JP2004063144A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Toru Yajima
矢嶋 亨
Masahiro Sekino
関野 正宏
Asako Sato
佐藤 麻子
Shusuke Inada
稲田 周介
Nao Shimura
志村 奈緒
Hiroshi Kitayama
北山 浩
Masayuki Oguchi
小口 雅之
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Abstract

【課題】実用的な低温放電特性を確保しつつ、高温貯蔵特性及び充放電サイクル寿命が改善された非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】正極3と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質物を含む負極4と、非水溶媒を含む非水電解質とを具備した非水電解質二次電池であり、前記非水溶媒は、環状カーボネートと、γ−ブチロラクトンと、環内に少なくとも一つの二重結合を有するスルトン化合物とを含むことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、移動体通信機、ノートブック型パソコン、パームトップ型パソコン、一体型ビデオカメラ、ポータブルCD(MD)プレーヤー、コードレス電話等の電子機器の小形化、軽量化を図る上で、これらの電子機器の電源として、特に小型で大容量の電池が求められている。
【0003】
これら電子機器の電源として普及している電池としては、アルカリマンガン電池のような一次電池や、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の二次電池が挙げられる。その中でも、正極にリチウム複合酸化物を用い、負極にリチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素質材料を用いた非水電解質二次電池が、小型軽量で単電池電圧が高く、高エネルギー密度を得られることから注目されている。
【0004】
負極においては、炭素質材料の代わりに、リチウムやリチウム合金を用いることも可能である。しかしながら、その場合には、二次電池の充放電操作を繰り返すことによって、リチウムの溶解・析出が繰り返され、やがて針状に成長したいわゆるデンドライトが形成され、そのデンドライトがセパレータを貫通することによる内部短絡を生じる恐れがある等の問題がある。一方、炭素質材料を含む負極は、リチウムあるいはリチウム合金を含む負極と比較して、デンドライトの形成を抑えることができる。
【0005】
ところで、近年は、上述したような正極と負極を含む電極群を収納するための容器として、アルミ等の金属箔と樹脂を貼り合わせたラミネートフィルムを袋状あるいはカップ状等に成型したものが用いられ、これにより、非水電解質二次電池の更なる軽量化と小型化が可能となった。
【0006】
このラミネートフィルムからなる容器を用いた非水電解質二次電池では、用いられる非水電解質が次の条件を満たすことが望ましい。まず第一に、容器の柔軟性が高いため、電池内部で分解反応等によりガスが発生すると、容器が大きく変形する恐れがあり、非水電解質としては、充電状態、即ち正極の電位が高い状態でも電気化学的な分解反応が起こらないものである必要がある。第二に、ラミネートフィルムからなる容器を用いた場合、遮断弁や安全弁等の機構を設けることが困難であるため、非水電解質としては、過充電等の異常な使用状況においても発熱反応を起こしにくいことが望まれる。
【0007】
これらの二つの条件を満たす非水電解質として、溶媒として、分解によるガス発生反応を起こしにくく、また過充電等の状況においても発熱反応も起こしにくいγ−ブチロラクトン(GBL)に、高い伝導性を有し沸点も高いエチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネートを混合したものを用い、溶質としては発熱反応を起こしにくい四フッ化ほう酸リチウム(LiBF)を用いることが検討されている。例えば、特開平11−31525号公開公報には、正極にリチウム遷移金属酸化物、負極に黒鉛系材料を用い、電解液がリチウム塩を溶解した有機電解液であるリチウム二次電池であって、有機電解液の溶媒が、γ−ブチロラクトンを主成分とし、副成分として少なくともエチレンカーボネートを含む組成であるものが開示されている。
【0008】
しかしながら、炭素質材料を含む負極を用いる際、GBLを含む非水電解質を用いると、炭素質材料に吸蔵されたLiとGBLが反応し、結果として充電された電気量よりも放電される電気量の方が小さくなるという問題点を生じる。また、充電と放電を繰り返すいわゆる充放電サイクルでは、ECが負極の炭素質材料上で分解反応を起こし、分解生成物による充放電反応の阻害や、炭素質材料の変質などをもたらす。この現象は、特に炭素質材料として高結晶化された黒鉛等の物質を用いた場合に顕著である。これらの結果、充放電サイクルにおいて、放電電気量が次第に減少していくという現象が生じ、充放電サイクル寿命が短くなる。
【0009】
さらに、例えば電池を使用していない状態で放置しておくと、負極の炭素質材料に吸蔵されたLiがGBLと反応して炭素質材料中に吸蔵されたLi量が減少し、負極の電位が上昇して、負極の集電体(例えば、銅箔)が溶解し回復不可能となる現象も起こる。このようなLiとGBLとの反応は、高い温度においてより速く進行するため、高温環境下での方が放電電気量の減少も顕著である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、実用的な低温放電特性を確保しつつ、高温貯蔵特性及び充放電サイクル寿命が改善された非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る非水電解質二次電池は、正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質物を含む負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを具備した非水電解質二次電池であり、
前記非水溶媒は、環状カーボネートと、γ−ブチロラクトン(GBL)と、環内に少なくとも一つの二重結合を有するスルトン化合物とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る非水電解質二次電池は、容器と、前記容器内に収納され、正極及び負極を含む電極群と、前記電極群に保持され、非水溶媒を含む非水電解質とを具備する。
【0013】
前記非水溶媒は、環状カーボネートと、γ−ブチロラクトン(GBL)と、環内に少なくとも一つの二重結合を有するスルトン化合物とを含む。
【0014】
前記電極群、正極、負極、セパレータ、非水電解質及び容器について説明する。
【0015】
1)電極群
この電極群は、例えば、(i)正極及び負極をその間にセパレータを介在させて偏平形状または渦巻き状に捲回するか、(ii)正極及び負極をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回した後、径方向に圧縮するか、(iii)正極及び負極をその間にセパレータを介在させて1回以上折り曲げるか、あるいは(iv)正極と負極とをその間にセパレータを介在させながら積層する方法により作製される。
【0016】
電極群には、プレスを施さなくても良いが、正極、負極及びセパレータの一体化強度を高めるためにプレスを施しても良い。また、プレス時に加熱を施すことも可能である。
【0017】
電極群には、正極、負極及びセパレータの一体化強度を高めるために、接着性高分子を含有させることができる。前記接着性を有する高分子は、非水電解液を保持した状態で高い接着性を維持できるものであることが望ましい。さらに、かかる高分子は、リチウムイオン伝導性が高いとなお好ましい。具体的には、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0018】
2)正極
この正極は、集電体と、集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質を含む正極層とを含む。
【0019】
前記正極層は、正極活物質、結着剤及び導電剤を含む。
【0020】
前記正極活物質としては、種々の酸化物、例えば二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウム含有鉄酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。中でも、リチウム含有コバルト酸化物(例えば、LiCoO2 )、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えば、LiNi0.8 Co0.2 2 )、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn2 4 、LiMnO2 )を用いると、高電圧が得られるために好ましい。なお、正極活物質としては、1種類の酸化物を単独で使用しても、あるいは2種類以上の酸化物を混合して使用しても良い。
【0021】
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0022】
前記結着剤は、活物質を集電体に保持させ、かつ活物質同士をつなぐ機能を有する。前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエーテルサルフォン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
【0023】
前記正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0024】
前記集電体としては、多孔質構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、アルミニウム、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。
【0025】
前記正極は、例えば、正極活物質に導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を集電体に塗布、乾燥して薄板状にすることにより作製される。
【0026】
3)負極
前記負極は、集電体と、集電体の片面もしくは両面に担持される負極層とを含む。
【0027】
前記負極層は、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物及び結着剤を含む。
【0028】
前記炭素質物としては、例えば、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、熱分解気相炭素質物、樹脂焼成体などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料; 熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ系炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体など(特に、メソフェーズピッチ系炭素繊維が容量や充放電サイクル特性が高くなり好ましい)に500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料;等を挙げることができる。中でも、(002)面の面間隔d002が0.34nm以下である黒鉛結晶を有する黒鉛質材料を用いるのが好ましい。このような黒鉛質材料を炭素質物として含む負極を備えた非水電解質二次電池は、電池容量および大電流放電特性を大幅に向上することができる。前記面間隔d002 は、0.337nm以下であることが更に好ましい。
【0029】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0030】
前記炭素質物及び前記結着剤の配合割合は、炭素質物90〜98重量%、結着剤2〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
前記集電体としては、多孔質構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。
【0032】
前記負極は、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物と結着剤とを溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後、所望の圧力で1回プレスもしくは2〜5回多段階プレスすることにより作製される。
【0033】
4)セパレータ
このセパレータとしては、微多孔性の膜、織布、不織布、これらのうち同一材または異種材の積層物等を用いることができる。セパレータを形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合ポリマー、エチレン−ブテン共重合ポリマー等を挙げることができる。セパレータの形成材料としては、前述した種類の中から選ばれる1種類または2種類以上を用いることができる。
【0034】
前記セパレータの厚さは、30μm以下にすることが好ましく、さらに好ましい範囲は25μm以下である。また、厚さの下限値は5μmにすることが好ましく、さらに好ましい下限値は8μmである。
【0035】
前記セパレータは、120℃、1時間での熱収縮率を20%以下であることが好ましい。前記熱収縮率は、15%以下にすることがより好ましい。
【0036】
前記セパレータは、多孔度が30〜60%の範囲であることが好ましい。多孔度のより好ましい範囲は、35〜50%である。
【0037】
前記セパレータは、空気透過率が600秒/100cm3 以下であることが好ましい。空気透過率は、100cmの空気がセパレータを透過するのに要した時間(秒)を意味する。空気透過率の上限値は500秒/100cm3 にすることがより好ましい。また、空気透過率の下限値は50秒/100cm3 にすることが好ましく、さらに好ましい下限値は80秒/100cm3 である。
【0038】
セパレータの幅は、正極と負極の幅に比べて広くすることが望ましい。このような構成にすることにより、正極と負極がセパレータを介さずに直接接触するのを防ぐことができる。
【0039】
5)非水電解質
前記非水電解質には、実質的に液状またはゲル状の形態を有するものを使用することができる。ゲル状非水電解質は、何らかの外力により容器が破損した場合に、非水電解質が外部へ漏洩する恐れを小さくすることができる。一方、液状非水電解質は、ゲル状非水電解質に比べてイオン伝導度を高くすることができるため、非水電解質二次電池を大電流で放電した際の容量と、低温で放電したときの容量を向上することができる。
【0040】
前記非水電解質は、例えば、以下の(I)〜(IV)に説明する方法で調製される。
【0041】
(I)前述した非水溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解させることにより非水電解質を得る(液状非水電解質)。
【0042】
(II)有機高分子化合物とリチウム塩を溶媒に溶解させ、ポリマー溶液を調製する。次いで、このポリマー溶液を電極(正極及び負極のうちの少なくとも一方)か、セパレータか、または電極とセパレータの両方に塗布または含浸させ、溶媒を蒸発させてキャストする。次いで、正極と負極をその間にセパレータを介在させて電極群を得る。これを容器に収容し、非水電解液を注液してキャストしたポリマー膜に保持させることにより、ゲル状非水電解質を備える二次電池を得る。
【0043】
(III)前述した(II)の方法において、有機高分子化合物の代わりに、架橋ポリマーを用いても良い。例えば、(a)架橋性の官能基を有する化合物とリチウム塩と溶媒とからプレポリマー溶液を調製し、これを電極(正極及び負極のうちの少なくとも一方)か、セパレータか、または電極とセパレータの両方に塗布または含浸させた後、架橋性の官能基を有する化合物を架橋させる。次いで、正極と負極の間にセパレータを介在させて電極群を得る。架橋工程は、溶媒を揮発させる前に行っても後に行ってもよく、加熱により架橋させる場合などは溶媒を揮発させつつ架橋させてもよい。あるいは、(b)プレポリマー溶液を電極(正極及び負極のうちの少なくとも一方)か、セパレータか、または電極とセパレータの両方に塗布または含浸させた後、正極と負極をその間にセパレータを介在させて電極群を得る。その後、架橋工程を行うことも可能である。
【0044】
架橋させる方法は特に限定されないが、装置の簡便性およびコスト面から考えて、加熱重合あるいは紫外線による光重合が好ましい。なお、加熱あるいは紫外線照射により架橋を行う場合には、重合方法に適した重合開始剤をプレポリマー溶液に添加しておく必要がある。また重合開始剤は、1種類に限られるものではなく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
(IV)有機高分子化合物とリチウム塩とを直接非水電解液に溶解させ、ゲル状電解質を得る。このゲル状電解質を電極(正極及び負極のうちの少なくとも一方)か、セパレータか、または電極とセパレータの両方に塗布または含浸させ、ひきつづき、正極と負極の間にセパレータを介在させて電極群を得て、ゲル状非水電解質を備える二次電池を得る。
【0046】
(V)前述した(IV)の方法において、有機高分子化合物の代わりに架橋ポリマーを用いることができる。例えば、架橋性の官能基を有する化合物とリチウム塩と電解液とからプレゲル溶液を調製し、これを電極(正極及び負極のうちの少なくとも一方)か、セパレータか、または電極とセパレータの両方に塗布または含浸させたのち、架橋性の官能基を有する化合物を架橋させる。この架橋工程は、電極群を作製する前に行っても作製後に行ってもよい。
【0047】
架橋させる方法は特に限定されないが、装置の簡便性およびコスト面から考えて、加熱重合あるいは紫外線による光重合が好ましい。なお、加熱あるいは紫外線照射により架橋を行う場合には、重合方法に適した重合開始剤をプレゲル溶液に添加しておく必要がある。また重合開始剤は、1種類に限られるものではなく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
(VI)正極と負極の間にセパレータを介在させた電極群を、容器に収容する。次いで、前述した(IV)のゲル状非水電解質を電極群に含浸させた後、容器を密封し、ゲル状非水電解質を備える二次電池を得る。あるいは、(V)のプレゲル溶液を電極群に含浸させた後、容器を封口する前か後にプレゲル溶液を架橋させ、ゲル状非水電解質を備える二次電池を得る。
【0049】
前述した(II)と(IV)における有機高分子化合物には、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドまたはその誘導体を骨格とするポリマー; フッ化ビニリデン、6フッ化プロピレン、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、またはその共重合体;ポリアクリロニトリルまたはポリアクリロニトリルを主成分とし、アクリル酸メチル、ビニルピロリドン、酢酸ビニルなどとの共重合体を骨格とするポリアクリレート系ポリマー; ポリエーテル系ポリマー; ポリカーボネート系ポリマー; ポリアクリロニトリル系ポリマー; ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはそれらの誘導体を骨格とし、メタクリル酸エチル、スチレン、酢酸ビニルなどとの共重合体であるポリエステル系ポリマー; フッ素樹脂; ポリオレフィン系樹脂; ポリエーテル系樹脂; およびこれらの2種以上からなる共重合体;等が挙げられる。また、これらの高分子の前駆体となるモノマーやオリゴマーからプレポリマー溶液(III)、プレゲル溶液(V)を作製できる。
【0050】
次いで、液状非水電解質およびゲル状非水電解質に含まれる非水溶媒および電解質について説明する。
【0051】
非水溶媒を構成する各種溶媒について説明する。
【0052】
a.γ−ブチロラクトン(GBL)
GBLは、充電状態、すなわち、正極の電位が高い状態での正極との反応性が低いため、充電状態における非水溶媒の分解反応と発熱反応を抑えることができる。GBLの比率(y)は、40〜80体積%の範囲内にすることが望ましい。これは次のような理由によるものである。GBLの比率(y)を40体積%未満にすると、充電時と高温環境下でのガス発生量が多くなる恐れがある。ガス発生量の増大は、初充放電効率の低下を招く。また、ガス発生量が多いと、非水電解質二次電池の軽量化あるいは薄型化を図るために、容器としてラミネートフィルム製容器を用いるか、あるいは容器の肉厚を薄くした際に、容器が膨れて変形しやすくなる。一方、GBLの比率(y)を80体積%よりも多くすると、特に高温時における負極表面とGBLとの反応性が高くなるため、放電状態で高温環境下に貯蔵した後の容量回復率が低くなるか、あるいは充放電サイクル寿命が短くなる可能性がある。
【0053】
GBLのより好ましい比率(y)は、50〜80体積%の範囲内で、さらに好ましい比率(y)は、55〜75体積%の範囲内である。
【0054】
b.環状カーボネート
環状カーボネートには、エチレンカーボネート(EC)が含まれていることが望ましい。ECは、GBLの利点、すなわち、凝固点が低くてリチウムイオン伝導性が高く、かつ安全性に優れるという利点を損なうことなく、炭素質材料中に吸蔵されたリチウムイオンとGBLとの反応を抑えることができる。
【0055】
ECの非水溶媒全体積に対する比率(x)は、20〜50体積%の範囲内にすることが望ましい。これは次のような理由によるものである。ECの非水溶媒全体積に対する比率(x)を20体積%未満にすると、特に高温環境下での負極とGBLとの反応を抑えられなくなる恐れがあるため、放電状態で高温環境下に貯蔵した後の容量回復率が低くなる可能性がある。また、ECの非水溶媒全体積に対する比率(x)を20体積%未満にすると、充放電サイクル寿命が短くなる恐れがある。一方、ECは凝固点が高いため、ECの比率(x)が50体積%を超えると、低温放電特性が著しく低下する恐れがある。また、ECの比率(x)が50体積%を超えると、非水電解液の粘度が高くなってイオン伝導度が低下するため、大電流放電特性が低下する恐れがある。
【0056】
ECの比率(x)のより好ましい範囲は25〜50体積%の範囲内で、さらに好ましい比率(x)は、25〜45体積%の範囲内である。
【0057】
c.環内に少なくとも一つの二重結合を有するスルトン化合物
ここで、環内に少なくとも1つの二重結合を有するスルトン化合物としては、下記化1に示す一般式で表わされるスルトン化合物Aか、もしくはスルトン化合物Aの少なくとも1つのHが炭化水素基で置換されたスルトン化合物Bを用いることができる。なお、本願では、スルトン化合物Aまたはスルトン化合物Bを単独で用いても、スルトン化合物Aとスルトン化合物Bの双方を使用しても良い。
【0058】
【化1】
Figure 2004063144
【0059】
化1において、Cは直鎖状の炭化水素基で、mとnは、2m>nを満たす2以上の整数である。
【0060】
スルトン化合物は、負極との還元反応によって負極表面に強固な保護被膜を形成することができる。特に、環内に二重結合を有するスルトン化合物は、負極との還元反応の際に二重結合が開いて重合反応が起こり、緻密な保護皮膜を形成することができる。この保護被膜は、リチウムイオン透過性が高いものの、GBL分子の透過性については低いため、負極の炭素質材料に吸蔵されたリチウムイオン(Li)とGBLとの反応を抑制することができる。同時に、この保護被膜は、ECの分解反応を抑制することができる。従って、充放電サイクルの進行に伴う放電電気量の減少を抑制することができるため、充放電サイクル寿命を向上することができる。同時に、放電状態で高温環境下に保管した際に容量回復不能に陥るのを回避することができ、保管後、再充電によって高容量を得ることができる。
【0061】
スルトン化合物の中でも好ましいのは、スルトン化合物Aのうちm=3、n=4である化合物、即ち1,3−プロペンスルトン(PRS)、または、m=4、n=6である化合物、即ち1,4−ブチレンスルトン(BTS)である。これら化合物に由来する保護被膜は、LiとGBLとの反応並びにECの分解反応を抑制する効果が最も高いからである。スルトン化合物としては、1,3−プロペンスルトン(PRS)あるいは1,4−ブチレンスルトン(BTS)を単独で用いても、これらPRSとBTSを併用しても良い。
【0062】
スルトン化合物の比率(z)は、10体積%以下にすることが望ましい。これは、スルトン化合物の比率(z)が10%体積を超えると、上記の保護被膜が極めて厚くなってリチウムイオン透過性が低下し、常温よりも低い温度における放電容量が低下するからである。更に、例えば−20℃等の低い温度でも放電容量を高く保つためには、スルトン化合物が含まれる割合(z)は4%体積以下であることが望ましい。また、保護皮膜の形成量を十分に確保するためには、スルトン化合物の比率(z)を最低でも0.01体積%確保することが望ましい。更に、スルトン化合物の比率(z)が0.1体積%以上あれば、例えば65℃等の更に高い温度でも保護皮膜による保護機能を充分に示すことができる。
【0063】
d.プロピレンカーボネート(PC)
環状カーボネートには、ECと併せて、PCが含まれていることが望ましい。
【0064】
PCを非水溶媒全体積に対する比率(v)が20体積%以下で非水溶媒中に含有させると、負極表面に形成される保護皮膜の緻密性を高めることができるため、LiとGBLとの反応並びにECの分解反応をさらに抑えることができる。よって、高温貯蔵特性と充放電サイクル特性をさらに向上することができる。しかしながら、PCの比率(v)が20体積%を超えると、初充電時において負極とPCの反応が支配的となり、ガス発生およびそれに伴う電池容器の膨れを抑制することが難しくなる。なお、PCを添加したことによる効果を十分に得るためには、非水溶媒全体積に対するPCの比率(v)の下限値を2体積%にすることが望ましい。
【0065】
PCは、初充放電工程中に前記非水溶媒から前記負極の表面へ移動し、前記負極の表面に付着する。従って、初充放電工程が施された二次電池に存在する非水溶媒においては、非水溶媒全体に対するPCの割合が二次電池組立て前より減少する。その減少率は、PCの添加量が少なくなる程、大きくなる。
【0066】
e.副成分
非水溶媒中には、EC、GBL、スルトン化合物およびPC以外の他の溶媒を含有させることができる。
【0067】
副成分としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フェニルエチレンカーボネート(phEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−バレロラクトン(VL)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、2―メチルフラン(2Me−F)、フラン(F)、チオフェン(TIOP)、カテコールカーボネート(CATC)、エチレンサルファイト(ES)、12−クラウン−4(Crown)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(Ether)等を挙げることができる。副成分の種類は、1種類もしくは2種類以上にすることができる。
【0068】
中でも、ビニレンカーボネートを含む副成分は、負極表面の保護皮膜の緻密性を高めることができるため、少量のスルトン化合物で高温貯蔵特性と充放電サイクル寿命を改善することが可能になる。よって、低温放電特性への悪影響をさらに少なくしつつ、高温貯蔵特性と充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0069】
非水溶媒中の副成分の体積比率(w)は、10体積%以下の範囲内にすることが望ましい。これは、副成分の体積比率(w)を10体積%よりも多くすると、負極表面の保護皮膜のリチウムイオン透過性が低下して低温放電特性が大幅に損なわれる可能性があるからである。副成分の体積比率(w)のさらに好ましい範囲は、0.01〜5体積%である。
【0070】
前記非水溶媒に溶解される電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6 )、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3 SO2 2 ]、LiN(CSOなどのリチウム塩を挙げることができる。使用する電解質の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。
【0071】
中でも、LiPFあるいはLiBFを含むものが好ましい。また、LiN(CFSOおよびLiN(CSOのうち少なくとも一方からなるイミド塩と、LiBF及びLiPFのうち少なくともいずれか一方からなる塩とを含有する混合塩Aか、あるいはLiBF及びLiPFを含有する混合塩Bを用いると、高温でのサイクル寿命をより向上することができる。また、電解質の熱安定性が向上されるため、高温環境下で貯蔵時の自己放電による電圧低下を抑えることができる。
【0072】
前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.5モル/Lとすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、1〜2.5モル/Lである。
【0073】
前記液状非水電解質には、セパレータとの濡れ性を良くするために、トリオクチルフォスフェート(TOP)のような界面活性剤を含有させることが望ましい。界面活性剤の添加量は、3%以下が好ましく、さらには0.1〜1%の範囲内にすることが好ましい。
【0074】
前記液状非水電解質の量は、電池単位容量100mAh当たり0.2〜0.6gにすることが好ましい。液状非水電解質量のより好ましい範囲は、0.25〜0.55g/100mAhである。
【0075】
6)容器(収納容器)
容器の形状は、例えば、有底円筒形、有底矩形筒型、袋状、カップ状等にすることができる。
【0076】
この容器は、例えば、樹脂層を含むシート、金属板、金属フィルム等から形成することができる。
【0077】
前記シートに含まれる樹脂層は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアミド等から形成することができる。前記シートとしては、金属層と、前記金属層の両面に配置された保護層とが一体化されたシートを用いることが望ましい。前記金属層は、水分を遮断する役割と容器の形状保持を担う。前記金属層は、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅、ニッケル等を挙げることができる。中でも、軽量で、水分を遮断する機能が高いアルミニウムが好ましい。前記金属層は、1種類の金属から形成しても良いが、2種類以上の金属層を一体化させたものから形成しても良い。前記2つの保護層のうち、外部と接する保護層は前記金属層の損傷を防止する役割をなす。この外部保護層は、1種類の樹脂層、もしくは2種類以上の樹脂層から形成される。一方、内部保護層は、前記金属層が非水電解質により腐食されるのを防止する役割を担う。この内部保護層は、1種類の樹脂層、もしくは2種類以上の樹脂層から形成される。また、かかる内部保護層の表面に、容器をヒートシールにより封止するための熱可塑性樹脂を配することができる。
【0078】
前記金属板及び前記金属フィルムは、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムから形成することができる。
【0079】
容器の厚さ(容器の壁の厚さ)は、0.3mm以下にすることが望ましい。これは、厚さが0.3mmより厚いと、高い重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を得られ難くなるからである。容器の厚さの好ましい範囲は、0.25mm以下で、更に好ましい範囲は0.15mm以下で、最も好ましい範囲は0.12mm以下である。また、厚さが0.05mmより薄いと、変形や破損し易くなることから、容器の厚さの下限値は0.05mmにすることが好ましい。
【0080】
容器の厚さは、以下に説明する方法で測定される。すなわち、容器の封止部を除く領域において、互いに1cm以上離れて存在する3点を任意に選択し、各点の厚さを測定し、平均値を算出し、この値を容器の厚さとする。なお、前記容器の表面に異物(例えば、樹脂)が付着している場合、この異物を除去してから厚さの測定を行う。例えば、前記容器の表面にPVdFが付着している場合、前記容器の表面をジメチルホルムアミド溶液で拭き取ることによりPVdFを除去した後、厚さの測定を行う。
【0081】
本発明に係る非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池と円筒型リチウムイオン二次電池を図1〜図3を参照して詳細に説明する。
【0082】
図1は、本発明に係わる非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池を示す斜視図、図2は図1の薄型リチウムイオン二次電池を短辺方向に沿って切断した部分断面図で、図3は本発明に係る非水電解質二次電池の一例である円筒形非水電解質二次電池を示す部分断面図である。
【0083】
まず、薄型リチウムイオン二次電池を図1,2を参照して説明する。
【0084】
図1に示すように、矩形のカップ状をなす容器本体1内には、電極群2が収納されている。電極群2は、正極3と、負極4と、正極3と負極4の間に配置されるセパレータ5を含む積層物が偏平形状に捲回された構造を有する。非水電解質は、電極群2に保持されている。容器本体1の縁の一部は幅広になっており、蓋板6として機能する。容器本体1と蓋板6は、それぞれ、ラミネートフィルムから構成される。このラミネートフィルムは、外部保護層7と、熱可塑性樹脂を含有する内部保護層8と、外部保護層7と内部保護層8の間に配置される金属層9とを含む。容器本体1には蓋体6が内部保護層8の熱可塑性樹脂を用いてヒートシールによって固定され、それにより容器内に電極群2が密封される。正極3には正極タブ10が接続され、負極4には負極タブ11が接続され、それぞれ容器の外部に引き出されて、正極端子及び負極端子の役割を果たす。
【0085】
次いで、円筒形リチウムイオン二次電池を図3を参照して説明する。
【0086】
ステンレスからなる有底円筒状の容器21は、底部に絶縁体22が配置されている。電極群23は、前記容器21に収納されている。前記電極群23は、正極24、セパレータ25、負極26及びセパレータ25を積層した帯状物を前記セパレータ25が外側に位置するように渦巻き状に捲回した構造になっている。
【0087】
前記容器21内には、非水電解液が収容されている。中央部が開口された絶縁紙27は、前記容器21内の前記電極群23の上方に配置されている。絶縁封口板28は、前記容器21の上部開口部に配置され、かつ前記上部開口部付近を内側にかしめ加工することにより前記封口板28は前記容器21に固定されている。正極端子29は、前記絶縁封口板28の中央に嵌合されている。正極リード30の一端は、前記正極24に、他端は前記正極端子29にそれぞれ接続されている。前記負極26は、図示しない負極リードを介して負極端子である前記容器21に接続されている。
【0088】
以上説明した本発明に係る非水電解質二次電池は、正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質物を含む負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを具備した非水電解質二次電池であり、
前記非水溶媒は、環状カーボネートと、γ−ブチロラクトン(GBL)と、環内に少なくとも一つの二重結合を有するスルトン化合物とを含むことを特徴とするものである。
【0089】
このような非水溶媒によれば、負極の炭素質物に吸蔵されているリチウムイオンとGBLとの反応を抑制することができるため、非水電解質二次電池の充放電サイクル寿命と、放電状態で高温環境下に保管した後の再充電時の容量回復率(高温貯蔵特性)を向上することができる。
【0090】
また、かかる非水溶媒により負極には、GBLとの反応性を低下させる緻密な保護被膜が形成されるが、この保護被膜は、リチウムイオン透過性が高いため、かかる非水電解質二次電池は実用的な低温放電特性を確保することができる。
【0091】
さらに、この非水溶媒は、高温条件下での貯蔵や、初充電の際に、正極と非水電解質が反応して非水電解質が酸化分解するのを抑制することができる。その結果、高温貯蔵時及び初充電時のガス発生量を少なくすることができるため、容器厚さを薄く(例えば、0.3mm以下)した際や、ラミネートフィルム製容器を使用した際にも容器が膨れるのを抑えることができる。また、初充電時のガス発生量が少ないことから、高い初充放電効率を得ることができる。
【0092】
本発明に係る非水電解質二次電池において、環状カーボネートにエチレンカーボネート(EC)が含まれ、非水溶媒全体積に対する環状カーボネート、γ−ブチロラクトン及び前記スルトン化合物の割合をそれぞれx(体積%)、y(体積%)、z(体積%)とした際に前記x、前記y及び前記zがそれぞれ20≦x≦50、40≦y≦80、0<z≦10を満たすことによって、低温放電特性の低下を最小限に抑えつつ、充放電サイクル寿命と高温貯蔵特性を向上することができる。このような非水溶媒にさらにビニレンカーボネート(VC)を含有させることによって、充放電サイクル寿命と高温貯蔵特性をさらに向上することができる。
【0093】
本発明に係る非水電解質二次電池において、環状カーボネートにエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)が含まれ、非水溶媒全体積に対する環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、スルトン化合物及びプロピレンカーボネートの割合をそれぞれx(体積%)、y(体積%)、z(体積%)、v(体積%)とした際に、前記x、前記y、前記z及び前記vがそれぞれ20≦x≦50、40≦y≦80、0<z≦10、0<v≦20を満たすことによって、充放電サイクル寿命と高温貯蔵特性をさらに向上することができる。このような非水溶媒にさらにビニレンカーボネート(VC)を含有させることによって、低温放電特性も改善することができる。
【0094】
【実施例】
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
【0095】
(実施例1)
<正極の作製>
まず、リチウムコバルト酸化物(LiCoO;但し、Xは0<X≦1である)粉末90重量%に、アセチレンブラック5重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%のジメチルフォルムアミド(DMF)溶液とを加えて混合し、スラリーを調製した。前記スラリーを厚さが15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより、正極層が集電体の両面に担持された構造の正極を作製した。なお、正極層の厚さは、片面当り60μmであった。
【0096】
<負極の作製>
炭素質材料として3000℃で熱処理したメソフェーズピッチ系炭素繊維(粉末X線回折により求められる(002)面の面間隔(d002 )が0.336nm)の粉末を95重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%のジメチルフォルムアミド(DMF)溶液とを混合し、スラリーを調製した。前記スラリーを厚さが12μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより、負極層が集電体に担持された構造の負極を作製した。なお、負極層の厚さは、片面当り55μmであった。
【0097】
なお、炭素質物の(002)面の面間隔d002は、粉末X線回折スペクトルから半値幅中点法によりそれぞれ求めた。この際、ローレンツ散乱等の散乱補正は、行わなかった。
【0098】
<セパレータ>
厚さが25μmの微多孔性ポリエチレン膜からなるセパレータを用意した。
【0099】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(GBL)および1,3−プロペンスルトン(PRS)を体積比率(EC:GBL:PRS)が33:66:1になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0100】
<電極群の作製>
前記正極の集電体に帯状アルミニウム箔(厚さ100μm)からなる正極リードを超音波溶接し、前記負極の集電体に帯状ニッケル箔(厚さ100μm)からなる負極リードを超音波溶接した後、前記正極及び前記負極をその間に前記セパレータを介して渦巻き状に捲回した後、偏平状に成形し、電極群を作製した。
【0101】
アルミニウム箔の両面をポリエチレンで覆った厚さ100μmのラミネートフィルムを、プレス機により矩形のカップ状に成形し、得られた容器内に前記電極群を収納した。
【0102】
次いで、容器内の電極群に80℃で真空乾燥を12時間施すことにより電極群及びラミネートフィルムに含まれる水分を除去した。
【0103】
容器内の電極群に前記液状非水電解質を電池容量1Ah当たりの量が4.8gとなるように注入し、ヒートシールにより封止した後、前述した図1、2に示す構造を有し、厚さが3.6mm、幅が35mm、高さが62mmで、公称容量が0.65Ahの薄型非水電解質二次電池を組み立てた。
【0104】
この非水電解質二次電池に対し、初充放電工程として以下の処置を施した。まず、室温で0.2Cで4.2Vまで定電流・定電圧充電を15時間行った。その後、室温で0.2Cで3.0Vまで放電し、非水電解質二次電池を製造した。
【0105】
ここで、1Cとは公称容量(Ah)を1時間で放電するために必要な電流値である。よって、0.2Cは、公称容量(Ah)を5時間で放電するために必要な電流値である。
【0106】
(実施例2−1、2−2、3、4)
非水溶媒中のPRS含有量(z)を下記表1に示すように変更すること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0107】
(実施例5)
PRSの代わりに、1,4−ブチレンスルトン(BTS)を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0108】
(実施例6〜7)
非水溶媒中のBTS含有量(z)を下記表1に示すように変更すること以外は、前述した実施例5と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0109】
(実施例8)
エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、1,3−プロペンスルトン(PRS)及び1,4−ブチレンスルトン(BTS)を体積比率(EC:GBL:PRS:BTS)が:33:66:0.5:0.5になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0110】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0111】
(実施例9)
非水溶媒中のPRSとBTSの体積比率を下記表1に示すように設定すること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0112】
(実施例10)
エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)及び1,3−プロペンスルトン(PRS)を体積比率(EC:PC:GBL:PRS)が29:12:58:1になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0113】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0114】
(実施例11)
エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、γ−ブチロラクトン(GBL)及び1,3−プロペンスルトン(PRS)を体積比率(EC:VC:GBL:PRS)が33:0.5:66:0.5になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0115】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0116】
(実施例12)
エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、γ−ブチロラクトン(GBL)及び1,4−ブチレンスルトン(BTS)を体積比率(EC:VC:GBL:BTS)が33:0.5:66:0.5になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0117】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0118】
(実施例13)
エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジエチルカーボネート(DEC)及び1,3−プロペンスルトン(PRS)を体積比率(EC:GBL:DEC:PRS)が32:63:4:1になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0119】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0120】
(実施例14)
エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジエチルカーボネート(DEC)及び1,4−ブチレンスルトン(BTS)を体積比率(EC:GBL:DEC:BTS)が32:63:4:1になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0121】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0122】
(実施例15)
実施例1で説明したのと同様な組成の非水溶媒に、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )と六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )をそれぞれの濃度が1.5モル/L(LiBF)、0.2モル/L(LiPF)になるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0123】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0124】
(実施例16)
実施例1で説明したのと同様な組成の非水溶媒に、LiBFとLiN(CSOをそれぞれの濃度が1.5モル/L(LiBF)、0.2モル/L{LiN(CSO}になるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0125】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0126】
(比較例1)
非水溶媒にスルトン化合物を添加しないこと以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0127】
(比較例2)
非水溶媒にスルトン化合物を添加しないこと以外は、前述した実施例10と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0128】
(比較例3)
γ−ブチロラクトン(GBL)及び1,3−プロペンスルトン(PRS)を体積比率(GBL:PRS)が99:1になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0129】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0130】
(比較例4)
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及び1,3−プロペンスルトン(PRS)を体積比率(EC:EMC:PRS)が33:66:1になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0131】
かかる液状非水電解質を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0132】
(比較例5)
負極として金属リチウムを用いること以外は、前述した比較例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0133】
(比較例6)
負極として金属リチウムを用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0134】
(比較例7)
PRSの代わりに、プロパンスルトン(S)を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0135】
得られた実施例1〜16および比較例1〜7の二次電池について、高温貯蔵特性、充放電サイクル特性および低温放電特性を下記に説明する条件で評価し、その結果を下記表1〜2に示す。
【0136】
(高温貯蔵特性)
各二次電池について、放電レート1C、放電終止電圧3.0Vの条件で放電させた後に、温度65℃の環境中に1ヶ月保管し、その後に充放電レート1C、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの充放電試験を行い、保管後の放電容量を測定した。保管前の放電容量を100%とした際の保管後の放電容量を、65℃貯蔵後容量維持率として下記表1,2に示す。
【0137】
(充放電サイクル特性)
各二次電池について、充放電レート1C、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの充放電試験を行い、温度20℃の環境中において充放電を100回繰り返した後の放電容量維持率(1回目の放電の容量を100%とする)を求め、その結果を下記表1,2に示す。
【0138】
(低温放電特性)
各二次電池について、温度−20℃の環境下で放電レート1C、放電終止電圧3.0Vの条件で放電させた場合の放電容量を測定し、室温において同条件で放電した場合の放電容量を100%とした際の低温放電容量を、−20℃放電容量維持率として下記表1,2に示す。
【0139】
【表1】
Figure 2004063144
【0140】
【表2】
Figure 2004063144
【0141】
表1および表2における65℃貯蔵後容量維持率の結果から、ECとGBLからなり、スルトン化合物が無添加の非水溶媒を用いる比較例1の二次電池は、放電状態で65℃で保管した後の放電容量が著しく低下し、例えばこの二次電池を電源として用いた携帯機器は、不使用のまま保管した後は使用不可能となるために不適当であることが明らかである。ECとGBLとPCからなり、スルトン化合物が無添加の非水溶媒を用いる比較例2の二次電池は、保管後の放電容量が比較例1より大きくなるものの、せいぜい保管前の40%程度で、PCを混合しただけでは放電容量の低下を抑制する効果が不充分であると言える。
【0142】
一方、エチレンカーボネートの体積比率xが20≦x≦50、γ−ブチロラクトンの体積比率yが40≦y≦80並びにスルトン化合物の体積比率zが0<z≦10である非水溶媒を用いる実施例1〜16の二次電池と、非水溶媒中のPRSの体積比率が16体積%である実施例2−2の二次電池は、保管後も高い放電容量が得られ、携帯機器の電源として用いるのにふさわしい。
【0143】
また、充放電サイクル特性評価の結果、実施例1〜16の二次電池と、実施例2−2の二次電池は、充放電を繰り返した後の放電容量が、繰り替えす前の放電容量に対して80%以上を保っており、スルトン化合物が無添加の比較例1、2の二次電池よりも、繰り返し充放電を行いながら使用する携帯機器の電源としてふさわしい。
【0144】
一方、非水溶媒中のスルトン化合物の体積比率(z)を0.001体積%に設定した実施例4の二次電池では、保管後の放電容量、及び充放電を繰り返した後の放電容量は、共に比較例1に比べると大きいが、実施例1〜3、5〜16に比べると小さく、実際に携帯機器の電源として用いるには実施例1〜3、5〜16のほうがより適当である。
【0145】
但し、低温放電特性評価の結果、非水溶媒中のスルトン化合物の体積比率(z)を16体積%に設定した実施例2−2の二次電池では、−20℃の低温で放電したときの放電容量が、常温で放電したときの放電容量の30%を下回っており、低温環境においても緊急時等に使用する可能性のある携帯機器の電源として用いるにはやや不適当である。
【0146】
一方、実施例1〜16(実施例2−2を除く)の二次電池は、−20℃での放電容量が、常温における放電容量の30%以上を保っており、携帯機器の電源として用いることができる。
【0147】
従って、(高温貯蔵特性)、(充放電サイクル特性)及び(低温放電特性)の結果より、実際に携帯機器の電源として用いることができるのは、実施例1〜16である。
【0148】
なお、温度65℃の環境中で1ヶ月保管した後の放電容量(高温貯蔵特性)と、温度20℃の環境中で充放電を100回繰り返した後の放電容量(充放電サイクル特性)は、実施例1,5よりも実施例10〜12の方が良好な成績を示し、一方、温度−20℃の環境中における放電容量(低温放電特性)は、実施例10よりも実施例1,5,11,12の方が良好な成績を示す。従って、例えば、低温環境下で用いられる可能性のある携帯電話の電源としては、実施例1または実施例5の非水電解質二次電池を用い、機器そのものの発熱等により高温環境が形成される可能性の大きいノートパソコンの電源としては、実施例10の非水電解質二次電池を用いるなど、溶媒を構成する化合物の種類、及びその混合比を適宜選択するのが良い。また、実施例11,12の二次電池は、低温環境下と高温環境下のいずれにおいても優れた放電特性を示し、双方の環境下で使用可能な二次電池であると言える。
【0149】
ところで、金属リチウムからなる負極を用いる比較例5,6の電池特性を比較することによって、金属リチウムからなる負極を用いる場合には、非水溶媒中にスルトン化合物を添加しても、65℃貯蔵後容量維持率と100サイクル後容量維持率に大幅な改善が認められないことがわかる。これは、金属リチウムからなる負極の方が、炭素質物を含む負極に比べて、GBLに対する反応性が著しく高いため、スルトン化合物由来の保護皮膜とEC添加では負極とGBLとの反応を十分に抑えることができないためであると推測される。
【0150】
さらに、比較例7のような、プロパンスルトンのように二重結合を持たないスルトン化合物によると、65℃貯蔵後容量維持率が2%と著しく低くかった。
【0151】
一方、EC、EMCおよびスルトン化合物を含む非水溶媒を備える比較例4の二次電池は、65℃貯蔵後容量維持率、100サイクル後容量維持率及び−20℃放電容量維持率に優れるものの、4.2Vに充電した状態で温度90℃の環境中に4時間放置してから電池厚さを測定して膨れ率{(温度90℃の環境中に放置する前後での電池の厚さの変化値)/(放置する前の電池の厚さ)×100}(%)を算出したところ、実施例1の二次電池の膨れ率が2%であるのに対し、比較例4の二次電池の膨れ率は80%と大きかった。
【0152】
(PRSとVCの検出方法)
また、実施例11の二次電池について、前記初充放電工程後、5時間以上回路を開放して十分に電位を落ち着かせた後、Ar濃度が99.9%以上、かつ露点が−50℃以下のグローブボックス内で分解し、電極群を取り出した。前記電極群を遠沈管につめ、ジメチルスルホキシド(DMSO)−dを加えて密封し、前記グローブボックスより取り出し、遠心分離を行った。その後、前記グローブボックス内で、前記遠沈管から前記電解液と前記DMSO−dの混合溶液を採取した。前記混合溶媒を5mmφのNMR用試料管に0.5ml程度入れ、NMR測定を行った。前記NMR測定に用いた装置は日本電子株式会社製JNM−LA400WBであり、観測核はH、観測周波数は400MHz、ジメチルスルホキシド(DMSO)−d中に僅かに含まれる残余プロトン信号を内部基準として利用した(2.5ppm)。測定温度は25℃とした。HNMRスペクトルではECに対応するピークが4.5ppm付近、VCに対応するピークが7.7ppm付近に観測された。一方、PRSに対応するピークが、図4に示すスペクトルのように5.1ppm付近(P)、7.05ppm付近(P)及び7.2ppm付近(P)に観測された。これらの結果から、初充放電工程後の実施例11の二次電池に存在する非水溶媒中にVCとPRSが含まれていることを確認できた。
【0153】
また、観測周波数を100MHzとし、ジメチルスルホキシド(DMSO)−d(39.5ppm)を内部基準物質として13CNMR測定を行ったところ、ECに対応するピークが66ppm付近、VCに対応するピークが133ppm付近、PRSに対応するピークが74ppm付近と124ppm付近と140ppm付近に観測され、この結果からも、初充放電工程後の実施例11の二次電池に存在する非水溶媒中にVCとPRSが含まれていることを確認できた。
【0154】
さらに、HNMRスペクトルにおいて、ECのNMR積分強度に対するVCのNMR積分強度の比と、ECのNMR積分強度に対するPRSのNMR積分強度の比を求めたところ、非水溶媒全体に対するVCの割合、PRSの割合がいずれも二次電池組立て前より減少していることを確認することができた。
【0155】
(実施例17)
まず、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(GBL)および1,3−プロペンスルトン(PRS)を体積比率(EC:GBL:PRS)が33:66:1になるように混合して非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)をその濃度が1.5モル/Lになるように溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0156】
ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量1000)と、液状非水電解質とを重量比1:10の割合で混合し、さらにこれに熱重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレートを5000ppm添加することにより、プレゲル溶液を調製した。
【0157】
前述した実施例1で説明したのと同様にして電極群を作製し、この電極群を容器内に収納し、真空乾燥を施した後、プレゲル溶液を電池容量1Ahあたり5.2gの量で注液した。次いで、ヒートシールにより封止した後、60℃で3時間加熱することによりプレゲル溶液を重合・架橋してゲル状非水電解質とし、薄型非水電解質二次電池を得た。
【0158】
(比較例8)
プレゲル溶液中に1,3−プロペンスルトンを添加しないこと以外は前述した実施例17と同様にして非水電解質二次電池を製造した。
【0159】
得られた実施例17及び比較例8の二次電池について、高温貯蔵特性、充放電サイクル特性および低温放電特性を前述した実施例1で説明したのと同様な条件で評価したところ、実施例17の二次電池については、65℃貯蔵後の容量維持率が97%で、100サイクル後の容量維持率が90%で、−20℃での放電容量維持率が37%であるのに対し、比較例8の二次電池については、65℃貯蔵後の容量維持率が0%で、100サイクル後の容量維持率が80%で、−20℃での放電容量維持率が38%であった。
【0160】
なお、本発明は、上記の実施例に止まるものではなく、他の種類の正極・負極・セパレータ・容器の組合わせにおいても同様に適用可能である。また、上記の実施例のようなラミネートフィルムから容器を形成した非水電解質二次電池以外にも、円筒形や角形の容器を有する二次電池にむおいても本発明は適用可能である。
【0161】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、実用的な低温放電特性を維持しつつ、高温貯蔵特性及び充放電サイクル寿命が向上された非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる非水電解質二次電池の一例である薄型リチウムイオン二次電池を示す斜視図。
【図2】図1の薄型リチウムイオン二次電池を短辺方向に沿って切断した部分断面図。
【図3】本発明に係る非水電解質二次電池の一例である円筒形非水電解質二次電池を示す部分断面図。
【図4】実施例11の非水電解質二次電池の非水電解質に含まれるPRSについてのHNMRスペクトルを示す特性図。
【符号の説明】
1…容器本体、
2…電極群、
3…正極、
4…負極、
5…セパレータ、
6…蓋板、
7…外部保護層、
8…内部保護層、
9…金属層、
10…正極端子、
11…負極端子。

Claims (5)

  1. 正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質物を含む負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを具備した非水電解質二次電池であり、
    前記非水溶媒は、環状カーボネートと、γ−ブチロラクトン(GBL)と、環内に少なくとも一つの二重結合を有するスルトン化合物とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記環状カーボネートには、エチレンカーボネート(EC)が含まれ、前記非水溶媒全体積に対する環状カーボネート、γ−ブチロラクトン及び前記スルトン化合物の割合をそれぞれx(体積%)、y(体積%)、z(体積%)とした際、前記x、前記y及び前記zはそれぞれ20≦x≦50、40≦y≦80、0<z≦10を満たすことを特徴とする請求項1項記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記環状カーボネートには、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)が含まれ、前記非水溶媒全体積に対する環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、前記スルトン化合物及びプロピレンカーボネートの割合をそれぞれx(体積%)、y(体積%)、z(体積%)、v(体積%)とした際、前記x、前記y、前記z及び前記vはそれぞれ20≦x≦50、40≦y≦80、0<z≦10、0<v≦20を満たすことを特徴とする請求項1項記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記非水溶媒には、ビニレンカーボネート(VC)を含有する副成分がさらに含まれ、前記非水溶媒全体積に対する前記副成分の割合w(体積%)は0<w≦10を満たすことを特徴とする請求項2〜3いずれか1項記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記スルトン化合物は、1,3−プロペンスルトン及び1,4−ブチレンスルトンのうちの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項項記載の非水電解質二次電池。
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