JP2004066738A - 半導電性シームレスベルト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融混合時の基材樹脂や可塑剤等の添加剤の部分解や、溶剤の揮発による環境汚染の心配がなく、熱硬化性樹脂を用いたときの粘度コントロールが困難となるような問題のない半導電性シームレスベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】基材樹脂の水性エマルジョンに導電性付与材を配合した混合物を成形することを特徴とする半導電性シームレスベルトの製造方法、および、該方法で得られる半導電性シームレスベルト。
【選択図】 なし
【解決手段】基材樹脂の水性エマルジョンに導電性付与材を配合した混合物を成形することを特徴とする半導電性シームレスベルトの製造方法、および、該方法で得られる半導電性シームレスベルト。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導電性シームレスベルト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導電性シームレスベルトは、主な用途として電子写真複写機やレーザープリンターの中間転写体として使用されており、トナー拡散による画質低下を防ぐための高い表面抵抗と、除電装置なしで自然除電を行うための低い体積抵抗率の両立が求められている。
一般的には、表面抵抗率は外側表面の表面抵抗率が1012Ω/□以上、体積抵抗率が108〜1011Ω・cmを満足すればよいことが知られている。また、シームレスベルトの実用上の耐久度を得るためには、膜厚は100〜200μm程度で製造されることが多い。
【0003】
従来の半導電性シームレスベルト用基材樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリスチレン、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートをはじめとした熱可塑性ポリエステルなどの熱可塑性樹脂や、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている。導電性付与材としては、カーボンブラック、黒鉛粉末等のカーボン;金属粉末、導電性ポリマー等が用いられている。
基材樹脂が熱可塑性樹脂の場合、基材樹脂をあらかじめその融点以上に加熱して基材樹脂の流動性を高めた後、導電性付与材を分散させたり、有機溶剤に基材樹脂及び導電性付与材を溶解、分散させて、混練したものを用いることが多い。一方、基材樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、硬化前の樹脂に、あらかじめ導電性付与材を分散させておいて、その後、硬化反応を行う。
【0004】
成形方法としては、遠心成形、押出し成形等があるが、成形精度等の観点から、遠心管成形法を用いることが一般的である。
遠心管成形法は、管状の金型を回転させながら、金型内面に導電性付与材を配合した樹脂を流し込んでシームレスの円筒形に成形する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、基材樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合、導電性付与材を均一に分散させるために、高温に加熱して溶融させる必要がある。しかし、一般的に熱可塑性樹脂を溶融した場合、数千〜数万cPの粘度があるため、導電性付与材を均一に分散させることは非常に難しい。また、高粘度であるため、遠心管成形法を用いることができず、押出成形法を用いるため、一般的に半導電性シームレスベルトに要求される厚み精度で成形することは難しい。
【0006】
基材樹脂を有機溶剤に溶解する方法をとれば、高温加熱の必要はなくなる。しかし、樹脂濃度が高くなればなるほど高粘度になり、基材樹脂溶液に導電性付与材を均一に分散させるのが困難になる。これを避けるために低濃度溶液にすると、導電性付与材の分散はそれだけ、容易になるが、成形にあたって、大量の有機溶剤を揮発除去する必要が生じる。この揮発除去は溶剤が多くなればなるだけ、熱エネルギーが必要になるとともに、回収再生費用が高くなる。
【0007】
熱硬化性樹脂を用いた場合は、一般的には硬化前は流動性が大きいので、導電性付与材の添加は比較的容易である。しかし、主剤、副剤の混合や、反応触媒添加などで、一旦反応を開始すると粘度の維持が非常に難しくなり、特に、金型投入時の粘度コントロールが難しく、生産性を高めることが難しい。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、本発明の半導電性シームレスベルトの製造方法は、導電性付与材を配合した基材樹脂の水性エマルジョンを成形することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の半導電性シームレスベルトは、上記製造方法で得られることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における半導電性シームレスベルトの基材樹脂の種類としては特に制限はなく、どのような樹脂も用いることができる。基材樹脂の例としては、ポリ塩化ビニルを主成分とする塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系樹脂、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタンなどのウレタン系樹脂、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル等のエステル系樹脂を例示でき、これらの2種以上の混合物でもよい。
これらの樹脂の中では、ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂が、成形性、難燃性の点で好ましい。
本発明の基材樹脂は水性エマルジョンとして用いる。
水性エマルジョンの固形分濃度は、20〜60質量%であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。
【0011】
本発明の半導電性シームレスベルトの製造方法においては、基材樹脂の水性エマルジョンに導電性付与剤を配合した混合物を用いる。導電性付与材としては、カーボン、金属粉末、導電性高分子等を用いることができるが、基材樹脂として水性エマルジョンを用いているので、水に分散可能な導電性付与材が好ましく、この観点から親水性カーボンブラックが好ましい。
水性エマルジョンは、固形分濃度が高くなっても、樹脂が溶解した溶液のように高粘度になることがない。したがって、導電性付与材の配合にあたって、導電性付与材を均一に分散させるのが容易となる。
【0012】
本発明の半導電性シームレスベルトにおける導電性付与材の割合は、半導電性シームレスベルトを構成する全成分に対して3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。導電性付与材を3質量%以上にすることで充分な導電性を付与できる。また、上限は30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。これは導電性付与材の量をこれ以上増やしても、実質的に低抵抗化には効果が薄く、30質量%以下にすることで高い機械特性を維持できる。
【0013】
本発明の半導電性シームレスベルトにおける導電性は、表面抵抗率、及び、体積抵抗率をJIS K6911の抵抗率測定に規定される方法により測定、算出し評価される。
本発明の半導電性シームレスベルトは、この方法により得られる値が、体積抵抗率が108〜1011Ω・cmの範囲にあり、かつ少なくとも外側表面の表面抵抗率が1012Ω/□以上とすることが好ましい。これは、紙やOHP用シートの搬送には表面抵抗は絶縁領域にあることがよく、トナーの転写、除電には体積抵抗が半導電域であることが都合が良いからで、上述の構成によれば、本特性を達成することが可能である。
【0014】
本発明の半導電性シームレスベルトの厚みは、100μm以上、特に100〜200μmであることが好ましい。半導電性シームレスベルトは、複数のローラに懸架されて駆動して使用されるので機械的耐久性と可撓性が要求されることから、100μm未満では実用上の耐久性に欠けるおそれがある。また、200μmを超えると、可撓性が不充分となるおそれがある。
【0015】
一般に、水性エマルジョンを用いて30μm以上の膜を成形すると、表面に無数の亀裂が発生することが多い。これは以下の理由による。
空気にさらされた表面は乾燥が速いために、表面に被膜を形成する。
表面に被膜を形成すると、水分の蒸発を阻害する。
一方、内部は水分の蒸発が阻害されているため、流動性を保っている。
行き場を失った水分は、被膜強度の弱い部分から噴出して裂け目が生じ、表面全体に亘って無数の亀裂が発生するのである。
したがって、水性エマルジョンから直接賦形する場合は、もっぱら、塗膜など、薄い皮膜の形成が行われている。しかし、このように薄い塗膜を繰り返し積層成形して、上記のような厚みのシートベルトを形成するのは時間と手間が多くかかり、コスト高になる。また、薄い塗膜を繰り返し積層する場合は、界面剥離が起きやすいという問題もある。
そのため、水性エマルジョンを用いた場合においても、乾燥後の被膜厚さが100μm以上のシームレスベルトを1回で成形することが好ましい。
【0016】
この場合、上述の原因による亀裂を防ぐには、したがって、空気にさらされている面の急激な水分蒸発を防ぐとともに、内部の樹脂の流動性を阻害すればよい。すなわち、水性エマルジョンに増粘剤を配合して増粘すると、表面の急激な水分と、内部の樹脂の流動性を阻害して、蒸発亀裂の発生を防止できる。
増粘剤の添加量は、基材樹脂の水性エマルジョンと導電性付与材を配合した混合物100質量部に対して、10質量部以下(0〜10質量部)であることが好ましい。
増粘剤としては、水溶性増粘剤を用いてもよく、熱感応型増粘剤を用いてもよい。
【0017】
水溶性増粘剤は、水性エマルジョンに添加したときにエマルジョンの粘度を高めるものであり、添加によりエマルジョンの粘度を高めるものであればどのようなものも用いることができるが、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、アルカリ増粘型エマルジョンを具体例として例示できる。
熱感応型増粘剤は、これを水性エマルジョンに添加しただけでは増粘しないが、これを加熱して所定の温度(増粘開始温度)以上になると増粘するものであり、ポリエーテル変性シリコン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を具体例として例示できる。
【0018】
本発明の導電性シームレスベルトの製造方法においては、基材樹脂の水性エマルジョンに導電性付与材を配合して均一に混合する。導電性付与剤として、親水性カーボンを用いると、基材樹脂の水性エマルジョンと、親水性カーボンを水に分散させた分散液を例えばホモジナイザー等を用いて攪拌混合するだけで、導電性付与材の固まりが形成されるようなことがなく、均一に混合できる。また、導電性付与材の粉体を直接基材樹脂にブレンドする場合に見られる粉体の飛散がなく、作業環境を良好に保つことができる。
基材樹脂のエマルジョンと導電性付与材の混合と同時或いは混合後に、増粘剤を添加混合する。
【0019】
これらの混合時の温度は、基材樹脂エマルジョンの最低造膜温度(以下、MFTという)を超えないように設定する。混合時にMFTより高い温度になったエマルジョンを放置すると、表面に被膜が形成され、水分の蒸発が阻害されるため、これを用いて成形した半導電性シームレスベルトの強度が著しく低下するおそれがある。
【0020】
増粘剤として水溶性増粘剤を用いた場合、増粘後のエマルジョンと増粘剤を含む混合物の25℃における粘度を、50cP以上とすることが好ましい。粘度が50cP以上であると、半導電性シームレスベルト成形時に表面被膜形成と、金型近傍の混合物の流動を防止する。増粘後の混合物の濃度は、5,000cP以下であることが好ましい。粘度を5,000cP以下とすることで、遠心力による金型内壁へのレベリングが容易となる。
【0021】
増粘剤として、熱感応型増粘剤を用いた場合、ある一定温度(増粘開始温度)に達したときに急激な粘度上昇が起こり、流動性が阻害されるが、増粘開始温度より低い温度では、添加量が微量であるため、エマルジョンと増粘剤を含む混合物の粘度にほとんど影響を与えない。このため、何らかの理由で常温付近での混合物の粘度を上げることができないときに、有効な手段となる。なお、増粘開始温度は、亀裂発生防止の観点から、水分の蒸発が活発になる60℃以下になるように、熱感応型増粘剤の種類、濃度を調整しておくことが好ましい。
増粘剤として、熱感応型増粘剤を用いた場合、増粘開始温度以上の温度におけるエマルジョンと増粘剤を含む混合物の粘度は30cP以下であることが好ましい。
【0022】
シームレスのベルトを成形する方法としては、押出し成形、遠心管成形、注型法等の方法が適用可能であるが、厚さ精度、抵抗値精度、表面性に優れることから、この成形方法としては、遠心管成形法を用いることが好ましい。
遠心管成形法とは、上記原材料からなる成形用樹脂材料を流動状として円筒状の金型の内側に注入し、金型を回転させることにより、遠心力の作用で金型の内壁に流動状材料の層を形成し、樹脂を乾燥、加熱して、樹脂層を金型の内側に形成させ、冷却後、得られた樹脂層を取り出す方法である。
【0023】
金型は金属製がよく、内側はシームレスベルト表面の面粗度を細かくするために鏡面加工を施し、シームレスベルトの剥離が簡単なようにフッ素樹脂やシリコーン樹脂等で処理したものが好ましい。
【0024】
基材樹脂エマルジョンに導電性付与材と造粘剤を配合した混合物を乾燥後の厚みが所定の厚さになるように遠心管金型に注入し、金型内の樹脂を均一な厚みにするために必要な回転数で金型を回転させながら、成形を行う。成形用樹脂材料を注入したら、金型を適当なヒータ等により加熱し、成形用樹脂材料を乾燥、加熱する。このとき、加熱のタイミングは成形用樹脂材料の乾燥、成形条件により適宜選択すればよい。
【0025】
乾燥が完了し、均一な厚みのベルトが形成されたら、金型ごと冷却すれば、金型とシームレスベルトの熱膨張差によって、シームレスベルトは自然に剥離し、このものを所定寸法にカットして、シームレスベルトが得られる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0027】
<評価方法>
実施例、比較例で得た半導電性シームレスベルトの評価は以下の方法で行った。
外観:目視及び20倍顕微鏡を用いて表面の状態を観察した。
表面抵抗率、体積抵抗率:体積抵抗計「ハイレスタ」(三菱化学社製)、プローブ:UR−100を用い、測定電圧500V、サンプル数は5とした。測定結果は測定結果の平均値である。表面抵抗率は外側表面の値である。
また、実施例、比較例で得られた混合液の粘度は、振動型粘度計「VM−100A」(山一電機社製)を用いて、混合液温度と粘度を同時測定した。
【0028】
<実施例1>
水性エマルジョン樹脂として、塩化ビニル系水性エマルジョン「ビニブラン277」(日信化学社製、固形分:45質量%、pH:8、MFT:40℃)(以下、V277という)を、導電性付与材として親水性カーボンの水分散物[SAブラック12560](御国色素株式会社製、固形分36.8%、pH:6.8)(以下、SAB12560という)を、水溶性増粘剤として、アルカリ増粘型エマルジョン「ビニブラン390−KXG」(日信化学社製)(以下、390−KXGという)を用いて半導電性シームレスベルト製造を行った。
即ち、V277の質量113.3gあたり、SAB12560を24.0g、390−KXGを2.7g、アンモニア水(純正化学社製、28%水溶液)を0.3gとなる質量比でこれらを市販の遠心攪拌機を用いて混合し、混合液Aを得た。25℃における混合液Aの粘度は55cPであった。
【0029】
この混合液Aを、内径226mmφ、外径300mmφ、全長400mmの遠心金型に投入し、金型を1300min−1で回転させながら25℃から昇温速度:100℃/30分で125℃まで昇温し、次いで、加熱を停止して自然冷却させて、周長224mm、幅380mm、厚さ150μmのベルトAを得た。
得られたベルトAの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトAの評価結果を表1に示す。
次に、上記で得た混合溶液Aを容器に入れて密封し、25℃で1週間放置した。放置後の粘度を計測したところ、58cPであり、時間経過による大きな増粘、減粘は認められなかった。この混合溶液を上記と同様の条件で成形してベルトBを得た。
得られたベルトBの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトBの評価結果を表1に示す。
【0030】
<実施例2>
水性エマルジョン樹脂として、V277を、導電性付与材としてSABI2560を用い、熱感応型増粘剤として、ポリエーテル変性シリコン水溶液「TPA4380」(GE東芝シリコーン社製)(以下、TPA4380という)を用い、V277を113.3gあたり、SABI12560を24.0g、TPA4380を8.2gとなる質量比で混合した以外は実施例1と同様にして、混合液Cを得た。この混合液Cを加熱したときの粘度変化を調べたところ、増粘開始温度は55℃であり、55℃までは、温度上昇につれて若干粘度が低下したが、55℃を超えると、混合液Cの粘度は急激に上昇した。
この混合液Cを用いた以外は実施例1と同様にしてベルトCを得た。
得られたベルトCの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトCの評価結果を表1に示す。
また、加熱前の混合溶液Cを容器に入れて密封し、25℃で1週間放置した。放置後混合溶液を加熱したときの粘度変化を調べたところ、増粘開始温度は55℃と、保存前に比べて変化がなく、55℃までは、温度上昇につれて若干粘度が低下したが、55℃を超えると、混合液の粘度は急激に上昇した。この混合溶液を上記と同様の条件で成形してベルトDを得た。
得られたベルトDの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトDの評価結果を表1に示す。
【0031】
<比較例1>
基材樹脂として、ポリウレア(商品名「ポレアR−603」、イハラケミカル社製)[ジアミン(商品名「R−603A」)とジイソシアネート(商品名「R−603B」)の2液混合タイプ]を用い、導電性付与材として、カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、略称:150T、デグサジャパン社製)を用いた。
R−603A100質量部に対して150Tを5質量部の比率でホモジナイザを使って混合し、導電性溶液Eを得た。
また、R603B100質量部に対して150Tを5質量部の比率でホモジナイザを使って混合し、導電性溶液Fを得た。
導電性溶液Eと導電性溶液Fとを100:81.7の質量比で混合し、混合直後に実施例1で行ったと同じ条件で成形を行い、ベルトEを得た。ベルトEの表面抵抗率および体積抵抗率を測定したところ、それぞれ6.3×1012Ω/□、8.5×1011Ω・cmであり、半導電性シームレスベルトとして良好な特性を得た。
次いで、導電性溶液Aと導電性溶液Bとの混合後、25℃で10分間経過したものを用いてベルトを成形しようとしたところ、硬化反応で増粘してしまい、金型内に流し込んで金型を回転させてもレベリングができず、円筒型のベルトを得ることができなかった。(ベルトF)
【0032】
【表1】
【0033】
以上から明らかなように、熱硬化性樹脂を用いた場合は、室温雰囲気下であっても、主剤・副剤の混合から硬化反応が始まるため、混合から少し時間が経過するとベルトの成形ができなくなることが分かる。すなわち工業生産の場合は比較的大量の混合液を準備して次々と金型に流し込んで成形することが求められるが、熱硬化性樹脂では混合後の安定性に欠けるため、最後の流し込み分まで時間がかからないように比較的少量の単位で混合しなければならず、時間とコストのかかるものとなる。
これに対して、水性エマルジョンを使用した実施例では、樹脂の水性エマルジョンと導電性付与材との混合にあたっては低粘度であるため混合が容易であり、この混合液は安定であり、保存による粘度変化、得られるベルト特性の変化の少ないことが分かる。
【0034】
【発明の効果】
以上の結果から明らかなように、本発明においては、基材として水性エマルジョンを使用しているので、導電性付与材の配合にあたって加熱溶融を行う必要がなく、基材樹脂の劣化が少ない。また、有機溶剤を用いた場合のように高粘度になることがないので、導電性付与材を容易に均一混合ができる。また、熱硬化性樹脂を用いた場合のように混合液の粘度コントロールが困難になることはなく、混合液の保存安定性もよいので生産性を向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導電性シームレスベルト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導電性シームレスベルトは、主な用途として電子写真複写機やレーザープリンターの中間転写体として使用されており、トナー拡散による画質低下を防ぐための高い表面抵抗と、除電装置なしで自然除電を行うための低い体積抵抗率の両立が求められている。
一般的には、表面抵抗率は外側表面の表面抵抗率が1012Ω/□以上、体積抵抗率が108〜1011Ω・cmを満足すればよいことが知られている。また、シームレスベルトの実用上の耐久度を得るためには、膜厚は100〜200μm程度で製造されることが多い。
【0003】
従来の半導電性シームレスベルト用基材樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリスチレン、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートをはじめとした熱可塑性ポリエステルなどの熱可塑性樹脂や、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている。導電性付与材としては、カーボンブラック、黒鉛粉末等のカーボン;金属粉末、導電性ポリマー等が用いられている。
基材樹脂が熱可塑性樹脂の場合、基材樹脂をあらかじめその融点以上に加熱して基材樹脂の流動性を高めた後、導電性付与材を分散させたり、有機溶剤に基材樹脂及び導電性付与材を溶解、分散させて、混練したものを用いることが多い。一方、基材樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、硬化前の樹脂に、あらかじめ導電性付与材を分散させておいて、その後、硬化反応を行う。
【0004】
成形方法としては、遠心成形、押出し成形等があるが、成形精度等の観点から、遠心管成形法を用いることが一般的である。
遠心管成形法は、管状の金型を回転させながら、金型内面に導電性付与材を配合した樹脂を流し込んでシームレスの円筒形に成形する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、基材樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合、導電性付与材を均一に分散させるために、高温に加熱して溶融させる必要がある。しかし、一般的に熱可塑性樹脂を溶融した場合、数千〜数万cPの粘度があるため、導電性付与材を均一に分散させることは非常に難しい。また、高粘度であるため、遠心管成形法を用いることができず、押出成形法を用いるため、一般的に半導電性シームレスベルトに要求される厚み精度で成形することは難しい。
【0006】
基材樹脂を有機溶剤に溶解する方法をとれば、高温加熱の必要はなくなる。しかし、樹脂濃度が高くなればなるほど高粘度になり、基材樹脂溶液に導電性付与材を均一に分散させるのが困難になる。これを避けるために低濃度溶液にすると、導電性付与材の分散はそれだけ、容易になるが、成形にあたって、大量の有機溶剤を揮発除去する必要が生じる。この揮発除去は溶剤が多くなればなるだけ、熱エネルギーが必要になるとともに、回収再生費用が高くなる。
【0007】
熱硬化性樹脂を用いた場合は、一般的には硬化前は流動性が大きいので、導電性付与材の添加は比較的容易である。しかし、主剤、副剤の混合や、反応触媒添加などで、一旦反応を開始すると粘度の維持が非常に難しくなり、特に、金型投入時の粘度コントロールが難しく、生産性を高めることが難しい。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、本発明の半導電性シームレスベルトの製造方法は、導電性付与材を配合した基材樹脂の水性エマルジョンを成形することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の半導電性シームレスベルトは、上記製造方法で得られることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における半導電性シームレスベルトの基材樹脂の種類としては特に制限はなく、どのような樹脂も用いることができる。基材樹脂の例としては、ポリ塩化ビニルを主成分とする塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系樹脂、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタンなどのウレタン系樹脂、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル等のエステル系樹脂を例示でき、これらの2種以上の混合物でもよい。
これらの樹脂の中では、ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂が、成形性、難燃性の点で好ましい。
本発明の基材樹脂は水性エマルジョンとして用いる。
水性エマルジョンの固形分濃度は、20〜60質量%であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。
【0011】
本発明の半導電性シームレスベルトの製造方法においては、基材樹脂の水性エマルジョンに導電性付与剤を配合した混合物を用いる。導電性付与材としては、カーボン、金属粉末、導電性高分子等を用いることができるが、基材樹脂として水性エマルジョンを用いているので、水に分散可能な導電性付与材が好ましく、この観点から親水性カーボンブラックが好ましい。
水性エマルジョンは、固形分濃度が高くなっても、樹脂が溶解した溶液のように高粘度になることがない。したがって、導電性付与材の配合にあたって、導電性付与材を均一に分散させるのが容易となる。
【0012】
本発明の半導電性シームレスベルトにおける導電性付与材の割合は、半導電性シームレスベルトを構成する全成分に対して3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。導電性付与材を3質量%以上にすることで充分な導電性を付与できる。また、上限は30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。これは導電性付与材の量をこれ以上増やしても、実質的に低抵抗化には効果が薄く、30質量%以下にすることで高い機械特性を維持できる。
【0013】
本発明の半導電性シームレスベルトにおける導電性は、表面抵抗率、及び、体積抵抗率をJIS K6911の抵抗率測定に規定される方法により測定、算出し評価される。
本発明の半導電性シームレスベルトは、この方法により得られる値が、体積抵抗率が108〜1011Ω・cmの範囲にあり、かつ少なくとも外側表面の表面抵抗率が1012Ω/□以上とすることが好ましい。これは、紙やOHP用シートの搬送には表面抵抗は絶縁領域にあることがよく、トナーの転写、除電には体積抵抗が半導電域であることが都合が良いからで、上述の構成によれば、本特性を達成することが可能である。
【0014】
本発明の半導電性シームレスベルトの厚みは、100μm以上、特に100〜200μmであることが好ましい。半導電性シームレスベルトは、複数のローラに懸架されて駆動して使用されるので機械的耐久性と可撓性が要求されることから、100μm未満では実用上の耐久性に欠けるおそれがある。また、200μmを超えると、可撓性が不充分となるおそれがある。
【0015】
一般に、水性エマルジョンを用いて30μm以上の膜を成形すると、表面に無数の亀裂が発生することが多い。これは以下の理由による。
空気にさらされた表面は乾燥が速いために、表面に被膜を形成する。
表面に被膜を形成すると、水分の蒸発を阻害する。
一方、内部は水分の蒸発が阻害されているため、流動性を保っている。
行き場を失った水分は、被膜強度の弱い部分から噴出して裂け目が生じ、表面全体に亘って無数の亀裂が発生するのである。
したがって、水性エマルジョンから直接賦形する場合は、もっぱら、塗膜など、薄い皮膜の形成が行われている。しかし、このように薄い塗膜を繰り返し積層成形して、上記のような厚みのシートベルトを形成するのは時間と手間が多くかかり、コスト高になる。また、薄い塗膜を繰り返し積層する場合は、界面剥離が起きやすいという問題もある。
そのため、水性エマルジョンを用いた場合においても、乾燥後の被膜厚さが100μm以上のシームレスベルトを1回で成形することが好ましい。
【0016】
この場合、上述の原因による亀裂を防ぐには、したがって、空気にさらされている面の急激な水分蒸発を防ぐとともに、内部の樹脂の流動性を阻害すればよい。すなわち、水性エマルジョンに増粘剤を配合して増粘すると、表面の急激な水分と、内部の樹脂の流動性を阻害して、蒸発亀裂の発生を防止できる。
増粘剤の添加量は、基材樹脂の水性エマルジョンと導電性付与材を配合した混合物100質量部に対して、10質量部以下(0〜10質量部)であることが好ましい。
増粘剤としては、水溶性増粘剤を用いてもよく、熱感応型増粘剤を用いてもよい。
【0017】
水溶性増粘剤は、水性エマルジョンに添加したときにエマルジョンの粘度を高めるものであり、添加によりエマルジョンの粘度を高めるものであればどのようなものも用いることができるが、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、アルカリ増粘型エマルジョンを具体例として例示できる。
熱感応型増粘剤は、これを水性エマルジョンに添加しただけでは増粘しないが、これを加熱して所定の温度(増粘開始温度)以上になると増粘するものであり、ポリエーテル変性シリコン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を具体例として例示できる。
【0018】
本発明の導電性シームレスベルトの製造方法においては、基材樹脂の水性エマルジョンに導電性付与材を配合して均一に混合する。導電性付与剤として、親水性カーボンを用いると、基材樹脂の水性エマルジョンと、親水性カーボンを水に分散させた分散液を例えばホモジナイザー等を用いて攪拌混合するだけで、導電性付与材の固まりが形成されるようなことがなく、均一に混合できる。また、導電性付与材の粉体を直接基材樹脂にブレンドする場合に見られる粉体の飛散がなく、作業環境を良好に保つことができる。
基材樹脂のエマルジョンと導電性付与材の混合と同時或いは混合後に、増粘剤を添加混合する。
【0019】
これらの混合時の温度は、基材樹脂エマルジョンの最低造膜温度(以下、MFTという)を超えないように設定する。混合時にMFTより高い温度になったエマルジョンを放置すると、表面に被膜が形成され、水分の蒸発が阻害されるため、これを用いて成形した半導電性シームレスベルトの強度が著しく低下するおそれがある。
【0020】
増粘剤として水溶性増粘剤を用いた場合、増粘後のエマルジョンと増粘剤を含む混合物の25℃における粘度を、50cP以上とすることが好ましい。粘度が50cP以上であると、半導電性シームレスベルト成形時に表面被膜形成と、金型近傍の混合物の流動を防止する。増粘後の混合物の濃度は、5,000cP以下であることが好ましい。粘度を5,000cP以下とすることで、遠心力による金型内壁へのレベリングが容易となる。
【0021】
増粘剤として、熱感応型増粘剤を用いた場合、ある一定温度(増粘開始温度)に達したときに急激な粘度上昇が起こり、流動性が阻害されるが、増粘開始温度より低い温度では、添加量が微量であるため、エマルジョンと増粘剤を含む混合物の粘度にほとんど影響を与えない。このため、何らかの理由で常温付近での混合物の粘度を上げることができないときに、有効な手段となる。なお、増粘開始温度は、亀裂発生防止の観点から、水分の蒸発が活発になる60℃以下になるように、熱感応型増粘剤の種類、濃度を調整しておくことが好ましい。
増粘剤として、熱感応型増粘剤を用いた場合、増粘開始温度以上の温度におけるエマルジョンと増粘剤を含む混合物の粘度は30cP以下であることが好ましい。
【0022】
シームレスのベルトを成形する方法としては、押出し成形、遠心管成形、注型法等の方法が適用可能であるが、厚さ精度、抵抗値精度、表面性に優れることから、この成形方法としては、遠心管成形法を用いることが好ましい。
遠心管成形法とは、上記原材料からなる成形用樹脂材料を流動状として円筒状の金型の内側に注入し、金型を回転させることにより、遠心力の作用で金型の内壁に流動状材料の層を形成し、樹脂を乾燥、加熱して、樹脂層を金型の内側に形成させ、冷却後、得られた樹脂層を取り出す方法である。
【0023】
金型は金属製がよく、内側はシームレスベルト表面の面粗度を細かくするために鏡面加工を施し、シームレスベルトの剥離が簡単なようにフッ素樹脂やシリコーン樹脂等で処理したものが好ましい。
【0024】
基材樹脂エマルジョンに導電性付与材と造粘剤を配合した混合物を乾燥後の厚みが所定の厚さになるように遠心管金型に注入し、金型内の樹脂を均一な厚みにするために必要な回転数で金型を回転させながら、成形を行う。成形用樹脂材料を注入したら、金型を適当なヒータ等により加熱し、成形用樹脂材料を乾燥、加熱する。このとき、加熱のタイミングは成形用樹脂材料の乾燥、成形条件により適宜選択すればよい。
【0025】
乾燥が完了し、均一な厚みのベルトが形成されたら、金型ごと冷却すれば、金型とシームレスベルトの熱膨張差によって、シームレスベルトは自然に剥離し、このものを所定寸法にカットして、シームレスベルトが得られる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0027】
<評価方法>
実施例、比較例で得た半導電性シームレスベルトの評価は以下の方法で行った。
外観:目視及び20倍顕微鏡を用いて表面の状態を観察した。
表面抵抗率、体積抵抗率:体積抵抗計「ハイレスタ」(三菱化学社製)、プローブ:UR−100を用い、測定電圧500V、サンプル数は5とした。測定結果は測定結果の平均値である。表面抵抗率は外側表面の値である。
また、実施例、比較例で得られた混合液の粘度は、振動型粘度計「VM−100A」(山一電機社製)を用いて、混合液温度と粘度を同時測定した。
【0028】
<実施例1>
水性エマルジョン樹脂として、塩化ビニル系水性エマルジョン「ビニブラン277」(日信化学社製、固形分:45質量%、pH:8、MFT:40℃)(以下、V277という)を、導電性付与材として親水性カーボンの水分散物[SAブラック12560](御国色素株式会社製、固形分36.8%、pH:6.8)(以下、SAB12560という)を、水溶性増粘剤として、アルカリ増粘型エマルジョン「ビニブラン390−KXG」(日信化学社製)(以下、390−KXGという)を用いて半導電性シームレスベルト製造を行った。
即ち、V277の質量113.3gあたり、SAB12560を24.0g、390−KXGを2.7g、アンモニア水(純正化学社製、28%水溶液)を0.3gとなる質量比でこれらを市販の遠心攪拌機を用いて混合し、混合液Aを得た。25℃における混合液Aの粘度は55cPであった。
【0029】
この混合液Aを、内径226mmφ、外径300mmφ、全長400mmの遠心金型に投入し、金型を1300min−1で回転させながら25℃から昇温速度:100℃/30分で125℃まで昇温し、次いで、加熱を停止して自然冷却させて、周長224mm、幅380mm、厚さ150μmのベルトAを得た。
得られたベルトAの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトAの評価結果を表1に示す。
次に、上記で得た混合溶液Aを容器に入れて密封し、25℃で1週間放置した。放置後の粘度を計測したところ、58cPであり、時間経過による大きな増粘、減粘は認められなかった。この混合溶液を上記と同様の条件で成形してベルトBを得た。
得られたベルトBの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトBの評価結果を表1に示す。
【0030】
<実施例2>
水性エマルジョン樹脂として、V277を、導電性付与材としてSABI2560を用い、熱感応型増粘剤として、ポリエーテル変性シリコン水溶液「TPA4380」(GE東芝シリコーン社製)(以下、TPA4380という)を用い、V277を113.3gあたり、SABI12560を24.0g、TPA4380を8.2gとなる質量比で混合した以外は実施例1と同様にして、混合液Cを得た。この混合液Cを加熱したときの粘度変化を調べたところ、増粘開始温度は55℃であり、55℃までは、温度上昇につれて若干粘度が低下したが、55℃を超えると、混合液Cの粘度は急激に上昇した。
この混合液Cを用いた以外は実施例1と同様にしてベルトCを得た。
得られたベルトCの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトCの評価結果を表1に示す。
また、加熱前の混合溶液Cを容器に入れて密封し、25℃で1週間放置した。放置後混合溶液を加熱したときの粘度変化を調べたところ、増粘開始温度は55℃と、保存前に比べて変化がなく、55℃までは、温度上昇につれて若干粘度が低下したが、55℃を超えると、混合液の粘度は急激に上昇した。この混合溶液を上記と同様の条件で成形してベルトDを得た。
得られたベルトDの外観は亀裂等の発生はなく、良好であった。
ベルトDの評価結果を表1に示す。
【0031】
<比較例1>
基材樹脂として、ポリウレア(商品名「ポレアR−603」、イハラケミカル社製)[ジアミン(商品名「R−603A」)とジイソシアネート(商品名「R−603B」)の2液混合タイプ]を用い、導電性付与材として、カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、略称:150T、デグサジャパン社製)を用いた。
R−603A100質量部に対して150Tを5質量部の比率でホモジナイザを使って混合し、導電性溶液Eを得た。
また、R603B100質量部に対して150Tを5質量部の比率でホモジナイザを使って混合し、導電性溶液Fを得た。
導電性溶液Eと導電性溶液Fとを100:81.7の質量比で混合し、混合直後に実施例1で行ったと同じ条件で成形を行い、ベルトEを得た。ベルトEの表面抵抗率および体積抵抗率を測定したところ、それぞれ6.3×1012Ω/□、8.5×1011Ω・cmであり、半導電性シームレスベルトとして良好な特性を得た。
次いで、導電性溶液Aと導電性溶液Bとの混合後、25℃で10分間経過したものを用いてベルトを成形しようとしたところ、硬化反応で増粘してしまい、金型内に流し込んで金型を回転させてもレベリングができず、円筒型のベルトを得ることができなかった。(ベルトF)
【0032】
【表1】
【0033】
以上から明らかなように、熱硬化性樹脂を用いた場合は、室温雰囲気下であっても、主剤・副剤の混合から硬化反応が始まるため、混合から少し時間が経過するとベルトの成形ができなくなることが分かる。すなわち工業生産の場合は比較的大量の混合液を準備して次々と金型に流し込んで成形することが求められるが、熱硬化性樹脂では混合後の安定性に欠けるため、最後の流し込み分まで時間がかからないように比較的少量の単位で混合しなければならず、時間とコストのかかるものとなる。
これに対して、水性エマルジョンを使用した実施例では、樹脂の水性エマルジョンと導電性付与材との混合にあたっては低粘度であるため混合が容易であり、この混合液は安定であり、保存による粘度変化、得られるベルト特性の変化の少ないことが分かる。
【0034】
【発明の効果】
以上の結果から明らかなように、本発明においては、基材として水性エマルジョンを使用しているので、導電性付与材の配合にあたって加熱溶融を行う必要がなく、基材樹脂の劣化が少ない。また、有機溶剤を用いた場合のように高粘度になることがないので、導電性付与材を容易に均一混合ができる。また、熱硬化性樹脂を用いた場合のように混合液の粘度コントロールが困難になることはなく、混合液の保存安定性もよいので生産性を向上させることができる。
Claims (8)
- 基材樹脂の水性エマルジョンに導電性付与材を配合した混合物を成形することを特徴とする半導電性シームレスベルトの製造方法。
- 基材樹脂がポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 導電性付与材が親水性カーボンであることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
- さらに増粘剤をも配合した混合物を成形することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 導電性付与材と、増粘剤と、基材樹脂の水性エマルジョンを含む混合物を用いて、乾燥後の被膜厚さが100μm以上のシームレスベルトを1回で成形することを特徴とする請求項4記載の製造方法。
- 増粘剤が水溶性増粘剤であって、成形前の混合物の25℃における粘度が50cP以上であることを特徴とする請求項4または5記載の半導電性シームレスベルトの製造方法。
- 増粘剤が熱感応型増粘剤であり、混合物の増粘開始温度が60℃以下であることを特徴とする請求項4または5記載の半導電性シームレスベルトの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかの製造方法により得られる半導電性シームレスベルト。
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JP2002231735A JP2004066738A (ja) | 2002-08-08 | 2002-08-08 | 半導電性シームレスベルト及びその製造方法 |
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JP2012107233A (ja) * | 2010-10-28 | 2012-06-07 | Sekisui Chem Co Ltd | 樹脂複合材料及び樹脂複合材料の製造方法 |
JP2016500557A (ja) * | 2012-10-11 | 2016-01-14 | フィニッシング ブランズ ホールディングス,インコーポレイティド | 静電スプレイを用いて構造を生産するためのシステム及び方法 |
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2002
- 2002-08-08 JP JP2002231735A patent/JP2004066738A/ja active Pending
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