JP2004068517A - 床版の取り付け構造およびこれを用いた床版の取替工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金の押出形材からなり長手方向に沿った中空部13を内蔵する複数の床版構成材12,12を、平行な複数の桁1,1の上に跨って直角に配置し、係る桁1の上面に垂直に固定された複数のジベル24を、上記複数の床版構成材12における下板18に穿孔した通し孔19を通じて上記中空部13内に挿入すると共に、上記複数のジベル24が位置する上記床版構成材12の中空部13内および通し孔19と上記桁1の上面との間に、モルタルMを充填し且つ固化する、床版10の取り付け構造。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁などにおける複数の桁に跨って固定される床版の取り付け構造およびこれを用いた床版の取替工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、橋梁における複数の橋桁上に跨って固定される床版には、コンクリート床版などが使用されている。
道路橋に用いられるコンクリート床版(PCコンクリート床版(PC床版))60や鉄筋コンクリート床版(RC床版)60は、図8(A)に示すように、図示しない橋脚上に固定された平行な複数の橋桁62の上に跨って固定される。橋桁62は、鋼材からなり、上・下一対のフランジ63,64と、これらを垂直に接続するウェブ62とからなる断面I(H)形のプレートガーダーである。
予め、係る橋桁62のフランジ63における所定の位置に、複数のスタッドジベル66をスタッド溶接により垂直に立設しておく。係るスタッドジベル66は、図8(B)に示すように、円柱形の軸部67の上端に太径部68を一体に有する鋼加工物で、このスタッドジベル66を利用して上記床版60が固定される。
【0003】
コンクリート床版60がPC床版である場合は、図8(A),(B)に示すように、PC床版60にジベル固定孔61を形成しておき、係る固定孔61にモルタルMを充填することによって、PC床版60を橋桁62の上に固定している。
一方、コンクリート床版60がRC床版の場合は、橋桁62の上に図示しない鉄筋を配筋し且つコンクリートを打設する。この際、上記スタッドジベル66もコンクリートに埋め込まれ、上記床版60と橋桁62とが一体化される。
そして、上記モルタルMが固化した後、図8(A)に示すように、鉄筋コンクリート床版60の上に下地材やアスファルトを含む道路面材69を敷設することにより、道路橋が構成される。
【0004】
近年、大型車両の重量規制が緩和されたことに伴い、橋梁の床版を従来のコンクリート床版60から軽量なアルミニウム合金製の床版に取り替えることにより、更に重量の大きな車両の通過を可能にしようとする提案が成されている。
また、新設橋の場合、その床版にアルミニウム合金からなる押出形材を用いることにより、当該床版の自重を軽量化し、橋脚や橋桁の構造を一層簡易なものとすることも検討されていた。
例えば、特許第3076289号公報に示された構築物用床版は、アルミニウム合金からなる複数の中空押出形材同士を凹凸嵌合により連結し、係る形材同士の隙間に楔片を打ち込み固定すると共に、ボルト・ナットで主桁に固定するものである。
また、特開2001−81722号公報に示されたデッキパネルは、アルミニウム合金からなる複数の中空押出形材を溶接して平面状に結合し、これらの下側に溶接する裏面材にナットを固定している。係るナットに、主桁側からボルトをネジ結合することにより、上記デッキパネルを当該主桁の上に固定している。
【0005】
ところで、前記楔片やボルト・ナットによる床版の固定では、車両からの荷重入力を繰り返して受けると、係る荷重の緩衝機能がないため、楔片やボルトが緩んでガタ付くおそれがあった。また、アルミニウム合金からなる複数の中空押出形材を平面状に結合または溶接した床版を、鋼材からなる橋桁や主桁の上に直に固定すると、異種金属との接触によって生じる接触腐食電流により発生する腐食(以下、電食という)を生じたり、両者が相互に叩き合うため、フレッティングにより双方が損傷するおそれもあった。
更に、既存の前記コンクリート床版60を撤去して、アルミニウム合金の押出形材からなる上記床版に取り替える場合、上記コンクリート床版を除去した後の橋桁は、多大な荷重から開放されるため上側に反り上がる。即ち、既存の重量の大きなコンクリート床版60が載せられた場合、予め橋桁が平坦になるように設計されているが、軽量なアルミニウム合金製の床版を載せた場合、橋桁が凸形に反り上がってしまい、平坦な表面が得られなくなる、という問題があった。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
本発明は、以上に説明した従来の技術における問題点を解決し、車両からの荷重入力を繰り返して受けても、係る荷重の緩衝機能を有し、橋桁との電食や損傷を生じない床版の取り付け構造およびこれを用いて既存の床版との取替が支障なく行える床版の取替工法を提供する、ことを課題とする。
尚、本発明の床版の取り付け構造や床版の取替工法は、道路用橋梁に限らず、歩道橋、鉄道橋、あるいは人工地盤にも適用可能である。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明は、上記課題を解決するため、アルミニウム合金からなる複数の中空押出形材を平面状に接合した床版を、任意の形材の中空部における空間で桁上から立設するジベルをモルタルにて包囲する、ことに着想して成されたものである。即ち、本発明の床版の取り付け構造(請求項1)は、アルミニウム合金の押出形材からなり長手方向に沿った中空部を内蔵する複数の床版構成材を、平行な複数の桁の上に跨って直角に配置し、係る桁の上面に垂直に固定された複数のジベルを、上記複数の床版構成材における下板に穿孔した通し孔を通じて上記中空部内に挿入すると共に、上記複数のジベルが位置する上記床版構成材の中空部内で且つ通し孔の付近に、モルタルを充填し且つ固化する、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、桁の上面に固定された複数のジベルは、アルミニウム合金の押出形材からなる床版構成材の通し孔を経て、係る床版構成材の中空部に挿入されると共に、上記モルタルによって包囲されている。このため、橋梁上を走行する車両からの荷重入力を繰り返して受けても、係る荷重を確実に緩衝することが可能となる。従って、軽量で安定した荷重緩衝機能を有する床版を提供できる。
尚、上記「桁」には、各種橋梁の橋桁のほか、人工地盤などの主桁も含まれる。また、上記「ジベル」は、床版を固定するためのアンカー機能を有する強度部材であり、例えば軸部とその上端の太径部とからなる鋼製スタッドをアークスタッド溶接などにより主桁に固定したものが用いられる。
【0009】
また、本発明には、前記モルタルは、前記桁の上フランジの上面と前記床版構成材の下板との間にも所定の厚みで充填され且つ固化される、床版の取り付け構造(請求項2)も含まれる。これによれば、桁が鋼材からなる場合、アルミニウム合金の押出形材からなる床版構成材との間が、上記モルタルにて離間する。従って、アルミニウム合金と鋼との間の電位差に起因する電食を未然に防止できる。
【0010】
更に、本発明には、前記床版構成材は、その上板および下板の少なくとも一方において、隣接する床版構成材と摩擦攪拌接合されることにより、所要広さの床版を形成する、床版の取り付け構造(請求項3)も含まれる。
これによれば、アルミニウム合金の押出形材からなる複数の床版構成材を、それらの上板や下板において、固相状態で精度良く接合でき、且つ熱影響部も極めて少なくし且つ所要の接合強度を有する床版を、設置すべき現場に応じて任意の面積(広さ)にして形成することが可能となる。
【0011】
また、本発明には、前記床版構成材は、長手方向に沿って断面ほぼ台形またはほぼ逆台形の前記中空部を内蔵している、床版の取り付け構造(請求項4)も含まれる。これによれば、橋梁上を2つの対向する方向から走行する車両からの荷重入力を繰り返して受けても、断面がほぼ台形またはほぼ逆台形の中空部を形成する両側の傾斜した腹板により、上記荷重を確実に支持することが可能となる。
【0012】
更に、本発明には、前記床版構成材は、その上板に前記モルタルを充填する貫通孔およびこれに隣接するガス抜き孔を穿孔している、床版の取り付け構造(請求項5)も含まれる。これによれば、上記床版構成材における下板の通し孔から中空部内に挿入したジベルの付近に、モルタルを容易に充填できると共に、係る充填に際して、中空部内の空気を確実に外部に排出することもできる。
【0013】
加えて、本発明には、前記床版構成材は、その中空部内における前記通し孔が位置する長手方向の両側に当該中空部を遮蔽する一対の堰板が配置されている、床版の取り付け構造(請求項6)も含まれる。これによれば、上記床版構成材の中空部内に挿入した前記ジベルの付近を、一対の堰板によって遮蔽できるため、通し孔から充填するモルタルを一定量にできると共に、充填し且つ固化したモルタルを外部から遮断し且つ保護することもできる。
【0014】
一方、本発明の床版の取替工法(請求項7)は、平行な複数の桁の上に跨って配置された既存の床版を撤去する工程と、上記複数の桁の露出した上フランジの上面に複数のジベルをそれぞれ垂直に固定し、アルミニウム合金の押出形材からなり長手方向に沿った中空部を有する複数の床版構成材を、複数の上記桁の上に跨って直角に配置し、床版構成材の下板に穿孔した通し孔を通じて、上記複数のジベルをその中空部内に挿入すると共に、上記ジベルが位置する上記床版構成材の中空部内で且つ上記通し孔の付近に、モルタルを充填し且つ固化する工程と、を含む、ことを特徴とする。
これによれば、前記コンクリート床版などからなる既存の床版を撤去した跡において、桁の上面に固定した複数のジベルを、上記床版構成材の通し孔を経て、その中空部に挿入すると共に、上記モルタルにより包囲することができる。この結果、車両からの荷重入力を繰り返して受けても、係る荷重を確実に緩衝できるため、軽量で安定した荷重緩衝機能を有する床版に取り替えることができる。
【0015】
また、本発明には、前記モルタルは、前記桁の上面と前記床版構成材の下板との間にも所定の厚みで充填され且つ固化される、床版の取替工法(請求項8)も含まれる。これによれば、例えば鋼材からなる橋桁(桁)と取り替えた床版との間における電食を防止できる。
【0016】
更に、本発明には、前記既存の床版がコンクリート床版からなり、これを前記アルミニウム合金製の複数の押出形材の床版構成材からなる新たな床版に取り替える場合において、上記新たな床版の表面の平坦度が上記既存の床版と同等になるように、床版構成材の下板と前記桁の上フランジの上面との間に充填する前駆モルタルの高さを調整することにより行われる、床版の取替工法(請求項9)も含まれる。これによれば、既存の重いコンクリート床版を撤去した際に、桁が上方に凸形に反り上がっても、係る桁の上面と軽量な新たな床版の底面との間に充填するモルタルの厚みを、上記桁の中央付近で薄くし且つ両端付近で厚くすることにより、新たな床版の表面(上面)の平坦度を撤去した床版の表面(上面)同じかそれ以上に平坦度を増した状態にして、取り替えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の床版の取り付け構造を用いて床版10を、互いに平行な複数の橋桁(桁)1,1の上に取り付けた状態を示す。橋桁1は、図1に示すように、上・下一対の水平な上フランジ2および下フランジ3と、これらを接続する垂直なウェブ4とからなる断面I(H)形のプレートガーダーである。
また、床版10は、図1に示すように、断面がほぼ台形を呈する中空部13を長手方向の全長に沿って内蔵し、且つアルミニウム合金(例えばJIS:A6N01S−T5)の押出形材からなる複数の床版構成材12,12を後述するように摩擦攪拌接合Wして一体化したものである。
係る床版10は、図1に示すように、各床版構成材12を橋桁1,1と直角にして固定され、何れかの床版構成材12との間に、モルタルMを介して橋桁1,1の上フランジ2の上面に支持されている。
尚、以下において、床版構成材12は、単に押出形材12として記述する。また、床版構成材12を3本以上の橋桁1の上に跨って支持する場合も含まれる。
【0018】
床版10は、図2(A)に示すように、複数の押出形材12,12を摩擦攪拌接合Wにより一体に接合したものである。押出形材12は、水平な上板14、水平な下板18、これらを接続する左右一対の対称に傾斜した腹板16,16、およびこれらに囲まれた断面ほぼ台形の中空部13を、図示の奥行き方向(長手方向)に沿って一体に有する。上板14の両端には、長いリブ15が水平に突出し、下板18の両端には、短いリブ17が水平に突出している。
係る押出形材12は、幅200mm×高さ250mmの断面寸法を有し、各部の厚みは10〜12mmである。また、上記中空部13における左右の上隅部のアールは、半径25mmであり、中空部13における左右の下隅部のアールは、半径5mmである。これらの形材12は、長手方向(押出方向)に沿った予定の位置で直角に切断したものである。
【0019】
押出形材12,12の摩擦攪拌接合Wは、次のようにして行われる。
図2(A)に示すように、押出形材12,12を、図示しない定盤上に載置し、リブ15,15およびリブ17,17を端面で接触させた状態で拘束する。
次に、図2(B1)に示すように、端面で互いに接触するリブ15a,15bの上方に、摩擦攪拌工具6を配置する。係る工具6は、工具鋼からなり、円柱形の本体7と、その底面8の中心部から同軸心で垂下する攪拌ピン9と、を含む。
上記本体7の底面8の直径は6〜25mm、摩擦ピン9の長さは3〜10mmで、その直径は2〜10mmである。また、摩擦攪拌工具6の回転数は500〜15000rpm、送り速度は0.05〜2m/分で、係る工具10の軸方向に加える押し込み力は1kN〜20kN程度である。
【0020】
そして、図2(B1)中の矢印で示すように、回転する摩擦攪拌工具6の摩擦ピン9を、リブ15a,15bの突き合わせ面に、その本体7の底面8が係るリブ15a,15bの表面に接触するまで、挿入する。同時に係る工具6の底面8は、リブ15a,15bを上から抑え込む。この状態で、当該工具6を図示で奥行き方向に沿って移動(送り)させる。
この結果、図2(B2)に示すように、リブ15a,15bの突き合わせ面に沿って、押出形材12,12のアルミニウム合金が固相状態で流動化し且つ固化した断面ほほV字形状の接合部(摩擦攪拌接合)Wが形成される。係る操作を複数の押出形材12のリブ15,15間に沿って施すことにより、前記図1に示した上面に所要の広さを有する床版10が形成される。この場合、接合される床版10の押出形材12は、その後の運搬や取り付けに支障とならない個数とされる。
【0021】
複数の押出形材12を摩擦攪拌接合Wなどにより一体に接合した床版10において、任意の押出形材12における橋梁の橋桁1の上に置かれる部分には、図2(C)に示すように、下板18の中央部に平面視で長方形の通し孔19が予め穿孔される。係る通し孔19は、長さ300mm×幅80mmで、例えばフライス加工、ドリル、またはプレス加工により形成される。
また、図2(C)に示すように、上記通し孔19の真上における上板14には、直径50mmの円形の貫通孔11と、これに隣接する一対のガス抜き孔11aとが予め穿孔される。これらの貫通孔11およびガス抜き孔11aは、ドリルにより形成される。各ガス抜き孔11aの直径は、10〜20mmである。
【0022】
図3(A)は、図1中のX−X線に沿った矢視の断面図、図3(B)は(A)中のB−B線に沿った矢視の断面図であり、本発明の床版10の取り付け構造を示す。
図3(A),(B)に示すように、橋桁1の上フランジ2の上面における所定の位置には、予め3本のスタッドジベル(ジベル)24が当該橋桁1の幅方向に沿って垂直に固定されている。
係るスタッドジベル24は、鋼製で、細長い円柱形の本体26と、その上端の太径部28とからなり、本体26の下端25を橋桁1の上フランジ2にアークスタッド溶接(例えばプロジェクションスタッド溶接)して立設されている。
【0023】
図4(B)は、前記複数の押出形材12,12を摩擦攪拌接合Wで一体に接合し、1つ置きの形材12の両端付近に、通し孔19、貫通孔11、およびガス抜き孔11aを形成した床版10を、図示しないクレーンにより持ち上げた状態を示す。そして、図4(B)および図3(A),(B)に示すように、平行な橋桁1,1の上方に上記床版10を載置する。この際、床版10を構成する各押出形材12と橋桁1,1とは、両者の長手方向が直交する。
また、図3(A),(B)に示すように、前記通し孔19などが形成された押出形材12の中空部13において、通し孔19、貫通孔11、およびガス抜き孔11aが位置する長手方向の両側には、係る中空部13を遮蔽する一対の堰板20,20がそれぞれ垂直に配置されている。一対の堰板20は、図4(A)に示すように、押出形材12の中空部13と相似形の外形を有し、3本のボルト21およびナット22により所定の間隔をおいて連結されて、ユニット化されている。
【0024】
更に、図3(A),(B)に示すように、橋桁1における上フランジ2の上面と、床版10の各押出形材12の下板18との間には、所定の距離が位置するように、床版10が位置決めされている。
図3(A),(B)に示すように、一対の堰板20,20に挟まれた押出形材12の中空部13およびその直下の橋桁1のフランジ2との間には、無収縮モルタル(モルタル)Mが充填され且つ固化されている。
係る無収縮モルタルMは、押出形材12の中空部13内に位置する上部m1と、橋桁1の上フランジ2と床版10の各押出形材12の下板18との間に位置する下部m2とが、通し孔19を介して接続されている。
【0025】
以上のような床版10の取り付け構造によれば、3本のスタッドジベル24は、無収縮モルタルMに包囲され且つ固定されている。このため、橋梁上を走行する車両からの荷重入力を繰り返して受けても、係る荷重を確実に緩衝することが可能となる。また、橋桁1の上フランジ2の上面と床版10の各押出形材12の下板18との間には、所定の厚みを有する無収縮モルタルMの下部m2が位置するため、鋼材からなる橋桁1との間における腐食(電食)を防止でき、且つ後述する取替工法において、橋桁1が上方に凸形に反った場合の隙間(間隔)を調整することもできる。更に、一対の堰板20により、無収縮モルタルMの充填量を適正化でき、且つ係るモルタルMを保護することも可能となる。しかも、無収縮モルタルMは、貫通孔11から容易に充填でき、その際、中空部13内の空気をガス抜き孔11aからスムースに排出できる。従って、軽量で安定した荷重緩衝機能と高い施工性を有する床版10を提供できる。
【0026】
図4(B)および図5(A),(B)は、床版10の取り付け工法および取替工法に関する。床版10の取替工法においては、予め、橋桁(桁)1上に配置されていた既存のコンクリート床版を、撤去する工程を先に行っておく。
次に、図4(B)に示すように、床版10の取り付け工法では、鋼材からなる橋桁1の上フランジ(上面)2における所定の位置に、前記溶接によって3本のスタッドジベル24を垂直に固定する。
一方、床版10の取替工法では、既設の橋桁1の上フランジ2の上面に新たな3本のスタッドジベル24を、前記溶接によって垂直に固定する。
次いで、図4(B)に示すように、両工法共に、複数の押出形材12,12を前記摩擦攪拌接合Wにより一体に接合し、任意の形材12の橋桁1上に置かれる部分に、通し孔19、貫通孔11、およびガス抜き孔11aを形成し且つこれらの両側における中空部13内に一対堰板20を配置した床版10を、図示しないクレーンにより持ち上げ、橋桁1の上フランジ2の上面に徐々に近付ける。
【0027】
この結果、図5(A),(a)に示すように、橋桁1の上フランジ2から立設する3本組のスタッドジベル24は、当該フランジ2の上方に配置された床版10における押出形材12の下板18に設けた通し孔19を経て係る形材12の中空部13内に挿入される。係る3本組のスタッドジベル24の両側は、堰板20が位置する。
また、図5(A),(a)に示すように、橋桁1における上フランジ2の上面と、床版10の押出形材12における下板18との間には、対向する一対ずつの型枠32,32および型枠34,34が配置され、下板18と上フランジ2との間に所定の距離を形成している。これらの型枠32,34は、平面視で長方形を呈する枠形状に連結されている。下板18と上フランジ2とに挟まれる上記型枠34により、モルタル硬化までの床版10の荷重が支持され、上フランジ2の端面に接触する上記型枠32により、床版10はその長手方向の移動が阻止される。
【0028】
尚、床版10の取替工法では、既存の床版として鉄筋コンクリート床版のような重量の大きな床版60が用いられていたため、係る床版60が敷設された状態では、図6(A)に示すように、橋脚KK上の橋桁1の表面は平坦となっている。
ところで、橋桁1自体は、図6(B)に示すように、上記床版60の重量による変形を考慮して、その中央において高さがh1分高くなるように予め設計されていた。このため、既存の床版60を撤去した時点では、図6(B)に示すように、その中央においてh1分高くなる。
【0029】
従って、仮に本発明に用いるアルミニウム合金製の床版10を、橋桁1上に敷設した場合、その軽量さにより、図6(C)に示すように、橋桁1の中央において高さh2分だけ凸形に反り上がってしまうため、平坦にならない、という問題が生じる。この問題を解消するため、上方に凸形に反った高さh2分の厚み分について、橋桁1の端部付近ではh2+α分を、橋桁1の中央付近ではα分を、上フランジ2と新たな床版10の押出形材12の下板18との間に充填・固化する無収縮モルタルMの下部m2によってそれぞれ補充する。
これにより、図6(D)に示すように、新たな床版10の表面を平坦にして敷設することができる。この際、前記型枠32,34の高さを調整することにより、上記モルタルMの下部m2を所望の厚みに設定することができる。尚、上記α分の厚みは、アルミニウム合金製の床版10と鋼製の橋桁1との間で電食が生じない程度に離間させるに充分な厚みとする。
【0030】
そして、図5(A),(a)中の矢印で示すように、押出形材12の上板14の貫通孔11から無収縮モルタルMを充填する。
その結果、図5(B),(b)に示すように、押出形材12における左右一対の堰板20,20間に挟まれた中空部13、およびその直下で且つ係る形材12の下板18と橋桁1の上フランジ2の上面との間に、無収縮モルタルMが通し孔19を貫通して充填され且つ固化される。係る無収縮モルタルMが硬化した後で、前記型枠32,34を除去する。その結果、前記図1および図3(A),(B)に示したような床版10が取り付けられ、あるいは取り替えることができる。
【0031】
以上のような床版10の取り付け工法または取替工法によれば、車両の荷重を繰り返して受けても、係る荷重を確実に緩衝できるため、軽量で安定した荷重緩衝機能を有する床版を取り付け、あるいは係る床版に取り替えられる。また、何れの工法の場合でも、床版10の押出形材12と橋桁1との電食を防止できる。しかも、取替工法の場合には、既設の上方に凸形に反り上がる橋桁1と押出形材12との距離を、無収縮モルタルMの下部m2の厚みを調整することにより、吸収できると共に、撤去された既存のコンクリート床版の平坦な表面(上面)と同じかそれ以上に平坦な表面(上面)にすることができる。
【0032】
図7(A)は、前記押出形材12の変形形態の押出形材12aの断面を示す。
押出形材12aは、図7(A)に示すように、前記押出形材12と同様に、上板14、下板18、左右一対の傾斜した腹板16、および上板14の両側に突出する一対のリブ15を有するが、下板18の両側には前記リブ17がなく、大きなアール面18aが位置している。係る押出形材12a同士を用いて前記床版10を形成する場合、上端のリブ15,15の突き合わせ面に沿って、前記摩擦攪拌接合Wなどを施す。また、図7(A)に示すように、上板14には、貫通孔11などが穿孔され、下板18には、通し孔19が穿孔される。
【0033】
図7(B)は、異なる形態のアルミニウム合金製の押出形材40の断面を示す。
押出形材40は、図7(B)に示すように、水平な上板42、水平な下板46、これらを接続する左右一対の対称に傾斜した腹板44,44、およびこれらに囲まれた断面ほぼ逆台形の中空部43を、図示の奥行き方向(長手方向)に沿って一体に有する。また、上板42の両端には、短いリブ45が水平に突出し、且つ下板46の両端には、長いリブ48が水平に突出している。
係る押出形材40を用いて、前記床版10を形成する場合、リブ45,45間およびリブ48,48間の少なくとも一方の突き合わせ面に沿って、前記摩擦攪拌接合Wなどを施す。尚、図6(B)に示すように、押出形材40の上板42には、前記貫通孔11などと同様な貫通孔41などが穿孔されると共に、下板46には、前記通し孔19と同様な通し孔47が穿孔される。
【0034】
図7(C)は、押出形材40の変形形態である押出形材40aの断面を示す。
押出形材40aは、押出形材40とほぼ同様の断面を有するが、前記一対のリブ48がなく、その位置には大きなアール面49が位置している。係る押出形材40a同士を用いて床版10を形成する場合、上端のリブ45,45の突き合わせ面に沿って、前記摩擦攪拌接合Wを施す。
【0035】
図7(D)は、異なる形態のジベル50を示す。係るジベル50は、直方体の鋼材52の対向する一対の側面53,53に、棒鋼を曲げ加工した半円形状のU字枠材54の両側の直線部55,55を溶接付けしたものである。
また、図7(E)は、上記ジベル50の変形形態のジベル56を示す。係るジベル56は、断面チャンネル形の形鋼57の対向する側面58,58に、上記U字枠材54の両側の直線部55,55を溶接付けしたものである。
これらのジベル50,56も、前記橋桁1の上フランジ2の上面に溶接することにより、前記ジベル24と同様な機能を果たすことが可能である。
【0036】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
前記通し孔19は、平面視で長孔または楕円形の透孔としても良い。
また、前記桁には、断面角形で且つ箱形状を呈する鉄鋼構造物も含まれる。
更に、桁となる橋桁や主桁がアルミニウム合金の押出形材などから形成され、前記床版10の押出形材12との間で電位差がなくなるか極く小さくなる場合には、係る桁の上面に床版10を直に載置して取り付けることも可能である。
本発明は、上記各形態のほか、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の床版の取り付け構造を示す概略の斜視図。
【図2】(A)は図1の床版を構成する複数の押出形材の断面図、(B1),(B2)は(A)中の一点鎖線部分Bにおける摩擦攪拌接合を示す拡大図、(C)は(A)の押出形材の端部付近を示す概略図。
【図3】(A)は図1中のX−X線に沿った矢視における断面図、(B)は(A)中のB−B線に沿った矢視における断面図。
【図4】(A)は一対の堰板を複数のボルトで連結したユニットを示す斜視図、(B)は本発明の床版の取り付け工法または取替工法の工程を示す概略図。
【図5】(A),(a),(B),(b)は図4(B)に続く各工程を示す概略図。
【図6】(A)〜(D)は本発明の取替工法における各工程を示す概略図。
【図7】(A)〜(C)は異なる形態または変形形態の押出形材を示す断面図、(D),(E)は異なる形態または変形形態のジベルを示す概略図。
【図8】(A),(B)は従来の床版の取り付け構造を示す斜視図または垂直断面図。
【符号の説明】
1…………………………………橋桁(桁)
2…………………………………上フランジ(上面)
10………………………………床版
11,41………………………貫通孔
11a……………………………ガス抜き孔
12,12a,40,40a…押出形材(床版構成材)
13,43………………………中空部
14,42………………………上板
18,46………………………下板
19,47………………………通し孔
20………………………………堰板
24,50,56………………スタッドジベル/ジベル
M…………………………………無収縮モルタル(モルタル)
W…………………………………接合部(摩擦攪拌接合)
Claims (9)
- アルミニウム合金の押出形材からなり長手方向に沿った中空部を内蔵する複数の床版構成材を、平行な複数の桁の上に跨って直角に配置し、
上記桁の上面に垂直に固定された複数のジベルを、上記複数の床版構成材における下板に穿孔した通し孔を通じて上記中空部内に挿入すると共に、
上記複数のジベルが位置する上記床版構成材の中空部内で且つ上記通し孔の付近に、モルタルを充填し且つ固化する、
ことを特徴とする床版の取り付け構造。 - 前記モルタルは、前記桁の上フランジの上面と前記床版構成材の下板との間にも所定の厚みで充填され且つ固化される、
ことを特徴とする請求項1に記載の床版の取り付け構造。 - 前記床版構成材は、その上板および下板の少なくとも一方において、隣接する床版構成材と摩擦攪拌接合されることにより、所要広さの床版を形成する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の床版の取り付け構造。
- 前記床版構成材は、長手方向に沿って断面ほぼ台形またはほぼ逆台形の前記中空部を内蔵している、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の床版の取り付け構造。 - 前記床版構成材は、その上板に前記モルタルを充填する貫通孔およびこれに隣接するガス抜き孔を穿孔している、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の床版の取り付け構造。 - 前記床版構成材は、その中空部内における前記通し孔が位置する長手方向の両側に当該中空部を遮蔽する一対の堰板が配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の床版の取り付け構造。 - 平行な複数の桁の上に跨って配置された既存の床版を撤去する工程と、
上記複数の桁の露出した上フランジの上面に複数のジベルをそれぞれ垂直に固定し、
アルミニウム合金の押出形材からなり長手方向に沿った中空部を有する複数の床版構成材を、複数の上記桁の上に跨って直角に配置し、
床版構成材の下板に穿孔した通し孔を通じて、上記複数のジベルをその中空部内に挿入すると共に、
上記ジベルが位置する上記床版構成材の中空部内で且つ上記通し孔の付近に、モルタルを充填し且つ固化する工程と、を含む、
ことを特徴とする床版の取替工法。 - 前記モルタルは、前記桁の上フランジの上面と前記床版構成材の下板との間にも所定の厚みで充填され且つ固化される、
ことを特徴とする請求項7に記載の床版の取替工法。 - 前記既存の床版がコンクリート床版からなり、これを前記アルミニウム合金製の複数の押出形材の床版構成材からなる新たな床版に取り替える場合において、
上記新たな床版の表面の平坦度が上記既存の床版と同等になるように、床版構成材の下板と前記桁の上フランジの上面との間に充填する前記モルタルの高さを調整することにより行われる、
ことを特徴とする請求項8に記載の床版の取替工法。
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