JP3654358B2 - 防音壁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路、鉄道など騒音発生源の路線において騒音対策に用いられる防音壁の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、道路、鉄道などから発生する騒音の防止対策として、騒音発生源から伝播する騒音を遮断するために、図10に例示するように、それら路線a1に沿って防音壁a11を設置するのが一般的になっている。この防音壁効果(防音効果)は、壁高さを高くすればするほど効果的であるが、例えば、道路の交差点では交差する道路a4との部分に防音壁を設置できないため、その開口区画a3から騒音が鎖線で概念的に示すように外側地域に放射され、周辺の騒音が上昇するという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、防音壁の開口区画から外側地域に放射される騒音を低減させるための改良された防音壁を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、騒音発生源の路線に沿って立設された防音壁体の、交差点や側道の出入路などの開口区画に面する横方向の末端部に、下部から上部にわたって縦長形状の消音筒からなる防音装置を付設したことを特徴とする本発明の防音壁によって、解決することができる。
た、騒音発生源の路線に沿って立設された防音壁体の、交差点や側道の出入路などの開口区画に面する横方向の末端部に、下部から上部にわたって、屈曲させた長さの異なる中空管状部材の集合体からなる防音装置を付設したことを特徴とする本発明の防音壁によって、解決することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の防音壁に係る実施形態について、図1〜9を参照しながら説明する。
本発明の防音壁は、図1に示すように、道路や鉄道など騒音発生源の路線1に沿って立設された防音壁体11の横方向の末端部分、例えば、防音壁を設置できない道路などの交差点や側道との出入路における防音壁体11の末端部分13、言いかえれば、それらの開口区画14に面する末端部分13の片方に、あるいは図1のようにその両方に防音装置2を付設した点を基本構造とする。
【0006】
そして、本発明の防音装置2は、防音壁体11の末端部分13に沿って下部から上部にわたって設置されるので、形態としては、幅、奥行きに較べて高さが大である縦長形状の、例えば消音筒形式が好ましい。ただし、後記するように筒状構造に限定されるものではない。また、防音壁体11の末端部分13との位置関係は、防音装置2を末端部分13の先端から延長方向に突出させて配置してもよいし、図2(B)、(C)、(D)、(E)のように末端部分13から外側(民地側)にずらせて設置してもよい。また、図2(F)のように道路側にずらして設置してもよい。かくして、この防音装置2は、路線1の出入路などの開口区域から外側に放出される騒音、特に廻り込む騒音を低減するのである。
【0007】
防音装置2の取り付けに際しては、交通条件や民家の配置、ドライバーからの視界、見通し性などを考慮し、図2の(A)〜(F)のパターンから適宜選択して、例えば、図3(A)や図3(B)のように設置すればよい。
図3(A)は、本線と側道が平行し、これに出入りする道路が直交している構成であるが、騒音低減効果を高めるため、2重に設置した防音壁の末端部分13から外側に大きくずらして防音装置2を設置させるとともに、本線や側道を左折するドライバーからの見通し性を考慮し、出入りする道路の手前側の防音装置2を斜め外側にずらして設置したものである。
また、図3(B)は本線道路の開口が直接民地側を向かないようにして設置した例で、本線からの騒音は2箇所の防音装置2を廻り込んで行くため、より大きい騒音低減効果が得られる。
【0008】
なお、末端部分13への取り付けには、防音壁側のH形支柱に直接に、あるいは金具を介してボルトで取り付ける、防音壁側の遮音板にボルトで取り付ける、あるいは、この防音装置2を組み立て前の防音壁側の遮音板に固定しておき、遮音板の組み立てと同時に防音装置2を設置するなどの手法が利用できる。
【0009】
次に、本発明の防音装置2が具備する騒音低減作用の原理について、簡単に説明する。
本発明の防音装置は吸音、音の共鳴、音の干渉、音の位相反転、音の能動制御、音の多回折、遮音、などの騒音を低減させる機能の何れか又は併用による騒音低減機能を有するものである。
【0010】
(吸音)
吸音による防音装置は、多孔質材による吸音、共鳴による吸音、膜振動、板振動による吸音を利用したものであり、防音装置の近傍を廻り込んでいく騒音を吸収して低減させる。音の干渉、位相反転、回折、能動制御や遮音の機能を併用してもよい。
【0011】
(多回折)
複数の回折点(エッジ)による回折減音作用を利用するもので、直線状の防音壁体11の厚さより防音装置2の厚さを大きく設定し、騒音が防音装置2の側部を回り込んでいくときに、前記防音壁体11だけの場合に較べて、回折による減音量が大きくなる点を利用している。例えば、後記するY字状防音装置の場合は、2個の先端個所が大きな回折点として作用する。
【0012】
(干渉)
反射波を利用するもので、騒音が防音装置2の側部を回り込んでいくときに、その騒音を防音装置2に突設した突起に反射させて反射波を発生させ、直接波と干渉させて減音させる点を利用している。例えば、先端に突起を設けたY字状防音装置がその事例に相当する。
【0013】
(共鳴・位相反転)
防音装置2に、1/4波長の深さ、または異なる深さの複数の溝、管状穴を設けて、騒音をその溝や穴の共鳴によって吸音させたり、その溝や穴の底部からの反射波によって音圧反射率がほぼ−1になる位相反転の音場を作ることにより、騒音を低減する。
【0014】
道路の開口部から放出される騒音は、防音装置の周辺を通過する際に上記効果によって低減する。従って、防音装置は道路開口の両末端部に設置したり、できる限り騒音が防音装置の近傍を通過するような道路構造にして配置することが好ましい。装置の大きさや配置によっても効果は異なるが概ね3〜8dBの低減効果が得られる。
【0015】
次ぎに、本発明の防音装置2の形状の概要を簡単に説明する。
その横断面形状は、円形、楕円形、きのこ形、三角形、四角形、多角形の断面筒形の消音筒タイプ、あるいはY字状、U字状、W字状など干渉減音タイプが用いられる。また、防音装置の大きさは、間口(幅)、奥行き(厚さ)または直径のサイズは0,5〜2.0m、高さは2m〜防音壁11の高さとする。
【0016】
以下、防音装置2の具体的な実施形態1〜7について、図4〜9を参照して説明する。
(実施形態1:図4参照)
図4は、主として吸音、遮音を利用したもので、多孔質吸音材41を筒状に加工して消音筒とし、これを防音壁体の末端部分13に取り付けている。ここでは、多孔板42(パンチングメタル、エキスバンドメタル、金属網体など)をその表面に組み合わせてもよい。
【0017】
(実施形態2:図5参照)
図5は、主として吸音、多回折、遮音を利用したもので、アルミ繊維吸音材51を筒状に加工し、その内部空間は遮音板52によって区画されている消音筒である。このアルミ繊維吸音材51は、アルミ繊維を常温または加熱圧着、あるいは接着剤で接着したもの、若しくはその両面または片面に多孔板(パンチングメタル、エキスバンドメタル、金属網体など)を積層した吸音材で、吸音性、耐候性、耐水性、耐火性に優れていてこの目的に適している。この場合、透明な膜状吸音材とプラスチック枠材を用いて透光性の防音装置とすることもできる。
【0018】
(実施形態3:図6、7参照)
図6は、主として吸音、多回折、遮音を利用したもので、筒状の吸音材61を遮音性のベース部52上に形成した消音筒であって、そのベース部52は、固定部材53で防音壁体の末端部分13に取り付けられている。その吸音材61には、無機繊維。アルミ繊維、金属およびセラミックの多孔質材が利用可能である。
【0019】
図7は、この事例の変形であって、ベース部52全面を吸音材61が覆った形態(A)、上述の基本的構成(B)、吸音材61が囲う空間を遮音性仕切板54で複数に仕切って吸音空間とした事例(C)(D)(E)を示している。
また、これらの事例では、防音装置を路線の反対側に張り出して防音効果を向上させたり、斜めの設置したり、多少横方向にずらせて配置したりして、建築限界を超えないよう対応できるものである。
【0020】
(実施形態4:図8参照)
図8に示すものは、主として吸音、多回折、干渉、共鳴、位相反転を利用したもので、V型、半V型、U型、半U型、箱型に構成したケ−ス82の前方開口部に吸音材81を蓋状に設置した消音筒からなる防音装置(図8(D)以外)であり、吸音材81には、前記のアルミ繊維吸音材や、透明吸音材が用いられ得る。これら吸音材を孔明き板に置換すれば、共鳴吸音作用が効果的となる。
なお、V型防音装置で前面に吸音材を設けないものの、ケ−ス82の上部近くに、回折・干渉用小突起板81aを設けた防音装置(図8(D))も利用可能である。
【0021】
(実施形態5:図9参照)
図9は、主として位相反転を利用したもので、断面が円形、四角形、多角形の音響管91外側に向けて多数、円周上に配列した消音筒からなる防音装置であって、防音壁体の末端部分13に取り付けられる。この音響管91の長さを騒音主成分の音波のλ/4波長に合わせておけば、より効果的である。なお、これら音響管91を透明プラスチックなどで構成して透光性消音筒とするのもよい。
【0022】
【0023】
(実施形態7)
屈曲させた長さの異なる中空管状部材の集合体からなる防音装置を末端部分13に取り付け、騒音発生源からの騒音は、この中空管状部材を通じて位相変換され、変換させない音と衝突干渉して、防音装置の反対側に減音域を生じることにより減音される。
【0024】
次に、上記各実施形態に共通する事項を述べると、それぞれの防音装置の下部には、内部に侵入した雨水などを抜くための、水抜き孔を設けるのが好ましい。また、外気中の汚染物質の汚れ防止や空気中の窒素酸化物浄化のため、前記防音装置の内外表面には、二酸化チタンなどの光触媒、親水性または撥水性コーティング剤などを塗布して特定の機能層を設けるのも好ましい。
更に、落下防止のため、防音装置に落下防止ワイヤーロープなどを取り付けてもよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明の防音壁は、以上説明したように構成されているので、道路、鉄道などの路線に沿って設置された防音壁の、交差点や側道の出入路などの開口区画から外側地域に放射される騒音を、消音筒などからなる防音装置の吸音、共鳴、干渉、位相反転、能動制御、多回折、遮音などの音の減音作用によって効果的に低減させることができるから、このような路線沿線近隣区域の騒音環境の向上に寄与できるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した防音壁として、その実用的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するための配置概念図(A)、側面図(B)。
【図2】本発明の実施形態を示す水平配置図(A)〜(F)。
【図3】本発明の実施形態を示す水平配置概念図(A)、(B)。
【図4】実施形態1を示す要部水平断面図。
【図5】実施形態2を示す要部水平断面図。
【図6】実施形態3を示す要部水平断面図。
【図7】実施形態3の他の形態を示す水平断面略図(A)〜(E)。
【図8】実施形態4のいくつかの形態を示す水平断面略図(A)〜(K)。
【図9】実施形態5を示す要部水平断面図。
【図10】沿線に設けられた防音壁の配置概念図。
【符号の説明】
1 騒音発生源の路線、11 防音壁体、13 末端部分、2 防音装置、41 吸音材、42 多孔体、51 吸音材、61 吸音材、81 吸音材、91 音響管。

Claims (6)

  1. 騒音発生源の路線に沿って立設された防音壁体の、交差点や側道の出入路などの開口区画に面する横方向の末端部に、下部から上部にわたって縦長形状の消音筒からなる防音装置を付設したことを特徴とする防音壁。
  2. 前記消音筒が、アルミ繊維吸音材を筒状に加工し、その内部を遮音板で区画したものである請求項1に記載の防音壁。
  3. 前記消音筒が、前記防音壁体の末端部の取り付けられる遮音性ベース部の片側にアルミ繊維吸音材で筒状空間を形成し、その内部を遮音板で区画したものである請求項1に記載の防音壁。
  4. 前記消音筒が、前方開口部にアルミ繊維吸音材の蓋を設置したケースで構成されるものである請求項1に記載の防音壁。
  5. 前記消音筒が、表面に多数の音響管を外側に向けて配置したものである請求項1に記載の防音壁。
  6. 騒音発生源の路線に沿って立設された防音壁体の、交差点や側道の出入路などの開口区画に面する横方向の末端部に、下部から上部にわたって、屈曲させた長さの異なる中空管状部材の集合体からなる防音装置を付設したことを特徴とする防音壁。
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