する技術分野】本発明は縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラムに関し、特に、縫製動作中は、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外せないようにした技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、糸駒を収容した糸カセットをカセット装着部に着脱自在に装着し、その糸カセットから延びる糸を上糸として使用するようにしたカセット着脱式の縫製装置が考案されている。カセット装着部に装着する糸カセットから導出される糸が、糸調子機構の1対の糸調子皿の間に掛けられ、この糸調子皿から下流側に延びる糸が天秤に掛けられ、この天秤から下流側に延びる糸が針棒に装着された縫針の針穴に通されてセットされる。
【0003】
このカセット着脱式の縫製装置において、例えば、本願出願人が出願している縫製装置(例えば、特願2002−201209 号)では、縫製装置の表面側から操作可能なエジェクトボタンが設けられ、カセット装着部に糸カセットが装着されている状態で、エジェクトボタンを操作すると、そのボタン操作に連動してカセット取外機構が作動し、糸カセットがカセット装着部に装着された状態から浮き上がって、カセット装着部から糸カセットの取り外しが可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記エジェクトボタンは操作し易いところに設けられていることもあって、縫製動作中であるにも関わらず、使用者が誤ってエジェクトボタンを操作してしまう虞がある。そうした場合、糸カセットがカセット装着部に装着された状態から浮き上がって、糸カセットから導出される糸の位置が変化して、糸調子機構、天秤、縫針、下糸、布(被縫製物)の少なくとも1つに対して、その糸が縫製可能にセットされた状態ではなくなり、縫目が崩れたりするという問題が生じる。
【0005】
そこで、エジェクトボタンをカバー部材で開閉可能に覆うことが考えられる。しかし、このカバー部材を使用者が実際に動かして開閉しなければならないものであると、カバー部材でエジェクトボタンを覆い忘れる虞もあって誤操作の原因になり兼ねない。また、カバー部材でエジェクトボタンが覆われた状態からカセット装着部から糸カセットを取り外す場合等、使用者がカバー部材を動かすために手間が増えるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、使用者の手間を増やすことなく、縫製動作中は、カセット取外手段の操作部材の誤操作を確実に防止し、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできないようにして、縫目が崩れること等を防止することができる、縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の縫製装置は、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段とを備えた縫製装置において、この縫製装置の表面側から操作可能な操作部材を有し、この操作部材を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、前記縫製手段が動作中であるか否か検出する縫製検出手段と、前記縫製検出手段の検出結果を受けて前記縫製手段が動作中の場合に、前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するカセット取外制限手段とを備えたものである。
【0008】
請求項1の縫製装置では、縫製検出手段により縫製手段が動作中であるか否か検出され、カセット取外制限手段により、縫製手段が動作中の場合にカセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限されて、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできないようになる。一方、縫製手段が動作中でない場合には、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限されなくなり、操作部材を操作するとことにより、カセット取外手段によりカセット装着部から糸カセットを取り外すことが可能になる。
【0009】
請求項2の縫製装置は、請求項1の発明において、前記縫製手段を駆動する駆動モータで駆動されて下糸を巻く下糸巻き手段と、前記駆動モータの駆動力を前記縫製手段と前記下糸巻き手段とに択一的に伝達する切換手段とを設け、前記駆動力が前記下糸巻き手段に伝達される状態においては、前記縫製検出手段は前記縫製手段が動作中でない場合であると検出するものである。
【0010】
請求項2の縫製装置では、切換手段により駆動モータの駆動力が縫製手段と下糸巻き手段とに択一的に伝達される。前記駆動力が下糸巻き手段に伝達される状態において、駆動モータが駆動されても、その駆動力は縫製手段に伝達されることはなく、縫製検出手段により縫製手段が動作中でない場合であると検出される。一方、前記駆動力が縫製手段に伝達される状態において、駆動モータが駆動されると、縫製検出手段により縫製手段が動作中であると検出される。
【0011】
請求項3の縫製装置は、請求項1又は2の発明において、前記カセット取外制限手段は、前記カセット取外手段の操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータと、前記縫製手段が動作中の場合に前記操作部材に前記係合ロック部を係合させるように前記アクチュエータを制御するカセット取外制限制御手段とを備えたものである。
【0012】
請求項3の縫製装置では、カセット取外制限制御手段によりアクチュエータが制御され、縫製手段が動作中の場合にアクチュエータにより係合ロック部が操作部材に係合されて、操作部材が操作不可能になってカセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限され、一方、縫製手段が動作中でない場合には、アクチュエータにより係合ロック部が操作部材から係合解除されて、操作部材が操作可能になり、カセット取外制限手段の糸カセット取り外し動作が制限されなくなる。
【0013】
請求項4の縫製装置は、請求項1〜3の何れかの発明において、前記操作部材が操作されたか否か検出する操作検出手段を設け、前記カセット取外制限手段は、前記縫製手段が動作中の場合、前記操作検出手段の検出結果を受けて操作部材が操作された場合に、前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するものである。
【0014】
請求項4の縫製装置では、操作検出手段により操作部材が操作されたか否か検出され、カセット取外制限手段により縫製手段が動作中の場合、操作部材が操作された場合にだけ、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限される。
【0015】
請求項5の縫製装置のカセット取外制限制御プログラムは、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段と、この縫製装置に設けられた操作部材を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、前記操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータとを備えた縫製装置のコンピュータに実行させる為のカセット取外制限制御プログラムであって、前記縫製手段が動作中であるか否か判定する第1ルーチンと、前記第1ルーチンの判定結果を受けて前記縫製手段が動作中の場合に、前記操作部材に前記係合ロック部を係合させて前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するように、前記アクチュエータを制御する第2ルーチンとを備えたものである。
【0016】
このカセット取外制限制御プログラムは、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段と、この縫製装置に設けられた操作部を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、前記操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータとを備えた縫製装置のコンピュータに適用される。このカセット取外制限制御プログラムを適用した縫製装置は、請求項1と同様の作用を奏する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態は、糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部を備えた家庭用ミシンに、本発明を適用した場合の一例である。
【0018】
図1〜図4に示すように、家庭用のミシンMは、水平なベッド面を有するベッド部1と、ベッド部1の右端部分に立設された脚柱部2と、脚柱部2の上部からベッド部1と対向するように左方へ延びるアーム部3と、アーム部3の左端部分に設けられた頭部4とを有する。頭部4には、糸カセット10が着脱自在に装着されるカセット装着部5が設けられ、カセット装着部5に装着された糸カセット10から導出される糸11が上糸として使用される。
【0019】
アーム部3(の頭部4)には、縫製開始スイッチ、縫製終了スイッチ、等々の操作スイッチ類6(図16参照)が設けられている。また、アーム部3には、画面を正面に向けた液晶ディスプレイ7が設けられ、その液晶ディスプレイ7の表面にタッチパネル8(図16参照)が設けられている。
【0020】
図2、図4、図9、図10、図15に示すように、頭部4には、針棒12、天秤13、カセット装着部5に装着する糸カセット10から導出される糸11の糸調子を調節する糸調子機構14、カセット装着部5に糸カセット10を装着する際にそのカセット装着動作に連動して作動する糸搬送機構16A及び糸通し機構16B及び糸掛け機構17、針棒12を上下動させる針棒上下動機構18、針棒12を揺動させる針棒揺動機構19、天秤駆動機構等が設けられている。
【0021】
糸搬送機構16Aは、カセット装着部5に糸カセット10装着する際に、糸カセット10から導出される糸11を引っ掛けて針棒12に装着された縫針12aの針穴12b付近まで運んでくる機構であり、糸通し機構16Bは、カセット装着部5に糸カセット10を装着する際に、糸カセット10から導出され糸搬送機構16Aで針穴12b付近まで運ばれてきた糸11を針穴12bに通す機構である。糸掛け機構17は、カセット装着部5に装着する糸カセット10から導出される糸11を針棒12の針棒糸案内H(図12参照)に糸掛けする機構である。
【0022】
図3、図4に示すように、カセット装着部5に装着された糸カセット10から導出される糸11は、糸調子機構14の1対の糸調子皿41,42の間の糸調子軸40(図11等参照)に上側から掛けられ、その糸調子軸40から下流側へ延びる糸11が天秤13に掛けられ、天秤13から下流側へ延びる糸11が針棒12に装着された縫針12aの針穴12bに通されて縫製可能にセットされる。
【0023】
ベッド部1にはボビン装着部(図示略)が設けられ、このボビン装着部に装着されたボビン(図示略)から延びる糸が下糸として使用される。また、ベッド部1には、釜機構(図示略)が設けられている。上糸と下糸を縫製可能にセットした状態で、ミシンモータ9(図16参照)が駆動されると、針棒上下動機構18により針棒12が上下動され、これに同期して釜機構が駆動されて、その釜機構によりベッド部1の針板1aよりも下側に下降した縫針12a付近の上糸11が引っ掛けられ、その上糸11と下糸とが交絡して縫目が形成される。
【0024】
ここで、糸カセット10について説明する。図5〜図8に示すように、糸カセット10は、カセット本体20と、カセット本体20に枢着された開閉部材21とを有し、これらの内部に糸供給源である糸駒22を収容する糸収容部23が形成されている。開閉部材21には糸立棒24が取り付けられ、開閉部材21を前側へ開くと(図7参照)、糸立棒24への糸駒22の着脱が可能になり、糸駒22が糸立棒24に装着された状態で、開閉部材21を閉めるとその糸駒22が収容部23に収容される。
【0025】
糸駒22からは糸11が上側へ延びて収容部23外に導出され、そこから、カセット本体20と開閉部材21の左端間の糸経路25を通って、糸カセット10の左下端部の糸掛け部26aに導かれてそこに掛けられ、そこから右方へ延びて仕切壁27の下端部の糸掛け部26bと糸カセット10の右下端部の糸掛け部26cに掛けられ、そこから前方へ延びてから糸掛け部26dに掛けられてUターンし、左方へ延びて糸保持部28に保持されて、更に左方へ延びる糸11は、糸保持部28の左側の刃29で切断され糸掛け部26eに掛けられる。
【0026】
以上のように糸11をセットした糸カセット10は、カセット装着部5に装着された状態のものでなく、カセット装着部5に装着するために準備された状態のものである。この糸カセット10の右端部分には、後方と下方を開口した天秤ガイドスペース30がほぼ上下全長に亙って形成され、糸カセット10の下端部分の中央部分に下方を開口した糸調子スペース31が形成され、これらのスペース30,31が仕切壁27により仕切られている。
【0027】
カセット装着部5には糸カセット10を下降させて挿入していくが、その際に、天秤ガイドスペース30に天秤13とこの天秤13をガイドする天秤ガイド13a(図2等参照)が下側から入り込み、糸調子スペース31に糸調子機構14の糸調子軸40と1対の糸調子皿41,42が下側から入り込む。尚、糸調子軸40等が糸カセット10と干渉しないように、カセット本体20の後壁下端部に切欠き20aが形成されている。糸カセット10をカセット装着部5に少し挿入したところで、先ず、天秤ガイドスペース30に入り込んだ天秤13に、糸11の糸掛け部26b,26cの間の糸部分11aが引っ掛かる。
【0028】
その後、糸カセット10をカセット装着部5に挿入していくと、前記糸部分11aが掛かった天秤13に対して糸掛け部26a,26bが下降していくが、この糸部分11aよりも下流側の糸11は糸保持部28に保持された状態が維持されるため、糸収容部23の糸駒22から糸11が引き出されていって、例えば、糸カセット10を2/3程度挿入したときの糸部分11aは図1、図2のような山型になる。糸カセット10をカセット装着部5に装着すると、図3、図4に示すように、糸掛け部26a,26bの間の糸部分11bが、糸調子スペース31に入り込んだ1対の糸調子皿41,42の間の糸調子軸40に引っ掛かる。
【0029】
糸調子機構14について説明する。図11に示すように、糸調子機構14は、フレーム(図示略)に固定されて後方へ延びる糸調子軸40と、糸調子軸40に固定的に外嵌された前糸調子皿41と、前糸調子皿41に面接触可能に糸調子軸40に外嵌された後糸調子皿42と、糸調子軸40に外装されて後糸調子皿42を前方の前糸調子皿41に付勢する圧縮コイルバネからなる糸調子バネ42aとを有し、1対の糸調子皿41,42を開閉させるパルスモータ44(図16参照)を含む開閉機構部43(図11参照)が設けられている。
【0030】
開閉機構部43は、パルスモータ44の他に複数のギヤ部材やリンク部材を有し、少なくとも糸カセット10をカセット装着部5に装着する際に糸調子皿41,42を開放し、糸カセット10をカセット装着部5に装着すると糸調子皿41,42を閉じ、また、糸カセット10をカセット装着部5から取り外す際に糸調子皿41,42を開放する。尚、パルスモータ44は、針棒揺動機構19と共通のモータになっている。
【0031】
糸搬送機構16Aについて説明する。図9、図12に示すように、糸搬送機構16Aは、針棒台60(図13参照)が枢着されたフレームに設けられ、糸カセット10から導出される糸11を引っ掛ける糸掛け部材50と、糸掛け部材50を待機位置(図9参照)から姿勢を変化させつつ下降させて糸掛け位置(図示略)→糸運び位置(図12参照)へと移動させる糸掛け駆動機構部55を有する。
【0032】
糸掛け部材50は前後1対の糸掛け板51を有し、前記糸掛け位置において、糸カセット10から導出される糸11の天秤13よりも下流側部分が、1対の糸掛け板51に亙ってピンと張った状態に引っ掛けられ、前記糸運び位置において、糸掛け部材50の上下方向位置は針棒12の位置に対して位置決めされ、1対の糸掛け板51の間に縫針12aが位置して、糸11が針穴12bに接近する。
【0033】
糸通し機構16Bについて説明する。図13、図14に示すように、糸通し機構16Bは針棒台60に設けられ、針棒12の左側において針棒台60に上下動可能に支持された糸通し軸61及びスライダガイド軸62と、これら糸通し軸61とスライダガイド軸62の上端部分に上下動自在に外嵌された糸通しスライダ63と、糸通し軸61の下端部に取り付けられたフック機構部64を有する。尚、針棒12は針棒台60に上下動可能に支持され、この針棒台60の上端部がフレームに枢支されて、針棒12と糸通し機構16Bは一体的に揺動する。
【0034】
糸通し軸61の上部に上下2本のピン65a,65bが突出され、上側のピン65aが糸通しスライダ63に形成された螺旋的な係合溝63aに係合し、下側のピン65bが針棒12に外嵌固着された係合部材12cに上側から係合可能になっている。糸通し軸61には糸通し軸61に対してスライダ63を上方へ付勢する圧縮コイルバネ66が外装され、通常、ピン65aは係合溝63aの下端部に係合している。
【0035】
また、スライダガイド軸62には糸通しスライダ63を上方へ付勢する圧縮コイルバネ67が外装され、通常、糸通し軸61と糸通しスライダ63は上限位置に位置している。図14に示すように、フック機構部64は、針穴12bを貫通可能で先端に糸掛部68aを有する糸通しフック68と、糸通しフック68の両側に位置する2枚のガイド部材69と、糸通しフック68の糸掛け部68aに係合可能なワイヤ69aとを有する。
【0036】
糸カセット10がカセット装着部5に装着されていないときには、糸通し機構16Bは図13に示す状態になっているが、糸カセット10をカセット装着部5に装着していくと、糸通しスライダー63が下降し、最初は、糸通し軸61も一体的に下降する。そして、糸通し軸61は、そのピン65bが針棒12の係合部材12cに上側から係合すると下方への移動が禁止されて停止し、針棒12に対する糸通し軸61の上下方向位置が位置決めされる。
【0037】
その後、糸通し軸61に対して糸通しスライダー63が下降するため、ピン65aが糸通しスライダ63の螺旋的な係合溝63aを上側へと係合していって、糸通し軸61が回動される。このとき、フック機構部64は、縫針12a付近に位置しており、しかも、前記糸搬送機構16Aにより糸カセット10から導出される糸11も縫針12a付近に運ばれ、縫針12aの手前に張られた状態で保持されている。
【0038】
即ち、糸通し軸61が回動されると、図14(a)に示すように、フック機構部64の糸通しフック68が針穴12bを貫通して、図14(b)に示すように、糸通しフック68の先端の糸掛け部68aにより糸11が引っ掛けられてから、糸通し軸61が前記と逆方向に回動されると、糸通しフック68が針穴12bから抜けて、針穴12bに糸11が通される。尚、このとき、針棒糸案内Hにも糸11は糸掛け機構17によって掛けられる。
【0039】
針棒上下動機構18はミシンモータ9(駆動モータ)により駆動されて針棒12を上下動し、その駆動力はミシンモータ9から主軸9aとクランク機構部等18a(図10参照)等を介して針棒上下動機構18に伝達される。針棒揺動機構19は、パルスモータ44(図16参照)により駆動され、このパルスモータ44を往復駆動することにより、往復回動されるカム(図示略)により針棒12の揺動動作を発生させる。
【0040】
尚、ミシンモータ9により回転駆動される主軸9aの角度を検出する主軸角検出センサ91(図16参照)が設けられ、また、カセット装着部5への糸カセット10の装着の有無を検出するカセット検出手段としてのカセット検出スイッチ92(図16参照)が設けられている。
【0041】
さて、図9に示すように、このミシンMには、頭部4に設けられミシンMの表面側から操作可能なエジェクト操作部材71を有し、このエジェクト操作部材71を操作することによりカセット装着部5から糸カセット10を取り外し可能にするカセット取外機構70と、縫製動作中にカセット取外機構70の糸カセット取外動作を制限するカセット取外制限機構80とが設けられている。
【0042】
図9、図10、図15に示すように、カセット取外機構70は、エジェクト操作部材71と、このエジェクト操作部材71に連動連結されたリンク72と、カセット装着部5に装着されている糸カセット10をエジェクトする為のエジェクト機構部73等を備えている。
【0043】
エジェクト操作部材71は、頭部4の左側へ突出してほぼ前後方向に操作可能な操作部71aと、この操作部71aが上端部に固定されて下端部がフレーム79に軸71cを介して枢支された縦長の操作レバー71bを有する。操作レバー71bの下端部にリンク72が軸71cを介して固定され、軸71c回りに操作レバー71bが揺動されるとリンク72も一体的に揺動される。
【0044】
図10に示すように、エジェクト機構部73は、縦向きのガイド軸74、このガイド軸74に外嵌されて上下方向に移動自在にガイドされたエジェクト部材75、このエジェクト部材75を上方へ付勢する引っ張りコイルバネ76を有する。カセット装着部5に糸カセット10が装着されていない状態では、引っ張りコイルバネ76によりエジェクト部材75は図示の上限位置に位置している。
【0045】
エジェクト部材75の下端部には前方へ張出す張出部75aが形成され、この張出部75aに、糸カセット10のカセット本体20に形成された段部20b(図7、図8参照)が上側から係合可能になっている。カセット装着部5に糸カセット10を装着していくと、糸カセット10の段部20bがエジェクト部材75の張出部75aに係合し、その後、引っ張りコイルバネ76の付勢力に抗して、糸カセット10と一体的にエジェクト部材75が下降していく。
【0046】
そして、カセット装着部5に糸カセット10が完全に装着されると、エジェクト部材75が下限位置に位置し、そこで、エジェクト部材75が係合部材(図示略)に係合されて下限位置に保持される。カセット装着部5に糸カセット10を装着した状態で、エジェクト操作部材71が操作されて後方に移動されると、リンク72等を介して前記係合部材が移動され、この係合部材によるエジェクト部材75の保持が解除される。すると、引っ張りコイルバネ76によりエジェクト部材75が下限位置から上昇して糸カセット10が撥ね上げられて浮き上がり、カセット装着部5から糸カセット10を取り外すことが可能になる。
【0047】
図9に示すように、カセット取外制限機構80は、頭部4の内部において操作レバー71bの左側において右向きに固定され、カセット取外機構70のエジェクト操作部材71の操作レバー71bにその出力部からなる係合ロック部82を係脱させるソレノイドアクチュエータ81と、縫製動作中に操作レバー72bに係合ロック部82を係合させるようにソレノイドアクチュエータ81を制御する制御装置90(図16参照)とを備えている。
【0048】
例えば、操作レバー71bには係合穴71dが形成されており、前述のように、カセット装着部5に糸カセット10が装着され、エジェクト部材75が下限位置に保持された状態で、この係合穴71dと係合ロック部82とが係合可能な位置関係となり、ソレノイドアクチュエータ81が通電されてONになると、係合ロック部82が右方へ突出して係合穴71dに係合する。尚、ソレノイドアクチュエータ81が通電されていなければ、係合ロック部82を図9の左方へ付勢している引張バネ(図示略)の弾性力により、係合ロック部82は係合穴71dから離脱している。
【0049】
すると、エジェクト操作部材71が操作不可能(移動不可能)になって、カセット取外機構70の糸カセット取外動作が制限され、エジェクト操作部材71を操作してカセット装着部5から糸カセット10を取り外しできないようになる。即ち、エジェクト操作部材71を後方へ移動させないので、前記係合部材も移動されず、エジェクト部材75は係合部材に保持されたままである。尚、このエジェクト操作部材71が操作されると、糸調子機構14の1対の糸調子皿42が強制的に開放されるようになっている。
【0050】
また、このミシンMには、アーム部3の右部に、針棒上下動機構18を駆動するミシンモータ9(駆動モータ)によって駆動されて下糸を巻く下糸巻き機構Dと、ミシンモータ9の駆動力を針棒上下動機構10と下糸巻き機構Dとに択一的に伝達する切換機構Eとが設けられている。切換機構Eにより下糸巻き機構Dの下糸巻き軸D1が下糸巻き位置に切り換えると、ミシンモータ9の駆動力が下糸巻き機構Dに伝達されて糸巻き機構Dが作動して下糸巻き軸D1が回転する。
【0051】
その下糸巻き軸D1に取り付けられたボビンは、下糸巻き軸D1と一体的に回転し、そのボビンに、所定の装着部に装着された糸供給源(例えば、糸カセット10とは別に設けられた糸駒13)から糸を引き出して下糸として巻き付けることができる。そして、前記下糸巻き軸D1の位置(図1に実線で示す待機位置又は図1に破線で示す下糸巻き位置)を検出する下糸巻き切換検出スイッチ73(図15参照)が設けられている。
【0052】
ここで、針棒上下動機構18等が、カセット装着部5に装着された糸カセット10から導出される糸11を用いて縫製する縫製手段に相当し、下糸巻き切換検出スイッチ73と制御装置90が、縫製手段(針棒上下動機構18等)が動作中であるか否か検出する縫製検出手段に相当する。
【0053】
そして、ミシンモータ9が駆動されている状態で、且つ、ミシンモータ9の駆動力が針棒上下動機構18に伝達される状態においてのみ、針棒上下動機構18が動作中であると検出され、それ以外の状態においては、針棒上下動機構18が動作中でない場合であると検出される。つまり、ミシンモータ9の駆動力が下糸巻き機構Dに伝達される状態においては、たとえミシンモータ9が駆動されていても、針棒上下動機構18が動作中でない場合であると検出される。
【0054】
そして、カセット取外制限機構80は、前記の検出結果を受けて針棒上下動機構18が動作中の場合に、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限し、具体的には、制御装置90によりソレノイドアクチュエータ81を制御して、その係合ロック部82を操作レバー71bの係合穴71dに係合させて、エジェクト操作部材71を操作不可能にする。
【0055】
次に、ミシンMの制御系について説明する。図16に示すように、ミシンMの制御装置90は、CPU90a、ROM90b、RAM90c、入力インターフェース90d、出力インターフェース90eを有する。入力インターフェース90dに、操作スイッチ類6、タッチパネル8、主軸角検出センサ91、カセット検出スイッチ92、下糸巻き切換検出スイッチ93が電気的に接続され、出力インターフェース90eに、ミシンモータ9、パルスモータ44、ソレノイドアクチュエータ81、液晶ディスプレイ7、ランプ類94を駆動する為の駆動回路95a〜95eが電気的に接続されている。
【0056】
図17に示すように、ROM90bには、ミシンMの制御プログラムが格納されており、その制御プログラムは、縫製の為の縫製制御プログラム、カセット装着部5に糸カセット10を着脱する際のカセット着脱制御プログラム、カセット取外制限制御を行うカセット取外制限制御プログラム、ディスプレイ7に表示させる為の表示制御プログラムを備えている。
【0057】
特に、カセット取外制限制御プログラムは、縫製動作中であるか否か判定する第1ルーチンと、この第1ルーチンの判定結果を受けて縫製動作中の場合に、エジェクト操作部材71に係合ロック部82を係合させてカセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限するように、ソレノイドアクチュエータ81を制御する第2ルーチンとを備えている。
【0058】
次に、制御装置90がカセット取外制限制御プログラムに基づいて実行する制御について、図18のフローチャートに基づいて説明する。但し、フローチャート中のSi(i=1、2、3・・・)は各ステップを示す。
【0059】
この制御は、例えば1msec毎のインターバル割り込みにより開始され、先ず、ミシンモータ9が動作中か否か判定される(S1)。次に、ミシンモータ9が動作中のときには(S1;Yes )、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置か否か判定される(S2)。そして、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置でないとき(S2;No)、縫製動作中であると判定され、次に、ソレノイドアクチュエータ81がONされて駆動され(S3)、エジェクト操作部材71が操作不能になり、その他のインターバル処理(S5)の後、このインターバル割り込み制御が終了する。
【0060】
一方、ミシンモータ9が動作中でないときに(S1;No)、或いは、ミシンモータ9が動作中のときでも(S1;Yes )、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置のとき(S2;Yes )、縫製動作中でない場合であると判定され、次に、ソレノイドアクチュエータ81がOFFされて(S4)、エジェクト操作部材71が操作可能になり、その他のインターバル処理(S5)の後、このインターバル割り込み制御が終了する。
【0061】
尚、S1とS2が前記第1ルーチンに相当し、S3が第2ルーチンに相当する。そして、S1〜S3及びこのS1〜S3を実行する制御装置10が、針棒上下動機構18が動作中の場合にエジェクト操作部材71に係合ロック部82を係合させるようにソレノイドアクチュエータ81を制御するカセット取外制限制御手段に相当する。
【0062】
このミシンMの作用・効果について説明する。針棒上下動機構18が動作中(縫製動作中)であるか否か検出され、この場合、ミシンモータ9が動作中であるか否か、及び、下糸巻き軸D1が下糸巻き位置であるか否か、の判定に基づいて行われる。カセット装着部5に糸カセット10が装着された状態で、縫製動作中でない場合、エジェクト操作部材71の後方への操作が可能になり、このエジェクト操作部材71を後方へ操作することにより、カセット取外機構70により、糸カセット10がエジェクトされて浮き上がり、カセット装着部5から糸カセット10を取り外し可能になる。
【0063】
一方、カセット装着部5に糸カセット10が装着された状態で、縫製動作中の場合、カセット取外制限機構80により、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作が制限される。この場合、制御装置90によりソレノイドアクチュエータ81が制御され、このソレノイドアクチュエータ81により係合ロック部82がエジェクト操作部材71の係合穴71dに係合して、エジェクト操作部材71の操作が不可能になり、このエジェクト操作部材71を操作してカセット装着部5から糸カセット9を取り外しできないようになる。
【0064】
このように、カセット取外制限機構80により、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作の制限/制限解除を自動的に行うことができ、使用者の手間を増やすことなく、縫製動作中は、カセット取外機構70のエジェクト操作部材71の誤操作を確実に防止し、カセット装着部5から糸カセット10を取り外しできないようにして、前記誤操作により、縫目が崩れること、場合によっては、縫針12aが折れること、その他の部材等が破損すること、等を確実に防止することができる。
【0065】
また、前記下糸巻き機構Dと切換機構Eとを設け、ミシンモータ9の駆動力が下糸巻き機構Dに伝達される状態においては、針棒上下動機構18が動作中でない場合であると検出するので、針棒上下動機構18が動作中でないことを確実に検出し、このとき、カセット取外制限機構80によりカセット取外機構70の糸カセット取り外し動作が制限されなくなり、エジェクト操作部材71を後方に操作してカセット装着部5から糸カセット10を取り外しできるようになる。
【0066】
カセット取外制限機構80は、カセット取外機構70のエジェクト操作部材71に係合ロック部82を係脱させるソレノイドアクチュエータ81と、針棒上下動機構18が動作中の場合にエジェクト操作部材71に係合ロック部82を係合させるようにソレノイドアクチュエータ81を制御する制御装置90とを備えたので、針棒上下動機構18が動作中の場合、係合ロック部82をエジェクト操作部材71に係合させて、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を簡単・確実に制限することができる。尚、ミシンMの電源が遮断されている場合にも、係合ロック部82は係合穴71bから離脱しており、糸カット取り外し動作は可能である。
【0067】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変更形態について説明する。
【0068】
1]エジェクト操作部材71が操作されたか否か検出する操作検出手段に相当するエジェクト操作検出スイッチ89(図19参照)を設け、カセット取外制限機構80は、針棒上下動機構18が動作中の場合、エジェクト操作検出スイッチ89の検出結果を受けてエジェクト操作部材71が操作された場合に、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限するようにしてもよい。即ち、縫製中は常にソレノイドアクチュエータ81がON状態であり、その分電力が消費され、ソレノイドアクチュエータ81はON状態では熱を発する。
【0069】
図19に示すように、エジェクト操作検出スイッチ89は制御装置90の入力インタフェース90dに電気的に接続され、このエジェクト操作検出スイッチ89は、例えば、エジェクト操作部材71が操作されたとき(瞬間)にONするリミットスイッチで構成されている。
【0070】
この場合、カセット取外制限制御プログラムに基づいて制御装置90が実行する制御は、図20に示すように、前記の図18のフローチャートにおいて、S1とS2の間に、エジェクト操作部材71が操作されたか否か(S10)のステップを挿入したものになり、この判定が、エジェクト操作検出スイッチ89の検出結果を受けて行われる。
【0071】
即ち、針棒上下動機構18が動作中の場合、エジェクト操作検出スイッチ89の検出結果を受けてエジェクト操作部材71が操作された場合にだけ、ソレノイドアクチュエータ81をONにして、カセット取外機構70の糸カセット取り外し動作を制限することができる。従って、電力の消費を少なくでき、ソレノイドアクチュエータ81からの発熱を少なくできる。
【0072】
2]前記下糸巻き機構Dと切換機構Eを省略したミシンに構成してもよい。この場合、針棒上下動機構18が動作中か否かは、ミシンモータ9が動作中か否かのみの判定で判断される。つまり、制御装置90が実行する制御は、図18、図20のS1を省略したものになる。また、上述の実施の形態では、カセット装着部5に装着された糸カセット10とは別の糸駒の糸を下糸巻き用の糸としているが、そのカセット装着部5に装着された糸カセット10に納められた糸駒22の糸を下糸巻き用の糸とする構成のミシンであっても、同様に、針棒上下動機構18が動作中か否かは、ミシンモータ9が動作中か否かのみの判定で判断される。
【0073】
3]ソレノイドアクチュエータ81により係合ロック部82を、エジェクト操作部材71に形成された係合穴71dに係脱させるようにしているが、カセット装着部5に糸カセット10が装着されている状態において、エジェクト操作部材71のうち、糸カセット10を取り外すために揺動させる側(例えば後側)の端縁に係合ロック部82を係合させて、エジェクト操作部材71を操作不能にするようにしてもよい。
【0074】
4]ソレノイドアクチュエータ81の出力部以外の部材を係合ロック部として、その係合ロック部をエジェクト操作部材71に係脱させるように、ソレノイドアクチュエータ81を駆動するようにしてもよいし、ソレノイドアクチュエータ81以外の電動モータ等の種々のアクチュエータにより、係合ロック部をエジェクト操作部材71に係脱させるように構成してもよい。
【0075】
5]エジェクト操作部材71を省略し、或いは、エジェクト操作部材71を設けたうえで、ディスプレイ7にエジェクト操作ボタン等のを操作部表示を行い、この表示に対応するタッチパネル8の部分をタッチすることにより、カセット取外機構70を作動可能にしてもよい。この場合、カセット取外機構70を作動させるアクチュエータが必要となるが、タッチ操作した際、針棒上下動機構18が動作中の場合には、カセット取外機構70を作動させ、針棒上下動機構18が動作中でない場合には、カセット取外機構70を作動させないように制御して前記糸カセット取り外し動作の制限/制限解除を行うことが可能になる。
【0076】
6]カセット取外機構において、カセット装着部5に装着された糸カセット10を排出する為に、その糸カセット10に接触する排出ローラ、この排出ローラを回転駆動する電動モータを設け、この電動モータを制御することにより、カセット装着部5から糸カセット10を取り外したり、又は、カセット装着部5から糸カセット10を取り外しできないように構成したミシン(本願出願人による特願2002−189517 号)について、上述の糸カセット取り外し動作を制限するようにしてもよい。
【0077】
7]前記実施形態の糸カセットは一例を開示したものにすぎず、適用可能な糸カセットとして、例えば、糸駒等に糸を巻いた糸供給源ではなく、糸を塊状にした糸供給源を収容部に収容して使用する糸カセットとしてもよい。また、糸収容部を覆う壁を少なくとも1つ省略し、糸立棒等の保持部に糸駒等を保持して収容するようにしてもよい。
【0078】
8]制御装置70のROM70bに格納されている、カセット取外制限制御プログラムは、前記ミシンMと同等のミシンに適用できるものであり、このカセット取外制限制御プログラムを、インターネット等の通信手段を介して、或いは、CDやMDやFD等の記録媒体に記録してその記録媒体と共にユーザー等に供給してもよい。
9]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加して実施可能である。
【0079】
【発明の効果】請求項1の縫製装置によれば、前記操作部材を有するカセット取外手段と縫製検出手段とカセット取外制限手段とを設け、縫製手段が動作中の場合に、カセット取外制限手段によりカセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するので、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできないようになり、縫製手段が動作中でない場合には、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限しないようにして、操作部材を操作することによりカセット装着部から糸カセットを取り外し可能にすることができる。つまり、使用者の手間を増やすことなく、縫製動作中は、カセット取外手段の操作部材の誤操作を確実に防止し、カセット装着部から糸カセットを取り外しできないようにして、縫目が崩れたりすること等を防止することができる。
【0080】
請求項2の縫製装置によれば、前記下糸巻き手段と切換手段とを設け、前記駆動力が下糸巻き手段に伝達される状態においては、縫製検出手段は縫製手段が動作中でない場合であると検出するので、このとき、カセット取外制限手段によりカセット取外手段の糸カセット取り外し動作が制限されなくなり、操作部材を操作してカセット装着部から糸カセットを取り外しできるようになる。
【0081】
請求項3の縫製装置によれば、カセット取外制限手段は、カセット取外手段の操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータと、縫製手段が動作中の場合に操作部材に係合ロック部を係合させるようにアクチュエータを制御するカセット取外制限制御手段とを備えたので、縫製手段が動作中の場合、係合ロック部を操作部材に係合させて、操作部材を操作不可能にして、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を簡単・確実に制限することができる。
【0082】
請求項4の縫製装置によれば、前記操作検出手段を設け、カセット取外制限手段は、縫製手段が動作中の場合、操作検出手段の検出結果を受けて操作部材が操作された場合に、カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するので、縫製手段が動作中の場合に、操作部材が操作された場合にだけ、カセット取外制限手段によりカセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限できる。
【0083】
請求項5の縫製装置のカセット取外制限制御プログラムによれば、カセット装着部と縫製手段とを備えた縫製装置のコンピュータに適用でき、このカセット取外制限制御プログラムを適用した縫製装置は、請求項1と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るミシン(糸カセット装着途中状態)の正面図である。
【図2】ミシン(糸カセット装着途中状態)の頭部を切り欠いた正面図である。
【図3】ミシン(糸カセット装着状態)の正面図である。
【図4】ミシン(糸カセット装着状態)の頭部を切り欠いた正面図である。
【図5】糸カセットの正面図である。
【図6】糸カセットの背面図である。
【図7】糸カセット(開閉部材開放状態)の左側面図である。
【図8】糸カセットの底面図である。
【図9】ミシンの頭部内の前側の正面図である。
【図10】ミシンの頭部内の前側の正面図である。
【図11】糸調子機構の糸調子皿等の平面図である。
【図12】糸搬送機構の左側面図である。
【図13】糸通し機構の(a)は左側面図(b)は正面図である。
【図14】糸通し機構の作動説明図であり(a)は糸通しフックが針穴を貫通した状態(b)は糸通しフックが針穴から抜けて糸が通された状態を示す。
【図15】ミシンの頭部内の前側の左側面図である。
【図16】ミシンの制御系のブロック図である。
【図17】制御装置のROMに格納されているプログラムを示す図表である。
【図18】針棒位置制御を含む初期設定処理のフローチャートである。
【図19】変更形態に係るミシンの制御系のブロック図である。
【図20】変更形態に係るカセット取外制限制御を含むフローチャートである。
【符号の説明】
M ミシン
5 カセット装着部
9 ミシンモータ
10 糸カセット
18 針棒上下動機構
22 糸駒
23 糸収容部
70 カセット取外機構
71 エジェクト操作部材
80 カセット取外制限機構
81 ソレノイドアクチュエータ
82 係合ロック部
89 操作検出スイッチ
90 制御装置
Claims (5)
- 糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段とを備えた縫製装置において、
この縫製装置の表面側から操作可能な操作部材を有し、この操作部材を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、
前記縫製手段が動作中であるか否か検出する縫製検出手段と、
前記縫製検出手段の検出結果を受けて前記縫製手段が動作中の場合に、前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するカセット取外制限手段と、
を備えたことを特徴とする縫製装置。 - 前記縫製手段を駆動する駆動モータで駆動されて下糸を巻く下糸巻き手段と、前記駆動モータの駆動力を前記縫製手段と前記下糸巻き手段とに択一的に伝達する切換手段とを設け、前記駆動力が前記下糸巻き手段に伝達される状態においては、前記縫製検出手段は前記縫製手段が動作中でない場合であると検出することを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
- 前記カセット取外制限手段は、前記カセット取外手段の操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータと、前記縫製手段が動作中の場合に前記操作部材に前記係合ロック部を係合させるように前記アクチュエータを制御するカセット取外制限制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の縫製装置。
- 前記操作部材が操作されたか否か検出する操作検出手段を設け、前記カセット取外制限手段は、前記縫製手段が動作中の場合、前記操作検出手段の検出結果を受けて操作部材が操作された場合に、前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の縫製装置。
- 糸供給源を収容する糸収容部を有する糸カセットが着脱自在に装着されるカセット装着部と、このカセット装着部に装着された前記糸カセットから導出される糸を用いて縫製する縫製手段と、この縫製装置に設けられた操作部材を操作することにより前記カセット装着部から前記糸カセットを取り外し可能にするカセット取外手段と、前記操作部材に係合ロック部を係脱させるアクチュエータとを備えた縫製装置のコンピュータに実行させる為のカセット取外制限制御プログラムであって、
前記縫製手段が動作中であるか否か判定する第1ルーチンと、
前記第1ルーチンの判定結果を受けて前記縫製手段が動作中の場合に、前記操作部材に前記係合ロック部を係合させて前記カセット取外手段の糸カセット取り外し動作を制限するように、前記アクチュエータを制御する第2ルーチンと、
を備えたことを特徴とする縫製装置のカセット取外制限制御プログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002238073A JP2004073481A (ja) | 2002-08-19 | 2002-08-19 | 縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラム |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002238073A JP2004073481A (ja) | 2002-08-19 | 2002-08-19 | 縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラム |
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Family Applications (1)
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JP2002238073A Pending JP2004073481A (ja) | 2002-08-19 | 2002-08-19 | 縫製装置及び縫製装置のカセット取外制限制御プログラム |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004073481A (ja) |
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2002
- 2002-08-19 JP JP2002238073A patent/JP2004073481A/ja active Pending
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