JP2004068085A - アルミニウム複合体の製造方法 - Google Patents

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中江 秀雄
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Abstract

【課題】複合素材からなる焼結体の中にアルミニウム溶湯を短時間で浸透させる。
【解決手段】複合素材3の表面に、バインダ4とFe粉末2とを付着または分散させた後、乾燥して仮焼結体21を得て、これを粉砕・成形してプリフォーム19とし、プリフォームをさらに加熱して焼結体1を得るステップと、該焼結体に、アルミニウム溶湯を浸透させるステップとを含むアルミニウム複合体22の製造方法を提供する。かかる製造方法により、アルミニウム合金の焼結体1への浸透時間が、従来と比較して大幅に短縮される。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アルミニウム複合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、特別な雰囲気制御をすることなく急速に自己浸透可能なアルミニウム複合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
アルミニウム複合体の製造方法としては、粉末冶金法、粒子分散法、プリフォームを用いる溶浸法がある。
【0003】
粉末冶金法は、金属粉末とセラミックス粒子、繊維またはウィスカを混合し、冷間静水圧プレス(CIP)又は熱間静水圧プレス(HIP)を行った後、押出し成形を行い、複合材料粗材を製作する。この粗材を冷間又は熱間鋳造した後、機械加工を行い所定の製品形状とする。このため、製造コストが高いことと、複雑形状の製造が難しいことが問題である。
【0004】
粒子分散法は、金属溶湯の中にセラミックス粒子を入れ、撹拌した後、金型の中にこの溶湯を注いで製品形状にするものである。かかる方法によれば、複雑な形状の製品でも製造できるという利点がある。しかし、金属溶湯の中に添加できる粒子の体積率は20%が限界である。これ以上に高い体積比率になると、溶湯の流動性が非常に悪く、製品ができない。また、流動性が悪くなると、撹拌時や鋳造時に空気を巻き込む可能性が高くなる。さらに、金属溶湯とセラミックスとの間には比重差があり、均質な製品を得ることが難しいことが問題である。
【0005】
今までに複合材料を用いて商品化された部品の多くは、プリフォームを用いた溶浸法である。しかし、これらの方法は、スクイズダイカストまたは普通ダイカストなど、高圧で鋳造する方法である。このようなダイカスト法は、大量生産に向くものの、高価な設備と金型が必要なため、用途が限定されている。そのため、溶浸法の中でも圧力を加えず、無加圧でプリフォーム内に金属溶湯を浸透させる方法が提案されている。
【0006】
特開平2−236244号公報は、窒素雰囲気下でSiC粒子間にアルミニウム溶湯を浸透させる方法につき開示している。しかし、かかる方法は、高温で10時間保持する必要があり、生産性が非常に悪い。また、高温での製造では、操業する炉が高価となり、製品のコストアップになる。
【0007】
特開平11−323459号公報には、SiC粒子にFeを添加し、大気中で、アルミニウム溶湯とFeとの間にテルミット反応を発生させ、局部的に高温にしてSiC粒子表面の濡れ性を改善することにより、無加圧でアルミニウム溶湯を浸透させる方法が記載されている。しかし、この方法でも、SiC粒子からなるプリフォームの内部までアルミニウム溶湯の溶浸が完了するまで、1〜2時間が必要であった。
【0008】
SiCなどのセラミックス粒子にアルミニウム溶湯が浸透しない理由はアルミニウム溶湯とSiC粒子との濡れ性の悪さが原因である。したがって、大気中の加熱であってもプリフォーム自体が良い濡れ性を維持するか、または濡れ性を向上すれば、短時間でのアルミニウム溶湯の浸透は可能になる。セラミックス粒子のプリフォームに溶融アルミニウムを無加圧条件下、短時間で浸透させるには、セラミックス粒子表面の濡れ性を良くする必要がある。つまり、アルミニウム溶湯とセラミックス粒子表面との接触角が90度以下になるようにすれば、毛細管現象により浸透が起きる。
【0009】
濡れ性改善のため、不活雰囲気、活性雰囲気などの状態下で行うことが提案されてきた。また、特開平11−323459号公報においては、テルミット反応を利用し、軽金属合金を浸透させる複合素材粒子、あるいは複合素材粒子からなる成形体を、急激な高温状態にすることで、これらの粒子の濡れ性を改善することが提案されている。しかし、かかる方法でもアルミニウム溶湯が浸透完了するまでに数時間もかかっており、浸透にかかる時間のさらなる短縮が求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
製造コストを考えた場合、無加圧の大気中で、短時間で、複合素材粒子からなる焼結体の内部にまでアルミニウム溶湯を浸透させる製造方法が必要とされている。しかし、今までの開示例ではその目的が達成できない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明はアルミニウム複合体の製造方法であって、複合素材の表面に、バインダとFe粉末とを付着または分散させ、該複合素材を成形してプリフォームとし、該プリフォームを加熱して焼結体を得るステップと、該焼結体に、アルミニウム溶湯を浸透させるステップとを含む。
ここで、複合素材とは、焼結体を構成する素材であって、セラミックス粒子、繊維、ウィスカ等をいう。特に、セラミックス粒子を複合素材として用いることが好ましい。
前記プリフォームを、大気中で、700℃〜1100℃まで加熱して焼結体を得ることが好ましい。
【0012】
本発明は、一実施の形態においては、アルミニウム複合体の製造方法であって、前述の方法において、さらに、前記焼結体にアルミニウム溶湯を浸透させるステップの前に、該焼結体を予熱するステップを含む。これは、プリフォームを加熱して焼結体を得るステップと、該焼結体にアルミニウム溶湯を浸透させるステップとが連続的に行われないときに、焼結体とアルミニウム溶湯との温度差をなくすために好ましく実施される。
焼結体を予熱するステップは、大気中で、700℃〜1100℃まで加熱することにより実施されることが好ましい。
【0013】
本発明に係るアルミニウム複合体の製造方法においては、前記バインダが、シリカ系バインダであることが好ましい。特には、SiO、水ガラスであることが好ましい。
【0014】
本発明に係るアルミニウム複合体の製造方法によれば、予熱した焼結体にアルミニウム溶湯を浸透させるステップに要する時間を、従来と比較して大幅に短縮させることができる。これにより、製造時間を短縮することが可能となり、低コストで、均質なアルミニウム複合体を製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施の形態を挙げて詳しく説明する。ここで、本発明に用いる複合素材として特に好ましい、セラミックス粒子を用いた実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、同じ部材には同じ符号を付して表した。
【0016】
本発明の一実施の形態を、図1にアルミニウム複合体の製造方法のブロック図を示して説明する。本実施形態によるアルミニウム複合体の製造方法によれば、セラミックス粒子等の複合素材3の表面に、バインダ4とFe粉末2とを付着または分散させた後、乾燥して仮焼結体21を得、これを粉砕・成形してプリフォーム19とし、プリフォームを加熱して焼結体1を得るステップと、該焼結体1に、アルミニウム溶湯を浸透させるステップとを含み、これにより、アルミニウム複合体22が製造される。
【0017】
複合素材3として好ましく使用されるセラミックス粒子としては、SiC、Al、Si、AlN、MgAlなどを用いることが可能であるが、これらには限定されない。セラミックス粒子の粒子径が、100〜500μmであることが好ましい。
【0018】
バインダ4は、保形剤としてセラミックス粒子の成形体を一定の形状に保つ役割をするとともに、Fe粉末と反応して、複合素材3の成形体表面にアモルファス層を形成する。このようなバインダとしては、シリカ系バインダ、特にはシリカゾル、水ガラス等を用いることができる。
【0019】
また、テルミット反応に使用する金属酸化物としては、シリカ系バインダと反応し易いFe粉末2を用いる。Fe粉末はシリカ系バインダとの反応により、焼結体表面に薄いアモルファス層のバリアを形成する。
【0020】
アルミニウム溶湯は、純アルミニウム又はアルミニウム合金を溶融させたものをいう。純アルミニウムあるいはアルミニウム合金のどちらを用いてもよく、これらを混合して用いることもできる。特に、アルミニウム合金を使用する場合には、アルミニウムと、Si、Mg、Cu、Zn、Ni等との合金を使用することができる。アルミニウム合金の好ましい組成としては、具体的には、Al−Si−Mg系等が挙げられる。
【0021】
複合素材の表面に、バインダとFe粉末とを付着または分散させ、該複合素材を成形してプリフォームとし、加熱して焼結体を得るステップにおいては、まず、バインダとFe粉末とを混合し、これらをセラミックス粒子表面に付着させるように処理する。
【0022】
バインダとFe粉末との混合は、これらをボールミル等の分散装置を用いて分散することにより行うことができる。このとき、バインダとFe粉末との混合比は、重量比で、5:1〜1:5とすることが好ましい。そのほかに、溶媒として、水等を添加することが好ましく、その添加量は、バインダとFe粉末との総重量に対して、30〜500重量%であることが好ましい。また、分散時間は、0.1〜1時間とすることができる。
【0023】
このようにして得られた分散液を、セラミックス粒子と混合して、溶液とする。このときのFe粉末とセラミックス粒子との混合比は、重量比で、1:10〜1:1とすることが好ましい。この溶液を、オーブン等を用いて、約100〜180℃で、3〜24時間にわたって乾燥させることにより、仮焼結体21を得る。
【0024】
次に、仮焼結体21を、元のセラミック粒子と同程度の大きさまで粉砕した後、加圧プレス等の装置を用いて、圧縮、成形してプリフォーム19とする。このプリフォーム19を、オーブン等を用いて700〜1100℃で1〜5時間にわたって加熱し、焼結体1を得る。プリフォーム19の状態では、セラミックス粒子3が一続きの成形体となっており、かかるセラミックス粒子3表面に、バインダ4とFe粉末2とが付着された状態となっている。
【0025】
ここで、プリフォーム19を加熱して焼結体1とする過程において、セラミックス粒子3に付着したバインダ4とFe粉末2とを反応させ、アモルファスな状態とする。かかる反応は温度によって進行するため、温度が上がりやすいプリフォーム19の表面付近のセラミックス粒子に付着したバインダとFe粉末とが反応し、プリフォーム19の表面付近に、アモルファスな状態のFeが付着したセラミックス粒子からなるアモルファス層が生じる。このアモルファス層の生成によって、プリフォーム19の表面付近に薄いバリアができるため、さらに加熱されてプリフォーム19の内部の温度が上昇しても、プリフォーム19の内部におけるバインダとFe粉末との反応は進行しない。従って、プリフォーム19の内部では、バインダとFe粉末とが反応しないで残存している。
【0026】
次に、約700℃〜1100℃に予熱した焼結体1に、アルミニウム溶湯を浸透させる。ここで、焼結体1の予熱は、アルミニウム溶湯に焼結体1を沈めたときに、アルミニウムが凝固しないようにするために行われる。従って、プリフォーム19を加熱してできた焼結体1がアルミニウム合金と同程度の温度、すなわち約700℃〜1100℃の状態にある場合は、予熱をする必要はない。アルミニウム合金は、加熱炉等で加熱して、約700℃〜1100℃として、アルミニウム溶湯の状態にしておく。アルミニウム溶湯を焼結体1に浸透させるときの条件は、常圧、空気雰囲気下とすることができる。
【0027】
アルミニウム溶湯を焼結体1に浸透させるとき、アルミニウム溶湯を、焼結体1に注いでもよく、アルミニウム溶湯に焼結体1を浸してもよい。操作の容易性の観点からは、アルミニウム溶湯に焼結体1を浸すことが好ましい。このような操作は、重力鋳造あるいは低圧鋳造のような装置を用いて実施することができる。
【0028】
このような方法で、アルミニウム複合体22を得ることができる。上述のようなステップを含んでなるアルミニウム複合体22の製造方法によれば、アルミニウム溶湯を焼結体1に浸透させるのに要する時間が、従来と比較して、約1/10〜1/100にまで短縮される。
【0029】
次に、本発明に係るアルミニウム複合体の製造における各ステップにおける、複合体を構成する物質の化学的な状態の観点から、本発明を説明する。
図2に、セラミックス粒子表面に、シリカ系バインダとFe粉末とを付着させ、仮焼結、粉砕後に圧縮、成形したプリフォームと、その内部の粒子状態を拡大して概略的に示す。ここで、図2(a)に示すように、プリフォーム19はセラミックス粒子3が密着したものであって、図2(b)に拡大して示すように、シリカ系バインダ4とFe粉末2とが表面に付着したセラミックス粒子3から構成される。
【0030】
かかるプリフォーム19を加熱して焼結体1を得る際の、加熱前のプリフォーム19の状態を図3(a)に、加熱時のプリフォーム19の状態を図3(b)に、プリフォーム19を加熱して出来た焼結体1の状態を図3(c)に、概略的に示す。
加熱前のプリフォーム19は、図3(a)に示すように、図2(a)と同じ状態であって、セラミックス粒子3の表面に、シリカ系バインダ4とFe粉末2とが反応することなく存在している。加熱の前に、プリフォーム19の表面におけるX線回折を測定した結果を図4に示す。加熱前のプリフォーム19の表面においては、Fe分子のピークが見られ、Fe分子の存在が確認される。
【0031】
加熱時には、プリフォーム19の表面付近のセラミックス粒子3に付着させたシリカ系バインダ4とFe粉末2とが反応してアモルファス化している。ここで、図3(b)に示すように、プリフォーム19の表面付近には、シリカ系バインダ4とFe粉末2とが反応したアモルファスなFeが付着したセラミックス粒子3からなるアモルファス層5が形成されている。このとき、アモルファス層5の存在により、プリフォーム19の内部と外気との接触が少なくなり、還元状態になり、プリフォーム19の内部でのアモルファス化は進行しなくなる。
【0032】
加熱後は、図3(c)に示すように、加熱によってプリフォーム19が焼結されてできた焼結体1には、その表面に、加熱中に生じた薄いアモルファス層5が形成されていることとなる。加熱後に、焼結体1の表面におけるX線回折を測定した結果を図5に示す。加熱後の焼結体1の表面では、Fe分子のピークが失われている。これは、Fe粉末がシリカ系バインダ4であるSiOと反応して、焼結体1の表面がアモルファス化し、未反応のFe粉末2が存在しなくなったことを示すものである。
【0033】
図3(c)に示す状態となっている、表面がアモルファス化された焼結体1を加熱して、アルミニウム溶湯に沈めると、焼結体1内部に残留している空気とアルミニウムの反応により、焼結体1の内部は減圧状態になり、少しずつ焼結体1の内部にアルミニウム溶湯が浸透する。アルミニウムが、アモルファス層5の部分を越えて、さらに焼結体1内部まで浸透すると、アルミニウムとFeとの間でテルミット反応が生じ、高温状態になるため、焼結体1を構成するセラミックス粒子3の表面の濡れ性が急激に向上し、毛細管現象により焼結体1の内部のセラミックス粒子3間まですみやかに浸透する。アモルファス層5が薄ければ、その分だけ、テルミット反応が起きるまでの時間を短縮できる。
【0034】
また、焼結体1の表面のアモルファス層5部分をより速く浸透させるためには、アルミニウム溶湯に圧力を加えることが有効である。このとき、0.01〜1MPaの圧力を加えることが好ましい。あるいは、一般的な鋳造方法である低圧鋳造ではより効果が高くなる。例えば、圧力を0.01〜0.05MPaとすることで、浸透させる時間をより短縮することができる。
【0035】
ここで、酸化鉄として、従来から開示されているFe粉末をセラミックス粒子表面に付着させて成形し、プリフォームとし、かかるプリフォームを加熱して焼結体を得る際の、加熱前のプリフォーム6の状態を図6(a)に、加熱時のプリフォーム6の状態を図6(b)に、プリフォーム6を加熱して出来た焼結体20の状態を図6(c)に、概略的に示す。
【0036】
加熱前のプリフォーム6は、シリカ系バインダ4とFe粉末とが反応することなく、セラミックス粒子3の表面に存在している。この状態を図6(a)に模式的に示す。加熱前に、プリフォーム6の表面のX線回折を測定した結果を図7に示す。加熱前のプリフォーム6の表面においては、Feのピークが見られ、Feの存在は確認されない。
【0037】
Fe粉末は、加熱過程ではシリカバインダ4とはほとんど反応しないため、プリフォーム6の表面にバリアを作らない。加熱時間と共に、セラミックス粒子3の表面に付着させたFe粉末が酸化によりFeへと変化する。このとき、Feがバインダと反応し、アモルファスなFeが生成する。しかし、Feへの変化に依存し、表面より先に酸化して生成したある程度内部のFeもアモルファス化する。このため、Feを酸化鉄として用いた場合には、本発明のような薄いアモルファス層とはならず、バリアとして機能しない。そして、FeからFeへの酸化は、プリフォーム6のある程度内部まで進行する。このときの状態を図6(b)に示す。プリフォーム6の表面には、Fe粉末が酸化によりFeへと変化した状態で付着しているセラミックス粒子3の層7が、比較的内部まで形成されているが、アモルファス層は形成されていない。この状態でのプリフォーム6の表面におけるX線回折を測定した結果を図8に示す。この状態でプリフォーム6の表面では、Feのピークが失われており、Feが酸化されてできたFeのピークが生成している。
【0038】
さらに加熱を続けていくと、プリフォーム6は焼結されて焼結体20となり、状態は、図6(c)のようになる。Feの酸化により生成したFeとシリカバインダとの反応が起き、焼結体20の表面には、アモルファス層5が生成している。しかし、前述したようにある程度内部のFeもアモルファス化する為、本発明のような薄いアモルファス層とはならない。つまりアモルファス化するのは焼結体20の表面だけでなく、ある程度内部までであり、本発明の場合と比較して、分厚いアモルファス層5ができることになる。
【0039】
Fe粉末をセラミックス粒子3表面に付着させた焼結体20に、アルミニウム溶湯を浸透させる場合、アルミニウム溶湯の焼結体20への浸透の開始から浸透完了までの時間は数秒から数十秒と短い。ところが、浸透が開始するまでの時間が数十分と長いことが判明した。上記の実験結果より、浸透完了までに時間がかかっていた原因は、分厚いアモルファス層5が浸透開始までの過程で浸透を阻害しているためであることがわかる。
【0040】
Fe粉末をセラミックス粒子表面に付着させた焼結体20との比較からもわかるように、本発明においては、シリカ系バインダ4と反応し易いFe粉末2をセラミックス粒子3の表面に付着させ、Fe粉末2とシリカ系バインダ4との反応により、焼結体1表面に薄いアモルファス層5のバリアを形成することで、厚いアモルファス層の形成を防止し、溶融アルミニウムの焼結体1への浸透を容易にし、浸透時間を短縮するものである。
【0041】
【実施例】
以下の実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を限定する目的ではない。
【0042】
[実施例1]
セラミックス粒子3としては、粒径#36(昭和電工、グリーンカーボランダム)のSiC粒子を使用した。アルミニウム合金は共晶組成のAl−12.6%SiにMgを3%添加したものを調製して、使用した。調製に際しては、Al−25%Si、99.7%Al、99.9%Mgを使用した。シリカバインダ4は水ガラス(SiO・nHO・nNaO)を使用した。酸化鉄はFe粉末2を使用した。
【0043】
まず、Fe粉末2をSiCに均一に塗布するために、水ガラスとSiCの水溶液を調製した。ポリエステルの1L容器に純水240ml、水ガラス60ml、Fe粉末2を50g入れ、約12時間ボールミルにかけた。このとき、水ガラスとFe粉末2とがまんべんなく混ざるように、アルミナボールを数個入れた。
【0044】
次いで、ステンレスビーカにSiC粒子を60g入れ、上記の水ガラスとFe粉末との水溶液を添加後、よくかき混ぜ、ビーカーごと乾燥炉に24時間入れ、仮焼結体21を製作した。この仮焼結体21は、砕いて細かくした後、60mmタンマン管チューブ(外径21mm、内径17mm)に約15g入れて、圧縮してプリフォーム19とした後、900℃で2時間保持し、焼き固められた焼結体1を製作した。
【0045】
アルミニウム溶湯を焼結体1に浸透させる操作をするために、図9に示す実験装置10を用いた。アルミニウム合金は、実験装置10に設置した黒鉛るつぼ13に入れ、シリコニット角型炉18を用いて、大気中で溶解した。手順としてはAl−25%Siを900℃で溶解させ、その後99.7%Al、99.9%Mgを同じるつぼ13の中に入れ900℃で溶かした。この時、先にるつぼ13に入れたアルミニウム合金が全て溶解した後、もう一方のアルミニウム合金を入れた。最終的な組成は、Al−12.6Si−3Mgであった。
【0046】
次にタンマン管12内に製作した焼結体1を900℃に加熱し、アルミニウム溶湯11を浸透させるステップを行った。この実験装置10に、ステンレス針金17でタンマン管12内に入れた焼結体1を吊り下げるようにして、900℃に溶解したアルミニウム溶湯11の中に焼結体1を沈め、焼結体1の中にアルミニウム溶湯11を浸透させた。この時に、焼結体1の中にアルミニウム溶湯11が浸透した時間を調べるために、重量センサー14を用いて、重量変化を測定した。かかる実験装置10において、アルミニウム合金を溶解している炉18と重量センサー14の間には、金属板15と耐熱板16とからなる仕切りと、金属板15の仕切りとの2つの仕切りを設けた。これは、熱が重量センサー14に当たらないようにするためである。重量センサー14で測定された重量変化は、図示しないデジタルスコープ(YOKOGAWA DL708E)に記録した。実験結果を表1に示す。また、デジタルスコープの記録結果を図10に示す。
【0047】
[実施例2]
実施例1のSiC粒子の粒径を#70にして、実施例1と同様の方法で調製した焼結体1に、同様な手順でアルミニウム溶湯11を浸透させた実験結果を、表1に示す。
【0048】
[実施例3]
実施例1のSiC粒子の粒径を#120にして、実施例1と同様の方法で調製した焼結体1に、同様な手順でアルミニウム溶湯11を浸透させた実験結果も、同じく表1に示す。
【0049】
[比較例1,2,3]
実施例1のFeに替えてFeを使用し、また、SiC粒子の粒子径#36,#70,#120を用いて、実施例1と同様の方法で調製した焼結体20に、同様な手順でアルミニウム溶湯11を浸透させた実験結果を比較例1,2,3とし、実験結果を表1に示す。比較例1については、デジタルスコープの記録結果を図10に示す。
【0050】
【表1】
Figure 2004068085
【0051】
表1の実験結果より、Fe粉末2を用いて調製した焼結体1にアルミニウム溶湯11を浸透させる本発明の製造方法により、従来のFeを用いる方法と比べて、短時間でアルミニウム溶湯11を無加圧浸透させ、アルミニウム複合体22を得ることができることがわかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明に係るアルミニウム複合体の製造方法により、無加圧の大気中で、複合素材からなるプリフォームを加熱して得た焼結体に、アルミニウム溶湯を短時間で浸透させ、アルミニウム複合体を得ることができる。アルミニウム溶湯の浸透完了までの時間は、複合素材の粒子径の大きさにかかわらず3分程度であり、従来の方法では1〜10時間も必要であったが、その時間を従来の1/10〜1/100にまで短縮することができるようになった。
これは、複合素材としてセラミックス粒子を用いた場合には、セラミックス粒子からなる焼結体の表面に、セラミックス粒子に付着させたFe粉末とシリカバインダの反応による自己バリアを生成し、バリアにより焼結体内部は還元雰囲気となり、それ以上のプリフォーム内部へのアモルファス化は、進行しなくなることにより達成されたものである。かかるバリアの生成反応には、加熱が必要であるが、かかる加熱のステップは、焼結体を得るためのプリフォームを加熱するステップにおいて同時に実施可能であるため、従来と比較して製造ステップが煩雑になることもない。
本発明に係るアルミニウム複合体の製造方法によれば、低コストで均質なアルミニウム複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、一実施の形態によるアルミニウム複合体の製造方法を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、プリフォームを概略的に示す図であり、図2(b)はプリフォームを構成する粒子を拡大して概略的に示す図である。
【図3】図3(a)は、加熱前におけるプリフォームの表面状態を概略的に示す図であり、図3(b)は、加熱時におけるプリフォームの表面状態を概略的に示す図であり、図3(c)は、プリフォームが加熱されてできた焼結体の表面の状態を概略的に示す図である。
【図4】図4は、加熱前のプリフォーム表面のX線回折結果を示す図である。
【図5】図5は、プリフォームの加熱によってできた焼結体表面のX線回折結果を示す図である。
【図6】図6(a)は、加熱前における、従来技術であるFeを用いたプリフォームの表面状態を概略的に示す図であり、図6(b)は、加熱時における、Feを用いたプリフォームの表面状態を概略的に示す図であり、図6(c)は、Feを用いたプリフォームが加熱されてできた焼結体の表面の状態を概略的に示す図である。
【図7】図7は、従来技術であるFeを用いたプリフォーム表面の加熱前のX線回折結果を示す図である。
【図8】図8は、従来技術であるFeを用いたプリフォーム表面の加熱時のX線回折結果を示す図である。
【図9】図9は、実施例で用いた装置を概略的に示す図である。
【図10】図10は、焼結体の重量変化を測定したデジタルスコープの記録結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 焼結体
2 Fe
3 複合素材、セラミックス粒子
4 バインダ
5 アモルファス層
6 Feを表面に付着させたセラミックス粒子により構成されたプリフォーム
7 Fe粉末が酸化によりFeへと変化した状態で付着しているセラミックス粒子の層
10 実験装置
11 アルミニウム溶湯
12 タンマン管
13 黒鉛るつぼ
14 重量センサー
15 金属板
16 耐熱板
17 ステンレス針金
18 炉
19 プリフォーム
20 Feを表面に付着させたセラミックス粒子により構成されたプリフォームを加熱してできた焼結体
21 仮焼結体
22 アルミニウム複合体

Claims (5)

  1. 複合素材の表面に、バインダとFe粉末とを付着または分散させ、該複合素材を成形してプリフォームとし、該プリフォームを加熱して焼結体を得るステップと、
    該焼結体にアルミニウム溶湯を浸透させるステップと
    を含むアルミニウム複合体の製造方法。
  2. 前記プリフォームを、大気中で、700℃〜1100℃まで加熱して焼結体を得る請求項1に記載のアルミニウム複合体の製造方法。
  3. 前記焼結体にアルミニウム溶湯を浸透させるステップの前に、該焼結体を予熱するステップを含む請求項1又は2に記載のアルミニウム複合体の製造方法。
  4. 前記焼結体を予熱するステップが、大気中で、700℃〜1100℃まで加熱することにより実施される請求項3に記載のアルミニウム複合体の製造方法。
  5. 前記バインダが、シリカ系バインダである請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム複合体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN100443620C (zh) * 2004-09-09 2008-12-17 日信工业株式会社 复合材料及其制造方法、复合金属材料及其制造方法

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