JP2004068982A - 複軸多層モータのベアリング予圧構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ステータSを挟んで同心円状にインナーロータIRとアウターロータORとを配置し、第1モータ中空軸8の内周空間を第2油冷室92に設定し、ステータSの外周空間を空気室95に設定し、第1モータ中空軸8と第2モータ軸9との間に、第2油冷室92と空気室95を仕切るメカニカルシール100と、第1モータ中空軸8と第2モータ軸9を相対回転可能に支持する中間ベアリング84を備えた複軸多層モータMにおいて、前記中間ベアリング84は、その内輪84aを締まり嵌めとし、外輪84bを隙間嵌めとし、前記中間ベアリング84の外輪のみに接するカラー101と、内蔵スプリングを有するメカニカルシール100とを、隣接して互いに接する位置に配置した。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド駆動ユニット等に適用される複軸多層モータのベアリング予圧構造の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、モータのベアリング予圧構造としては、例えば、特開平11−18386号公報に記載のものが知られている。
【0003】
この従来公報には、ベアリングに予圧を与えるために、ベアリングの内外輪のうち片輪を固定し、もう一方の片輪を皿バネやコイルバネを用いて軸方向に加圧する構成としていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のモータのベアリング予圧構造にあっては、ベアリングに対して、皿バネやコイルバネを配置することで予圧を与えていたため、バネ要素の追加、および、バネ要素の配置スペースの確保が必要であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、メカニカルシールの内蔵スプリングの反力を利用することで、バネ要素の追加やバネ要素の配置スペースの確保することなく、ベアリングに予圧を付与しながら空気室と油室とをシール性を保ちながら仕切ることができる複軸多層モータのベアリング予圧構造を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のベアリング予圧構造では、ステータを挟んで同心円状にインナーロータとアウターロータとを配置し、インナーロータ支持部材とアウターロータ支持部材との間に、油室と空気室を仕切るメカニカルシールと、両支持部材を相対回転可能に支持するベアリングを備えた複軸多層モータにおいて、前記ベアリングの内輪を締まり嵌め、外輪を隙間嵌めとし、前記ベアリングの外輪のみに接するカラーと、内蔵スプリングを有するメカニカルシールとを、隣接して互いに接する位置に配置した。
【0007】
【発明の効果】
よって、本発明のベアリング予圧構造にあっては、隙間嵌めとしたベアリングの外輪に対しカラーを介してメカニカルシールの内蔵スプリングの反力を作用させることによりベアリングに予圧を付与するようにしたため、従来のようにバネ要素の追加やバネ要素の配置スペースの確保することなく、ベアリングに予圧を付与しながら空気室と油室とをシール性を保ちながら仕切ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複軸多層モータのベアリング予圧構造を実現する実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
【0010】
[ハイブリッド駆動ユニットの全体構成]
図1は第1実施例の複軸多層モータが適用されたハイブリッド駆動ユニットの全体図であり、図1において、Eはエンジン、Mは複軸多層モータ、Gはラビニョウ型複合遊星歯車列、Dは駆動出力機構、1はモータカバー、2はモータケース、3はギヤハウジング、4はフロントカバーである。
【0011】
前記エンジンEは、ハイブリッド駆動ユニットの主動力源であり、エンジン出力軸5とラビニョウ型複合遊星歯車列Gの第2リングギヤR2とは、回転変動吸収フライホイールダンパー6及び多板クラッチ7を介して連結されている。
【0012】
前記複軸多層モータMは、外観的には1つのモータであるが2つのモータジェネレータ機能を有する副動力源である。この複軸多層モータMは、前記モータケース2に固定され、コイルを巻いた固定電機子としてのステータSと、前記ステータSの内側に配置し、永久磁石を埋設したインナーロータIRと、前記ステータSの外側に配置し、永久磁石を埋設したアウターロータORと、を同軸上に三層配置することで構成されている。前記インナーロータIRに固定の第1モータ中空軸8は、ラビニョウ型複合遊星歯車列Gの第1サンギヤS1に連結され、前記アウターロータORに固定の第2モータ軸9は、ラビニョウ型複合遊星歯車列Gの第2サンギヤS2に連結されている。
【0013】
前記ラビニョウ型複合遊星歯車列Gは、二つのモータ回転数を制御することにより無段階に変速比を変える無段変速機能を有する遊星歯車機構である。このラビニョウ型複合遊星歯車列Gは、互いに噛み合う第1ピニオンP1と第2ピニオンP2を支持する共通キャリヤCと、第1ピニオンP1に噛み合う第1サンギヤS1と、第2ピニオンP2に噛み合う第2サンギヤS2と、第1ピニオンP1に噛み合う第1リングギヤR1と、第2ピニオンP2に噛み合う第2リングギヤR2との5つの回転要素を有して構成されている。前記第1リングギヤR1とギヤハウジング3との間には多板ブレーキ10が介装されている。前記共通キャリヤCには、出力ギヤ11が連結されている。
【0014】
前記駆動出力機構Dは、出力ギヤ11と、第1カウンターギヤ12と、第2カウンターギヤ13と、ドライブギヤ14と、ディファレンシャル15と、ドライブシャフト16L,16Rにより構成されている。そして、出力ギヤ11からの出力回転及び出力トルクは、第1カウンターギヤ12→第2カウンターギヤ13→ドライブギヤ14→ディファレンシャル15を経過し、ドライブシャフト16L,16Rから図外の駆動輪へ伝達される。
【0015】
すなわち、ハイブリッド駆動ユニットは、前記第2リングギヤR2とエンジン出力軸5を連結し、前記第1サンギヤS1と第1モータ中空軸8とを連結し、前記第2サンギヤS2と第2モータ軸9とを連結し、前記共通キャリヤCに出力ギヤ11を連結することにより構成されている。
【0016】
[複軸多層モータの構成]
図2は第1実施例のベアリング予圧構造が適用された複軸多層モータMを示す縦断側面図、図3は第1実施例のベアリング予圧構造が適用された複軸多層モータMを示す一部縦断正面図、図4は第1実施例のステータを背面側から視た図である。
【0017】
図2において、1はモータカバー、2はモータケースであり、これらに囲まれたモータ室17内にインナーロータIRとステータSとアウターロータORとにより構成された複軸多層モータMが配置されている。
【0018】
前記インナーロータIRは、その内筒面が第1モータ中空軸8の段差軸端部に対して圧入、或いは、焼きばめにより固定されている。このインナーロータIRには、図3に示すように、ロータベース20に対し磁束形成を考慮した配置によるインナーロータマグネット21(永久磁石)が軸方向に12本埋設されている。但し、2本が対をなしてV字配置されて同じ極性を示し、3極対としてある。
【0019】
前記ステータSは、ステータピース40とステータピース積層体41とコイル42と冷却水路43とインナー側ボルト・ナット44とアウター側ボルト・ナット45と非磁性体樹脂層46とを有して構成されている。そして、ステータSの正面側端部が、正面側エンドプレート47とステータ固定ケース48とを介してモータケース2に固定されている。
【0020】
前記コイル42は、コイル数が18で、図4に示すように、6相コイルを3回繰り返しながら円周上に配置される。
【0021】
そして、前記6相コイルに対しては、図外のインバータから給電接続端子50とバスバー径方向積層体51と給電コネクタ52とバスバー軸方向積層体53を介して複合電流が印加される(図8参照)。この複合電流は、アウターロータORを駆動させるための3相交流と、インナーロータIRを駆動させるための6相交流を複合させたものである。
【0022】
前記アウターロータORは、その外筒面がアウターロータケース62に対してロー付け或いは接着により固定されている。そして、アウターロータケース62の正面側には正面側連結ケース63が固定され、背面側には背面側連結ケース64が固定されている。そして、この背面側連結ケース64に第2モータ軸9がスプライン結合されている。このアウターロータORには、図3に示すように、ロータベース60に対し磁束形成を考慮した配置によるアウターロータマグネット61(永久磁石)が、両端位置に空間を介して軸方向に12本埋設されている。但し、アウターロータマグネット61は、インナーロータマグネット21とは異なり、1本づつ極性が違い、6極対をなしている。
【0023】
図2において、80,81はアウターロータ6をモータケース2及びモータカバー1に支持する一対のアウターロータベアリングである。82はインナーロータIRをモータケース2に支持するインナーロータベアリング、83はアウターロータORに対しステータSを支持するステータベアリング、84は第1モータ中空軸8と第2モータ軸9との間に介装される中間ベアリングである。
【0024】
また、図2において、85はインナーロータIRの回転位置を検出するインナーロータレゾルバ、86はアウターロータORの回転位置を検出するアウターロータレゾルバである。
【0025】
[遊星歯車機構の構成]
図5はハイブリッド駆動ユニットのラビニョウ型複合遊星歯車列Gを示す縦断面図である。図5において、2はモータケース、3はギヤハウジング、4はフロントカバーであり、これらに囲まれたギヤ室30内にラビニョウ型複合遊星歯車列G及び駆動出力機構Dが配置されている。
【0026】
前記ラビニョウ型複合遊星歯車列Gの第2リングギヤR2には、回転変動吸収フライホイールダンパー6と変速機入力軸31とクラッチドラム32とを介し、多板クラッチ7の締結時にエンジンEからの回転駆動トルクが入力される。
【0027】
前記ラビニョウ型複合遊星歯車列Gの第1サンギヤS1には、第1モータ中空軸8がスプライン結合され、決められたモータ動作点にしたがって、複軸多層モータMのインナーロータIRから第1トルクと第1回転数が入力される。
【0028】
前記ラビニョウ型複合遊星歯車列Gの第2サンギヤS2には、第2モータ軸9がスプライン結合され、決められたモータ動作点にしたがって、複軸多層モータMのアウターロータORから第2トルクと第2回転数が入力される。
【0029】
前記ラビニョウ型複合遊星歯車列Gの第1リングギヤR1と、ギヤハウジング3との間には多板ブレーキ10が設けられ、発進時等において多板ブレーキ10が締結された時には、第1リングギヤR1が停止する。
【0030】
前記ラビニョウ型複合遊星歯車列Gの共通キャリヤCには、ステータ固定ケース48に対しベアリングを介して回転可能に支持された出力ギヤ11がスプライン結合されている。
【0031】
前記駆動出力機構Dは、前記出力ギヤ11と噛み合う第1カウンターギヤ12と、この第1カウンターギヤ12のシャフト部に設けられた第2カウンターギヤ13と、第2カウンターギヤ13と噛み合うドライブギヤ14とを有する。そして、第2カウンターギヤ13とドライブギヤ14の歯数比により、終減速比が決められる。
【0032】
前記多板クラッチ7のクラッチピストン33には、フロントカバー4に形成されたクラッチ圧油路34により締結圧が供給される。また、前記多板ブレーキ10のブレーキピストン35には、フロントカバー4に形成されたブレーキ圧油路36により締結圧が供給される。前記クラッチピストン33と前記ブレーキピストン35は、フロントカバー4の内側で、内周位置にクラッチピストン33が配置され、その外周位置にブレーキピストン35が配置される。
【0033】
また、前記変速機入力軸31には、軸心油路37が形成されていて、この軸心油路37には、フロントカバー4に形成された潤滑油路38を介して潤滑油が供給される。
【0034】
[モータ冷却構造]
図6は第1実施例のモータ冷却構造を有する複軸多層モータを示す拡大縦断面図である。
【0035】
複軸多層モータMは、コイル42を巻いた固定電機子としてのステータSと、ステータSの内側に配置し、インナーロータマグネット21を埋設したインナーロータIRと、ステータSの外側に配置し、アウターロータマグネット61を埋設したアウターロータORとを、モータカバー1およびモータケース2(以下、モータケース部材1,2という。)により画成されるモータ室17の内部に備えている。
【0036】
そして、前記アウターロータORの外周とモータケース部材1,2の内周で囲まれる空間を第1油冷室91に設定し、前記インナーロータIRの内周の空間を第2油冷室92に設定し、前記ステータSに対するアウターロータORとインナーロータIRのエアギャップ93,94を含むステータ外周空間を空気室95に設定している。
【0037】
前記インナーロータIRに第1モータ中空軸8を連結し、前記アウターロータORに第2モータ軸9を連結し、前記モータケース部材1,2の内側位置に、隙間を介してアウターロータORを固定するアウターロータケース部材62,63,64を配置している。
【0038】
そして、前記第1油冷室91を、モータケース部材1,2の内面とアウターロータケース部材62,63,64の外面により形成される室としている。
【0039】
前記第2油冷室92を、第1モータ中空軸8のインナーロータ支持部8aの内周面と第2モータ軸9の外周面により形成される室としている。
【0040】
前記空気室95を、アウターロータケース部材62,63,64の正面側固定ケース63の内面により形成される室と、背面側固定ケース64の内面により形成される室と、両室を連通するエアギャップ93,94と、による室としている。
【0041】
前記第2モータ軸9の軸心部に、モータ正面側軸端からモータ背面側に向けて軸心油路96を形成すると共に、前記第1油冷室91と前記第2油冷室92とに潤滑油を導く第1分岐油路96aと第2分岐油路96bを形成している。
【0042】
前記第2モータ軸9の軸心部に、モータ背面側軸端からモータ正面側に向けて軸心空気路97を形成すると共に、前記空気室95に空気を導く径方向空気路97aを形成している。ここで、前記第1分岐油路96aと前記径方向空気路97aとは、軸方向にオーバラップさせて配置している。なお、98はスポンジ等によるエアフィルタであり、99は排出油路であり、Aはベアリング予圧構造である。
【0043】
[ベアリング予圧構造]
図7は第1実施例のベアリング予圧構造Aを示す拡大断面図である。
【0044】
前記複軸多層モータMは、ステータSを挟んで同心円状にインナーロータIRとアウターロータORとを配置し、前記インナーロータIRを支持する第1モータ中空軸8(インナーロータ支持部材)と、前記アウターロータORを支持するアウターロータケース部材62,63,64及び第2モータ軸9(アウターロータ支持部材)を設け、前記第1モータ中空軸8の内周空間を第2油冷室92(油室)に設定し、前記アウターロータケース部材62,63,64により画成されるステータSの外周空間を空気室95に設定し、前記第1モータ中空軸8と第2モータ軸9との間に、第2油冷室92と空気室95を仕切るメカニカルシール100と、第1モータ中空軸8と第2モータ軸9を相対回転可能に支持する中間ベアリング84(ベアリング)を備えている。
【0045】
前記中間ベアリング84は、その内輪84aを締まり嵌めとし、外輪84bを隙間嵌めとしている。なお、内輪84aは、図7に示すように、背面側固定ケース64の周部に空気流通溝64aを形成した部分に締まり嵌め状態で固定される。
【0046】
前記中間ベアリング84の外輪のみに接するカラー101と、内蔵スプリングを有するメカニカルシール100とを、隣接して互いに接する位置に配置している。
【0047】
前記インナーロータIRの支持部材を、インナーロータ支持部8aを一体に有する第1モータ中空軸8とし、前記アウターロータORの支持部材を、アウターロータORを固定するアウターロータケース部材62,63,64と、背面側固定ケース64にスプライン結合され、前記第1モータ中空軸8を貫通する第2モータ軸9としている。
【0048】
前記カラー101は、第1モータ中空軸8のインナーロータ支持部8aの段差部8bに軸方向移動可能に装着し、そのベアリング側端面が中間ベアリング84の外輪のみに接するようにしている。
【0049】
前記メカニカルシール100は、第1モータ中空軸8のインナーロータ支持部8aと第2モータ軸9との対向面間に介装している。
【0050】
前記メカニカルシール100は、前記カラー101に接すると共にインナーロータ支持部8aの内面に対しシール性を保ちながら軸方向移動可能に嵌合された予圧部材102と、該予圧部材102に対しシール性を保ちながら軸方向移動可能に嵌合された第1シール部材103と、該第1シール部材103と前記予圧部材102との間に介装された内蔵スプリング104と、前記第2モータ軸9の段差部9aに対しシール性を保ちながら嵌合されると共に前記第1シール部材103の第1シール面103aが圧接する第2シール面105aを有する第2シール部材105と、を有する。
【0051】
前記インナーロータ支持部8aと前記予圧部材102とのシール性は、インナーロータ支持部8aの溝に装着されたO−リング106により達成され、前記予圧部材102と前記第1シール部材103とのシール性は、両部材102,103間に介装されたO−リング107により達成され、前記第2モータ軸9と第2シール部材105とのシール性は、第2シール部材105の溝に装着されたO−リング108により達成される。なお、109は切り欠きを有するスリーブである。
【0052】
前記第2モータ軸9の軸心部に、モータ正面側軸端からモータ背面側に向けて軸心油路96を形成すると共に第2油冷室92に潤滑油を導く第2分岐油路96b(分岐油路)を形成し、第2モータ軸9の軸心部に、モータ背面側軸端からモータ正面側に向けて軸心空気路97を形成すると共に空気室95に空気を導く径方向空気路97aを形成し、かつ、前記第2分岐油路96bと前記径方向空気路97aとを前記メカニカルシール100の両側位置に開口配置している。
【0053】
次に、作用を説明する。
【0054】
[複軸多層モータの基本機能]
2ロータ・1ステータで、アウターロータ磁力線とインナーロータ磁力線との2つの磁力線が作られる複軸多層モータMを採用したことで、コイル42及び図外のコイルインバータを2つのインナーロータIRとアウターロータORに対し共用できる。そして、インナーロータIRに対する電流とアウターロータORに対する電流を重ね合わせた複合電流を1つのコイル42に印加することにより、2つのロータIR,ORをそれぞれ独立に制御することができる。つまり、外観的には、1つの複軸多層モータMであるが、モータ機能とジェネレータ機能の異種または同種の機能を組み合わせものとして使える。
【0055】
よって、例えば、ロータとステータを持つモータと、ロータとステータを持つジェネレータの2つのものを設ける場合に比べて大幅にコンパクトになり、スペース・コスト・重量の面で有利であると共に、コイル共用化により電流による損失(銅損,スイッチングロス)を防止することができる。
【0056】
また、複合電流制御のみで(モータ+ジェネレータ)の使い方に限らず、(モータ+モータ)や(ジェネレータ+ジェネレータ)の使い方も可能であるというように、高い選択自由度を持ち、例えば、第1実施例のように、ハイブリッド車の駆動源に採用した場合、これら多数の選択肢の中から車両状態に応じて最も効果的或いは効率的な組み合わせを選択することができる。
【0057】
[ロータ冷却作用]
前記複軸多層モータMは、上記のように主動力源をエンジンEとするハイブリッド駆動ユニットの副動力源として適用されたものであり、図外のオイルクーラにより冷却された潤滑油は、フロントカバー4に形成された潤滑油路38を介して、ハイブリッド駆動ユニットのギヤ室30内に配置されたギヤ機構に供給されると共に、変速機入力軸31に形成された軸心油路37から第2モータ軸9の軸心部に形成された軸心油路96に供給される。
【0058】
そして、軸心油路96からの潤滑油は、第2分岐油路96bを経過して第2油冷室92へ供給され、移動する潤滑油により第1モータ中空軸8に固定されたインナーロータIRから熱を奪う。そして、第2油冷室92の潤滑油は、第1モータ中空軸8と第2モータ軸9との間の環状隙間を経過してギヤ室30へ導かれる。
【0059】
同時に、軸心油路96からの潤滑油は、第1分岐油路96aを経過して第1油冷室91へ供給され、飛散する潤滑油によりアウターロータケース部材62,63,64に固定されたアウターロータORから熱を奪う。なお、第1油冷室91へは、油路99を経過して潤滑油も同時に導かれる。
【0060】
よって、アウターロータORの外周空間を第1油冷室91に設定し、インナーロータIRの内周空間を第2油冷室92に設定したため、インナーロータIRとアウターロータORに埋設されたインナーロータマグネット21とアウターロータマグネット61の温度上昇が抑えられる。
【0061】
[ステータ冷却作用]
複軸多層モータMのステータSにはコイル42が巻かれ、このコイル42には大電流が流されることで、高温になろうとするが、外部から冷却水が冷却水路4を経過して循環供給されることで、移動する冷却水により、ステータSの内側と両側面から熱を奪い、ステータSが冷却される。
【0062】
[エアギャップ確保作用]
まず、エアフィルタ98により粒子等を除去された空気は、モータ背面側軸端からモータ正面側に向けて形成された軸心空気路97から径方向空気路97aを経過し、空気室95に清浄な空気を導く。なお、大気圧より高圧になれば、空気室95から外部に空気が抜かれることで、空気室95は大気圧に保たれる。
【0063】
この空気室95は、アウターロータケース部材62,63,64の正面側固定ケース63と背面側固定ケース64との内面により形成される室であり、両側に形成される空気室95,95は、エアギャップ93,94により連通しているため、油の流入を許さない空気層としてのエアギャップ93,94が確保される。
【0064】
ここで、エアギャップ93,94に油が流入すると、ロータ回転による攪拌抵抗により温度上昇を招くと共に、ロータ回転の抵抗となってモータ性能の低下を招く。
【0065】
[シール作用およびベアリング予圧作用]
アウターロータORに対し背面側固定ケース64を介してスプライン結合される第2モータ軸9に、メカニカルシール100の第2シール部材105が嵌合されている。インナーロータIRを支持しているインナーロータ支持部8aに、メカニカルシール100の予圧部材102が嵌合されている。そして、内蔵スプリング104により付勢される第1シール部材103の第1シール面103aと、第2シール部材105の第2シール面105aとが圧接することにより、第2油冷室92と空気室95とがシールされる。
【0066】
一方、内蔵スプリング104の図面左向きの反力により、メカニカルシール100の予圧部材102がカラー101を中間ベアリング84の方向に押圧している。内輪84aが背面側固定ケース64によって軸方向に固定されたベアリング84の外輪84bのみに接するカラー101は、内蔵スプリング104の図面左向きの反力によって外輪84bを図面左向きの軸方向に押圧する。
【0067】
また、内蔵スプリング104の図面右向きの反力により、第1シール部材103と第2シール部材105と第2モータ軸9を介し、ベアリング84の内輪84aを図面右向きの軸方向に押圧する。
【0068】
すなわち、ベアリング84の内輪84aと外輪84bには、力の作用方向が逆である軸方向のスプリング反力が作用することにより、確実にベアリング84に予圧を与えつつ、インナーロータIRとアウターロータORの軸方向の相対位置も決めることができる。
【0069】
次に、効果を説明する。
第1実施例の複軸多層モータのベアリング予圧構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0070】
(1) ステータSを挟んで同心円状にインナーロータIRとアウターロータORとを配置し、第1モータ中空軸8の内周空間を第2油冷室92に設定し、ステータSの外周空間を空気室95に設定し、第1モータ中空軸8と第2モータ軸9との間に、第2油冷室92と空気室95を仕切るメカニカルシール100と、第1モータ中空軸8と第2モータ軸9を相対回転可能に支持する中間ベアリング84を備えた複軸多層モータMにおいて、前記中間ベアリング84は、その内輪84aを締まり嵌めとし、外輪84bを隙間嵌めとし、前記中間ベアリング84の外輪のみに接するカラー101と、内蔵スプリングを有するメカニカルシール100とを、隣接して互いに接する位置に配置したため、メカニカルシール100の内蔵スプリング104の反力を利用することで、従来のようにバネ要素の追加やバネ要素の配置スペースの確保することなく、中間ベアリング84に予圧を付与しながら空気室95と第2油冷室92とをシール性を保ちながら仕切ることができる。
【0071】
(2) インナーロータIRの支持部材を、インナーロータ支持部8aを一体に有する第1モータ中空軸8とし、アウターロータORの支持部材を、アウターロータORを固定するアウターロータケース部材62,63,64と、背面側固定ケース64にスプライン結合され、第1モータ中空軸8を貫通する第2モータ軸9とし、カラー101は、第1モータ中空軸8のインナーロータ支持部8aの段差部8bに軸方向移動可能に装着し、そのベアリング側端面が中間ベアリング84の外輪のみに接するようにし、メカニカルシール100は、第1モータ中空軸8のインナーロータ支持部8aと第2モータ軸9との対向面間に介装し、カラー101に接すると共にインナーロータ支持部8aの内面に対しシール性を保ちながら軸方向移動可能に嵌合された予圧部材102と、該予圧部材102に対しシール性を保ちながら軸方向移動可能に嵌合された第1シール部材103と、該第1シール部材103と前記予圧部材102との間に介装された内蔵スプリング104と、前記第2モータ軸9の段差部9aに対しシール性を保ちながら嵌合されると共に前記第1シール部材103の第1シール面103aが圧接する第2シール面105aを有する第2シール部材105と、を有する構成としたため、確実にベアリング84に予圧を与えつつ、インナーロータIRとアウターロータORの軸方向の相対位置も決めることができる。
【0072】
(3) 第2モータ軸9の軸心部に、モータ正面側軸端からモータ背面側に向けて軸心油路96を形成すると共に第2油冷室92に潤滑油を導く第2分岐油路96bを形成し、第2モータ軸9の軸心部に、モータ背面側軸端からモータ正面側に向けて軸心空気路97を形成すると共に空気室95に空気を導く径方向空気路97aを形成し、かつ、前記第2分岐油路96bと前記径方向空気路97aとを前記メカニカルシール100の両側位置に開口配置したため、同じ第2モータ軸9に形成された第2分岐油路96bと径方向空気路97aから油と空気をメカニカルシール100の両側位置に供給することができる。
【0073】
以上、本発明の複軸多層モータのベアリング予圧構造を第1実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この第1実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0074】
例えば、第1実施例では、ハイブリッド駆動ユニットに適用される複軸多層モータの例を示したが、単独で設置される複軸多層モータや他のシステムに適用される複軸多層モータに対しても本発明のベアリング予圧構造を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のベアリング予圧構造を有する複軸多層モータが適用されたハイブリッド駆動ユニットを示す概略全体図である。
【図2】第1実施例のベアリング予圧構造が適用された複軸多層モータMを示す縦断側面図である。
【図3】第1実施例のベアリング予圧構造が適用された複軸多層モータMを示す一部縦断正面図である。
【図4】第1実施例のベアリング予圧構造が適用された複軸多層モータMをステータの背面側から視た図である。
【図5】第1実施例のベアリング予圧構造を有する複軸多層モータが適用されたハイブリッド駆動ユニットのラビニョウ型複合遊星歯車列Gおよび駆動出力機構Dを示す縦断側面図である。
【図6】第1実施例のベアリング予圧構造が適用された複軸多層モータMの拡大縦断側面図である。
【図7】第1実施例のベアリング予圧構造を示す拡大断面図である。
【図8】複軸多層モータのステータコイルに印加する複合電流の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
M 複軸多層モータ
S ステータ
IR インナーロータ
OR アウターロータ
8 第1モータ中空軸(インナーロータ支持部材)
8a インナーロータ支持部
8b 段差部
9 第2モータ軸(アウターロータ支持部材)
9a 段差部
62,63,64 アウターロータケース部材(アウターロータ支持部材)
84 中間ベアリング(ベアリング)
92 第2油冷室(油室)
95空気室
96 軸心油路
96b 第2分岐油路(分岐油路)
97 軸心空気路
97a 径方向空気路
100 メカニカルシール
101 カラー
102 予圧部材
103 第1シール部材
103a 第1シール面
104 内蔵スプリング
105 第2シール部材
105a 第2シール面
Claims (3)
- ステータを挟んで同心円状にインナーロータとアウターロータとを配置し、
前記インナーロータを支持するインナーロータ支持部材の内周空間を油室に設定し、
前記アウターロータを支持するアウターロータ支持部材により画成されるステータの外周空間を空気室に設定し、
前記インナーロータ支持部材とアウターロータ支持部材との間に、油室と空気室を仕切るメカニカルシールと、両支持部材を相対回転可能に支持するベアリングを備えた複軸多層モータにおいて、
前記ベアリングの内輪を締まり嵌め、外輪を隙間嵌めとし、
前記ベアリングの外輪のみに接するカラーと、内蔵スプリングを有するメカニカルシールとを、隣接して互いに接する位置に配置したことを特徴とする複軸多層モータのベアリング予圧構造。 - 請求項1に記載された複軸多層モータのベアリング予圧構造において、
前記インナーロータ支持部材を、インナーロータ支持部を一体に有する第1モータ中空軸とし、
前記アウターロータ支持部材を、アウターロータと一体回転するアウターロータケース部材と、このケース部材に連結され、前記第1モータ中空軸を貫通する第2モータ軸とし、
前記カラーを、第1モータ中空軸のインナーロータ支持部の段差部に装着し、
前記メカニカルシールを、第1モータ中空軸のインナーロータ支持部と第2モータ軸との対向面間に介装し、
前記メカニカルシールは、前記カラーに接すると共にインナーロータ支持部の内面に対しシール性を保ちながら軸方向移動可能に嵌合された予圧部材と、該予圧部材に対しシール性を保ちながら軸方向移動可能に嵌合された第1シール部材と、該第1シール部材と前記予圧部材との間に介装された内蔵スプリングと、前記第2モータ軸の段差部に対しシール性を保ちながら嵌合されると共に前記第1シール部材の第1シール面が圧接する第2シール面を有する第2シール部材と、を有することを特徴とする複軸多層モータのベアリング予圧構造。 - 請求項1または2の何れか1項に記載された複軸多層モータのベアリング予圧構造において、
前記第2モータ軸の軸心部に、モータ正面側軸端からモータ背面側に向けて軸心油路を形成すると共に油室に潤滑油を導く分岐油路を形成し、第2モータ軸の軸心部に、モータ背面側軸端からモータ正面側に向けて軸心空気路を形成すると共に空気室に空気を導く径方向空気路を形成し、かつ、前記分岐油路と前記径方向空気路とを前記メカニカルシールの両側位置に開口配置したことを特徴とする複軸多層モータのベアリング予圧構造。
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