JP2004070215A - 熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に感光層および保護層を含む写真構成層を有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記保護層は活性メチレン基を有するポリマーを含有すること(第1の発明)、前記保護層は無水マレイン酸ユニットを共重合成分として有するポリマーを含有すること(第2の発明)。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保護層の物性を改良した有機銀を含有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から広範囲に用いられているハロゲン化銀写真感光材料は、その優れた写真特性により、より広範囲かつ高品質な素材として画像形成分野に利用されているが、画像を形成するために現像、定着、水洗、乾燥というプロセスが必要であり、しかも処理工程が湿式であるため、作業が煩雑であるという欠点があった。その為、現像工程を熱処理で行う熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料が開発、実用化され、近年医用業界を中心に急速に普及してきている。
【0003】
かかる技術として、例えば、米国特許第3,152,904号明細書、同3,487,075号明細書、D.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.p48,1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子および還元剤を有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料が知られている。この銀塩光熱写真ドライイメージング材料(熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料と同義)では溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便なシステムをユーザーに提供することができる。
【0004】
一般に熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、画像様に露光した後、感光層の画像部の有機銀塩を還元するため均一に加熱する工程が必要であり、この工程として非接触で加熱する熱風現像やマイクロウエーブ現像もあるが、多くは熱ローラーに接触させて加熱現像される。このとき、感光面と熱ローラーとの接触で傷が付かないようにすること、および感光層の添加物が揮発や溶融により表面に拡散し、これが熱ローラーに付着して汚れを生じないようにすることが重要となっている。
【0005】
このため保護層の結合剤を架橋させて付着を防止させることが考えられ、架橋技術として米国特許第4,886,739号、同4,942,115号、同5,264,334号等の各明細書にポリアルコキシシラン化合物を使用することが開示されている。これらの化合物は熱で加水分解され、露出したヒドロキシ基が結合剤と結合して架橋強化されることが述べられている。しかしながら、上記熱で加水分解が行われた際、アルコールや水分が放出され、これらが支持体に拡散して、支持体がカールを生じるので搬送不良を引き起こす。その対策として水分やアルコール分の拡散防止層を必要とする等の欠点を生じた。
【0006】
他方、米国特許第4,828,971号、同5,891,610号等の各明細書にはポリケイ酸化合物を使用することが述べられている。この化合物はポリアルコキシシランよりも加水分解性は低いが、乾燥後の膜がひび割れを生じ易い等の欠点がある。そこで、熱現像材料の膜表面の改質として米国特許第3,489,567号、同3,885,965号等の各明細書にはポリシロキサン化合物を滑剤として添加することが開示されている。しかし、これらにおいては熱現像材料の膜表面の滑りがよくなるとはいえ、該熱現像材料の耐傷性や該熱現像材料の添加物の熱ローラーへの付着による汚れ等については全く検討されていない。米国特許第6,350,561号明細書には、エポキシ基を含有するフィルム形成性のアクリレートまたはメタクリレート系ポリマーからなるバリアー層を熱現像材料に適用し、熱現像時に表面に拡散してくる化合物(例えば、ベヘン酸のような脂肪酸)の減少を図っているが、十分な効果が得られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、熱現像による汚れの発生が少ない熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0009】
1) 支持体上に感光層および保護層を含む写真構成層を有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記保護層は活性メチレン基を有するポリマーを含有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。(第1の本発明)
2) 支持体上に感光層および保護層を含む写真構成層を有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記保護層は無水マレイン酸ユニットを共重合成分として有するポリマーを含有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。(第2の本発明)
以下の説明では、特に断りのない限り第1の本発明と第2の本発明を合わせて本発明という。
【0010】
本発明を更に詳しく説明する。
第1の本発明における活性メチレン基を有するポリマーの構造は、特に下記一般式[1]で表されるものが好ましい。
【0011】
一般式[1] −(A1)x−(B1)y−(C1)z−
式中、A1は下記一般式[2]で表される活性メチレン基を有するエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。B1は単独重合体のガラス転移温度が35℃以下であるメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルから選ばれるエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。C1は単独重合体のガラス転移温度が35℃を越えるエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表す。ここでx、y、zはそれぞれポリマー中の各成分の質量百分率比を表し、それぞれ0.5≦x≦45、0≦y≦60、20≦z≦95、x+y+z=100を表す。
【0012】
【化1】
【0013】
式中、R1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、Lは単結合または二価の連結基を表し、具体的には下式で表される。
【0014】
−(L1)m−(L2)n−
L1は−CON(R2)−(R2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜6の置換アルキル基を表す)、−COO−、−NHCO−、−OCO−、
【0015】
【化2】
【0016】
ここで、R2は上記と同義、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル、アルコキシ、アシルオキシもしくはアリールオキシを表す。L2はL1とXを結ぶ連結基を表す。mは0または1を表し、nは0または1を表す。
【0017】
L2で表される連結基は具体的には、下記の一般式で表される。
−[X1−(J1−X2)p−(J2−X3)q−(J3)r]s−
式中、J1、J2およびJ3は同じでも異なっていてもよく、−CO−、−SO2−、−CON(R5)−(R5は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の置換アルキル基)、−SO2N(R5)−(R5は上記と同義)、−N(R5)−R6−(R5は上記と同義、R6は炭素数1〜4のアルキレン基)、−N(R5)−R6−N(R7)−(R5、R6は上記と同義、R7は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の置換アルキル基を表す。)、−O−、−S−、−N(R5)−CO−N(R7)−(R5、R7は上記と同義)、−N(R5)−SO2N(R7)−(R5、R7は上記と同義)、−COO−、−OCO−、−N(R5)CO2−(R5は上記と同義)、−N(R5)CO−(R5は上記と同義)等を挙げることができる。
【0018】
p、q、rおよびsは0または1を表す。X1、X2およびX3は互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜10の無置換もしくは置換のアルキレン基、アラルキレン基、またはフェニレン基を表し、アルキレン基は直鎖でも分岐でもよい。アルキレン基としては例えばメチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、デシルメチレン、アラルキレン基としては例えばベンジリデン、フェニレン基としては例えばp−フェニレン、m−フェニレン、メチルフェニレンなどがある。
【0019】
Xは、活性メチレン基を含む一価の基を表し、好ましい具体例としては、R8−CO−CH2−COO−、CN−CH2−COO−、R8−CO−CH2−CO−、R8−CO−CH2−CON(R5)−等を挙げることができる。ここでR5は前記に同じであり、R8は炭素数1〜12個の置換または無置換のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ノニル、2−メトキシエチル、4−フェノキシブチル、ベンジル、2−メタンスルホンアミドエチル等)、置換または無置換のアリール基(例えばフェニル、p−メチルフェニル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、メトキシエトキシ、n−ブトキシ等)、シクロアルキルオキシ基(例えばシクロヘキシルオキシ)、アリロキシ(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、o−クロロフェノキシ、p−シアノフェノキシ等)、アミノ基、置換アミノ基(例えばメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ等)を表す。
【0020】
以下に、前記一般式[1]で表されるポリマーにおいて、A1で表される活性メチレン基を有するエチレン性不飽和モノマーを例示するが、これらに限定されるものではない。
【0021】
MN−1:2−アセトアセトキシエチルメタクリレート
MN−2:2−アセトアセトキシエチルアクリレート
MN−3:2−アセトアセトキシプロピルメタクリレート
MN−4:2−アセトアセトキシプロピルアクリレート
MN−5:2−アセトアセトアミドエチルメタクリレート
MN−6:2−アセトアセトアミドエチルアクリレート
MN−7:2−シアノアセトキシエチルメタクリレート
MN−8:2−シアノアセトキシエチルアクリレート
MN−9:N−(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド
MN−10:2−プロピオニルアセトキシエチルアクリレート
MN−11:N−(2−プロピオニルアセトキシエチル)メタクリルアミド
MN−12:N−4−(アセトアセトキシベンジル)フェニルアクリルアミド
MN−13:エチルアクリロイルアセテート
MN−14:アクリロイルメチルアセテート
MN−15:N−メタクリロイルオキシメチルアセトアセトアミド
MN−16:エチルメタクリロイルアセトアセテート
MN−17:N−アリルシアノアセトアミド
MN−18:メチルアクリロイルアセトアセテート
MN−19:N−(2−メタクリロイルオキシエチル)シアノアセトアミド
MN−20:p−(2−アセトアセチル)エチルスチレン
MN−21:4−アセトアセチル−1−メタクリロイルピペラジン
MN−22:エチル−α−アセトアセトキシメタクリレート
MN−23:N−ブチル−N−アクリロイルオキシエチルアセトアセトアミド
MN−24:p−(2−アセトアセトキシ)エチルスチレン
一般式[1]のB1で表される繰り返し単位を与えるエチレン性不飽和モノマーは、その単独重合体のガラス転移温度が35℃以下となるようなモノマーであり、具体的には、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−ノニルアクリレート、n−ドデシルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(例えば、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、iso−ノニルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレートなど)、ジエン類(例えばブタジエン、イソプレン等)などを挙げることができる。
【0022】
更に好ましいモノマーとしては単独重合体のガラス転移温度が10℃以下のモノマーであり、このようなモノマーとしては炭素数2以上のアルキル側鎖を有するアルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−ノニルアクリレート等)、炭素数6以上のアルキル側鎖を有するアルキルメタクリレート(例えば、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等)、ジエン類(例えばブタジエン、イソプレン)を特に好ましい例として挙げることができる。これらのモノマーは2種以上併用しても良い。
【0023】
上記のポリマーのガラス転移温度の値については、J.Brandrup、E.H.Immergut共編「Polymer Handbook」第3版(John Wily & Sons,1989年)VI/209〜VI/277頁に記載されている。
【0024】
一般式[1]のC1で表される繰り返し単位は単独重合体のガラス転移温度が35℃を超えるモノマーより誘導される繰り返し単位を表す。
【0025】
具体的には、アクリル酸エステル類(例えば、t−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ナフチルアクリレート等)、メタクリル酸エステル類(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート、クレジルメタクリレート、4−クロロベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等)、ビニルエステル類(例えば、安息香酸ビニル、ピバロイルオキシエチレン等)、アクリルアミド類(例えば、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(例えば、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミド等)、スチレン類(例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチレンスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等)、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、塩化ビニリデン、フェニルビニルケトン等を挙げることができる。これらのモノマーは2種以上併用しても良い。
【0026】
また、前記一般式[1]で表されるポリマーは、特開昭60−15935号公報、同45−3822号公報、同53−28086号公報、米国特許第3,700,456号明細書等に記載されているようなイオン性官能基(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基)を有するモノマーを共重合してもよい。このようなモノマーとしては、以下の化合物を挙げることができる。アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキル(例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル等)、マレイン酸モノアルキル(例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等)、シトラコン酸、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸等)、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸等)、アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸等)、メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸等)等である。また、これらの酸はアルカリ金属塩(例えば、Na、K等)またはアンモニウム塩であってもよい。これらのモノマーの好ましい量は、ポリマーの全質量に対し、0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0027】
第2の本発明における無水マレイン酸ユニットをコポリマー成分として有するポリマーの構造は、特に下記一般式[3]で表されるものが好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
式中、M+は、水素イオンまたはナトリウム、カリウム、リチウム等の金属イオンを表し、R10は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の置換アルキル基を表す。B2は前記一般式[1]のB1と同義であり、C2は前記一般式[1]のC1と同義である。x1、x2、y1およびz1はポリマー中の各成分の質量百分率比を表し、それぞれ0.5≦x1≦50、0≦x2≦10、0≦y1≦60、20≦z1≦95、x1+x2+y1+z1=100を表す。
【0030】
また、本発明の一般式[3]で表されるポリマーは、イオン性官能基を有するモノマーを共重合してもよい。このようなモノマーとしては、以下の化合物を挙げることができる。アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル(例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル等)、マレイン酸モノアルキル(例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等)、シトラコン酸、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸等)、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸等)、アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸等)、メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸等)等である。また、これらの酸はアルカリ金属塩(例えば、Na、K等)またはアンモニウム塩であってもよい。これらのモノマーの好ましい量は、ポリマーの全質量に対し、0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0031】
第1の本発明に用いる活性メチレン基を有するポリマーは、上記一般式[1]で表される組成を満たすことが好ましい。また、第2の本発明に用いる無水マレイン酸を共重合成分として有するポリマーは、上記一般式[3]で表される組成を満たすことが好ましい。
【0032】
第1の本発明に用いる活性メチレン基を有するポリマーは、y≧60のとき、ポリマーのガラス転移温度が著しく低くなる。また、第2の本発明に用いる無水マレイン酸を共重合成分として有するポリマーは、y1≧60のとき、ポリマーのガラス転移温度が著しく低くなる。バインダー中にこのようなガラス転移温度が低いポリマーが存在すると、その添加量によっては、本発明の目的が十分発揮できない場合がある。本発明の目的を達成するためには、本発明のポリマーのガラス転移温度は−10℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは20℃以上である。
【0033】
ポリマーのガラス転移温度は、例えばJ.Brandrup、E.H.Immergut共著「Polymer Handbook,2nd Edition,III−139〜III−192(1975)」に詳細に記載されている。
【0034】
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、下式により求めることができる。
1/Tg=a1/Tg1+a2/Tg2+a3/Tg3+・・・an/Tgn
Tgn;モノマーnの単独重合体のTg
an:ポリマー中のモノマーnの質量分率を表し、a1+a2+a3+・・・an=1である。
【0035】
これらのポリマーは、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の各種重合方法で得ることができる。これらの中で、溶液重合は、界面活性剤などの第3成分の混入が少なく好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンメチルエチルケトンのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
【0036】
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常30〜100℃の範囲で重合を行なう。
【0037】
重合に用いられるラジカル開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)のようなアゾ系開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム(例えば、亜硫酸水素ナトリウムと組み合わせてレドックス開始剤として用いても良い)のようなペルオキシド系開始剤が好ましい。本発明では半減期が10時間になる温度が70℃以下の開始剤(例えば2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロプロパン)ジハイドロクロライド]等)が特に好ましい。
【0038】
重合開始剤の使用量はモノマーの重合性や必要とする重合体の分子量に応じて調節することが可能であるが、単量体に対して0.01〜5.0mol%の範囲が好ましい。本発明のポリマーの合成においてはA、BおよびCを形成するモノマーを混合して最初に反応容器に入れておき、開始剤を投入してもよいし、これらのモノマーを重合溶媒に滴下する過程を経て重合を行なってもよい。
【0039】
第1の本発明に使用する活性メチレン基を有するポリマーについては表1に、また第2の本発明に使用する無水マレイン酸ユニットを共重合成分として有するポリマーについては表2に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【化4】
【0043】
本発明において、保護層とは、感光層をはさみ支持体と反対側に設けられた層である。保護層の厚さは特に限定されないが、おおむね0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmである。第1の本発明においては、保護層に含有する第1の本発明に使用する活性メチレン基を有するポリマーは単独で使用してもよく、また、他の高分子結合剤と併用してもよい。高分子結合剤と併用する場合、第1の本発明に使用する活性メチレン基を有するポリマーの混合比率は、混合後の質量%を100とした場合、10〜100質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜100質量%である。
【0044】
第2の本発明においては、保護層に含有する第2の本発明に使用する無水マレイン酸ユニットを共重合成分として有するポリマーは単独で使用してもよく、また、他の高分子結合剤と併用してもよい。高分子結合剤と併用する場合、第2の本発明に使用する無水マレイン酸ユニットを共重合成分として有するポリマーの混合比率は、混合後の質量%を100とした場合、10〜100質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜100質量%である。
【0045】
以下に、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の構成について説明する。
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、通常は支持体上に少なくとも1層の感光層および該感光層に隣接する上層に保護層を設けた少なくとも2層から構成されて、また感光層の反対側には必要に応じて適宜バックコート層(BC層)等が設けられている。上記熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の感光層中には、分光増感色素で増感されてもよい感光性ハロゲン化銀粒子が含まれ、さらに感光層またはその隣接層には銀源となる有機銀塩、銀塩を現像して銀画像を形成するための還元剤が含有される。熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の感光層やその隣接層には、熱現像の場を提供する高分子結合剤、親水性結合剤や疎水性結合剤、或いはラテックスが含有される。上記の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、必要によりイラジエーション防止またはハレーション防止のための染料を含有するアンチイラジエーション層(AI層)またはBC層が設けられる。また、上記の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の感光層には、必要により銀画像の色調を整える色調剤を含有させることができる。
【0046】
本発明の熱現像材料の感光層等の写真構成層に用いられる高分子結合剤としては、ハロゲン化銀、有機銀塩、還元剤が反応する場として好ましい素材、熱消色性染料が80〜200℃以下の熱で消色する反応に好ましい素材、あるいは塩基発生前駆体化合物が熱により速やかに塩基を発生するような素材が選択される。上記高分子結合剤としては例えばメタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等を含む極性溶媒に溶解して用いられるポリマーと、水分散系ポリマーとがあり、本発明の熱現像材料の高分子結合剤としては、水分散系ポリマーが好ましい。また、好ましいポリマーの組成について更にガラス転移点が−20℃から100℃が好ましく、特に−5℃から80℃が好ましい。ガラス転移点が高いと熱現像する温度が高くなり、低いとカブリが発生し易く感度の低下や軟調になるからである。
【0047】
上記極性溶媒等に溶解して用いられるポリマーとしては例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、デンプンおよびその誘導体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体などが挙げられる。更に乾燥後、膜を形成したのち、その塗膜の平衡含水率の低いものが好ましく、特に含水率の低いものとして、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(メチルメタクリル酸)などのポリ(アクリル酸エステル)類、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類を挙げることができる。ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化したものであるが、ビニルブチラール単位として50〜90質量%有するものが好ましい。重合度としては500〜5000が好ましい。
【0048】
また、上記水分散系ポリマーとしては、平均粒子径が1nmから数μmの範囲の微粒子にして水系分散媒中に分散されたものが好ましい。水分散系ポリマーは水系塗布の結合剤として広く使用されているが、中でも耐水性を向上させることができる点からラテックスが特に好ましい。結合剤として耐水性を得る目的のラテックスの使用量は、塗布性を勘案して決められるが耐湿性の観点から多いほど好ましく、全結合剤に対して通常50〜100質量%、80〜100質量%が好ましい。
【0049】
本発明において、有機銀塩は還元可能な銀源であり、有機酸およびヘテロ有機酸の銀塩、特にこの中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸および含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値をもつようなリサーチ・ディスクロージャー(以降、単にRDと略す)第17029および第29963に記載された有機または無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0050】
有機酸の銀塩、例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩、例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩、アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩乃至錯体、例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸)の反応生成物の銀塩乃至錯体、チオン類の銀塩または錯体、例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、および3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩乃至錯体、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾールおよび1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾールおよびベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩、サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、およびメルカプチド類の銀塩。これらの中、好ましい銀塩としてはベヘン酸銀、アラキジン酸銀およびステアリン酸銀があげられる。
【0051】
本発明において用いることのできる感光性ハロゲン化銀粒子について説明する。なお、本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に、または、人為的に物理化学的な方法により、可視光ないし赤外光を吸収し得て、かつ可視光ないし赤外光を吸収したときに当該ハロゲン化銀結晶内および/または結晶表面において物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
【0052】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(PaulMontel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
【0053】
本発明で用いることのできるハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため、および良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.2μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.17μm、特に0.02μm〜0.14μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0054】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらの中、特に、立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0055】
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは1.5以上100以下、より好ましくは2以上50以下である。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等の各明細書に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0056】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に内蔵させるに好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号の各明細書、およびRD第17029および第29963に記載されており、公知の還元剤の中から適宜選択して使用することが出来るが、有機銀塩に脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合には、2個以上のフェノール基がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)またはアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基または硫黄によって連結されたビスフェノール類が好ましい。
【0057】
還元剤としては、上述のように、主に、ビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンをもった還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好適には、無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。
【0058】
従ってこれらの機能を有する化合物であればいかなる化合物でもよいが、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有しかつ熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に格別の弊害を生じることのない化合物であればいかなる構造をもった化合物でもよい。
【0059】
また、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては発生するフリーラジカルに、これが還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性をもたせるために炭素環式、または複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0060】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、化学増感を施すことができる。例えば、特願2000−57004明細書、同2000−61942明細書に開示されている方法等により、硫黄などのカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物で化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。本発明においては、カルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤はハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0061】
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号等の各公報に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができる。それらのうち、カルコゲン原子が炭素原子またはリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0062】
また、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることが出来、還元増感の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0063】
本発明で用いることのできる感光性ハロゲン化銀粒子には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号の各公報、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号の各明細書に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は、例えばRD第17643 IV−A項(1978年12月p.23)、同第18431 X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましく、例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号の各公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0064】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子、あるいは有機銀塩粒子を含有する乳剤は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せおよび強色増感を示す物質はRD第17643(1978年12月発行)第23頁、IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、特公昭43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等の各公報に記載されているものを用いることができる。本発明においては、上記の強色増感剤の他に、特願2000−70296明細書に開示されている一般式(1)で表される化合物と大環状化合物を強色増感剤として使用できる。
【0065】
本発明においては省銀化剤を用いる事が出来る。ここでいう省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度をいう。省銀化剤としては、ヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、4級オニウム化合物等が好ましい例として挙げられる。
【0066】
本発明においては、また、膜付きや、現像ムラのみならず、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果のために、架橋剤を用いることがある。本発明で用いられる架橋剤としては、従来写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、アルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、イソシアネート系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン系、酸無水物等の架橋剤を用いうるが、好ましいのはイソシアネート化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。
【0067】
本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD第17029号、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号および同第4,021,249号の各明細書に開示されている。例えば、イミド類(例えば、スクシンイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール)、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン)、フタラジンとフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロフタル酸)の組み合わせ、フタラジンとマレイン酸無水物、およびフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体およびその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ等が挙げられる。特に好ましい色調剤としてはフタラジノンまたはフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組み合わせである。
【0068】
本発明においては、保護層に現像前の取り扱いや熱現像後の画像の傷つき防止のためマット剤を含有することが好ましく、本発明に係るポリマーに対し、質量比で0.1〜30%含有することが好ましい。本発明において用いられるマット剤の材質は、有機物および無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0069】
本発明においては帯電性を改良するために、金属酸化物および/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光性層と下引層の間の層などに含まれる。本発明においては米国特許第5,244,773号明細書カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
【0070】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料においては、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料または顔料を含有させることが好ましい。
【0071】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に用いられる支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリビニルアセタール、セルロースエステル、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム、ガラス、紙、アルミニウム板等の金属板などが用いられる。
【0072】
本発明においては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2000−83655公報に開示されているような、チオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(チオピリリウムスクアリリウム染料)およびピリリウム核を有するスクアリリウム染料(ピリリウムスクアリリウム染料)、またスクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、またはピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0073】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、乾燥処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い、乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストリュージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
【0074】
本発明において、現像条件は使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、像様に露光した熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を加熱現像することにより、情報定着せしめることが特徴である。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(例えば、約80〜200℃、好ましくは約100〜200℃)で十分な時間(一般には約1秒〜約2分間)、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を加熱することにより現像することができる。加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、また、200℃を超えるとバインダーが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0075】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料への露光は、感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーである事や、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
【0076】
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
【0077】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザ走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。
【0078】
また、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
【0079】
更に、第3の態様としては、2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャなどと原理的に同じレーザ走査光学装置である。なお、上述した各画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ、He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ、InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ、化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できる。これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザイメージャやレーザイメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を走査するときの露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料ごとに最適な値に設定することができる。
【0080】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
実施例
(試料No.1の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の作製)
[下引き済み支持体の作製]
二軸延伸済みの厚さ175μmで、青色濃度0.175に着色されたポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に、10W/m2・minの条件でコロナ放電処理を施し、一方の面に下記《バックコート面側下引き下層用塗布液》を乾燥膜厚0.06μmになるように塗設した後、140℃(露点温度:12℃)の乾燥風で約10秒かけて乾燥し、続いて下記《バックコート面側下引き上層用塗布液》を乾燥膜厚0.2μmになるように塗設した後、同様に乾燥した。
【0082】
また、反対側の面には下記《画像形成面側下引き下層用塗布液》を乾燥膜厚0.2μmになるように塗設した後、同様に乾燥し、続いて下記《画像形成面側下引き上層用塗布液》を乾燥膜厚0.05μmになるように塗設した後、140℃で乾燥した。これらを125℃で2分間熱処理し、下引き済み支持体を作製した。
【0083】
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0084】
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0085】
〈変性水性ポリエステルの調製〉
重縮合用反応容器に、テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホ−イソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を投入し、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒とし三酸化アンチモン0.04質量部および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、変性水性ポリエステルの前駆体を得た。前駆体の固有粘度は0.33であった。
【0086】
攪拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの三つ口フラスコに、純水850mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、150gの上記前駆体を徐々に添加した。室温でこのまま30分間攪拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、固形分濃度が15質量%の溶液を調製した。
【0087】
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、上記前駆体溶液1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱した。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続けた。その後、30℃以下まで冷却し、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルの溶液を調製した。
【0088】
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0089】
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0090】
【化5】
【0091】
《熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の作製》
上記作製した下引き済み支持体を用いて、以下に示す方法で調製した各写真構成層を順次塗布した。
【0092】
(バック面側の塗布)
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社、CAB381−20)84.2gおよびポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。次に、溶解した液に0.30gの赤外染料−1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したF系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとF系活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)2.3gを添加して溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加し攪拌してバック面側の塗布液を調製した。
【0093】
【化6】
【0094】
このように調製したバック面塗布液を、前記作製した各プラスチックフィルムの下引層上に、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布、乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0095】
(感光層面側の塗布)
〔感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製〕
〈溶液A1〉
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
〈溶液B1〉
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
〈溶液C1〉
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
〈溶液D1〉
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
〈溶液E1〉
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
〈溶液F1〉
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
〈溶液G1〉
56%酢酸水溶液 18.0ml
〈溶液H1〉
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)17−(CH2CH2O)mH
(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号公報に示される混合攪拌機を用いて、溶液A1に溶液B1の1/4量および溶液C1の全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液F1の全量を添加した。この間pAgの調整を溶液E1を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液B1の3/4量および溶液D1の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液G1を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液H1を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0096】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0097】
〔粉末有機銀塩Aの調製〕
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0098】
次に1モル/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気および乾燥機入り口熱風温度の運転条件により、含水率が0.1%になるまで乾燥して有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。なお、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0099】
〔予備分散液Aの調製〕
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製ButvarB−79)14.57gをMEK1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩Aの500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0100】
〔感光性乳剤分散液1の調製〕
予備分散液Aを、ポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ(株)製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0101】
〔安定剤液の調製〕
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0102】
〔赤外増感色素液Aの調製〕
1.2mgの赤外増感色素1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2および365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
【0103】
【化7】
【0104】
〔添加液aの調製〕
現像剤としての1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.98gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料−1をMEK110gに溶解し添加液aとした。
【0105】
〔添加液bの調製〕
3.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
【0106】
【化8】
【0107】
〔感光層塗布液の調製〕
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)およびMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、化学増感剤Sen−5(0.5%メタノール溶液)1000μlを加え、2分後にカブリ防止剤−1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した後に上記の化学増感剤Sen−5の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、更に20分攪拌した。続いて、安定剤液の167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製ButvarB−79)13.31gを添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。さらに攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液を得た。
【0108】
【化9】
【0109】
〔マット剤分散液の調製〕
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30分間分散しマット剤分散液を調製した。
【0110】
〔保護層塗布液の調製〕
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)を4.5g、ビニルスルホン化合物(1,3−ジビニルスルホニル−2−ヒドロキシプロパン)を1.5g、ベンズトリアゾールを1.0g、F系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)を1.0g、添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、保護層塗布液を調製した。
【0111】
〔感光層面側塗布〕
前記感光層塗布液と保護層塗布液をエクストルージョン型押し出しコーターを用いて、前記作製した各プラスチックフィルムの下引層の上に、同時に重層塗布することにより感光材料を作製した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様にして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料No.1(比較試料)を作製した。
【0112】
(試料No.2〜26の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の作製)
試料No.1の保護層塗布液に代えて、試料No.1の保護層塗布液の表3に記載の本発明に係るポリマーを表3に記載の量比で添加して試料No.2〜26の保護層塗布液を調製し、試料No.1の作製と同様にして、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料試料No.2〜26(本発明)を作製した。
【0113】
(試料No.27、28の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の作製)
熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料試料No.27、28はそれぞれ、A−06およびB−02を、保護層ではなく感光層塗布液に感光層のバインダーとポリマーの総量に対して20質量%になるように添加して作製した。
【0114】
《熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料試料の評価》
以上のようにして作製した試料No.1〜28を、下記に示す評価を行った。
【0115】
〈汚れ〉:汚れは、直径12cmの熱ドラムの周辺に直径2.5cmのシリコーンゴム熱ローラー(熱源を有せず)を配置し、加重3kPaを掛けて150℃で現像するテスト用現像装置を用い、20×30cmサイズの試料を順次200枚づつ加熱現像処理したときの最後の190枚目から200枚目の各種試料の汚れを評価した。ここで、汚れがないレベルを5、極僅かに汚れが認められるレベルを4、わずかの汚れがあるレベルを3、汚れが多少認められるレベルを2、ひどい汚れがあるものを1とした。
【0116】
以上の結果を表3示す。
【0117】
【表3】
【0118】
表3から明らかなように、本発明の試料は熱現像による汚れの発生が少ないことが判る。
【0119】
【発明の効果】
本発明により熱現像による汚れの発生が少ない熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を提供することができた。
Claims (2)
- 支持体上に感光層および保護層を含む写真構成層を有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記保護層は活性メチレン基を有するポリマーを含有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
- 支持体上に感光層および保護層を含む写真構成層を有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記保護層は無水マレイン酸ユニットを共重合成分として有するポリマーを含有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
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