JP2004068861A - 転がり軸受の製造方法及び転がり軸受 - Google Patents

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Naoki Matsuyama
松山 直樹
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Abstract

【課題】保持器の高い真円度を確保し、運転時の軸受性能を向上させる。
【解決手段】本発明の転がり軸受の保持器は、ポケット数が10以上の偶数となるように、成形金型30を用いて射出成形される。この成形金型30は、キャビティ34に開口されて合成樹脂を射出するゲート36を、ポケット数/2の数だけ円周等配に、金型部分31に設けられている。
【選択図】  図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保持器を合成樹脂等の成形材料で射出成形する転がり軸受の製造方法及び転がり軸受に関し、詳しくは保持器の高い真円度を確保するための製造方法及び構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、転がり軸受の保持器は、金型のキャビティ内にゲートを介して成形材料となる合成樹脂を射出することにより射出成形されている。
このような保持器の射出成形では、金型のゲート点数を増やすとスプールランナ量が多くなり、高コストとなってしまうため、一点ゲートで射出成形する方法が多用されている。
また、保持器が大きくなると、一点ゲートでの射出成形では真円度が確保し難くなるため、多点ゲートを採用する場合があるが、その場合でもゲート数は最小限に設定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、保持器の成形材料となる合成樹脂には、強度を得るために強化繊維(ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等)が添加されるが、保持器のように円環状に成形した場合、ウェルド部では、添加された強化繊維の配向状態が乱れ、寸法収縮傾向が多く見られる。
この場合、ゲート点数によっては保持器の真円度が大きく低下してしまい、設計上の精度を確保できないという問題があった。
【0004】
本発明は、保持器の高い真円度を確保することができ、運転時の軸受性能を向上させることができる転がり軸受の製造方法及び転がり軸受を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の転がり軸受の製造方法は、一対の内外輪と、該内外輪間に転動自在に組み込まれる複数の転動体と、該転動体を保持する複数のポケットを有する保持器とを備えた転がり軸受の製造方法であって、
前記保持器のポケット数が偶数となるように射出成形するとともに、該射出成形が、前記保持器の内径側に対応した金型上に円周等配された前記ポケット数の半分の数のゲートを介して、前記金型のキャビティ内に成形材料を射出することを特徴とする。
【0006】
前記構成の転がり軸受の製造方法によれば、保持器は、ポケット数が偶数となるように射出成形されるとともに、当該射出成形に用いられる金型のゲートが、保持器の内径側にポケット数の半分の数だけ円周等配に設けられるので、ウェルド部が成形品の円周上等配に多数生じる。したがって、成形品の形状が均一化され、保持器の高い真円度が確保される。
【0007】
本発明の請求項2記載の転がり軸受は、一対の内外輪と、該内外輪間に転動自在に組み込まれる複数の転動体と、該転動体を保持する複数のポケットを有する保持器とを備えた転がり軸受において、
前記保持器は、該保持器の内径側に対応した金型に円周等配に設けられた前記ポケット数の半分の数のゲートを介して、前記金型のキャビティ内に成形材料を射出することにより、ポケット数が偶数個形成されることを特徴とする。
【0008】
前記構成の転がり軸受によれば、保持器のポケット数が偶数であるとともに、金型のゲートが、保持器の内径側にポケット数の半分の数だけ円周等配に設けられるので、ウェルド部が成形品の円周上等配に多数生じる。したがって、成形品の形状が均一化され、保持器の高い真円度が確保される。
【0009】
本発明の請求項3記載の転がり軸受は、前記保持器が、内輪の外周面との当接により内外輪間に介装される内輪案内方式、外輪の内周面との当接により内外輪間に介装される外輪案内方式、又は各転動体の外周面との当接により内外輪間に介装される転動体案内方式のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の転がり軸受である。
【0010】
前記構成の転がり軸受によれば、高い真円度を有する保持器が使用されるので、内輪案内方式、外輪案内方式及び転動体案内方式のいずれの方式でも、軸受運転時、保持器の形状崩れ等に起因する破損及び保持器音が確実に防止される。よって、保持器の高い真円度を確保することができ、運転時の軸受性能をより向上させることができる。
【0011】
本発明の請求項4記載の転がり軸受は、前記保持器のポケット数が、10以上の偶数であることを特徴とする請求項2又は3記載の転がり軸受である。
【0012】
前記構成の転がり軸受によれば、保持器のポケット数が10以上の偶数であるので、保持器のより高い真円度が確保される。よって、運転時の軸受性能をより一層向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の転がり軸受の一実施形態を図1乃至図7に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の転がり軸受の一実施形態を示す断面図、図2は図1における転がり軸受の保持器を示す部分斜視図である。図3(a)は図2における保持器を製造するための成形金型の一例を示す断面図であり、図3(b)は(a)のA−A断面図である。図4は13点ゲートを用いた実施例における成形品のウェルド部の形状を示す概略図であり、図5〜図7は1点ゲート、3点ゲート及び4点ゲートを用いた比較例1〜3における成形品のウェルド部の形状を示す概略図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態の転がり軸受10は、保持器20のポケット21にそれぞれ保持された複数の転動体11を、それぞれ軌道面12a,13aを有する一対の内外輪12,13間に、転動自在に組み込まれている。
【0015】
保持器20は、外輪13の内周面との当接により内外輪12,13間に介装される外輪案内方式であり、幅方向一対の環状部22と、各環状部22間を結ぶ複数の柱部23と、各環状部22及び各柱部23によって画成された複数のポケット21とを有する。
保持器20は、図3に示す成形金型30によって射出成形により形成される。ポケット数は10以上の偶数(図3では12個)となるように設定されている。
【0016】
すなわち、図2及び図3(a),(b)に示すように、成形金型30は、保持器20の内周面を形成させる金型部分31の外周に、環状部22を形成させる一対の金型部分32を組み込まれるとともに、各金型部分31,32の間に、各ポケット21及び各柱部23を形成させるスライドコア33を組み込まれて構成される。各金型部分31,32及びスライドコア33によって、各柱部23が成形されるキャビティ34と、環状部22が成形されるキャビティ35とが、それぞれ形成される。
【0017】
金型部分31には、キャビティ34に開口されるゲート36が、ポケット数/2の数(図3では12/2=6個)だけ円周等配に設けられる。各ゲート36を介して、各キャビティ34,35内に合成樹脂が射出される。
【0018】
次に、本実施形態の転がり軸受10の保持器(実施例)、及び比較例1〜3の保持器について、成形品のウェルド部Wの形状を調べた。結果を図4〜図7にそれぞれ示す。
なお、実施例の保持器は、13点ゲートの成形金型を用いて射出成形されたものであり、比較例1〜3の保持器は、1点ゲート、3点ゲート及び4点ゲートの成形金型を用いて射出成形されたものである。
【0019】
これらの概略図から理解されるように、図4に示す実施例の保持器では、成形金型のゲート点数が13点であることにより、保持器のウェルド部Wの変形は、円周上で均一化される方向になり、真円に近い形状となる。したがって、保持器の高い真円度が確保される。
【0020】
一方、図5に示す比較例1の保持器では、成形金型のゲート数が1点であることにより、ウェルド部Wが収縮して全体としてハート型に変形してしまう。
また、図6及び図7に示す比較例2及び比較例3の保持器では、成形金型のゲート数が3点又は4点であることにより、ウェルド部Wが収縮して全体としてクローバー型に変形してしまう。したがって、保持器の真円度が低い。
【0021】
以上のように上記実施形態によれば、転がり軸受10の保持器20は、ポケット数が10以上の偶数(図3では12個)となるように、図3に示す成形金型30を用いて射出成形される。成形金型30は、キャビティ34に開口されて合成樹脂を射出するゲート36を、ポケット数/2の数(図3では12/2=6個)だけ円周等配に、金型部分31に設けられる。
【0022】
したがって、成形材料に添加された強化繊維の配向状態の乱れに起因するウェルド部Wの寸法収縮等を、円周上で分散させることができ、保持器20の高い真円度を確保することができる。これにより、転がり軸受10の運転中において、保持器20の挙動の高い安定性の確保、トルク及び温度上昇の抑制、異常磨耗及び保持器音の抑制等、軸受性能を向上させることができる。
【0023】
また、ウェルド部Wを例えば各柱部23に設定することもでき、保持器20全体の高い強度を確保することができる。これにより、保持器20の変形に起因する転動体11の異常発熱や焼付き、保持器20の破損等を確実に防止することができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、保持器20が、外輪13の内周面との当接により内外輪12,13間に介装される外輪案内方式である転がり軸受10に適用した例について説明したが、この方式に限定されるものではない。すなわち、保持器20が、内輪12の外周面との当接により内外輪12,13間に介装される内輪案内方式、又は各転動体11の外周面との当接により内外輪12,13間に介装される転動体案内方式のいずれであっても、上述した外輪案内方式の場合と同様の作用効果が得られる。
また、保持器の形状にもよらず、例えば深溝玉軸受の冠形保持器や円筒ころ軸受のくし形保持器でも良い。
更に、上記実施形態では、円筒ころ軸受であったが、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、スラストアンギュラ玉軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円錐ころ軸受等とすることが可能であることは勿論である。
また、ゲート36は、保持器20の内径側に円周等配に設けられればよく、その軸方向位置は、特に制限されない。例えば、両側円環を有する保持器であれば、幅方向略中央にゲートを位置させることにより、より高精度に成形することが可能となる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の転がり軸受の製造方法及び転がり軸受によれば、保持器のポケット数が偶数個となるように射出成形するとともに、当該射出成形を、保持器の内径側に対応する金型部分にポケット数/2の数のゲートを円周等配に設け、金型のキャビティ内に成形材料を射出することで、偶数個のポケットを有する保持器を形成することができる。
したがって、保持器の高い真円度を確保することができ、運転時の軸受性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1における保持器を示す部分斜視図である。
【図3】図2における保持器を製造するための成形金型の一例を示す軸心に対して垂直方向の断面図である。
【図4】本発明の一実施例である13点ゲートを用いた場合の成形品のウェルド部の形状を示す概略図である。
【図5】本発明に対する比較例1である1点ゲートを用いた場合の成形品のウェルド部の形状を示す概略図である。
【図6】本発明に対する比較例2である3点ゲートを用いた場合の成形品のウェルド部の形状を示す概略図である。
【図7】本発明に対する比較例3である4点ゲートを用いた場合の成形品のウェルド部の形状を示す概略図である。
【符号の説明】
10    転がり軸受
11    転動体
12  内輪
12a,13a 軌道面
13  外輪
20    保持器
21    ポケット
22    環状部
23    柱部
30    成形金型
31,32 金型部分
33  スライドコア
34,35 キャビティ
36  ゲート
W   ウェルド部

Claims (4)

  1. 一対の内外輪と、該内外輪間に転動自在に組み込まれる複数の転動体と、該転動体を保持する複数のポケットを有する保持器とを備えた転がり軸受の製造方法であって、
    前記保持器のポケット数が偶数となるように射出成形するとともに、該射出成形が、前記保持器の内径側に対応した金型上に円周等配された前記ポケット数の半分の数のゲートを介して、前記金型のキャビティ内に成形材料を射出することを特徴とする転がり軸受の製造方法。
  2. 一対の内外輪と、該内外輪間に転動自在に組み込まれる複数の転動体と、該転動体を保持する複数のポケットを有する保持器とを備えた転がり軸受において、
    前記保持器は、該保持器の内径側に対応した金型に円周等配に設けられた前記ポケット数の半分の数のゲートを介して、前記金型のキャビティ内に成形材料を射出することにより、ポケット数が偶数個形成されることを特徴とする転がり軸受。
  3. 前記保持器が、内輪の外周面との当接により内外輪間に介装される内輪案内方式、外輪の内周面との当接により内外輪間に介装される外輪案内方式、又は各転動体の外周面との当接により内外輪間に介装される転動体案内方式のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の転がり軸受。
  4. 前記保持器のポケット数が、10以上の偶数であることを特徴とする請求項2又は3記載の転がり軸受。
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