JP2004061121A - 表面分析用標準試料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】作製が容易で安価に製造することができ、例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に好適にかつ気軽に用いることができる表面分析用標準試料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料であり、高純度アルミニウムからなるアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜にはその膜厚方向に互いに一定の間隔で存在する複数の目印元素を含有せしめた表面分析用標準試料である。また、高純度アルミニウムからなるアルミ基体をアルカリ水溶液でエッチング処理し、次いで電解研磨浴中で電解研磨処理した後、複数の目印元素を含む浸漬浴中に浸漬処理し、更に電解浴中で陽極酸化処理してアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる表面分析用標準試料の製造方法である。
【選択図】 図3
【解決手段】試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料であり、高純度アルミニウムからなるアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜にはその膜厚方向に互いに一定の間隔で存在する複数の目印元素を含有せしめた表面分析用標準試料である。また、高純度アルミニウムからなるアルミ基体をアルカリ水溶液でエッチング処理し、次いで電解研磨浴中で電解研磨処理した後、複数の目印元素を含む浸漬浴中に浸漬処理し、更に電解浴中で陽極酸化処理してアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる表面分析用標準試料の製造方法である。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、グロー放電発光分光分析(GD−OES)、グロー放電質量分析法(GD−MS)等のグロー放電を利用した分析を始めとして、オージェ電子分光分析(AES)、二次イオン質量分析(SIMS)、X線光電子分光分析(XPS)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等のように、試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う表面分析においては、装置の立上げ時や定期点検の際に、基準となるある一定の試料(標準試料)を用いて装置の動作状態が正常であるかどうかを判断する必要があるが、これらの表面分析が試料の表面を破壊して行ういわゆる破壊分析であることから適当な標準試料がなく、従来においては、装置立上げ時の較正は行われていなかった。
【0003】
また、オージェ電子分光分析(AES)や二次イオン質量分析(SIMS)等においては、GaAs/AlAsのような多層膜構造の標準試料が存在するが、製造方法がMOCVDやMBEであるためにその作製が容易ではなく、また、コスト的にも高価であって、装置の立上げ時等に気軽に使用できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、作製が容易で安価に製造することができ、グロー放電発光分光分析(GD−OES)、グロー放電質量分析法(GD−MS)等のグロー放電を利用した分析を始めとして、オージェ電子分光分析(AES)、二次イオン質量分析(SIMS)、X線光電子分光分析(XPS)等の表面分析において気軽に用いることができる標準試料について鋭意検討した結果、高純度アルミニウムからなるアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜の膜厚方向に複数の目印元素を互いに一定の間隔で存在せしめることにより、これらの表面分析用の標準試料として好適に用いることができることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
従って、本発明の目的は、作製が容易で安価に製造することができ、例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に好適にかつ気軽に用いることができる表面分析用標準試料を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料を容易にかつ安価に製造することができる表面分析用標準試料の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料であり、高純度及び高平滑なアルミニウムからなるアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜にはその膜厚方向に互いに一定の間隔で存在する複数の目印元素を含有せしめた表面分析用標準試料である。
【0008】
また、本発明は、高純度アルミニウムからなるアルミ基体をアルカリ水溶液でエッチング処理するエッチング工程と、エッチング処理後のアルミ基体を電解研磨浴中で電解研磨処理する電解研磨工程と、電解研磨処理したアルミ基体を複数の目印元素を含む浸漬浴中に浸漬処理してアルミ基体の表面にこれらの目印元素を固定せしめる浸漬工程と、表面に目印元素が固定されたアルミ基体を電解浴中で陽極酸化処理してアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる陽極酸化工程とを含む表面分析用標準試料の製造方法である。
【0009】
本発明において、アルミ基体として用いる高純度アルミニウムについては、陽極酸化処理がし易く、かつ、マーカーとなる浸漬浴中の目印元素を妨害することがないように、不純物の極めて少ない純アルミニウムであればよいが、好ましくはケイ素(Si)、鉄(Fe)および銅(Cu)といった不純物元素の合算濃度が1〜99ppmの範囲内である純度99.99重量%以上の高純度アルミニウムであるのがよい。これらの不純物元素の濃度が100ppmを超えると、均一な電解研摩を行うのが難しくなり、また、これらの不純物元素を1ppm以下に制御することは製造上コスト高となり、実用上好ましくない。そして、このアルミ基体については、深さ方向の優れた分解能を出すために、好ましくは優れた表面平坦性若しくは表面平滑性を有することが必要であり、また、商品的観点から好ましくは表面光沢性に優れているものがよい。
このアルミ基体の表面光沢性については、JIS Z 8741の鏡面光沢度測定方法3に従って得られた鏡面光沢度の値が、圧延方向の如何に係わらず、圧延後の測定において300%以上、好ましくは600%以上であるのがよい。表面光沢度の値が300%未満では製膜後において、表面光沢性に優れた標準試料とはなり得ず、また、優れた深さ分解能を出し得ない。加えて、表面光沢度の値が300%未満のアルミ基体を用いて必要な平滑性を持たせるためには、長時間の電解研摩が必要となるため、アルミ基体の厚さの著しい減少や製造時間の長時間化によりコストが増大する問題がある。
【0010】
本発明の表面分析用標準試料において、その陽極酸化皮膜の膜厚方向に互いに一定の間隔で存在せしめる複数の目印元素については、通常はクロム(Cr)、リン(P)、ボロン(B)、及びタングステン(W)からなる群から選ばれた2種以上の元素であるのがよく、クロム(Cr)とリン(P)は、陽極酸化処理の処理条件が同じであれば常に一定の位置に析出することから、特に好ましい目印元素である。
【0011】
また、本発明の表面分析用標準試料において、そのアルミ基体のサイズについては、特に制限はないが、好ましくは縦60〜90mm×横20〜60mm×厚さ0.3〜1.5mm、より好ましくは縦70〜80mm×横30〜50mm×厚さ0.4〜1.2mmの大きさであるのがよい。このアルミ基体の縦横のサイズがあまり大きくなると、製造時の電解研磨処理や陽極酸化処理において大きな設備や電源容量が必要になり、設備コストが嵩むほか、これらの電解研磨処理や陽極酸化処理に不均一性が生じ、かえって歩留りが低下し、反対に、あまり小さくなると、GD−OESの放電痕の大きさが約4mmであるので、使用可能回数が少なくなって好ましくない。また、アルミ基体の厚さについては、0.3mmより薄いと、GD−OESの装置にセットして真空に引いたときに湾曲してしまう虞があり、また、1.5mmより厚くなると、アルミニウム板からアルミ基体を切り出す際の切断に要する時間が長くなって好ましくない。
【0012】
次に、エッチング工程、電解研磨工程、浸漬工程、及び陽極酸化工程を含む本発明の表面分析用標準試料の製造方法について説明する。
先ず、圧延時に表面に傷がつかないように目の細かなブラシを用いて圧延され、表面平坦性、表面平滑性、表面光沢性に優れた高純度アルミニウムのアルミ板から、マイクロカッティングマシーン等を用いて所定のサイズのアルミ基体を切り出し、その際に必要により、このアルミ基体のハンドリングを容易にし、あるいは、電解研磨処理時や陽極酸化処理時の電極として使用するための耳部を設けておく。
【0013】
次に、このようにして得られたアルミ基体について、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を用いてエッチング処理し、表面に付着した圧延油や汚染物を除去する。このエッチング処理については、通常一般的に金属表面に付着した油成分の除去のために行われている方法と同様でよく、特に制限されるものではなく、例えば10wt%−NaOH水溶液中に30〜60℃で30〜60秒間浸漬し、次いで水洗した後、硫酸、硝酸等の酸水溶液に30〜60秒間浸漬し、その後に水洗して乾燥することにより行われる。
【0014】
エッチング処理されたアルミ基体については、次に、電解研磨浴中で電解研磨処理される。ここで行われる電解研磨処理については、例えば、P. A. Jacquet法、Battelle法、リン酸浴法、振動電解研磨法、Alzak法、Brytal法等が挙げられ、また、電解研磨浴としては、例えば、好ましくは60wt%−過塩素酸水溶液と99.5%−エタノールとを体積比1:4の割合で混合して得られる電解研磨浴が挙げられる。このような電解研磨処理により、自然酸化皮膜が除去され、所望の高平滑な鏡面光沢が得られる。また、この電解研磨の処理条件については、通常、印加電圧が20〜40V、好ましくは30〜35Vであり、処理温度が0〜2℃、好ましくは0〜1℃であり、また、処理時間が2〜5分、好ましくは3〜4分であるのがよい。
【0015】
上記電解研磨処理したアルミ基体については、好ましくは引き続いて超音波洗浄を行い、アルミ基体の表面に付着した過塩素酸水溶液を完全に除去した後、乾燥する。この超音波洗浄に用いる洗浄液については、電解研磨浴として用いた溶液を溶解することができ、洗浄後に容易に乾燥し得るものであればよく、例えば電解研磨浴として60wt%−過塩素酸水溶液と99.5%−エタノールとの体積比1:4混合溶液を用いた場合には、99.5%−エタノール等を例示することができる。
【0016】
このようにして電解研磨処理したアルミ基体については、次に、マーカーとなる複数の目印元素〔例えばクロム(Cr)、リン(P)、ボロン(B)、及びタングステン(W)等〕を含む浸漬浴で浸漬処理され、表面に目印元素を固定せしめる。
【0017】
この目的で用いられる浸漬浴は上記目印元素を含む化合物の水溶液であるのが好ましく、この浸漬浴を構成する目印元素の化合物については、具体的には、クロム酸等のクロム化合物、リン酸等のリン化合物、ホウ酸アンモニウム等のボロン化合物、その他にタングステン化合物等を挙げることができる。
【0018】
そして、このような浸漬浴を用いて行う浸漬処理の処理条件については、浸漬温度が80〜100℃、好ましくは85〜95℃であって、浸漬時間が4〜6、好ましくは5分前後であり、浸漬温度が80℃より低いと例えばCrやP等の用いた目印元素のアルミ基体表面への結合が充分でなく、反対に、100℃より高いと濃度管理が難しくなるという問題があり、また、浸漬時間が4分より短いと例えばCrやP等の用いた目印元素のアルミ基体表面への結合が充分でなく、反対に、6分より長くなると例えばCrやP等の用いた目印元素のアルミ基体表面への結合が多くなりすぎ、その後の陽極酸化皮膜の形成に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
【0019】
このようにしてアルミ基体の表面に複数の目印元素を固定させた後、純水で洗浄し、次いで電解浴中で陽極酸化処理してアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる。
この陽極酸化処理に用いる電解浴については、特に制限されるものではないが、例えば、ホウ酸アンモニウム水溶液、酒石酸アンモニウム水溶液、クエン酸アンモニウム水溶液等の中性浴であり、好ましくはホウ酸アンモニウム浴である。
【0020】
また、このような電解浴を用いて陽極酸化処理を行なう際の処理条件については、典型的には、浴濃度が0.1g/l、浴温度19〜20℃及び電流密度5A/m2の条件で約2分、電圧が300Vに達するまで行い、この際における膜厚の制御は到達電圧を制御することにより行う。
【0021】
本発明の表面分析用標準試料においては、その製造時の陽極酸化処理の処理条件が同じであれば、アルミ基体の表面に形成された陽極酸化皮膜中に存在する複数の目印元素は常にその膜厚方向に互いに一定の間隔で位置するので、例えば、グロー放電発光分光分析(GD−OES)、グロー放電質量分析法(GD−MS)、オージェ電子分光分析(AES)、二次イオン質量分析(SIMS)、X線光電子分光分析(XPS)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際における深さ方向の放電時間(スパッタ時間)から膜厚への換算(膜厚定量分析)の際や、このような分析装置の立上げ時や定期点検の際に、標準試料として好適に用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
実施例1
図1に示すように、厚さ0.8mmの高純度アルミニウム板(純度99.99wt%)から、本体部2の大きさが縦50mm×横30mmの大きさであり、上辺部には高さ20mm×幅10mmの耳部3を有するアルミ基体1を切り出し、以下の手順で表面分析用標準試料を作製した。尚、上記耳部3はアルミ基体1の左右のいずれかに沿う部分或いは中央部に設けてもよいが、左右のいずれかに設けた場合は、アルミ基体1の切り出し工程が少なくてすむ点で利点がある。
このアルミ基体1の表面光沢性は、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製UGV−5DP型)を用い、JIS Z 8741の鏡面光沢度測定方法3に準じて測定した結果、鏡面光沢度が圧延方向に対して垂直方向で617%、圧延方向に対して平行方向で726%であった。
【0023】
先ず、作製したアルミ基体を10wt%−NaOH水溶液中に55℃で30秒間浸漬し、次いで純水で水洗した後、希硫酸水溶液に30秒間浸漬し、その後に純水で水洗して乾燥した(エッチング工程)。
次に、このエッチング処理後のアルミ基体を、60wt%−過塩素酸水溶液と99.5%−エタノールとを体積比1:4の割合で混合して得られた電解研磨浴中に浸漬し、印加電圧35V、処理温度0℃、及び処理時間が3分の条件で電解研磨処理を行った(電解研磨工程)。
【0024】
この電解研磨処理終了後、洗浄液としてエタノールを用いて引き続いて超音波洗浄を行い、アルミ基体の表面に付着した過塩素酸水溶液を完全に除去した。
次に、このアルミ基体をリン酸−クロム酸水溶液からなる浸漬浴中に浸漬し、浸漬温度が90℃及び浸漬時間が5分の条件で浸漬処理し、アルミ基体の表面にリン及びクロムからなる目印元素をそれぞれリン酸アルミニウム及びクロム酸アルミニウムの形態で固定せしめた(浸漬工程)。
【0025】
この浸漬処理終了後、洗浄液として純水を用い、流水洗浄により洗浄し、次いで0.1モル/lのホウ酸アンモニウム水溶液からなる電解浴中に浸漬し、浴温度20±1℃、定電流(電流密度)5mA/cm2で約2分間、300Vに到達するまで陽極酸化処理を行い、アルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめ(陽極酸化工程)、実施例1の表面分析用標準試料の試作品を作製した。
【0026】
このようにして製造された表面分析用標準試料の表面光沢性は、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製UGV−5DP型)を用い、JIS Z 8741の鏡面光沢度測定方法3に準じて測定した結果、鏡面光沢度が圧延方向に対して垂直方向で840%、圧延方向に対して平行方向で851%であった。
【0027】
得られた実施例1の試作品について、透過電子顕微鏡による断面観察を行うと共に、マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置(Jobin−Ybon社製JY−5000RF)を用い、試作品の5測定点においてアルゴンガス圧900Pa、高周波出力40W(13.65MHz)の測定条件でGD−OES表面分析を行った。
【0028】
透過電子顕微鏡による断面観察結果は、図2に示すとおりであり、この実施例1の試作品においてはアルミ基体の表面に膜厚0.37μmの陽極酸化皮膜が均一に形成されていることがわかり、また、GD−OES表面分析の結果は、図3に示すとおりであり、5測定点での測定プロファイルが精度良く重なり合っており、GD−OES表面分析の結果に優れた再現性が認められた。
【0029】
試験例1
次にこの実施例1の試作品を用い、この試作品がGD−OES表面分析の標準試料として使用できるか否かの確認を行った。
先ず、先のGD−OES表面分析に用いたマーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置を一旦終了させ、再起動させた後にこの実施例1の試作品について先の測定条件と同じ条件でGD−OES表面分析を行った。
結果は、図3に示す結果とほとんど同じ結果が得られ、この表面分析装置が正常に作動していることが確認された。
この結果から、この実施例1の試作品は、装置立上げ時の標準試料として使用できることが確認された。
【0030】
なお、例えばピーク位置がずれた結果が得られたような場合には、放電管内部の洗浄が不充分であったり、ガスのリークによるガス圧の変動等の原因が考えられるので、これらを点検して正常になるまで調整する等、表面分析装置が正常に作動していない場合には、その際の現象とその考えられる原因との関係を予め検証しておき、容易に装置の調整を行うことができるようにしておくのがよい。
【0031】
試験例2
次に、上記マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置を用い、実施例1の試作品を標準試料として使用し、上記試作品のGD−OES表面分析の場合と同じ測定条件で、電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔(試料アルミ箔)中に含まれる微量元素Pbの深さ方向の定量分析を行った。
この試料アルミ箔中に含まれる微量元素Pbの深さ方向分布を測定した結果は図4に示すとおりであった。
【0032】
ここで、図3に示すエッチング時間(スパッタ時間)と陽極酸化皮膜の膜厚(0.38μm)とからスパッタ速度を求めた結果(30.5nm/sec.)を用い、試料アルミ箔中に含まれる微量元素Pbの深さ方向の位置を計算して求めたところ、微量元素Pbは試料アルミ箔の表面下2〜3nmの位置で最大濃度となることが求められた。
【0033】
この結果を確認するため、試料アルミ箔の微量元素Pbの深さ方向定量分析の際に生じた放電痕の深さを表面粗さ計で測定し、その結果からスパッタ速度を求めた結果、スパッタ速度30nm/秒の値が得られた。
この値は、標準試料として用いた実施例1の試作品からの結果とほぼ一致しており、実施例1の試作品がGD−OES表面分析による深さ方向の定量分析の標準試料として使用できることが判明した。
【0034】
【発明の効果】
本発明の表面分析用標準試料は、その作製が容易で安価に製造することができ、例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に好適にかつ気軽に用いることができる。また、本発明の製造方法によれば、このようにグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料を容易にかつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例1において、表面分析用標準試料を製造するために高純度アルミニウム板から切り出されたアルミ基体を示す平面図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた表面分析用標準試料の陽極酸化皮膜の断面形状を透過電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真の図である。
【図3】図3は、実施例1で得られた表面分析用標準試料のGD−OES表面分析の結果である測定元素Al、B、Cr及びPのエッチング時間(秒)−強度(a.u)の関係を示すグラフ図である。
【図4】図4は、試験例2でGD−OES表面分析により測定された電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔中に含まれる微量元素Pbの深さ方向の定量分析の結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…アルミ基体、2…本体部、3…耳部。
【発明の属する技術分野】
この発明は、グロー放電発光分光分析(GD−OES)、グロー放電質量分析法(GD−MS)等のグロー放電を利用した分析を始めとして、オージェ電子分光分析(AES)、二次イオン質量分析(SIMS)、X線光電子分光分析(XPS)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等のように、試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う表面分析においては、装置の立上げ時や定期点検の際に、基準となるある一定の試料(標準試料)を用いて装置の動作状態が正常であるかどうかを判断する必要があるが、これらの表面分析が試料の表面を破壊して行ういわゆる破壊分析であることから適当な標準試料がなく、従来においては、装置立上げ時の較正は行われていなかった。
【0003】
また、オージェ電子分光分析(AES)や二次イオン質量分析(SIMS)等においては、GaAs/AlAsのような多層膜構造の標準試料が存在するが、製造方法がMOCVDやMBEであるためにその作製が容易ではなく、また、コスト的にも高価であって、装置の立上げ時等に気軽に使用できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、作製が容易で安価に製造することができ、グロー放電発光分光分析(GD−OES)、グロー放電質量分析法(GD−MS)等のグロー放電を利用した分析を始めとして、オージェ電子分光分析(AES)、二次イオン質量分析(SIMS)、X線光電子分光分析(XPS)等の表面分析において気軽に用いることができる標準試料について鋭意検討した結果、高純度アルミニウムからなるアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜の膜厚方向に複数の目印元素を互いに一定の間隔で存在せしめることにより、これらの表面分析用の標準試料として好適に用いることができることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
従って、本発明の目的は、作製が容易で安価に製造することができ、例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に好適にかつ気軽に用いることができる表面分析用標準試料を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料を容易にかつ安価に製造することができる表面分析用標準試料の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料であり、高純度及び高平滑なアルミニウムからなるアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜にはその膜厚方向に互いに一定の間隔で存在する複数の目印元素を含有せしめた表面分析用標準試料である。
【0008】
また、本発明は、高純度アルミニウムからなるアルミ基体をアルカリ水溶液でエッチング処理するエッチング工程と、エッチング処理後のアルミ基体を電解研磨浴中で電解研磨処理する電解研磨工程と、電解研磨処理したアルミ基体を複数の目印元素を含む浸漬浴中に浸漬処理してアルミ基体の表面にこれらの目印元素を固定せしめる浸漬工程と、表面に目印元素が固定されたアルミ基体を電解浴中で陽極酸化処理してアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる陽極酸化工程とを含む表面分析用標準試料の製造方法である。
【0009】
本発明において、アルミ基体として用いる高純度アルミニウムについては、陽極酸化処理がし易く、かつ、マーカーとなる浸漬浴中の目印元素を妨害することがないように、不純物の極めて少ない純アルミニウムであればよいが、好ましくはケイ素(Si)、鉄(Fe)および銅(Cu)といった不純物元素の合算濃度が1〜99ppmの範囲内である純度99.99重量%以上の高純度アルミニウムであるのがよい。これらの不純物元素の濃度が100ppmを超えると、均一な電解研摩を行うのが難しくなり、また、これらの不純物元素を1ppm以下に制御することは製造上コスト高となり、実用上好ましくない。そして、このアルミ基体については、深さ方向の優れた分解能を出すために、好ましくは優れた表面平坦性若しくは表面平滑性を有することが必要であり、また、商品的観点から好ましくは表面光沢性に優れているものがよい。
このアルミ基体の表面光沢性については、JIS Z 8741の鏡面光沢度測定方法3に従って得られた鏡面光沢度の値が、圧延方向の如何に係わらず、圧延後の測定において300%以上、好ましくは600%以上であるのがよい。表面光沢度の値が300%未満では製膜後において、表面光沢性に優れた標準試料とはなり得ず、また、優れた深さ分解能を出し得ない。加えて、表面光沢度の値が300%未満のアルミ基体を用いて必要な平滑性を持たせるためには、長時間の電解研摩が必要となるため、アルミ基体の厚さの著しい減少や製造時間の長時間化によりコストが増大する問題がある。
【0010】
本発明の表面分析用標準試料において、その陽極酸化皮膜の膜厚方向に互いに一定の間隔で存在せしめる複数の目印元素については、通常はクロム(Cr)、リン(P)、ボロン(B)、及びタングステン(W)からなる群から選ばれた2種以上の元素であるのがよく、クロム(Cr)とリン(P)は、陽極酸化処理の処理条件が同じであれば常に一定の位置に析出することから、特に好ましい目印元素である。
【0011】
また、本発明の表面分析用標準試料において、そのアルミ基体のサイズについては、特に制限はないが、好ましくは縦60〜90mm×横20〜60mm×厚さ0.3〜1.5mm、より好ましくは縦70〜80mm×横30〜50mm×厚さ0.4〜1.2mmの大きさであるのがよい。このアルミ基体の縦横のサイズがあまり大きくなると、製造時の電解研磨処理や陽極酸化処理において大きな設備や電源容量が必要になり、設備コストが嵩むほか、これらの電解研磨処理や陽極酸化処理に不均一性が生じ、かえって歩留りが低下し、反対に、あまり小さくなると、GD−OESの放電痕の大きさが約4mmであるので、使用可能回数が少なくなって好ましくない。また、アルミ基体の厚さについては、0.3mmより薄いと、GD−OESの装置にセットして真空に引いたときに湾曲してしまう虞があり、また、1.5mmより厚くなると、アルミニウム板からアルミ基体を切り出す際の切断に要する時間が長くなって好ましくない。
【0012】
次に、エッチング工程、電解研磨工程、浸漬工程、及び陽極酸化工程を含む本発明の表面分析用標準試料の製造方法について説明する。
先ず、圧延時に表面に傷がつかないように目の細かなブラシを用いて圧延され、表面平坦性、表面平滑性、表面光沢性に優れた高純度アルミニウムのアルミ板から、マイクロカッティングマシーン等を用いて所定のサイズのアルミ基体を切り出し、その際に必要により、このアルミ基体のハンドリングを容易にし、あるいは、電解研磨処理時や陽極酸化処理時の電極として使用するための耳部を設けておく。
【0013】
次に、このようにして得られたアルミ基体について、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を用いてエッチング処理し、表面に付着した圧延油や汚染物を除去する。このエッチング処理については、通常一般的に金属表面に付着した油成分の除去のために行われている方法と同様でよく、特に制限されるものではなく、例えば10wt%−NaOH水溶液中に30〜60℃で30〜60秒間浸漬し、次いで水洗した後、硫酸、硝酸等の酸水溶液に30〜60秒間浸漬し、その後に水洗して乾燥することにより行われる。
【0014】
エッチング処理されたアルミ基体については、次に、電解研磨浴中で電解研磨処理される。ここで行われる電解研磨処理については、例えば、P. A. Jacquet法、Battelle法、リン酸浴法、振動電解研磨法、Alzak法、Brytal法等が挙げられ、また、電解研磨浴としては、例えば、好ましくは60wt%−過塩素酸水溶液と99.5%−エタノールとを体積比1:4の割合で混合して得られる電解研磨浴が挙げられる。このような電解研磨処理により、自然酸化皮膜が除去され、所望の高平滑な鏡面光沢が得られる。また、この電解研磨の処理条件については、通常、印加電圧が20〜40V、好ましくは30〜35Vであり、処理温度が0〜2℃、好ましくは0〜1℃であり、また、処理時間が2〜5分、好ましくは3〜4分であるのがよい。
【0015】
上記電解研磨処理したアルミ基体については、好ましくは引き続いて超音波洗浄を行い、アルミ基体の表面に付着した過塩素酸水溶液を完全に除去した後、乾燥する。この超音波洗浄に用いる洗浄液については、電解研磨浴として用いた溶液を溶解することができ、洗浄後に容易に乾燥し得るものであればよく、例えば電解研磨浴として60wt%−過塩素酸水溶液と99.5%−エタノールとの体積比1:4混合溶液を用いた場合には、99.5%−エタノール等を例示することができる。
【0016】
このようにして電解研磨処理したアルミ基体については、次に、マーカーとなる複数の目印元素〔例えばクロム(Cr)、リン(P)、ボロン(B)、及びタングステン(W)等〕を含む浸漬浴で浸漬処理され、表面に目印元素を固定せしめる。
【0017】
この目的で用いられる浸漬浴は上記目印元素を含む化合物の水溶液であるのが好ましく、この浸漬浴を構成する目印元素の化合物については、具体的には、クロム酸等のクロム化合物、リン酸等のリン化合物、ホウ酸アンモニウム等のボロン化合物、その他にタングステン化合物等を挙げることができる。
【0018】
そして、このような浸漬浴を用いて行う浸漬処理の処理条件については、浸漬温度が80〜100℃、好ましくは85〜95℃であって、浸漬時間が4〜6、好ましくは5分前後であり、浸漬温度が80℃より低いと例えばCrやP等の用いた目印元素のアルミ基体表面への結合が充分でなく、反対に、100℃より高いと濃度管理が難しくなるという問題があり、また、浸漬時間が4分より短いと例えばCrやP等の用いた目印元素のアルミ基体表面への結合が充分でなく、反対に、6分より長くなると例えばCrやP等の用いた目印元素のアルミ基体表面への結合が多くなりすぎ、その後の陽極酸化皮膜の形成に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
【0019】
このようにしてアルミ基体の表面に複数の目印元素を固定させた後、純水で洗浄し、次いで電解浴中で陽極酸化処理してアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる。
この陽極酸化処理に用いる電解浴については、特に制限されるものではないが、例えば、ホウ酸アンモニウム水溶液、酒石酸アンモニウム水溶液、クエン酸アンモニウム水溶液等の中性浴であり、好ましくはホウ酸アンモニウム浴である。
【0020】
また、このような電解浴を用いて陽極酸化処理を行なう際の処理条件については、典型的には、浴濃度が0.1g/l、浴温度19〜20℃及び電流密度5A/m2の条件で約2分、電圧が300Vに達するまで行い、この際における膜厚の制御は到達電圧を制御することにより行う。
【0021】
本発明の表面分析用標準試料においては、その製造時の陽極酸化処理の処理条件が同じであれば、アルミ基体の表面に形成された陽極酸化皮膜中に存在する複数の目印元素は常にその膜厚方向に互いに一定の間隔で位置するので、例えば、グロー放電発光分光分析(GD−OES)、グロー放電質量分析法(GD−MS)、オージェ電子分光分析(AES)、二次イオン質量分析(SIMS)、X線光電子分光分析(XPS)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際における深さ方向の放電時間(スパッタ時間)から膜厚への換算(膜厚定量分析)の際や、このような分析装置の立上げ時や定期点検の際に、標準試料として好適に用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
実施例1
図1に示すように、厚さ0.8mmの高純度アルミニウム板(純度99.99wt%)から、本体部2の大きさが縦50mm×横30mmの大きさであり、上辺部には高さ20mm×幅10mmの耳部3を有するアルミ基体1を切り出し、以下の手順で表面分析用標準試料を作製した。尚、上記耳部3はアルミ基体1の左右のいずれかに沿う部分或いは中央部に設けてもよいが、左右のいずれかに設けた場合は、アルミ基体1の切り出し工程が少なくてすむ点で利点がある。
このアルミ基体1の表面光沢性は、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製UGV−5DP型)を用い、JIS Z 8741の鏡面光沢度測定方法3に準じて測定した結果、鏡面光沢度が圧延方向に対して垂直方向で617%、圧延方向に対して平行方向で726%であった。
【0023】
先ず、作製したアルミ基体を10wt%−NaOH水溶液中に55℃で30秒間浸漬し、次いで純水で水洗した後、希硫酸水溶液に30秒間浸漬し、その後に純水で水洗して乾燥した(エッチング工程)。
次に、このエッチング処理後のアルミ基体を、60wt%−過塩素酸水溶液と99.5%−エタノールとを体積比1:4の割合で混合して得られた電解研磨浴中に浸漬し、印加電圧35V、処理温度0℃、及び処理時間が3分の条件で電解研磨処理を行った(電解研磨工程)。
【0024】
この電解研磨処理終了後、洗浄液としてエタノールを用いて引き続いて超音波洗浄を行い、アルミ基体の表面に付着した過塩素酸水溶液を完全に除去した。
次に、このアルミ基体をリン酸−クロム酸水溶液からなる浸漬浴中に浸漬し、浸漬温度が90℃及び浸漬時間が5分の条件で浸漬処理し、アルミ基体の表面にリン及びクロムからなる目印元素をそれぞれリン酸アルミニウム及びクロム酸アルミニウムの形態で固定せしめた(浸漬工程)。
【0025】
この浸漬処理終了後、洗浄液として純水を用い、流水洗浄により洗浄し、次いで0.1モル/lのホウ酸アンモニウム水溶液からなる電解浴中に浸漬し、浴温度20±1℃、定電流(電流密度)5mA/cm2で約2分間、300Vに到達するまで陽極酸化処理を行い、アルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめ(陽極酸化工程)、実施例1の表面分析用標準試料の試作品を作製した。
【0026】
このようにして製造された表面分析用標準試料の表面光沢性は、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製UGV−5DP型)を用い、JIS Z 8741の鏡面光沢度測定方法3に準じて測定した結果、鏡面光沢度が圧延方向に対して垂直方向で840%、圧延方向に対して平行方向で851%であった。
【0027】
得られた実施例1の試作品について、透過電子顕微鏡による断面観察を行うと共に、マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置(Jobin−Ybon社製JY−5000RF)を用い、試作品の5測定点においてアルゴンガス圧900Pa、高周波出力40W(13.65MHz)の測定条件でGD−OES表面分析を行った。
【0028】
透過電子顕微鏡による断面観察結果は、図2に示すとおりであり、この実施例1の試作品においてはアルミ基体の表面に膜厚0.37μmの陽極酸化皮膜が均一に形成されていることがわかり、また、GD−OES表面分析の結果は、図3に示すとおりであり、5測定点での測定プロファイルが精度良く重なり合っており、GD−OES表面分析の結果に優れた再現性が認められた。
【0029】
試験例1
次にこの実施例1の試作品を用い、この試作品がGD−OES表面分析の標準試料として使用できるか否かの確認を行った。
先ず、先のGD−OES表面分析に用いたマーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置を一旦終了させ、再起動させた後にこの実施例1の試作品について先の測定条件と同じ条件でGD−OES表面分析を行った。
結果は、図3に示す結果とほとんど同じ結果が得られ、この表面分析装置が正常に作動していることが確認された。
この結果から、この実施例1の試作品は、装置立上げ時の標準試料として使用できることが確認された。
【0030】
なお、例えばピーク位置がずれた結果が得られたような場合には、放電管内部の洗浄が不充分であったり、ガスのリークによるガス圧の変動等の原因が考えられるので、これらを点検して正常になるまで調整する等、表面分析装置が正常に作動していない場合には、その際の現象とその考えられる原因との関係を予め検証しておき、容易に装置の調整を行うことができるようにしておくのがよい。
【0031】
試験例2
次に、上記マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置を用い、実施例1の試作品を標準試料として使用し、上記試作品のGD−OES表面分析の場合と同じ測定条件で、電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔(試料アルミ箔)中に含まれる微量元素Pbの深さ方向の定量分析を行った。
この試料アルミ箔中に含まれる微量元素Pbの深さ方向分布を測定した結果は図4に示すとおりであった。
【0032】
ここで、図3に示すエッチング時間(スパッタ時間)と陽極酸化皮膜の膜厚(0.38μm)とからスパッタ速度を求めた結果(30.5nm/sec.)を用い、試料アルミ箔中に含まれる微量元素Pbの深さ方向の位置を計算して求めたところ、微量元素Pbは試料アルミ箔の表面下2〜3nmの位置で最大濃度となることが求められた。
【0033】
この結果を確認するため、試料アルミ箔の微量元素Pbの深さ方向定量分析の際に生じた放電痕の深さを表面粗さ計で測定し、その結果からスパッタ速度を求めた結果、スパッタ速度30nm/秒の値が得られた。
この値は、標準試料として用いた実施例1の試作品からの結果とほぼ一致しており、実施例1の試作品がGD−OES表面分析による深さ方向の定量分析の標準試料として使用できることが判明した。
【0034】
【発明の効果】
本発明の表面分析用標準試料は、その作製が容易で安価に製造することができ、例えばグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に好適にかつ気軽に用いることができる。また、本発明の製造方法によれば、このようにグロー放電発光分光分析(GD−OES)等の試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料を容易にかつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例1において、表面分析用標準試料を製造するために高純度アルミニウム板から切り出されたアルミ基体を示す平面図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた表面分析用標準試料の陽極酸化皮膜の断面形状を透過電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真の図である。
【図3】図3は、実施例1で得られた表面分析用標準試料のGD−OES表面分析の結果である測定元素Al、B、Cr及びPのエッチング時間(秒)−強度(a.u)の関係を示すグラフ図である。
【図4】図4は、試験例2でGD−OES表面分析により測定された電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔中に含まれる微量元素Pbの深さ方向の定量分析の結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…アルミ基体、2…本体部、3…耳部。
Claims (5)
- 試料の表面をスパッタリングしてこの試料の深さ方向の分析を行う際に用いる表面分析用標準試料であり、高純度及び高平滑なアルミニウムからなるアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜にはその膜厚方向に互いに一定の間隔で存在する複数の目印元素を含有せしめたことを特徴とする表面分析用標準試料。
- 目印元素が、クロム(Cr)、リン(P)、ボロン(B)、及びタングステン(W)からなる群から選ばれた2種以上の元素である請求項1に記載の表面分析用標準試料。
- アルミ基体が、純度99.99重量%以上の高純度アルミニウムである請求項1に記載の表面分析用標準試料。
- アルミ基体は、縦60〜90mm×横20〜60mm×厚さ0.3〜1.5mmの大きさである請求項1〜3のいずれかに記載の表面分析用標準試料。
- 高純度アルミニウムからなるアルミ基体をアルカリ水溶液でエッチング処理するエッチング工程と、エッチング処理後のアルミ基体を電解研磨浴中で電解研磨処理する電解研磨工程と、電解研磨処理したアルミ基体を複数の目印元素を含む浸漬浴中に浸漬処理してアルミ基体の表面にこれらの目印元素を固定せしめる浸漬工程と、表面に目印元素が固定されたアルミ基体を電解浴中で陽極酸化処理してアルミ基体の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる陽極酸化工程とを含むことを特徴とする表面分析用標準試料の製造方法。
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