JP2004069030A - 自動変速機 - Google Patents

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Hosei Suzuki
鈴木 歩誠
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Abstract

【課題】変速品質の向上とともにバイパスクラッチの小型化を実現する。
【解決手段】入力軸12には複数の駆動歯車31〜36が設けられ、出力軸13にはそれぞれ駆動歯車31〜36に噛み合う複数の従動歯車41〜46が設けられており、噛み合う駆動歯車31〜36と従動歯車41〜46とにより変速歯車列が形成される。エンジン11のクランク軸15からの動力は発進クラッチ17により入力軸12に伝達され、複数の変速歯車列のうち動力を伝達する変速歯車列は切り換え機構によって切り換えられる。駆動歯車33には第1のバイパスクラッチ71が取り付けられ、駆動歯車36には第2のバイパスクラッチ72が取り付けられており、それぞれのバイパスクラッチ71,72は相互に相違したトルクで入力軸12のトルクを出力軸13に伝達する。変速時には複数のバイパスクラッチ71,72を介して入力軸12から出力軸13に動力が伝達される。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両に搭載される自動変速機に関し、特に、複数の変速歯車列を有する自動変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
運転者の手動操作により変速操作を行うマニュアル式変速機(MT)は、エンジンに連結され複数の駆動歯車が装着される入力軸と、駆動歯車と対となった複数の従動歯車が装着され駆動輪に連結される出力軸とを有しており、入力軸と出力軸との間には複数の変速歯車列が設けられている。このMTにあっては、変速時にクラッチを切断後、複数の変速歯車列の中から、動力の伝達を行う歯車対の切り換えをシンクロメッシュ機構などの切り換え機構を手動により切り換え、クラッチを接続することで変速動作つまりシフトチェンジが行われる。
【0003】
このシフトチェンジとクラッチ操作を油圧により作動するシフトアクチュエータによって行うようにすると、マニュアル式変速機の構成をベースとした自動変速機とすることができる。複数の変速歯車列を有するこのタイプの自動変速機(Automated Manual Transmission。以下AMTと略す)は、自動変速機構にプラネタリーギヤなどを有する通常のトルクコンバータ式自動変速機(AT)に比して部品点数を少なくして軽量化を図り易く、しかも駆動系の伝達効率が高いという利点を有している。
【0004】
このAMTタイプの自動変速機としては、エンジンのクランク軸と入力軸との間にこれらを締結状態と締結解除状態とに切り換える発進クラッチと、変速動作時に入力軸から出力軸にトルクを伝達することにより変速トルク切れの発生を防止するための油圧多板クラッチ式のバイパスクラッチとを有するものが、たとえば、特開2000−65199号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開2000−65199号公報に示される自動変速機は、入力軸と出力軸に第1速から第5速までの変速歯車列を設け、第1速と第2速の変速歯車列の切り換えと、第3速と第4速の変速歯車列の切り換えとをそれぞれシンクロ機構によって行い、第5速の変速歯車列による動力の伝達と伝達解除とをバイパスクラッチによって行うように構成されている。この自動変速機にあっては、変速時にはバイパスクラッチを締結して第5速の変速歯車列から動力を伝達することにより入力軸から出力軸へのトルクの落ち込みを防止している。しかしながら、この場合にはバイパスクラッチを第5速の変速歯車列に設けているので、バイパスクラッチを介して入力軸から出力軸に伝達されるトルク容量が第5速の歯車比相当となる。
【0006】
このため、第1速から第2速に変速する際にバイパスクラッチを介して伝達することができる最大のトルクは、第5速による伝達駆動力となり、バイパスクラッチの入力側の慣性力つまりイナーシャによるトルク増大分を加えても、第2速の変速歯車列による伝達駆動力との差が大きくなってしまう。この差が大きいと変速ショックが発生して自動変速機の変速品質低下を招くだけでなく、運転者に違和感を与えることになる。また、変速ショックを低減するために、変速時間を長くすると変速時の違和感を招くことになる。同様に、第2速から第3速への変速時にも、バイパスクラッチを介して伝達するトルクと第3速による伝達駆動力との差が、イナーシャによるトルク増大分を加えても比較的大きな差となり、変速ショックの増大により変速品質を低下させることになる。
【0007】
また、車両の燃費向上や高速走行時の静粛性を向上させたり、四輪駆動車に大きな発進駆動力や牽引力を発揮させるために、変速段数を5段以上、たとえば、6段としたり、これに1段のエクストラローギヤなどを備えた自動変速機を車両に搭載することがある。このように、変速段数を増加させると、最低段数つまり第1速と最高段数たとえば第6速との歯車比の差が大きくなり、上述した変速品質がさらに低下することになる。特に、産業車両や重量車両に適用する自動変速機を勘案すると、歯車比の差が大きくなることによりこの傾向はさらに顕著となる。
【0008】
そこで、伝達駆動力が大きい低速段側の変速歯車列と、伝達駆動力が小さい高速段側の変速歯車列とにそれぞれバイパスクラッチを設けることにより、変速する変速歯車列に応じて変速の際に締結するバイパスクラッチを選択することも考えられる。このように、複数の異なる変速歯車列にバイパスクラッチを設けると、切り換えられる変速歯車列の伝達駆動力に、バイパスクラッチを介して伝達するトルクを近づけることができ、変速ショックを軽減することにより変速品質を向上させることができる。
【0009】
しかしながら、伝達駆動力の大きな低速段側の変速歯車列に設けられ、高トルクの伝達が要求されるバイパスクラッチには、締結時の発熱を吸収し、クラッチプレートの耐久性をあげるため、プレート同士の接触面積が大きいものが必要とされる。この接触面積の拡大により、バイパスクラッチが大型化するとともに自動変速機が大型化するため、自動変速機の搭載性が悪化するおそれがある。
【0010】
また、トルクの落ち込みを軽減することにより変速品質を向上させるには、バイパスクラッチにより伝達されるトルクが上昇した後に、切り換え機構を作動させる必要があるため、変速応答性の向上つまり変速時間の短縮が困難となっていた。
【0011】
本発明の目的は、変速品質の向上とともにバイパスクラッチの小型化を実現することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、変速品質の向上とともに自動変速機の変速応答性を向上することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動変速機は、複数の駆動歯車が設けられた入力軸と、前記駆動歯車に噛み合う複数の従動歯車が設けられた出力軸とを備えた自動変速機であって、エンジンのクランク軸と前記入力軸との間に設けられ、エンジン動力の前記入力軸に対する伝達と遮断とを切り換える発進クラッチと、前記駆動歯車と前記従動歯車とにより形成される複数の変速歯車列のうち動力を伝達する変速歯車列を切り換える切り換え機構と、前記入力軸のトルクを前記出力軸に相互に相違したトルクで伝達する複数のバイパスクラッチと、前記変速歯車列を切り換える際に、複数の前記バイパスクラッチによる複数の伝達経路を介して前記入力軸から前記出力軸に動力を伝達させるバイパスクラッチ制御手段とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の自動変速機は、それぞれ低速段側の複数の変速歯車列からなる第1の変速歯車列群に対応する第1のバイパスクラッチと、それぞれ高速段側の複数の変速歯車列からなる第2の変速歯車列群に対応する第2のバイパスクラッチとを有し、前記第1の変速歯車列群の変速歯車列を切り換える際に、前記第1および第2のバイパスクラッチによる複数の伝達経路を介して前記入力軸から前記出力軸に動力を伝達させることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、入力軸と出力軸との間に複数のバイパスクラッチを設け、切り換え機構を切り換えて変速する際に、入力軸から出力軸に伝達する動力を複数のバイパスクラッチに分配することにより、バイパスクラッチにかかる負荷を低減することができる。この負荷の低減により、バイパスクラッチを小型化することができ、耐久性を向上させることができる。
【0016】
また、入力軸から出力軸に伝達する動力を複数のバイパスクラッチに分配することによって、トルクを速く立ち上げることができ、変速時間を短縮することができる。これにより変速機の応答性を向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態である自動変速機10を示すスケルトン図である。この自動変速機10は、エンジン11に連結される入力軸12と、これに平行となって駆動輪に連結される出力軸13とを有しており、これらは車両の進行方向を向いてトランスミッションケース14内に組み込まれている。
【0019】
エンジン動力を出力するクランク軸15は、トルクコンバータ16と、入力クラッチつまり発進クラッチ17とを介して入力軸12に連結されている。クランク軸15にはトルクコンバータ16が接続されている。トルクコンバータ16は、クランク軸15に一体に固定されるフロントカバー18と、これに連結されるポンプインペラ19とを有しており、クランク軸15の回転によってポンプインペラ19が回転駆動される。この回転駆動は、作動流体を介して、ポンプインペラ19に対面して設けられるタービンランナ20に伝達される。また、ポンプインペラ19とタービンランナ20の間には、ワンウェイクラッチ21に一方向回転自在に支持されるステータ22が設けられ、タービンランナ20を回転駆動した作動流体を再びポンプインペラ19に圧送するように構成されている。
【0020】
一方、入力軸12には発進クラッチ17が設けられており、発進クラッチ17は入力軸12に固定されるクラッチハブ23と、その外側に設けられタービンランナ20に固定されるクラッチドラム24とを有している。これらの間にはクラッチプレート25が配置されており、この発進クラッチ17は単板クラッチとなる。なお、単板クラッチに代えて複数のクラッチプレートを配置した多板クラッチを用いるようにしても良い。
【0021】
また、クラッチドラム24には、クラッチドラム24とフロントカバー18とを締結または切断するロックアップクラッチ26が設けられており、ロックアップクラッチ26を作動することにより、エンジン動力をトルクコンバータ16を介すことなく発進クラッチ17に伝達することもできる。このロックアップクラッチ26は、実験などによって予め設定された車速とアクセル開度などのマップに基づき車速が所定値以上となると締結される。
【0022】
このように、エンジン11からの動力は、トルクコンバータ16またはロックアップクラッチ26と発進クラッチ17とを介して入力軸12に伝達される。なお、エンジン11にはエンジントルクやエンジン回転数を調整する電子制御スロットル27が設けられており、通常は図示しないアクセルペダルの踏み込み量に応じた電子制御装置からの出力信号により電子制御スロットル27を開閉してエンジン制御が行われる。また、電子制御スロットル27は必要に応じてアクセルペダルの踏み込み量に関係なく、検出された運転状態により予め設定されたマップなどに基づいて開閉しエンジン制御が行われる。
【0023】
入力軸12には第1速の駆動歯車31と第2速の駆動歯車32とが固定され、第3速から第6速の駆動歯車33〜36が回転自在に装着されている。一方、出力軸13には第1速の従動歯車41と第2速の従動歯車42が回転自在に装着され、第3速から第6速の従動歯車43〜46が固定されている。それぞれの駆動歯車31〜36と、これに対応する従動歯車41〜46とが噛み合って前進段の変速歯車列となっている。複数の変速歯車列のうち動力伝達を行う変速歯車列が選択されると、自動変速機10はその変速歯車列に対応した変速段となり、この変速段に応じた伝達駆動力で出力軸13は回転駆動される。
【0024】
出力軸13は中空軸となっており、内部には前輪出力軸51が組み込まれている。出力軸13と前輪出力軸51はセンタディファレンシャル装置52により連結され、前輪出力軸51はフロントディファレンシャル装置53を介して図示しない前輪用のドライブシャフトに連結されている。また、センタディファレンシャル装置52は駆動歯車54と従動歯車55とを介して後輪出力軸56に連結されており、後輪出力軸56は図示しないリヤディファレンシャル装置を介して図示しない後輪用のドライブシャフトに連結されている。
【0025】
出力軸13には変速歯車列を第1速と第2速のいずれかに選択的に切り換える第1の切り換え機構61が設けられ、入力軸12には第4速と第5速のいずれかに選択的に切り換える第2の切り換え機構62が設けられている。なお、第1の切り換え機構61を入力軸12に設け、第2の切り換え機構62を出力軸13に設けるようにしても良く、両方の切り換え機構61,62をそれぞれ入力軸12または出力軸13に設けるようにしても良い。
【0026】
第1の切り換え機構61は、第1速と第2速の従動歯車41,42の間に配置されて出力軸13に固定されたシンクロハブ61aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ61bとを有している。シンクロスリーブ61bを従動歯車41に一体形成されたスプライン41aに噛み合わせると第1速に設定され、従動歯車42に一体形成されたスプライン42aに噛み合わせると第2速に設定される。
【0027】
第2の切り換え機構62は第4速と第5速の駆動歯車34,35の間に配置されて入力軸12に固定されたシンクロハブ62aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ62bとを有している。シンクロスリーブ62bを駆動歯車34に一体形成されたスプライン34aに噛み合わせると第4速に設定され、駆動歯車35に一体形成されたスプライン35aに噛み合わせると第5速に設定される。
【0028】
入力軸12には後退用の駆動歯車37が固定され、出力軸13には後退用の従動歯車47が固定されており、それぞれの歯車37,47は、アイドラ軸63に回転自在に設けられたアイドラ歯車64を介して噛み合うようになっている。また、アイドラ歯車64は、歯車37,47に噛み合う位置と、噛み合いが外れる位置とに移動自在にアイドラ軸63に装着されており、図示しない切り換え機構によってアイドラ歯車64が軸方向に移動され、アイドラ歯車64を介して駆動歯車37と従動歯車47とが噛み合わされると後退段に設定される。
【0029】
図示する自動変速機10は、変速段数が前進6段と後退1段とにより構成されており、第1速から第3速までが後退段を含めて低速段側の変速歯車列群を構成し、第4速から第6速までが高速段側の変速歯車列群を構成している。このように、図示する場合には、第1速から第6速までの変速段が低速段側と高速段側の2つのグループに分けられている。
【0030】
入力軸12には、第3速の駆動歯車33を介して入力軸12のトルクを出力軸13に伝達するための第1のバイパスクラッチ71が設けられ、第6速の駆動歯車36を介して入力軸12のトルクを出力軸13に伝達するための第2のバイパスクラッチ72が設けられている。したがって、第1のバイパスクラッチ71は低速段側の変速歯車列群のうち最も高速段側の歯車比によって入力軸12から出力軸13にトルクを伝達する。また、第2のバイパスクラッチ72は高速段側の変速歯車列群のうち最も高速段側の歯車比によって入力軸12から出力軸13にトルクを伝達する。このように、第1のバイパスクラッチ71は第3速の変速歯車列を構成しており、第3速が選択されると第1のバイパスクラッチ71は締結状態となる。同様に、第2のバイパスクラッチ72は第6速の変速歯車列を構成しており、第6速が選択されると第2のバイパスクラッチ72は締結状態となる。それぞれのバイパスクラッチ71,72は、相互に異なった歯車比の変速歯車列を構成しているので、入力軸12から出力軸13に対しては相互に相違したトルクを伝達することになる。
【0031】
図示する場合には、変速段は2つのグループに分けられているが、複数の変速段を1つのグループとして3つ以上の変速歯車列群に分けるようにして、それぞれの変速歯車列群に対応さて3つ以上のバイパスクラッチを変速機に設けるようにしても良い。この場合、バイパスクラッチを介して伝達されるトルクを細かく設定することができ、特に、変速段数が増加するときには有効となる。
【0032】
第1のバイパスクラッチ71は、入力軸12に固定されるクラッチハブ73と、第3速の駆動歯車33に固定されたクラッチドラム74とを有し、これらの間には複数のクラッチプレート73a,74aが組み込まれている。このバイパスクラッチ71を締結すると入力軸12は駆動歯車33に連結され、締結を解くと駆動歯車33との連結が解除される。
【0033】
同様に、第2のバイパスクラッチ72は、入力軸12に固定されるクラッチハブ75と、第6速の駆動歯車36に固定されたクラッチドラム76とを有し、これらの間には複数のクラッチプレート75a,76aが組み込まれている。このバイパスクラッチ72を締結すると、入力軸12は駆動歯車36に連結され、締結を解くと駆動歯車36との連結が解除される。
【0034】
図2は前述した自動変速機10を変速制御するための油圧制御回路を示すブロック図である。図2に示すように、自動変速機10は第1のバイパスクラッチ71を作動するための3速バイパスクラッチアクチュエータ81と、第2のバイパスクラッチ72を作動するための6速バイパスクラッチアクチュエータ82と、発進クラッチ17を作動するための発進クラッチアクチュエータ83とを有している。さらに、自動変速機10は複数の変速歯車列から動力伝達を行う変速歯車列を切り換えて所定の変速段を選択するために、セレクトアクチュエータ84とシフトアクチュエータ85とを有している。これらの2つのアクチュエータ84,85の直線往復動を図示しない方向変更機構のセレクトレバーを介して前述したそれぞれの切り換え機構の切換移動に変換し、第1速、第2速、第4速および第5速の前進段と後退段との切り換えを行うようにしている。
【0035】
前述したそれぞれのアクチュエータ81〜85を駆動する作動油は、電動モータ86により駆動されるオイルポンプ87によって供給される。つまり、3速バイパスクラッチアクチュエータ81には電磁圧力制御弁VA1を介して、6速バイパスクラッチアクチュエータ82には電磁圧力制御弁VA2を介して、そして、発進クラッチアクチュエータ83には電磁圧力制御弁VA3を介してオイルポンプ87から作動油が供給される。また、セレクトアクチュエータ84には電磁切換弁VA4,VA5を介して作動油が供給され、シフトアクチュエータ85には電磁圧力制御弁VA6,VA7を介して作動油が供給される。このセレクトアクチュエータ84は図2において矢印Aで示す方向にセレクトレバーを駆動し、シフトアクチュエータ85は図2において矢印Bで示す方向にセレクトレバーを駆動する。
【0036】
シフトアクチュエータ85を電磁圧力制御弁VA6,VA7により制御するのに対し、セレクトアクチュエータ84が電磁切換弁VA4,VA5により制御可能なのは、A方向の2位置切換操作(セレクト操作)は、デッドストップに突き当てるまで大きな操作力で単純に押せば足りるからである。これに対して、B方向の3位置切換操作(シフト操作)はシンクロによる同期が必要であり、過大な操作力はシンクロリングの摩耗を招来するため操作力自体の制御が求められ、シフトアクチュエータ85を電磁圧力制御弁VA6,VA7により制御する。また、B方向のシフト操作力はA方向のセレクト操作力に比して大きいため、デッドストップ当接時に大きな音が出やすく、操作音対策も必要となる。このため、シフト操作では、シフトアクチュエータ85により操作期間を3段階に分け、迅速なシフト動作とシンクロリングの保護、そして操作音の低減という要求を満たしている。すなわち、初期は強く、シンクロ同期時は中程度、終期は弱く操作力を調整している。従って、シフトアクチュエータ85については、単に油圧のオンオフを行うのみの制御弁ではなく、供給油圧の調整が可能な電磁圧力制御弁を使用して作動させる。
【0037】
電動モータ86およびそれぞれの電磁弁VA1〜VA7は、電子制御ユニットであるECU88からの信号によって制御され、オイルポンプ87からの吐出圧(ライン圧)は圧力センサ89により監視されるようになっている。オイルポンプ87から供給される作動油は、その一部がアキュムレータ90に貯留される。アキュムレータ90の密封容器内には窒素等の気体が充満されており、そこに作動油を押し込むことにより気体が圧縮され、作動油の圧力エネルギが気体の圧力エネルギに変換されて蓄えられる。つまり、アキュムレータ90はライン圧を蓄えることによりライン圧の安定を図っている。また、アキュムレータ90に蓄えた圧力により、ポンプ87の故障やオイル漏れ等、油圧系に障害が生じた場合でも、変速段をたとえば3速に強制的にシフトチェンジするなど、最低限の非常動作が確保できるようになっている。なお、オイルポンプ87を電動モータ86により駆動することなく、エンジン11のクランク軸15によって駆動されるオイルポンプを使用しても良い。
【0038】
ECU88には、インヒビタスイッチ92、エンジン回転数センサ93、入力軸回転数センサ94および出力軸回転数センサ95などから信号が入力される。このECU88は、インヒビタスイッチ92からの信号に基づきセレクトレバーの位置を検出するとともに、エンジン回転数センサ93によりエンジン回転数を検出する。また、入力軸回転数センサ94により入力軸回転数を、出力軸回転数センサ95により出力軸回転数をそれぞれ検出し、図示しない各種のセンサにより現在の車速やアクセル開度などを検出する。そして、ECU88は、これらの検出データから車両の運転状況を検出し、必要に応じて電動モータ86に駆動信号を出力し、それぞれの電磁弁VA1〜VA7に制御信号を送る。このように、ECU88はバイパスクラッチ制御手段として機能する。また、ECU88は圧力センサ89によりオイルポンプ87から供給されるライン圧を常時監視しており、油圧が所定値以上となった場合には電動モータ86を停止する。その後、変速操作が繰り返されるなどして油圧を消費し、ライン圧が所定値以下となったときには電動モータ86は駆動される。
【0039】
次に、変速時における2つのバイパスクラッチ71,72の作動について説明する。まず、アップシフト動作について説明すると、第3速の歯車比でトルクを出力軸13に伝達する第1のバイパスクラッチ71は、第1速から第2速、第2速から第3速などの低速段側の変速歯車列グループにおける変速の際に作動する。一方、第2のバイパスクラッチ72は、第3速から第4速、第4速から第5速、および第5速から第6速などの高速段側の変速歯車列グループにおける変速の際に作動するとともに、出力軸13に大きなトルクを伝達する必要のある第1速から第2速へのアップシフト時にも、第1バイパスクラッチ71を補助するように作動する。
【0040】
たとえば、第1速から第2速へのアップシフト時には、アクセル開度、車速、エンジン回転数、入力軸回転数、出力軸回転数、変速ギヤ位置などの情報から走行状態を検出し、予め設定されたプログラムに基づいて第1のバイパスクラッチ71および第2のバイパスクラッチ72を締結し、2つのバイパスクラッチ71,72を介して入力軸12から出力軸13にトルクを伝達する。これにより、変速時に切り換え機構61を切り換える際のトルクの落ち込みが軽減され変速ショックが緩和される。また、第2速から第3速へのアップシフト時には、第1のバイパスクラッチ71の制御と同期させながら、電子制御スロットル27を閉じるように制御してエンジントルクを低減する。このように、バイパスクラッチ71と電子制御スロットル27を制御することにより、変速ショックを緩和することができる。
【0041】
そして、第3速から第4速、第4速から第5速へのアップシフト時には、走行状態を検出し、予め設定されたプログラムに基づいて第2のバイパスクラッチ72を締結し、バイパスクラッチ72を介して入力軸12から出力軸13にトルクを伝達する。これにより、変速時におけるトルクの落ち込みが軽減され変速ショックが緩和される。また、第5速から第6速へのアップシフト時には、第2のバイパスクラッチ72を制御しながら、電子制御スロットル27を閉じるように制御することによりエンジントルクを低減して変速ショックを緩和することができる。
【0042】
以下、第1速から第2速へのアップシフト時における2つのバイパスクラッチ71,72の締結制御について説明する。図3はバイパスクラッチ制御手段による第1速から第2速への変速制御の手順を示すフローチャートである。
【0043】
図3に示すように、ステップS1では、アクセル開度、車速、エンジン回転数、などの情報から走行状態を検出し、予め設定されたプログラムに基づいて第2速にアップシフト動作を行うか否かが判断される。第1速を維持すると判断されたときには、第2速へのアップシフトが許可されるまで、所定の時間ごとにステップS1が繰り返し実行される。
【0044】
一方、第2速へのアップシフトが許可されると、ステップS2に進み、電磁圧力制御弁VA1に制御信号が出力されてバイパスクラッチ圧が上昇し、3速バイパスクラッチアクチュエータ81が締結作動する。このアクチュエータ81の作動により、第1のバイパスクラッチ71は徐々に締結され、出力軸13に第1のバイパスクラッチ71を介してトルクが伝達され始める。
【0045】
続いて、ステップS3に進み、第1のバイパスクラッチ71の締結により発生するトルクT3と、エンジントルクTeとが比較される。トルクT3がエンジントルクTeに到達したと判断されると、ステップS4に進む一方、トルクT3がエンジントルクTeに到達していないときには、トルクT3がエンジントルクTeに達するまでステップS3が繰り返される。なお、エンジントルクTeはエンジン回転数をパラメータとして予め定められるトルクマップを参照することによってECU88により求められるものである。
【0046】
ステップS4では、電磁圧力制御弁VA6,VA7に制御信号が出力されてシフトアクチュエータ85が第1速位置から中立位置まで作動する。このアクチュエータ85の作動により、シンクロスリーブ61bが中立位置まで移動し、第1速の変速歯車列を介したトルクの伝達は解除される。このように、ステップS3,S4では、トルクT3がエンジントルクTeに達してから、シンクロスリーブ61bを中立位置に作動させるため、入力軸12から出力軸13に伝達されるトルクに大きな変動を与えることなく、第1速の変速歯車列から第1のバイパスクラッチ71にエンジントルクTeの伝達経路を移行させることができる。
【0047】
続くステップS5では、電磁圧力制御弁VA2に制御信号が出力されてバイパスクラッチ圧が上昇し、6速バイパスクラッチアクチュエータ82が締結作動する。この作動により、第2のバイパスクラッチ72は徐々に締結され、エンジントルクTeは、トルクT3に加えて第2のバイパスクラッチ72の締結により発生するトルクT6によっても伝達され始める。
【0048】
続いて、ステップS6では、2つのバイパスクラッチ71,72の締結によって減速される入力軸回転数Niが、第2速に変速された際の入力軸回転数である目標回転数Ntまで低下したか否かが判断される。入力軸回転数Niが目標回転数Ntまで低下したと判断されると、ステップS7に進む一方、入力軸回転数Niが目標回転数Ntを上回っているときには、入力軸回転数Niが目標回転数Ntに低下するまでステップS6が繰り返される。なお、目標回転数Ntは車速や変速後の歯車比などに基づき、ECU88によって算出されるものである。
【0049】
このように、2つのバイパスクラッチ71,72の締結により、出力軸13にトルクの伝達が行われながら、第2速相当の回転数にまで入力軸回転数Niが低下されると、続くステップS7では、電磁圧力制御弁VA6,VA7に制御信号が出力されてシフトアクチュエータ85が中立位置から第2速位置まで作動する。このアクチュエータ85の作動により、シンクロスリーブ61bが第2速位置まで移動し変速歯車列が第2速に切り換えられる。
【0050】
また、ステップS7が実行されるとともに、ステップS8では、電磁圧力制御弁VA1,VA2に制御信号が出力されてバイパスクラッチ圧が低下し、3速バイパスクラッチアクチュエータ81および6速バイパスクラッチアクチュエータ82の締結作動は解除される。これらのアクチュエータ81,82の解除作動により、2つのバイパスクラッチ71,72は徐々に締結解除される。このように、ステップS7,S8により、出力軸13にはバイパスクラッチ71,72の解放に伴って減少するトルクから、第2速の変速歯車列を介したトルクが滑らかに伝達され、急激なトルク変動を発生させることなく変速動作は完了される。
【0051】
図4は前述のフローチャートに従い第1速から第2速に変速した際の入力軸回転数Ni、出力軸13のトルクTo、バイパスクラッチの締結により発生するトルクT3,T6の変化を示すタイムチャートである。図4において、シフト位置はシンクロスリーブ61bの噛み合い位置を示し、シンクロスリーブ61bは第1速の従動歯車41にスプライン41aを介して噛み合う第1速位置から、中立位置を経て第2速の従動歯車42にスプライン42aを介して噛み合う第2速位置に移動する。変速動作が行われる際には、駆動歯車31と従動歯車41の第1速の変速歯車列を介して動力伝達が行われている状態から、まず、第1のバイパスクラッチ71を締結作動させるため、3速バイパスクラッチアクチュエータ81の油圧室に制御油圧を供給する。これにより、第1速の変速歯車列と第3速の変速歯車列との2系統を介して動力の伝達を行う状態に変化する。
【0052】
ここで、第1速の従動歯車41と第3速の従動歯車43は同一の出力軸13に設けられているが、各々に相互に相違した歯車比となっており、第1速の駆動歯車31対して第3速の駆動歯車33は、歯車比の関係から駆動歯車31よりも出力軸13を速く回転させるので、バイパスクラッチ71を係合すると係合状態に応じたトルクが第3速の変速歯車列により伝達される。
【0053】
次いで、トルクT3がエンジントルクTeを上回ると、シフトアクチュエータ85が作動し、シンクロスリーブ61bはシンクロハブ61aのみに噛み合った中立位置となる。この状態のもとでは、6速バイパスクラッチアクチュエータ82の油圧室に制御油圧が供給され、第1のバイパスクラッチ71による第3速の変速歯車列と、第2のバイパスクラッチ72による第6速の変速歯車列との2系統の伝達経路を介して動力の伝達を行う状態に変化する。そして、2つのバイパスクラッチ71,72の締結によって入力軸回転数Niを低下させるとともに、電子制御スロットル27を閉制御してエンジン回転数つまり入力軸回転数Niを低下させて同期させる。
【0054】
入力軸回転数Niが第2速相当の目標回転数Ntにまで低下した時点で、シンクロスリーブ61bを、シンクロハブ61aのみに噛み合った中立位置からシンクロハブ61aとスプライン42aとに噛み合う第2速位置に移動を開始させると、シンクロによる第2速の変速歯車列と、第1のバイパスクラッチ71による第3速の変速歯車列と、第2のバイパスクラッチ72による第6速の変速歯車列との3系統の伝達経路を介して動力の伝達を行う状態に変化する。この状態のもとで、シンクロスリーブを第2速位置に移動を完了させ、2つのバイパスクラッチ71,72を徐々に解放すると、第2速へのアップシフト動作が完了する。これにより、入力軸12から出力軸13に対しては第2速の変速歯車列を介して動力伝達されることになる。
【0055】
また、2つのバイパスクラッチ71,72の締結によるトルク伝達は、それぞれが設けられる変速歯車列の歯車比が異なるため、次のように実行される。第3速の変速歯車列の歯車比をG3、第6速の変速歯車列の歯車比をG6、入力軸12の回転低下による慣性トルクをTiとすると、これまでのエンジントルクTe、第1のバイパスクラッチ71のトルクT3、第2のバイパスクラッチ72のトルクT6、出力軸13のトルクToとの間に以下のような関係を有する。
【0056】
まず、エンジントルクTeは2つのバイパスクラッチ71,72により分担され受けられることにより、Te+Ti=T3+T6の関係が成り立つ。次いで、トルクT3,T6は、それぞれ歯車比G3,G6に応じて増減されて出力軸13に伝達されるため、To=T3×G3+T6×G6の関係が成り立つ。ここで、Te+Tiを特定の値と仮定して考えると、これら2つの関係式より、第1のバイパスクラッチ71に加えて第2のバイパスクラッチ72を締結させることによって、トルクT6の増加分だけトルクT3が低下する。また、歯車比G3,G6については、第3速の歯車比G3は第6速の歯車比G6に比べて大きいため、トルクT6が上昇したとしてもトルクT3の減少分は補うことができず、出力軸13に伝達されるトルクToは低下してしまう。
【0057】
このようなトルクToの低下は、変速品質を低下させるおそれがあるため、エンジン制御によって変速時のエンジントルクTeの低下量を減らし、エンジントルクTeを大きくする。これによりトルクToの低下を軽減することができ、自動変速機10の変速品質を向上することができる。このように、エンジントルクTeの低下量を減らす場合であっても、第1のバイパスクラッチ71のみを使用して出力軸13にトルクを伝達する場合より、2つのバイパスクラッチ71,72を使用してエンジントルクTeを分配して伝達した方が、第1のバイパスクラッチ71にかかる負荷は軽減される。
【0058】
このように、アップシフト時にはバイパスクラッチ制御とエンジン制御とを同時に行い、入力軸回転数Niが第2速相当の回転数にまで低下した時点で、シンクロスリーブ61bがスプライン42aと噛み合うことになるのでギヤ鳴きが発生することなく、円滑に変速操作が行われる。そして、シンクロスリーブ61bが中立位置になるときには、2つのバイパスクラッチ71,72を介して動力伝達を行うようにしたので、特に、駆動トルクが大きい低速段側の変速時において、トルク切れの発生を緩和するために大きなトルクを補う場合であっても、2つのバイパスクラッチ71,72に分担することができ、バイパスクラッチにかかる負担を軽減することができる。この負担軽減によって、特に第1のバイパスクラッチ71を小型化することができ、自動変速機10を小型化することもできる。また、2つのバイパスクラッチ71,72によってトルクを補うことにより、出力軸13に伝達する必要のあるトルクを速く立ち上げることができ、円滑な変速動作を維持しつつ変速時間の短縮を図ることも容易となる。これによりスポーティな走行が可能となる。
【0059】
図5は第1速から第2速への変速の際に、第1のバイパスクラッチ71のみを締結してトルクを伝達した場合と、加えて第2のバイパスクラッチ72を締結することにより2つのバイパスクラッチ71,72を介してトルクを伝達した場合とにおける第1のバイパスクラッチ71の瞬時発熱量と総発熱量とを示す比較図である。なお、太線は第1のバイパスクラッチ71のみを使用した場合を示し、細線は2つのバイパスクラッチ71,72を使用した場合を示している。それぞれについて実線は瞬時発熱量を示し、破線は総発熱量を示すものである。
【0060】
図5に実線で示す瞬時発熱量に示されるように、2つのバイパスクラッチ71,72によってエンジントルクTeを分担すると、第1のバイパスクラッチ71のみを使用する場合に比べて、第1のバイパスクラッチ71のトルク伝達量を低減することができるため、第1のバイパスクラッチ71に発生する瞬時発熱量を低減することができ、破線で示す総発熱量を低減することができる。このように、第1のバイパスクラッチ71の発熱量を押さえることによって、冷却性を向上させるためのバイパスクラッチ71の大型化を抑制するとともに、耐久性を向上させることもできる。
【0061】
これまで説明したように、駆動トルクが大きい第1速から第2速への変速時にあっては、バイパスクラッチとして要求される伝達トルクも大きいものとなるため、2つのバイパスクラッチ71,72を使用してトルクの落ち込みを軽減しているが、第2速以降の変速時においては、要求される伝達トルクが小さくなるため、1つのバイパスクラッチを用いて変速時のトルクの落ち込みを軽減する。第2速から第3速への変速時は第1のバイパスクラッチ71のみが使用され、第3速から第6速までの変速時においては第2のバイパスクラッチ72のみが使用されてトルクの落ち込みを軽減している。なお、第2速以降であっても、2つのバイパスクラッチ71,72を使用してトルクの落ち込みを軽減しても良く、また、変速時間を短縮するために2つのバイパスクラッチ71,72を使用しても良い。
【0062】
さらに、ダウンシフトについて説明する。通常のダウンシフトや追い越し加速時にアクセルペダルを深く踏み込んで強制的に減速させるキックダウンなどにおいては、走行状態を各種のセンサで検出し、予め設定したプログラムに従って、ダウンシフト時も第1および第2のバイパスクラッチ71,72を所定時間だけ締結状態、あるいは必要に応じてバイパスクラッチや発進クラッチ17を開放したり、必要に応じて発進クラッチ17などを半クラッチ状態(滑り制御状態)にする。これにより、ダウンシフト変速時のショックを少なくするとともに、変速時間の短縮されたスポーティな走行が可能となる。
【0063】
図6は本発明の他の実施の形態である自動変速機96の一部を示すスケルトン図である。この自動変速機96は、第1のバイパスクラッチ71が図1に示す場合と同様に入力軸12に設けられているのに対して、第2のバイパスクラッチ72が出力軸13に設けられた構造となっている。このバイパスクラッチ72のクラッチハブ75は出力軸13に固定され、クラッチドラム76は第6速の従動歯車46に固定されている。図6に示す自動変速機96においても、図1に示す場合と同様にして変速操作を行うことができる。なお、第1のバイパスクラッチ71も出力軸13に設けるようにしても良く、その場合には駆動歯車33を入力軸12に固定し、従動歯車43を出力軸13に対して回転自在に装着することになる。
【0064】
図7は本発明のさらに他の実施の形態である自動変速機97の一部を示すスケルトン図である。この自動変速機97は、両方のバイパスクラッチ71,72がそれぞれ入力軸12に設けられ、第3速と第4速の駆動歯車33,34の間に第6速の駆動歯車36が配置され、2つのバイパスクラッチ71,72が第3速と第6速の駆動歯車33,36の間に相互に隣り合って設けられた構造となっている。この場合には、両方のバイパスクラッチ71,72を制御する油圧回路構成を集約することができる。これにより、油圧回路を短縮することができ、各バイパスクラッチ71,72の油圧応答性を向上させることができる。なお、それぞれのバイパスクラッチ71,72を相互に隣り合わせて出力軸13に設けるようにしても良い。
【0065】
図6および図7に示した自動変速機96,97においても、図1に示した場合と同様にバイパスクラッチ71,72を作動させて変速操作を行うことができる。本発明の自動変速機10,96,97は、図1、図6および図7に示すように、2つのバイパスクラッチ71,72を入力軸12と出力軸13のいずれに配置しても良い。また、本発明の自動変速機10,96,97はエンジンルーム内に縦置きあるいは横置きのいずれの形式としても配置することができ、FF車やFR車のみならず、四輪駆動車にも適用することができる。さらに、軽自動車から大型車までどのような車種に対してもこの自動変速機10,96,97を適宜搭載することができる。
【0066】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、発進クラッチ17およびそれぞれのバイパスクラッチ71,72は、油圧源となるオイルポンプ87からの油圧を適宜調圧して、作動油圧を各クラッチへ供給するようにした油圧クラッチであるが、油圧クラッチに限定されることはない。たとえば、電磁クラッチの励磁力を電流制御するようにし、電磁クラッチを構成するドライブメンバとドリブンメンバとを締結制御する方式でも良い。なお、油圧クラッチとした場合には単板式であっても多板式であっても良く、手段を選ばないことは言うまでもない。
【0067】
また、トルクコンバータ16の代わりにフルード・カップリング(流体継手)を設けるようにしても良く、これらの発進装置の方式は限定されるものではない。この場合、流体継手やトルクコンバータ16の引きずりトルクは、発進クラッチ17を開放することにより、引きずりトルクが変速機の内部の切り換え機構に対して影響を与えないように構成することは言うまでもない。切り換え機構としては、シンクロメッシュ機構に限られることなく、ドッグクラッチ切り換えなどを用いるようにしても良い。
【0068】
さらに、実施の形態では、2つのバイパスクラッチ71,72を設けたが、変速段数が図示した場合よりも増加する場合には、バイパスクラッチの数を増やすことにより対応可能である。たとえば、8段変速の場合には第3のバイパスクラッチを設けるようにしても良く、エクストラローレンジを有する場合は緊急脱出用の歯車比であり、通常の第1速の歯車との間の歯車比の差が大きくなることから、その間にさらに他のバイパスクラッチを設けるようにしても良い。この場合、変速時のトルクの落ち込みを軽減するために、締結されるバイパスクラッチは、3つ以上のバイパスクラッチを締結するようにしても良く、自動変速機10に設けられた3つ以上のバイパスクラッチのうち、2つ以上のバイパスクラッチを変速段に応じて選択的に締結するようにしても良い。
【0069】
さらに、実施の形態では、第1のバイパスクラッチ71を先に締結させてエンジントルクTeを越えてから、第2のバイパスクラッチ72を締結させることにより、バイパスクラッチ制御を容易にしているが、2つのバイパスクラッチ71,72をともに締結させることによってエンジントルクTeを越えるように制御しても良い。これにより、変速時間を短縮することができる。
【0070】
さらに、図示する場合には、第1のバイパスクラッチ71を第3速の歯車と一体に設け、第2のバイパスクラッチ72を第6速の歯車に一体に設けることにより、第3速時および第6速時には、各バイパスクラッチが動力を伝達するようにしているが、それぞれのバイパスクラッチ71,72を変速時にのみ作動させるようにして、第3速と第6速の変速歯車列を切り換え機構によって動力を伝達するように変速動作させるようにしても良い。その場合には、切り換え機構を操作させるときにバイパスクラッチ71,72を作動させて第3速と第6速の変速歯車列を介してトルクを伝達しながら変速を行うことになる。このとき、それぞれのバイパスクラッチ71,72の歯車比は、2つにグループ分けされる各々の変速歯車列群において、高速段側の歯車比と同一あるいはその前後の歯車比に設定される。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、入力軸と出力軸との間に複数のバイパスクラッチを設け、切り換え機構を切り換えて変速する際に、入力軸から出力軸に伝達する動力を複数のバイパスクラッチに分配することにより、バイパスクラッチにかかる負荷を低減することができる。この負荷の低減により、バイパスクラッチを小型化することができ、耐久性を向上させることができる。
【0072】
また、入力軸から出力軸に伝達する動力を複数のバイパスクラッチに分配することによって、トルクを速く立ち上げることができ、変速時間を短縮することができる。これにより変速機の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である自動変速機を示すスケルトン図である。
【図2】自動変速機の作動を制御するための油圧制御回路図を示すブロック図である。
【図3】第1速から第2速への変速処理を行うフローチャートである。
【図4】第1速から第2速への変速時における入力軸回転数、出力軸のトルク、第1のバイパスクラッチのトルクおよび第2のバイパスクラッチのトルクの変化を示すタイムチャートである。
【図5】第1のバイパスクラッチの瞬時発熱量と総発熱量とを示す比較図である。
【図6】本発明の他の実施の形態である自動変速機の一部を示すスケルトン図である。
【図7】本発明の他の実施の形態である自動変速機の一部を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
10  自動変速機
11  エンジン
12  入力軸
13  出力軸
15  クランク軸
17  発進クラッチ
31〜36  駆動歯車
41〜46  従動歯車
61  第1の切り換え機構(切り換え機構)
62  第2の切り換え機構(切り換え機構)
71  第1のバイパスクラッチ(バイパスクラッチ)
72  第2のバイパスクラッチ(バイパスクラッチ)
88  ECU(バイパスクラッチ制御手段)
96  自動変速機
97  自動変速機

Claims (2)

  1. 複数の駆動歯車が設けられた入力軸と、前記駆動歯車に噛み合う複数の従動歯車が設けられた出力軸とを備えた自動変速機であって、
    エンジンのクランク軸と前記入力軸との間に設けられ、エンジン動力の前記入力軸に対する伝達と遮断とを切り換える発進クラッチと、
    前記駆動歯車と前記従動歯車とにより形成される複数の変速歯車列のうち動力を伝達する変速歯車列を切り換える切り換え機構と、
    前記入力軸のトルクを前記出力軸に相互に相違したトルクで伝達する複数のバイパスクラッチと、
    前記変速歯車列を切り換える際に、複数の前記バイパスクラッチによる複数の伝達経路を介して前記入力軸から前記出力軸に動力を伝達させるバイパスクラッチ制御手段とを有することを特徴とする自動変速機。
  2. 請求項1記載の自動変速機において、それぞれ低速段側の複数の変速歯車列からなる第1の変速歯車列群に対応する第1のバイパスクラッチと、それぞれ高速段側の複数の変速歯車列からなる第2の変速歯車列群に対応する第2のバイパスクラッチとを有し、前記第1の変速歯車列群の変速歯車列を切り換える際に、前記第1および第2のバイパスクラッチによる複数の伝達経路を介して前記入力軸から前記出力軸に動力を伝達させることを特徴とする自動変速機。
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