JP2004063640A - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents

ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びヘテロ接合バイポーラトランジスタ Download PDF

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佐々木 幸男
Shinjiro Fujio
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Abstract

【課題】再結合中心となる準位の濃度が小さいエミッタ・ベース界面を有するHBT用エピタキシャルウェハを提供する。
【解決手段】GaAsベース層6とInGaP又はAlGaAsから成るエミッタ層5を備えたHBT用エピタキシャルウェハにおいて、ベース層6とエミッタ層5との間に、AlGaAs/GaAsより成るスーパーラティススペーサー層11を挿入し、電流増幅率βを向上させる。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)を形成する基体となる化合物半導体エピタキシャルウェハ、及びこれを用いたHBT素子、特にAlGaAs/GaAs系HBT及びInGaP/GaAs系HBTの電流増幅率βの改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
HBTは、低歪みの信号増幅が可能で、単一電源での使用ができる等の優れた特長を持つことから、デジタル通信、ミリ波システムなどのキーデバイスとして注目されている。
【0003】
従来、III −V族化合物半導体で構成されるHBTにおいてはエミッタ/ベース接合がAlGaAs/GaAsヘテロ接合により構成されるのが一般的である。
【0004】
しかし、AlGaAsとGaAsからなるHBTは高電流密度で動作している際、通電時間の増加に伴い素子内には多量の欠陥が発生し、例えば素子の電流利得が低下してゆき、ついには動作不能になってしまう問題がある。
【0005】
そこで、最近は、デバイス特性向上或いは信頼性向上の観点から、エミッタ層をAlGaAs層からInGaP層に置き換えて、InGaP/GaAsヘテロ接合によりHBTを構成する傾向にある。これは、活性な原子であるAlを含むAlGaAs層をエミッタ層として用いた場合には、AlGaAs層に深い準位に起因する多くの非発光性再結合中心が形成され、この非発光性再結合中心を介してHBTの劣化が進行するためであり、Alを含まないInGaP層をエミッタ層として用いることによって劣化の問題を解決しようとするものである。
【0006】
図4に従来のInGaP/GaAs系HBTの構造の一例を、測定回路の形で示す。このHBTは、図示してない半絶縁性基板上に、n−GaAsコレクタコンタクト層8、n−GaAsより成るコレクタ層7、及びp−GaAsより成るベース層6を順次形成し、ベース層6の上にベース電極2と、n−InGaPからなるエミッタ層5とを独立して形成し、エミッタ層5の上のn−InGaAsからなるノンアロイ層4と、エミッタ電極1を形成し、コレクタコンタクト層8の上にコレクタ電極3を形成したものである。
【0007】
測定回路は、このHBTのエミッタ電極1とベース電極2との間にエミッタ電極1がアース側になるように可変電源Vbを接続し、可変電源Vbの陽極とベース電極との間に電流計9を挿入し、可変電源Vbの陽極とコレクタ電極3との間に電流計10を挿入したものである。
【0008】
可変電源Vbによりエミッタ−ベース間の電圧を増加させれば、コレクタ電流Icはベース電流Ibで増幅される。この増幅率がHBTの基本的特性である電流増幅率βであり、コレクタ電流Icとベース電流Ibとの比(Ic/Ib)で表される。
【0009】
電流増幅率βはエピタキシャル層のヘテロ界面の状態に大きく依存すると言われている。そのためエミッタ、ベース界面には不純物が少ないことが要求される。通常、InGaPとGaAsとが格子整合するような条件でこれらをつくれば、界面に再結合中心となる準位ができにくいと言われている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エミッタとベースとの界面に再結合中心となる準位ができ、電流増幅率βが低下してしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、再結合中心となる準位の濃度が小さいエミッタ・ベース界面を有するHBT用エピタキシャルウェハ及びHBTを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成したものである。
【0013】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハは、GaAsベース層とInGaP又はAlGaAsから成るエミッタ層を備えたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用半導体エピタキシャルウェハにおいて、ベース層とエミッタ層との間に、スーパーラティススペーサー層を挿入したことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載のエピタキシャルウェハにおいて、上記スーパーラティススペーサー層がAlGaAs層とGaAs層を交互に繰り返し積層して成ることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のエピタキシャルウェハにおいて、上記スーパーラティススペーサー層を構成するエミッタ側のAlGaAs層におけるAl組成を、0.2〜0.4の範囲としたことを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、請求項1〜3記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とする。
【0017】
<発明の要点>
本発明の要点は、エミッタ層とベース層の間に、スーパーラティススペーサー層(超格子構造の半導体層)を挿入したことにあり、これにより、HBTのベース・エミッタ層界面に関し、再結合中心となる準位の濃度が低い界面を形成するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明のHBT用エピタキシャルウェハは、GaAsベース層とInGaP又はAlGaAsから成るエミッタ層を備えたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用半導体エピタキシャルウェハにおいて、ベース層とエミッタ層との間に、スーパーラティススペーサー層を挿入したものである。
【0020】
このように構成したことで、再結合中心となる準位の濃度が小さいエミッタ・ベース界面を有するHBT用エピタキシャルウェハを提供することができる。
【0021】
<実施例>
図1は本発明の半導体エピタキシャルウェハを用いたHBTのトランジスタ特性の測定回路である。
【0022】
このHBTは、半絶縁性基板の上にn−GaAsからなるコレクタコンタクト層8、n−GaAsからなるコレクタ層7及びp−GaAs層からなるベース層6を順次形成し、ベース層6の上にベース電極2と、AlGaAs/GaAsより成るスーパーラティススペーサー層11とを独立して形成し、InGaP層11の上にn−InGaPからなるエミッタ層5を形成し、エミッタ層5の上のn−InGaAsからなるノンアロイ層4と、エミッタ電極1を形成し、コレクタコンタクト層8の上にコレクタ電極3を形成したものである。
【0023】
すなわち、図4に示したHBTとの相違点は、GaAsからなるベース層6とInGaPからなるエミッタ層5との間に、AlGaAs/GaAsスーパーラティススペーサー層11を挿入した点である。
【0024】
スーパーラティススペーサー層11は、AlGaAs層とGaAs層を交互に繰り返し積層して構成する。ここではスーパーラティススペーサー層11を構成するAlGaAs層の厚さ及びGaAs層の厚さを、それぞれ0.3nmとし、繰り返し周期を5回とした。
【0025】
ここで試作例として、図3に示すように、AlGaAs/GaAsスーパーラティススペーサー層11におけるベース層表面側のAl組成を0.1とし、エミッタ側に近づくにつれ組成を均一に増加させた。このAl組成の増加分を0、0.025、0.05、0.075、0.1と変えた。つまり、AlGaAs/GaAsスーパーラティススペーサー層11におけるエミッタ層に最も近いAlGaAs層のAl組成を0.1(比較例1)、0.2(実施例1)、0.3(実施例2)、0.4(実施例3)、0.5(比較例2)と変えて、MOVPE法により成長したHBT用エピタキシャルウェハの電流増幅率βを測定した。
【0026】
測定回路は図4に示した測定回路と同様に、HBTのエミッタ電極1とベース電極2との間にエミッタ電極1がアース側になるように可変電源Vbを接続し、可変電源Vbの陽極とベース電極との間に電流計9を挿入し、可変電源Vbの陽極とコレクタ電極3との間に電流計10を挿入したものである。
【0027】
図2は図1に示したHBTのスーパーラティススペーサー層11におけるAl組成の変化と電流増幅率βとの関係を示す図であり、横軸がスーパーラティススペーサー層11におけるエミッタ層に最も近いAlGaAs層のAl組成を示し、縦軸が電流増幅率βを示す。 なお、縦軸の目盛は従来のHBTの電流増幅率βを100とした。
【0028】
スーパーラティススペーサー層11におけるAl組成が0.1の場合では、界面に再結合中心となる準位が多く存在するので電流増幅率βの向上は認められなかった。これに対して、Al組成が0.2〜0.4の矢印で示す範囲では、従来のHBTに比べ、電流増幅率βに10〜15%程度の向上が認められた。またAl組成が0.5では、逆に電流増幅率βが低下してしまった。
【0029】
従って挿入するスーパーラティススペーサー層11の構成として、エミッタ側のAlGaAs層におけるAl組成は、上記実施例で述べた如く、電流増幅率βが向上する0.2〜0.4の範囲が最適と考えられる。
【0030】
以上本実施例によれば、InGaPエミッタ層5とGaAsベース層6との間に、AlGaAs/GaAsスーパーラティススペーサー層11を挿入することにより、電流増幅率βを最大で15%向上させることができた。
【0031】
<変形例>
上記実施例においては、スーパーラティススペーサー層11をGaAsとAlGaAsの超格子構造としたが、構成する材料の組み合わせはAlGaAs/GaAsに問わず、バンドキャップの異なるエピタキシャル層の組み合わせであれば良い。
【0032】
また上記実施例では、スーパーラティススペーサー層11を構成するAlGaAs層の厚さ及びGaAs層の厚さを、それぞれ0.3mmとし、繰り返し周期を5回としたが、厚さ及び周期数は、スペーサーのトータル厚さが6nm以下であれば、いかなる組み合わせても良い。
【0033】
また必要に応じ、挿入するスーパーラティススペーサー層11の構成において、エミッタ側のAlGaAs層におけるAl組成を変化させず、均一にしても良い。
【0034】
更にまた、上記実施例ではInGaP/GaAs系HBTについて説明したが、本発明はInGaP−HBTに限定せず、例えばAlGaAs/GaAs系HBTの電流増幅率βの改善にも適用できるものである。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ベース・エミッタ層間にAlGaAs/GaAsより成るスーパーラティススペーサー層を挿入しているため、これによりHBTのベース・エミッタ層界面に関し、再結合中心となる準位の濃度が小さいエミッタ・ベース界面とすることができ、電流増幅率βを従来よりも向上させることができる。
【0036】
従って、電流増幅率βの高いHBT用エピタキシャルウェハ及びHBT素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のHBTの構造とトランジスタ特性測定回路を示す図である。
【図2】図1に示したHBTのAlGaAs/GaAsスーパーラティススペーサー層のAl組成と電流増幅率βとの関係を示す図である。
【図3】本発明におけるAlGaAs/GaAsスーパーラティススペーサー層のAl組成の説明に供する図である。
【図4】従来の半導体エピタキシャルウェハを用いたHBTのトランジスタ特性の測定回路を示す図である。
【符号の説明】
1 エミッタ電極
2 ベース電極
3 コレクタ電極
4 ノンアロイ層(n−InGaAs)
5 エミッタ層(n−AlGaAs)
6 ベース層(p−GaAs)
7 コレクタ層(n−GaAs)
8 コレクタコンタクト層(n−GaAs)
9 ベース電流
10 コレクタ電流
11 スーパーラティススペーサー層

Claims (4)

  1. GaAsベース層とInGaP又はAlGaAsから成るエミッタ層を備えたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用半導体エピタキシャルウェハにおいて、
    ベース層とエミッタ層との間に、スーパーラティススペーサー層を挿入した
    ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。
  2. 請求項1記載のエピタキシャルウェハにおいて、
    上記スーパーラティススペーサー層がAlGaAs層とGaAs層を交互に繰り返し積層して成ることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。
  3. 請求項1又は2記載のエピタキシャルウェハにおいて、
    上記スーパーラティススペーサー層を構成するエミッタ側のAlGaAs層におけるAl組成を、0.2〜0.4の範囲としたことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。
  4. 請求項1〜3記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
JP2002217990A 2002-07-26 2002-07-26 ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びヘテロ接合バイポーラトランジスタ Withdrawn JP2004063640A (ja)

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