JP2004060176A - 防音装置 - Google Patents
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Abstract
【構造】壁1,10,その他の構造物の壁面または上部に沿って,外方に向って開口した複数の音響管3,21〜28が設けられ,これらの音響管の開口にシート4,40が張られる。シート40が張られることにより消音効果のある周波数帯域が低周波数側へシフトするので,音響管の長さを短くすることができる。
【選択図】 図5
Description
【技術分野】
この発明は高速道路,高速鉄道,その他の遮音または防音が要求される場所に設置される,または構造物に取付けて用いられる防音装置に関する。
【0002】
【従来技術】
道路交通騒音をはじめとする公害騒音を低減するために,高速道路や高速鉄道の側部には防音壁(落下防止壁または墜落防止壁と兼用される)が設置されている。この防音壁は主に騒音源からの音波を反射させ,その透過を阻止することにより遮音または防音するものである。
【0003】
ところが,防音壁の頂部で回折する音波が存在するために,高さの低い防音壁では充分な防音効果が達成できない。回折による騒音の漏洩を防止するためには防音壁の高さを高くせざるを得ない。特に,騒音源に人家が近接している地域では4mを超えるきわめて高い防音壁を設置しているのが現状である。
【0004】
高い防音壁は,都市景観を損なうばかりでなく,運転者に心理的圧迫感を与える。また,防音壁を高くすると,防音壁に全体として大きな風圧が加わるので,その強度を強くすることが必要となり,建設費用が増大する。
【0005】
防音壁の厚さを厚くすることによっても遮音効果を高めることはできる。しかし,そのような厚い防音壁は,道路ぎわに設置するものとしては適していない。
【0006】
近年,防音壁の騒音源側の壁面にグラスウールやロックウール等の吸音材を貼り付けることにより吸音性を持たせた防音壁が見られるようになってきている。吸音効果によって確かに遮音性能は向上するが,依然として回折による騒音の漏洩を防ぐことはできない。
【0007】
吸音材は一般に繊維質または多孔質のものであり,耐候性が低いので,露天下にさらされる防音壁に用いても,長期にわたってその効果を持続させることはできない。
【0008】
また,吸音性の防音壁は低周波の騒音の遮音が充分でないという問題もある。
【0009】
耐候性が高く,特定の周波数の音波を効果的に遮ることができ,しかも高さを比較的低くできる防音壁(防音装置)が提案されている(特許第 2639393号)。
【0010】
この防音壁は,騒音の主成分をなす音波に対する音圧反射率がほぼマイナス1の位相反転構造体を壁の頂部に沿って,または壁面に設けたものである。
【0011】
音圧反射率がマイナス1の位相反転構造とは,音圧をエネルギ的には完全反射で位相的には逆相で反射させる構造をいう。位相反転構造の表面では入射波と反射波とが打ち消し合うので音圧が零になる(これを「音響的にソフト」という)。
【0012】
特定の周波数の音波についての位相反転構造は,具体的には,その音波の波長の1/4の長さを持ち,終端が閉じた音響管を多数配置することにより実現される。このような音響管に入射した音波はその終端で反射する。音波は1/4波長分を往復するので,音響管の口では反射波は入射波と位相が 180度ずれる。
【0013】
【発明の開示】
この発明は上記の音響管を含む防音装置の考え方をより発展させ,小型化が可能な防音装置を提供するものである。
【0014】
この発明による防音装置は,壁,その他の構造物の壁面または上部(頂部を含む)に沿って,外方に向って開口した複数の音響管が設けられ,これらの音響管の開口にシートが張られているものである。
【0015】
上記において,音響管は一端(終端)が閉じたものであり,他端の開口が外方に向うとは,開口が壁その他の構造物の側方(斜め上方および斜め下方を含む)または上方(斜め上方を含む)に向いている配置をいう。音響管の開口にシートが張られているとは,開口の全面または一部面を覆う(閉鎖する)ように,シートが設けられ,その周縁部が一または複数の音響管の端面または側面(周面)に取付けられていることをいう。
【0016】
この発明は,音響管による構造体よりなる防音装置もまた提供している。この防音装置は,一端が閉じ,他端が開口した音響管と,この音響管の上記他端の開口(の全部または一部)を閉鎖するように張られたシートとからなるものである。
【0017】
複数の音響管を用いることもできる。この場合には,複数の音響管が,上記他端開口を同じ側に向けて配列される。ここで,同じ側に向けてとは,一の音響管の他端とそれに隣り合う他の音響管の一端とが同じ側にならないことを意味するものであり,複数の音響管が平行に配置されることのみならず,放射状,その他互いに斜めの関係になるような配置も含むものである。
【0018】
上記のすべての防音装置において,シートとは,膜,フィルム,その他の用語で呼ばれる比較的薄く広がりを持つ材料を意味し,好ましくは合成樹脂(たとえばポリエチレン)製のものである。
【0019】
音響管はその断面が円,楕円,矩形,三角形を含む多角形等,いかなる形をもつものでもよいし,溝のように細長い開口を持つものも含む。複数の音響管が壁その他の構造物に設けられる場合,または複数の音響管の構造物において,複数の音響管を一体的に成形または組立てる構造でもよいし,個別に製作された複数の音響管を配列してもよい。
【0020】
音響管の長さは遮音または防音する音の周波数を規定するので,広い周波数(波長)帯域にわたる音を遮音または防音する場合には,長さの異なる複数の音響管を配置することが好ましい。
【0021】
音響管はプラスチック,金属等の材料でつくることができる。
【0022】
図1は壁1の頂部に,壁1の長さ方向に沿って,音響管構造体2を取付けることにより構成される防音装置を示すものである。音響管構造体2は水平面内において縦,横方向に配置された複数の音響管3を含む。音響管3は上端に矩形の開口を持つものであり,上方に向って開口している。音響管3の下端は閉鎖されている。音響管3の上下方向の長さが音響管の長さであり,遮音または防音する音の周波数(波長)を規定する。
【0023】
このような防音装置の消音(遮音,防音)特性が図3に示されている。周波数1000Hz前後において相対音圧レベルが低下しており,1000Hz付近の周波数において消音(遮音,防音)効果がある。
【0024】
図2は,図1に示す防音装置において,音響管構造体2の複数の音響管3の上面開口をポリエチレン・シート(厚さ 100ミクロン)4で覆った防音装置を示している。シート4の両側縁が押え板5によって両側の音響管3の側面に取付けられ,シート4が音響管の開口を閉鎖するように張られている。
【0025】
図4は,図2に示すシートが張られた防音装置の消音(遮音,防音)特性を示すものである。消音(遮音,防音)効果のある周波数が低くなり,500〜600Hz付近において相対音圧レベルが低下している。
【0026】
このように,音響管の外方に向いた開口を覆うようにシートを張り付けることにより,消音効果が現われる周波数が1/2〜1オクターブ程度低下する(低周波数側へシフトする)。
【0027】
音響管の長さは,上記のように,消音効果が現われる音の波長を規定する。周波数の逆数が波長に比例するから,シートを設けることによって消音効果のある周波数帯域が低周波数側へシフトすることは,目標とする周波数を固定すると,音響管の長さが短くなることを意味する。したがって,この発明によると,音響管の長さをかなり(約半分程度に)短くできることになり,防音装置の小型化を図ることができる。また,音響管の長さが短くなると,その材料も少なくてすむから,材料量が軽減できるとともに,現場での施工性も向上する。シートを設けることにより,音響管内への塵埃等の異物の侵入を未然に防止できる。
【0028】
【実施例】
図5において,高速道路,高速鉄道等の側部に沿って,またはその他の遮音,消音,防音が要求される場所の境界に沿って防音壁10が立設されている。この防音壁10の頂部には,防音壁10に沿って音響管構造体20が取付けられている。防音壁10は,一般的には,適当な間隔をおいて立設された支柱と,隣接する支柱間に配置される防音板(必要に応じて吸音材が設けられる)とから構成される。
【0029】
音響管構造体20は多数の単体29を一列状に配列しかつこれらを相互に結合させることにより実現される。この配列の一方の端には蓋30Aが取付けられる。単体29の構造が図6に正面図によって,図7に斜視図(シートを取り除いた状態)によって表されている。
【0030】
単体29は第1の隔壁30と,第1の隔壁30の一面に垂直なさまざまな形の第2の隔壁31(さまざまな形の第2の隔壁をすべて符号31で示す)と,第1の隔壁30の上縁に小さな間隔で多数設けられ,第2の隔壁31と同方向にのびるシート支持部材32と,単体29の下部の両側に設けられ,下方にのびる取付片33とから構成され,これらが一体成形される。最外側の第2の隔壁31には補強用のリブ34が設けられている。単体29は好ましくは,アルニミウムその他の金属を用いた鋳造により,またはプラスチック出射成形によりつくられる。
【0031】
第1の隔壁30および蓋30Aの他面(図5,図7では見えない面)には,隣接する単体の第2の隔壁31の端縁および支持部材32の先端が嵌る浅い溝が形成されている。
【0032】
多数の単体29は第2の隔壁31の端縁および支持部材32の先端が,隣接する単体の第1の隔壁30(または蓋30A)の他面の上記溝に嵌るようにして,一列に配列され,かつ結合される。すべての単体29の第1の隔壁30および蓋30Aは互いに平行になり,第2の隔壁31および支持部材32は単体29の配列方向に一直線状に連続する。必要に応じて,連続する筒体37内に長いボルトまたは連結ワイヤが通され,多数の単体29の結合が強化される。蓋30Aは適当な固定部材により固定される。
【0033】
第1の隔壁30(または蓋30A)と第2の隔壁31とによって規定される空間がそれぞれ音響管21〜28内の空間である。さまざまな長さを持つ音響管21〜28が形成されることになる。音響管21〜23,25はまっすぐであるが,音響管24,26〜28は斜めから水平方向に屈曲している。このように音響管は曲っていてもその消音効果に殆ど影響がない。さまざまな長さの音響管が存在するので,広い周波数(波長)帯域にわたって消音(遮音,防音)効果がある。音響管21〜28はすべて上方に向けて開口しており,その下端(末端)は閉じられている。すべての音響管21〜28の上端は一つの水平面内にある。
【0034】
多数の単体29が一列に配列して構成される音響管構造体20において,音響管21〜28の開口のすべてを閉鎖するように,その全面にうすいシート(たとえば厚さ300ミクロンのポリエチレン・シート)40が水平に張られている。シート40の両側縁は押え板41で押えられ,かつボルト/ナットによって押え板41が両側に位置する第2の隔壁31に固定されることにより,シート40が構造体20に取付けられる。
【0035】
単体29は防音壁10の頂部に取付片33により取付けられる。取付片33には取付穴35があけられている。単体29は防音壁10の上方に位置し,2つの取付片33が防音壁10の両側に位置するように配置される。防音壁10と取付片33との間に,断面が逆U字型の取付部材36を介在させて,取付穴35を通して取付片33と取付部材36がボルト/ナットにより,取付部材36と防音壁10または(その頂部に設けられた横桟(図示略))がボルト/ナットによりそれぞれ固定される。2つの取付片33の間の間隔と,防音壁10の幅とがほぼ等しければ,取付部材36は不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の防音装置の構造例を示す。
【図2】この発明によるシートが設けられた防音装置の構造例を示す。
【図3】従来の防音装置の消音特性を示す。
【図4】この発明の防音装置の消音特性を示す。
【図5】この発明の実施例を示すもので,防音装置の全体を示す斜視図である。
【図6】防音装置を構成する単体の正面図(シートを取付けた状態)である。
【図7】防音装置を構成する単体の斜視図(シートを除いた状態)である。
【符号の説明】
10 防音壁
20 音響管構造体
21〜28 音響管
40 シート
Claims (3)
- 壁,その他の構造物の壁面または上部に沿って,外方に向って開口した複数の音響管が設けられ,これらの音響管の開口にシートが張られている,防音装置。
- 一端が閉じ,他端が開口した音響管と,この音響管の上記他端の開口を閉鎖するように張られたシートとからなる防音装置。
- 複数の音響管が,上記他端開口を同じ側に向けて配列されている請求項2に記載の防音装置。
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JP2002216553A JP2004060176A (ja) | 2002-07-25 | 2002-07-25 | 防音装置 |
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WO2017077959A1 (ja) * | 2015-11-05 | 2017-05-11 | 日本板硝子環境アメニティ株式会社 | 吸音パネル及び防音壁設備 |
JP2018044406A (ja) * | 2016-09-16 | 2018-03-22 | 株式会社栗本鐵工所 | 防音壁用防音装置 |
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- 2002-07-25 JP JP2002216553A patent/JP2004060176A/ja active Pending
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JPWO2017077959A1 (ja) * | 2015-11-05 | 2018-03-29 | 日本板硝子環境アメニティ株式会社 | 吸音パネル及び防音壁設備 |
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