JP2004063912A - 積層型電子部品およびその製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】誘電体層を薄層化しても高い絶縁性を有し信頼性を向上できる積層型電子部品およびその製法を提供する。
【解決手段】誘電体粉末のメジアン径をD1、ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足するように調整された誘電体グリーンシートを用いて誘電体層5を形成し、誘電体層5中に存在するボイド27の最大径が2μm以下でかつ真円度が1μm以下とする。
【選択図】図2
【解決手段】誘電体粉末のメジアン径をD1、ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足するように調整された誘電体グリーンシートを用いて誘電体層5を形成し、誘電体層5中に存在するボイド27の最大径が2μm以下でかつ真円度が1μm以下とする。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型電子部品およびその製法に関し、特に、極めて薄い誘電体層を有する積層型電子部品およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、積層型電子部品、例えば、積層セラミックコンデンサは小型高容量化が求められており、このため誘電体層の薄層化と積層数の増加が図られている。このような積層セラミックコンデンサとしては、例えば、特開2001−15372号公報に開示されるようなものが知られている。この公報に開示された積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層は、まず、平均粒径が0.5μm以下のBaTiO3を主成分とする誘電体粉末を用いて誘電体グリーンシートが調製され、焼成後においてもその結晶の平均粒径が0.5μm以下となるように焼成され、このため誘電体層表面の凹凸を低減でき、さらに誘電体層と交互に積層される内部電極層の電極切れを減少させることができるために界面凹凸部にかかる電界集中を抑制して信頼性を向上できると記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された積層型電子部品では、誘電体粉末を微粒化することにより誘電体層を構成する結晶が微細化され、さらに誘電体層表面の凹凸の低減が図られているものの、Siを含む焼結助剤に対する適正な粒度調整が行われず、誘電体層中に、長径と短径の大きく異なる異形状のボイドが形成され、これが、上記のように薄層化された誘電体層を厚み方向に貫通するほどのボイドとなり、焼成後や高温負荷試験後に絶縁抵抗の低下やショートが多発するという問題があった。
【0004】
従って、本発明は、誘電体層を薄層化しても高い絶縁性を有し信頼性を向上できる積層型電子部品およびその製法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型電子部品は、誘電体層と内部電極層とを交互に積層してなる積層型電子部品であって、前記誘電体層中に存在するボイドの最大径が2μm以下でかつ真円度が1μm以下であることを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、誘電体層中に存在するボイドの最大径が小さく、しかもそのボイドの長径と短径の差が小さいために、薄層化された誘電体層を、ボイドが厚み方向に貫通することがなく、このため、焼成後や高温負荷試験後においても絶縁抵抗の低下やショートを抑制でき、かつ磁器強度も向上できる。尚、ここでボイドの真円度とは、誘電体層中に形成された複数のボイドの最長径(Dl)と最短径(Ds)との差(Dl−Ds)の最大値のことを示す。
【0007】
また、上記積層型電子部品では、誘電体層断面におけるボイドの占有率を2%以下とすることにより、さらに絶縁抵抗の低下やショートを抑制できる。
【0008】
また、上記積層型電子部品では、誘電体層の厚みが3μm以下であることが望ましい。この場合、積層セラミックコンデンサ等の小型高容量化に対して特に有利に適用される。
【0009】
本発明の積層型電子部品の製法は、誘電体粉末とガラス粉末とを含有する誘電体グリーンシートと、内部電極パターンとを交互に積層して形成した電子部品本体成形体を焼成する積層型電子部品の製法であって、前記誘電体粉末のメジアン径をD1、前記ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足することを特徴とする。
【0010】
このように誘電体粉末とガラス粉末とを適正に粒度調整することにより、微細な誘電体粉末やガラス粉末による結晶の異常粒成長や不均一な液相焼結を抑制でき、これにより結晶の均質化および均一粒径化とともにボイドの低減が図れ、さらには誘電体層中に形成されるボイドの真円度を高めることができる。ここでメジアン径とは、スラリー中に含まれる粉末の粒径を大きさの順に並べ、その中央にあたる粒径をいう。
【0011】
上記積層型電子部品の製法では、ガラス粉末の粒度分布が、前記ガラス粉末のメジアン径をD2、標準偏差をσとしたときに、D2/σ≦16%の関係を満足することが望ましい。本発明の製法に用いるガラス粉末として粒径ばらつきの少ないものを用いることにより、誘電体層中に形成されるボイドの真円度をさらに高めることができる。
【0012】
また、上記積層型電子部品の製法では、誘電体グリーンシートの厚みが4μm以下である場合に、積層セラミックコンデンサ等の小型高容量化に対して特に有利に適用される。
【0013】
さらに、上記積層型電子部品の製法では、誘電体粉末100質量部に対して、ガラス粉末を0.5〜3質量部添加することが、誘電体層の緻密化と、比誘電率や絶縁抵抗等の電気特性を向上させる上で望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
(構造)
本発明の積層型電子部品である積層セラミックコンデンサについて、図1の概略断面図をもとに詳細に説明する。
【0015】
(積層型電子部品)
本発明の積層型電子部品は、電子部品本体1の両端部に外部電極3を形成して構成されている。この外部電極3は、例えば、CuもしくはCuとNiの合金ペーストを焼き付けて形成され、さらに、所望により、この外部電極3の表面には、例えば、順にNiメッキ層、Snメッキ層もしくはSn−Pb合金メッキ層が形成されている。
【0016】
(電子部品本体)
電子部品本体1は、誘電体層5と内部電極層7とが交互に積層してなる容量部9の積層方向の両面に、誘電体層5と同一材料からなる絶縁層11を形成して構成されている。
【0017】
(誘電体層厚み)
ここで、容量部9を構成する誘電体層5の厚みは静電容量を高めるという理由から3μm以下であることが望ましく、特に、静電容量とともに絶縁性を維持するという理由から誘電体層5の厚みtは1.5〜2.5μmであることがより望ましい。
【0018】
(誘電体層)
また、誘電体層5は、図2に示すように、シート状のセラミック焼結体であり、BaTiO3を主成分とする結晶21と、非晶質相を含む粒界相25と、これらの結晶21および粒界相25に介在するボイド27とからなる。
【0019】
(ボイド)
そして、本発明の誘電体層5に存在するボイド27は、最大径が2μm以下でかつ真円度が1μm以下であることが重要である。ここでいうボイド27の真円度は、誘電体層5中に形成された複数のボイド27の最長径(Dl)と最短径(Ds)との差(Dl−Ds)の最大値のことであるが、特に、誘電体層5中に存在するボイド27の最大径は1.8μm以下、真円度は0.8μm以下とすることにより薄層化された誘電体層5に対してボイド27が厚み方向に貫通することを抑制して、焼成後や高温負荷試験後においても誘電体層5の絶縁抵抗の低下やショートを抑制できる。
【0020】
一方、ボイドの最大径が2μmより大きくかつ真円度が1μmよりも大きい場合には、薄層化された誘電体層の厚み方向に貫通することとなり焼成後に絶縁抵抗の低下やショートが多発し、また、高温負荷試験後において不良率が高まる恐れがある。
【0021】
また、誘電体層5の断面におけるボイド27の占有率は面積比率で、絶縁抵抗の低下やショートを抑制するという理由から2%以下であることが望ましく、特に1.5%以下であることがより望ましい。
【0022】
(結晶の平均粒径)
そして、誘電体層5を構成する結晶21は、誘電体層5として高い比誘電率とともに高い絶縁抵抗を有するという理由から平均粒径は1μm以下が望ましく、特に0.5〜0.8μmであることがより望ましい。
【0023】
(結晶の組成)
また、結晶21は、金属元素として、Ba、Ti、Mg、およびMnの金属酸化物からなる主成分を含み、モル比による組成式を100BaTiO3+xMgO+yMnO+zR(Yを含む希土類元素の酸化物)と表したとき、BaTiO3100質量部に対する質量比を表すx、yおよびzが0.1≦x≦1、0.05≦y≦0.5、0.1≦z≦1で示される範囲であることが望ましく、このような範囲とすることにより誘電体層5の比誘電率および絶縁抵抗の向上およびエージングレートを小さくすることができる。
【0024】
(粒界層)
一方、粒界相25は、アルカリ土類金属と、Si、Liの金属酸化物を含む副成分により構成されており、モル比による組成式をaLi2O+b(CaO、SrO、RaO(Ra:アルカリ土類元素))+cSiO2と表したとき、前記a、bおよびcが10≦a≦60、10≦b≦60、30≦c≦80、a+b+c=100で示される範囲であることが望ましく、このような範囲とすることにより、結晶21と同様に、誘電体層5の比誘電率および絶縁抵抗の向上並びに静電容量の温度特性をも安定化させることができる。
【0025】
そして、本発明の誘電体層5は、金属元素として、Ba、Ti、Mg、およびMnの金属酸化物からなる結晶21成分100質量部に対して、これらの粒界相25成分を0.5〜3質量部含有することが誘電体層5の絶縁抵抗を高めるという点で望ましく、特には、1〜2質量部であることがより望ましい。
【0026】
(内部電極層)
一方、内部電極層7は導電性ペーストの膜を焼結させた金属膜からなり、導電性ペーストとしては、例えば、Ni、Co、Cu等の卑金属が使用されている。また、内部電極層7は卑金属を主成分とし、概略矩形状の導体膜であり、内部電極層7の厚みは2μm以下が望ましく、この内部電極層7に含まれる金属量の低減が図れるとともに、充分な有効面積を確保するという理由から、特に、0.5〜1.5μmであることが望ましい。
【0027】
(積層数)
本発明の積層型電子部品の積層数は、その積層型電子部品を構成する誘電体層5が薄層多層化され、例えば、積層セラミックコンデンサの小型高容量化に対してその積層数は100層以上が望ましい。
【0028】
(製法)
本発明の積層型電子部品は、先ず、誘電体層5となる誘電体グリーンシートを作製する。
【0029】
(誘電体粉末)
この誘電体グリーンシートは、例えば、誘電体粉末としてBaTiO3原料粉末を用いて形成することができ、主原料のBaTiO3粉の合成法は、固相法、液相法(シュウ酸塩を経過する方法等)、水熱合成法等があるが、そのうち粒度分布が狭く、結晶性が高いという理由から水熱合成法が望ましい。そして、本発明では、BaTiO3粉末は、メジアン径が0.3〜0.9μmであることが望ましく、特には、0.4〜0.8μmであるものが好ましい。つまり、比表面積では1.5〜7m2/gであることが望ましい。
【0030】
(ガラス粉末)
次に、ガラス粉末として、Liと、アルカリ土類金属と、Siとを含む粉末を秤量して混合した後、900〜1100℃の温度にて仮焼した後粉砕を行う。
【0031】
この場合、粉砕は、まず、メディア径が2〜4mmのジルコニア製のメディアボールを入れたボールミルを用いて粗粉砕を行い、さらに、この粗粉砕したガラス粉末を、今度はメディア径が0.5〜1.5mmのジルコニア製のメディアボールを入れたボールミルを用いて微粉砕を行う。このような多段階の粉砕により調製されるガラス粉末としては、メジアン径で0.4〜0.8μmであること望ましく、特に、0.45〜0.49μmであることがより望ましい。即ち、比表面積で6〜12m2/gであることが望ましい。
【0032】
また、本発明のガラス粉末の粒度分布の程度をメジアン比/標準偏差の比で表されるばらつきの値で表した場合、ガラス粉末のメジアン径をD2、標準偏差をσとしたときに、D2/σ≦16%の関係を満足するほどに均一粒径化されていることが望ましく、ボイド27の最大径および真円度を低減するという理由から粒度分布は15.3%以下であることがより望ましい。
【0033】
つまり、このようなガラス粉末の微粒化および均一粒径化の効率を高めるために用いられる多段階的な粉砕の条件としては、ガラス粉末などの被粉砕物のメジアン径をD3とし、粉砕用のボール径メディア径をD4としたときに、D3/D4比が0.005〜0.012の範囲であることが望ましく、微粒化に伴いメディア径を小さくしていくことにより粉砕効率を高めることができ、このように粉砕効率を高めることにより、長時間の粉砕を行わなくても微細かつ粒度分布の狭い均一な粒径のガラス粉末を得ることができる。尚、この多段階的粉砕方法はガラス粉末のみではなく誘電体粉末や、ガラス粉末と誘電体粉末との混合粉末に対しても用いることができることはいうまでもない。
【0034】
(粉末混合)
次に、上記のBaTiO3原料粉末100質量部に対して、酸化マグネシウム(MgO)を0.1〜1質量部、炭酸マンガン(MnCO3)を0.05〜0.5質量部、酸化イットリウム(Y2O3)を0.1〜1の割合で混合され誘電体粉末が調製される。
【0035】
そして、多段階的に粉砕して得られたLi、アルカリ土類金属と、およびSiを含むガラス粉末を、誘電体粉末100質量部に対して0.5〜3質量部添加し、公知の分散剤、分散媒とともに直径が10mmのZrO2ボールを用いたボールミルにて湿式粉砕、混合し、原料スラリーが調製される。ここでのガラス粉末の添加量としては、誘電体層の緻密化と、比誘電率や絶縁抵抗等の電気特性を向上させるという理由から、誘電体粉末100質量部に対して、1〜2質量部であることがより望ましい。
【0036】
(メジアン径比)
そして、上記のような多段階的粉砕方法により調製された原料スラリー中の誘電体粉末やガラス粉末は、誘電体粉末のメジアン径をD1、ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足することが重要である。特に、ボイド27の最大径を2μm以下でかつ真円度を1μm以下、さらに、誘電体層断面におけるボイド27の占有率を2%以下とする点で、D2/D1比は0.65〜0.7の範囲であることがより望ましく、この結果として、高温負荷試験における信頼性の向上や、ショート発生率の低減が実現される。
【0037】
ここで、誘電体粉末のメジアン径D1とガラス粉末のメジアン径D2とのメジアン径比D2/D1が0.6より小さい場合は、凝集したガラス粉末により焼結が局部的に進みすぎてボイドの最大径が大きくなるとともに、ボイド27の占有率が高くなる恐れがある。一方、0.8より大きい場合には、粗大粒の存在比が増加することにより、焼成した際に形成されるボイド径が大きくなり、磁器の絶縁抵抗が低下しやすくなるとともに高温負荷試験における信頼性が低下する。
【0038】
(シート成形)
次に、この誘電体粉末とガラス粉末との混合粉末と有機バインダとを混合しスラリーを得た後、ドクターブレード法により、厚さ2〜4μmの誘電体グリーンシートを成形する。
【0039】
(内部電極パターン)
次に、上記誘電体グリーンシート上に、平均粒径が0.1〜0.2μmのNi内部電極ペーストを塗布して内部電極パターンを形成し、これを乾燥させ、この内部電極パターンが形成された誘電体グリーンシートを複数枚積層し、熱圧着させる。その後、この積層体を格子状に切断して、電子部品本体1の成形体を得る。この電子部品本体1の成形体の両端面には、内部電極パターンの端部が交互に露出している。
【0040】
次に、この電子部品本体1の成形体を大気中で脱バインダ処理を行い、その後、還元雰囲気中で500℃からの昇温速度を200〜400℃/hとし、1200〜1300℃の温度で2〜5時間焼成し、続いて200〜400℃/hの降温速度で冷却し、窒素雰囲気中900〜1100℃で再酸化処理を行う。
【0041】
特に、500℃からの昇温速度を200〜400℃/hとし、1270〜1300℃の温度で焼成することにより、誘電体層5に存在するボイド27の最大径を2μm以下でかつそのボイド27の真円度を1μm以下にできる。
【0042】
この後、焼成した電子部品本体1の両端面に、外部電極ペーストを塗布して窒素中で焼き付けることによって外部電極3を形成する。さらに外部電極3の表面を脱脂、酸洗浄、純水を用いた水洗を行った後、バレル方式により、メッキを行う。
【0043】
【実施例】
積層型電子部品の一つである積層セラミックコンデンサを以下のように作製した。
【0044】
(ガラス粉末、粉砕)
まず、ガラス粉末の原料である、Li、アルカリ土類金属、およびSiの金属酸化物よりなる混合粉末を1000℃の温度にて仮焼した後、予備粉砕し、粉砕処理用のガラス粉末を用意した。
【0045】
次に、この予備粉砕した仮焼粉体をボールミル中に入れ、さらに、この仮焼粉体と等量のイソプロピルアルコール(以下IPA)を加えて、直径2mmのジルコニアボールを用いて粗粉砕を行った。
【0046】
次に、この粗粉砕したガラス粉末を含むスラリーを別のミルに移し変えて、今度は直径1mmのジルコニアボールにより微粉砕を行った。
【0047】
(誘電体粉末)
次に、比表面積が3.2m2/gであるBaTiO3原料粉末を用い、BaTiO3100質量部に対して、酸化マグネシウム(MgO)を0.8質量部、炭酸マンガン(MnCO3)を0.4質量部、酸化イットリウム(Y2O3)を0.8質量部の割合で混合して誘電体粉末を調製した。誘電体粉末のメジアン径は0.7μmとした。
【0048】
尚、ガラス粉末のメジアン径D2は粉砕時間を変更することにより調整した。
【0049】
次に、微粉砕したガラス粉末を誘電体粉末100質量部に対して表1に示す割合になるように秤量し、さらに公知の分散剤、分散媒とともに直径が10mmのZrO2ボールを用いたボールミルにて混合し原料スラリーを調製した。
【0050】
(誘電体グリーンシート成形)
次に、この原料スラリーに有機バインダを加えて成形用スリップを調製した後、ドクターブレード法により厚さ3μmの誘電体グリーンシートを成形した。
【0051】
(内部電極パターン)
次に、この誘電体グリーンシート上に、Ni粉末、エチルセルロースおよびテルピネオールを含む内部電極ペーストをもちいてスクリーン印刷により内部電極パターンを形成した。その際、電子部品本体成形体1個あたりの内部電極パターンの有効面積は約0.6mm2とした。
【0052】
次に、内部電極ペーストを印刷した誘電体グリーンシートを100枚積層し、その上下面に、内部電極ペーストを印刷していない誘電体グリーンシートをそれぞれ20枚積層し、ホットプレスして一体化し、所定寸法に切断して電子部品本体成形体を作製した。
【0053】
そして、この電子部品本体成形体を大気中で400℃にて脱バインダ処理を行い、その後1285℃(酸素分圧10−11atm)で2時間焼成し、続いて大気雰囲気中1000℃で再酸化処理をして電子部品本体を作製した。このようにして作製した電子部品本体の寸法は1.6×0.8×0.8mm3であった。また、誘電体層厚みは2.2μmであった。
【0054】
次に、焼成した電子部品本体をバレル研磨した後、その両端部にCu粉末を含んだ外部電極ペーストを塗布し、850℃、窒素中で焼き付けを行い外部電極を形成した。さらにこの外部電極上に順にNiメッキ層、Snメッキ層を施した。
【0055】
(評価)
誘電体粉末およびガラス粉末のメジアン径およびガラス粉末の粒度分布はレーザー式粒度測定器を用いて測定した。
【0056】
ボイドの最大径と真円度および占有率は光学式測定顕微鏡を用いて測定した。
【0057】
作製した積層セラミックコンデンサは、各100個について焼成後の静電容量(C)と絶縁抵抗(R)を測定した。測定は、基準温度25℃で行い、静電容量は、周波数1.0kHz、入力信号レベル0.5Vrmsの条件で測定し、また、測定の際ショートした積層セラミックコンデンサの個数よりショート率を算出した。
【0058】
また、絶縁抵抗(R)は、直流電圧10Vを1分間印加して測定した。
【0059】
高温負荷試験は、試料数100個について、温度85℃、電圧は9.5Vの条件で1000時間行い、ショートした試料数を不良率として評価した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から明らかなように、ガラス粉末と誘電体粉末のメジアン径比を0.6〜0.8、ガラス粉末の粒度分布を16%以下とし、ボイドの最大径を2μm以下でかつボイドの真円度を1μm以下とした試料No.2〜5、7〜11では、静電容量が4.68μF以上、絶縁抵抗が300MΩ以上、ショート率が7%以下で、高温負荷試験後の不良率が2%以下であった。特に、メジアン径比を0.65〜0.7、ガラス粉末の粒度分布を15.3%以下とし、ガラス粉末を1〜2質量部添加した試料No.3、4、8および9では、高温負荷試験での不良率が0%であった。
【0062】
一方、メジアン径比を0.89、ガラス粉末の粒度分布を18.2%とした試料No.1、およびガラス粉末の粒度分布を15.8%としてもメジアン径比を0.5とした試料No.6では、焼成後でのショート率が10%以上、高温負荷試験後の不良率が5%以上であった。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明では、誘電体粉末のメジアン径をD1、ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足するように調整することにより、誘電体層中に存在するボイドの最大径を2μm以下でかつ真円度を1μm以下にできることから薄層化された誘電体層をボイドが厚み方向に貫通することがなく、このため、焼成後や高温負荷試験後においても絶縁抵抗の低下やショートを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子部品の概略断面図である。
【図2】図1の誘電体層を拡大して示す模式図である。
【符号の説明】
5 誘電体層
7 内部電極層
21 結晶
25 粒界相
27 ボイド
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型電子部品およびその製法に関し、特に、極めて薄い誘電体層を有する積層型電子部品およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、積層型電子部品、例えば、積層セラミックコンデンサは小型高容量化が求められており、このため誘電体層の薄層化と積層数の増加が図られている。このような積層セラミックコンデンサとしては、例えば、特開2001−15372号公報に開示されるようなものが知られている。この公報に開示された積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層は、まず、平均粒径が0.5μm以下のBaTiO3を主成分とする誘電体粉末を用いて誘電体グリーンシートが調製され、焼成後においてもその結晶の平均粒径が0.5μm以下となるように焼成され、このため誘電体層表面の凹凸を低減でき、さらに誘電体層と交互に積層される内部電極層の電極切れを減少させることができるために界面凹凸部にかかる電界集中を抑制して信頼性を向上できると記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された積層型電子部品では、誘電体粉末を微粒化することにより誘電体層を構成する結晶が微細化され、さらに誘電体層表面の凹凸の低減が図られているものの、Siを含む焼結助剤に対する適正な粒度調整が行われず、誘電体層中に、長径と短径の大きく異なる異形状のボイドが形成され、これが、上記のように薄層化された誘電体層を厚み方向に貫通するほどのボイドとなり、焼成後や高温負荷試験後に絶縁抵抗の低下やショートが多発するという問題があった。
【0004】
従って、本発明は、誘電体層を薄層化しても高い絶縁性を有し信頼性を向上できる積層型電子部品およびその製法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型電子部品は、誘電体層と内部電極層とを交互に積層してなる積層型電子部品であって、前記誘電体層中に存在するボイドの最大径が2μm以下でかつ真円度が1μm以下であることを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、誘電体層中に存在するボイドの最大径が小さく、しかもそのボイドの長径と短径の差が小さいために、薄層化された誘電体層を、ボイドが厚み方向に貫通することがなく、このため、焼成後や高温負荷試験後においても絶縁抵抗の低下やショートを抑制でき、かつ磁器強度も向上できる。尚、ここでボイドの真円度とは、誘電体層中に形成された複数のボイドの最長径(Dl)と最短径(Ds)との差(Dl−Ds)の最大値のことを示す。
【0007】
また、上記積層型電子部品では、誘電体層断面におけるボイドの占有率を2%以下とすることにより、さらに絶縁抵抗の低下やショートを抑制できる。
【0008】
また、上記積層型電子部品では、誘電体層の厚みが3μm以下であることが望ましい。この場合、積層セラミックコンデンサ等の小型高容量化に対して特に有利に適用される。
【0009】
本発明の積層型電子部品の製法は、誘電体粉末とガラス粉末とを含有する誘電体グリーンシートと、内部電極パターンとを交互に積層して形成した電子部品本体成形体を焼成する積層型電子部品の製法であって、前記誘電体粉末のメジアン径をD1、前記ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足することを特徴とする。
【0010】
このように誘電体粉末とガラス粉末とを適正に粒度調整することにより、微細な誘電体粉末やガラス粉末による結晶の異常粒成長や不均一な液相焼結を抑制でき、これにより結晶の均質化および均一粒径化とともにボイドの低減が図れ、さらには誘電体層中に形成されるボイドの真円度を高めることができる。ここでメジアン径とは、スラリー中に含まれる粉末の粒径を大きさの順に並べ、その中央にあたる粒径をいう。
【0011】
上記積層型電子部品の製法では、ガラス粉末の粒度分布が、前記ガラス粉末のメジアン径をD2、標準偏差をσとしたときに、D2/σ≦16%の関係を満足することが望ましい。本発明の製法に用いるガラス粉末として粒径ばらつきの少ないものを用いることにより、誘電体層中に形成されるボイドの真円度をさらに高めることができる。
【0012】
また、上記積層型電子部品の製法では、誘電体グリーンシートの厚みが4μm以下である場合に、積層セラミックコンデンサ等の小型高容量化に対して特に有利に適用される。
【0013】
さらに、上記積層型電子部品の製法では、誘電体粉末100質量部に対して、ガラス粉末を0.5〜3質量部添加することが、誘電体層の緻密化と、比誘電率や絶縁抵抗等の電気特性を向上させる上で望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
(構造)
本発明の積層型電子部品である積層セラミックコンデンサについて、図1の概略断面図をもとに詳細に説明する。
【0015】
(積層型電子部品)
本発明の積層型電子部品は、電子部品本体1の両端部に外部電極3を形成して構成されている。この外部電極3は、例えば、CuもしくはCuとNiの合金ペーストを焼き付けて形成され、さらに、所望により、この外部電極3の表面には、例えば、順にNiメッキ層、Snメッキ層もしくはSn−Pb合金メッキ層が形成されている。
【0016】
(電子部品本体)
電子部品本体1は、誘電体層5と内部電極層7とが交互に積層してなる容量部9の積層方向の両面に、誘電体層5と同一材料からなる絶縁層11を形成して構成されている。
【0017】
(誘電体層厚み)
ここで、容量部9を構成する誘電体層5の厚みは静電容量を高めるという理由から3μm以下であることが望ましく、特に、静電容量とともに絶縁性を維持するという理由から誘電体層5の厚みtは1.5〜2.5μmであることがより望ましい。
【0018】
(誘電体層)
また、誘電体層5は、図2に示すように、シート状のセラミック焼結体であり、BaTiO3を主成分とする結晶21と、非晶質相を含む粒界相25と、これらの結晶21および粒界相25に介在するボイド27とからなる。
【0019】
(ボイド)
そして、本発明の誘電体層5に存在するボイド27は、最大径が2μm以下でかつ真円度が1μm以下であることが重要である。ここでいうボイド27の真円度は、誘電体層5中に形成された複数のボイド27の最長径(Dl)と最短径(Ds)との差(Dl−Ds)の最大値のことであるが、特に、誘電体層5中に存在するボイド27の最大径は1.8μm以下、真円度は0.8μm以下とすることにより薄層化された誘電体層5に対してボイド27が厚み方向に貫通することを抑制して、焼成後や高温負荷試験後においても誘電体層5の絶縁抵抗の低下やショートを抑制できる。
【0020】
一方、ボイドの最大径が2μmより大きくかつ真円度が1μmよりも大きい場合には、薄層化された誘電体層の厚み方向に貫通することとなり焼成後に絶縁抵抗の低下やショートが多発し、また、高温負荷試験後において不良率が高まる恐れがある。
【0021】
また、誘電体層5の断面におけるボイド27の占有率は面積比率で、絶縁抵抗の低下やショートを抑制するという理由から2%以下であることが望ましく、特に1.5%以下であることがより望ましい。
【0022】
(結晶の平均粒径)
そして、誘電体層5を構成する結晶21は、誘電体層5として高い比誘電率とともに高い絶縁抵抗を有するという理由から平均粒径は1μm以下が望ましく、特に0.5〜0.8μmであることがより望ましい。
【0023】
(結晶の組成)
また、結晶21は、金属元素として、Ba、Ti、Mg、およびMnの金属酸化物からなる主成分を含み、モル比による組成式を100BaTiO3+xMgO+yMnO+zR(Yを含む希土類元素の酸化物)と表したとき、BaTiO3100質量部に対する質量比を表すx、yおよびzが0.1≦x≦1、0.05≦y≦0.5、0.1≦z≦1で示される範囲であることが望ましく、このような範囲とすることにより誘電体層5の比誘電率および絶縁抵抗の向上およびエージングレートを小さくすることができる。
【0024】
(粒界層)
一方、粒界相25は、アルカリ土類金属と、Si、Liの金属酸化物を含む副成分により構成されており、モル比による組成式をaLi2O+b(CaO、SrO、RaO(Ra:アルカリ土類元素))+cSiO2と表したとき、前記a、bおよびcが10≦a≦60、10≦b≦60、30≦c≦80、a+b+c=100で示される範囲であることが望ましく、このような範囲とすることにより、結晶21と同様に、誘電体層5の比誘電率および絶縁抵抗の向上並びに静電容量の温度特性をも安定化させることができる。
【0025】
そして、本発明の誘電体層5は、金属元素として、Ba、Ti、Mg、およびMnの金属酸化物からなる結晶21成分100質量部に対して、これらの粒界相25成分を0.5〜3質量部含有することが誘電体層5の絶縁抵抗を高めるという点で望ましく、特には、1〜2質量部であることがより望ましい。
【0026】
(内部電極層)
一方、内部電極層7は導電性ペーストの膜を焼結させた金属膜からなり、導電性ペーストとしては、例えば、Ni、Co、Cu等の卑金属が使用されている。また、内部電極層7は卑金属を主成分とし、概略矩形状の導体膜であり、内部電極層7の厚みは2μm以下が望ましく、この内部電極層7に含まれる金属量の低減が図れるとともに、充分な有効面積を確保するという理由から、特に、0.5〜1.5μmであることが望ましい。
【0027】
(積層数)
本発明の積層型電子部品の積層数は、その積層型電子部品を構成する誘電体層5が薄層多層化され、例えば、積層セラミックコンデンサの小型高容量化に対してその積層数は100層以上が望ましい。
【0028】
(製法)
本発明の積層型電子部品は、先ず、誘電体層5となる誘電体グリーンシートを作製する。
【0029】
(誘電体粉末)
この誘電体グリーンシートは、例えば、誘電体粉末としてBaTiO3原料粉末を用いて形成することができ、主原料のBaTiO3粉の合成法は、固相法、液相法(シュウ酸塩を経過する方法等)、水熱合成法等があるが、そのうち粒度分布が狭く、結晶性が高いという理由から水熱合成法が望ましい。そして、本発明では、BaTiO3粉末は、メジアン径が0.3〜0.9μmであることが望ましく、特には、0.4〜0.8μmであるものが好ましい。つまり、比表面積では1.5〜7m2/gであることが望ましい。
【0030】
(ガラス粉末)
次に、ガラス粉末として、Liと、アルカリ土類金属と、Siとを含む粉末を秤量して混合した後、900〜1100℃の温度にて仮焼した後粉砕を行う。
【0031】
この場合、粉砕は、まず、メディア径が2〜4mmのジルコニア製のメディアボールを入れたボールミルを用いて粗粉砕を行い、さらに、この粗粉砕したガラス粉末を、今度はメディア径が0.5〜1.5mmのジルコニア製のメディアボールを入れたボールミルを用いて微粉砕を行う。このような多段階の粉砕により調製されるガラス粉末としては、メジアン径で0.4〜0.8μmであること望ましく、特に、0.45〜0.49μmであることがより望ましい。即ち、比表面積で6〜12m2/gであることが望ましい。
【0032】
また、本発明のガラス粉末の粒度分布の程度をメジアン比/標準偏差の比で表されるばらつきの値で表した場合、ガラス粉末のメジアン径をD2、標準偏差をσとしたときに、D2/σ≦16%の関係を満足するほどに均一粒径化されていることが望ましく、ボイド27の最大径および真円度を低減するという理由から粒度分布は15.3%以下であることがより望ましい。
【0033】
つまり、このようなガラス粉末の微粒化および均一粒径化の効率を高めるために用いられる多段階的な粉砕の条件としては、ガラス粉末などの被粉砕物のメジアン径をD3とし、粉砕用のボール径メディア径をD4としたときに、D3/D4比が0.005〜0.012の範囲であることが望ましく、微粒化に伴いメディア径を小さくしていくことにより粉砕効率を高めることができ、このように粉砕効率を高めることにより、長時間の粉砕を行わなくても微細かつ粒度分布の狭い均一な粒径のガラス粉末を得ることができる。尚、この多段階的粉砕方法はガラス粉末のみではなく誘電体粉末や、ガラス粉末と誘電体粉末との混合粉末に対しても用いることができることはいうまでもない。
【0034】
(粉末混合)
次に、上記のBaTiO3原料粉末100質量部に対して、酸化マグネシウム(MgO)を0.1〜1質量部、炭酸マンガン(MnCO3)を0.05〜0.5質量部、酸化イットリウム(Y2O3)を0.1〜1の割合で混合され誘電体粉末が調製される。
【0035】
そして、多段階的に粉砕して得られたLi、アルカリ土類金属と、およびSiを含むガラス粉末を、誘電体粉末100質量部に対して0.5〜3質量部添加し、公知の分散剤、分散媒とともに直径が10mmのZrO2ボールを用いたボールミルにて湿式粉砕、混合し、原料スラリーが調製される。ここでのガラス粉末の添加量としては、誘電体層の緻密化と、比誘電率や絶縁抵抗等の電気特性を向上させるという理由から、誘電体粉末100質量部に対して、1〜2質量部であることがより望ましい。
【0036】
(メジアン径比)
そして、上記のような多段階的粉砕方法により調製された原料スラリー中の誘電体粉末やガラス粉末は、誘電体粉末のメジアン径をD1、ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足することが重要である。特に、ボイド27の最大径を2μm以下でかつ真円度を1μm以下、さらに、誘電体層断面におけるボイド27の占有率を2%以下とする点で、D2/D1比は0.65〜0.7の範囲であることがより望ましく、この結果として、高温負荷試験における信頼性の向上や、ショート発生率の低減が実現される。
【0037】
ここで、誘電体粉末のメジアン径D1とガラス粉末のメジアン径D2とのメジアン径比D2/D1が0.6より小さい場合は、凝集したガラス粉末により焼結が局部的に進みすぎてボイドの最大径が大きくなるとともに、ボイド27の占有率が高くなる恐れがある。一方、0.8より大きい場合には、粗大粒の存在比が増加することにより、焼成した際に形成されるボイド径が大きくなり、磁器の絶縁抵抗が低下しやすくなるとともに高温負荷試験における信頼性が低下する。
【0038】
(シート成形)
次に、この誘電体粉末とガラス粉末との混合粉末と有機バインダとを混合しスラリーを得た後、ドクターブレード法により、厚さ2〜4μmの誘電体グリーンシートを成形する。
【0039】
(内部電極パターン)
次に、上記誘電体グリーンシート上に、平均粒径が0.1〜0.2μmのNi内部電極ペーストを塗布して内部電極パターンを形成し、これを乾燥させ、この内部電極パターンが形成された誘電体グリーンシートを複数枚積層し、熱圧着させる。その後、この積層体を格子状に切断して、電子部品本体1の成形体を得る。この電子部品本体1の成形体の両端面には、内部電極パターンの端部が交互に露出している。
【0040】
次に、この電子部品本体1の成形体を大気中で脱バインダ処理を行い、その後、還元雰囲気中で500℃からの昇温速度を200〜400℃/hとし、1200〜1300℃の温度で2〜5時間焼成し、続いて200〜400℃/hの降温速度で冷却し、窒素雰囲気中900〜1100℃で再酸化処理を行う。
【0041】
特に、500℃からの昇温速度を200〜400℃/hとし、1270〜1300℃の温度で焼成することにより、誘電体層5に存在するボイド27の最大径を2μm以下でかつそのボイド27の真円度を1μm以下にできる。
【0042】
この後、焼成した電子部品本体1の両端面に、外部電極ペーストを塗布して窒素中で焼き付けることによって外部電極3を形成する。さらに外部電極3の表面を脱脂、酸洗浄、純水を用いた水洗を行った後、バレル方式により、メッキを行う。
【0043】
【実施例】
積層型電子部品の一つである積層セラミックコンデンサを以下のように作製した。
【0044】
(ガラス粉末、粉砕)
まず、ガラス粉末の原料である、Li、アルカリ土類金属、およびSiの金属酸化物よりなる混合粉末を1000℃の温度にて仮焼した後、予備粉砕し、粉砕処理用のガラス粉末を用意した。
【0045】
次に、この予備粉砕した仮焼粉体をボールミル中に入れ、さらに、この仮焼粉体と等量のイソプロピルアルコール(以下IPA)を加えて、直径2mmのジルコニアボールを用いて粗粉砕を行った。
【0046】
次に、この粗粉砕したガラス粉末を含むスラリーを別のミルに移し変えて、今度は直径1mmのジルコニアボールにより微粉砕を行った。
【0047】
(誘電体粉末)
次に、比表面積が3.2m2/gであるBaTiO3原料粉末を用い、BaTiO3100質量部に対して、酸化マグネシウム(MgO)を0.8質量部、炭酸マンガン(MnCO3)を0.4質量部、酸化イットリウム(Y2O3)を0.8質量部の割合で混合して誘電体粉末を調製した。誘電体粉末のメジアン径は0.7μmとした。
【0048】
尚、ガラス粉末のメジアン径D2は粉砕時間を変更することにより調整した。
【0049】
次に、微粉砕したガラス粉末を誘電体粉末100質量部に対して表1に示す割合になるように秤量し、さらに公知の分散剤、分散媒とともに直径が10mmのZrO2ボールを用いたボールミルにて混合し原料スラリーを調製した。
【0050】
(誘電体グリーンシート成形)
次に、この原料スラリーに有機バインダを加えて成形用スリップを調製した後、ドクターブレード法により厚さ3μmの誘電体グリーンシートを成形した。
【0051】
(内部電極パターン)
次に、この誘電体グリーンシート上に、Ni粉末、エチルセルロースおよびテルピネオールを含む内部電極ペーストをもちいてスクリーン印刷により内部電極パターンを形成した。その際、電子部品本体成形体1個あたりの内部電極パターンの有効面積は約0.6mm2とした。
【0052】
次に、内部電極ペーストを印刷した誘電体グリーンシートを100枚積層し、その上下面に、内部電極ペーストを印刷していない誘電体グリーンシートをそれぞれ20枚積層し、ホットプレスして一体化し、所定寸法に切断して電子部品本体成形体を作製した。
【0053】
そして、この電子部品本体成形体を大気中で400℃にて脱バインダ処理を行い、その後1285℃(酸素分圧10−11atm)で2時間焼成し、続いて大気雰囲気中1000℃で再酸化処理をして電子部品本体を作製した。このようにして作製した電子部品本体の寸法は1.6×0.8×0.8mm3であった。また、誘電体層厚みは2.2μmであった。
【0054】
次に、焼成した電子部品本体をバレル研磨した後、その両端部にCu粉末を含んだ外部電極ペーストを塗布し、850℃、窒素中で焼き付けを行い外部電極を形成した。さらにこの外部電極上に順にNiメッキ層、Snメッキ層を施した。
【0055】
(評価)
誘電体粉末およびガラス粉末のメジアン径およびガラス粉末の粒度分布はレーザー式粒度測定器を用いて測定した。
【0056】
ボイドの最大径と真円度および占有率は光学式測定顕微鏡を用いて測定した。
【0057】
作製した積層セラミックコンデンサは、各100個について焼成後の静電容量(C)と絶縁抵抗(R)を測定した。測定は、基準温度25℃で行い、静電容量は、周波数1.0kHz、入力信号レベル0.5Vrmsの条件で測定し、また、測定の際ショートした積層セラミックコンデンサの個数よりショート率を算出した。
【0058】
また、絶縁抵抗(R)は、直流電圧10Vを1分間印加して測定した。
【0059】
高温負荷試験は、試料数100個について、温度85℃、電圧は9.5Vの条件で1000時間行い、ショートした試料数を不良率として評価した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から明らかなように、ガラス粉末と誘電体粉末のメジアン径比を0.6〜0.8、ガラス粉末の粒度分布を16%以下とし、ボイドの最大径を2μm以下でかつボイドの真円度を1μm以下とした試料No.2〜5、7〜11では、静電容量が4.68μF以上、絶縁抵抗が300MΩ以上、ショート率が7%以下で、高温負荷試験後の不良率が2%以下であった。特に、メジアン径比を0.65〜0.7、ガラス粉末の粒度分布を15.3%以下とし、ガラス粉末を1〜2質量部添加した試料No.3、4、8および9では、高温負荷試験での不良率が0%であった。
【0062】
一方、メジアン径比を0.89、ガラス粉末の粒度分布を18.2%とした試料No.1、およびガラス粉末の粒度分布を15.8%としてもメジアン径比を0.5とした試料No.6では、焼成後でのショート率が10%以上、高温負荷試験後の不良率が5%以上であった。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明では、誘電体粉末のメジアン径をD1、ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足するように調整することにより、誘電体層中に存在するボイドの最大径を2μm以下でかつ真円度を1μm以下にできることから薄層化された誘電体層をボイドが厚み方向に貫通することがなく、このため、焼成後や高温負荷試験後においても絶縁抵抗の低下やショートを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子部品の概略断面図である。
【図2】図1の誘電体層を拡大して示す模式図である。
【符号の説明】
5 誘電体層
7 内部電極層
21 結晶
25 粒界相
27 ボイド
Claims (7)
- 誘電体層と内部電極層とを交互に積層してなる積層型電子部品であって、前記誘電体層中に存在するボイドの最大径が2μm以下でかつ真円度が1μm以下であることを特徴とする積層型電子部品。
- 誘電体層断面におけるボイドの占有率が2%以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
- 誘電体層の厚みが3μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型電子部品。
- 誘電体粉末とガラス粉末とを含有する誘電体グリーンシートと、内部電極パターンとを交互に積層して形成した電子部品本体成形体を焼成する積層型電子部品の製法であって、前記誘電体粉末のメジアン径をD1、前記ガラス粉末のメジアン径をD2としたとき、0.6≦D2/D1≦0.8の関係を満足することを特徴とする積層型電子部品の製法。
- ガラス粉末の粒度分布が、前記ガラス粉末のメジアン径をD2、標準偏差をσとしたときに、D2/σ≦16%の関係を満足することを特徴とする請求項4に記載の積層型電子部品の製法。
- 誘電体グリーンシートの厚みが4μm以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の積層型電子部品の製法。
- ガラス粉末は、誘電体粉末100質量部に対して、0.5〜3質量部添加されることを特徴とする請求項4乃至6のうちいずれか記載の積層型電子部品の製法。
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